(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】グラフェンフォームの細孔内にin situ成長したケイ素ナノワイヤーを含有するリチウムイオンバッテリーアノードおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1395 20100101AFI20220729BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220729BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220729BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220729BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220729BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20220729BHJP
C01B 32/192 20170101ALI20220729BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/66 Z
H01M4/134
H01M4/36 B
H01M4/38 Z
C01B32/194
C01B32/192
H01M4/80 C
(21)【出願番号】P 2019518929
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(86)【国際出願番号】 US2017054234
(87)【国際公開番号】W WO2018067391
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-08-05
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】スー,ユー-シェン
(72)【発明者】
【氏名】イン,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,チン
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0285083(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0043384(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0176337(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103700815(CN,A)
【文献】特開2014-199749(JP,A)
【文献】特開2015-118911(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031993(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/1395
H01M 4/66
H01M 4/134
H01M 4/36
H01M 4/38
C01B 32/194
C01B 32/192
H01M 4/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンバッテリーのためのアノー
ドを製造するための方法であって、前記アノードが複数の細孔および細孔壁と前記細孔内に存在しているケイ素(Si)ナノワイヤーとから構成される固体グラフェンフォームを含み、前記方法が、
(a)触媒金属被覆Si粒子、グラフェンシート、および
必要に応じて発泡剤を液体媒体中に分散させてグラフェン/Si分散体を形成する工程において、前記Si粒子が0.2μm~20μmの粒径を有し、前記触媒金属が、前記Si粒子の表面上におよび任意選択によりグラフェンシートの表面上に堆積される0.5nm~100nmの直径を有するナノ粒子または1nm~100nmの厚さを有する薄いコーティングの形態であり、前記Si粒子が、Si元素を少なくとも99.9重量%有する高純度SiまたはSiを70重量%~99.9重量%その中に有するSi合金または混合物を含有する工程と、
(b)前記グラフェン/Si分散体を支持基材の表面上に分配および堆積してグラフェン/Si混合物の湿潤層を形成し、前記液体媒体をグラフェン/Si混合物の前記湿潤層から部分的にまたは完全に除去して、グラフェン/Si混合物材料の乾燥された層を形成する工程と、
(c)前記グラフェンシートから揮発性ガス分子を
発生させるかまたは前記発泡剤を活性化させて前記
固体グラフェンフォームを製造すると共に、同時に、前記
固体グラフェンフォームの細孔内の供給材料として前記
触媒金属被覆Si粒子から生じる複数のSiナノワイヤー
の成長を可能にするために十分な時間の間、グラフェン/Si混合物の前記乾燥された層を100℃~2,500℃の温度を含む高温環境に暴露し
て、アノード電極層を形成する工程において、前記Siナノワイヤーが2nm~100nmの直径および少なくとも5の長さ対直径アスペクト比を有し、前記Siナノワイヤーが、組み合わせられた前記グラフェンフォームおよび前記Siナノワイヤーの全重量に基づいて0.5重量%~99重量%の量である工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記グラフェンシートが、非炭素元素0.01重量%未満を有する純粋なグラフェン材料または非炭素元素0.01重量%~50重量%を有する非純粋なグラフェン材料を含有し、前記非純粋なグラフェンが、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記グラフェンシートの表面もまた、前記触媒金属を堆積され、およびSiナノワイヤーもまた、前記グラフェン表面から成長して生じていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記分配および堆積手順が、前記グラフェン/
Si分散体
に剪断応力を加えながら前記支持基材の表面上に分配および堆積し、これにより、前記グラフェンシートを剪断方向に沿って配向させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記複数の細孔の一部が前記Siナノワイヤーを容れられ、その他の細孔がSiを含有せず、前記グラフェンフォームが、バッテリー充電-放電サイクルの間に前記Siナノワイヤーの体積膨脹および収縮を吸収するために十分に弾性であり、前記アノード
