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特許7113816自動車両用光学検出システムの光学センサを洗浄するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】自動車両用光学検出システムの光学センサを洗浄するための装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/62 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
B60S1/62 120B
B60S1/62 110A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019516599
(86)(22)【出願日】2017-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017069963
(87)【国際公開番号】W WO2018059807
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-06-22
(31)【優先権主張番号】1659177
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】マルセル、トレブー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック、ジロー
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02720044(FR,A1)
【文献】特開2016-078688(JP,A)
【文献】特開2006-199201(JP,A)
【文献】特表2008-543669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0138357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/46 - 1/52
B60S 1/56
B60S 1/60
B60S 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの流体を自動車両の洗浄すべき表面に向けて噴霧する洗浄装置(100)であって、少なくとも、
‐入口フランジ(2)によって一端部が閉鎖された中空本体(1)と、
‐長手方向軸(X)に沿って前記中空本体(1)内で摺動可能である可動ピストン(3)であって、第1端部に洗浄流体分配要素(8、9)を有するとともに、後退した最端位置と進出した最端位置との間で移動可能である可動ピストン(3)と、
‐前記入口フランジ(2)に固着されるとともに前記長手方向軸(X)に対して平行に延びるロッド(10)であって、前記可動ピストン(3)が当該ロッド(10)に沿って摺動するロッド(10)と、
-前記入口フランジ(2)から突出する部分であって、前記中空本体(1)に対して反対方向に延在する流体取込始端部品(11)と、
‐前記中空本体を通過させて前記流体取込始端部品(11)から前記分配要素(8、9)まで洗浄流体を搬送するための手段であって、容積が前記可動ピストン(3)の移動に応じて変化する少なくとも1つの取込チャンバ(14)と、前記可動ピストン(3)内に形成され前記取込チャンバの下流に位置する分配ダクト(13)と、を備える手段と、
を備え、
‐前記可動ピストン(3)及び前記ロッド(10)は、それらの間に洗浄流体用の少なくとも1つの流路(12)を提供するように構成される洗浄装置において、
前記少なくとも1つの流路(12)は、前記可動ピストン(3)に形成されたスロット(120)により形成され
複数の流路(12)が、前記ロッド(10)と前記可動ピストン(3)との間に配置され、前記可動ピストンに形成された前記スロット(120)のうちの少なくとも1つが、隣接する前記流路の軸方向寸法と異なる軸方向寸法を有する、
ことを特徴とする洗浄装置(100)。
【請求項2】
複数の流路(12)が、前記ロッド(10)と前記可動ピストン(3)との間に配置され、前記可動ピストンに形成された少なくとも2つのスロット(120)が、可変の径方向寸法を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
少なくとも1つの流体を自動車両の洗浄すべき表面に向けて噴霧する洗浄装置(100)であって、少なくとも、
‐入口フランジ(2)によって一端部が閉鎖された中空本体(1)と、
‐長手方向軸(X)に沿って前記中空本体(1)内で摺動可能である可動ピストン(3)であって、第1端部に洗浄流体分配要素(8、9)を有するとともに、後退した最端位置と進出した最端位置との間で移動可能である可動ピストン(3)と、
‐前記入口フランジ(2)に固着されるとともに前記長手方向軸(X)に対して平行に延びるロッド(10)であって、前記可動ピストン(3)が当該ロッド(10)に沿って摺動するロッド(10)と、
-前記入口フランジ(2)から突出する部分であって、前記中空本体(1)に対して反対方向に延在する流体取込始端部品(11)と、
‐前記中空本体を通過させて前記流体取込始端部品(11)から前記分配要素(8、9)まで洗浄流体を搬送するための手段であって、容積が前記可動ピストン(3)の移動に応じて変化する少なくとも1つの取込チャンバ(14)と、前記可動ピストン(3)内に形成された分配ダクト(13)と、を備える手段と、
を備え、
