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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】整風板の開閉構造
(51)【国際特許分類】
   B61D 27/00 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
B61D27/00 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019139647
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020620
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】寺村 弘
(72)【発明者】
【氏名】龍溪 昇
(72)【発明者】
【氏名】王子 義明
(72)【発明者】
【氏名】森戸 大海
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0075424(US,A1)
【文献】特開2012-071655(JP,A)
【文献】特開2002-070429(JP,A)
【文献】特開2002-037061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の天井に設けられた空調設備の整風板の開閉構造であって、
送風口が形成されており、車両長手方向に区画された各点検口を塞ぐ整風板と、
前記整風板が前記点検口を開閉できるように前記天井に沿う方向への摺動をガイドするガイド部とを備え、
前記ガイド部には、前記整風板を重ねた状態で摺動可能なガイド空間が形成されており、
前記ガイド部には、前記ガイド空間を上下2層に分ける仕切板が、車幅方向の中央側に向けて突出形成されている
ことを特徴とする整風板の開閉構造。
【請求項2】
前記整風板には、車幅方向の端縁に切欠きが形成されており、
前記仕切板には、前記点検口のうち互いに隣接する第1点検口及び第2点検口からなる連続領域の少なくとも1つに対して、前記第1点検口では配置対象となる前記整風板の前記切欠きの通過を許容し、且つ、前記第1点検口を外れた前記第2点検口までの領域では前記切欠きの通過を阻止するような凹凸パターンが形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の整風板の開閉構造。
【請求項3】
鉄道車両の天井に設けられた空調設備の整風板の開閉構造であって、
送風口が形成されており、車両長手方向に区画された各点検口を塞ぐ整風板と、
前記整風板が前記点検口を開閉できるように前記天井に沿う方向への摺動をガイドするガイド部とを備え、
前記ガイド部には、前記整風板を重ねた状態で摺動可能なガイド空間が形成されており、
前記整風板は、下面側よりも上面側の幅の方が僅かに広くなるように形成されており、
前記ガイド部には、前記整風板の上面側の端縁を受ける端縁受部が形成されている
ことを特徴とする整風板の開閉構造。
【請求項4】
前記整風板の車幅方向の端縁の上面側には、下面側の端縁を車両長手方向へガイドするガイドレールが形成されていることを特徴とする請求項に記載の整風板の開閉構造。
【請求項5】
前記整風板と前記ガイド部との間には、位置決めのためのプランジャー構造が少なくとも1箇所に設けられていることを特徴とする請求項又はに記載の整風板の開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の天井モジュールの送風装置の下方に設けられる整風板の開閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の天井モジュール内には、空調のための横流ファンが設置されている。この横流ファンは車両長手方向に沿って配置され、車幅方向の中央に設けられることが多い。
【0003】
横流ファンの下方の開口は、送風を通過させるための送風口が形成された整風板によって覆われる。この整風板によって覆われている開口は、製造初期工程において横流ファンを車体に設置する際の作業に利用される他、ダクトの内部清掃等のメンテナンス時などの点検口として利用される。
【0004】
従来の整風板の多くは、開閉作業の効率を向上させるために、片側にヒンジを設けた構造を採用している。図13は従来の整風板の取付構造を示す側面図である。横流ファン202の下方に配置される整風板201は、車幅方向の片側をヒンジ200によって回動可能に支えられている。整風板201の取付構造はこのように構成されているので、ヒンジ200とは逆側に設けられた固定部品を解除するだけで整風板201の開閉を行うことが可能である。このような構成の整風板201については、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-95397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一方側にヒンジが設けられた整風板を開閉する場合、車内の中吊広告枠が干渉する。このため、整風板を開くためには、予め中吊広告枠を取り外しておく必要がある。したがって、整風板の開閉作業自体は作業効率の向上が図られるものであっても、中吊広告枠の取り外し作業が必要になる場合は作業が煩雑になる。