電極層の膨張を避けることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記グラフェンシートが、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せの単一層シートまたは数層プレートレットから選択され、数層が、グラフェン面の10層未満として定義されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記Si粒子が、0.5μm~5μmの直径を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記触媒金属被覆Si粒子が、物理蒸着、化学蒸着、スパッタリング、プラズマ堆積、レーザーアブレーション、プラズマ噴霧、超音波噴霧、印刷、電気化学堆積、電極めっき、無電極めっき、化学めっき、またはそれらの組合せの手順によって触媒金属をSi粒子表面上に堆積する工程によって製造されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記触媒金属が、Cu、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Al、Ag、Au、Pt、Pd、またはそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項3に記載の方法において、前記触媒金属が、(a)触媒金属前駆体を液体中に溶解または分散させて前駆体溶液を形成する工程と、(b)前記前駆体溶液を前記グラフェンシートの表面および前記Si粒子の表面と接触させる工程と、(c)前記液体を除去する工程と、(d)前記触媒金属前駆体を前記触媒金属被覆またはナノ粒子に化学的にまたは熱的に変換する工程とを含む手順によってSiおよびグラフェンシート表面上に堆積されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記触媒金属前駆体を化学的にまたは熱的に変換する前記工程(d)が、グラフェン/Si混合物の前記乾燥された層を高温環境に暴露する手順(c)と同時に行われることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記触媒金属前駆体が、Cu、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Al、およびそれらの組合せからなる群から選択される遷移金属の塩または有機金属分子であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法において、前記触媒金属前駆体が、硝酸銅、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸チタン、硝酸アルミニウム、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酢酸鉄、酢酸チタン、酢酸アルミニウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、リン酸銅、リン酸ニッケル、リン酸コバルト、リン酸マンガン、リン酸鉄、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、水酸化銅、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化チタン、水酸化アルミニウム、カルボン酸銅、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸マンガン、カルボン酸鉄、カルボン酸チタン、カルボン酸アルミニウム、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項14】
リチウムバッテリーのためのアノー
ドを製造するための方法であって、前記アノード層が複数の細孔および細孔壁と前記細孔内に存在しているケイ素(Si)ナノワイヤーとから構成される固体グラフェンフォームを含み、前記方法が、
(a)Si粒子、グラフェンシート、触媒金属前駆体、および
必要に応じて発泡剤を液体中に分散させてグラフェン/Si分散体を形成する工程において、前記Si粒子が、0.2μm~20μmの直径を有し、Si元素を少なくとも99.9重量%有する高純度SiまたはSiを70重量%~99.9重量%その中に有するSi合金または混合物を含有する工程と、
(b)前記グラフェン/Si分散体を支持基材の表面上に分配および堆積してグラフェン/Si混合物の湿潤層を形成し、前記液体媒体をグラフェン/Si混合物の前記湿潤層から部分的にまたは完全に除去して、グラフェン/Si混合物材料の乾燥された層を形成する工程と、
(c)前記触媒金属前駆体を、Si粒子の表面および/またはグラフェンシートの表面上に堆積される触媒金属のコーティングまたはナノ粒子に熱的に変換するために十分な時間の間、グラフェン/Si混合物の前記乾燥された層を100℃~2,000℃の高温環境に暴露して、前記グラフェンシートから揮発性ガス分子を
発生させるかまたは前記発泡剤を活性化させて前記
固体グラフェンフォームを製造する共に、同時にまたは順次に、前記
固体グラフェンフォームの細孔内の供給材料として前記
触媒金属被覆Si粒子から生じる複数のSiナノワイヤー
の成長を可能にし
てアノード電極層を形成する工程において、前記Siナノワイヤーが100nm未満の直径および少なくとも5の長さ対直径アスペクト比を有し、前記Siナノワイヤーが、組み合わせられた前記グラフェンフォームおよび前記Siナノワイヤーの全重量に基づいて0.5重量%~95重量%の量である工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記触媒金属前駆体が、Cu、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Al、およびそれらの組合せからなる群から選択される遷移金属の塩または有機金属分子であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、前記触媒金属前駆体が、硝酸銅、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸チタン、硝酸アルミニウム、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酢酸鉄、酢酸チタン、酢酸アルミニウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、リン酸銅、リン酸ニッケル、リン酸コバルト、リン酸マンガン、リン酸鉄、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、水酸化銅、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化チタン、水酸化アルミニウム、カルボン酸銅、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸マンガン、カルボン酸鉄、カルボン酸チタン、カルボン酸アルミニウム、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、グラフェン/Si混合物の前記乾燥された層を高温環境に暴露する前記手順が、不活性ガス、窒素ガス、水素ガス、それらの混合物の保護雰囲気中で、または真空中で行われることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記固体グラフェンフォームが、Siなしに単独で測定されるとき、0.01~1.7g/cm
3の密度、50~2,000m
2/gの比表面積、単位比重当たり少なくとも100W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり1,000S/cm以上の電気導電率を有することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、前記Siナノワイヤーが20nm未満の直径を有することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、前記
固体グラフェンフォームが炭素または黒鉛材料をその中にさらに含み、前記炭素または黒鉛材料が前記
Siナノワイヤーに対する電子伝導路を形成することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記炭素または黒鉛材料が、ポリマー
に含まれる炭素、非晶質炭素、化学蒸着炭素、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、カーボンブラック、コークス、アセチレンブラック、活性炭、100nmより小さい寸法を有する微細膨張黒鉛粒子,人工黒鉛粒子、天然黒鉛粒子、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1に記載の
方法において、前記アノードが、複数の細孔および
複数の細孔壁と前記細孔内に存在しているSiナノワイヤーとから構成されるグラフェンフォーム構造物を含み、前記
複数の細孔壁が、X線回折によって測定されるとき0.3354nm~0.40nmの面間間隔d
002を有
し、相互に接続されてグラフェン面の3D網目構造を含有し、前記Siナノワイヤーが2nm~100nmの直径および少なくとも5の長さ対直径アスペクト比を有し、前記Siナノワイヤーが、組み合わせられた前記
固体グラフェンフォームおよび前記Siナノワイヤーの全重量に基づいて0.5重量%~99重量%の量であることを特徴とする
方法。
【請求項23】
請求項22に記載の
方法において、前記Siナノワイヤーの一部が前記細孔壁に化学接合していることを特徴とする
方法。
【請求項24】
請求項22に記載の
方法において、前記細孔壁が純粋なグラフェンを含有し、前記固体グラフェンフォームが0.5~1.7g/cm
3の密度を有するかまたは前記細孔が、2nm~100nmの細孔径を有することを特徴とする
方法。
【請求項25】
請求項
2に記載の
方法において、前記非純粋なグラフェン材料が0.01重量%~2.0重量%の非炭素元素の含有量を含有することを特徴とする
方法。
【請求項26】
請求項22に記載の
方法において、前記細孔壁がフッ化グラフェンを含有し、前記固体グラフェンフォームが0.01重量%~2.0重量%のフッ素含有量を含有することを特徴とする
方法。
【請求項27】
請求項22に記載の
方法において、前記細孔壁が酸化グラフェンを含有し、前記固体グラフェンフォームが0.01重量%~2.0重量%の酸素含有量を含有することを特徴とする
方法。
【請求項28】
請求項22に記載の
方法において、前記固体グラフェンフォームが、Siなしに単独で測定されるとき、200~2,000m
2/gの比表面積または0.1~1.5g/cm
3の密度を有することを特徴とする
方法。
【請求項29】
請求項
25に記載の
方法において、前記非炭素元素が、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、水素、およびホウ素からなる群から選択される元素を含むことを特徴とする
方法。
【請求項30】
請求項22に記載の
方法において、前記グラフェンフォームが、50μm~800μmの厚さおよび少なくとも2メートルの長さを有する連続長ロールシート形態で
あることを特徴とする
方法。
【請求項31】
請求項22に記載の
方法において、前記グラフェンフォームが、Siなしに単独で測定されるとき、1重量%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、前記細孔壁が、0.35nm未満のグラフェン間の間隔、単位比重当たり少なくとも250W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり2,500S/cm以上の電気導電率を有することを特徴とする、
方法。
【請求項32】
請求項22に記載の
方法において、前記グラフェンフォームが、Siなしに単独で測定されるとき、0.01重量%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、前記細孔壁が、0.34nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、単位比重当たり少なくとも300W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,000S/cm以上の電気導電率を有することを特徴とする、
方法。
【請求項33】
請求項22に記載の
方法において、前記グラフェンフォームが、Siなしに単独で測定されるとき、0.1重量%以下の酸素含有量または非炭素含有量を有し、前記細孔壁が、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、