‐前記可動ピストン(3)及び前記ロッド(10)は、それらの間に洗浄流体用の少なくとも1つの流路(12)を提供するように構成される洗浄装置において、
前記少なくとも1つの流路(12)は、前記可動ピストン(3)に形成されたスロット(120)により形成され、
複数の流路(12)が、前記ロッド(10)と前記可動ピストン(3)との間に配置され、前記可動ピストンに形成された少なくとも2つのスロット(120)が、可変の径方向寸法を有する、
ことを特徴とする洗浄装置(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの流路(12)の前記スロット(120)は、前記可動ピストン(3)において前記長手方向軸(X)に対して平行に配設される、
ことを特徴とする請求項1乃至3の一項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記可動ピストン(3)に形成された各スロット(120)が、前記ロッド(10)によって、前記後退した最端位置において完全に覆われるように、且つ、前記可動ピストンと前記ロッドとの他の相対位置において部分的に覆われるように、前記可動ピストン(3)及び前記ロッド(10)は構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至4の一項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの流路(12)の前記スロット(120)は、前記分配ダクト(13)の境界を定める前記可動ピストン(3)の内壁に形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至の一項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの流路(12)の前記スロット(120)は、前記取込チャンバ(14)に開口するように前記可動ピストン(3)に形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至の一項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記可動ピストン(3)を移動させるための前記手段は、前記流体搬送手段の他に、前記中空本体(1)に収容されて前記可動ピストン(3)を前記最端休止位置に復帰させることに資する弾性手段(4)を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記可動ピストン(3)は、前記中空本体(1)の前記入口フランジ(2)に対して反対側の端部に形成された中空ガイドスリーブ(18)の内部で摺動可能である実質的に円筒状の中央部分(16)と、前記中央部分(16)を延長する終端分配部分(17)であって、その自由端部に前記分配要素(8、9)を取り付けることが可能である終端分配部分(17)と、前記終端分配部分(17)に対して反対方向に前記中央部分(16)を延長するとともに、前記中空本体(1)の内部で摺動するように構成される取込部分(19)と、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの流路(12)の前記スロット(120)は、前記可動ピストン(3)において前記取込部分(19)に沿って形成される、
ことを特徴とする請求項に記載の洗浄装置。
【請求項11】
周溝(23)がシール(6)を収容するように前記ロッド(10)の自由端部(15)に配置され、これにより、前記シール(6)が嵌合した前記ロッド(10)は、前記可動ピストン(3)の前記中央部分(19)においてシールした態様で摺動可能である、
ことを特徴とする請求項9及び10のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項12】
光学検出システムと、対応する光学センサと、を設けられた自動車両であって、少なくとも1つの流体を前記光学センサの洗浄すべき表面に向けて噴霧することが意図された、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの洗浄装置を備えることを特徴とする自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバー支援装置、及びこの目的のために使用される光学検出システムの分野に関し、より具体的には、自動車両の洗浄すべき表面に向けて、例えば、車両用光学検出システムの光学センサに向けて、少なくとも1つの流体を噴霧することが意図された洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人とって可視の又は不可視のスペクトル、特に赤外線スペクトルにおける光の発光及び/又は光の検出に基づくカメラ等の光学センサ、レーザーセンサ、又は他のセンサを備えるシステムは、光学検出システムと呼ばれる。
【0003】
このような光学検出システムは、車両のドライバーを特定の運転状況において支援するようにますます多くの自動車両に取り付けられるようになっている。特定の運転状況の周知の一例は、駐車の支援である。このような支援をできる限り効果的なものとするために、光学検出システムにより提供されるデータは、可能な限り高品質であることが必要である。したがって、このようなデータ獲得の実施が可能なセンサを使用することが不可欠である。これを実現するために、検出が実施される(例えば画像を取得する)直前に洗浄流体を光学検出システムのセンサ(例えば撮像カメラのレンズ)に噴射するように洗浄装置が設けられ得る。