【0007】
また、上述のメンテナンスを始めとする作業時において、ヒンジから整風板を垂下させた状態で放置していると、作業員が接触して怪我をする恐れがあり、作業の障害にもなり得る。
【0008】
さらに、作業員の接触等によりヒンジが外れて整風板が落下すると、床材やシートに損傷が生じる恐れもある。
【0009】
そこで、本発明は、中吊広告枠との干渉を防止し、且つ、安全に作業を行うことが可能な整風板の開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の整風板の開閉構造は、鉄道車両の天井に設けられた空調設備の整風板の開閉構造であって、送風口が形成されており、車両長手方向に区画された各点検口を塞ぐ整風板と、前記整風板が前記点検口を開閉できるように前記天井に沿う方向への摺動をガイドするガイド部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の整風板の開閉構造は、上記構成に加えて、前記ガイド部には、前記整風板を重ねた状態で摺動可能なガイド空間が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の整風板の開閉構造は、上記構成に加えて、前記ガイド部には、前記ガイド空間を上下2層に分ける仕切板が、車幅方向の中央側に向けて突出形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の整風板の開閉構造は、上記構成に加えて、前記整風板には、車幅方向の端縁に切欠きが形成されており、前記仕切板には、前記点検口のうち互いに隣接する第1点検口及び第2点検口からなる連続領域の少なくとも1つに対して、前記第1点検口では配置対象となる前記整風板の前記切欠きの通過を許容し、且つ、前記第1点検口を外れた前記第2点検口までの領域では前記切欠きの通過を阻止するような凹凸パターンが形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の整風板の開閉構造は、上記構成に加えて、前記整風板は、下面側よりも上面側の幅の方が僅かに広くなるように形成されており、前記ガイド部には、前記整風板の上面側の端縁を受ける端縁受部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の整風板の開閉構造は、上記構成に加えて、前記整風板の車幅方向の端縁の上面側には、下面側の端縁を車両長手方向へガイドするガイドレールが形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の整風板の開閉構造は、上記構成に加えて、前記整風板と前記ガイド部との間には、位置決めのためのプランジャー構造が少なくとも1箇所に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、整風板が天井に沿う方向へ摺動することにより開閉可能に構成されているので、開放状態においても、車内側に整風板が垂下することがない。
【0019】
これにより、開放状態の整風板が中吊広告枠や作業員と干渉することを防止できる。
【0020】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、整風板を摺動させて重ねるようにして開閉できるので、開放した整風板を隣接する整風板の上で移動させることができる。
【0021】
これにより、整風板を収容するスペースが高さ方向へ厚み分だけ延設されるので、天井裏の限られたスペースを有効に利用することが可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、ガイド空間が仕切板によって上下2層に分けられるので、上側の層に整風板を配置した状態で下側の整風板を独立して操作することができる。
【0023】
これにより、個別に整風板を操作することができるので、作業効率が向上する。
【0024】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、整風板の切欠きが、対応する第1点検口の仕切板を通過することができる。これに対して、第1点検口を僅かにでも外れた位置から隣接する第2点検口の位置までの間では通過が阻止される。このような連続領域が全体の点検口の中で少なくとも1箇所設けられている。
【0025】
これにより、少なくとも上述のような連続領域においては、直上に押し上げた整風板をガイド部に沿って僅かにスライドさせるだけで仕切板の上に安定して載置することが可能となる。よって、そのまま隣接する第2点検口側へスライドさせると、自身の第1点検口を開放することができ、逆に、第2点検口側の整風板を引き寄せて隣接区画を開放することも可能となる。
【0026】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、ガイド部に設けられた端縁受部に対して、上面側の端縁を引っ掛けるようにして整風板が載置される。
【0027】
これにより、整風板を持ち上げるだけで点検口を開くことができるので、作業効率が向上する。また、構造が簡易であるため、コストの削減やメンテナンスの作業負担の軽減が可能となる。
【0028】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、持ち上げた整風板を隣接する区画の整風板に重ねる際、上面側に形成されたガイドレールに沿って摺動させることができる。
【0029】
これにより、全ての整風板の上面側にガイドレールを形成しておくと、互いに載せ替えることができるので、何れの点検口においても同様の操作により容易に開閉動作を行うことが可能となる。
【0030】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、整風板とガイド部との間にプランジャー構造が設けられるので、整風板の位置合わせが容易になる。
【0031】
これにより、整風板の浮き上がりや、車両長手方向へのズレを防止できる。
【0032】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、整風板が車幅方向に収容されるので、隣接する整風板同士の干渉が生じない。
【0033】
これにより、隣接する点検口を広範囲に同時に開放することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る整風板の開閉構造を備えた天井モジュールの斜視図である。
図2図1の天井モジュールを長手方向に見た縦断面図である。
図3図1の整風板の斜視図である。
図4図1の整風板を保持するガイド部を示し、(a)はガイド部の側面図、(b)は底面図である。
図5図1のガイド部であり、(a)は図4(a)のV-V部分拡大図、(b)はガイド部に整風板が配置されている図、(c)は整風板をガイド部に対して脱着する様子を示した図である。
図6】隣接2区画のガイド部を移動する整風板の動作を示した図である。
図7】隣接2区画のガイド部を移動する整風板の動作を示した図6の変形例を示した図である。
図8】切欠きの形成されていない整風板を用いた隣接2区画の開閉動作を示した図である。
図9】切欠きの形成されていない整風板と切欠きの形成された整風板の隣接2区画における開閉動作を示した図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る整風板の開閉構造におけるガイド部周辺の断面図である。
図11図10の構成の変形例を示した図である。
図12】本発明の第3の実施の形態に係る整風板の開閉構造を示した斜視図である。
図13】従来の整風板の取り付け構造を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態に係る整風板の開閉構造について図を用いて説明する。
【0036】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る整風板1の開閉構造を備えた天井モジュール102の斜視図である。車内側から見上げた状態の天井モジュール102の一部が示されている。
【0037】
空調から送られる空気を攪拌するための横流ファン104が、車両幅方向(以降、幅方向と呼ぶ。)の中央位置において、車両長手方向(以降、長手方向と呼ぶ。)に沿って配置されている。この横流ファン104から送られる風を車内側に導くための送風口1aが形成された整風板1が横流ファン104の下方位置に合わせて長手方向へ配列されている。
【0038】
横流ファン104の幅方向の両側には、空調から送られる空気を長手方向へ搬送するためのダクト106が配置されている。一方、整風板1の幅方向両側の天井100の面には、ダクト106と連通する吹出口106aが形成されている。この吹出口106aから送られる空気は、整風板1を介して送り出される送風によって攪拌される。
【0039】
整風板1は、幅方向の端縁2をガイド部4により保持されている。天井100のうち整風板1で覆われている部分は、横流ファン104の風を送り出す以外に、メンテナンス時などにおける点検口としても使用される。整風板1は、ガイド部4に対して長手方向へ摺動可能に保持されているので、何れかの整風板1を天井100に沿ってスライドさせることによって点検口を開放することができる。次に、この整風板1とガイド部4の構造について、側方の断面図を用いて説明する。
【0040】
図2は、図1の天井モジュール102を長手方向に見た縦断面図を示している。なお、天井100に取り付けられている中吊広告枠110及び中吊広告112を点線により表している。中吊広告枠110は、ガイド部4及び整風板1から僅かな隙間を開けて設置されている。
【0041】
本実施の形態に係る構成では、整風板1を天井100に沿って長手方向にスライドさせることができるので、中吊広告枠110と干渉することなく点検口6を開閉することが可能である。したがって、予め中吊広告枠110を取外すという従来の作業が省かれるので、作業効率が大幅に向上する。
