(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】電子時計
(51)【国際特許分類】
G04G 99/00 20100101AFI20220729BHJP
G04G 21/00 20100101ALI20220729BHJP
G04G 19/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
G04G99/00 302C
G04G21/00 304T
G04G19/00 Z
(21)【出願番号】P 2019038888
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 誠人
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-57817(JP,A)
【文献】特開2009-230434(JP,A)
【文献】特開平9-288530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 99/00
G04G 21/00
G04G 19/00
G06F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの書き換えが単位領域ごとになされる不揮発性メモリと、
ユーザによって操作がなされる操作部材と、
前記操作部材に対して予め定められたリセット操作又は電源オフ操作が所定時間継続してなされた場合にリセット又は電源オフされる制御部と、
を備え、
前記所定時間は、前記単位領域のデータを書き換える書換処理に要する時間である書換時間よりも長く、
前記制御部は、前記書換処理の開始前に前記リセット操作又は前記電源オフ操作の有無を確認する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部材に対して前記リセット操作又は前記電源オフ操作がなされている場合は、前記書換処理の開始を禁止する
請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定時間が経過する前に前記リセット操作又は前記電源オフ操作が終了すると、前記書換処理の禁止を解除する
請求項1または2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作部材に対して前記リセット操作がなされている場合であっても、前記所定時間が経過するまでの間に前記書換処理を完了できる場合には、前記書換処理の開始を許可する
請求項1に記載の電子時計。
【請求項5】
前記書換処理は、前記単位領域のデータを消去する消去処理、および更新データを前記単位領域に書き込む書込処理で構成される
請求項1から4の何れか1項に記載の電子時計。
【請求項6】
前記リセット操作又は前記電源オフ操作は、外装ケースに配置された複数のプッシュボタンを共に押し込む操作を含む
請求項1から5の何れか1項に記載の電子時計。
【請求項7】
前記制御部は、
前記操作部材に対する操作を検出する操作判断部と、タイマーと、電源を管理する電源管理部と、を有する第一マイクロコンピュータと、
前記不揮発性メモリと、前記書換処理を実行するメモリ制御部と、を有する第二マイクロコンピュータと、
を含み、
前記第二マイクロコンピュータは、前記リセット操作又は電源オフ操作を検出しているか否かの情報を前記第一マイクロコンピュータから取得する
請求項1から6の何れか1項に記載の電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メモリを保護する技術がある。特許文献1には、主電源スイッチへの手の接近を検知するセンサと、メモリへのデータの書き込み中に、センサが手の接近を検知すると、メモリへの書き込みを中止する制御手段とを備えた画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データの書き換えが単位領域ごとに行われる場合に、特許文献1の技術では、手の接近を感知してもすぐにデータ書き込みを中止できない場合があり、メモリ保護が確実ではない。電子時計において、データを適切に保護できることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、ユーザのリセット操作又は電源オフ操作を優先しつつ不揮発性メモリのデータを保護することができる電子時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子時計は、データの書き換えが単位領域ごとになされる不揮発性メモリと、ユーザによって操作がなされる操作部材と、前記操作部材に対して予め定められたリセット操作又は電源オフ操作が所定時間継続してなされた場合にリセット又は電源オフされる制御部と、を備え、前記所定時間は、前記単位領域のデータを書き換える書換処理に要する時間である書換時間よりも長く、前記制御部は、前記書換処理の開始前に前記リセット操作又は前記電源オフ操作の有無を確認することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電子時計によれば、書換処理が実行されている間にリセット操作又は電源オフ操作が開始されたとしても、所定時間が経過する前に書換処理が完了する。よって、ユーザのリセット操作又は電源オフ操作を優先しつつ不揮発性メモリのデータを保護することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電子時計の平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電子時計のブロック図である。
