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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20220729BHJP
   B65D 51/16 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B65D51/16 BRP
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019016265
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020121797
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-30796(JP,A)
【文献】特開2017-30794(JP,A)
【文献】実開昭59-22368(JP,U)
【文献】実公昭37-32273(JP,Y1)
【文献】特開2019-6493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 51/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容されると共に前記内容物の減少に伴って減容変形する内容器、及び、前記内容器が内装される外容器を備える容器本体と、前記容器本体の口部に装着され、かつ前記内容物の吐出孔が形成された吐出キャップと、を備え、
前記外容器には、前記内容器との間に外気を吸入する吸気孔が形成されている二重容器であって、
前記吐出キャップが、
外部と前記吸気孔とを連通可能な外気導入孔が形成されたキャップ本体と、
前記吐出孔と前記容器本体内との連通、遮断を切り替える吐出弁と、
前記キャップ本体の内側に配設され、前記外気導入孔を開閉する空気弁と、
を備え、
前記キャップ本体が、
前記空気弁が当接したときに、前記外気導入孔を通した外部から前記吸気孔側への空気の流通を許容する一方で前記外気導入孔を通した前記吸気孔側から外部への空気の流通を阻止する第1弁座部と、
前記空気弁が当接したときに、前記外気導入孔を通した外部から前記吸気孔側への空気の流通を阻止する一方で前記外気導入孔を通した前記吸気孔側から外部への空気の流通を許容する第2弁座部と、
を有し、
前記キャップ本体が、前記空気弁が前記第1弁座部及び前記第2弁座部のいずれか一方と当接するように切り替えるように前記空気弁に対して相対的に移動可能に配設されていることを特徴とする二重容器。
【請求項2】
前記吐出キャップが、前記キャップ本体に着脱自在に装着され、前記吐出孔及び前記外気導入孔を開閉する蓋部材を備え、
前記蓋部材と前記キャップ本体との間には、空気流入路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外容器を減容変形させた状態で廃棄できる二重容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内容物が収容されると共に内容物の減少に伴って減容変形する内容器、及び、内容器が内装される外容器を備える容器本体と、容器本体の口部に装着され、かつ内容物の吐出孔が形成された吐出キャップと、を備え、吐出キャップが、吐出孔と容器本体内との連通、遮断を切り替える吐出弁を備える二重容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような二重容器では、外容器を径方向の内側に向けて押圧すると、吐出弁が開かれて吐出孔と容器本体内とが連通し、内容物が吐出孔から吐出される。そして、内容物の吐出に伴って内容器が減容変形すると、内容器と外容器との間が負圧になることにより、外気が吸気孔を通して内容器と外容器との間に導入される。
【0003】