【0042】
また、片側にヒンジを設けて開閉するタイプの従来の整風板では、垂下させた状態の整風板に作業員が干渉する恐れがあった。しかし、本発明に係る整風板1は、天井100の面に沿ってスライドするので、開放状態であっても作業空間の一部が占有されることがなく、接触事故などを防止できる。 次に整風板1について説明する。
【0043】
図3は、整風板1の斜視図を示している。整風板1は、幅方向の端縁2の周辺以外を平板で形成されたシンプルな構成となっている。なお、ここに示している整風板1に貫通形成された送風口1aの形状は、実施例の一つに過ぎず、攪拌に有効な形状であれば、異なる形状でも構わない。
【0044】
図3に見て取れるように、整風板1には、幅方向の端縁2に切欠き2aが形成されている。次に、この整風板1を保持するガイド部4について、図4及び図5を用いて説明する。
【0045】
図4は、整風板1を保持するガイド部4を示している。図4(a)はガイド部4を長手方向に見た側面図であり、図4(b)は底面図である。図4(b)には、図3の整風板1を1枚収容することのできる1区画分(区画A)を示している。この区画Aと隣接する区画Bとの境界は、一点鎖線で表している。
【0046】
また、図5はガイド部4を長手方向に見た側面図であり、図5(a)は図4(a)のV-V部分拡大図を示している。図5(b)は、ガイド部4に整風板1が配置されている状態を示し、図5(c)は、整風板1をガイド部4に対して脱着する際の様子を示している。
【0047】
図5(a)を参照して、ガイド部4内には、仕切板4bが幅方向中央側に突出するように形成されている。この仕切板4bによってガイド部4内のガイド空間4aが上下2層に仕切られている。
【0048】
図5(b)には、仕切板4bの上下に整風板1が配置された様子が示されている。このようにガイド部4は、整風板1を重ねて配置できる構造となっている。ここでは、メンテナンス時などのような特殊な状態の配置となる上方の整風板1を点線で表している。
【0049】
図5(c)に示すように、整風板1の初期設置時や交換時には、一旦整風板1の幅方向の端縁2を仕切板4bよりも上方に形成された退避部4cに進入させる。このようにして斜めに挿入された整風板1は、仕切板4bの上側の層に配置される。その後、仕切板4bの下側の層に移動させることにより設置が完了する。取外す際には、この逆の手順による。
【0050】
このようにガイド部4を上下2層に分ける仕切板4bの形状は、先に示した図4において点線で表されている。図4に表れているように、仕切板4bには、幅方向中央側に向けて凹凸パターンが形成されているのが見て取れる。この凹凸パターンに対して図3の整風板1の端縁2の切欠き2aを通過させることによって、整風板1の配置をガイド部4の仕切板4bの上層と下層との間で入れ替えることが可能となる。これら仕切板4bの凹凸パターンと整風板1の切欠き2aとの関係について図6を用いて説明する。
【0051】
図6は、区画A、Bからなる隣接2区画のガイド部4を移動する整風板1の動作を模式的に示している。ここでは、便宜的に、右側の点検口6を第1点検口6a、左側の点検口6を第2点検口6bとして区別する。また、整風板1には斜線を施して表している。なお、1枚の整風板1の動きを説明するため、ここでは隣接の整風板1については図示を省略している。
【0052】
図6(a)は、第1点検口6aの位置に、この第1点検口6a用の整風板1が配置された状態を示している。すなわち、図6(a)は、第1点検口6aが閉じられた状態を示している。これに対して、図6(b)は、第1点検口6aの右側が4分の1だけ開放された状態を示している。同様に、図6(c)は右側を2分の1、図6(d)は右側を4分の3開放した状態であり、図6(e)は第1点検口6aを全開状態にした状態を示している。
【0053】
図6(a)に表れているように、第1点検口6a用の整風板1の切欠き2aのパターンは、第1点検口6aの範囲のガイド部4の仕切板4bに形成された凹凸パターンと一致している。したがって、整風板1は、第1点検口6aの位置では仕切板4bを通過して上層
側へ持ち上げることが可能である(図5参照)。
【0054】
図6(b)では、図6(a)で上方へ持ち上げた整風板1を仕切板4bの上で滑らせるように第2点検口6b側へスライドさせている。ここでは、仕切板4bと整風板1の切欠き2aとが重なっている領域を塗り潰すと共にその位置を矢印で表している。第1点検口6aの領域のうち4分の1だけ第2点検口6b側へスライドした整風板1は、幅方向の端縁2(図3参照)でそれぞれ6箇所の重なりを形成しているのが見て取れる。これにより、整風板1は仕切板4bの下方に落下することなく上側の層で安定して保持される。
【0055】
図6(c)では、重なりの位置が変化して、幅方向の端縁2でそれぞれ2箇所ずつの重なりが形成されている。図6(b)の状態に比べてバランスは変化しているものの、4箇所で支えられているので、整風板1は仕切板4bの上で安定する。
【0056】
図6(d)では、第2点検口6b側で2箇所の重なりが追加形成されるので、整風板1は合計6箇所の重なりによって支えられる。
