(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】金属加工プロセスを最適化するための最適動作性能基準を選択するためのコンピュータ制御される方法、産業用機械システム、コンピュータプログラム製品及び非一時的コンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4093 20060101AFI20220729BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20220729BHJP
B21D 5/02 20060101ALN20220729BHJP
B21D 28/36 20060101ALN20220729BHJP
【FI】
G05B19/4093 D
G05B19/418 Z
B21D5/02 P
B21D28/36 B
(21)【出願番号】P 2018544063
(86)(22)【出願日】2017-02-17
(86)【国際出願番号】 SE2017050153
(87)【国際公開番号】W WO2017142470
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2019-12-09
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2016-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512091431
【氏名又は名称】トモロジック アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス・ノルベルグ・オルソン
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4093
G05B 19/418
B21D 5/02
B21D 28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費材料及び/もしくは製作時間が最も少なくなる、並びに/または、総製造コストが最も少なくなるように、金属加工プロセスを最適化するための最適動作性能基準を
複数の動作性能基準から選択するためのコンピュータ制御される方法であって、
動作についてのプロセスパラメータを前記動作についての性能変数に関連付けるプロセスモデルを提供するステップであって、前記プロセスパラメータおよび性能変数が、一体化した複数のデータソースを介して取出し可能である、ステップと、
性能変数の範囲をプロセスパラメータの範囲とともに定義するための基礎として、機械加工される製品の容認できる許容範囲を使用することによって生産性に対する最適化をするための機能を生成するステップと、
前記機能に前記最適動作性能基準を決定するための少なくとも1つの最適化技法を適用するステップであって、それによって、前記金属加工プロセスを制御するために使用されるコマンドの組を得るためのプロセスパラメータおよび性能変数を含む前記プロセスモデルについて、最適動作性能基準が決定される、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記金属加工プロセスが、レーザ、ガス切断、プラズマ、ウォータージェット、イオン、空気、曲げ加工、加圧加工、パンチプレス、プレス破砕、フライス加工、ドリル加工、および旋削に基づく任意の産業的に適用可能な切断技術である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属加工プロセスが板金加工に関する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセスモデルが、実時間で、動的にモニタおよび制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属加工プロセスを制御するために使用される前記コマンドの前記組は、操作者への推奨として提供することができ、あるいは部分的に操作者が関与してまたは全く操作者が関与せずに適用することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
製造順序、製品の幾何形状および予め定義された許容範囲、必要な金属加工動作、必要な工具構成、製造される物品の積み重ねパターン、ならびに/または以前の動作からのプロセスパラメータデータなどといった、前記金属加工プロセスに関する複数のソースからのプロセスパラメータを取り出すステップと、
製造される物品の決定された許容範囲、プロセス時間、工具可用性、工具寿命、材料除去速度、操作者の作業環境、手持注文、配達時間、必要な加圧加工場所、および/または以前の動作からの性能変数データなどといった、前記金属加工プロセスに関する異なるソースからの性能変数を取り出すステップと、
統合業務ソフト(ERP)システムなどといった、コンピュータシステムに関連する統合されたメモリ中に、前記プロセスパラメータおよび性能変数を記憶するステップと、
最適動作性能基準を選択するための最適化技法を適用するために、前記プロセスパラメータおよび/または性能変数が機械コントローラまたはコンピューティングシステムにとって利用可能になるようにするステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
以前の動作からの前記金属加工プロセスに関する取り出されたプロセスパラメータを、工具に関するパラメータを含む現在の機械構成と比較するステップと、
前記現在の機械構成が、そのプロセスパラメータに従って物品の製造を可能にするかを決定するステップと、
前記工具構成の適用可能性を評価するステップであって、必要なときには、第1の任意選択のステップで、前記製品の幾何形状を容認できる許容範囲内に調整することになり、第2のステップで、前記工具構成を調整することになる、ステップと
をさらに含み、
それによって、いずれかの調整が、以前の動作からのパラメータと比較される新しい現在の機械構成をもたらす、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工具および/または製造される物品には、電子回路、ソフトウェア、センサおよび/またはプロセスパラメータおよび/もしくは性能変数などのデータを前記コンピュータシステムと交換することを可能とするネットワーク接続性が組み込まれている、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
製造される物品の予め定義されたおよび/または定義された許容範囲が以下の性能変数、すなわち
堅さ、強靱性、サイズ、および厚さなどの材料特性、
半径、角度、および寸法などの製品の幾何形状、
隆起、曲げ加工線、圧力変形および他の視覚的属性などの製造上の瑕疵
のいずれかを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
製造された物品上の瑕疵または視覚的属性の識別が、機械加工動作に続いて被加工物を積み重ねるときに考慮に入れられる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記現在の機械構成がそのプロセスパラメータに従って物品の製造を可能にするか前記決定するステップが、前記工具構成に加えて、予備部品、工具、保守、材料、形状、および/または寸法などといった他の可能化要件の決定をも含み、それによって、対応するプロセスパラメータおよび/または性能変数が記憶される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
記憶されるプロセスパラメータおよび/または性能変数が、購入の注文の発行または操作者の推奨に応答する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ数値制御(CNC/NC)またはプログラム可能論理コントローラ(PLC)システムにおいて使用されるように適合される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
産業用動作を実施するためのアクチュエータシステム(2)を備える機械(1)と、
前記機械と接続しており、機械コントローラ(9)を備える、コンピューティングシステム(6)と
を備え、
前記機械コントローラが、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合される、産業用機械システム。
【請求項15】
前記コンピューティングシステムと接続している、前記産業用動作のプロセスパラメータおよび性能変数に関する画像情報をキャプチャするための監視ユニット(14)をさらに備える、請求項14に記載の産業用機械システム。