【
図3】
図3は、フラッシュROMにおけるデータの変更前後を示す図である。
【
図4】
図4は、フラッシュROMにおけるデータの変更手順を説明する図である。
【
図5】
図5は、フラッシュROMにおけるデータの変更手順を説明する他の図である。
【
図6】
図6は、実施形態の制御部の動作を説明するタイムチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態の制御部の動作手順を説明する図である。
【
図8】
図8は、実施形態の制御部の動作を説明する他のタイムチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態の制御部の動作を説明する更に他のタイムチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態の制御部の動作を説明する更に他のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る電子時計につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図10を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、電子時計に関する。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係る電子時計1は、外装ケース2、風防5、文字板31、秒針32、分針33、時針34、第一ボタン35、第二ボタン36、およびリューズ37を有する。外装ケース2は、略円筒形状のケース本体21およびかん22を有する。
【0012】
第一ボタン35、第二ボタン36、およびリューズ37は、ケース本体21に配置されている。第一ボタン35および第二ボタン36は、ケース本体21の外周面から突出しているプッシュボタンである。第一ボタン35および第二ボタン36は、ケース本体21の周方向に沿って間隔をあけて配置されている。リューズ37は、第一ボタン35と第二ボタン36との間に配置されている。本実施形態の電子時計1は、ユーザによって操作がなされる操作部材として、第一ボタン35、第二ボタン36、およびリューズ37を有する。
【0013】
図2に示すように、電子時計1は、制御部10を有する。制御部10は、電子時計1の各種の動作を制御する制御回路を有する。本実施形態の制御部10は、第一マイコン40および第二マイコン50を有する。第一マイコン40および第二マイコン50は、それぞれマイクロコンピュータである。第一マイコン40および第二マイコン50は、それぞれメモリ、演算部、入出力インタフェース等を有する。第一マイコン40および第二マイコン50は、同じ基板上に配置されていてもよい。
【0014】
第一マイコン40は、操作判断部41、電源管理部42、およびタイマー43を有する。操作判断部41は、第一ボタン35、第二ボタン36、およびリューズ37に対する操作の有無および操作の種類を検出する回路である。操作判断部41は、第一ボタン35が押し込まれているか否か、および第二ボタン36が押し込まれているか否かを検出する。例えば、制御部10は、第一ボタン35が押し込まれることで接触する第一スイッチを有する。操作判断部41は、第一スイッチの状態に基づいて第一ボタン35が押し込まれているか否かを判定する。同様に、制御部10は、第二ボタン36が押し込まれることで接触する第二スイッチを有する。操作判断部41は、第二スイッチの状態に基づいて第二ボタン36が押し込まれているか否かを判定する。また、操作判断部41は、リューズ37が引き出されているか否か、およびリューズ37がどの位置まで引き出されているかを検出する。
【0015】
電源管理部42は、電子時計1の電源4を管理する回路である。電源管理部42は、操作判断部41と通信可能に接続されている。電源4は、例えば、外装ケース2の内部に配置された二次電池である。電源4は、第一マイコン40および第二マイコン50に対して電力を供給可能なように接続されている。電源管理部42は、電源4から第一マイコン40および第二マイコン50に対する電力供給を管理する機能、および電源4の電圧を監視する機能を有する。
【0016】
タイマー43は、カウント開始からの経過時間を計測する。タイマー43は、操作判断部41と通信可能に接続されている。第一マイコン40は、モータを駆動する駆動回路や、発振回路等を有していてもよい。
【0017】
