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特許7113759ポリエステルの加水分解安定化のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ポリエステルの加水分解安定化のための組成物
(51)【国際特許分類】
   C08K 5/12 20060101AFI20220729BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20220729BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20220729BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C08K5/12
C08L67/02
C08L67/04
C08J3/22 CFD
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018557133
(86)(22)【出願日】2017-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2017059848
(87)【国際公開番号】W WO2017190993
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】16168305.7
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517092075
【氏名又は名称】アヴィエント スウィッツァランド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルティヒ・カレン-アレッサ
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-189863(JP,A)
【文献】特開2014-105337(JP,A)
【文献】特開昭62-218418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00-67/08
C08G 63/00-63/91
C08K 3/00-13/08
C08J 3/00-3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの式(1)の化合物のポリエステル材料中の加水分解安定剤としての使用であって、
【化1】
(ここで、RおよびRは、同一または異なっており、かつ、C~C10-アルキルである)
ポリエステル材料中のポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ジベンゾイルポリエチレンテレフタレート、ジベンゾイルポリブチレンテレフタレート、ジベンゾイルポリエチレンナフタレートまたはそれらの混合物である、前記使用。
【請求項2】
少なくとも1つの式(1)の化合物のポリエステル材料中の加水分解安定剤としての使用であって、
【化2】
(ここで、RおよびRは、同一または異なっており、かつ、C~C10-アルキルである)
ポリエステル材料中のポリエステルが、ポリヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシブチラート-バレレート、およびポリ(ε-カプロラクトン)からなる群から選択される脂肪族ポリエステルである、前記使用。
【請求項3】
式(1)の化合物がテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジペンチル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジヘプチル、テレフタル酸ジオクチル、テレフタル酸ジノニルまたはテレフタル酸ジデシルである請求項1~のいずれか一つに記載の使用。
【請求項4】
式(1)の化合物がテレフタル酸ジメチルである、請求項1~のいずれか一つに記載の使用。
【請求項5】
式(1)の化合物の割合が、安定化されたポリエステル材料の質量に基づいて0.1~20.0質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
式(1)の化合物の割合が、安定化されたポリエステル材料の質量に基づいて1.0~10.0質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
式(1)の化合物の割合が、安定化されたポリエステル材料の質量に基づいて1.5~5.0質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