X線回折強度曲線の半値全幅によって表わされる0.7以下のモザイクスプレッド値、単位比重当たり少なくとも350W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,500S/cm以上の電気導電率を有することを特徴とする、
方法。
【請求項34】
請求項22に記載の
方法において、前記グラフェンフォームが、Siなしに単独で測定されるとき、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面を含有する細孔壁、
X線回折強度曲線の半値全幅によって表わされる0.4以下のモザイクスプレッド値、単位比重当たり400W/mK超の熱伝導率、および/または単位比重当たり4,000S/cm超の電気導電率を有することを特徴とする、
方法。
【請求項35】
請求項22に記載の
方法において、前記細孔壁が、0.337nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面および
X線回折強度曲線の半値全幅によって表わされる1.0未満のモザイクスプレッド値を有することを特徴とする、
方法。
【請求項36】
請求項22に記載の
方法において、前記固体グラフェンフォームが80%以上の黒鉛化度および/または
X線回折強度曲線の半値全幅によって表わされる0.4未満のモザイクスプレッド値を示すことを特徴とする、
方法。
【請求項37】
請求項22に記載の
方法において、前記固体グラフェンフォームが90%以上の黒鉛化度および/または
X線回折強度曲線の半値全幅によって表わされる0.4以下のモザイクスプレッド値を示すことを特徴とする
方法。
【請求項38】
請求項22に記載の
方法において、前記
複数の細孔壁が
相互に接続されてグラフェン面の3D網目構造を含有することを特徴とする
方法。
【請求項39】
請求項22に記載の
方法において、前記固体グラフェンフォーム
の細孔の径が2つの範囲から成り、一方がSiナノワイヤーの体積膨脹を緩衝するために2nm~50nmであり、および他方が、Siナノワイヤーを容れるために200nm~20μmであることを特徴とする
方法。
【請求項40】
請求項22に記載の
方法において、前記アノードが、前記Siナノワイヤーに付着されるCu、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Al、Ag、Au、Pt、Pd、およびそれらの組合せからなる群から選択される触媒金属を含有することを特徴とする
方法。
【請求項41】
リチウムバッテリーを製造するための方法において、
前記リチウムバッテリーが、請求項22に記載のアノードと、カソードまたは陽極と、前記アノードおよび前記カソードとイオン接触している電解質とを含有することを特徴とする
方法。
【請求項42】
前記カソード
から電子を集めるよう構成されるカソード集電体をさらに含有することを特徴とする請求項41に記載の
方法。
【請求項43】
前記アノード
から電子を集めるよう構成されるアノード集電体をさらに含有することを特徴とする請求項41に記載の
方法。
【請求項44】
請求項41に記載の
方法において、前記グラフェンフォームがアノード集電体として機能して前記リチウムバッテリーの充電中に電子を前記Siナノワイヤーから集め、それが別個のまたは付加的な集電体を含有しないことを特徴とする
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2016年10月6日に出願された米国特許出願第15/287,078号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般的に、再充電可能リチウムイオンバッテリーの分野および、より詳しくは、グラフェンフォームの層に埋め込まれてそれによって保護される、アノード活物質として、ケイ素ナノワイヤーを含有するアノード電極および同電極を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術情報の考察はここでは、この背景技術の節において3つの部分に分けられる:(a)リチウムイオンバッテリーのための高容量アノード活物質およびこれらの材料に伴う長く存続している問題についての考察、(b)「グラフェン」と呼ばれる新規な2Dナノ材料およびアノード活物質のための導電性添加剤材料としてのその先使用、ならびに(c)「グラフェンフォーム」と呼ばれるグラフェンをベースとした発泡材料。
【0004】
リチウムイオンバッテリーの単位セルまたは構成ブロックは典型的に、アノード活物質層、アノードまたは陰極層(リチウムをその中に貯蔵するのに関与するアノード活物質、導電性添加剤、および樹脂結合剤を含有する)、電解質および多孔性セパレーター、カソードまたは陽極層(リチウムをその中に貯蔵するのに関与するカソード活物質、導電性添加剤、および樹脂結合剤を含有する)、ならびに別個のカソード集電体から構成される。電解質は、アノード活物質およびカソード活物質の両方とイオン接触している。電解質が固体状態電解質である場合、多孔性セパレーターは必要とされない。
【0005】
結合剤層中の結合剤を使用して、アノード活物質(例えば黒鉛またはSi粒子)と導電性充填剤(例えばカーボンブラックまたはカーボンナノチューブ)とを一緒に結合して構造統合性のアノード層を形成すると共にアノード層を別個のアノード集電体に結合し、それは、バッテリーが放電される時にアノード活物質から電子を集めるように作用する。換言すれば、バッテリーの陰極側において、典型的に4つの異なった材料:アノード活物質、導電性添加剤、樹脂結合剤(例えばポリフッ化ビニリデン、PVDF、またはブタジエンスチレンゴム、SBR)、およびアノード集電体(典型的にCu箔のシート)が必要とされる。
【0006】
リチウムイオンバッテリーのための最も一般的に使用されるアノード活物質は、リチウムでインターカレートされ得る天然黒鉛および合成黒鉛(または人工黒鉛)であり、得られた黒鉛内位添加化合物(GIC)は、LixC6(xが典型的に1未満である)として表わされてもよい。完全な黒鉛結晶のグラフェン面間の間隔に可逆的にインターカレートされ得るリチウムの最大量は、372mAh/gの理論比容量を規定する、x=1に相当する。
【0007】