【0004】
このような洗浄装置は、光学センサの作動を妨げることがあってはならない。すなわち、特に洗浄装置がセンサの視界に位置してはならない、また、車両のスペース的制約に合致するように可能な限りコンパクトでなくてはならない。この目的のために、洗浄装置は、一般に、進出した洗浄位置と休止位置との間で可動である部品を備えている。進出した洗浄位置において、可動部品の有する分配オリフィスが洗浄すべきセンサの表面の近傍に位置する。休止位置において、この可動部品は、当該センサを使用した光学検出を妨げないように後退している。
【0005】
可動部品は、アクチュエータ・シリンダに収容されたピストンを形成している。シリンダに流入した洗浄流体の圧力を利用して、ピストンをその洗浄位置に移動させることが公知である。また、少なくとも当該部品が洗浄位置にあるとき、洗浄流体が可動部品の内部ダクトに流入することが意図されているため、これに続いて、洗浄流体は分配オリフィスを経由して噴射され得る。
【0006】
洗浄流体は、本体に形成された取込チャンバに、シリンダを閉鎖する始端部品に作成された取込オリフィスを経由して流入する。そして、チャンバに存在する流体が、本体内で移動可能である可動ピストンの一端部を押圧する。したがって、ピストンは舌部に固着されたロッドに沿って摺動する。
【0007】
シリンダを閉鎖する始端部品に固着された固定ロッドであって、ピストンがこれに沿って摺動する固定ロッドの自由端部に、スロットを形成することが公知である。スロットは、可動ピストンがロッドに対してこれらのスロットの一端部が可動ピストンによって覆われていない位置にあるとき、洗浄流体が通過することを許容する。このような位置において、スロットの上流の第1端部は、取込チャンバと流体連通している。
【0008】
ロッドに対してピストンが所定の相対位置に到達するまで、摺動はシールした態様で実施される、すなわち、ピストンの位置はロッドの厚さに形成されたスロットを完全に覆っていることを理解されたい。チャンバに存在する流体は、可動ピストンや関連するシール要素の配置を理由としてスロットに流入することはできず、これにより流体が分配オリフィスに搬送されることが阻止される。
【0009】
規定位置を超えると、スロットはその上流の第1端部においてピストンによって覆われなくなり、これにより流体が、ロッドとピストンの間においてスロットに流入する。このため、流体は取込チャンバから可動部品の内部に向かって、スロットを経由して分配オリフィスまで流れる。
【0010】
例えば、文書FR2675758号及びFR3021014号は、シリンダに固定された始端部品に固着された固定ロッドが複数のスロットを周囲に備え、それぞれのスロットが洗浄液の流路を形成している洗浄装置を開示している。上述のように、可動部品がロッドに対して所定位置に到達したときのみ、したがって、この可動部部品の端部に配設された分配オリフィスが光学センサに対面する所定位置に到達したときのみ、流体は噴射され得る。この段階で、スロットの端部が同時に覆われなくなるため、洗浄流体は内部ダクトに一斉に到達する。
【0011】
中空本体を閉鎖する始端部品に固着されたロッドの厚さに形成されるスロット形状のこのような流路を作製することは難しくなっている。なぜならば、光学検出システムの光学センサを洗浄するために自動車両に適用され得る洗浄装置を得るように製造される部品が小型化しているためである。この結果、スロットの正確なサイズ設計を確保するように製造作業を実施することが困難になっている。ここで、溝の径方向寸法、すなわち深さが製造される精度は、取込チャンバからピストンに流れる液体の量を定量化するのに決定的なファクターであり、可動ピストンの摺動方向における溝の軸方向寸法、すなわち長さが製造される精度は、噴霧ノズルの進出動作に応じて光学センサに液体が噴霧されるタイミングを制御するのに決定的なファクターである。
【0012】
更に、ロッドに形成されるスロットの寸法及び/又は配置は、装置によって異なり得ることに留意されたい。これは、特に洗浄されるべき光学システムの寸法に装置を適合させるためである。可動ピストンの行程は、洗浄流体の噴霧がトリガされるタイミングと同様に異なり得る。これに伴い、文書FR2675758号及びFR3021014号の教示に従って製造される個々の装置について、上述の製造条件の下で、すなわち部品の小型化の下で、特定のロッド及び始端部品が開発され製造されることを理解されたい。
【0013】
文書FR3021014号に開示される実施形態において、洗浄流体を取込チャンバに一時的に留めるシール要素は、可動ピストンが装置の中空本体内でシールした態様で摺動することを許容し、取込チャンバのシール性を確保するシールのリップからなることに留意されたい。本実施形態の不利な点は、可動ピストンに対応する同一のシール要素が、同時に2つのシール動作に寄与する、すなわち、中空本体内でのピストンのシールされた摺動のための第1動作と、ロッドの周囲でのピストンのシールされた摺動のための第2動作に寄与する2つの作用シールゾーンを有していることである。作用シールゾーンのうちの一方においてシール要素が劣化した場合、全体的なシール性が変化する。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、少なくとも1つの流体を、自動車両の洗浄すべき表面に向けて、例えば光学検出システムの光学センサに向けて、噴霧することが意図された洗浄装置であって、上述の欠点に対処するとともに洗浄液の効果的な分配を可能とする洗浄装置を提案することである。