式(1)の化合物が、ラジカル捕捉剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤、顔料、染料、酸化防止剤、抗菌剤、中和剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、蛍光増白剤、重金属不活性化剤、疎水剤、過酸化物、水捕捉剤、酸捕捉剤、ハイドロタルサイト、エラストマー、耐衝撃性改良剤、レーザーマーキング添加剤、加工助剤、およびそれらの混合物から成る群から選択されるさらなる添加剤と組み合わせて使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
式(1)の化合物がUV吸収剤と組み合わせて使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
式(1)の化合物がマスターバッチの形態で使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
ポリエステル材料がフィルムまたはシートの形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐加水分解性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは周知である。しかしながら、安定化されていないポリエステルフィルムの欠点は、特に特定のポリエステルのガラス転移温度を超える温度での加水分解に対する感受性である。加水分解に対する感受性は、水分条件下で加水分解的に分解するポリエステルの特性であり、これは、例えばIV値の低下で見ることができる。これは、例えば、フィルムコンデンサ、ケーブル被覆、リボンケーブル、モーター保護フィルム、電池フィルム、床材フィルム、窓フィルム、光起電性バックシートなど特に高温ストレスを伴う用途だけでなく、グレージングやアウトドア用途などの長期的な用途においても、ポリエステルフィルムの使用のための制限因子となる。
【0003】
特に顕著な加水分解に対する感受性は、脂肪族ポリエステルにおいても、PBTおよびPETのような芳香族ポリエステルでも観察される。PETの加水分解傾向が用途には大きすぎる場合、加水分解に安定なPENまたはポリエーテルまたはポリイミドのような他のポリマーに依存せざるを得ない。しかしながら、それらはPETよりもかなり高価であり、したがって経済的理由から不利である。
【0004】
従って、加水分解安定剤を組み込むことによってポリエステルフィルムの加水分解安定性を改良することが提案されている。
【0005】
カルボジイミドを用いて得られる耐加水分解性ポリエステル原料は公知である(US5,885,709A、EP0838500A、CH621135A)。しかしながら、このようなポリマーから製造されたフィルムは、製造時およびその後の使用の両方において、粘膜に対して刺激性のあるイソシアネートを脱ガスするか、または他の有害な副産物および分解生成物を遊離させる傾向がある。エポキシ基をベースとする加水分解安定剤もまた加水分解安定化をもたらし、例えばEP0292251AまたはUS3,657,191Aに記載されている。しかしながら、これらの化合物は、エピクロロヒドリンによるオキシラン環の生成に基づくが、低分子量の毒性化合物を切断する傾向を示し、カルボジイミドの使用に関連する同様の問題が生じる。さらに、それらのポリエステルマトリックスへの取り込みは不十分であり、長い反応時間および高い曇りのある配向ポリエステルフィルムをもたらす。
【0006】
さらに、カルボジイミドおよびEP0292251Aに記載されているもののような他の物質のような公知の加水分解安定剤は、押出中にポリマー中の分子量(粘度増加)を時に大きく増加させ、押出プロセスは不安定で制御が難しいという不利益を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US5,885,709A
【文献】EP0838500A
【文献】CH621135A
【文献】EP0292251A
【文献】US3657191A
【文献】EP0292251A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、先行技術の欠点を回避して利用可能な耐加水分解性ポリエステル原料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、驚くべきことにテレフタル酸エステルをベースとする加水分解安定剤を含有するポリエステル物品、好ましくはフィルムによって達成される。
【0010】
本発明は、少なくとも1つの式(1)の化合物の
【化1】
(ここで
およびRは、同一または異なっており、C~C10-アルキル、好ましくはC~C-アルキル、より好ましくはC~C-アルキル、最も好ましくはC~C-アルキルである)
ポリエステル材料中の加水分解安定剤としての使用に関する。
【0011】
式(1)の化合物の例としては、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジペンチル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジヘプチル、テレフタル酸ジオクチル、テレフタル酸ジノニルまたはテレフタル酸ジデシルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい鎖延長剤は、式(2)のテレフタル酸ジメチル(DMT)である。