【請求項16】
前記監視ユニットが、刻印および/もしくはマークされた属性、部品の瑕疵、曲げ加工線、隆起、ならびに/または機械動作によって作られる他の非対称の属性などといった任意の視覚的属性と組み合わせた部品の幾何形状を識別するために、画像、画像シーケンス、またはビデオをキャプチャする手段を備える、請求項15に記載の産業用機械システム。
【請求項17】
前記コンピューティングシステム(6)が、データを収集し、データ分析および/もしくは金属加工プロセスの最適化のために前記データを使用し、かつ/またはデータ分析および/もしくは金属加工プロセスの最適化のために前記データを別のシステムに転送するように構成される、請求項14に記載の産業用機械システム。
【請求項18】
前記機械システムが、プレス破砕または曲げ加工機械である、請求項14に記載の産業用機械システム。
【請求項19】
実行されると、コンピュータ中のプロセッサが請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実施することを可能にする、コンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項20】
コンピュータ中のプロセッサによって実行されるように構成された、コード化されたコマンドの組を表すデータを含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コマンドが、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金加工プロセスなどの、産業用機械加工動作を制御するための最適な動作性能基準を選択するための方法、産業用機械システム、コンピュータプログラム製品、および非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の産業用機械システムは、典型的には、機械部品または動作デバイスと被加工物との間の相対的な動きを実現するためのアクチュエータシステムを有する機械からなる。現況技術の産業用機械システムは、たとえば、ビーム切断、フライス加工、旋削、ドリル加工、中ぐり、打ち抜き、パンチプレス、プレス破砕、曲げ加工、溶接、および組立動作などといった動作を実施するために高度に特殊化されている。機械システムが仕事に寄与する多用途性および生産性は、投資判断を行う際の主要な要因であるために、機械システムは、ほとんどの潜在的な顧客、特により小さい、または中規模の作業場に対してかなりの投資となる。
【0003】
産業用機械システムは、CNC(コンピュータによる数値制御)ユニット、NC(数値制御)ユニット、PLC(プログラム可能論理制御)ユニット、および/または意図される産業用動作を実行するため要求される動きを実施するための命令をアクチュエータシステムへ提供するようにともに働く関連する検知処理装置によって制御される。機械システムは、機械コントローラをさらに備え、機械コントローラは、本質的に、GコードまたはXMLなどの機械コントローラ命令に基づいて、CNC/NC/PLCユニットに命令を与えるように構成される、プロセッサと、WindowsまたはLinux(登録商標)などの従来型オペレーションシステムとを有するコンピュータである。機械コントローラは、HMI(人間-機械インターフェース)を含み、またはHMIに接続され、機械に備わるアクチュエータシステムが実行するための、CNC/NC/PLCユニットへの完全な命令を生成するために、プログラムを読み取りプロセスパラメータを集めるように構成される。従来では、CNC/NC/PLCユニットと機械コントローラの両方が産業用機械の中に物理的に含まれ、産業用機械は独立した自蔵式産業用機械システムを形成しており、機械コントローラが、機械の本質的で物理的に接続された部分を形成している。
【0004】
CNCシステムは、本明細書では機械と呼ぶ工作機械、機械が従うコマンドの精密な組である部品プログラム、およびプログラムを記憶してそのコマンドを工作機械が行為へと実行するコンピュータである機械コントローラ(または機械制御ユニット)を備えるように定義することができる。
【0005】
産業用機械が実施する動作の管理、制御、およびモニタは、成し遂げるためには、機械操作者からの専門技術および経験、ならびにソフトウェアベースのサポートシステムを必要とする。たとえば、特定の金属製品を製造する動作のためのプログラムを生成するために、プログラムは、最適化技術または最短経路原理に基づいた動作シーケンスの計算などの予め定義された原理の組と、さらには、より現実的な観点から何が最良のシーケンスであるかについての操作者のノウハウとの両方に基づく必要がある。考慮し制御するべき変数は、材料特性、物流、ならびに、もちろん実際の幾何形状、形状、寸法、および製品が製造されるべき順番に関係する場合がある。
【0006】
従来技術では、単一の部品が個別ユニットとして製造されるという原理に基づいた、機械加工または切断プログラムの設定を開示している。切断、打ち抜き、および/または加圧加工などといった、この目的のために、多種多様な従来型製造方法が使用されている。ここで、切断、打ち抜き、および/または加圧加工動作のために適用される製造メトリクスは、事前に定義される。各部品についての個別の定義が作成され、隣接する部品間で適用できる安全距離が、各個別部品について定義される。
【0007】
より最近では、より従来型の切断技法に対する改善として、いわゆるコモンカット技術が開発されている。コモンカット技術にとって基礎をなす技法は、2つの隣接する部品を切断することによって被加工物を分割することに基づき、部品は、切断ビームの切断の幅に対応する距離だけ分離される。したがって、その特定の切断動作についての必須条件を考慮に入れて、互いに分割するように形状を位置決めするときに、切断ビームの切断の幅に対して、注意深く考慮しなければならない。
【0008】
切断動作についての必須条件は、最初の準備および切断経路に沿って分離されるべき形状の位置決めに関して、事前に決定されているべきである。特に、部分的なまたは完全な自動化プロセスでは、コモンカット機械加工プロセスの注意深い計画が重要である。被加工物はもはや再配置できないので、切断するために被加工物を位置決めした後に、はじめてコモンカットを使用できないことに気付くのでは遅すぎる。さらに後に、すなわち切断動作が行われた後にコモンカットを使用できないことに気付くのでは、必然的に、製造された部品への変形および損傷、したがって、製造された物品の廃棄につながる。
【0009】
上述のコモンカット技法は、損傷または変形を引き起こすことなく部品を互いに分離することをコモンカット技法が可能にし、製造される物品の寸法および品質が仕様による容認できる許容範囲を超えることを起こさせないという条件で、たとえば、打ち抜きまたは加圧加工動作にも適用することができる。
【0010】
国際特許公開第WO2011/042058号は、ビーム切断技術を使用して、1個の材料からいくつかの部品を機械が切断するための方法およびシステムを開示する。自由形状を有する部品のクラスタを形成するのに、制御ルールおよび変数の組が適用され、部品は互いに非常に近く位置決めされ、その結果、部品の形状が許容するときはいつでも、隣接する部品間に、切断ビームからの1つのカットの厚さだけが見いだされる。
【0011】
切断動作に自由形状を導入したので、市場では、板金加工プロセスにおいて本技術が生産性を著しく高める潜在能力を有することを迅速に認識した。自由形状切断から注目される第1の利点のうちの1つは、切断動作期間の貴重なプロセス時間の節約であり、これは、製造業界における競争力にとって、最優先事項の1つである。自由形状切断により提供される別の利点は、切断される形状を、より緊密なパターンに配置するのを自由形状切断が可能にし、それによって、材料の浪費を著しく減少させることであり、これは、産業の観点および環境の観点の両方で利益がある。
【0012】
しかし、コモンカット技術は、自由形状の高度に効率的な製造を可能にする様態で使用するときも、必然的に、動作の際に、被加工物にわずかな瑕疵をもたらす場合がある。それらの瑕疵は、完全に回避するのが難しく、特に、コモンカット技術を含む機械加工動作で考慮する必要がある。動作の全体的な生産性を妨げないように、機械加工動作の結果として最終的に現れることになる、タグ付けしたセグメントおよび/または瑕疵は、産業用機械加工動作の最初の計画期間に事前に考慮に入れられる。
【0013】