【0057】
図6(e)では、第2点検口6bに完全に重なる位置に整風板1が移動している。ここでも、6箇所の重なりが形成されているので、整風板1は仕切板4bの上で安定する。
【0058】
本実施の形態では図6(a)~(e)に示したように、整風板1は、自身の対応付けられた正規の配置でのみ仕切板4bを上下に通過することを許容されており、それ以外の隣接区画までの位置における通過は阻止される。上の例では、第1点検口6a用に設けられた整風板1は、第1点検口6aの位置でのみ上下の通過が許容される。
【0059】
このように構成されているので、第1点検口6aで作業を行う場合、整風板1を僅かに持ち上げて、隣接の第2点検口6b側へスライドさせるだけで、中吊広告枠110(図2参照)と干渉することなく容易に開放することが可能となる。
【0060】
ここに示した例では、第1点検口6aと第2点検口6bとの間でガイド部4の仕切板4bの凹凸パターンが鏡面対称の関係になるように構成されている。これにより、第2点検口6b側で作業を行う場合は、持ち上げた第2点検口6b用の整風板1を第1点検口6a側へスライドさせることにより、同様に開放できることがわかる。
【0061】
なお、図6には、隣接2区画分の領域について説明したが、隣接4区画分に対して、中央の2枚の整風板1を両側へ退避させる構成とすることも可能である。このように構成すると、隣接する整風板1同士を互いに離れる側へスライドさせることにより、同時に2区画分の点検口6を開放することが可能となる。
【0062】
次に、図6の変形例を図7に示す。
【0063】
図7(a)は、第1点検口16aが閉じられた状態、図7(b)は第1点検口16aの右側が4分の1だけ開放された状態、図7(c)は右側を2分の1開放した状態、図7(d)右側を4分の3開放した状態であり、図7(e)は第1点検口16aを全開状態にした状態を示している。図7でも図6と同様に、第1点検口16aから第2点検口16bへの隣接2区画内における整風板11の移動を模式的に表している。また、整風板11と仕切板14bとの重なり位置を塗り潰し、その位置を矢印で示しているのも図6と同様である。
【0064】
図7では、図6と異なり、整風板11の幅方向の端縁に形成された切欠き12aのパターンは互いに異なるパターンで形成されている。これに合わせて仕切板14bの凹凸パタ
ーンも形成されている。また、幅方向に対向するそれぞれの凹凸パターンでは、長手方向に不規則な形状になっている。さらに、第1点検口16aと第2点検口16bとが鏡面対称の関係にない点においても図6の形態とは異なっている。
【0065】
このように、隣接区画の少なくとも一方との間において、自身の区画を外れた中間位置で整風板11と仕切板14bとの重なりが形成されるので、ガイド部14の仕切板14bの上を安定してスライドさせることが可能となる。 この作用については、図6の構成と同様である。
【0066】
なお、整風板11を仕切板14bの上方と下方との間で移動させることによって自身の区画の点検口16を開放するためには、整風板11の幅方向の端縁12の切欠き12aは必須の構成ではない。このような切欠き12aの形成されていない整風板による構成例を図8図9に示す。
【0067】
図8は、切欠きの形成されていない整風板21を用いた区画A、Bからなる隣接2区画の開閉構造を示している。ここでは、右側を第1点検口26a、左側を第2点検口26bとする。また、図6図7の場合と同様に、ガイド部24は、高さ方向に整風板21を少なくとも2枚重ねられる程度のガイド空間が形成されているものとする。
【0068】
図8(a)は、第1点検口26aに、第1点検口26a用の整風板21が配置されている様子を示している。この整風板21は長方形に形成されており、幅方向の何れの端縁22にも切欠きは形成されていない。また、第1点検口26aには仕切板が形成されていない。これにより、第1点検口26aの領域において整風板21を自由に持ち上げることが可能である。これに対して、第2点検口26b側には、均等な幅の仕切板24bが長手方向に形成されている。
【0069】
図8(b)は、整風板21を第2点検口26b側へスライドさせて第1点検口26aの右側を2分の1だけ開放した状態を示している。また、図8(c)は、第1点検口26aを全開状態にして、第1点検口26a用の整風板21を第2点検口26b側に配置した状態を示している。
【0070】
図8に見て取れるように、第2点検口26b側にだけ形成された仕切板24bの上に整風板21を沿わせるようにスライドさせることにより、整風板21を第2点検口26b側に重ねて第1点検口26aを開放することができる。
【0071】
ところで、図8のような構成の場合、第2点検口26b用の整風板21を第2点検口26bの領域内でそのまま持ち上げることはできない。しかし、第1点検口26aの整風板21を持ち上げて、その下方に第2点検口26b用の整風板21を滑り込ませることによって第2点検口26bを開放することも可能である。
【0072】