【化2】
【0013】
この分子は、p-キシレン上のメチル基の酸化およびメチルエステル、テレフタル酸ジメチルを与えるメタノールとの反応によって製造することができる。
【0014】
加水分解安定剤の割合は、ポリエステルの質量を基準として、好ましくは0.1~20.0質量%、より好ましくは1.0~10.0質量%、特に好ましくは1.5~5質量%の範囲である。
【0015】
マスターバッチに配合する場合、加水分解安定剤の割合は、マスターバッチの総質量に基づいて、一般に0.1~50.0質量%、好ましくは1.0~20.0質量%である。
【0016】
適切なポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ジベンゾイルポリエチレンテレフタレート(PETBB)、ジベンゾイルポリブチレンテレフタレート(PBTBB)、ジベンゾイルポリエチレンナフタレート(PENBB)またはそれらの混合物である。PET、PBT、PENおよびPTT、ならびにそれらの混合物およびコポリエステルが好ましい。
【0017】
また、適切なポリエステルは、脂肪族ポリエステルであり、例えば、ポリヒドロキシブチラート(PHB)および、ポリヒドロキシバレレート(PHV)とそのコポリマー、ポリヒドロキシブチラート-バレレート(PHBV)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、SP3/6,4/6SP(1,3-プロパンジオール/アジペートまたは1,4-ブタンジオール/アジペートから成る)、ポリカプロラクタム、または一般にアジピン酸ポリエステルおよび他の脂肪族カルボン酸のエステルである。
【0018】
本発明に用いられるポリエステルは、表面形状や光学特性を調整するために必要な無機粒子または有機粒子をさらに含んでいてもよく、以下、ポリエステル組成物という。粒子の量は、その使用およびそれらの粒子サイズに依存する。後者は一般に0.01~30.0、好ましくは0.1~5.0、特に0.3~3.0ミクロンの範囲である。
【0019】
粗さを得るのに適した化合物は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、リン灰石、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリスチレン、架橋PMMA、ゼオライト、およびケイ酸アルミニウムのような他のケイ酸塩を含むが、これらに限定されない。これらの化合物は、一般に0.05~5質量%、好ましくは0.1~0.6質量%(ポリエステル組成物の全質量に基づいて)の量で使用される。
【0020】
ポリエステル組成物は、他の成分をさらに含んでもよく、例えば、難燃剤および/またはラジカル捕捉剤および/または他のポリマー、例えばポリエーテルイミド、顔料および染料、安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、熱安定剤、光安定剤、中和物、静電防止剤、ブロッキング防止剤、蛍光増白剤、重金属不活性化剤、疎水性物質、過酸化物、水捕捉剤、酸捕捉剤、ハイドロタルサイト、エラストマー、耐衝撃性改良剤、レーザーマーキング添加剤、加工助剤、およびそれらの混合物である。
【0021】
式(1)の加水分解安定剤は、好ましくはマスターバッチ技術によって添加される。この目的のために、加水分解安定剤をまずキャリア材料中に分散させる。適切なキャリア材料は、ポリエステルそれ自体、例えば、ポリエチレンテレフタレート、またはそれぞれのポリエステルと相溶性のある他のポリマーである。キャリア樹脂に依存して、マスターバッチは固体でも液体でもよく、固体が好ましい。マスターバッチをポリエステル材料に添加した後、マスターバッチの成分は押出中に溶融し、ポリエステル中に溶解または微細に分散される。加水分解安定剤がキャリア中に物理的に均一に分散されているので、マスターバッチがポリエステルと混合されている間に、局部的に高濃度の加水分解安定剤の可能性が最小限に抑えられる。さらに、成形装置に導入されると、当該レットダウン(解かれた)ポリマー(let down polymer)内での加水分解安定剤の早すぎる反応が、濃縮物を溶融するのに必要な時間を増加させることによって防止される。この遅延された反応時間は、加水分解安定剤がポリマー全体に完全に分散されることを可能にする。
【0022】
式(1)の加水分解安定剤は、以下のように安定化されるべきポリエステル材料中に組み込むことができる:
【0023】
製造されるマスターバッチのキャリア材料および加水分解安定剤は、押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機に供給され、溶融され、混合され、次いで孔の開いたダイを通して押出され、急冷され、顆粒化される。ポリマーが最初に押出機中で溶融され、脱気後に加水分解安定剤が溶融物に直接計量供給される方法が好ましい。
【0024】
