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特許7113803テトラフルオロプロペン及びテトラフルオロエタンを含む組成物、動力サイクルにおけるその使用、並びに動力サイクル装置
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  • 特許-テトラフルオロプロペン及びテトラフルオロエタンを含む組成物、動力サイクルにおけるその使用、並びに動力サイクル装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】テトラフルオロプロペン及びテトラフルオロエタンを含む組成物、動力サイクルにおけるその使用、並びに動力サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/06 20060101AFI20220729BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20220729BHJP
   F01K 7/32 20060101ALI20220729BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
F01K25/06
C09K5/04 D
F01K7/32
F01K25/10 D
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019177023
(22)【出願日】2019-09-27
(62)【分割の表示】P 2016533590の分割
【原出願日】2014-11-21
(65)【公開番号】P2020023971
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-10-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】61/907,407
(32)【優先日】2013-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノス コントマリス
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】鈴木 充
【審判官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-90285(JP,A)
【文献】国際公開第2012/082939(WO,A1)
【文献】特開2011-168771(JP,A)
【文献】国際公開第2013/096515(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 7/32
F01K25/06-25/10
C09K 5/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ランキン装置で熱源からの熱を機械エネルギーに変換する方法であって、前記熱源から供給される熱を用いて、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、および1,1,2,2-テトラフルオロエタンからなる作動流体を加熱する工程と;前記加熱された作動流体を膨張させて、前記作動流体の圧力を低下させ、前記作動流体の圧力が低下するにつれて機械エネルギーを発生させる工程とを含み、
前記作動流体が、35~60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計40~65重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、からなる方法。
【請求項2】
前記作動流体を、加熱前に圧縮し、前記膨張した前記作動流体を、反復サイクルのために冷却及び圧縮する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作動流体は不燃性組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
亜臨界サイクルを用いて、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する、請求項2に記載の方法であって、
前記方法は、
(a)液体作動流体を、その臨界圧よりも低い圧力に圧縮する工程と、
(b)蒸気作動流体を形成するために、(a)から得られた圧縮された液体作動流体を、前記熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、
(c)前記作動流体の圧力を低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、
(d)冷却された液体作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、
(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、
を含む方法。
【請求項5】
遷移臨界サイクルを用いて、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する、請求項2に記載の方法であって、
前記方法は、
(a)液体作動流体を前記作動流体の臨界圧よりも高い圧力に圧縮する工程と、
(b)(a)から得られた圧縮された作動流体を、前記熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、
(c)前記作動流体の圧力をその臨界圧よりも低い圧力に低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、
(d)冷却された液体作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、
(e)冷却された前記液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、
を含む方法。
【請求項6】
超臨界サイクルを用いて、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する、請求項2に記載の方法であって、
前記方法は、
(a)作動流体をその臨界圧よりも高い圧力からより高い圧力に圧縮する工程と、
(b)(a)から得られた圧縮された作動流体を、前記熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、
(c)前記作動流体の圧力をその臨界圧よりも高い圧力に低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、
(d)その臨界圧よりも高い、冷却された作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、
(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、
を含む方法。
【請求項7】
E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、および1,1,2,2-テトラフルオロエタンからなる作動流体を含み、前記作動流体が、35~60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計40~65重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、からなる、有機ランキン装置。
【請求項8】
(a)熱交換ユニットと、(b)前記熱交換ユニットと流体連通している膨張機と、(c)前記膨張機と流体連通している作動流体冷却ユニットと、(d)前記作動流体冷却ユニットと流体連通している圧縮機と、を含み、前記作動流体が、次いで、反復サイクルにおいて構成要素(a)、(b)、(c)、および(d)を繰り返し流れるように、前記圧縮機が、前記熱交換ユニットと更に流体連通している、請求項に記載の有機ランキン装置。
【請求項9】
前記作動流体が、35~60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、10~16重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンと、30~49重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記作動流体が、35~60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、10~26重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンと、24~49重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記作動流体が、共沸性混合物または共沸混合物様組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記作動流体が、35~60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、10~16重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンと、30~49重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、からなる、請求項に記載の有機ランキン装置。
【請求項13】
前記作動流体が、35~60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、10~26重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンと、24~49重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、からなる、請求項に記載の有機ランキン装置。
【請求項14】
前記作動流体が、共沸混合物または共沸混合物様組成物である、請求項に記載の有機ランキン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の用途、特に、有機ランキンサイクル等の動力サイクルにおいて有用である方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ランキンサイクル等の動力サイクルのための地球温暖化係数の低い作動流体が必要とされている。このような材料は、低い地球温暖化係数と低い又はゼロのオゾン層破壊係数とによって測定するとき、環境影響が低くなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、本明細書に詳細に記載する通り、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、少なくとも1つのテトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)又は1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)とを含む組成物を含む。
【0004】
本発明によれば、熱源からの熱を機械エネルギーに変換するための方法が提供される。前記方法は、熱源から供給された熱を用いて、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を加熱する工程と;前記加熱された作動流体を膨張させて、前記作動流体の圧力を低下させ、前記作動流体の圧力が低下するにつれて機械エネルギーを発生させる工程と、を含む。
【0005】
本発明によれば、熱を機械エネルギーに変換するために作動流体を含有する動力サイクル装置が提供される。前記装置は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を含有する。
【0006】
本発明によれば、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)を含む作動流体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る直接熱交換における熱源及び有機ランキンサイクルシステムのブロック図である。
図2】熱源、及び本発明に従って機械エネルギーに変換するために、熱源から熱交換機に熱を提供する二次ループ構造を用いる有機ランキンサイクルシステムのブロック図である。
図3】HFC-134aの蒸気圧と比べたときの、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含有する組成物の蒸気圧のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
下記実施形態の詳細に言及する前に、幾つかの用語を定義又は明確化する。
【0009】
地球温暖化係数(GWP)は、1キログラムの二酸化炭素の排出と比較した、1キログラムの特定の温室効果ガスの大気排出に起因する相対的な地球温暖化への寄与を推定するための指数である。GWPは、様々な対象期間について計算することができ、所与のガスの大気寿命の効果を示す。100年という対象期間のGWPが一般的に参照される値である。
【0010】
正味のサイクル動力出力は、圧縮機(例えば、液体ポンプ)によって消費される機械仕事の割合を差し引いた膨張機(例えば、タービン)における機械仕事の発生の割合である。
【0011】
動力発生の容積は、動力サイクル(例えば、有機ランキンサイクル)を通して循環する作動流体の単位体積当たりの正味のサイクル動力出力(膨張機の出口における条件で測定したとき)である。
【0012】
サイクル効率(熱効率とも呼ばれる)は、正味のサイクル動力出力を、動力サイクル(例えば、有機ランキンサイクル)の加熱段階中に作動流体が熱を受け取る割合で除した商である。
【0013】
亜冷却は、所定の圧力についてのある液体の飽和点を下回る温度への、該液体の温度の低下である。飽和点は、蒸気の組成物が完全に液体へと凝縮される温度である(泡立ち点とも呼ばれる)。しかし、亜冷却は、所定の圧力においてより低い温度の液体になるまで前記液体の冷却を続ける。亜冷却量は、飽和温度を下回る冷却の量(度単位)、又は液体組成物がその飽和温度をどれだけ下回って冷却されるかである。
【0014】
過熱は、蒸気組成物の飽和蒸気温度をどれだけ上回って加熱されるかを定義する用語である。飽和蒸気温度は、組成物を冷却した場合、最初の液滴が形成される温度であり、「露点」とも呼ばれる。
【0015】