第二マイコン50は、フラッシュROM51、RAM52、メモリ制御部53、および処理部54を有する。フラッシュROM51は、不揮発性メモリである。RAM52は、ランダムアクセスメモリである。メモリ制御部53は、フラッシュROM51およびRAM52を制御する回路である。処理部54は、各種の処理を行う回路である。処理部54は、例えば、第二マイコン50に記憶されているプログラムを実行することで各種の処理を行う。処理部54が行う処理の内容については後述する。
【0018】
フラッシュROM51は、データの書き換えが予め定められた単位領域ごとになされる。言い換えると、フラッシュROM51は、単位領域の一部のデータを変更する場合であっても、単位領域の全体のデータを書き換える必要がある。以下の説明では、フラッシュROM51の単位領域を「セクター」と称する。フラッシュROM51は、複数のセクターを有している。
図3および
図4を参照して、フラッシュROM51におけるデータの書き換えについて説明する。
【0019】
本実施形態のフラッシュROM51では、初期状態において各ビットの値が1とされる。
図3に示すようにビットの値を1から0に変更する場合は、ビットごとに値を変更することが可能である。例えば、
図3に示すように、1バイト領域の値を0xffから0x33に変更する場合は、変更対象のビットのみ値を変化させることが許容される。この場合、
図4に示すようにフラッシュROM51の書き換えがなされる。メモリ制御部53は、フラッシュROM51に対して書換指令を送る。書換指令では、値を1から0に変化させるビットが指定される。フラッシュROM51は、書換指令に応じて対象のビットの値を1から0に書き換える。フラッシュROM51は、データの書き換えが完了すると、完了通知をメモリ制御部53に送る。
【0020】
一方、ビットの値を0から1に変更する場合、セクターの全ての値を初期化する必要がある。すなわち、同一セクターに属する全てのビットの値を1とし、各バイト領域の値を全て0xffとする初期化が必要となる。セクターが初期化された後に変更後の値が当該セクターに書き込まれる。
図5を参照して、フラッシュROM51におけるデータの書き換え手順の一例を説明する。
【0021】
メモリ制御部53は、フラッシュROM51に対してセクター読取指令を送る。セクター読取指令は、書き換え対象のセクター(以下、単に「対象セクター」と称する。)に記憶されているデータの読み取りを行わせる指令である。フラッシュROM51は、セクター読取指令に応じて、対象セクターのデータを読み取る。フラッシュROM51は、対象セクターから読み取ったデータである読取データをメモリ制御部53に送る。
【0022】
次に、メモリ制御部53は、RAM52に対して書込指令を送る。メモリ制御部53は、フラッシュROM51から取得した読取データをRAM52に送り、RAM52に書き込む。次に、メモリ制御部53は、RAM52に対して変更指令を送る。例えば、メモリ制御部53は、フラッシュROM51に書き込むべきデータと、読取データとの差分に基づいて変更指令を生成する。変更指令は、例えば、対象セクターにおいて値を変更すべきビットの位置と、そのビットの変更後の値とを定めた指令である。変更指令を受けたRAM52は、指定されたビットの値を変更後の値に書き換える。RAM52は、変更すべき全てのビットの値を書き換えると、変更後データをメモリ制御部53に送る。変更後データは、フラッシュROM51に書き込むための更新データである。
【0023】
メモリ制御部53は、変更後データを受け取ると、フラッシュROM51に対して消去指令を送る。消去指令は、対象セクターのデータを消去する指令である。フラッシュROM51は、消去指令に応じて消去処理を実行する。フラッシュROM51は、消去処理において、対象セクターの値を初期化し、対象セクターに含まれる全バイト領域の値を0xffとする。
【0024】
次に、メモリ制御部53は、フラッシュROM51に対してセクター書込指令を送る。セクター書込指令は、変更後データを対象セクターに書き込ませる指令である。フラッシュROM51は、セクター書込指令に応じて書込処理を行う。フラッシュROM51は、書込処理において、変更後データを対象セクターに書き込む。フラッシュROM51は、書込処理が完了すると、メモリ制御部53に対して書込完了通知を送る。
【0025】
上記のデータ更新処理は、
図5に示すように、準備処理および書換処理に分けることができる。準備処理は、書き込み用のデータである更新データを準備する処理であり、セクター読取指令、読取データの送信、書込指令、変更指令、および変更後データの送信を含む。書換処理は、消去処理および書込処理を含む。
【0026】
このように、フラッシュROM51の値を変更するためには、セクターを初期化してから更新データを書き込む必要があるため、値の書き換えにはある程度の時間を要する。ここで、本実施形態の電子時計1は、ユーザによるリセットが可能に構成されている。ユーザによるリセットがなされると、制御部10に対する電力供給が停止され、第一マイコン40および第二マイコン50がリセットされる。言い換えると、本実施形態の電子時計1は、ユーザの操作により、制御部10のハードリセットが実行される。ここで、もしフラッシュROM51の書き換え中に制御部10のハードリセットがなされてしまうと、データが消失したり、データが破損したりする可能性がある。