そして、上記二重容器では、内容物を使い切った後に廃棄するに際し、外容器を減容変形させた状態とするために、吐出キャップが、吸気孔を通した外容器と内容器との間から外部への空気の流通を阻止する閉位置と許容する開位置との間で移動可能である蓋部材を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-030796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような二重容器では、二重容器を廃棄する際に、いったん蓋部材を開位置へ移動させて外容器を減容変形させた後で、吸気孔を通して外気が外容器と内容器との間に流入することを防止するために、蓋部材を再び閉位置に戻す必要があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、外容器の減容変形状態をより容易に維持できる二重容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の二重容器は内容物が収容されると共に前記内容物の減少に伴って減容変形する内容器、及び、前記内容器が内装される外容器を備える容器本体と、前記容器本体の口部に装着され、かつ前記内容物の吐出孔が形成された吐出キャップと、を備え、前記外容器には、前記内容器との間に外気を吸入する吸気孔が形成されている二重容器であって、前記吐出キャップが、外部と前記吸気孔とを連通可能な外気導入孔が形成されたキャップ本体と、前記吐出孔と前記容器本体内との連通、遮断を切り替える吐出弁と、前記キャップ本体の内側に配設され、前記外気導入孔を開閉する空気弁と、を備え、前記キャップ本体が、前記空気弁が当接したときに、前記外気導入孔を通した外部から前記吸気孔側への空気の流通を許容する一方で前記外気導入孔を通した前記吸気孔側から外部への空気の流通を阻止する第1弁座部と、前記空気弁が当接したときに、前記外気導入孔を通した外部から前記吸気孔側への空気の流通を阻止する一方で前記外気導入孔を通した前記吸気孔側から外部への空気の流通を許容する第2弁座部と、を有し、前記キャップ本体が、前記空気弁が前記第1弁座部及び前記第2弁座部のいずれか一方と当接するように切り替えるように前記空気弁に対して相対的に移動可能に配設されていることを特徴とする。
【0008】
この発明では、空気弁を第1弁座部に当接させた状態で、外容器を容器軸に直交する径方向の内側に向けて押圧すると、吐出弁が開かれて吐出孔と容器本体内とが連通し、内容物が吐出孔から吐出される。そして、内容物の吐出に伴って内容器が減容変形すると、内容器と外容器との間が負圧になることにより、外気が外気導入孔及び吸気孔を通して内容器と外容器との間に導入される。これにより、内容器の減容変形を維持しつつ、外容器が復元変形する。
そして、例えば二重容器の廃棄時などには、キャップ本体を空気弁に対して相対的に移動させて空気弁を第2弁座部に当接させ、この状態で外容器を径方向の内側に向けて押圧すると、外容器と内容器との間に存在する空気は、吸気孔及び外気導入孔を通して外部に排出される。一方、外気導入孔及び吸気孔を通した外部から外容器と内容器との間への空気の流通が阻止されているため、外容器の押圧を解除した後であっても、外容器の減容変形状態が維持される。
このように、いったんキャップ本体を空気弁に対して相対的に移動させて空気弁を第2弁座部に当接させるだけで、外容器と内容器との間の空気を吸気孔及び外気導入孔を通して排出した後であっても、外容器の減容変形状態が維持されるので、例えば二重容器を廃棄する際において、減容変形の作業効率を向上させることができる。
また、空気弁を第1弁座部に当接させた状態で外容器と内容器との間の空間に外気を導入する場合と、空気弁を第2弁座部に当接させた状態で外容器と内容器との間の空間にある空気を外部に排出する場合と、で外気導入孔を共通の孔部として使用することが可能となる。
【0009】
また、本発明の二重容器では、前記吐出キャップが、前記キャップ本体に着脱自在に装着され、前記吐出孔及び前記外気導入孔を開閉する蓋部材を備え、前記蓋部材と前記キャップ本体との間には、空気流入路が形成されてもよい。