【0015】
本発明の1つの主題は、
少なくとも1つの流体を、自動車両の洗浄すべき表面に向けて、例えば光学検出システムの光学センサに向けて、噴霧することが意図された洗浄装置であって、前記洗浄装置は、
‐入口フランジによって一端部が閉鎖された中空本体と、
‐長手方向軸に沿って中空本体内で摺動可能である可動ピストンであって、第1端部に洗浄流体分配要素を有するとともに、後退した最端位置と進出した最端位置との間で移動可能である可動ピストンと、
‐入口フランジに固着されるとともに長手方向軸に対して平行に延びるロッドであって、可動ピストンが当該ロッドに沿って摺動するロッドと、
‐中空本体を通過させて流体取込始端部品から分配要素まで洗浄流体を搬送するための手段であって、容積が可動ピストンの移動に応じて変化する少なくとも1つの取込チャンバと、可動ピストン内に形成された分配ダクトと、を備える手段と、
を備え、
‐ピストン及びロッドは、それらの間に洗浄流体用の少なくとも1つの流路を提供するように構成される。
【0016】
本発明による洗浄装置は、少なくとも1つの流路が、可動ピストンに形成されたスロットにより形成されることを特徴としている。これは、ロッドに対するピストンの相対位置に応じて、スロットがロッドによって完全に又は部分的に覆われるということを意味する。
【0017】
本発明によれば、洗浄流体を「搬送するための手段」とは、洗浄流体を入口又は取込ゾーンから分配要素まで搬送可能とするダクト、取込チャンバ、及び/又は流路の全てを合わせたものである。このような搬送手段は、可動ピストンに形成された少なくとも1つの分配ダクトを含み、この分配ダクトは、好適には、異なる直径を有する2つの部分から構成される。分配ダクトの拡大上側部分は、ロッドが可動ピストン内で摺動することを許容するように規定される。一方、前記ダクトの下側部分は、その小さい直径を理由として、流体が加圧されてこの流体が光学センサに向かってこれを洗浄するように噴射され得ることを許容する。
【0018】
本発明によれば、ピストンを「移動させるための手段」は、流体搬送手段によって少なくとも部分的に、特に前記洗浄流体が前記ピストンに対して及ぼす圧力によって形成される。
【0019】
単独でも組み合わせてもよい本発明の種々の特徴によれば、以下の構成が想定され得る。
‐少なくとも1つの流路のスロットは、長手方向軸に対して平行に配設される。
‐可動ピストンに形成された各スロットが、ロッドによって、後退した最端位置において完全に覆われるように、且つ、ピストンとロッドとの他の相対位置において部分的に覆われるように、可動ピストン及びロッドは構成される。
‐少なくとも1つの流路のスロットは、分配ダクトを画定するピストンの内壁に形成される。
‐少なくとも1つの流路のスロットは、取込チャンバに開口するようにピストンに形成される。
【0020】
洗浄装置の好適な一実施形態において、洗浄装置は、入口フランジから突出する部分として形成された流体取込始端部品であって、中空本体がセンタリングされる長手方向軸に対して離れて位置する流体取込始端部品を備える。流体取込始端部品は、入口フランジ、中空本体の周壁及び可動ピストンにより、少なくとも部分的に画定される取込チャンバにおいて、中空本体に開口する。
【0021】
有利には、ピストンを移動させるための手段は、前記洗浄流体を加圧することが可能である流体搬送手段の他に、中空本体に収容されて前記可動ピストンを最端休止位置に復帰させることに資する弾性位置復帰手段を備える。好適には、弾性位置復帰手段は、中空本体において、取込チャンバの反対側において中空ピストンに当接するように収容される。一実施形態において、弾性位置復帰手段は、洗浄流体の圧力の影響を受けて変形可能である少なくとも1つの圧縮バネからなり、これにより中空ピストンの長手方向移動を促進する。したがって、装置が流体で充填されるフェーズにおいて、中空ピストンは取込チャンバから離間するように移動し、次いで流体の噴射による洗浄フェーズの最後に逆方向の復帰軌道を取ることを理解されたい。
【0022】
一連の特徴によれば、以下の構成が想定され得る。
‐中空ピストンは、中空本体の入口フランジに対して反対側の端部に形成された中空ガイドスリーブの内部で摺動可能である実質的に円筒状の中央部分と、中央部分を延長し且つその自由端部に前記分配要素を取り付けることが可能である終端分配部分と、終端分配部分に対して反対方向に中央部分を延長し且つ中空本体の内部で摺動するように構成される取込部分と、を備える。
‐少なくとも1つの流路のスロットは、ピストンにおいて取込部分に沿って形成される。
‐ピストンの終端分配部分は、ピストンに形成された分配ダクトが分配要素の分配流路と連通可能であるように設計される。
‐ピストンは、その上流端部の付近にリングを備え、リングの一方の面に弾性復帰手段が当接し得る。好適には、前記リングは、その外壁に配置された周溝であって、シール要素を収容可能である周溝を備え、これにより、前記シール要素が嵌合したピストンは、中空本体の内部においてシールした態様で摺動可能である。
‐シールを受容するように、周溝がロッドの自由端部に配置され得る。これにより、前記シールが嵌合したロッドは、ピストンの中央部分においてシールした態様で摺動可能である。
【0023】
本発明による洗浄装置は、ロッドと可動ピストンとの間に配置された複数の流路を備え、可動ピストンに形成されたスロットのうちの少なくとも1つが、隣接するスロットの軸方向寸法と異なる軸方向寸法を有し得る。これに代えて、又は同時に、可動ピストンに形成された少なくとも2つのスロットが、可変の径方向寸法を有し得る。