今日の機械加工動作は、デフォルトデータおよび理論的パラメータに基づき、これらは、ローカルにデータベースに記憶され、動作に先だって計算される。典型的な機械加工動作における様々なステップは、したがって、シーケンス毎に別個に調整される。こうした観点から、産業用機械加工動作を設定および実施するときに少なくとも考慮される必要がある関連する問題は、動作に影響を及ぼす可能性がある多数の動的変数である。これらの変数のいくつかは、場合によっては、変数が、物流、材料特性、製造品質、現在使用されている工具、利用可能な工具、または操作者の要求に関係するものであれ、関係しないものであれ、産業用機械加工動作の効率、精度、品質、および生産性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際特許公開第WO2011/042058号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、金属加工プロセスについての最適動作性能基準を選択するための、方法、産業用機械システム、コンピュータプログラム製品、および非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することによって、従来技術に関連する上記の問題を軽減することが、本発明の目的であり、前記方法は、
動作についてのプロセスパラメータを動作についての性能変数に関連付けるプロセスモデルを提供するステップであって、プロセスパラメータおよび性能変数が、一体化した複数のデータソースを介して取出し可能である、ステップと、
機能を定義する少なくとも1つの最適化技法を選択するステップであって、前記機能がプロセスパラメータを含む、ステップと、
性能変数の範囲をプロセスパラメータの範囲とともに定義するための基礎として、機械加工される製品の容認できる許容範囲を使用することによって最適化のための機能を生成するステップと、
前記機能に少なくとも1つの最適化技法を適用するステップであって、それによって、金属加工プロセスを制御するために使用される要件の組を得るためのプロセスパラメータおよび性能変数を含むプロセスモデルについて、最適動作性能基準が決定される、ステップと
を含む。
【0016】
上記に従うプロセスモデルについて計算される最適性能基準が、産業用機械の制御のための動作命令へと変換される要件の組をもたらす。制御は、典型的には、アクチュエータシステムに機械加工動作を実行するように命令する動作命令の組を含む、産業用機械プログラムによって実行される。
【0017】
さらに詳細には、従来技術で記載された伝統的な解決策から本発明を区別する前提条件のいくつかは、システム、機械、第四次産業革命(IoT)に関する情報などの、さらにはサービスプロバイダおよび顧客の完全な統合である。関連データの様々なソースの完全な統合によって、金属加工プロセスに関する情報を実時間でさえ取り出すことを可能にし、本発明によれば、この情報を分析および利用することができる。プロセスパラメータおよび性能変数の柔軟な性質、および金属加工プロセスを最適化するときのこの情報の動的な利用によって、製造計画についての基礎として逐次的な分析または最適化を使用して得ることが決してできない製造結果をもたらすことができる。プロセスパラメータの柔軟性によって、浪費材料および/または(より少ない工具交換などに起因する)製造時間の著しい減少をもたらすことができ、性能変数の柔軟性によって、より少ない総製造コストをもたらすことができ、これは、製造業者と顧客の両方にとって有益である。
【0018】
本発明によって、そのうちのいくつかを下で言及することになる従来技術に関して、著しい利点および利益が達成可能になることになる。変数が物流、材料特性、工具の可用性に関係するものであれ、または操作者の要求に関係するものであれ、産業用機械加工動作の効率および生産性に影響を及ぼし作用する可能性がある変数の動的な性質を考慮に入れることができる。
【0019】
本発明は、複数のソースから取り出した情報を使用し、そのような情報を、後続の機械加工動作に関して使用するのに利用可能とされる様態で記憶する。取り出した情報によって、本発明は、実行される特定の機械加工動作によって要求されるような、新規の、または追加の工具または工具の幾何形状を設計および利用可能にすることを可能にする。
【0020】
本発明の1つの代替実施形態によれば、金属加工プロセスのための最適動作性能基準を選択するための方法はプロセスモデルを含み、プロセスモデルは、動的にモニタおよび制御される。
【0021】
この動的なモニタおよび制御によって、金属加工プロセスにとって基盤となる条件における変化に、経時的に応答することが可能になる。基盤となる条件は、いずれも、たとえば板金の材料特性、幾何形状の考慮、および/または製造プロセス関連特性、工具の交換のこうした必要性などといった、時間とともに変わる可能性がある技術的特性に基づく場合がある。また、生産経済、手持注文情報、価格、収益性、可用性、および関係する優先順位などといった、製造計画に関係する他の特性が、時間とともに変わる可能性がある。第3のカテゴリーとして、すべてが時間とともに変わる可能性がある作業環境に関係する特性である、操作者可用性、操作者にとっての重労働の回避、機械の再構成などの夜勤期間の操作者にとって負担の少ない手動の仕事といった、操作者にとっての作業環境に関する特性を考慮に入れることができる。
【0022】
本発明の代替実施形態によれば、金属加工プロセスのための最適動作性能基準を選択するための方法はプロセスモデルを含み、プロセスモデルは、実時間でモニタおよび制御され、プロセス中の動的な調整を可能にする。
【0023】
これは、特に、プロセスパラメータの頻繁な調整および再構成が必要な、比較的小さいバッチの製造にとって、従来技術と比較して基本的な利点を有する。本発明によれば、生産性評価を待たなければならない代わりに、即座に外部変動に対する反応を起こすことができる。それらの評価は、しばしば、既に完了した製造プロセスからの出力の追跡として実行されるべき、反復的にスケジュールされる手動の計算である。今日の従来技術における情報の有用性は、本需要に基づいた製造プロセスを最適化するのを可能にするには不十分である。製造プロセスの可能な最適化は、したがって、最適化から利益を得るには遅すぎることが多い。
【0024】
本発明によれば、金属加工プロセスを制御するために使用される要件の組は、操作者への推奨として提供することができ、次いで操作者は、要件の組を適用することができる。代替実施形態として、要件を、部分的に操作者が関与して、または全く操作者が関与せずに適用することができる。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態によれば、請求項に従った、金属加工プロセスのための最適動作性能基準を選択するための方法は、
製造順序、製品の幾何形状および予め定義された許容範囲、必要な金属加工動作、必要な工具構成、製造される物品の積み重ねパターン、ならびに/または以前の動作からのプロセスパラメータデータなどといった、金属加工プロセスに関する複数のソースからのプロセスパラメータを取り出すステップと、
製造される物品の決定された許容範囲、プロセス時間、工具可用性、機械可用性、材料可用性、工具寿命、材料除去速度、操作者の作業環境、手持注文、配達時間、必要な加圧加工場所、および/または以前の動作からの性能変数データ、および/または後続の動作のための性能変数データなどといった、金属加工プロセスに関する異なるソースからの性能変数を取り出すステップと、
統合業務ソフト(enterprise resource planning; ERP)システムなどといった、コンピュータシステムに関連する統合されたメモリ中に、プロセスパラメータおよび性能変数を記憶するステップと、
最適動作性能基準を選択するための最適技法を適用するために、プロセスパラメータおよび/または性能変数が機械コントローラまたはコンピューティングシステムにとって利用可能であるようにするステップと
をさらに含む。
【0026】
複数のプロセスパラメータは、典型的には、異なる情報源から取り出され、中央コンピュータ(あるいは、機械コントローラまたはコンピューティングシステム)は、これらの情報源に接続される、または少なくとも接続可能であるように構成することができる。情報源は、非常に異なっていてよく、機械加工システムにおけるエンドポイントと考えることができる。
【0027】
プロセスパラメータは、典型的には、何が製造されるのか、発注サイズは何か、予め定義された製品の幾何形状を達成するのに実施されるべき最適な機械加工動作はどれかに関する予め定義されたパラメータである。さらに、機械加工に最適な工具利用および製造される物品の予め定義される許容範囲がプロセスパラメータである。一方、性能変数は、最適な機械加工動作または最適な工具構成以外が使用される場合は、仮定される結果に関するデータである。性能変数は、いくつかの異なる変数の均衡がとられ、機械加工プロセスが最適化されるとき、意思決定の基礎として使用することができる、以前および/または現在および/または以降に実施される動作からの測定データでもある。最適化は、たとえば製造コスト、製造時間、品質および製造精度、操作者の作業条件、材料の浪費、またはそれらの任意の組合せなどといった、任意の変数に基づいて行うことができる。