この場合では、空気弁を第1弁座部に当接させた状態で外容器を押圧して内容物を吐出させた後に外容器が十分に復元変形する前に蓋部材を閉じた場合であっても、例えば蓋部材とキャップ本体との間の隙間などの空気流入路を通して、外容器と内容器との間に外気が導入され、外容器を十分に復元変形させることができる。一方、空気弁を第2弁座部に当接させた状態で外容器と内容器との間の空間にある空気を外部に排出した状態で蓋部材を閉じた場合には、外気導入孔及び吸気孔を通した外部から外容器と内容器との間への空気の流通が阻止されているので、空気流通路を通して外容器と内容器との間へ外気が流入せず、外容器の減容変形状態を維持できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる二重容器によれば、いったんキャップ本体を空気弁に対して相対的に移動させて空気弁を第2弁座部に当接させるだけで、外容器と内容器との間の空気を吸気孔及び外気導入孔を通して排出した後であっても、外容器の減容変形状態が維持されるので、減容変形の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる二重容器を示す軸方向断面図である。
図2図1の中栓体及び弁座体の組合体を示す軸方向断面図である。
図3図1の二重容器を示す部分拡大図である。
図4図1の二重容器を示す部分側面図である。
図5図1の二重容器を廃棄する際の操作方法を示す軸方向断面図である。
図6図5の二重容器を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による二重容器の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0013】
本実施形態にかかる二重容器1は、図1に示すように、図示しない内容物が収容されると共に内容物の減少に伴って減容変形する可撓性に富む内容器2及び内容器2が内装される外容器3を有する有底円筒状の容器本体4と、容器本体4の口部4Aに装着された有頂円筒状の吐出キャップ5と、を備える。
ここで、容器本体4及び吐出キャップ5は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置する状態で配設されている。以下、この共通軸を容器軸Oと称し、図1において容器軸Oに沿って容器本体4の底部から吐出キャップ5に向かう方向を上方、その逆方向を下方とする。また、容器軸Oから見た平面視で容器軸Oに直交する方向を径方向、容器軸O回りに周回する方向を周方向とする。さらに、径方向のうち図1における左側を前方、その逆方向を後方とする。
【0014】
容器本体4は、例えばブロー成形により形成されており、外容器3の内面に内容器2が剥離可能に積層された積層剥離型容器(デラミボトル)とされている。
ブロー成形としては、例えば押出成形などによって二重(内外)に組み合わされた積層パリソンを形成し、この積層パリソンをブロー成形することで容器本体4を形成しても良い(押出ブロー成形)。また、射出成形などによって外容器用のプリフォーム、及び内容器用のプリフォームを形成し、これらを二重(内外)に組み合わせた後、二軸延伸ブロー成形することで容器本体4を形成しても構わない。
なお、外容器用のプリフォームを先に二軸延伸ブロー成形して外容器3を形成した後、内容器用のプリフォームを内部に配置し、その後、内容器用のプリフォームを二軸延伸ブロー成形することで容器本体4を形成しても構わない。
【0015】
なお、内容器2及び外容器3の材質は樹脂材料とされ、剥離可能な組み合わせであれば互いに同材質でも異材質でもよい。樹脂材料の一例としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン(ポリアミド)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)などが挙げられる。これらの樹脂材料の中から、外容器3と内容器2とは剥離可能(相溶性がない)となる組み合わせで形成される。
【0016】
外容器3は、スクイズ変形可能とされており、この外容器3のスクイズ変形に伴って内容器2が減容変形する。
外容器3の口部3Aは、上側に位置する円筒状の上筒部11と、上筒部11の下端に連設され、内径及び外径が上筒部11よりも拡径された円筒状の下筒部12と、を有する。上筒部11及び下筒部12は、容器軸Oと同軸に配設されている。
【0017】