加水分解安定化ポリエステル材料は、有利には、ポリマー物品、例えば、シート、フィルム、容器または繊維に加工される。シートおよびフィルムが特に好ましい。
【0025】
有利には、加水分解安定化ポリエステル物品、例えば、フィルムは、ラジカル補足剤、光安定剤または熱安定剤のようなさらなる通常のポリマー安定剤を、有利には、物品の総質量に基づいて50~15,000ppm、好ましくは100~5,000ppm、より好ましくは300~1,000ppmの量で含有する。添加されるポリマー安定剤は、第1級安定剤、例えば、立体障害フェノールまたは第2級芳香族アミンまたは第2級安定剤、例えば、チオエーテルおよびホスホナイト、ならびにジブチル-ジチオカルバメート亜鉛または第1級および第2級の混合物安定剤から成る群から選択されることができる。フェノール系安定剤が好ましい。フェノール系安定剤の中でも、立体障害フェノール、チオビスフェノール、アルキリデンビスフェノール、アルキルフェノール、ヒドロキシベンジル化合物、アシルアミノおよびヒドロキシフェニルプロピオン酸塩が特に好ましい。
【0026】
また、ベンゾトリアゾールをベースとするUV吸収剤、例えば、Tinuvin 1577、Tinuvin 1600、Tinuvin 360、Tinuvin 234、Cyasob 3638、Cyasorb 1164などは、屋外用途のフィルムに有利に使用される。これらの添加剤は、フィルムの総質量を基準にして、0.1~20.0質量%、好ましくは1.0~10.0質量%、特に好ましくは1.5~5質量%の範囲で添加することができる。
【0027】
マスターバッチの形態の加水分解安定剤の添加以外に、ポリエステル物品、例えば、フィルムの製造中に加水分解安定剤を直接加えることができる。二軸スクリュー押出機を使用し、加水分解安定剤をそれぞれの押出機の溶融物に直接計量供給すると、特に良好な結果が得られる。
【0028】
フィルムは、単層および多層フィルムを製造するための従来の押出法によって調製することができる。加水分解安定剤は全ての層に存在することが好ましいが、すべての層において必ずしも加水分解安定剤で修飾されていない態様も可能である。
【0029】
一般に、それぞれの溶融物は、平らなフィルムのダイを通して押出され、凝固のために得られたフィルムが1つ以上のローラー(冷却ロール)上で、実質的に非晶質のプレフィルムとして回収され、そして急冷され、次いでフィルムは再加熱され、配向二軸延伸フィルムをヒートセットする。二軸延伸は、機械方向(=MD)に、次いで横方向に、機械方向に垂直(=TD)に実施される。これは分子鎖の配向をもたらす。
【0030】
配向が行われる温度は、比較的広い範囲にわたって変化し得、フィルムの所望の特性に依存する。第1の縦延伸は、横延伸と同時に(同時延伸)任意に行うことができる。
【0031】
このようにして製造されたフィルムは、室温~210℃までの温度で、未修飾のポリエステルフィルムよりもはるかに低い加水分解傾向を有する。安定化は、フィルム厚および温度にほとんど依存しない。
【0032】
良好な長期の加水分解にもかかわらず、フィルム製造中に押出機に望ましくない粘度上昇が起こらず、ゲルまたはスペック(少量の)レベルの増加が観察されなかったことは特に驚くべきことであった。
【0033】
式(1)の加水分解安定剤を用いて安定化されたフィルムは、長寿命(1年以上)を有するポリエステルフィルムを含む製品の製造に理想的であり、高温(80℃以上)と高湿度中にある用途に使用される。
【0034】
式(1)の安定剤は、フィルムコンデンサ(好ましくは0.3~12ミクロンの厚さ範囲)の製造に特に有用である。コンデンサーの製造のためには、フィルムが200℃で4%未満の縦収縮および1%未満の横収縮を有することが有利であることが判明した。これはSMDコンデンサーの製造に特に適しているからである。
【0035】
別の用途は、自動車のリボンケーブル用途である。
【0036】
以下の実施形態において、個々の特性の測定は、承認された標準的方法に従う。パーセンテージは、他に指示がない限り、質量パーセントである。
【0037】
測定方法
圧力クッカー試験PCT
この種の試験は、高速トラックとしての(短期間の)加水分解抵抗性に関する情報を提供する。オートクレーブ前にサンプルを切断し、120℃および2バール(abs)で0,40,50時間保存した。各試験について、5つの試験サンプルを測定した。
【0038】
湿気ヒート試験DHT
この種の試験は、長期間のプロセスとしての加水分解抵抗性に関する情報を提供する。オートクレーブ処理の前に試料を切断し、各500時間の試験結果を測定した後、85℃および常圧で5000時間まで保存した。
【0039】
引張り試験
引張り試験は、ISO527-1/2に準拠した100mmのアルミニウムクランプで処理して、破断点伸びおよび引張強度を得た。結果は、5回の測定値の平均値である。
【0040】
●試験スピード:
-ε<0.25%:1mm/分
-ε>0.25%:100mm/分
●破断保持時の伸びを測定して、x時間のオートクレーブ後のフィルムの脆化の兆候を示す:
【0041】
【数1】
【0042】
固有粘度(I.V.)