図9は、切欠きの形成されていない整風板31と切欠き32aの形成された整風板33とが区画A、Bからなる隣接2区画の開閉構造を示している。ここでも説明の便宜のため、右側を第1点検口36a、左側を第2点検口36bとする。また、ガイド部34は、高さ方向に整風板31、33を少なくとも2枚重ねられる程度のガイド空間が形成されているものとする。
【0073】
図9(a)は、第1点検口36aに、第1点検口36a用の整風板31が配置されている様子を示している。この整風板31には、切欠きが形成されていない。そして、第1点検口36aには仕切板が形成されていない。このため、第1点検口36aの領域において整風板31をそのまま持ち上げることが可能である。
【0074】
図9(b)は、整風板31を第2点検口36b側へスライドさせて第1点検口36aの右側を2分の1だけ開放した状態を示している。また、図9(c)は、第1点検口36aを全開状態にして、第1点検口36a用の整風板31を第2点検口36b側に配置した状態を示している。
【0075】
第2点検口36b側には、凹凸パターンによる仕切板34bが形成されている。仕切板34bと整風板31との重なり域は、塗り潰しにより示している。
【0076】
これらの図9(a)~(c)からわかるように、第1点検口36aの開放については、図6の構成と同様の操作で行うことが可能である。ただし、第1点検口36a側には、ガイド部34の仕切板や整風板31の切欠きが形成されていない点において異なっている。
【0077】
図9(d)は、第1点検口36aおよび第2点検口36bにそれぞれ専用の整風板31、33が配置されている状態を示している。第2点検口36b側の整風板33には、仕切板34bのパターンに合わせた切欠き32aが形成されている。このような構成において、第2点検口36b側の整風板33を第1点検口36a側へスライドさせる場合について説明する。
【0078】
図9(e)は、整風板33を第1点検口36a側へスライドさせて第2点検口36bの左側を2分の1だけ開放させた状態を示している。また、図9(f)は、第2点検口36bを全開状態にして、第2点検口36b用の整風板33を第1点検口36a側に配置した状態を示している。ここでは、整風板33と仕切板34bとの重なり領域を塗り潰すことに加えて、整風板31、33同士の重なり領域についても塗り潰しにより表している。
【0079】
図9(e)の状態では、整風板33は一方で仕切板34bによって支えられ、他方では隣接する区画Aの整風板31によって支えられている。また、図9(f)の状態では、第2点検口36b用の整風板33は、第1点検口36a用の整風板31の上に完全に重なっている。このような構成であっても、互いに隣接する区画のガイド部34の上方へ整風板31又は整風板33を退避させることにより、点検口36a、36bを開放することが可能である。
【0080】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る整風板の開閉構造について、図10図11を用いて説明する。
【0081】
図10は、ガイド部44周辺の構造を長手方向に見た断面図を示している。
【0082】
整風板41の幅方向の両端縁42に接する位置には、ガイド部44が設けられている。図10(a)には、1枚の整風板41がガイド部44によって支えられている状態が示されている。整風板41は上面41b側の幅の方が下面41c側の幅よりも僅かに広くなるように形成されている。これに対して、ガイド部44側には、下方側で幅方向中央側へ突き出すように形成され、整風板41の端縁42を受けるための端縁受部44cが設けられている。このような構成により、ガイド部44は、長手方向への摺動が可能な状態で、整風板41を安定して支えることができる。
【0083】
なお、整風板41を重ねることができるようなガイド空間44aが高さ方向に形成されている点については、第1の実施の形態のガイド部4と同様である。しかし、本実施の形態では、ガイド空間44aを上下2層に仕切るための仕切板は設けられていない。
【0084】
そのような仕切板の代わりに、本実施の形態に係る整風板41の端縁42には互いの整
風板41の摺動をガイドするガイド構造として枠レール45を備えている。
【0085】
枠レール45は、整風板41の中央側の板状部43よりも高さ方向に厚く、上方側が幅方向へ突出している。そして、上面側にはガイド壁45aが形成されている。このガイド壁45a同士の間隔は、下面41c側の幅よりも広い値に設定されている。これにより、整風板41同士を重ねた際、上側配置の整風板41の枠レール45の下面41c側を下側配置の枠レール45のガイド壁45aによって長手方向へ摺動可能にガイドすることができる。
【0086】
図10(b)は、整風板41を2枚重ねた状態を示している。この図10(b)に表れているように、それぞれの枠レール45は、整風板41の板状部43よりも高さ方向に厚く形成されているので、板状部43同士の接触を回避し、車内側の表面に傷が発生することを防止できる。
【0087】
図10(c)は整風板41を脱着する様子を示している。第1の実施の形態において図5(c)を用いて示したような退避部44dを本実施の形態に係る構成にも有している。この退避部44dに一端を退避させた整風板41は、点線で示されている。このように一旦斜め方向に退避部44d内へ整風板41の端縁42を進入させることにより全体をガイド部44内へ収容することができる。整風板41を取外すときは、逆の手順で行われる。