上筒部11には、上筒部11を径方向に貫通する複数の吸気孔11Aが周方向に間隔をあけて形成されている。なお、吸気孔11Aは、少なくとも1つ形成されていればよい。また、上筒部11のうち吸気孔11Aよりも上側の部分の外周面には、雄ネジ部11Bが形成されている。さらに、上筒部11のうち上記上側の部分には、上下方向に延在する複数の第1通気溝部11Cが周方向に間隔をあけて形成されており、外容器3と内容器2との間には、この第1通気溝部11C及び吸気孔11Aを通して外気が導入可能となっている。第1通気溝部11Cは、雄ネジ部11Bを縦断して形成されている。なお、この第1通気溝部11Cは、少なくとも1つ形成されていればよい。また、例えば、雄ネジ部11Bと後述する雌ネジ部38Aとの間の隙間を通して空気が流通可能であれば、第1通気溝部11Cを形成しないことも可能である。
また、上筒部11の上端部は、外径が縮径された幅狭部11Dとなっている。
内容器2の口部2Aの上端部には、径方向外側に突出する平面視で円環状の折返部13が形成されており、この折返部13は、外容器3の口部3Aの上端開口縁を上方側から塞いでいる。これにより、内容器2は、少なくともこの折返部13において外容器3から剥離することが規制される。なお、内容器2は、この折返部13を含む吸気孔11Aよりも上側の部分において外容器3から剥離することが規制されていればよい。
【0018】
吐出キャップ5は、外容器3の上端部に装着された有頂円筒状のキャップ本体21と、容器本体4の上端部に取り付けられた有頂円筒状の中栓体22と、中栓体22に取り付けられた円筒状の吐出弁23と、吐出弁23と一体化された空気弁24と、キャップ本体21に取り付けられた有頂円筒状の蓋部材25と、を備える。これらキャップ本体21、中栓体22、吐出弁23、空気弁24及び蓋部材25は、容器軸Oと同軸に配設されている。
【0019】
キャップ本体21は、平面視で円形板状の天板部(第1弁座部)31と、天板部31の外周縁から下方に向けて延在する円筒状の外筒部32と、を有する。これら天板部31及び外筒部32は、容器軸Oと同軸に配設されている。
天板部31の内容器軸Oに対して前方にずらした位置には、天板部31を上下方向に貫通する吐出孔31Aが形成されている。また、天板部31のうち吐出孔31Aの開口縁部には、円筒状の吐出筒部33が上方に向けて立設されている。吐出筒部33の内径及び外径は、上方に向かうにしたがって漸次拡径している。
また、天板部31のうち吐出孔31Aの開口縁部には、円筒状の規制筒部34が下方に向けて突設されている。規制筒部34は、容器本体4を口部4Aが下方を向く吐出姿勢にした状態で内容物を吐出させるときに後述する連絡空間S内に残留する残留空気が容器本体4を正立姿勢に戻したときに天板部31の下面を伝って吐出孔31Aに到着することを規制する。
【0020】
さらに、天板部31の中央部分は、この中央部分から径方向外側に延在する外周部分よりも上方に位置するように段差をつけて形成されている。そして、天板部31のうち上記中央部分と上記外周部分との間の接続部分には、この接続部分を上下方向で貫通する外気導入孔31Bが形成されている。外気導入孔31Bは、平面視で例えば上記接続部分に沿う円弧状をなしている。なお、外気導入孔31Bは、上記接続部分に沿って周方向に間隔をあけて複数形成されてもよく、後述する連絡空間Sよりも径方向外側に位置していれば、他の個所に形成されてもよい。
また、天板部31のうち外気導入孔31Bよりも径方向内側には、径方向で間隔をあけて円筒状の第1及び第2垂下筒部35、36が下方に向けて突設されている。
【0021】
外筒部32は、天板部31の外周縁から下方に向けて延在する円筒状の上側部分37と、上側部分37の下端に連設され、内径が上側部分37よりも拡径された円筒状の下側部分38と、を有する。これら上側部分37及び下側部分38は、容器軸Oと同軸に配設されている。
上側部分37の内周面には、円筒状の弁座体41が嵌合されている。弁座体41は、容器軸Oと同軸に配設されている。弁座体41は、平面視で円環板状の環状弁座部(第2弁座部)42と、環状弁座部42の外周縁から上方に向けて延設された円筒状の内装筒部43と、を有する。これら環状弁座部42及び内装筒部43は、容器軸Oと同軸に配設されている。
環状弁座部42の上面には、空気弁24が当接可能となっているが、図1に示す状態において、環状弁座部42は、空気弁24から離間している。
【0022】
下側部分38の上端部の内周面には、外容器3の雄ネジ部3Bと螺合する雌ネジ部38Aが形成されている。なお、この雌ネジ部38Aには、上下方向に延在する第2通気溝部38Bが周方向に間隔をあけて複数形成されている。