【0028】
本発明の利点の例としては、後続の動作間で交換される工具構成を最小化できることである。以前の動作の経験を使用して、特定の幾何形状を達成するのに現在の工具構成が十分であるか、また製造した幾何形状が容認できる許容範囲内となるかを決定することができる。別の例としては、瑕疵を含む可能性がある、工具が製造した物品上の特定の区域と接触することを回避することによって、その精度を高めることができる。
【0029】
本発明の代替実施形態によれば、工具および/または製造した物品は、電子回路、ソフトウェア、センサおよび/またはネットワーク接続性が組み込まれる。この接続性は、「モノのインターネット」(IoT)と呼ぶことが多いが、対象物(object)が、プロセスパラメータおよび/または性能変数などのデータを、コンピュータシステムおよび/またはコンピューティングシステムと交換することを可能にする。特定の機械加工動作について現在利用可能な工具の在庫管理をするとき、ここで、コンピュータシステムは、どの工具を使用でき、たとえばより高い優先順位の別の機械加工動作のために使用されていることに起因して、どの工具が使用できないかについての更新した情報への即時のアクセスを行うことができる。
【0030】
本発明によれば、部品を積み重ねたときのそれらの干渉または不完全な対称性から導き出せる任意の効果を回避するように、曲げ加工動作によって作られた、様々な瑕疵および/または視覚的属性、隆起および/または他の非対称の属性の存在および性質を検出するため、カメラまたは他の画像キャプチャ手段などといった、監視ユニットが設けられる。後続の金属加工プロセスについてのプロセスモデルに適用される要件の組を決定すると、それらの瑕疵または視覚的属性についての詳細情報が、取り出され、記憶され、利用可能にされる。
【0031】
同じ仕様の板金間での、特性の個々のバッチ差に対して、板金製品に加えられる加圧加工場所または加圧加工圧力を適合させることが可能になる。加圧加工場所または必要な加圧加工座標を使用して、工具が到達することが意図される予め定義される場所、すなわち、空間中の予め定義される座標に到達するのに加圧加工圧力が十分かを正確に決定する。プロセスパラメータを取り出して使用することによって、工具、クランプ、およびグリップが製造される物品上のより少ない定義された区域と接触することを回避することによって、精度を高めることもできる。
【0032】
本発明の最も有益な利点は、いわゆるリソースプランニングシステムにその情報が既に
存在し、事実上あらゆる産業の会社、作業場、または企業で利用可能な業務管理システムが使用されて、産業用機械加工システムを管理および制御することである。物流、製造、在庫管理、保守、販売などのためにこの管理システム、すなわち、すべての情報が入手可能で、行われる業務動作のダイナミクスが反映される1つまたは複数のシステムを使用して、生産性に影響を及ぼしその顧客を考慮に入れることに関連性があるすべての態様を、考慮に入れることができる。そのような情報としては、注文可用性、顧客優先順位および価格情報、材料特性に関係するすべての情報以外、バッチ数、要求寸法、形状、許容範囲、位置、および様々な機械加工パラメータがやはり挙げられる。
【0033】
本発明は、このため、製造業界の特定のセグメントにおける生産性を著しく改善するように、現在の機械加工システムの、すべての要件および大きい潜在的な効率の向上とともに、統合業務ソフトシステムに含まれる、または含まれる可能性がある情報をまとめる。動的なモニタおよび制御によって、製造者が製造期間にバッチサイズを減少することを可能にし、近い将来、製造者が要望の中の短期間の変動に迅速に応答することを可能にする。本発明は、要望に応じた固有の物品の製造の産業的な展望へと向かう少なくとも最初のステップを提供する。
【0034】
本発明に関する様々な実施形態および例が、ここで、添付図面を参照して記載されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】シーケンスをモニタ、制御、および調整することによる、産業用機械システムの動作シーケンスの最適化を描くフローチャートである。
【
図2】一実施形態に従った産業用機械システムを図式的に図示する図である。
【
図3】本発明に従った産業用機械システムの別の実施形態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、産業用機械システムを制御するための、部品の幾何形状の識別、プログラムの生成に関する。本発明は、産業用機械システム、特に、パンチプレス、プレス破砕、または曲げ加工機械などの金属加工のための産業用機械システムの構成にも関する。パンチプレスとビーム切断機械の組合せは、やはり使用が考えられる。というのは、そのような組合せは、切断以外に、フライス加工および旋削動作にも好適なためである。さらに、本発明は、自動化装置、および以前の機械加工動作期間に得られたプロセスデータの利用に関し、そのデータは、後続の機械加工動作を計画、構成、実行、および管理するときに入力として使用される。
【0037】
詳細な説明と詳細な説明が参照する図面の両方は、例としてのみ与えられる。異なる図の同じ参照数字は、同じ要素を参照する。
【0038】
板金加工は、一般的に機械加工動作に適用可能な一般用語である。切断は、含まれるタイプの動作のうちの1つであるが、この文脈では、レーザ、ガス切断、プラズマ、ウォータージェット、イオン、空気といった技術による切断、ならびに加圧加工、パンチプレス、およびプレス破砕による切断を含む様々な産業的に適用可能な技術のうちのいずれかによって実行される機械加工動作と考えられるべきである。フライス加工、ドリル加工、および旋削動作は、動作が板金の機械加工に関するということを条件として、板金加工にやはり属する。
【0039】
板金材料のいくつかの特性、以前の物流動作、および機械加工動作は、処理期間の材料の挙動に影響を及ぼす。このため、同じ動作のプログラムを使用して機械が製造した製品は、処理される材料が以前に取り扱われた様態によって影響を受ける。材料のそれらの物理的特性のほとんどは、処理の前に決定し、その後、統合業務ソフトシステムによって取り出して記憶することができる。ここで、処理される材料の物理的特性に関するデータは、機械加工動作を計画および最適化するときに使用するため、利用可能にされる。
【0040】
後続の動作間で変わる材料本意の特性は、材料品質、材料組成、サイズ、形状および製造バッチであり、その各々は、機械加工動作が、曲げ加工、打ち抜き、切断、フライス加工、ドリル加工、旋削などであろうとなかろうと、機械加工動作の期間に達成される結果および精度に明らかに影響を及ぼす。
【0041】
言及した影響力のある特性のうちの1つは、薄板巻取方向であり、薄板巻取方向は、材料の以前の物流動作に依存する変数である。薄板巻取方向は、曲げ加工動作の結果に著しい影響を及ぼす場合がある。別の特性は、部品の回転および板金のミラーリングであり、それによって、異なる方向における同一の部品の回転およびミラーリングは、それ以外は同一の部品にとっての曲げ加工角度に影響を及ぼす場合がある。曲げ加工角度は、2つの後続の曲げ加工動作間で、数度ほど変わる場合がある。ビーム切断および打ち抜きなど、他の機械加工動作について同じことが言え、それによって、巻取方向、部品の回転およびミラーリングが、材料の張力または伸張をもたらす場合がある。上の変数のすべては、材料の以前の物流に依存する。
【0042】
処理も被加工物に影響を及ぼす。パンチプレスによる機械加工の期間に、加圧加工動作は、後続の工具のストロークのパンチ間で変わるマークを発生させる。別の不完全性は、部品を周りの骨組みに固定するため、またはいくつかの部品を互いに固定するため、打ち抜きまたは加圧加工のときに、いわゆるマイクロジョイントを使用することである。
【0043】