【0024】
「軸方向寸法」とは、可動ピストンの長さの長手方向軸(X)の方向における流路の高さを意味する。一方、「径方向寸法」とは、可動ピストンの厚さ、及び/又はロッドの厚さにおいて流路が形成され得る部分における前記流路の深さを意味する。
【0025】
流路を形成するスロットの特殊な配置及びサイズ構成により、大きい又は小さい流路断面が提供されることで流速を変化させることができる。特に、流路の径方向寸法を変更することは、取込チャンバから分配要素に流れる洗浄流体の量に影響を及ぼし得る。また流路毎に異なる軸方向寸法が提供されることにより、流体が通過する流速、ひいては洗浄すべきガラス要素に噴霧される流体を制御することができる。なぜならば、可動ピストンは徐々に進出し、この進出動作が当該ガラス要素に対する噴霧ノズルの位置に影響を及ぼすからである。流路の径方向寸法や幾何学的特徴がどのようなものであれ、ピストンがロッドの周囲において最適な状態でガイドされ得るように、2つの連続する流路の間に十分なランドを維持することが必要である。
【0026】
本発明の別の特徴によれば、全体的な液体圧スキームに含まれることを目的として、センサを洗浄するための装置は、取込始端部品と、中空本体と、ロッドと、流路を有する可動ピストンとの他に、洗浄流体貯蔵タンクと、タンクと取込始端部品との間における洗浄流体の通流を制御するための要素と、を備え得る。前記制御要素は、ポンプと、選択的にソレノイド弁とから構成され得る。また、前記制御要素は、休止位置において洗浄流体が取込始端部品に流入することを阻止し、一方で分配要素を洗浄位置に移動させるように、他方で洗浄流体を噴霧するように取込始端部品に洗浄流体を供給し、且つ洗浄流体が取込チャンバ及び分配流路に流入することを阻止しつつ分配要素を洗浄位置に保持するように構成される。
【0027】
液体圧システムに組み込まれる場合、ソレノイド弁は電動の三方弁である。三方弁は、3つの異なる位置に応じて、加圧流体の通過を許容し得る、又は阻止し得るため、ポンプからアクチュエータまでの通流が許容される、又は全ての通流が阻止される、更に又はアクチュエータからタンクへ液体が戻ることが許容される。
【0028】
本発明の第2の主題は、光学検出アセンブリを設けられた自動車両であって、少なくとも1つの流体を洗浄すべき光学センサの表面に向けて噴霧することが意図された、上述の少なくとも1つの洗浄装置を備えることを特徴とする自動車両である。
【0029】
本発明とその作用の更なる特徴、詳細及び利点が、添付図面を参照して例示としてなされる以下の説明を読むことでより明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】少なくとも1つの流体を自動車両の洗浄すべき表面に向けて、例えば光学検出システムの光学センサに向けて、噴霧することが意図された本発明による洗浄装置の分解斜視図であり、洗浄装置は、中空本体内で固定ロッドに沿って摺動可能である少なくとも1つの可動ピストンを備え、可動ピストンは一端部に流体分配要素を有している図。
図2図1の長手方向軸(X)に対して垂直な平面における、流体分配要素を有する端部に対して反対側の端部部分における本発明による装置のピストンの断面図であって、洗浄流体の通過のために可動ピストンの内壁に周方向に形成されたスロットを示す図。
図3】可動ピストンが後退した最端位置、すなわち休止位置にあるときの、図1の洗浄装置の長手方向軸(X)を含む断面における断面図。
図4】洗浄流体が流路を経由して可動ピストンに流入し得る中間位置での、図1の洗浄装置の図3と同一の断面における断面図。
図4a】この第1中間位置においてピストンが周囲を摺動するロッドの自由端部の詳細な図。
図5】可動ピストンが進出した最端位置にあるときの、図1の洗浄装置の図3と同一の断面における断面図。
図5a】この進出した最端位置においてピストンが周囲を摺動するロッドの自由端部の詳細な図。
図6】本発明による洗浄装置に対応する液体圧構造物の概略図。
図7】光学検出システムのセンサ及び対応する洗浄装置の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
最初に、図面は本発明をその実施のために詳細に説明するものであるが、当然に必要に応じて本発明をより良く定義し得ることに留意されたい。図示される本発明の実施形態は例示としての非制限的な例であることを理解されたい。したがって、本発明による装置の他の構成が、特に流路の配置、分散態様及び軸方向及び/又は径方向サイズ設計を変更することにより製造され得る。これらを変更することは、洗浄流体の流速及び対応する圧力に必然的に影響を与え得る。
【0032】
また、以下の説明において、「上流」及び「下流」という用語は、洗浄流体が本発明による洗浄装置内で流れる方向に関するものであることを記憶されたい。したがって、「上流」という用語は、本発明による洗浄装置の一側であって、この側を経由して当該洗浄流体が前記装置に流入する側を指し、「下流」という用語は、本発明による装置の一側であって、この側を経由して洗浄流体が当該装置の外部に、自動車両の光学検出アセンブリの光学センサの表面に向けて分配される側を指す。
【0033】
図1は、本発明による洗浄装置100であって、少なくとも1つの流体を自動車両の洗浄すべき表面に向けて、例えば光学センサ30に向けて、噴霧することが意図された洗浄装置100を示す。洗浄装置は、本質的に、洗浄装置の長さの長手方向軸(X)に沿って上流から下流に向かって、流体取込始端部品11と、入口フランジ2と、入口フランジ2に固着されたロッド10と、ピストン3と、弾性位置復帰手段4と、分配要素8、9と、から構成されている。これらの部品のそれぞれは、長手方向軸(X)を中心として回転する中空本体1の内部に収容される、又はその一端部に固定されている。