温度グライド(単に「グライド」と呼ばれることもある)は、任意の亜冷却又は過熱を除く、冷蔵システムの構成部品内の冷媒による相変化プロセスの開始温度と終了温度との間の差の絶対値である。この用語は、近共沸混合物又は非共沸性組成物の凝縮又は蒸発を説明するために使用され得る。平均グライドとは、所与の条件セット下で動作する特定の冷却装置システムの蒸発機におけるグライドと凝縮機におけるグライドとの平均を指す。
【0016】
共沸性組成物は、2つ以上の異なる成分の混合物であって、所定の圧力下で液体形態であるとき、実質的に一定の温度で沸騰し、この温度は個々の成分の沸騰温度より高くても低くてもよく、沸騰を経る液体組成物全体と本質的に同一の蒸気組成物を提供する混合物である。(例えば、M.F.Doherty and M.F.Malone,Conceptual Design of Distillation Systems,McGraw-Hill(New York),2001,185~186,351~359を参照)。
【0017】
したがって、共沸性組成物の本質的な特徴は、所定の圧力では液体組成物の沸点が不変であること、及び沸騰している組成物の上方の蒸気の組成が、本質的に、沸騰している液体組成物全体の組成である(すなわち、液体組成物の成分の分留が起こらない)ことである。また、共沸性組成物が様々な圧力で沸騰に供されたとき、共沸性組成物の各成分の沸点及び重量パーセントが変化し得ることも当該技術分野において認識されている。したがって、共沸性組成物は、成分中に存在する特有の関係性の観点から、又は成分の組成範囲の観点から、又は特定の圧力で沸点が一定であることを特徴とする組成物の各成分の正確な重量パーセントの観点から定義され得る。
【0018】
本発明の目的のために、共沸混合物様組成物とは、実質的に共沸性組成物のように挙動する組成物を意味する(すなわち、一定の沸騰特性又は沸騰若しくは蒸発時に分留しない傾向を有する)。したがって、沸騰又は蒸発中、蒸気及び液体組成物は、変化する場合でも、最小又は無視できる程度しか変化しない。これは、沸騰又は蒸発中に蒸気及び液体組成物がかなりの程度変化する非共沸混合物様組成物とは対照的である。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はこれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含む、組成物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもその要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はこのような組成物、プロセス、方法、物品、若しくは装置に内在する他の要素を含んでもよい。更に、明示的に逆の記載がない限り、「又は」は、包括的な又はを指し、排他的な又はを指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下のうちのいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)。
【0020】
移行句「からなる」は、特定されない任意の要素、工程、又は成分を排除するものである。特許請求の範囲の場合、このような句は、材料に通常付随する不純物を除いて、列挙される材料以外の材料を含むことに対して特許請求の範囲を閉ざすことになる。語句「からなる」がプレアンブルの直後ではなく請求項の本文の条項中に現れるとき、この語句は、その条項内に記載される要素のみを限定するものであり、他の要素が特許請求の範囲全体から除外される訳ではない。
【0021】
移行句「から本質的になる」は、文字通り開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法、又は装置を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素は、請求される発明の基本的及び新規の特性(複数可)に実質的に影響を及ぼす。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の立場を占める。
【0022】
出願人らが、発明又はその一部分を、「含む」等のオープンエンドな用語で定義していた場合、(特に明記しない限り)その記載は、用語「から本質的になる」又は「からなる」を用いる発明も記載していると解釈すべきであることは容易に理解されるはずである。
【0023】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載される要素及び成分を説明するために採用される。これは、単に便宜上、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためになされる。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0024】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、特定の一説が引用されない限り、その全体が参照により本明細書に援用される。意味が矛盾する場合は、定義を含め、本明細書が優先される。更に、材料、方法、及び実施例は、単なる例証であり、限定することを意図するものではない。
【0025】
E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze、E-CHF=CHCF3)は、フルオロカーボンメーカーから市販されているか、又は当該技術分野において公知の方法によって作製することができる。具体的には、この化合物は、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb、CF3CHFCH2F)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa、CF3CH2CHF2)を含むペンタフルオロプロパンの群の脱フッ化水素によって調製することができる。この脱フッ化水素反応は、触媒の存在下又は非存在下において蒸気相で、また、NaOH又はKOH等の苛性物との反応によって液相で生じ得る。これら反応は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2006/0106263号により詳細に記載されている。
【0026】
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a、CF3CH2F)は、多くの冷媒製造業者及び販売業者から市販されているか、又は当該技術分野において公知の方法によって調製することができる。HFC-134aは、1,1-ジクロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン(すなわち、CCl2FCF3又はCFC-114a)の1,1,1,2-テトラフルオロエタンへの水素化によって作製することができる。更に、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134、CHF2CHF2)は、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン(すなわち、CClF2CClF2又はCFC-114)の1,1,2,2-テトラフルオロエタンへの水素化によって作製することができる。
【0027】
動力サイクル方法
約100℃以下の温度の熱は、様々な熱源から大量に入手可能である。それは、様々な工業プロセスから副生成物として獲得してもよく、ソーラーパネルを通して日照から収集してもよく、浅い又は深い井戸を通して地質学的熱水貯留層から抽出してもよい。このような熱は、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含む作動流体、又はE-HFO-1234ze、HFC-134、及びHFC-134aを含む作動流体を用いて、ランキンサイクルを通して様々な用途のために機械力又は電力に変換することができる。
【0028】
亜臨界有機ランキンサイクル(ORC)は、上記サイクルで用いられる有機作動流体が、上記有機作動流体の臨界圧よりも低い圧力で熱を受け取り、かつ上記作動流体が、サイクル全体にわたってその臨界圧よりも低い圧力で保たれるランキンサイクルと定義される。
【0029】
遷移臨界ORCは、上記サイクルで用いられる有機作動流体が、上記有機作動流体の臨界圧よりも高い圧力で熱を受け取るランキンサイクルと定義される。遷移臨界サイクルでは、作動流体は、サイクル全体にわたってその臨界圧よりも高い圧力にはならない。
【0030】
超臨界動力サイクルは、上サイクルで用いられる有機作動流体の臨界圧よりも高い圧力で動作する動力サイクルとして定義され、以下の工程:圧縮、加熱、膨張、冷却を含む。
【0031】
本発明によれば、熱源からの熱を機械エネルギーに変換するための方法が提供される。該方法は、熱源から供給された熱を用いて作動流体を加熱する工程と;加熱された作動流体を膨張させて、前記作動流体の圧力を低下させ、作動流体の圧力が低下するにつれて機械エネルギーを発生させる工程と、を含む。上記方法は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を用いることを特徴とする。別の実施形態では、上記方法は、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含む作動流体、又はE-HFO-1234ze、HFC-134、及びHFC-134aを含む作動流体を用いることを特徴とする。
【0032】
本発明の方法は、典型的に、有機ランキン動力サイクルにおいて用いられる。蒸気(無機)動力サイクルと比べて比較的低温で入手可能な熱は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を用いて、ランキンサイクルを通して機械力を発生させるために用いることができる。本発明の方法では、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を、加熱する前に圧縮する。圧縮は、熱源からの熱を用いて作動流体を加熱する熱伝達ユニット(例えば、熱交換機又は蒸発機)に作動流体を注入するポンプによって提供され得る。次いで、加熱した作動流体を膨張させて、その圧力を低下させる。機械エネルギーは、膨張機を用いて作動流体を膨張させている間に発生する。膨張機の例としては、ターボ又は動的膨張機(例えば、タービン)、及び容積式膨張機(例えば、スクリュー膨張機、スクロール膨張機、及びピストン膨張機)が挙げられる。また、膨張機の例としては、ロータリーベーン膨張機(Musthafah b.Mohd.Tahir,Noboru Yamada,and Tetsuya Hoshino,International Journal of Civil and Environmental Engineering 2:1 2010)が挙げられる。
【0033】
機械力は、直接(例えば、圧縮機を駆動するために)用いてもよく、又は発電機の使用を通して電力に変換してもよい。作動流体を再利用する動力サイクルでは、膨張した作動流体を冷却する。冷却は、作動流体冷却ユニット(例えば、熱交換機又は凝縮機)において行ってよい。次いで、冷却した作動流体を繰り返しサイクル(すなわち、圧縮、加熱、膨張等)において用いてよい。冷却段階から作動流体を移行させるために、圧縮に用いるのと同じポンプを用いてよい。
【0034】
1つの実施形態では、熱を機械エネルギーに変換する方法は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を用いる。熱を機械エネルギーに変換する方法において注目すべきは、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)及び1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)から本質的になる作動流体である。また、熱を機械エネルギーに変換する方法において注目すべきは、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から本質的になる作動流体である。また、注目すべきは、作動流体が、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)及び1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)を含むか又はこれらから本質的になる、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する方法である。熱を機械エネルギーに変換する方法の別の実施形態では、作動流体は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)及び1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)からなる。また、注目すべきは、作動流体が、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)を含むか又はこれらから本質的になる、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する方法である。熱を機械エネルギーに変換する方法の別の実施形態では、作動流体は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)からなる。
【0035】