最初のいくつかの充電-放電サイクル中にリチウムと電解質との間(またはリチウムとアノード表面/エッジ原子または官能基との間)の反応から得られる、保護固体-電解質境界面層(SEI)の存在のために黒鉛または炭素アノードは長いサイクル寿命を有することができる。この反応におけるリチウムは、最初は電荷移動の目的のためのものであったリチウムイオンの一部に由来する。SEIが形成されるとき、リチウムイオンは、不活性SEI層の一部になって不可逆的になり、すなわち充電/放電中にアノードとカソードとの間でこれらの陽イオンをもはや往復させることはできない。したがって、有効なSEI層の形成のために最小量のリチウムを使用することが望ましい。SEI形成に加えて、不可逆的な容量損失Qirはまた、電解質/溶媒の共インターカレーションおよびその他の副反応によって引き起こされた黒鉛剥離に帰せられ得る。
【0008】
炭素ベースまたは黒鉛ベースのアノード材料の他に、可能なアノード用途のために評価されている他の無機材料には、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物等の他、リチウム原子/イオンを受け入れることができるかまたはリチウムと反応することができる広範な金属、金属合金、および金属間化合物が含まれる。これらの材料の中でも、Li
aA(Aは、AlおよびSiなどの金属または半導体元素であり、「a」は0<a≦5を満たす)の組成式を有するリチウム合金、例えば、Li
4Si(3,829mAh/g)、Li
4.4Si(4,200mAh/g)、Li
4.4Ge(1,623mAh/g)、Li
4.4Sn(993mAh/g)、Li
3Cd(715mAh/g)、Li
3Sb(660mAh/g)、Li
4.4Pb(569mAh/g)、LiZn(410mAh/g)、およびLi
3Bi(385mAh/g)はそれらの高い理論容量のために非常に重要である。しかしながら、
図1(A)に図解的に説明されるように、これらの高容量材料から構成されるアノードにおいて、これらの粒子へのおよびこれらの粒子からのリチウムイオンの挿入および抽出によって引き起こされるアノード活物質粒子の極度な膨張および収縮のために極度な微粉化(合金粒子の破砕)が充電および放電サイクルの間に起こる。活物質粒子の膨張および収縮、ならびに得られた微粉化は、活物質粒子と導電性添加剤との間の接触の低下およびアノード活物質とその集電体との間の接触の低下をもたらす。この劣化現象は、
図1(A)において説明される。これらの悪影響は、著しく短縮された充電-放電サイクル寿命をもたらす。
【0009】
このような機械的崩壊に伴なう問題を克服するために、3つの技術的方法が提案された:
(1)粒子の亀裂形成の推進力である、おそらく、粒子中に貯蔵され得る全歪エネルギーを低減する目的のために、活物質粒子の粒度を低減する。しかしながら、低減された粒度は、可能性として液体電解質と反応してより高量のSEIを形成するために利用可能なより大きい表面積を意味する。このような反応は、不可逆的な容量損失の原因であるので、望ましくない。
【0010】
(2)薄膜形態の電極活物質を銅箔などの集電体上に直接に堆積させる。しかしながら、極端に小さい厚さ方向寸法(典型的に500nmよりずっと小さく、しばしば必然的に100nmより薄い)を有するこのような薄膜構造物は、(同じ電極または集電体表面積が与えられたとすると)ごく少量の活物質を電極に混入することができ、(単位質量当たりの容量が大きいことができても)低い全リチウム貯蔵容量および単位電極表面積当たり低いリチウム貯蔵容量を提供することを意味する。このような薄膜は、サイクル経過によって引き起こされるクラッキングにいっそう耐性であるために100nm未満の厚さを有さなければならず、全リチウム貯蔵容量および単位電極表面積当たりのリチウム貯蔵容量をさらに減少させる。このような薄膜バッテリーは適用範囲が非常に限定されている。望ましいおよび典型的な電極厚さは100μm~200μmである。(<500nmまたはさらに<100nmの厚さを有する)これらの薄膜電極は、必要とされる厚さの1/3ではなく、3桁下回る。
【0011】
(3)より活性でないまたは非活性母材によって保護された(中に分散されるかまたはそれによって封入された)小さな電極活性粒子、例えば、炭素で被覆されたSi粒子、ゾルゲル黒鉛で保護されたSi、金属酸化物で被覆されたSiまたはSn、およびモノマーで被覆されたSnナノ粒子から構成される複合物を使用する。おそらく、保護母材は粒子の膨張または収縮のための緩衝作用を提供し、電解質が電極活物質と接触して反応するのを防ぐ。アノード活性粒子の例はSi、Sn、およびSnO2である。残念なことに、Si粒子などの活物質粒子がバッテリーの充電工程の間に(例えば>300%の体積膨脹まで)膨張するとき、保護コーティングは、保護コーティング材料の機械的弱さおよび/o脆性のために容易に破断される。それ自体リチウムイオン導電性でもある入手可能な高強度および高靭性材料はなかった。
【0012】
活性粒子(例えばSiおよびSn)を保護するために使用されるコーティングまたは母材材料は炭素、ゾルゲル黒鉛、金属酸化物、モノマー、セラミック、および酸化リチウムであることをさらに注記しておく。これらの保護材料は全て非常に脆く、弱く(低強度)、および/または不導性である(例えば、セラミックまたは酸化物コーティング)。理想的には、保護材料は、以下の要件を満たすのがよい:(a)コーティングまたは母材材料は、電極活物質粒子が、リチウム化される時に過度に膨張しないのを助けるように高い強度および剛性を有するのがよい。(b)保護材料はまた、反復されるサイクル経過中の砕解を避けるために高い破壊靭性または亀裂形成に対する高い耐性を有するのがよい。(c)保護材料は、電解質に対して不活性でなければならないが、良いリチウムイオン導体でなければならない。(d)保護材料は、リチウムイオンを不可逆的に捕捉する相当量の欠陥部位を一切提供してはならない。(e)保護材料は、リチウムイオン導電性ならびに電子導電性でなければならない。先行技術の保護材料は全て、これらの要件が不十分である。したがって、得られたアノードは典型的に、予想されるよりもずっと低い可逆的な比容量を示すことを観察するのは驚くべきことではなかった。多くの場合、第1サイクル効率は極度に低い(主に80%より低く、さらに60%より低いものもある)。さらに、多くの場合、電極は、多数のサイクル数の間運転することができなかった。さらに、これらの電極の大部分は、高率性でなく、高い放電率で容認し難いほど低い容量を示す。
【0013】
これらのおよびその他の理由のために、先行技術の複合電極の大部分は、いくつかの仕方で欠陥を有し、例えば、多くの場合、あまり良くない可逆的な容量、不十分なサイクル経過安定性、高い不可逆的な容量、リチウムイオン挿入および抽出工程の間の内部応力または歪の低減の無効性、およびその他の望ましくない副作用を有する。
【0014】