【0034】
流体取込始端部品11は、入口フランジ2から突出する部分として形成され、中空本体1に対して反対方向に延在し、本例において、中空本体1の長手方向軸(X)に対して離れて位置している。取込始端部品11は、長手方向貫通孔を有している。長手方向貫通孔は、中空本体1の内部で、入口フランジ2と中空本体1の周壁と可動ピストン3とによって少なくとも部分的に画定された取込チャンバ14(特に図4及び5に示す)内に開口している。
【0035】
入口フランジ2は、中空本体1の上流端部を閉鎖するように構成されている。シール部材5が、この閉鎖部に設けられ得る。入口フランジは、中空本体の内部に対面した状態で、ロッド10をその内面で支持するように構成されている。
【0036】
ロッド10は、入口フランジ2から突出する部分として中空本体1の内部において延在している。ロッドは、円形断面を持つ円筒形状を有し、その外周面は平滑である。ロッド10の自由端部15は、入口フランジ2に対して反対方向に延在するとともに、Oリングシール6を受容可能な周溝23を備えている。これにより、ロッド10はピストン3内でシールした態様で摺動することが可能となっている。後述のように、Oリングシール6は、ピストンの内面に当接するように構成されている。これにより、ピストンに形成されたスロットによって流体が分配要素に向かって漏れ出すことが阻止されている限り、流体は、ロッドとピストンとの間においてOリングの上流で留められる。
【0037】
ピストン3は、第1端部、すなわち下流端部において、洗浄流体分配要素8、9を有している。図示された例において、流体分配要素8、9は、L字形状の2つの相補的な部品から構成されている。
【0038】
ピストン3は、その上流端部の付近に、すなわち入口フランジ2に面する端部の付近に、リング21を備えている。リング21の外面には、シール要素7を収容可能な周溝22が配設されている。これにより、ピストン3が中空本体1内でシールした態様で摺動することが可能とされている。シール要素7は、好適には、ピストン3と中空本体1との間の摩擦を制限することが可能なリップシールである。
【0039】
ピストン3とロッド10との間における摺動のシール性に寄与するシール6は、ピストン3と中空本体1との間における摺動のシール性に寄与するシール要素7とは別個のものであることに留意されたい。これらのうちの一方が摩耗すれば、それのみを交換する必要があるが、他方を交換する必要はない。
【0040】
ピストンは、内部洗浄流体通流ダクト13により一端部から他端部まで切除されている。ピストンの内部形状についてのより詳細な説明が以下になされている。本例において、ピストンの内部形状は、洗浄流体用の流路12を形成するように構成された複数のスロット120を有する点において、とりわけ特徴がある。
【0041】
可動ピストン3は、中空本体1内において、後退した最端位置、すなわち休止位置(図3に示す)と、進出した最端位置、すなわち洗浄位置(図5に示す)との間で摺動する。
【0042】
洗浄流体は、取込始端部品を経由して中空本体に注入され、次いで、分配オリフィスを経由して噴射され得る。中空本体1を通過させて流体取込始端部品11から分配要素8、9まで洗浄流体を搬送するための手段は、少なくとも、取込チャンバ14と、可動ピストン3内に形成された分配ダクト13(図3乃至図6に示す)と、を備えている。
【0043】
弾性復帰手段4は、好適にはコイルバネであり、中空本体内において周壁とピストンとの間に配設されている。弾性復帰手段4の一端部が本体の端部壁に接し、反対側の端部がリング21の面に接するようになっている。
【0044】
ピストンは、中空本体内においてロッド10の周囲に装着される。ロッド10は、可動ピストン3と実質的に同軸に延在している。これにより、少なくともロッド10の自由端部15は、可動ピストン3の内部分配ダクト13の内部で延在している。中空ピストン3は、実質的に円筒形状部を備える。円筒形状部は、上流から下流に向かって、リング21を有する取込部分19と、中空本体1の下流端部に形成された中空ガイドスリーブ18の内部で摺動可能である中央部分16と、小径の終端分配部分17と、によって規定され得る。終端分配部分17の自由端部に、分配要素8、9が固定され得る。可動ピストン内に形成された分配ダクト13は、異なる直径を有する少なくとも2つの部分から構成されている。このうちの一方は、ダクトの上流端部から、すなわち取込チャンバ14に開口する端部から延在する基端第1部分131であり、他方は、ダクトの下流端部から延在する先端第2部分132である。図3乃至図6に示すように、先細ゾーン130が、異なる直径を有する基端部分と先端部分との間に配設されている。
【0045】
分配ダクト13の拡大した基端第1部分131は、可動ピストン3に対するロッド10の相対的摺動を許容するものとして規定される。一方、前記ダクト13の下方の第2部分は、その小さい直径と結果としての狭隘な領域により、流体が加圧されることを可能とする。これにより流体は光学センサ30に向かって、これを洗浄するように噴射され得る。分配ダクト13の下方第2部分が分配要素8、9内に形成された分配流路20と連通可能であるように、ピストン3の分配終端部分17は分配要素の上流部分8と協働するように設計されている。
【0046】