下側部分38の下端部は、口部4Aの下筒部12の外周面に気密に外嵌されている。これにより、吸気孔11Aがキャップ本体21の外筒部32の下方から二重容器の外部と連通することが防止される。
【0023】
中栓体22は、容器本体4の口部4Aの上端開口部に配置された有頂円筒状のベース部51と、ベース部51の頂面から下方に向けて延在する円筒状の収容筒部52と、収容筒部52内に収容された球状の弁体部53と、を有する。
ベース部51は、容器本体4の口部4Aの上端開口部上に位置する有頂円筒状の中央部54と、中央部54の下端から径方向外側に向けて延在する平面視で円環状の環状外周部55と、を有する。これら中央部54及び環状外周部55は、容器軸Oと同軸に配設されている。
【0024】
中央部54のうち容器軸Oに対して後方にずらした位置には、中央部54を上下方向に貫通し、内容物を流通させる流通孔54Aが形成されている。
環状外周部55には、円筒状の立上筒部56が上方に向けて立設されており、この立上筒部56は、中央部54の周壁部を径方向外側から囲んでいる。さらに、環状外周部55には、環状外周部55の外周縁から下方に向けて延在する円筒状の第1及び第2取付筒部57、58が延設されている。第1取付筒部57は、外容器3の上筒部11に対する嵌合部として機能しており、第1取付筒部57の外周面には、上下方向に延在する第3通気溝部57Aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。第2取付筒部58は、第1取付筒部57よりも径方向内側に配設されており、内容器2の口部2Aに対するシール部として機能している。第1及び第2取付筒部57、58は、外容器3の上筒部11の幅狭部11Dを径方向で挟み込んでいる。
【0025】
収容筒部52は、ベース部51の中央部54のうち容器軸Oに対して前方にずらした位置に設けられている。収容筒部52の下端部は、内径及び外径が下方に向かうにしたがって漸次縮径する縮径部52Aとされている。また、収容筒部52の上側部分の内面には、弁体部53の上方への抜けを規制する規制突部52Bが径方向内側に向けて突設されている。なお、規制突部52Bは、全周にわたって形成されている必要はなく、規制突部52Bが設けられていなくてもよい。
【0026】
弁体部53は、収容筒部52の内径と同等の外径を有する球状を呈しており、収容筒部52の内側に上下方向で移動自在に収容されている。そして、弁体部53は、縮径部52Aの内周面に対して上方に向けて離反可能に着座している。弁体部53は、合成樹脂や金属で形成されている。弁体部53を金属で形成する場合には、自重によるスムーズな移動が可能となる。一方、弁体部53を合成樹脂で形成する場合には、二重容器1を構成する部材の全てを合成樹脂で形成することができ、低コスト化が図れると共に、二重容器1の廃棄が容易となる。また、合成樹脂で形成した弁体部53は、金属で形成した場合と比較して質量や内容物に対する比重を軽くすることができるので、例えば二重容器1を傾倒または上下反転させた吐出姿勢にした状態で、容器本体4を外容器3に対して径方向内側に向けてスクイズ変形を解除したときに、弁体部53を規制突部52Bから速やかに離反させて縮径部52Aの内周面上に着座させやすくなる。したがって、弁体部53を利用して、外気が収容筒部52内を通して内容器2内に進入することを抑制することができる。
【0027】
なお、中栓体22は、図2に示すように、弁座体41と一体的に製造された後に容器本体4への装着時に分離されている。すなわち、中栓体22の立上筒部56の上端部は、弱化部56Aを介して環状弁座部42の開口縁部に接続されている。弱化部56Aは、周方向に間隔をあけて複数配置されたブリッジである。そして、中栓体22と弁座体41との組合体は、中栓体22を容器本体4の口部4Aに対して上方から押し込んで装着する際に、弱化部56Aが破断され、中栓体22と弁座体41とが分離される。
【0028】
吐出弁23は、図1に示すように、吐出孔31Aと容器本体4内との連通及び遮断を切り替える弁であり、円筒状の区画筒部61と、ベース部51の中央部54の上面に離反可能に載置された平面視で円形板状の弁本体62と、を有する。これら区画筒部61及び弁本体62は、容器軸Oと同軸に配設されている。