特に重要な複雑な複合粒子は、炭素母材中に分散された別個のSiと黒鉛粒子との混合物である;例えば、Mao,et al.[“Carbon-coated Silicon Particle Powder as the Anode Material for Lithium Batteries and the Method of Making the Same”、米国特許出願公開第2005/0136330号明細書(2005年6月23日)]によって調製された複合粒子。また、炭素母材を含有する、その中に分散された複合ナノSi(酸化物によって保護される)および黒鉛粒子、ならびに黒鉛粒子の表面上に分布された炭素で被覆されたSi粒子もまた重要である。また、これらの複雑な複合粒子は、低い比容量をもたらすかまたは少しのサイクル数までしか通用しなかった。炭素自体が比較的弱く脆性であり、ミクロンサイズの黒鉛粒子の存在は、黒鉛粒子自体が比較的弱いので、炭素の機械的結着性を改良しないと考えられる。黒鉛は、これらの場合おそらく、アノード材料の電気導電率を改良する目的のために使用された。さらに、ポリマー炭素、非晶質炭素、または予備黒鉛状炭素は、最初の数サイクルの間にリチウムを不可逆的に捕捉する非常に多くのリチウム捕獲部位を有する場合があり、過度の不可逆性をもたらす。
【0015】
要約すると、先行技術は、リチウムイオンバッテリー内でアノード活物質として使用するために望ましい性質の全てまたは大部分を有する複合材料を示していない。したがって、高いサイクル寿命、高い可逆的な容量、低い不可逆的な容量、(高率容量のための)小さな粒度、および一般的に使用される電解質との適合性を有することを可能にするリチウムイオンバッテリーのための新規なアノードが切実且つ継続的に必要とされている。また、このようなアノードを費用効果が高い仕方ですぐにまたは容易に製造する方法もまた必要とされている。
【0016】
バルク天然黒鉛は、各々の黒鉛粒子が複数の結晶粒(結晶粒は黒鉛単結晶または微結晶である)から構成され、結晶粒界(非晶質または欠陥領域)は、隣接する黒鉛単結晶の境界を定める3次元黒鉛材料である。各々の結晶粒は、互いに平行に配向される複数のグラフェン面から構成される。黒鉛微結晶内のグラフェン面は、二次元の、六方格子を占める炭素原子から構成される。所与の結晶粒または単結晶において、グラフェン面は、(グラフェン面または基礎面に垂直な)c方向の結晶方位のファンデルワールス力によって積み重ねられて接合される。1つの結晶粒の全てのグラフェン面は互いに平行であるが、典型的に1つの結晶粒のグラフェン面と隣接した結晶粒のグラフェン面は異なった配向で傾斜している。換言すれば、黒鉛粒子の様々な結晶粒の配向は典型的に、結晶粒ごとに異なる。
【0017】
面間ファンデルワールス力に打ち勝つことができるならば、天然または人工黒鉛粒子中の黒鉛微結晶の構成グラフェン面は剥離されて抽出または単離され、炭素原子の単独グラフェンシートを得ることができる。炭素原子の単離された、単独グラフェンシートは一般的に単一層グラフェンと称される。約0.3354nmのグラフェン面間間隔で厚さ方向にファンデルワールス力によって接合した複数のグラフェン面の積層体は一般的に複数層グラフェンと称される。複数層グラフェンプレートレットは、300層までのグラフェン面(厚さ<100nm)を有するが、より典型的には30までのグラフェン面(厚さ<10nm)、さらにより典型的に20までのグラフェン面(厚さ<7nm)、および最も典型的に10までのグラフェン面を有する(科学界において一般的に数層グラフェンと称される)。単一層グラフェンおよび複数層グラフェンシートは一括して「ナノグラフェンプレートレット」(NGP)と呼ばれる。グラフェンまたは酸化グラフェンシート/プレートレット(一括して、NGP)は、0次元フラーレン、1次元CNT、および3次元黒鉛からはっきり区別される新規な種類の炭素ナノ材料(2次元ナノ炭素)である。
【0018】
我々の研究グループは、早くも2002年にグラフェン材料および関連製造プロセスの開発を始めた:(1)B.Z.Jang and W.C.Huang,“Nano-scaled Graphene Plates”、米国特許第7,071,258号明細書(07/04/2006)、2002年10月21日に提出された出願;(2)B.Z.Jang,et al.“Process for Producing Nano-scaled Graphene Plates”、米国特許出願第10/858,814号明細書(06/03/2004);および(3)B.Z.Jang,A.Zhamu,and J.Guo,“Process for Producing Nano-scaled Platelets and Nanocomposites”、米国特許出願第11/509,424号明細書(08/25/2006)。
【0019】
図2(方法のフローチャート)において図示されるように、一方法において、グラフェン材料は、天然黒鉛粒子を強酸および/または酸化剤でインターカレートして黒鉛層間化合物(GIC)または黒鉛酸化物(GO)を得ることによって得られる。グラフェン面間の格子空間における化学種または官能基の存在は、グラフェン間間隔(d
002、X線回折によって測定される)を増加させるのに役立ち、それによって他の場合ならグラフェン面をc軸方向に沿って保持するファンデルワールス力をかなり低減する。GICまたはGOは非常にしばしば、天然黒鉛粉末(
図2の20)を硫酸、硝酸(酸化剤)、および別の酸化剤(例えば過マンガン酸カリウムまたは過塩素酸ナトリウム)の混合物中に浸漬することによって製造される。得られたGIC(22)は、酸化剤がインターカレーション法の間に存在している場合、実際には或るタイプの黒鉛酸化物(GO)粒子である。次に、このGICまたはGOを繰り返して水中で洗浄およびすすぎ洗いして過剰な酸を除去して、黒鉛酸化物懸濁液または分散体をもたらし、それは、水中に分散された離散したおよび目視で識別できる黒鉛酸化物粒子を含有する。グラフェン材料を製造するために、以下に簡単に説明される、このすすぎ洗い工程の後の2つの加工経路のうちの1つに従うことができる。
【0020】
経路1は、水を懸濁液から除去して、本質的に、乾燥されたGICまたは乾燥された黒鉛酸化物粒子の塊である、「膨張性黒鉛」を得る工程を必要とする。膨張性黒鉛を典型的に800~1,050℃の範囲の温度に約30秒~2分間の間暴露したとき、GICは30~300倍急速な体積膨張をして「黒鉛ワーム」(24)を形成するが、それらはそれぞれ、相互接続されたままである剥離した、しかしほとんど分離していない黒鉛フレークの集まりである。
【0021】