ビーム切断を適用するとき、開始点、いわゆる導入部を定義することが必要な場合がある。マイクロジョイントは、部品の幾何形状を取り囲む切断経路を閉じることによって発生する。上述したように、コモンカット技法および自由形状をクラスタ化することによって、接点と異なるタイプのマーク、異なるタイプの導入部および部品と周りの骨格との間または隣接する部品間で発生する異なるタイプのマイクロジョイントを発生させる場合がある。言及したマーク、導入部、マイクロジョイントのすべては、部品の瑕疵または視覚的属性として理解することができる。それらはすべてが元の図面からの逸脱であり、それらの存在および場所が機械加工プロセスの前にわかっていることを条件として、本発明は、それらを完全に回避する、またはそれらからの任意の悪影響を少なくとも緩和する様態を提供する。第1の機械動作が、硬化したまたは不規則な表面などの瑕疵および/または視覚的属性を残した可能性があり、このことによって、適用可能な工具が損傷するのを保護ししたがって工具の寿命を延ばすために、後続の機械動作が瑕疵および/または視覚的属性を回避するのがさらにより重要となる。
【0044】
何ら部品の瑕疵または視覚的属性を含むことが許されないセグメントをマークすることができる。不完全性をマークし、管理し、回避するこの様態は、タグ付けと呼ばれる。回避するべきセグメントをマークすることの結果として、産業用機械加工システムは、これらのセグメント上に、何ら導入部、マイクロジョイント、接点または他の部品の瑕疵または視覚的属性を配置しないことになる。このことによって、価値連鎖のすべてにわたって、部品品質およびプロセスの信頼性の向上が可能になるが、スクラップ、すなわち材料の浪費の量が増える結果にもなる。スクラップは望ましくなく、さもなければ、産業用プロセスの生産性を向上する手段となる、自由形状のコモンカットまたはクラスタ化としての技法の可用性を制限することになる。
【0045】
工具、すなわち、曲げ加工プログラムまたは他の機械加工プログラムを実行するための好適な工具の組を、手動または自動の両方で選択することができる。たとえば、曲げ加工動作を実行する前に、正確な場所に被加工物を配置するための一般的に使用される方法は、必要に応じてアクチュエータの軸を位置決めすることである。曲げ加工動作が実行される前に、バックゲージ、クランプ機構または固定具を使用して、被加工物をより正確に位置決めして支持する。上の機械構成および支持体の配置構成のすべてがデータを生成し、データが収集される。また、機械加工動作に関係する切断ヘッド、ノズル、レンズ、および関係する光学機器は、収集し、フィードバックとして提供し、こうして機械加工動作の最適化に関与することができるデータを生成する。
【0046】
曲げ加工角度および/またはバックスプリングは、たとえば、レーザ方式、光学方式、機械方式によって手動と自動の両方で測定することができる。自動化ユニットは、シーケンスおよび曲げ加工動作を実行できるように、被加工物を操作者が動かすのをサポートするように構成される。機械加工動作が実行された後、処理した部品は、手動および/または自動で積み重ねられる。積み重ねは、そのうちのいくつかが動作効果に関係し、そのうちのいくつかが物流に関係し、そのうちのいくつかが顧客要求に関係するいくつかの指導原理に従って、顧客への配達の前に行われる。
【0047】
本発明は、打ち抜き、打ち抜きレーザの組合せ、フライス加工、ドリル加工、旋削、および/または曲げ加工のためのプログラムなどの機械加工プロセスの生成に関し、板金加工における以前の動作からの情報を考慮に入れる。プログラムは、以前の動作から必要な工具交換を最小化すること、必要な工具の数および工具の移動を最小化することによって、工具構成を最適化する。プログラムは、操作者および/または自動化プロセスが適用可能なサイクル時間を減少するように、要求される動きも最小化する。操作者が被加工物を動かすために必要な努力も考慮され、このことは、最も短い経路が常に最少の努力を必要とするわけではないことを意味する。
図2および
図3を参照して、機械加工プログラムは、その構成に依存して、機械上で直接行うこと、または機械から切り離すことができる。
【0048】
被加工物と機械および適用される工具との間の衝突も考慮される。考えられるのは、機械上でプログラムを実行する前に、手動または自動で、衝突をシミュレーションするのを可能にすることである。
【0049】
図1は、産業用機械システムまたは製造サポートシステムにおける、場合によっては、複数のデータのソースに接続される、または少なくとも接続可能である中央コンピュータ中でリモートでの、動作シーケンスの最適化を描くフローチャートである。システムは、所望のパラメータを入力することと、その後に続く最適な性能基準を変更および提示することによって、設計および構築プロセス(パラメータ設計のオプションを含む)、材料の選択、購入、物流などに関係するビジネス動作についてのサポートを提供するように構成することができる。
【0050】
シーケンスが始まり(S10)、操作者またはクライアントが手動または自動のいずれかで、機械加工または評価される製品に関係する所望のパラメータを入力する。所望の製品パラメータのこの入力は、任意の位置で行うことができる。一例として、いわゆるスマートフォンなどといった、モバイル端末のために開発されたアプリケーション(アプリ)が、所望のパラメータの入力を実現するための工具として使用されることがある。このアプリを、次いで、たとえば、設計者、購入者、物流専門家、製造専門員などといった、価値連鎖に沿ったすべての利害関係者に提供することができる。次のステップで、本発明に従うコンピューティングシステムは、所望のプロセスパラメータに基づいて、結果として得られる動作データを生成する。
【0051】
第1のステップで、プロセスモデルが提供(プリロード)され(S20)、プロセスパラメータは、以前の板金加工動作に関係する。
【0052】
第2のステップで、クランプ機構、グリップ構成、および工具ロックアップ、すなわち機械の中で現在適用されている設定、構成、および工具についての識別が行われる(S30)。
【0053】
次のステップで、後続の製造のための部品の曲げ加工動作など、製造のための次のバッチの完全な機械加工動作を行うために、現在の工具構成を使用することができるかについての分析が行われる(S40)。製造のために利用可能な被加工物およびそのプロセスパラメータが与えられれば、現在の工具構成を改善することができるかについての評価も行われる。
【0054】
プリロードされた情報に基づいて、現在の工具の設定が与えられれば、製造するため容認できる許容範囲内の幾何形状に対する調整が可能であるかを決定するように、製品の幾何形状も分析される。さらに、利用可能な工具が与えられれば、製造するため、依然として容認できる許容範囲内と言及されるような、元のまたは代替の製品の幾何形状が可能であるかを決定するように、交換のために利用可能な工具が分析される。したがって、上の情報およびプロセス最適化に基づいて、現在適用可能な機械加工動作を実行するため、現在の工具構成を保つか、許容範囲内での製品の幾何形状を調整するか、または少なくとも1つの工具を交換するかが決定される(S50、S60、S65)。工具の可用性に基づいて、最適な工具構成について計算も行われる。
【0055】
プリロードされた情報に基づいて、手動または自動のいずれかで、バックゲージ、クランプ機構、および/または固定具を交換および/または調整するかがさらに決定される(S70、S80)。
【0056】
プリロードされた情報に基づいて、機械加工のため、適切には、製造された部品の後続の積み重ねのために、部品を位置決めするグリップ工具を交換および/または調整するかを計算する(S90、S100)。最適なグリップ工具の計算は、操作者に提示される手動調整および/または交換の推奨のための基礎として使用される。あるいは、操作者の能動的な介入がほとんど、または全くなしで、機械が、部分的なまたは完全な自動化調整および/または交換を実行することができる。
【0057】
現在の機械構成がそのプロセスパラメータに従って物品の製造を可能にするかの決定(S40)は、工具構成以外の他の可能化要件の決定も含む。要件の例は、予備部品の欠如、工具の欠如、保守の必要性、材料品質、形状、寸法、および/または製造する部品の材料であってよい。要件に関係するプロセスパラメータおよび性能変数は、複数のデータのソースに接続される、または少なくとも接続可能であり、機械と接続しているコンピュータシステム、コンピューティングシステム、および/または中央コンピュータ中に記憶される。実行されるプロセスに関係する要件は、購入の注文の発行または操作者の推奨に応答することができる。そのような購入の注文を、自動的、すなわち操作者の直接介入なしに、またはそれに応じて注文を実行するべき操作者に提示される推奨として、発行することができる。製造プロセスによって許容範囲限界の範囲外の製品が得られた場合、配達物の品質および精度についての顧客要求を満たすように、直接的な操作者の介入なしに、補充となる製造の注文を発行することができる。
【0058】