動力サイクル装置における使用について注目すべきは、不燃性である、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む組成物である。E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む特定の組成物は、標準試験ASTM 681によって不燃性である。E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含む特定の組成物は、標準試験ASTM 681によって不燃性であると予測される。特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが85重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが84重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが83重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが82重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが81重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが80重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが78重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが76重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが74重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが72重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが70重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeとHFC-134とを含有し、E-HFO-1234zeが69重量パーセント以下である組成物である。したがって、特に注目すべきは、約1重量パーセント~69重量パーセントのE-HFO-1234zeと、約99重量パーセント~31重量パーセントのHFC-134とを含有する組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeとHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが85重量パーセント以下である組成物である。したがって、特に注目すべきは、約1重量パーセント~85重量パーセントのE-HFO-1234zeと、約99重量パーセント~15重量パーセントのHFC-134aとを含有する組成物である。更に、特に注目すべきは、約55重量パーセント~約81重量パーセントのE-HFO-1234zeと、約45重量パーセント~約18重量パーセントのHFC-134aとを含有する組成物である。更に、特に注目すべきは、約55重量パーセント~約70重量パーセントのE-HFO-1234zeと、約45重量パーセント~約30重量パーセントのHFC-134aとを含有する組成物である。また、特に注目すべきは、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む共沸性及び共沸混合物様組成物である。特に、約1~約99重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約99~約1重量パーセントのHFC-134とを含有する共沸混合物様組成物、又は約1~約99重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約99~約1重量パーセントのHFC-134aとを含有する共沸混合物様組成物である
【0036】
熱を機械エネルギーに変換する方法において特に有用なのは、作動流体が、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とから本質的になる実施形態である。また、特に有用なのは、作動流体が、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)及び1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)からなる実施形態である。また、特に有用なのは、作動流体が、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)からなる実施形態である。
【0037】
熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約35~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約5~約65重量パーセントのHFC-134とを含有する組成物である。また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約5~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約5~約95重量パーセントのHFC-134とを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約5~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約40~約95重量パーセントのHFC-134とを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約35~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約40~約65重量パーセントのHFC-134とを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約63~約75重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約37~約25重量パーセントのHFC-134とを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。
【0038】
また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約35~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計で約5~約65重量パーセントのHFC-134及びHFC-134aとを含有する組成物である。また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約5~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計で約5~約95重量パーセントのHFC-134及びHFC-134aとを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約5~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計で約40~約95重量パーセントのHFC-134及びHFC-134aとを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約35~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計で約5~約65重量パーセントのHFC-134及びHFC-134aとを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について特に注目すべきは、約35~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計で約40~約65重量パーセントのHFC-134及びHFC-134aとを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。
【0039】
熱を機械エネルギーに変換する方法において有用な組成物については、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、HFC-134、及びHFC-134aを含有する組成物である。特に、注目すべきは、約5~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約5~約95重量パーセントのHFC-134と、約5~約95重量パーセントのHFC-134aとを含む組成物である。また、注目すべきは、約35~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約2~約38重量パーセントのHFC-134と、約2~約39重量パーセントのHFC-134aとを含む組成物である。また、注目すべきは、約35~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約10~約26重量パーセントのHFC-134と、約24~約49重量パーセントのHFC-134aとを含む組成物である。また、注目すべきは、約5~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約10~約38重量パーセントのHFC-134と、約24~約72重量パーセントのHFC-134aとを含む組成物である。
【0040】
また、熱を機械エネルギーに変換する方法における使用について有用なのは、作動流体が低GWPを有する実施形態である。1000未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含有する組成物は、11重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、89重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134とを含む。1000未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134aを含有する組成物は、30.5重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、69.5重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134aとを含む。
【0041】
500未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含有する組成物は、56重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、44重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134とを含む。500未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134aを含有する組成物は、65.5重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、34.5重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134aとを含む。
【0042】
150未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含有する組成物は、87.5重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、12.5重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134とを含む。150未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134aを含有する組成物は、90重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、10重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134aとを含む。
【0043】
1つの実施形態では、本発明は、亜臨界サイクルを用いて熱源からの熱を機械エネルギーに変換する方法に関する。この方法は、
(a)液体作動流体をその臨界圧よりも低い圧力に圧縮する工程と、
(b)(a)から得られた圧縮された液体作動流体を、熱源によって供給された熱を用いて加熱して、蒸気作動流体を形成する工程と、
(c)作動流体の圧力を低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、
(d)冷却された液体作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、
(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、を含む。
【0044】
上記亜臨界有機ランキンサイクル(ORC)システムの第1の工程では、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む液相の作動流体を、その臨界圧よりも低い圧力に圧縮する。第2の工程では、熱交換機が熱源と熱連通している膨張機に作動流体が入る前に、より高温に加熱される熱交換機に該作動流体を通す。熱交換機は、熱伝達の任意の公知の手段によって熱源から熱エネルギーを受け取る。ORCシステムの作動流体は、熱を得る熱供給熱交換機を通じて循環する。
【0045】
1つ以上の内部熱交換機(例えば、復熱機)の使用、及び/又はカスケードシステムにおける1超のサイクルの使用を含む実施形態は、本発明の亜臨界ORC動力サイクルの範囲内であることが意図される。
【0046】
1つの実施形態では、本発明は、遷移臨界サイクルを用いて熱源からの熱を機械エネルギーに変換する方法に関する。この方法は、
(a)液体作動流体を該作動流体の臨界圧よりも高い圧力に圧縮する工程と、
(b)(a)から得られた圧縮された作動流体を、熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、
(c)作動流体の圧力をその臨界圧よりも低い圧力に低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、
(d)冷却された液体作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、
(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、を含む。
【0047】
上記遷移臨界有機ランキンサイクル(ORC)システムの第1の工程では、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む液相の作動流体を、その臨界圧よりも高い圧力に圧縮する。第2の工程では、熱交換機が熱源と熱連通している膨張機に作動流体が入る前に、より高温に加熱される熱交換機に該作動流体を通す。熱交換機は、熱伝達の任意の公知の手段によって熱源から熱エネルギーを受け取る。ORCシステムの作動流体は、熱を得る熱供給熱交換機を通じて循環する。
【0048】