【0027】
そのため、本実施形態の制御部10は、以下に詳しく説明するように、ユーザによるリセット操作がなされている場合、フラッシュROM51の書換処理の開始を禁止する。よって、本実施形態の電子時計1は、フラッシュROM51に記憶されているデータを適切に保護することができる。
【0028】
本実施形態の電子時計1におけるリセット操作について説明する。リセット操作は、第一ボタン35および第二ボタン36の両方を押し込む操作である。本実施形態の電子時計1では、リセット操作以外に、第一ボタン35および第二ボタン36の両方を同時に押し込む操作入力は設定されていない。電子時計1は、リセット操作が所定時間Tr継続してなされるとリセット動作を実行する。下記式(1)に示すように、所定時間Trは、書換処理に要する時間である書換時間Twよりも長い。本実施形態の書換時間Twは、
図5に示すように、書換処理に要する時間に設定されている。
Tw<Tr …(1)
【0029】
第二マイコン50は、
図6および
図7を参照して説明するように、フラッシュROM51に対する書換要求が発生すると、書換処理を開始する前にリセット操作の有無を確認する。第二マイコン50は、リセット操作がなされている場合、書換処理の開始を禁止してフラッシュROM51に記録されているデータを保護する。
【0030】
図6において、横軸は時間を示す。
図6では、時刻t0にユーザによるリセット操作が開始される。その後、時刻t1に書換要求が発生する。書換要求は、例えば、第二マイコン50の処理部54によってなされる。処理部54は、記録すべき各種の情報を算出する機能を有する。記録すべき情報は、例えば、電子時計1を装着しているユーザの活動情報である。活動情報は、ユーザが歩行した歩数や、体温や心拍数等の生体情報、ユーザの推定消費カロリーを含むものであってもよい。処理部54は、算出した情報の累積量が所定量となると、その情報をフラッシュROM51に書き込むために書換要求を出力する。
【0031】
メモリ制御部53は、書換要求がなされた時刻t1にリセット操作がなされていると、フラッシュROM51に対する書換処理を禁止する。書換処理が禁止されたままで、時刻t2にリセット操作の継続時間が所定時間Trに達する。その結果、時刻t2に強制リセットが実行され、第一マイコン40および第二マイコン50がリセットされる。フラッシュROM51に対する書換処理が禁止されたままでリセットが実行されるため、フラッシュROM51の値が維持される。
【0032】
図7を参照して、フラッシュROM51のデータを保護するための処理手順の詳細について説明する。操作判断部41は、ユーザによるリセット操作を検出すると、タイマー43に対するタイマー設定を行う。操作判断部41は、タイマー43の設定時間として所定時間Trをセットし、タイマー43をスタートさせる。
【0033】
その後、処理部54からメモリ制御部53に対して書換要求が送られる。メモリ制御部53は、フラッシュROM51から読取データを取得し、RAM52に対して書込指令を送る。その後、メモリ制御部53は、第一マイコン40の操作判断部41に対してスイッチ操作の確認を行う。メモリ制御部53は、例えば、操作判断部41に対してリセット操作の有無を問い合わせる。メモリ制御部53からの確認に応じて、操作判断部41は、リセット操作ありの信号を送る。
【0034】
メモリ制御部53は、リセット操作ありの信号を受け取ると、フラッシュROM51に対する書換処理を禁止する。これにより、少なくとも消去指令の出力およびセクター書込指令の出力が禁止される。本実施形態の操作判断部41は、操作部材の状態が変化すると、各部に対して操作イベントの通知を行う。メモリ制御部53は、操作イベントを通知された場合、リセット操作がなされているかを操作判断部41に対して再確認してもよい。メモリ制御部53は、リセット操作ありの状態が継続している間は、フラッシュROM51に対する消去を保留する。
図7では、フラッシュROM51の消去が保留されている間に、タイマー43によるカウント時間が所定時間Trとなり、タイマー43から操作判断部41に対して所定時間Trの経過が通知される。
【0035】
操作判断部41は、所定時間Trの経過が通知されると、リセット操作がなされているか再確認する。再確認の結果、リセット操作がなされていると、操作判断部41から電源管理部42に対して強制リセットが指令される。電源管理部42は、電源4に対して、制御部10に対するリセットを実行するよう指令する。電源4は、リセット指令に応じて制御部10に対する電源供給を遮断し、制御部10の電源を再投入する。これにより、制御部10のハードリセットが完了する。
【0036】
次に、書換処理の実行中にリセット操作が開始される場合の制御部10の動作について、
図8を参照して説明する。