ピストン3及びロッド10は、これらの間に、洗浄流体が取込チャンバ14(とりわけ図4に示す)から流れることを許容する流路12を提供するように構成されている。取込チャンバ14の可変容積は、入口フランジ2に対するピストン3の位置によって規定される。流路12は、ピストン3の内壁31に形成されたスロット120によって得られる。これらのスロットは、ロッド10の平滑な外周面によって、ピストンに対するロッドの相対位置に応じて全面的に、又は部分的に覆われる。図1に示す実施形態において、スロット120は、取込部分19に沿って内部分配ダクト13を画定するピストン3の内壁31に形成されているとともに、互いに同様の軸方向及び径方向寸法を有している。しかしながら、スロットがピストン3において内壁31に形成されていれば、本発明の範囲を逸脱せずに他の構成が想定され得ることを理解されたい。このようなピストンに対する構成の利点についての詳細は、後述する。
【0047】
したがって、取込部分19はスロット120を備えるが、ピストンの中央部分16は平滑である。これにより、ロッド10の自由端部15により部分的に形成されるOリングシール6がピストンの中央部分16に位置してピストン3の内壁31に継続的に接しているとき、ロッドに対するピストンの相対的摺動は流体の通過を阻止するシールされた摺動となる。これに対し、Oリングシール6が取込部分19に位置しているとき、端部が覆われていないスロットを経由して流体が抜け出し得るため、相対的摺動は流体の通過を許容する透過摺動となる。
【0048】
図2は、本発明の一実施形態を説明するものであり、ピストン3の内壁に形成された流路12を形成するスロット120の構成の非制限的な例を示している。十分なランド121が2つの連続するスロットの間に残されている。十分なランドとは、スロットのサイズや本数に関係なく、ピストンがロッドの周囲を安定してガイドされるように、ロッドとピストンとが、スロットが残した間隔に対して十分な接触面積を有しているということである。本例において、ピストン3の内壁に形成された8個のスロットのうちの1つと当該内壁に接するロッド10との組み合わせによって8個の流路が形成されている。
【0049】
これらのスロット120は、取込チャンバ14の画定に寄与するリング21の端面210に開口する近位端部122と、可動ピストン3の厚さにおいてリング21の当該近位端面210の所定の軸方向寸法まで延在する遠位端部123と、の間に軸方向に延在している。
【0050】
流路の形成に寄与するこれらのスロット120は、可変の軸方向又は径方向寸法、更に又は可変の深さを有し得る。
【0051】
本発明による洗浄装置における分配要素の進出動作の一例について、特に進出動作における連続ステップを示す図3乃至図5を参照して、更に詳細に以下に説明する。
【0052】
図3は、分配要素8、9が後退位置にあって、洗浄装置100の本体の下部に収容されている第1の休止位置にある本発明の洗浄装置を示す。したがって、取込部分19が入口フランジに対してしっかりと押圧されて、取込チャンバ14が最小容積まで縮小された状態であるように、ピストンは配置されている。この休止位置において、弾性復帰手段は非圧縮状態にあり、バネ4の自由な長さを規定している。
【0053】
この休止位置において、ロッド10の自由端部15は、可動ピストンに形成された分配ダクト13内に深く延在し、これにより、ロッドのこの自由端部15は、先細領域130の付近に実質的に位置していることに留意されたい。当該休止位置において、ピストン3に配置されたスロット120は、ロッド10によって完全に覆われており、このため、これらのスロットのそれぞれの遠位端部123において、流路は閉鎖されている。ロッドの周溝23に配置されるとともにピストン3の内壁31を擦過するような寸法とされたOリングシール6の存在により、シール性が保証されるとともに、流体が分配要素に向けて流れることが阻止されている。
【0054】
当該休止位置において、光学センサを洗浄するための作動が指示されると、流体が洗浄装置に注入される。流体は入口フランジと可動ピストンとの間で広がって取込チャンバ14内に流入するとともに、流路に進入する。各スロット120は、自由近位端部122を有する流路を形成する。自由近位端部122は、リング21の端面210に向けて開口するとともに、取込チャンバからアクセス可能である。上述のように、ピストンに形成されたスロットは、当該休止位置においてロッドにより完全に覆われており、流路に進入した流体はその内部で閉じ込められたままである。
【0055】
図4は、休止位置と進出した最端位置との間の中間位置にある本発明による洗浄装置を示している。この中間位置は、ピストンをロッドに沿って、洗浄流体の圧力の影響下で特にピストン3のリング21に対して摺動させることに続いて得られ、洗浄流体は取込始端部品によって注入され続ける。この第1中間位置において、ピストンがロッドに沿って摺動したことで、ロッド10の自由端部15は先細部分130から離間する。また、シール6はもはやピストンの中央部分16には位置せず、スロット120が延在するピストンの取込部分19の付近に位置している。ロッド及びOリングシール6は、もはやスロット120の遠位端部123を覆っていない。Oリングシールは、この覆われていない遠位端部とリング21の端面210との間にあるからである。したがって、図4aの矢印F1に示すように、それぞれのスロットに存在する洗浄流体は分配ダクト13に進入可能となり、流体は取込チャンバ14から流路を経由して分配要素8、9に向かって通流することができる。