次の工程では、加熱された作動流体の少なくとも一部を熱交換機から除去し、膨張プロセスにより作動流体の熱エネルギー含量の少なくとも一部が機械軸動エネルギーに変換される膨張機に送る。軸動エネルギーは、所望の速度及び必要なトルクに依存して、ベルト、プーリー、ギア、トランスミッション、又は類似の装置の従来の構成を採用することによって任意の機械仕事を行うために用いることができる。1つの実施形態では、シャフトは、誘導発電機等の発電装置に接続してもよい。生成される電気は、局所的に用いてもよく、グリッドに送達してもよい。作動流体の圧力を該作動流体の臨界圧よりも低い圧力に低下させて、蒸気相作動流体を生成する。
【0049】
次の工程では、作動流体を膨張機から凝縮機に送り、蒸気相作動流体を凝縮させて液相作動流体を生成する。上記工程は、ループシステムを形成し、多数回繰り返してよい。
【0050】
1つ以上の内部熱交換機(例えば、復熱機)の使用、及び/又はカスケードシステムにおける1超のサイクルの使用を含む実施形態は、本発明の遷移臨界ORC動力サイクルの範囲内であることが意図される。
【0051】
更に、遷移臨界有機ランキンサイクルについては、幾つかの異なる動作モードが存在する。
【0052】
1つの動作モードでは、遷移臨界有機ランキンサイクルの第1の工程において、作動流体を、該作動流体の臨界圧よりも高い圧力に、実質的に等エントロピー的に圧縮する。次の工程では、作動流体を一定圧(等圧)条件下でその臨界温度よりも高い温度に加熱する。次の工程では、作動流体を、該作動流体を蒸気相で維持する温度で、実質的に等エントロピー的に膨張させる。膨張の終わりに、作動流体は、その臨界温度よりも低い温度で過熱蒸気である。このサイクルの最後の工程で、作動流体は冷却され、熱が冷却媒体へ放出されながら凝縮する。この工程中、作動流体は、液体に凝縮される。作動流体は、この冷却工程の最後に亜冷却してもよい。
【0053】
遷移臨界ORC動力サイクルの別の動作モードでは、第1の工程において、作動流体を、該作動流体の臨界圧よりも高い圧力に、実質的に等エントロピー的に圧縮する。次の工程では、次いで、作動流体を一定圧条件下で、その臨界温度よりも高い温度まで加熱するが、加熱の程度は、次の工程において、作動流体が実質的に等エントロピー的に膨張し、そしてその温度が低下したときに、該作動流体が、該作動流体の部分的凝縮又はミスチングが生じ得る飽和蒸気の条件に十分に近くなるような範囲内である。しかし、この工程の終わりに、作動流体は、依然としてわずかに過熱されている蒸気である。最後の工程で、作動流体は冷却され、熱が冷却媒体へ放出されながら凝縮する。この工程中、作動流体は、液体に凝縮される。作動流体は、この冷却/凝縮工程の最後に亜冷却してもよい。
【0054】
遷移臨界ORC動力サイクルの別の動作モードでは、第1の工程において、作動流体を、該作動流体の臨界圧よりも高い圧力に、実質的に等エントロピー的に圧縮する。次の工程では、作動流体を一定圧条件下でその臨界温度よりも低いか又はほんのわずかに高い温度まで加熱する。この段階では、作動流体の温度は、該作動流体を次の工程で実質的に等エントロピー的に膨張させるとき、該作動流体が部分的に凝縮するような温度である。最後の工程で、作動流体は冷却され、熱が冷却媒体へ放出されながら完全に凝縮する。作動流体は、この工程の最後に亜冷却してもよい。
【0055】
遷移臨界ORCサイクルの上記実施形態は、実質的に等エントロピー的な膨張及び圧縮、並びに等圧加熱又は冷却を示すが、このような等エントロピー的又は等圧条件が維持されないが、それにもかかわらず、サイクルが遂行される他のサイクルも本発明の範囲内である。
【0056】
1つの実施形態では、本発明は、超臨界サイクルを用いて熱源からの熱を機械エネルギーに変換する方法に関する。この方法は、
(a)作動流体をその臨界圧よりも高い圧力からより高い圧力に圧縮する工程と、
(b)(a)から得られた圧縮された作動流体を、熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、
(c)作動流体の圧力をその臨界圧よりも高い圧力に低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、
(d)その臨界圧よりも高い、冷却された作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する、工程と
(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、を含む。
【0057】
1つ以上の内部熱交換機(例えば、復熱機)の使用、及び/又はカスケードシステムにおける1超のサイクルの使用を含む実施形態は、本発明の超臨界ORC動力サイクルの範囲内であることが意図される。
【0058】
典型的に、亜臨界ランキンサイクル動作の場合、作動流体に供給される熱の大部分は、作動流体の蒸発中に供給される。その結果、作動流体の温度は、熱源からの熱が作動流体に伝達される間、本質的に一定である。対照的に、流体をその臨界圧よりも高い圧力で相変化することなく等圧加熱したとき、作動流体の温度は変動し得る。したがって、熱源の温度が変動するとき、その臨界圧よりも高い圧力の流体を使用して熱源から熱を抽出することにより、亜臨界熱抽出の場合と比べて、熱源の温度と作動流体の温度とをより一致させることができる。その結果、超臨界サイクル又は遷移臨界サイクルにおける熱交換プロセスの効率は、多くの場合、亜臨界サイクルよりも高い(Chen et al,Energy,36,(2011)549~555及び本明細書における参照文献を参照)。
【0059】
E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンの臨界温度及び圧力は、それぞれ、109.4℃及び3.63MPaである。HFC-134aの臨界温度及び圧力は、それぞれ、101.1℃及び4.06MPaである。HFC-134の臨界温度及び圧力は、それぞれ、118.6℃及び4.62MPaである。作動流体としてE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを使用することにより、超臨界サイクル又は遷移臨界サイクルにおけるその臨界温度よりも高い温度の熱源から熱を受け取るランキンサイクルを可能にすることができる。より高温の熱源は、(より低温の熱源と比べて)より高いサイクルエネルギー効率及び動力生成のための容積をもたらし得る。その臨界温度よりも高い温度の作動流体を用いて熱を受け取るとき、指定の圧力及び出口温度(膨張機の入口温度と本質的に等しい)を有する流体加熱機を、従来の亜臨界ランキンサイクルで用いられる蒸発機(又はボイラー)の代わりに用いる。
【0060】
上記方法の1つの実施形態では、熱を機械エネルギーに変換する効率(サイクル効率)は、少なくとも約2%である。好適な実施形態では、前記効率は、以下から選択することができる:
約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、及び約25%。
【0061】
別の実施形態では、前記効率は、上記任意の2つの効率の数の端点(両端を含む)を有する範囲から選択される。
【0062】
亜臨界サイクルについては典型的に、熱源からの熱を用いて作動流体を加熱する温度は、約50℃から作動流体の臨界温度未満、好ましくは約80℃から作動流体の臨界温度未満、より好ましくは約95℃から作動流体の臨界温度未満の範囲である。遷移臨界サイクル及び超臨界サイクルについては典型的に、熱源からの熱を用いて作動流体を加熱する温度は、作動流体の臨界温度超から約400℃、好ましくは作動流体の臨界温度超から約300℃、より好ましくは作動流体の臨界温度超から250℃の範囲である。
【0063】
好適な実施形態では、膨張機の入口における動作温度は、以下の温度のうちのいずれか1つであってもよく、又は以下の任意の2つの数によって規定される範囲内(両端を含む)であってもよい:
約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、及び約163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、323、323、324、325、326、327、328、329、330、331、323、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400℃。
【0064】
膨張機における作動流体の圧力は、膨張機の入口圧力から膨張機の出口圧力に向かって低下する。超臨界サイクルについて典型的な膨張機の入口圧力は、約5MPa~約15MPa、好ましくは約5MPa~約10MPa、より好ましくは約5MPa~約8MPaの範囲内である。超臨界サイクルについて典型的な膨張機の出口圧力は、臨界圧よりも1MPa以内高い。
【0065】
遷移臨界サイクルについて典型的な膨張機の入口圧力は、ほぼ臨界圧~約15MPa、好ましくはほぼ臨界圧~約10MPa、より好ましくはほぼ臨界圧~約8MPaの範囲内である。遷移臨界サイクルについて典型的な膨張機の出口圧力は、約0.15MPa~約1.8MPa、より典型的には約0.25MPa~約1.10MPa、より典型的には約0.35MPa~約0.75MPaの範囲内である。
【0066】
亜臨界サイクルについて典型的な膨張機の入口圧力は、約0.99MPaから臨界圧よりも約0.1MPa低い圧力、好ましくは約1.6MPaから臨界圧よりも約0.1MPa低い圧力、より好ましくは約2.47MPaから臨界圧よりも約0.1MPa低い圧力の範囲内である。亜臨界サイクルについて典型的な膨張機の出口圧力は、約0.15MPa~約1.8MPa、より典型的には約0.25MPa~約1.10MPa、より典型的には約0.35MPa~約0.75MPaの範囲内である。
【0067】
動力サイクル装置のコストは、より高圧用の設計が必要であるとき、増大し得る。したがって、一般的に、最高サイクル動作圧を限定することは、少なくとも初期コストに関して有利である。注目すべきは、最高動作圧(典型的に、作動流体の加熱機又は蒸発機、及び膨張機の入口に存在)が2.2MPaを超えないサイクルである。
【0068】
本発明の作動流体は、低圧蒸気、産業廃熱、太陽エネルギー、地熱温水、低圧地熱蒸気等の比較的低温の熱源、又は燃料電池、若しくはマイクロタービンを含むタービン、若しくは内燃エンジンを利用する分散発電装置から抽出されるか又は受け取られる熱から機械エネルギーを発生させるためのORCシステムにおいて用いてよい。1つの低圧蒸気源は、二流体地熱ランキンサイクルとして知られているプロセスであってよい。多量の低温蒸気は、化石燃料動力発電所等、多くの場所で見出すことができる。
【0069】
注目すべきは、可動式内燃エンジン(例えば、トラック又は船舶又は鉄道のディーゼルエンジン)から排出されるガスから回収される廃熱、静止内燃エンジン(例えば、静止ディーゼルエンジン発電機)からの排気ガスからの廃熱、燃料電池からの廃熱、複合加熱、冷却、及び電力、又は地域暖房及び冷却プラントで入手可能な熱、バイオマス燃料エンジンからの廃熱、バイオガス、埋立地ガス、及び炭層メタンを含む様々な源からのメタンで動作する、天然ガス若しくはメタンガスバーナー又はメタン燃焼ボイラー又はメタン燃料電池(例えば、分散発電施設)からの熱、紙/パルプ工場における樹皮及びリグニンの燃焼からの熱、焼却炉からの熱、従来の蒸気動力プラントにおける低圧蒸気からの熱(「ボトミング」ランキンサイクルを駆動させるため)、及び地熱を含む熱源である。
【0070】
また、注目すべきは、パラボラソーラーパネルアレイを含むソーラーパネルアレイからの太陽熱、濃縮太陽熱発電所からの太陽熱、PVシステムを冷却して高いPVシステム効率を維持するために太陽電池による(PV)ソーラーシステムから除去される熱を含む熱源である。
【0071】
また、注目すべきは、精油業者、石油化学プラント、オイル及びガスパイプライン、化学工業、商業ビル、ホテル、ショッピングモール、スーパーマーケット、ベーカリー、食品加工業、レストラン、塗料硬化オーブン、家具製造、プラスチック成形業者、セメント窯、材木窯、焼成作業、鉄鋼業、硝子工業、鋳造所、製錬、空調、冷凍、及びセントラルヒーティングからなる群から選択される少なくとも1つの業界に関連する少なくとも1つの作業を含む熱源である。
【0072】
本発明のランキンサイクルの1つの実施形態では、地上を循環している作動流体に地熱を供給する(例えば、二流体サイクル地熱発電所)。本発明のランキンサイクルの別の実施形態では、作動流体は、ランキンサイクルの作動流体として、及び「熱サイホン効果」として知られている、温度誘導性の流体密度変動によって流れが大きく又は独占的に駆動される深井戸において地下を循環している地熱媒体として使用される。
【0073】
他の実施形態では、本発明は、また、他の種類のORCシステム、例えば、マイクロタービン若しくは小型容積式膨張機、複合、多段階、及びカスケードランキンサイクルを用いる小規模(例えば、1~500kw、好ましくは5~250kw)ランキンサイクルシステム、並びに膨張機から出る蒸気から熱を回収するために復熱機を備えるランキンサイクルシステムを用いる。
【0074】
他の熱源としては、精油業者、石油化学プラント、オイル及びガスパイプライン、化学工業、商業ビル、ホテル、ショッピングモール、スーパーマーケット、ベーカリー、食品加工業、レストラン、塗料硬化オーブン、家具製造、プラスチック成形業者、セメント窯、材木窯、焼成作業、鉄鋼業、硝子工業、鋳造所、製錬、空調、冷凍、及びセントラルヒーティングからなる群から選択される少なくとも1つの業界に関連する少なくとも1つの作業が挙げられる。
【0075】
動力サイクル装置
本発明によれば、熱を機械エネルギーに変換するための動力サイクル装置が提供される。装置は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を含有する。典型的に、本発明の装置は、作動流体を加熱することができる熱交換ユニットと、その圧力を低減することによって、加熱された作動流体を膨張させることにより、機械エネルギーを発生させることができる膨張機とを含む。膨張機としては、ターボ又は動的膨張機(例えば、タービン)、及び容積式膨張機(例えば、スクリュー膨張機、スクロール膨張機、ピストン膨張機、及びロータリーベーン膨張機)が挙げられる。機械力は、直接(例えば、圧縮機を駆動するために)用いてもよく、又は発電機の使用を通して電力に変換してもよい。典型的に、装置は、膨張した作動流体を冷却するための作動流体冷却ユニット(例えば、凝縮機又は熱交換機)、及び冷却された作動流体を圧縮するための圧縮機も含む。
【0076】
1つの実施形態では、本発明の動力サイクル装置は、(a)熱交換ユニットと、(b)熱交換ユニットと流体連通している膨張機と、(c)膨張機と流体連通している作動流体冷却ユニットと、(d)作動流体冷却機と流体連通している圧縮機と、を含み、作動流体が、次いで、反復サイクルにおいて構成要素(a)、(b)、(c)、及び(d)を繰り返し流れるように、圧縮機は、熱交換ユニットと更に流体連通しており、作動流体は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む。