経路1Aにおいて、これらの黒鉛ワーム(剥離黒鉛または「相互接続された/分離されていない黒鉛フレークの網目構造」)を再圧縮して、0.1mm(100μm)~0.5mm(500μm)の範囲の厚さを典型的に有する可撓性黒鉛シートまたは箔(26)を得ることができる。代わりに、100nmよりも厚い主に黒鉛フレークまたはプレートレット(したがって、定義によってナノ材料ではない)を含有するいわゆる「膨張黒鉛フレーク」(49)を製造する目的のために低強度エアーミルまたは剪断機を使用して黒鉛ワームを単に破断することを選択してもよい。
【0022】
我々の米国特許出願第10/858,814号明細書において開示されるように、経路1Bにおいて、剥離黒鉛を高強度機械的剪断に供して(例えばウルトラソニケーター、高剪断ミキサー、高強度エアジェットミル、または高エネルギーボールミルを使用して)、分離された単一層および複数層グラフェンシート(一括してNGPと呼ばれる、33)を形成する。単一層グラフェンはわずか0.34nmであり得るが、他方、複数層グラフェンは100nmまで、しかしより典型的に10nm未満の厚さを有することができる(一般的に数層グラフェンと称される)。複数グラフェンシートまたはプレートレットは、製紙法を使用してNGP紙のシート(34)にされてもよい。
【0023】
経路2は、単独酸化グラフェンシートを黒鉛酸化物粒子から分離/単離する目的のために黒鉛酸化物懸濁液を超音波処理することを必要とする。これは、グラフェン面間分離が天然黒鉛の0.3354nmから高度に酸化された黒鉛酸化物の0.6~1.1nmに増加しており、隣接する面を一緒に保持するファンデルワールス力を著しく弱めるという考えに基づいている。超音波出力は、グラフェン面シートをさらに分離して、分離された、単離された、または離散酸化グラフェン(GO)シートを形成するために十分であり得る。次に、これらの酸化グラフェンシートを化学的にまたは熱還元して、0.001重量%~10重量%、より典型的に0.01重量%~5重量%、最も典型的におよび好ましくは2重量%未満の酸素含有量を典型的に有する「還元酸化グラフェン」(RGO)を得ることができる。
【0024】
本出願の請求の範囲を定義する目的のために、NGPまたはグラフェン材料には、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン(RGO)、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープトグラフェン(例えばBまたはNによってドープされた)の単一層および複数層(典型的に10層より少ない)の離散シート/プレートリットが含まれる。純粋なグラフェンは、本質的に0%の酸素を有する。RGOは典型的に、0.001重量%~5重量%の酸素含有量を有する。酸化グラフェン(RGOなど)は0.001重量%~50重量%の酸素を有することができる。純粋なグラフェン以外、全てのグラフェン材料は、0.001重量%~50重量%の非炭素元素(例えばO、H、N、B、F、Cl、Br、I等々)を有する。これらの材料はここでは、非純粋なグラフェン材料と称される。
【0025】
薄フィルムの形態(典型的に厚さ<2nm)でグラフェンを製造するための別の方法は、触媒化学蒸着法である。この触媒CVDは、炭化水素ガス(例えばC2H4)をNiまたはCu表面上で触媒分解して単一層または数層グラフェンを形成することを必要とする。NiまたはCuが触媒である場合、800~1,000℃の温度で炭化水素ガス分子の分解によって得られた炭素原子はCu箔表面上に直接に堆積されるかまたはNi-C固溶体状態からNi箔の表面に沈殿されて、単一層または数層グラフェン(5層未満)のシートを形成する。NiまたはCu触媒によるCVD法は、それを超えると下にあるNiまたはCu層がもはや触媒効果を全く与えることができない5超のグラフェン面(典型的に<2nm)の堆積に適していない。CVDグラフェンフィルムはきわめて費用がかかる。
【0026】
また、我々の研究グループは、バッテリー適用のためのグラフェン材料の適用を開拓した:先行の出願の1つは、リチウムイオンバッテリーアノードとして使用するためのグラフェンをベースとした複合組成物を開示する[A.Zhamu and B.Z.Jang,“Nano Graphene Platelet-Based Composite Anode Compositions for Lithium Ion Batteries”、米国特許出願第11/982,672号明細書(11/05/2007);現在は米国特許第7,745,047号明細書(06/29/2010)]。この組成物は、(a)アノード活物質のミクロンスケールまたはナノメートルスケールの粒子またはコーティング、および(b)複数のナノスケールのグラフェンプレートレット(NGP)を含み、そこでプレートレットは、グラフェンシートまたは100nm未満のプレートレット厚さを有するグラフェンシートの積層体を含み、粒子またはコーティングはNGPに物理的に付着または化学接合している。ナノグラフェンプレートレット(NGP)は、単一グラフェンシート(黒鉛結晶から単離される炭素原子の単一基礎面)または厚さ方向に一緒に接合した複数のグラフェン面の積層体である。NGPは、0.34nm~100nmの厚さおよび10μm超または未満であり得る長さ、幅、または直径を有する。厚さはより好ましくは10nm未満および最も好ましくは1nm未満である。
【0027】
我々の別の特許出願において、より具体的な組成物が開示されており、それは、NGPおよび/または他の導電性フィラメントの3D網目構造と、導電性結合剤によってこれらのNGPまたはフィラメントに接合されるアノード活物質粒子とから構成される[J.Shi,A.Zhamu and B.Z.Jang,“Conductive Nanocomposite-based Electrodes for Lithium Batteries”、米国特許出願第12/156,644号明細書(06/04/2008)]。さらに別の出願は、両方とも保護母材(例えば炭素母材)中に分散される、NGPと電極活物質粒子とを含有するナノグラフェン強化ナノ複合体固体粒子組成物を提供する[A.Zhamu,B.Z.Jang,and J.Shi,“Nano Graphene Reinforced Nanocomposite for Lithium Battery Electrodes”、米国特許出願第12/315,555号明細書(12/04/2008)]。
【0028】