【0056】
図5は、洗浄装置の進出した最端位置、すなわち、最大進出位置を示す。中空ガイドスリーブ18に当接するバネ4及び/又はピストンのリング21が及ぼす反対方向の圧力によって、ピストンに対するロッドの移動が制限され得るとともに、ロッドがピストン3内に形成された分配ダクト13から脱出することが阻止され得る。この当接位置において、各スロットの遠位端部は覆われていない。また、シール6は、スロットに沿った通過を妨げずに流体がピストン及びロッドの内壁と外壁との間で流れないようにするのみである。したがって、分配要素8、9は、十分に洗浄装置から進出して光学センサ30の洗浄に最適な位置を取り、流体が噴出される際の流速は最大である。
【0057】
全ての流体を噴射することによる洗浄フェーズの最後に、取込チャンバに対して反対方向に移動したピストンは、バネの復帰と取込始端部品を経由した流体の供給の停止とが組み合わされた結果として、逆方向の復帰軌道を実施し、バネはピストンをその当初位置に押し戻すとともに、残っている流体を取込チャンバ及び中空本体から押し出す。
【0058】
図6は、洗浄装置100に対応する液体圧構造物全体を概略的に示す。液体圧構造物は、取込始端部品11と、中空本体1と、ロッド10と、異なる軸方向寸法を持つ流路を有する可動ピストン3との他に、洗浄流体を貯蔵するためのタンク24と、タンク24と本例においてアクチュエータとして概略的に示される前記洗浄装置100の取込始端部品11との間における洗浄流体の通流を制御するための要素と、を備え得る。前記制御要素は、ポンプ25と、選択的にソレノイド弁26とから構成され得る。
【0059】
全ての流体の噴射による洗浄フェーズの最後に、ピストンがバネによって休止位置へ駆動されて復帰する結果、流体が取込始端部品を通過してポンプに、そして貯蔵タンクに戻るということを理解されたい。
【0060】
上述の説明は、本発明がいかにして設定した課題を達成し得るか、及び特にいかにして本発明が自動車両の光学センサを洗浄するための装置を提供するかを明瞭に解説している。本発明の自動車両の光学センサを洗浄するための装置は、洗浄流体用の流路を形成するスロットの特別な配置構成を理由として、すなわち、固定ロッドではなく可動ピストンにおけるこれらのスロットの配置構成を理由として、少なくとも1つの流体を自動車両の洗浄すべき表面に向けて噴霧することが意図された洗浄装置を構成する部品の製造を単純化し得るため、最初に設計された標準的なサイズ設計に比較して装置に特別なサイズ設計が必要な場合に再加工が必要な部品の製造が容易となるとともに、シール要素が摩耗した際に実施されるアフターケアが限定され得る。
【0061】
有利には、本発明によれば、ピストンとロッドとの間における洗浄流体のための流路の形成に寄与するスロット120は、ロッド10の外面ではなく、可動ピストン3の内壁31に形成される。したがって、所定数のスロットを、或る寸法、本例においてロッドの直径より大きい直径を有する可動ピストンに作製することにより、2つのスロット間により大きいランドが残されるとともに、ピストンに対するロッドの相対的な摺動が容易となる。自動車両のバンパーに収容されたリバースカメラタイプの光学検出システムの直近に配置する必要がある小型の装置の環境において、ロッド及び可動ピストンの直径は4乃至7mm規模となり得るが、スロットがより大きい直径を有する要素にされる場合、製造は単純化される。
【0062】
スロットを可動ピストンに作製する他の利点は、スロットが入口フランジに形成された取込チャンバ、及び中空本体に収容されたピストンの端部に配置されたリングに開口するということである。流体が取込チャンバに到達すると、すぐに流体は流路内に広がり始める。結果として、ロッドに対するピストンの相対位置によって流体が内部分配ダクトに流路を経由して流入するとき、これらの流路は既に満杯である。したがって、流体の分配に急激な変化が生じることがほとんどない、又は全くない。取込チャンバから流路への流体の流れは、断面積が顕著に減少した状態で生じるため、本発明によれば、流路が流体で充填されるのにかかる時間は、可動ピストンがロッドに対する位置、すなわち流体が内部分配ダクトにアクセス可能な位置に向けて進出する時間と同等であることが有利であることを理解されたい。
【0063】
更に、スロットを可動ピストンに持たせることにより、種々の機能的特徴(例えば、噴霧される流体の流速、噴霧前の装置の行程等)を有する装置を開発し、スロットの異なるサイズ設計及び/又は配置を必要とする際に、標準型の装置に対して変更が必要な部品の個数が制限され得る。ロッドは標準形式のままでよく、ロッドが延在する突出した部分としての入口フランジを変更する必要はない。
【0064】
図7は、光学センサ30用の洗浄装置100を示す。流体を吸入して分配する装置は、軸Xに沿って、分配要素8、9が光学センサ30に対面配置される進出位置と、分配要素8、9が、一方でこれが保護されるように、且つ他方でセンサの光学検出を妨げないように車両本体構造部のハウジング内に後退した後退位置との間で、並進移動可能である。
【0065】
ロッドと可動ピストンとの間の流路の形成に寄与するスロットがピストンに配置されている限り、本発明は、上述の実施形態に拘束されない。可能な実施形態の非制限的な例として、分配要素8、9に前進的に到達する洗浄流体を制御するように、可動ピストンに形成されるとともに流路12の形成に寄与するスロット120が互いに異なる寸法、とりわけ異なる長手方向寸法を有することが想定され得る。
図1
図2
図3
図4-4a】
図5-5a】
図6
図7