図8では、時刻t10に1回目の書換処理が開始される。書換処理の実行中の時刻t11にユーザのリセット操作が開始される。この場合、メモリ制御部53は、1回目の書換処理を続け、時刻t12に1回目の書換処理を完了させる。本実施形態では、書換時間Twが所定時間Trよりも短い。従って、第二マイコン50は、リセット指令が出力されるよりも前に1回目の書換処理を完了させることができる。
【0037】
1回目の書換処理が完了した時刻t12において、2回目の書換処理を求める書換要求がなされる。時刻t12において、ユーザのリセット操作は継続している。従って、メモリ制御部53は、2回目の書換処理を禁止し、フラッシュROM51に対する消去処理を保留する。その後、時刻t13にリセット操作の継続時間が所定時間Trとなり、リセット処理が実行される。2回目の書換処理が禁止されていることで、フラッシュROM51に記憶されているデータが適切に保護される。
【0038】
次に、リセット操作が中止された場合の動作について、
図9を参照して説明する。
図9では、時刻t20にユーザのリセット操作が開始される。その後、時刻t21に書換要求がなされる。時刻t21には、ユーザのリセット操作が継続している。従って、メモリ制御部53は、フラッシュROM51に対する書換処理を禁止する。その後、時刻t22にリセット操作が中止される。このときのリセット操作の継続時間は、所定時間Trよりも短い。メモリ制御部53は、リセット操作が中止されると、書換処理の禁止を解除する。すなわち、メモリ制御部53は、時刻t21になされた書換要求に応じて、時刻t22に書換処理を開始する。このように、本実施形態に係る電子時計1は、リセット操作が中止されるまで書換処理の開始を保留する。よって、本実施形態の電子時計1は、フラッシュROM51に記憶されているデータを適切に保護することができる。
【0039】
次に、リセット操作が中止された場合の他の動作例について、
図10を参照して説明する。
図10では、時刻t30に1回目の書換処理が開始される。1回目の書換処理を実行中の時刻t31にユーザのリセット操作が開始される。メモリ制御部53は、1回目の書換処理を続け、時刻t32に1回目の書換処理を完了させる。時刻t32において、2回目の書換処理を求める書換要求がなされる。時刻t32において、ユーザのリセット操作は継続している。従って、メモリ制御部53は、2回目の書換処理を禁止し、フラッシュROM51に対する消去処理を保留する。その後、時刻t33にリセット操作が中止される。このときのリセット操作の継続時間は、所定時間Trよりも短い。メモリ制御部53は、リセット操作が中止されると、書換処理の禁止を解除する。メモリ制御部53は、時刻t32になされた2回目の書換要求に応じて、時刻t33に2回目の書換処理を開始する。
【0040】
なお、書換処理の禁止が解除され、かつ既にデータ更新処理の一部が実行済みである場合は、実行済みの処理を省略してデータ更新処理が実行されてもよい。
図7を参照して説明すると、本実施形態のメモリ制御部53は、処理部54から書換要求がなされると、リセット操作の有無を確認する前に、書込指令までの処理を実行する。つまり、メモリ制御部53は、フラッシュROM51から読み込んだデータをRAM52に記憶させた後でリセット操作の有無を確認する。この場合、データ更新処理(
図5参照)の各処理のうち、書込指令までが完了していることになる。従って、リセット操作が中止された場合、RAM52には読取データが記憶されている。
【0041】
第二マイコン50は、書込処理の禁止が解除された場合、セクター読取指令から書込指令までの処理を省略してデータ更新処理を再開してもよい。この場合、第二マイコン50は、変更指令から書込完了通知までの処理を実行すればよい。このようにすれば、再開後のデータ更新処理を短時間で完了させることができる。
【0042】
なお、第二マイコン50は、準備処理を完了してからリセット操作の有無を確認してもよい。言い換えると、第二マイコン50は、準備処理が完了し、かつ書換処理を開始する前にリセット操作の有無を確認してもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の電子時計1は、フラッシュROM51と、第一ボタン35および第二ボタン36と、制御部10と、を有する。フラッシュROM51は、データの書き換えが単位領域ごとになされる不揮発性メモリの一例である。第一ボタン35および第二ボタン36は、ユーザによって操作がなされる操作部材の一例である。制御部10は、第一ボタン35および第二ボタン36に対して予め定められたリセット操作が所定時間Tr継続してなされた場合にリセットされる。
【0044】
本実施形態の所定時間Trは、書換時間Twよりも長い。書換時間Twは、単位領域のデータを書き換える書換処理に要する時間である。制御部10は、書換処理の開始前にリセット操作の有無を確認する。制御部10は、例えば、第一ボタン35および第二ボタン36に対してリセット操作がなされている場合、書換処理の開始を禁止する。本実施形態の電子時計1は、ユーザのリセット操作を優先しつつ、書換処理の実行中にリセットされることを抑制することができる。よって、電子時計1は、フラッシュROM51に記憶されているデータを適切に保護することができる。