固有粘度はポリマーの分子量の固有の関数であるので、固有粘度(I.V.)の測定を用いてポリマーの分子量を測定した。高圧窒素ガスを使用して較正されたダイを通して押し出された溶融状態において、溶融粘度測定のため、例えば、PETのために、Davenport粘度計を用いてI.V.を検出した。
【0043】
標準粘度(S.V.)
標準粘度S.V.はDIN 53726に基づく。25℃のウベローデ(Ubbelohde)粘度計でジクロロ酢酸(DCA)中の1%溶液の相対粘度ηrelを測定することによる。S.V.値は次のように定義される:
S.V.=(ηrel-1)・1000S.V.=(ηrel-.1)×1000
【実施例
【0044】

以下の材料が使用される:
PET1:(XPURE 4004、Invista、I.V.0.63)
PET2:regranulat RT4027(Invista/Erema)
PET3:RAMAPET R 180 GR BB(Indorama Plastics)
PC(ポリカーボネート):(Trirex 3022PJ(01)Entec)
加水分解安定剤:DMT(ジメチルテレフタレート)
UV吸収剤:2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノール(TINUVIN 1577 ED、BASF)
【0045】
二軸押出機Leistritz MASS technology(27mm/40D)を使用して2つのマスターバッチ(MB)を製造した。MBHSは加水分解安定化のためにPC上に10%のDMTを含有する。MBUVは、PET3上に15%のUV吸収剤Tinuvin 1577を含有する。
【0046】
例1
ABAの構造を有する3層フィルムを製造した。コア層Bの組成は、53%PET1、15%PET2、2%MBHS、30%MBUVからなる。外側層Aは、67%PET1、3%MBHS、30%MBUVからなる。使用したPETを100~170℃で予備乾燥した。メインの押出機には~10mbarの真空を装備した。共押出機には~20mbarの真空を装備した。
【0047】
異なるゾーンの押出温度を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
溶融ポリマーは、ドローローラのノズルから排出された。フィルムを機械(縦)方向に3.0倍に延伸し、横延伸に3.4倍に延伸した。続いて、フィルムを225℃で加熱し、220~180℃の温度で横方向に3%緩和した。最終的なフィルムの厚さは50ミクロンであった。
【0050】
実施例2(比較例)
ABAの構造を有する3層フィルムを製造した。コア層Bの組成は、45%PET1、25%PET2、30%MBUVからなる。外層Aは70%のPET1、30%のMBUVからなる。使用したPETを100~170℃で予備乾燥した。メインの押出機には~10mbarの真空を装備した。共押出機には~20mbarの真空を装備した。
【0051】
異なるゾーンの押出温度を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
溶融ポリマーは、ドローローラのノズルから排出された。フィルムを機械(縦)方向に3.0倍に延伸し、横延伸に3.4倍に延伸した。続いて、フィルムを225℃でヒートセットし、220~180℃の温度で横方向に3%緩和した。最終フィルムの厚さは50ミクロンであった。
【0054】
試験結果
【0055】
【表3】
【0056】
耐加水分解添加剤を含有する実施例1の試験結果は、ポリマーの加水分解をシミュレートする。圧力クッカー試験において、フィルムは、加水分解防止添加剤を含まないフィルムよりもかなり長い期間安定を保持した。湿気ヒート試験においても、加水分解防止添加剤を含む材料は、含まれていないフィルムよりもかなり長い耐性を示した。また、溶融粘度および標準粘度の測定は、より安定化された材料が、加水分解防止添加剤を備えた材料であることを示す。実施例1の全てのフィルムは高いUV安定性を示す。