【0088】
<変形例>
図11に、図10の構成の変形例を示す。図11は、ガイド部44にプランジャー構造48を備えた整風板41の開閉構造を示している。長手方向において、このプランジャー構造48が設けられていない位置では、図10に示した構造と同様である。
【0089】
このようにプランジャー構造48が設けられていると、整風板41を設置する際の位置決めが容易になる。図11には、プランジャー構造48が整風板41の幅方向の両側に設けられている構成を例として示されている。しかし、1枚の整風板41に対して少なくとも1箇所のプランジャー構造48が設けられていれば、同様の効果が得られる。
【0090】
また、図11では、プランジャー構造48がガイド部44側に設けられている構成を例として示したが、整風板41側に設けられていても構わない。
【0091】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る整風板の開閉構造について、図12を用いて説明する。
【0092】
図12は、車幅方向にスライド可能な整風板51の開閉構造を示している。図12(a)は整風板51を閉じた状態、図12(b)は開放した状態を示している。 何れも、第1の実施の形態において図1に示した天井モジュール102に相当する構成を上方から見た斜視図により示している。
【0093】
整風板51の幅方向の一端にはロック用金具51aが設けられている。このロック用金具51aを解除することにより他端側に設けられた戸袋54へ整風板51を収容することができる。戸袋54は図12(a)の部分拡大図に示されているように、整風板51を収容可能な間隔をおいて形成された平板によって構成されている。なお、戸袋54は、厳密な意味における袋構造である必要はなく、一端が開放されていても構わない。
【0094】
このように構成されていると、全区画を同時に開放することが可能となるので、作業効率が大幅に向上する。
【0095】
以上に述べてきたような構成は本発明の一例であり、以下のような変形例も含まれる。
【0096】
上記の実施の形態では、隣接2区画において、整風板は、自身の対応付けられた区画でのみ上層と下層の間の通過を許容される構成を例として示した。しかし、少なくとも隣接2区画でこのような関係が形成されていれば十分である。例えば、1区画飛び越した領域でも上層と下層の間の通過を許容される構成であっても構わない。このように構成すると、同じパターンの切欠き形状を有する整風板を複数箇所に配置することが可能であり、コストの削減に繋がる。
【0097】
また、上記の第1の実施の形態では、ガイド部4の仕切板4bに形成された凹凸パターンと、整風板1の切欠き2aとの関係において、自身の対応付けられた区画では両者は完全に嵌合可能な形状で構成されている例を示した。しかし、仕切板を介した上層と下層との間で通過可能な形状であれば、完全に嵌合可能な形状で構成されていなくても構わない。例えば、仕切板側の凹凸パターンによって形成される隙間の範囲内に、整風板の切欠きによる突起部分が含まれる構成であれば、両者の間に隙間が生じていても構わない。
【0098】
また、上記の第2の実施の形態では、整風板41の端縁42において、上面41b側にガイド壁45aが形成された構成を例として示した。しかし、上下に重ねた整風板41を長手方向に摺動可能にガイドできる構成であれば、ガイド壁45a以外の構成でも構わない。例えば、接触面の一方に凸条が形成され、他方に溝が形成されているような構成も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の整風板の開閉構造は、開閉のためのスペースを確保する必要がないので、スペースの限られた乗り物等の天井の点検口として有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 整風板
1a 送風口
2 端縁
2a 切欠き
4 ガイド部
4a ガイド空間
4b 仕切板
4c 退避部
6a 第1点検口
6b 第2点検口
11 整風板
12a 切欠き
14b 仕切板
16a 第1点検口
16b 第2点検口
21 整風板
24 ガイド部
24b 仕切板
26a 第1点検口
26b 第2点検口
31 整風板
32a 切欠き
34 ガイド部
34b 仕切板
36a 第1点検口
36b 第2点検口
41 整風板
41b 上面
41c 下面
42 端縁
43 板状部
44 ガイド部
44a ガイド空間
44c 端縁受部
44d 退避部
45 枠レール(ガイドレール)
45a ガイド壁(ガイド構造)
48 プランジャー構造
51 整風板
51a ロック用金具
54 戸袋
100 天井
102 天井モジュール
104 横流ファン
106 ダクト
106a 吹出口
110 中吊広告枠
112 中吊広告
A、B 区画
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13