機械加工される部品の幾何形状、瑕疵、および/または刻印、マーク、もしくは他の視覚的属性を識別するための、コンピュータビジョンまたは他の画像キャプチャ技術などの任意の知られている識別方法を使用することによって、機械加工動作の前に部品が識別される。
【0059】
バックゲージ、クランプ機構および/または固定具は、以前の動作からの瑕疵および/または視覚的なマークがバックゲージと直接接触するのを回避するように構成される。これによって、曲げ加工動作を実行するとき、被加工物が正しく位置決めされて、その支持体と直接接触することが可能になる。さらに、以前の動作からのフィードバックを備える曲げ加工角度測定システムを使用することによって、以前の動作からのデータに基づいて、正しい曲げ加工角度を生成するように曲げ加工圧力が適合され、それによって、製造されるあらゆる曲げは、容認できる許容範囲内の角度を有することになる。
【0060】
上で記載される必要な属性、すなわち、組成、バッチ、薄板巻取方向-回転、部品の回転、部品のミラーリング、クラスタ化、コモンカット、導入部、マイクロジョイントなどは、連続的にモニタされる。属性のうちのいずれかの変動が検出された結果として、プロセスパラメータ、すなわち曲げ加工場所、曲げ加工圧力、クラウン(crowning)データ、角度測定データ、バックスプリング測定データ、バックゲージの場所、クランプ機構および固定具、工具径差補償、工具状態などが、それに対応して調整されて、確実に、被加工物の正しい場所および機械加工によって容認できる許容範囲を有する部品がもたらされる。ここで、クラウンとは、曲げ加工線に沿った偏差を補償するため使用される技法を意味する。
【0061】
部品は、曲げ加工動作の後に目視検査され、瑕疵、曲げ加工線、隆起などといった視覚的属性、および/または曲げ加工動作によって作られた非対称性と組み合わせた幾何形状を識別することができる。瑕疵または視覚的属性を識別した結果として、部品の積み重ねを行って、部品間の瑕疵を付けること、すなわち積み重ねの対称性に影響を及ぼすことを回避することができる。
【0062】
動作データの生成と並行して、複数のデータのソースに接続される、または少なくとも接続可能である、コンピューティングシステム(または中央コンピュータ)は、機能を定義する少なくとも1つの最適化技法を選択し、機能は、所望のプロセスパラメータを含む。これに、性能変数の範囲をプロセスパラメータの範囲とともに定義するため、所望のプロセスパラメータを基礎として使用することによって、最適化のための機能の生成が続く。
【0063】
生成した最適化のための機能が適用され、それによって、金属加工プロセスを制御するために使用される要件の組を得るために、プロセスパラメータおよび性能変数を含むプロセスモデルについて、最適動作性能基準を決定することができる。
【0064】
最適な動作性能基準が決定されるとすぐに、結果として得られる動作データが最適動作性能基準と比較され、差があり、最適な動作性能基準が操作者または顧客に性能上の利点を提供すると思われる場合、結果が意思決定主体に提示される。この意思決定主体は、人間の操作者であろうと、コンピュータ化した完全または半自動サービスレイヤであろうと、金属加工プロセスについての提示された最適な動作性能基準に基づいて、所望のプロセスパラメータを変更することが可能である。意思決定主体は、スマートフォンのためのアプリケーション(アプリ)、好ましくは、所望のパラメータを入力するステップに関連して言及したものと同じまたは同様のアプリの形で実現することもできる。
【0065】
意思決定主体が提示された情報に含まれるプロセスパラメータを変更すると決定した場合(Yes)、提案された動作シーケンスが、産業用機械システムによって採用される。意思決定システムが提案を受け入れないと決定した場合(No)、シーケンスは、元々生成された動作データが適用されて続くことになる。どちらの決定が行われても、シーケンスは、開始点(S10)またはエンドポイント(S110)に進む。変更したデータは、CAD、CAM、ERP、MES、CRM、調達管理(Sourcing management)などといった異なるアプリケーションでさらに使用することができる。本発明は、機械性能基準の購入および最適化などの領域内でも適用可能であり、基準は、CNC工作機械などの産業用機械を制御するための命令および/または命令のプログラムと定義することができる。
【0066】
図2は、本発明の第1の実施形態を図式的に図示する。システムは、機械1を備え、機械1は、ビーム切断(2次元または3次元)、打ち抜き、パンチプレス、プレス破砕、曲げ加工、接着、縫製、テープおよび繊維の装着、フライス加工、ドリル加工、旋削、経路指定、採取、および配置のための機械、ならびにそのような機械の組合せであってよい。ビーム切断は、レーザ、溶接、摩擦かくはん溶接、超音波溶接、ガスおよびプラズマ切断、ピン止めおよび縫製などの技法を含む。
【0067】
機械は、産業用動作を実施するためのアクチュエータシステム2を備える。アクチュエータシステムは、少なくとも1つのアクチュエータ、すなわち、直線または回転運動のためのモータを備える。典型的には、アクチュエータシステムは、機械の動作部および被加工物の互いに対する2次元または3次元運動を実施するように構成される。
【0068】
アクチュエータシステムは、CNC/NC/PLCユニットならびに/または関係する検知および処理装置の形で、アクチュエータコントローラ3によって制御される。アクチュエータコントローラは、アクチュエータを低いレベルで、すなわち、アクチュエータシステムの作動のための低レベル制御コマンドを送信することによって、制御する。アクチュエータシステムは、たとえば、通信バスを含む、機械内部通信ネットワーク4を介してアクチュエータコントローラに接続される。
【0069】
機械は、機械の様々な処理パラメータを検知するためのセンサシステム10などの他のシステム、およびプロセッサ、ネットワーク、通信リンク、または他のコンピューティングデバイスがデータを送信して意思決定するための他のコントローラ11を任意選択で備える。これらのシステムは、機械コントローラがセンサデータを受け取るためにセンサシステムに接続されるように、機械共通内部通信ネットワーク4および機械と接続しているコンピューティングシステムにも接続することができる。機械コントローラは、センサデータに応答して、機械のアクチュエータシステムをリモートで制御するようにさらに構成することができる。
【0070】
代替構成として、CNC/NC/PLCユニットならびに/または関係する検知および処理装置とともに言及した機械コントローラは、産業用機械に物理的に取り付けること、さもなければ産業用機械の中に含むことができる。産業用機械は、この場合、独立した自蔵式産業用機械システムを形成しており、機械コントローラが、機械の本質的で物理的に接続された部分を形成している。産業用機械システムの2つの代替実施形態の両方は、それらそれぞれの利点を有しており、本発明の目的では、センサシステムおよびアクチュエータコントローラを一体化した構成または離した構成が両方とも等しく適用可能である。
【0071】
機械は、リモートの代替形態に従って構成されるとき、機械と接続しているコンピューティングシステム6との通信を確立するため、アクチュエータコントローラ3に接続される通信クライアント5も備えることができる。通信クライアントは、この場合、機械または機械の任意の下位構成要素が機械コントローラと通信することを可能にする機能ユニットである。機械と接続するコンピューティングシステムは、インターネットに接続されたクラウドベースのコンピューティングシステムであってよい。複数のデータソースと接続する、または接続可能な中心に配置されるコンピュータが代替実施形態である。通信クライアント5および機械と接続するコンピューティングシステムは、たとえば、HTTPS/TSLによって暗号化通信を開始することによって、またはVPN(仮想私設ネットワーク)を確立することによって、インターネット経由で互いに安全な通信7を確立するように構成することができる。あるいは、通信は、ファイアウォールまたはプロキシサーバ8経由で確立することができる。さらなる代替形態として、アクチュエータコントローラ3などの機械の任意の下位構成要素が、それ自体でコンピューティングシステム6と、あるいは複数のデータソースにアクセスを有する上述の中央コンピュータと接続するように構成することができるが、言及したように、離した構成と一体化した構成の両方は、この目的のために等しく適用可能である。
【0072】
機械と接続している上述のコンピューティングシステム6は、機械コントローラ9を備え、機械コントローラは機械とリモートで接続することができ、機械コントローラは、アクチュエータコントローラの動作パラメータを変更することによって、アクチュエータコントローラを介してリモートで機械のアクチュエータシステムを制御するように構成することができる。