区画筒部61は、中栓体22とキャップ本体21との間の空間を区画筒部61よりも径方向内側に位置して吐出孔31Aに連通する連絡空間Sと、区画筒部61よりも径方向外側に位置して外気導入孔31Bに連通する外側通路と、に区画する。区画筒部61の下端部は、中央部54の周壁部と立上筒部56との間に配設されており、区画筒部61の上端部は、天板部31の第1及び第2垂下筒部35、36間に配設されている。
【0029】
弁本体62は、周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)形成された弾性アーム63を介して区画筒部61の内周面に接続されており、ベース部51の中央部54に形成された流通孔54Aを開閉自在に閉塞する。なお、弾性アームの数は、3つに限定されない。また、吐出弁23は、外容器3のスクイズ変形時に流通孔54Aを開放させることができればよく、三点弁以外の他の構成を有してもよい。
【0030】
空気弁24は、図1及び図3に示すように、円環板状をなしており、吐出弁23と一体的に形成されている。空気弁24は、区画筒部61の上下方向の中間部から径方向外側に向けて延在しており、径方向の中間部分が下方に向けて突となるように湾曲している。また、空気弁24は、少なくとも空気弁24の先端部は、天板部31に形成された外気導入孔31Bよりも径方向外側において天板部31の下面に下方から当接している。空気弁24の先端部には、下方に向けて突出する第1及び第2突出部24A、24Bが形成されている。第2突出部24Bは、第1突出部24Aよりも径方向内側に形成されており、弁座体41の環状弁座部42の上面に当接可能となっている。なお、空気弁24は、吐出弁23とは別体に形成されてもよい。
【0031】
蓋部材25は、図1に示すように、平面視で円形板状の天壁部71と、天壁部71の外周面から下方に向けて延在する円筒状の筒壁部72と、を有しており、吐出孔31A及び外気導入孔31Bを覆っている。これら天壁部71及び筒壁部72は、容器軸Oと同軸に配設されている。
天壁部71の内容器軸Oよりも前方にずらした位置には、下方に向けて突出する円筒状のシール筒部73が設けられている。シール筒部73は、吐出筒部33の内側に上方から挿入されている。
筒壁部72の後側部分の下端は、ヒンジ74を介してキャップ本体21の後側部分の上端に連結されている。また、筒壁部72の前側部分の上端部には、操作突片75が径方向外側に向けて突設されている。
【0032】
外容器3のうちキャップ本体21から露出している肩部とキャップ本体21の下側部分38の下端部とは、シュリンクフィルム(図示略)によって径方向外側から被覆されている。また、外容器3の肩部の外周面とキャップ本体21の下側部分38の外周面とには、図4(A)に示すように、空気弁24が天板部31及び環状弁座部42のいずれに当接しているかを示す第1及び第2表示部81、82と第3表示部83とが各別に形成されている。これら第1及び第2表示部81、82と第3表示部83とは、上記シュリンクフィルムによって覆われている。これにより、第1から第3表示部81~83が外部に露出することがキャップ本体21を容器本体4に対して容器軸O回りに回転させる動機付けとなって、キャップ本体21を容器本体4に対して容器軸O回りに誤って回転させる可能性を低減している。なお、シュリンクフィルムに替えて、例えば紙ラベルなど、他のラベルやフィルムを巻き付けることによって第1及び第2表示部81、82と第3表示部83とを覆ってもよく、外容器3及びキャップ本体21に例えばシールを貼付することによって第1及び第2表示部81、82と第3表示部83とを覆ってもよい。また、シュリンクフィルムは、例えば吐出孔31Aが一度も開封されていないことを示すことを目的として蓋部材25も覆うように設けられてもよい。この場合、シュリンクフィルムには、ミシン目が適宜形成されており、使用開始時には、シュリンクフィルムのうち蓋部材25を覆っている部分を剥がし、第1及び第2表示部81、82と第3表示部83とをシュリンクフィルムで覆った状態のままとすることにより、蓋部材25を操作して内容物の吐出を行う。また、シュリンクフィルムが設けられていなくてもよい。
【0033】