【0077】
1つの実施形態では、動力サイクル装置は、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を用いる。注目すべきは、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)及び1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)から本質的になる作動流体である。また、注目すべきは、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から本質的になる作動流体である。
【0078】
動力サイクル装置における使用について注目すべきは、不燃性である、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む組成物である。E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む特定の組成物は、標準試験ASTM 681によって不燃性である。E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含む特定の組成物は、標準試験ASTM 681によって不燃性であると予測される。特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが85重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが84重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが83重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが82重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが81重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが80重量パーセント以下である組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが少なくとも78重量パーセントである組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが少なくとも76重量パーセントである組成物である。また、特に注目すべきは、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが少なくとも74重量パーセントである組成物である。また、特に注目すべきは、を含む、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが少なくとも72重量パーセントである組成物である。また、特に注目すべきは、を含む、E-HFO-1234zeと、HFC-134及び/又はHFC-134aとを含有し、E-HFO-1234zeが少なくとも70重量パーセントである組成物である。
【0079】
動力サイクル装置における使用について特に注目すべきは、約35~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約5~約65重量パーセントのHFC-134とを含有する組成物である。また、動力サイクル装置における使用について特に注目すべきは、約5~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約5~約95重量パーセントのHFC-134とを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、動力サイクル装置における使用について特に注目すべきは、約5~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約40~約95重量パーセントのHFC-134とを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、動力サイクル装置における使用について特に注目すべきは、約35~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約40~約65重量パーセントのHFC-134とを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。
【0080】
また、動力サイクル装置における使用について特に注目すべきは、約35~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計で約5~約65重量パーセントのHFC-134及びHFC-134aとを含有する組成物である。また、動力サイクル装置における使用について特に注目すべきは、約5~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計で約5~約95重量パーセントのHFC-134及びHFC-134aとを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、動力サイクル装置における使用について特に注目すべきは、約5~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計で約40~約95重量パーセントのHFC-134及びHFC-134aとを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。また、動力サイクル装置における使用について特に注目すべきは、約35~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、合計で約40~約65重量パーセントのHFC-134及びHFC-134aとを含有する共沸性及び共沸混合物様組成物である。
【0081】
また、動力サイクル装置において特に有用なのは、作動流体が低GWPを有する実施形態である。1000未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含有する組成物は、11重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、89重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134とを含む。1000未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134aを含有する組成物は、30.5重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、69.5重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134aとを含む。
【0082】
500未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含有する組成物は、56重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、44重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134とを含む。500未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134aを含有する組成物は、65.5重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、34.5重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134aとを含む。
【0083】
150未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含有する組成物は、87.5重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、12.5重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134とを含む。150未満のGWPについては、E-HFO-1234ze及びHFC-134aを含有する組成物は、90重量パーセント~99重量パーセントのE-HFO-1234zeと、10重量パーセント~1重量パーセントのHFC-134aとを含む。
【0084】
図1は、熱源からの熱を用いるためのORCシステムの1つの実施形態の概略を示す。熱供給熱交換機40は、熱源46から供給された熱を、液相で熱供給熱交換機40に入る作動流体に伝達する。熱供給熱交換機40は、熱源と熱連通している(この連通は、直接接触によるものであってもよく、又は別の手段によるものであってもよい。)。言い換えれば、熱供給熱交換機40は、熱伝達の任意の公知手段によって熱源46からの熱エネルギーを受け取る。ORCシステムの作動流体は、それが熱を得る熱供給熱交換機40を通じて循環する。液体作動流体の少なくとも一部は、熱供給熱交換機(例えば、蒸発機)40において蒸気に変化する。
【0085】
ここで、蒸気形態の作動流体は、膨張機32に送られ、そこで、膨張プロセスにより、熱源から供給された熱エネルギーの少なくとも一部が機械軸動力に変換される。軸動力は、所望の速度及び必要なトルクに依存して、ベルト、プーリー、ギア、トランスミッション、又は類似の装置の従来の構成を採用することによって任意の機械仕事を行うために用いることができる。1つの実施形態では、シャフトはまた、誘導発電機等の発電装置30に接続されてもよい。生成される電気は、局所的に用いてもよく、グリッドに送達してもよい。
【0086】
膨張機32を出た、依然として蒸気形態である作動流体は、凝縮機34まで続き、そこで、適切な熱放出により流体を液体に凝縮させる。
【0087】
また、液体形態の作動流体がポンプ吸上げに常に適切に供給されることを保証するために、凝縮機34とポンプ38との間に位置する液体サージタンク36を有することが望ましい。液体形態の作動流体は、熱供給熱交換機40に戻ってランキンサイクルループを完結させることができるように、流体の圧力を増大させるポンプ38に流れ込む。
【0088】
別の実施形態では、熱源とORCシステムとの間で動作する二次熱交換ループを用いてもよい。図2では、有機ランキンサイクルシステム、特に、二次熱交換ループを用いるシステムを示す。主な有機ランキンサイクルは、図1について上記した通り動作する。二次熱交換ループは、以下の通り図2に示される。熱源46’からの熱は、熱伝達媒体(すなわち、二次熱交換ループ流体)を用いて熱供給熱交換機40’に輸送される。熱伝達媒体は、熱供給熱交換機40’から、前記熱伝達媒体を熱源46’に戻すポンプ42’に流れる。この構成は、熱源から熱を除去し、ORCシステムに送達する別の手段を提供する。
【0089】
実際、本発明の作動流体は、二次熱交換ループ流体として用いることができるが、ただし、ループ内の圧力は、ループ内の流体の温度において流体の飽和圧以上に維持される。あるいは、本発明の作動流体は、熱交換プロセス中に作動流体を蒸発させて、流体流を維持するのに十分大きな流体密度差を生じさせる(熱サイホン効果)動作モードで、熱源から熱を抽出するための二次熱交換ループ流体又は熱媒体流体として用いてもよい。更に、グリコール、ブライン、シリコーン、又は他の本質的に不揮発性の流体等の高沸点流体は、記載する二次ループ構成において顕熱伝達のために用いてよい。二次熱交換ループは、より容易に熱源又はORCシステムのいずれかとしても機能し得るが、それは、この2つのシステムが、より容易に分割又は分離し得るためである。このアプローチは、高質量流/低熱流束部分に続いて、高熱流束流/低質量部分を備える熱交換機を有する場合と比べて、熱交換機の設計を単純化することができる。
【0090】
有機化合物は、多くの場合、それを超えると熱分解が生じる上限温度を有する。熱分解の開始は、化学物質の具体的な構造に関連しているので、異なる化合物では異なる。直接熱交換を用いる高温源を作動流体とアクセスさせるために、上述の通り熱流束及び質量流についての設計の検討を採用して、作動流体を熱分解開始温度未満に維持しながら熱交換を促進することができる。このような状況における直接熱交換は、典型的に、コストをはね上げる更なる工学的及び機械的特徴を必要とする。このような状況では、二次ループ設計は、直接熱交換の場合に列挙される懸案事項を回避しながら、温度を管理することによって、高温熱源へのアクセスを促進し得る。
【0091】
二次熱交換ループの実施形態についての他のORCシステムの構成要素は、図1に記載したものと本質的に同じである。図2では、液体ポンプ42’は、熱を獲得する熱源46’内のループの一部に入るように、二次ループを通じて二次流体(例えば、熱伝達媒体)を循環させる。次いで、流体は、二次流体がORC作動流体へと熱を放出する熱交換機40’を通る。
【0092】
上記プロセスの1つの実施形態では、蒸発機の温度(作動流体によって熱が抽出される温度)は、作動流体の臨界温度よりも低い。動作温度が、以下の温度のうちのいずれか1つであるか、又は以下の任意の2つの数によって規定される範囲内(両端を含める)である実施形態が含まれる:
約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、及び約119℃。
【0093】
上記プロセスの1つの実施形態では、蒸発機の動作圧力は、約2.2MPa未満である。動作圧力が、以下の圧力のうちのいずれか1つであるか、又は以下の任意の2つの数によって規定される範囲内(両端を含める)である実施形態が含まれる:
約0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.00、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.40、4.45、4.50、4.55、及び約4.60MPa。
【0094】
低コストの装置部品を用いると、有機ランキンサイクルの実用的な実行可能性が実質的に広がる。例えば、最高蒸発圧を約2.2Mpaに限定することにより、HVAC業界において広く使用されている種類の低コストの装置部品を用いることが可能になる。
【0095】
特に注目すべきは、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含むか又はそれらから本質的になる作動流体を含有する動力サイクル装置である。