【0073】
機械コントローラ9は、リモートのコンピューティングシステム6の中の仮想機械の中でホストされる。その様態では、機械コントローラのリソースを、効率的な様態で利用することができる。機械コントローラは、たとえば、機械プログラムコードを読み取って実行するように構成すること、機械パラメータを制御すること、機械パラメータを手動で制御または調整することを可能にすること、および関連するシステムとのインターフェースとして機能することができる。機械コントローラは、HMI(ヒューマンマシンインターフェース)ユニット12に接続され、HMIユニット12は、インターネット接続13を介して機械コントローラにリモートで接続することができ、別の実施形態では、機械と一体化される。どちらの様態でも、機械の操作者は、たとえば、インターネットに接続されたリモートの位置から機械の動作を監督および制御することができる。HMIユニット12および/またはリモートのコンピューティングシステム6は、たとえば、パスワードまたは他の識別手段を要求することによって、操作者のユーザ識別情報を要求するように構成することができる。
【0074】
本発明の1つの代替実施形態が
図2に図示される。機械1上にローカルに、機械加工動作を実施するためのアクチュエータを備えるアクチュエータシステム2が含まれる。アクチュエータコントローラ3は、アクチュエータシステム2の部分である、またはアクチュエータシステム2に接続される。アクチュエータコントローラは、リモートの機械コントローラから命令を受け取って、閉ループ系中で、ブロック毎に命令を実行するように構成される。したがって、アクチュエータによって実施される各タスクがモニタされ、下位動作が終了した後に、全動作が終了するまで、アクチュエータが次の下位動作を実施することになる。これは、機械のアクチュエータの動作が、アクチュエータコントローラによって低レベルで制御されることを意味する。アクチュエータコントローラは、命令を記憶および実行し、データをログ記録するために、典型的には、メモリおよびプロセッサを含む。アクチュエータシステムは、従来型の機械コントローラまたはHMIを含まない。機械のアクチュエータシステムは、したがって、リモートの機械コントローラからの命令を受け取ることに依存する。作業命令の完全な組またはその定義された部分集合を一度受け取って検証したら、どうであれ、機械コントローラからのさらなる命令なしに実行することができる。作業命令の部分集合は、完全な機械動作の一部であってよいが、少なくとも、アクチュエータシステムが完全な動作の一部を実施するのに十分な情報を含む。動作は、好ましくは、機械内の閉ループ系でステップ毎に実施される。機械は、緊急停止ボタンおよびオン/オフボタンなどの簡単な機能だけを備えている。それ以外は、機械は、動作するのにリモートの機械コントローラからのコマンドに依存する。
【0075】
機械コントローラは、典型的にはクラウド中に、機械から物理的に離して配置される。進行中のプロセスのモニタ、命令のロード、命令の変更、および新しい命令の作成は、リモートの機械コントローラでのみ行うことができる。したがって、本発明の機械コントローラは従来型の機械コントローラに対応するが、ただ、本発明の機械コントローラは、機械の物理的な部分ではなく、機械にリモートで接続されている。機械コントローラおよび相互接続されるHMIによってモニタおよび制御される命令は、切断速度、切断深度、圧力などといった動作パラメータを含む。
【0076】
機械コントローラは、アクチュエータコントローラの閉ループ系の部分ではない。したがって、新しい命令が機械コントローラから送信されない限り、機械のアクチュエータシステムは、動作を終わらせるまたは動作を変える特定の命令が機械コントローラから受信されるのでなければ、さらなる命令を待つことなく、完全に受信した動作命令を終わらせることになる。典型的であるが、命令は、完全な動作についてだけ提供され、したがって新しい命令は、進行中の動作でなく、後続の動作でだけ価値があることになる。これは、安全装置として設定することができるが、どのタイプの動作上のセキュリティを実装するべきであるかを決定するのは操作者次第である。
【0077】
機械コントローラは、複数の命令、命令1つずつ、または複数の命令をバッチシステムで送信するように構成される。情報を送信する任意の従来の方式を利用することができる。機械コントローラは、情報を受け取って、前記情報に基づいて意思決定をするようにさらに構成される。たとえば、機械コントローラは、フィードバックデータに作用して、意思決定を行う、かつ/または前記フィードバックに基づいて新しい命令を送信することができる。
【0078】
本発明のシステムは、たとえばインターネット接続におけるレイテンシに起因する劣悪な通信の結果としてコマンドが脱落する危険なしに、産業用機械のリモート制御の可能性を提供する。これは、たとえば、動作がアクチュエータコントローラで全部受信されて承認されるために、確認される。
【0079】
監視を容易にするために、機械は、機械が動作をモニタするため、カメラ、ビデオカメラ、または他の画像キャプチャ手段などといった監視ユニット14を備える。監視ユニットは、通信クライアント5を介してリモートのコンピューティングシステム6に接続され、リモートのコンピューティングシステムに動作情報を提供するように構成される。動作情報は、処理され、HMIユニット12に送信される。
【0080】
機械コントローラは、CAD/CAMシステムから、またはたとえば、HMIユニット12を介して、操作者から手動入力によって、機械プログラムを受け取るように構成される。
【0081】
一実施形態では、リモートのコンピューティングシステムは、機械の動作パラメータをモニタして、動作パラメータが閾値を超えるときに、機械コントローラによって機械のアクチュエータシステムのリモートコントロールを無効にするように構成される。そのような動作パラメータは、機械によって実施される動作時間、動作サイクルの数などであってよい。こうして、機械コントローラへのアクセスを制限することによって、機械の動作コストおよび使用を制御して制限することができる。
【0082】
リモートコンピューティングシステムは、機械および/または製造データを収集して、データ分析および/または最適化のために、データを別のシステム(図示せず)に転送するように構成される。機械データを使用して、たとえば、サプライチェーン(購入、製造、流通)、デマンドチェーン(マーケティング、販売、サービス)、機械保守、または他のビッグデータ用途について最適化することができる。
【0083】
監視ユニットは、製造した物品、およびそれらの許容範囲を含む、それらの様々な特性をモニタするためにも構成することができる。コンピュータビジョンは、幾何形状に関係する特性のこうした識別のため、当業界で使用される別の用語である。許容範囲は、堅さ、強靱性などの材料特性、サイズ、形状、半径、角度、および寸法などの製品の幾何形状、ならびに、隆起、曲げ加工線、圧力変形および/または他の視覚的属性などの製造上の瑕疵の意味がある。監視ユニットは、通信クライアント5を介して機械と接続しているコンピューティングシステム6に、さらに接続して、コンピューティングシステムに動作情報を提供するように構成することができる。
【0084】
一実施形態では、機械と接続しているコンピューティングシステムは、機械の動作パラメータをモニタして、動作パラメータが閾値を超えるときに、機械コントローラによって機械のアクチュエータシステムのリモートコントロールを無効にするように構成される。そのような動作パラメータは、機械によって実施される動作時間、動作サイクルの数などであってよい。
【0085】
コンピューティングシステムは、機械および/または製造データを収集して、データ分析および/または最適化のために、データを別のシステムに転送するように構成される。このシステムは、任意の種類の生産実行システム(MES)の統合業務ソフトシステム(ERP)であってよい。機械データを使用して、たとえば、サプライチェーン、すなわち購入、製造、および流通、デマンドチェーン、すなわちマーケティング、販売、およびサービス、ならびに機械またはその一体化したもしくは離れた部品の保守を最適化することができる。機械データは、データをマージするように設計されたビッグデータ用途などといった他のシステムで利用可能にして、非常に大量の情報に基づいた結果を引き出すこともできる。
【0086】
図3は、本発明に従った産業用機械システムの代替実施形態を表す。産業用機械システムは、機械がアクチュエータコントローラを備えないという点で、