以上のような構成の二重容器1の使用方法について説明する。
まず、内容物を吐出させる場合には、蓋部材25の操作突片75を操作し、蓋部材25をヒンジ74回りに回動させて吐出孔31Aを開放させる。吐出孔31Aを開放させた後、例えば容器本体4を傾倒させたまたは上下反転させた吐出姿勢とした状態で、外容器3の上記胴部を径方向内側にスクイズ変形(弾性変形)させる。これにより、内容器2は、外容器3と共に径方向内側に減容し、内容器2の内圧は、上昇する。ここで、容器本体4の傾倒または上下反転に伴って、弁体部53は、収容筒部52内を上方に移動する。弁体部53の上方への移動は、規制突部52Bによって規制される。
【0034】
内容器2の内圧が上昇すると、吐出弁23の弁本体62は、ベース部51の中央部54の上面から上方に向けて離反し、流通孔54Aを開放させる。これにより、吐出孔31Aと内容器2内とは、流通孔54Aを通じて連通する。そして、内容器2内に収容された内容物は、流通孔54A及び吐出孔31Aを通じて、吐出筒部33の先端から外部に吐出される。
【0035】
その後、容器本体4のスクイズ変形を停止または解除させることにより、内容器2の内圧が低下すると、吐出弁23の弁本体62は、弾性アーム63の復元変形によってベース部51の上面に着座する。これにより、流通孔54Aは、再び閉塞され、吐出孔31Aと内容器2との連通は、遮断される。
また、容器本体4のスクイズ変形の停止または解除により、外容器3が復元変形し始めるので、外容器3と内容器2との間には、負圧が生じる。この負圧によって、空気弁24の先端部は、天板部31の下面から離反し、外気導入孔31Bを開放させる。これにより、外気は、外気導入孔31B、第3通気溝部57A、第1及び第2通気溝部11C、38B並びに吸気孔11Aを通じて、外容器3と内容器2との間に流入する。その結果、外容器3が復元変形しても、内容器2を外容器3の内面から離間させ、内容器2を減容変形させたままの状態とする。
【0036】
容器本体4のスクイズ変形の停止に合わせて、容器本体4を正立姿勢に戻すと、収容筒部52内の弁体部53は、その自重によって縮径部52Aに向けて下方移動し、縮径部52Aに着座する。そして、弁体部53の下方移動に伴うサックバック効果により、吐出筒部33とベース部51との間にある連絡空間Sに内容物が残留しても、残留する内容物は、収容筒部52内に引き込まれる。
なお、弁体部53は、その自重だけではなく内容器2の復元力によって生じる内容器2内の負圧によっても、縮径部52Aに向けて下方移動して縮径部52Aに着座してもよい。
ここで、内容物を吐出させた後に外容器3が十分に復元変形する前に蓋部材25を閉じた場合であっても、例えば蓋部材25とキャップ本体21との間の隙間のような空気流通路を通して外容器3と内容器2との間の空間に外気が導入されるので、外容器3は、十分に復元変形される。
【0037】
その後、再び外容器3をスクイズ変形させると、空気弁24が天板部31の下面に下方から当接しており、空気弁24が外気導入孔31Bを通した内容器2と外容器3との間から外部への空気の流通を阻止しているので、外容器3と内容器2との間の内圧が正圧となり、この正圧によって内容器2が減容変形され、上述と同様に、吐出筒部33の先端を通じて内容物が吐出される。
なお、内容物の正圧上昇を利用して、弁体部53を規制突部52B側へ上方移動させることも可能であるため、内容物を吐出させる際に必ずしも容器本体4を傾倒または上下反転させる必要はない。
【0038】
続いて、内容物を使い切った後に二重容器1を廃棄する場合には、まず、上記シュリンクフィルムを剥がす。そして、図4(B)において矢印Aで示すように、キャップ本体21を容器本体4に対して螺合解除する方向に回転させる。キャップ本体21に設けられている第3表示部83を外容器3に設けられている第2表示部82と周方向で位置合わせすると、キャップ本体21及びキャップ本体21に内装されている弁座体41は、空気弁24に対して上方移動する。これにより、空気弁24は、図5及び図6に示すように、天板部31の下面から離間し、環状弁座部42の上面に当接する。なお、外筒部32の下側部分38の下端部は、依然として口部4Aの下筒部12の外周面に気密に外嵌されている。
【0039】