【0096】
また、特に注目すべきは、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)及び1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)を含むか又はそれらから本質的になる作動流体を含有する動力サイクル装置である。
【0097】
また、特に注目すべきは、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)を含むか又はそれらから本質的になる作動流体を含有する動力サイクル装置である。
【0098】
特に有用なのは、150未満のGWPを有する、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物との混合物を含む不燃性作動流体である。また、特に有用なのは、150未満のGWPを有する、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)及び1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)の混合物を含む不燃性作動流体である。また、特に有用なのは、150未満のGWPを有する、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)の混合物を含む不燃性作動流体である。
【0099】
装置は、水分の除去を支援するために分子篩を含んでもよい。乾燥剤は、活性アルミナ、シリカゲル、又はゼオライト系分子篩で構成され得る。幾つかの実施形態では、約3オングストローム、4オングストローム、又は5オングストロームの孔径を有する分子篩が最も有用である。代表的な分子篩としては、MOLSIV XH-7、XH-6、XH-9、及びXH-11(UOP LLC,Des Plaines,IL)が挙げられる。
【0100】
動力サイクル組成物
幾つかの実施形態では、有機ランキンサイクルを含む動力サイクルで特に有用な、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)と、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの化合物とを含む組成物は、共沸性又は共沸混合物様である。
【0101】
E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン及びHFC-134、並びにE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン及びHFC-134aは、共沸性及び共沸混合物様組成物を形成することが、米国特許出願公開第2006243944(A1)号に開示されている。
【0102】
共沸性組成物は、動力サイクル装置の熱変換機、例えば、蒸発機及び凝縮機(又は作動流体冷却機)におけるグライドがゼロになる。
【0103】
本発明によれば、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)の共沸性又は共沸混合物様組み合わせ物を含む作動流体が提供される。共沸性又は共沸混合物様組み合わせ物は、約1重量パーセント~約98重量パーセントのE-HFO-1234zeと、約1重量パーセント~約98重量パーセントのHFC-134と、約1重量パーセント~約98重量パーセントのHFC-134aとを含む。
【0104】
1つの実施形態では、E-HFO-1234ze、HFC-134a、及びHFC-134を含有する作動流体と潤滑剤とを含む、有機ランキン装置において用いるのに好適な組成物が提供される。
【0105】
1つの実施形態では、本明細書に開示する組成物は、いずれも、ポリアルキレングリコール、ポリオールエステル、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、ペルフルオロポリエーテル、鉱油、アルキルベンゼン、合成パラフィン、合成ナフテン、ポリ(アルファ)オレフィン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの潤滑剤と併用してよい。
【0106】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示する組成物との併用に有用な潤滑剤は、有機ランキンサイクル装置を含む動力サイクル装置で使用するのに好適なものを含み得る。これらの潤滑剤の中には、クロロフルオロカーボン冷媒を利用する蒸気圧縮冷蔵装置において従来使用されているものがある。1つの実施形態では、潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「鉱油」として一般的に知られるものを含む。鉱油は、パラフィン(すなわち、直鎖及び分枝状炭素鎖飽和炭化水素)、ナフテン(すなわち、環状パラフィン)、及び芳香族(すなわち、交互二重結合を特徴とする1つ以上の環を含む不飽和環状炭化水素)を含む。1つの実施形態では、潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「合成油」として一般的に知られるものを含む。合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖状及び分枝状アルキルアルキルベンゼン)、合成パラフィン及びナフテン、並びにポリ(アルファオレフィン)を含む。代表的な従来の潤滑剤は、市販のBVM 100 N(BVA Oilsによって販売されているパラフィン系鉱油)、商標名Suniso(登録商標)3GS及びSuniso(登録商標)5GSとしてCrompton Co.から市販されているナフテン系鉱油、商標名Sontex(登録商標)372LTとしてPennzoilから市販されているナフテン系鉱油、商標名Calumet(登録商標)RO-30としてCalumet Lubricantsから市販されているナフテン系鉱油、商標名Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150、及びZerol(登録商標)500としてShrieve Chemicalsから市販されている直鎖状アルキルベンゼン、並びにHAB 22(Nippon Oilによって販売されている分枝状アルキルベンゼン)である。ペルフルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤としては、商標名Krytox(登録商標)としてE.I.du Pont de Nemoursによって販売されているもの、商標名Fomblin(登録商標)としてAusimontによって販売されているもの、又は商標名Demnum(登録商標)としてDaikin Industriesによって販売されているものが挙げられる。
【0107】
他の実施形態では、潤滑剤は、ハイドロフルオロカーボン冷媒と共に使用するために設計されており、かつ圧縮冷蔵及び空調装置の動作条件下で本発明の冷媒と混和できるものを含んでよい。このような潤滑剤としては、Castrol(登録商標)100(Castrol,United Kingdom)等のポリオールエステル(POE)、Dow(Dow Chemical,Midland,Michigan)製のRL-488A等のポリアルキレングリコール(PAG)、ポリビニルエーテル(PVE)、及びポリカーボネート(PC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
別の実施形態では、E-HFO-1234ze、HFC-134、及びHFC-134aを含有する作動流体と、安定剤、相溶化剤、及びトレーサーからなる群から選択される少なくとも1つの他の成分とを含む、有機ランキン装置において用いるのに好適な組成物が提供される。
【0109】
任意で、別の実施形態では、性能及びシステム安定性を強化するために、特定の冷蔵、空調、又は熱ポンプシステム添加剤を、必要に応じて、本明細書に開示する作動流体に添加してよい。これら添加剤は、冷蔵及び空調の分野において公知であり、耐摩耗剤、極圧潤滑剤、腐食及び酸化阻害剤、金属表面不活性化剤、フリーラジカルスカベンジャー、及び泡制御剤を含むが、これらに限定されない。一般的に、これら添加剤は、作動流体中に組成物全体に対して少量存在し得る。典型的には、約0.1重量パーセント未満から最大約3重量パーセントの濃度の各添加剤が、使用される。これら添加剤は、個々のシステムの要件に基づいて選択される。これら添加剤としては、ブチル化トリフェニルホスフェート(BTPP)又は他のアルキル化トリアリールリン酸エステル、例えば、Akzo Chemicals製のSyn-0-Ad 8478、トリクレシルホスフェート、及び関連化合物等のEP(極圧)潤滑性添加剤のトリアリールリン酸ファミリーのメンバーが挙げられる。更に、金属ジアルキルジチオホスフェート(例えば、亜鉛ジアルキルジチオリン酸(又はZDDP)、Lubrizol 1375及びこの化学物質のファミリーの他のメンバーを、本発明の組成物で用いてよい。他の耐摩耗添加剤としては、天然物油及びSynergol TMS(International Lubricants)等の非対称ポリヒドロキシル潤滑添加剤が挙げられる。同様に、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、及び水スカベンジャー等の安定剤が用いられ得る。この分類の化合物には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エポキシド、及びこれらの混合物が含まれ得るが、これらに限定されない。腐食阻害剤としては、ドデシルコハク酸(DDSA)、アミンホスフェート(AP)、オレオイルサルコシン、イミダゾン(imidazone)誘導体、及び置換スルホネート(sulfphonate)が挙げられる。金属表面不活性化剤としては、アレオキサリルビス(ベンジリデン)ヒドラジド、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイルヒドラジン、2,2’-オキサミドビス-エチル-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、N,N’-(ジサリチクリデン(disalicyclidene))-1,2-ジアミノプロパン、並びにエチレンジアミン四酢酸及びその塩類、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0110】
注目すべきは、50℃以上の温度で分解を防ぐための安定剤である。また、注目すべきは、75℃以上の温度で分解を防ぐための安定剤である。また、注目すべきは、85℃以上の温度で分解を防ぐための安定剤である。また、注目すべきは、100℃以上の温度で分解を防ぐための安定剤である。また、注目すべきは、118℃以上の温度で分解を防ぐための安定剤である。また、注目すべきは、137℃以上の温度で分解を防ぐための安定剤である。
【0111】
注目すべきは、ヒンダードフェノール、チオホスフェート、ブチル化トリフェニルホスホロチオネート、オルガノホスフェート、又はホスフィット、アリールアルキルエーテル、テルペン、テルペノイド、エポキシド、フッ素化エポキシド、オキセタン、アスコルビン酸、チオール、ラクトン、チオエーテル、アミン、ニトロメタン、アルキルシラン、ベンゾフェノン誘導体、アリールスルフィド、ジビニルテレフタル酸、ジフェニルテレフタル酸、イオン性液体、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む安定剤である。代表的な安定剤化合物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:トコフェノール;ヒドロキノン;t-ブチルヒドロキノン;モノチオフォスフェート;及びジチオホスフェート(Ciba Specialty Chemicals,Basel,Switzerland(以後「Ciba」)から商標名Irgalube(登録商標)63として市販);ジアルキルチオリン酸エステル(Cibaからそれぞれ商標名Irgalube(登録商標)353及びIrgalube(登録商標)350として市販);ブチル化トリフェニルホスホロチオネート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)232として市販);アミンホスフェート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)349(Ciba)として市販);ヒンダードホスフィット(CibaからIrgafos(登録商標)168として市販);リン酸塩、例えば、(トリス-(ジ-tert-ブチルフェニル)(CibaからIrgafos(登録商標)OPHとして市販);(ジ-n-オクチルホスフィット);及びイソデシルジフェニルホスフィット(CibaからIrgafos(登録商標)DDPPとして市販);アニソール;1,4-ジメトキシベンゼン;1,4-ジエトキシベンゼン;1,3,5-トリメトキシベンゼン;d-リモネン;レチナール;ピネン;メントール;ビタミンA;テルピネン;ジペンテン;リコペン;ベータカロテン;ボルナン;1,2-プロピレンオキシド;1,2-ブチレンオキシド;n-ブチルグリシジルエーテル;トリフルオロメチルオキシラン;1,1-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン;3-エチル-3-ヒドロキシメチル-オキセタン(例えば、OXT-101(Toagosei Co.,Ltd));3-エチル-3-((フェノキシ)メチル)-オキセタン(例えば、OXT-211(Toagosei Co.,Ltd));3-エチル-3-((2-エチル-ヘキシルオキシ)メチル-オキセタン(例えば、OXT-212(Toagosei Co.,Ltd));アスコルビン酸;メタンチオール(メチルメルカプタン);エタンチオール(エチルメルカプタン);コエンザイムA;ジメルカプトコハク酸(DMSA);グレープフルーツメルカプタン((R)-2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エニル)プロパン-2-チオール));システイン((R)-2-アミノ-3-スルファニル-プロパン酸);リポアミド(1,2-ジチオラン-3-ペンタンアミド);5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-[2,3(又は3,4)-ジメチルフェニル]-2(3H)-ベンゾフラノン(Cibaから商標名Irganox(登録商標)HP-136として市販);ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジイソプロピルアミン;ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート(Cibaから商標名Irganox(登録商標)PS 802(Ciba)として市販);ジドデシル3,3’-チオプロピオネート(Cibaから商標名Irganox(登録商標)PS 800として市販);ジ-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)770として市販);ポリ-(N-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ-ピペリジルスクシネート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)622LD(Ciba)として市販);メチルビスタローアミン;ビスタローアミン;フェノール-アルファ-ナフチルアミン;ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン(DMAMS);トリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS);ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;2,5-ジフルオロベンゾフェノン;2’,5’-ジヒドロキシアセトフェノン;2-アミノベンゾフェノン;2-クロロベンゾフェノン;ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジベンジルスルフィド;イオン性液体;及びその他。