図2に関係して記載されているものと異なる。アクチュエータコントローラ3'は、機械と物理的に切り離され、機械と接続しているコンピューティングシステム6の中に備えられる。コンピューティングシステムは、暗号化することができる、たとえばインターネット経由で、1つまたは複数のデータ線7を介して機械に接続される。機械1は、機械と、機械と接続しているコンピューティングシステム6との間で通信を確立するため、少なくとも1つの通信クライアント15を備える。この通信クライアント15は、機械のアクチュエータシステム2に接続され、したがって、アクチュエータクライアントと呼ばれる。クライアントは、アクチュエータコントローラからアクチュエータシステムへの低レベル通信を送受信するように構成される。同様に、機械は、センサシステム10からの任意のセンサデータを通信するためのセンサ通信クライアント16、および機械の中の他のコントローラ11と通信するための任意のさらなるコントローラクライアント17を任意選択で備えることができる。
図2に関係して示されているものと同様に、機械と、機械と接続しているコンピューティングシステムとの間の通信は、ファイアウォールまたはプロキシサーバ経由で確立することができる。
【0087】
以下では、機能および動作原理をさらに明瞭にすることを意図した、本発明の例が続くことになる。本発明の背景と関係して説明したように、従来技術に従う製造計画の伝統的なプロセスは、それらの性質に対して逐次的である。これは、シーケンスを制御する情報が、ローカルのデータベースから収集され、製造計画が、ローカルに記憶された情報から出てくる命令に応答して行われることを意味する。この例として、(1)注文を取り出す、(2)少なくとも1つの制御アルゴリズムを選択または作成する、(3)ある生の材料の品質の一部を作る、および(4)曲げ加工、フライス加工、旋削などによって、ある構成要素を形成する、(5)注文仕様に従って、顧客に構成要素を配達する、が挙げられる。言及したように、このプロセスは、逐次的であり、プロセスを制御するデータはローカルのデータベースから収集される。
【0088】
本発明は、前に記載したように、幾何形状図面を含む注文のバッチ、材料のバッチ、工具および機械の既存の構成のバッチなどといった情報を、言及した中央コンピュータを介して収集するため様々なソースを利用する。
【0089】
この仕様に従った製造プロセスに関係する情報は、一般的に、異なるソース、たとえば、ERP/MES、機械、IoT情報、CAD/CAM、および1つまたは複数の監視ユニットからもたらされる。情報は、中間手段として構成され、様々なエンドポイントの間に位置する中央コンピュータによって収集される。エンドポイントは、典型的には、製造プロセスに影響を及ぼす可能性がある、または可能性がない情報のソースであり、たとえば、以前に言及したERP/MES、機械、IoT情報、CAD/CAM、および監視ユニットからなる。
【0090】
中央コンピュータは、汎用コンピュータ、または機械の制御として機能するように構成されるコンピュータのいずれかであってよい。中央コンピュータは、最適化される情報を取得するために、データを備える少なくとも2つのエンドポイントに常に接続されることになる、または接続可能である。それは、複数の変数について、非逐次的な最適化プロセスを実行および完全に達成するための、最小限の要件であると信じられる。最適化のいくつかの方法は、組合せ理論、力学的変動、多変量解析などに基づいて使用することができる。方法のいずれかは、非逐次的で非直線的な最適化を可能にし、多数の動的変数を有する複合システムに使用するのに好適である。
【0091】
本発明は、伝統的なプロセスと比較して、逐次的でも直線的でもない数値処理または方法である、非逐次的最適化を利用する。製造プロセス中のステップのいくつかは、最適化を受ける場合がある。一例としては、製造される部品の幾何形状であり、幾何形状は、工具交換を減らすために変更される場合がある。別の例は、ジョブをスケジュールすることであり、ジョブのスケジュールは、情報がたとえば機械、監視ユニットから、および/またはIoT情報源から取り出されることを条件として、セットアップ時間を減らすために変えられる場合がある。第3および第4の例は、ジョブをスケジュールすることであり、ジョブのスケジュールは、情報が少なくとも2つのエンドポイントから集められ、情報が、たとえば監視ユニットを介した視覚的属性または工具の組合せの変更またはその表面上の部品の回転など、以前のプロセスステップから読み取られて再利用できることを条件として、材料交換を減らすために調整することができる。他の考えられる例としては、バックゲージの位置決め、圧力、加圧加工場所などといった、工作機械を再構成すること、または製造の途絶を減らすための工具、材料、保守、予備部品の順番が挙げられる。
【0092】
このタイプの最適化を行うための必要条件のうちの1つは、たとえば、ERP/MES、機械およびその構成、IoT情報、CAD/CAM、監視ユニットといった、多種多様な複数のソースからのデータの取出しを可能にすることである。情報は、次いで、管理システムにおける更新など手の届かない環境に依存するため制御可能でない動的な影響を含む、それらの現在の状況に関係するいくつかの別個のプロセスステップの最適化を可能にするために、中央コンピュータに収集されて、中央コンピュータから利用可能にされる。
【0093】
本発明は、ERP/MES、機械およびその構成、IoT情報、CAD/CAM(設計および構成に関する両方)、ならびに少なくとも1つの監視ユニットなどといった、様々なエンドポイント(データソース)における、いわゆる改修容易性およびカスタマイズ容易性の制御を導入することもできる。たとえば、本発明によって、材料および工具交換、必須の許容範囲間隔ならびに関連する強度および剛率の範囲を潜在的に減らすための手段として、材料仕様を変えることが可能である。本発明の別の実施形態によれば、工具交換を最小化するが、依然として図面からの、または代替として、その座標上に、完全に回避するために位置決めされるバックゲージであってよい視覚的なマークが存在する許容範囲を維持するため、製品の幾何形状/形状を変えることも可能である。配達時間を守りながら材料/工具の交換を減らすために、ジョブをスケジュールすることを可能にすることもできる。これによって、配達時間が製造した物品の価格に影響を及ぼす変数となることを場合によって可能にするよう、顧客との意思疎通が可能になる。それらの選択肢および新しい機会を実現するために、2つ以上のエンドポイントが、たとえば、工作機械を介して、IoT情報およびERP/MES中のデータベースを介して、非逐次的な様式で制御し、注文、工具、材料交換をスケジュールし、製品の幾何形状を変えることを可能にしなければならない。たとえば、工具交換の減少または最小化をもたらすことができる幾何形状への修正は、製造コストと市場価格との間の比に影響を及ぼす変数として、ERP/MES中で利用可能な場合がある、または顧客または設計者で利用可能でさえある図面中の、許容範囲間隔の任意の形式に対して検査することができる。
【0094】
上記に基づいて明らかとなったように、本発明は、ローカルのデータベースから情報を取り出すように構成される製造スケジュール作成の、MESシステムによる従来技術のプロセス計画と区別される。それらのシステムは、操作者が注文および配達についてデータをキー入力し、その後に逐次的なスケジュールが続く機能性に基づく場合さえある。本発明は、実際の、実時間データにさえ基づいた全く異なるレベルの最適化に基づいており、そのデータを中央コンピュータが取り出し、いくつかの場合では、コンピュータが情報を共有することもできる。中央コンピュータは、ERP、MES、CAD、CAM、機械、IoT情報源、少なくとも1つのCRM管理システム、および/または監視ユニットなどといった、2つ以上のエンドポイントに接続される、または接続可能である。それに加えて、中央コンピュータは、材料、工具、予備部品、保守、設計、部品の仕様または顧客、構築、および/または製品などといった、製造に影響を及ぼす複数の変数に関係する情報の他の提供者に接続される、または接続可能にすることもできる。
【符号の説明】
【0095】
1 機械
2 アクチュエータシステム
3 アクチュエータコントローラ
3' アクチュエータコントローラ
4 機械内部通信ネットワーク
5 通信クライアント
6 コンピューティングシステム
7 通信
8 ファイアウォール/プロキシ接続
9 機械コントローラ
10 センサシステム
11 他のコントローラ
12 HMI(ヒューマンマシンインターフェース)ユニット
13 インターネット接続
14 監視ユニット
15 アクチュエータクライアント、通信クライアント
16 センサクライアント、センサ通信クライアント
17 コントローラクライアント