そして、蓋部材25を開いた状態で外容器3の上記胴部を径方向内側にスクイズ変形させると、外容器3と内容器2との間には、正圧が生じる。この正圧によって、空気弁24の先端部は、環状弁座部42の上面から離反し、外気導入孔31Bを開放させる。これにより、内容器2と外容器3との間の空気は、吸気孔11A、第1及び第2通気溝部11C、38B、第3通気溝部57A並びに外気導入孔31Bを通じて、外部に排出される。これにより、外容器3は、減容変形される。その後、容器本体4のスクイズ変形を停止すると、空気弁24が環状弁座部42の上面に当接し、外気導入孔31Bを通した外部から内容器2と外容器3との間への空気の流通を阻止しているので、外容器3は、減容変形した状態で維持される。その後、必要に応じて蓋部材25を閉じる。蓋部材25を閉じても、外気導入孔31B及び吸気孔11Aを通して外部から外容器3と内容器2との間に空気が流通することが遮断されており、蓋部材25とキャップ本体21との間の隙間を通した外気の流入が阻止されているので、外容器3の減容変形状態が維持される。
【0040】
以上のような構成の二重容器1によれば、いったんキャップ本体21を空気弁24に対して上方へ移動させるだけで、外容器3と内容器2との間の空気を吸気孔11A及び外気導入孔31Bを通して排出した後でも外容器3の減容変形状態が維持されるので、減容変形の作業効率を向上させることができる。
また、外容器3と内容器2との間の空間に外気を導入する場合と外容器3と内容器2との間の空間にある空気を外部に排出する場合との双方で、外気導入孔31Bを共通の孔部として使用することが可能となる。
さらに、内容物を吐出させた後に外容器3が十分に復元変形する前に蓋部材25を閉じた場合であっても、蓋部材25とキャップ本体21との間の隙間を通して外容器3と内容器2との間の空間に外気が導入されるので、外容器3を十分に復元変形させることができる。そして、外容器3と内容器2との間の空間にある空気を排出した後に蓋部材25を閉じた場合には、外気導入孔31B及び吸気孔11Aを通した外部から外容器3と内容器2との間への空気の流通が遮断されているので、上述した隙間を通した外気の流入が阻止され、外容器3の減容変形状態を維持できる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、二重容器として、内容器が外容器の内面に剥離可能に積層された積層剥離型容器としたが、これに限定されるものではなく、内容器と外容器との間に隙間が確保された二重容器としても構わない。ただし、積層剥離型容器とした場合には、汎用性を高めることができるので好ましい。
キャップ本体は、容器本体に対して容器軸回りに回転移動することによって、空気弁を第1弁座部である天板部に当接させる位置と第2弁座部である環状弁座部に当接させる位置とを切り替えているが、容器本体に対して容器軸回りの回転移動を伴わずに容器本体、ひいては空気弁に対して上下動させるように構成するなど、他の態様で空気弁を第1弁座部である天板部に当接させる位置と第2弁座部である環状弁座部に当接させる位置とを切り替えてもよい。また、空気弁をキャップ本体に対して移動させることによって上記2つの位置を切り替えるように構成してもよい。
収容筒部及び弁体部によってサックバック効果を得ているが、収容筒部及び弁体部が設けられていなくてもよい。
吐出キャップは、キャップ本体にヒンジ接続された蓋部材を備えているが、キャップ本体に対して装着可能であれば、ヒンジ接続以外の他の方法によりキャップ本体に装着可能である蓋部材を備えていてもよい。また、吐出キャップは、蓋部材を備えていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明によれば、外容器の減容変形状態をより容易に維持できる二重容器に関して、産業上の利用可能性が認められる。
【符号の説明】
【0043】
1 二重容器、2 内容器、3 外容器、4 容器本体、4A 口部、5 吐出キャップ、11A 吸気孔、21 キャップ本体、23 吐出弁、24 空気弁、25 蓋部材、31 天板部(第1弁座部)、31A 吐出孔、31B 外気導入孔、42 環状弁座部(第2弁座部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6