【0112】
作動流体組成物中に含まれ得るトレーサーは、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、重水素化ヒドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素酸塩化合物、アルコール、アルデヒド、及びケトン、亜酸化窒素、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0113】
本発明の組成物は、所望の量を混合するか又は合わせることを含む、任意の便利な方法によって調製することができる。本発明の1つの実施形態では、組成物は、所望の成分量を量り、次いで、適切な容器内でそれを合わせることによって調製することができる。
【実施例
【0114】
本明細書に記述される概念について以下の実施例で更に説明するが、これは、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【0115】
(実施例1)
E-HFO-1234ze/HFC-134ブレンドを作動流体として用いる亜臨界ランキンサイクルによる動力生成
約100℃以下の温度の熱は、様々な熱源から大量に入手可能である。熱は、様々な工業プロセスから副生成物として獲得してもよく、ソーラーパネルを通して日照から収集してもよく、あるいは浅い又は深い井戸を通して地質学的熱水貯留層から抽出してもよい。このような熱は、作動流体としてE-HFO-1234ze/HFC-134(又はE-HFO-1234ze/HFC-134/HFC-134a)ブレンドを用いるランキンサイクルにより、様々な用途のための機械力又は電力に変換することができる。
【0116】
表1は、65重量%のE-HFO-1234zeを含有するE-HFO-1234ze/HFC-134ブレンド(ブレンドA)の基本特性を、HFC-134aの基本特性と比較する。HFC-134aを参照流体として選択したが、その理由は、約100℃以下の温度の熱を用いるランキンサイクル用の作動流体として広く用いられているためである。ブレンドAは、HFC-134aの魅力的な安全性、すなわち、低毒性及び不燃性を保持している。更に、ブレンドAは、HFC-134aよりも72.8%低いGWP100を有する。
【0117】
【表1】
*)推定
【0118】
表2は、ブレンドAを用いて動作するランキンサイクルの性能を、HFC-134aを用いて動作するランキンサイクルと比較する。全てのサイクルは、以下の条件で動作すると仮定する。
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
表2の列1、2、及び3は、ブレンドAが、HFC-134aよりも2.31%高いエネルギー効率で、ランキンサイクルが80℃の蒸発温度(及び90℃の膨張機入口温度)を許容する温度の熱を利用することを可能にすることができたことを示す。ブレンドAでは、蒸発温度がより低いことも有利である。
【0122】
図3は、約80℃よりも高い温度におけるブレンドAの蒸気圧が、HFC-134aの蒸気圧よりも実質的に低いことを示す。
【0123】
表2の列4、5、及び6は、ブレンドAが、HFC-134aよりも3.30%高いエネルギー効率で、ランキンサイクルが90℃の蒸発温度(及び100℃の膨張機入口温度)を許容する温度の熱を利用することを可能にすることができたことを示す。
【0124】
HFC-134aに比べて高いブレンドAの臨界温度は、HFC-134aで実現可能な温度よりも高い温度の熱を従来の亜臨界ランキンサイクルにおいて使用することを可能にする。表2の列7は、100℃の蒸発温度(及び110℃の膨張機の入口温度)を許容する温度の熱を利用するために作動流体としてブレンドAを用いて動作するランキンサイクルの性能を示す。従来の亜臨界ランキンサイクルにおけるHFC-134aの使用は、蒸発温度がHFC-134aの臨界温度に非常に近いので、100℃の蒸発温度では実用的ではない。ブレンドAを用いるサイクルのエネルギー効率(9.95%)は、作動流体の臨界温度よりも少なくとも約10℃低い蒸発温度(又は約0.97未満低下した蒸発温度)で動作する従来の亜臨界ランキンサイクルで、HFC-134aを用いて達成され得る最も高いエネルギー効率(8.78%、表2、列4)よりも13.33%高い。
【0125】
要約すると、HFC-134aをブレンドAで置き換えると、作動流体のGWPの低下に加えて、特に、利用可能な熱源が蒸発温度を増大させ得るとき、より高いエネルギー効率が可能になる。
【0126】
(実施例2)
250℃におけるE-HFO-1234ze及びHFC-134の化学的安定性
金属の存在下におけるE-HFO-1234zeの化学的安定性を、ANSI/ASHRAE規格97-2007の封管試験方法に従って試験した。封管試験において用いられるE-HFO-1234zeの原料は、約99.98重量%の純度であり、水も空気も実質的に含有していなかった。
【0127】
E-HFO-1234zeに浸漬した鋼、銅、及びアルミニウムで作製した3枚の金属クーポンをそれぞれ含むガラス封管を、加熱した250℃のオーブン内で7~14日間エージングさせた。熱エージング後の管の目視検査は、流体の変色又は他の視覚的劣化のない透明な液体を示した。更に、腐食又は他の分解を示す金属クーポンの外観の変化もなかった。イオンクロマトグラフィーによって測定した、エージングされた液体サンプル中のフッ化物イオンの濃度は、250℃における2週間のエージング後、15.15ppmであった。フッ化物イオンの濃度は、E-HFO-1234zeの分解の程度の指標として解釈することができる。したがって、E-HFO-1234zeの分解は、最小限であった。
【0128】
表3は、1又は2週間250℃で鋼、銅、及びアルミニウムの存在下においてエージングした後の、E-HFO-1234zeサンプルの組成変化を示す。E-HFO-1234zeの変換は、2週間のエージング後でさえも最小限であった。E-HFO-1234zeの異性化により、963.2ppmのHFO-1234zeのcis又はE異性体が生成された。HFO-1234ze-Zの熱力学的特性は、E-HFO-1234zeとは著しく異なるが、HFO-1234ze-Zを963.2ppmしか含有しないE-HFO-1234ze/HFO-1234ze-Zブレンドの熱力学的特性は、純粋なE-HFO-1234zeの熱力学的特性と実質的に同一である。わずかな無視できるほどの比率の新規未知化合物が、250℃で2週間エージングした後でさえも現れた。
【0129】
【表4】
【0130】
E-HFO-1234zeについて上記した手順と同様の手順に従ってHFC-134の化学的安定性についても試験した。2週間250℃で鋼、銅、及びアルミニウムの存在下においてエージングされたHFC-134サンプルにおけるフッ化物イオンの濃度は、測定方法の検出限界(0.15ppm)未満であり、これは、この温度における高レベルの安定性を示す。
【0131】
(実施例3)
作動流体としてE-HFO-1234ze/HFC-134ブレンドを用いる遷移臨界ランキンサイクルによる動力生成
この実施例は、遷移臨界サイクル条件下においてE-HFO-1234ze及びHFC-134を含有する作動流体を用いる、ランキンサイクルを通した熱からの動力生成を示す。上記実施例2において提供された証拠は、E-HFO-1234ze及びHFC-134のブレンドが、それらの臨界温度よりも実質的に高い温度で化学的に安定を保ち得ることを強く示唆する。したがって、E-HFO-1234ze及びHFC-134を含む作動流体は、HFO-1234ze及びHFC-134を含有する作動流体が超臨界状態にあり得る温度及び圧力で熱を回収するランキンサイクルを可能にすることができる。より高温の熱源の使用は、より低温の熱源の使用と比べて、より高いサイクルエネルギー効率(及び動力生成のための容積)をもたらし得る。
【0132】
従来の亜臨界ランキンサイクルの蒸発機(又はボイラー)の代わりに超臨界流体加熱機を用いるとき、加熱機の圧力及び加熱機の出口温度(又は膨張機の入口温度と同等)を指定しなければならない。表4は、作動流体として65重量%のE-HFO-1234ze及び35重量%のHFC-134を含有するブレンドを用いるランキンサイクルの性能を要約する。超臨界流体加熱機を8MPaの圧力及び250℃の加熱機の出口温度(又は膨張機の入口温度)で動作させることにより、14.9%のランキンサイクルのエネルギー効率が達成される。超臨界流体加熱機におけるより高い動作圧力は、より強固な装置の使用を必要とする。
【0133】
【表5】
【0134】
(実施例4)
蒸気漏出の影響
約25℃の温度で初期組成物を容器に投入し、この組成物の初期蒸気圧を測定する。温度を一定に保持しながら、初期組成物の50重量%が除去されるまで組成物を容器から漏出させ、その時点で容器内に残る組成物の蒸気圧を測定する。データを表5に示す。
【0135】
【表6】
【0136】
表5に列挙するE-HFO-1234ze、HFC-134、及びHFC-134aを含有する組成物のデータは、50重量パーセントが除去された後の蒸気圧の変化が約10パーセント未満である、共沸混合物様挙動を示す。
【0137】
(実施例5)
未希釈のHFO-1234ze-Eに対する、作動流体として不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134(63/37重量%)ブレンドを用いる有機ランキンサイクルの性能
以下の表は、未希釈のHFO-1234ze-Eに対して、作動流体として(ASHRAE規格34に従って)不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134(63/37重量%)ブレンドを用いるORCの性能を比較する。
【0138】
【表7】
【0139】
ブレンドBは、比較的低いGWPを依然として実現しながら、不燃性(ASHRAE規格34に従って)及びHFO-1234ze-Eよりも優れた性能(より高い効率及び容積)をもたらす。
【0140】
(実施例6)
未希釈のHFO-1234ze-Eに対する、作動流体として不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134(35/65重量%)ブレンドを用いる有機ランキンサイクルの性能
以下の表は、未希釈のHFO-1234ze-Eに対して、作動流体として(ASHRAE規格34に従って)不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134(35/65重量%)ブレンドを用いるORCの性能を比較する。
【0141】
【表8】
【0142】
ブレンドCは、(多くの現用作動流体に比べて)比較的低いGWPを依然として実現しながら、不燃性(ASHRAE規格34に従って)及びHFO-1234ze-Eよりも優れた性能(より高い効率及び容積)をもたらす。
【0143】
(実施例7)
未希釈のHFO-1234ze-Eに対する、作動流体としてHFO-1234ze-E/HFC-134(95/5重量%)ブレンドを用いる有機ランキンサイクルの性能
以下の表は、未希釈のHFO-1234ze-Eに対して、作動流体としてHFO-1234ze-E/HFC-134(95/5重量%)ブレンドを用いるORCの性能を比較する。
【0144】
【表9】
【0145】
ブレンドDは、多くの現用作動流体に比べて比較的低いGWPを依然として実現しながら、1234ze-Eよりも高い容積をもたらす。
【0146】
(実施例8)
未希釈のHFO-1234ze-Eに対する、作動流体として不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134a(55/45重量%)ブレンドを用いる有機ランキンサイクルの性能
以下の表は、未希釈のE-HFO-1234zeに対して、作動流体として(ASHRAE規格34に従って)不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134a(55/45重量%)ブレンドを用いるORCの性能を比較する。
【0147】
【表10】
【0148】
ブレンドEは、多くの現用作動流体に比べて比較的低いGWPを依然として実現しながら、1234ze-Eよりも高い容積をもたらす。
【0149】
(実施例9)
未希釈のHFO-1234ze-Eに対する、作動流体として不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134a(70/30重量%)ブレンドを用いる有機ランキンサイクルの性能
以下の表は、未希釈のHFO-1234ze-Eに対して、作動流体として(60℃でASTM E-681に従って)不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134a(70/30重量%)ブレンドを用いるORCの性能を比較する。
【0150】
【表11】
【0151】