【0045】
本実施形態の制御部10は、所定時間Trが経過する前にリセット操作が終了すると、書込処理の禁止を解除する。これにより、データを速やかにフラッシュROM51に書き込むことが可能となる。
【0046】
本実施形態の書換処理は、消去処理および書込処理で構成される。消去処理は、単位領域のデータを消去する処理である。書込処理は、更新データを単位領域に書き込む処理である。リセット操作がなされている場合に消去処理および書込処理が禁止されることで、データの保護が適切になされる。
【0047】
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。リセット操作は、実施形態において例示した操作には限定されない。リセット操作は、例えば、リューズ37を2段引きの状態にして第一ボタン35および第二ボタン36の何れかを押し込む操作でもよい。リセット操作において操作される部材は、専用のリセットボタンであってもよい。
【0048】
第二マイコン50は、リセット操作がなされている場合であっても書換処理の開始を許可してもよい。例えば、リセット操作が開始されてから所定時間Trが経過するまでの間に書換処理を完了できる場合には、書換処理が許可されてもよい。一例として、リセット操作の開始と書換要求が実質的に同時である場合、リセット指令が出力される前に書換処理を完了できる場合がある。こうした場合に、書換処理の開始が許可されてもよい。
【0049】
所定時間Trは、電子時計1のモードに応じて変更されてもよい。例えば、電子時計1がアップデートモードを有する場合に、アップデートモードにおける所定時間Trは、他のモードにおける所定時間Trよりも長くされてもよい。アップデートモードは、電子時計1のソフトウエアをアップデートするモードである。アップデートモードでは、例えば、第二マイコン50のソフトウエアがアップデートされる。アップデートモードでは、フラッシュROM51において多量のデータ書き換えが実行される。例えば、アップデートモードでは、所定時間Trが20秒とされ、一度に書き換えられるデータ量が18秒の間に書き換え可能なデータ量とされてもよい。
【0050】
また、リセット操作の継続時間が所定時間Trより短い場合に、通常操作を行なっても良い。例えば、第一ボタンを所定時間Tr押し込んだ場合はリセットを行い、所定時間Trより短い時間Ta押し込んだ場合は通常操作としても良い。ここで、通常操作とは、表示時刻の切り替えや電池残量の表示等、リセットを伴わない通常の時計操作である。
【0051】
通常操作は、リセット操作が所定時間Ta継続してなされた時点で行っても、所定時間Ta以上継続してなされた後に所定時間Tr未満で中止されたタイミングで行っても良い。
【0052】
なお、所定時間Tr以上押し込んだ場合は、通常操作の実行の有無によらず、リセットが行われる。また、書換時間が下記式(2)にように所定時間Ta及び所定時間Trを設定し、所定時間Ta以上リセット操作が継続された時点で書換処理を開始するようにして、通常操作を行った際に書換処理が禁止されない様にしてもよい。
Tw<Tr-Ta …(2)
【0053】
第一マイコン40は、リセット操作が検出された場合、自動的に第二マイコン50に対して通知してもよい。例えば、第一マイコン40は、ユーザのリセット操作が開始されるごとに第二マイコン50に対してリセット操作の開始を通知してもよい。
【0054】
制御部10において、第一マイコン40の機能および第二マイコン50の機能が一つのマイコンに搭載されてもよい。例えば、一つのマイコンが操作判断部41、電源管理部42、タイマー43、フラッシュROM51、RAM52、およびメモリ制御部53を有していてもよい。
【0055】
また、上記実施例においては、リセット操作がなされている場合に書換処理の開始を禁止しているが、書換処理の代わりにデータ更新処理の開始を禁止してもよい。
また、上記実施例においてはリセット操作について記載したが、リセット操作は電源をオフにする電源オフ操作であってもよい。この場合、制御部10は、書換処理の開始前に電源オフ操作の有無を確認する。制御部10は、操作部材に対して電源オフ操作がなされている場合に書換処理の開始を禁止してもよい。制御部10は、所定時間Trが経過する前に電源オフ操作が終了した場合は、書換処理の禁止を解除してもよい。制御部10は、電源オフ操作がなされている場合であっても、所定時間Trが経過するまでの間に書換処理を完了できる場合には、書換処理の開始を許可してもよい。
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 電子時計
2 外装ケース
4 電源
5 風防
10 制御部
21 ケース本体
22 かん
31 文字板
32 秒針
33 分針
34 時針
35 第一ボタン
36 第二ボタン
37 リューズ
40 第一マイコン
41 操作判断部
42 電源管理部
43 タイマー
50 第二マイコン
51 フラッシュROM
52 RAM
53 メモリ制御部
54 処理部
Tr 所定時間
Tw 書換時間