ブレンドFは、多くの現用作動流体に比べて比較的低いGWPを依然として実現しながら、不燃性(60℃でASTM E-681に従って)及び1234ze-Eよりも高い容積をもたらす。
【0152】
(実施例10)
未希釈のHFO-1234ze-Eに対する、作動流体として不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134/HFC-134a(35/16/49重量%)ブレンドを用いる有機ランキンサイクルの性能
以下の表は、未希釈のHFO-1234ze-Eに対して、作動流体として(ASHRAE規格34に従って)不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134/HFC-134a(35/16/49重量%)ブレンドを用いるORCの性能を比較する。
【0153】
【表12】
【0154】
ブレンドGは、多くの現用作動流体に比べて比較的低いGWPを依然として実現しながら、不燃性(ASHRAE規格34に従って)及びHFO-1234ze-Eよりも高い容積をもたらす。
【0155】
(実施例11)
未希釈のHFO-1234ze-Eに対する、作動流体として不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134/HFC-134a(60/10/30重量%)ブレンドを用いる有機ランキンサイクルの性能
以下の表は、未希釈のHFO-1234ze-Eに対して、作動流体として(ASHRAE規格34に従って)不燃性のHFO-1234ze-E/HFC-134/HFC-134a(60/10/30重量%)ブレンドを用いるORCの性能を比較する。
【0156】
【表13】
【0157】
ブレンドHは、多くの現用作動流体に比べて比較的低いGWPを依然として実現しながら、不燃性(ASHRAE規格34に従って)及びHFO-1234ze-Eよりも高い容積をもたらす。
【0158】
選択された実施形態
実施形態A1。熱源からの熱を機械エネルギーに変換する方法であって、前記熱源から供給される熱を用いて、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンから選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を加熱する工程と;前記加熱された作動流体を膨張させて、前記作動流体の圧力を低下させ、前記作動流体の圧力が低下するにつれて機械エネルギーを発生させる工程と、を含む。
【0159】
実施形態A2。前記作動流体を、加熱前に圧縮し、膨張した前記作動流体を、反復サイクルのために冷却及び圧縮する、実施形態A1に記載の方法。
【0160】
実施形態A3。前記作動流体が、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンから選択される少なくとも1つの化合物とから本質的になる不燃性組成物である、実施形態A1又はA2に記載の方法。
【0161】
実施形態A4。前記作動流体が、約1重量パーセント~69重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約99重量パーセント~31重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとから本質的になる、実施形態A1~A3のいずれかに記載の方法。
【0162】
実施形態A5。前記作動流体が、約1重量パーセント~85重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、約99重量パーセント~15重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンとから本質的になる、実施形態A1~A4のいずれかに記載の方法。
【0163】
実施形態A6。亜臨界サイクルを用いて、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する、実施形態A1~A5のいずれかに記載の方法であって、前記方法は、(a)液体作動流体を、その臨界圧よりも低い圧力に圧縮する工程と、(b)蒸気作動流体を形成するために、(a)から得られた圧縮された液体作動流体を、前記熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、(c)前記作動流体の圧力を低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、(d)冷却された液体作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、を含む方法。
【0164】
実施形態A7。遷移臨界サイクルを用いて、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する、実施形態A2~A5のいずれかに記載の方法であって、前記方法は、(a)液体作動流体を前記作動流体の臨界圧よりも高い圧力に圧縮する工程と、(b)(a)から得られた圧縮された作動流体を、前記熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、(c)前記作動流体の圧力をその臨界圧よりも低い圧力に低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と(d)冷却された液体作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、を含む方法。
【0165】
実施形態A8。超臨界サイクルを用いて、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する、実施形態A2~A5のいずれかに記載の方法であって、(a)作動流体を、その臨界圧よりも高い圧力からより高い圧力に圧縮する工程と、(b)(a)から得られた圧縮された作動流体を、前記熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、(c)前記作動流体の圧力をその臨界圧よりも高い圧力に低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、(d)その臨界圧よりも高い、冷却された作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、を含む方法。
【0166】
実施形態A9。前記作動流体が、5~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、5~95重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンから選択される少なくとも1つの化合物とを含む、実施形態A1~A8のいずれかに記載の方法。
【0167】
実施形態A10。前記作動流体が、1~約98重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、1~98重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、1~98重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む共沸性又は共沸混合物様組成物である、実施形態A1~A8のいずれかに記載の方法。
【0168】
実施形態A11。前記作動流体が、5~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、5~95重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、5~95重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0169】
実施形態A12。前記作動流体が、35~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、2~38重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、2~39重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0170】
実施形態A13。前記作動流体が、35~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、10~26重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、24~49重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0171】
実施形態A14。前記作動流体が、5~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、10~38重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、24~72重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0172】
実施形態A15。前記作動流体が、約5~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、5~95重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンの混合物とを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0173】
実施形態A16。前記作動流体が、1~約85重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、99~15重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0174】
実施形態A17。前記作動流体が、55~約81重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、45~18重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0175】
実施形態A18。前記作動流体が、55~約70重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、45~30重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0176】
実施形態A19。前記作動流体が、1~約69重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、99~31重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0177】
実施形態A20。前記作動流体が、35~約95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、65~5重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0178】
実施形態A21。前記作動流体が、5~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、95~40重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0179】
実施形態A22。前記作動流体が、35~約60重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、65~40重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0180】
実施形態A23。前記作動流体が、63~約75重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、37~25重量パーセントの1,1,2,2-テトラフルオロエタンとを含む、実施形態A1~A10及びB1~B2のいずれかに記載の方法。
【0181】
実施形態B1。E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンから選択される少なくとも1つの化合物とを含む作動流体を含有する動力サイクル装置。
【0182】
実施形態B2。(a)熱交換ユニットと、(b)前記熱交換ユニットと流体連通している膨張機と、(c)前記膨張機と流体連通している作動流体冷却ユニットと、(d)前記作動流体冷却機と流体連通している圧縮機と、を含み、前記作動流体が、次いで、反復サイクルにおいて構成要素(a)、(b)、(c)、及び(d)を繰り返し流れるように、前記圧縮機が、前記熱交換ユニットと更に流体連通している、実施形態B1に記載の動力サイクル装置。
【0183】
実施形態B3。前記作動流体が、5~95重量パーセントのE-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと、5~95重量パーセントの1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンから選択される少なくとも1つの化合物とを含む、実施形態B1又はB2に記載の動力サイクル装置。
【0184】
実施形態C1。E-HFO-1234ze、HFC-134、及びHFC-134aの共沸性又は共沸混合物様組み合わせ物を含む作動流体。
【0185】
実施形態C2。約1重量パーセント~約98重量パーセントのE-HFO-1234zeと、約1重量パーセント~約98重量パーセントのHFC-134と、約1重量パーセント~約98重量パーセントのHFC-134aとを含む、実施形態C1に記載の作動流体。
【0186】
実施形態C3。実施形態C1又はC2に記載の作動流体と少なくとも1つの潤滑剤とを含む、有機ランキン装置で用いるのに好適な組成物。
【0187】
実施形態C4。前記潤滑剤が、ポリアルキレングリコール、ポリオールエステル、ポリビニルエーテル、ペルフルオロポリエーテル、ポリカーボネート、鉱油、アルキルベンゼン、合成パラフィン、合成ナフテン、ポリ(アルファ)オレフィン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態C1~C3のいずれかに記載の組成物。
【0188】
実施形態C5。実施形態C1~C4のいずれかに記載の動流体と、安定剤、相溶化剤、及びトレーサーからなる群から選択される少なくとも1つの他の成分とを含む、有機ランキン装置において用いるのに好適な組成物。
図1
図2
図3