アノード活物質のための優れた支持体を提供するグラフェンを我々が発見した後、他の当業者による多くの後続の研究がこの方法の有効性を裏づけた。例えば、Wangらは、Liイオン挿入の促進のための自己組織化TiO2-グラフェンハイブリッドナノ構造を検討した[D.Wang,et al.“Self-Assembled TiO2-Graphene Hybrid Nanostructures for Enhanced Li-Ion Insertion.”ACS Nano,3(2009)907-914]。結果は、高純度TiO2相と比較してハイブリッドの比容量は高い充電率で2倍超にされたことを示す。高い充電-放電率での改良された容量は、金属酸化物電極に埋め込まれたパーコレートされたグラフェン網目構造によって与えられる増加した電極導電率に帰せられた。しかしながら、これらの全ての先行研究は、アノード活物質粒子のための電子伝導路の網目構造を提供することにだけ焦点が合わせられており、アノード材料加工の容易性、電極加工性、電極タップ密度(与えられた体積に高密度質量を充填する能力)、固体-電解質界面(SEI)の安定性、および長期繰り返し安定性など、他の重要な問題を扱うことができなかった。例えば、自己組織化ハイブリッドナノ構造を調製する方法は、大量生産しやすくない。これらは全て、実際のバッテリー製造環境において対処されなければならない非常に重要な問題である。
【0029】
本発明は、固体グラフェンシートまたはプレートレット(NGP)を使用して3D導電性網目構造を形成してアノード活物質を支持するこれらの先行技術の成果をはるかに上回る。具体的には、本出願は、電子伝導路経路の3D網目構造を形成することに加えて、いくつかの他の予想外の機能を提供することによって、グラフェンフォーム材料を利用してアノード活物質(すなわち、Siナノワイヤー)を保護する。したがって、グラフェンフォームの製造についての簡潔な考察が読者に役立つのがよい。
【0030】
一般的に言えば、フォーム(または発泡材料)は、細孔(またはセル)および細孔壁(発泡材料の固体部分)から構成される。細孔は相互接続されて連続気泡フォームを形成することができる。グラフェンフォームはグラフェン材料を含有する細孔および細孔壁から構成される。グラフェンフォームを製造する3つの主な方法がある。
【0031】
第1の方法は、酸化グラフェン(GO)水性懸濁液を高圧オートクレーブ内で封止する工程と、GO懸濁液を高圧(数十または数百気圧)下で典型的に180~300℃の範囲の温度において長時間にわたって(典型的に12~36時間)加熱する工程とを典型的に必要とする酸化グラフェンヒドロゲルの熱水還元である。この方法のための有用な参考文献をここに示す:Y.Xu,et al.、“Self-Assembled Graphene Hydrogel via a One-Step Hydrothermal Process” ACS Nano 2010,4,4324~4330。この問題に伴なういくつかの主要な問題がある:(a)高圧要件によって、それは工業規模の製造のために実用的でない方法になる。1つには、この方法は、連続的に実施することができない。(b)不可能ではないにしても、得られた多孔性構造体の細孔径および多孔度のレベルの制御を行なうことは困難である。(c)得られた還元酸化グラフェン(RGO)材料の形状および大きさを変化させるという観点から柔軟性はない(例えばそれをフィルム形状に製造することはできない)。(d)この方法は、水中に懸濁された超低濃度のGOの使用を必要とする(例えば2mg/mL=2g/L=2kg/kL)。非炭素元素の除去によって(50%まで)、2kg未満のグラフェン材料(RGO)/1000リットルの懸濁液を製造することができるだけである。さらに、高温および高圧の条件に耐えなければならない1000リットル反応器を運転することは実質的に不可能である。明らかに、これは、多孔性グラフェン構造体の大量生産のためのスケーラブルな方法ではない。
【0032】
第2の方法はテンプレート支援触媒CVD法に基づいており、それは、犠牲テンプレート(例えばNiフォーム)上のグラフェンのCVD堆積を必要とする。グラフェン材料は、Niフォーム構造体の形状および寸法に合致する。それ故、エッチング剤を使用してNiフォームをエッチングにより除去し、本質的に連続気泡フォームであるグラフェン骨格のモノリスを後に残す。この方法のための有用な参考文献をここに示す:Zongping Chen,et al.、“Three-dimensional flexible and conductive interconnected graphene networks grown by chemical vapour deposition,” Nature Materials,10(June 2011)424-428。このような方法に伴なういくつかの問題がある:(a)触媒CVDは本質的に、非常に緩慢な、高度にエネルギー集約的な、且つ費用がかかる方法である。(b)エッチング剤は典型的に非常に望ましくない化学物質であり、得られたNi含有エッチング溶液は汚染源である。溶解されたNi金属をエッチング剤溶液から回収または再循環させることは非常に難しく且つ費用がかかる。(c)Niフォームがエッチングにより除去されているときにセル壁に損傷を与えずにグラフェンフォームの形状および寸法を維持することは難題である。得られたグラフェンフォームは典型的に非常に脆く壊れやすい。(d)犠牲金属フォーム内の特定の箇所はCVD前駆体ガスに接触可能でない場合があるので、金属フォームの内部へのCVD前駆体ガス(例えば炭化水素)の輸送は難しいことがあり、不均一な構造体をもたらすことがある。()この方法は、アノード活物質粒子をその中に埋め込むのに適していない。
【0033】
また、グラフェンフォームを製造する第3の方法は、自己集合法を使用して酸化グラフェンシートでコートされる犠牲材料(例えばコロイドポリスチレン粒子、PS)を利用する。例えば、Choiらは、化学的に改質したグラフェン(CMG)紙を2つの工程において作製した:CMGとPS(2.0μmのPS球)との混合水性コロイド懸濁液の真空濾過によって自立PS/CMGフィルムを製造し、その後に、PSビードを除去して3Dマクロ細孔を生成する。[B.G.Choi,et al.,“3D Macroporous Graphene Frameworks for Supercapacitors with High Energy and Power Densities,”ACS Nano,6(2012)4020-4028.]Choiらは、濾過によって整列自立PS/CMG紙を製造し、それは負に帯電したCMGコロイド懸濁液および正に帯電したPS懸濁液を別々に調製することから開始した。CMGコロイド懸濁液とPS懸濁液との混合物を制御されたpH(=2)下で溶液中に分散させ、そこで2つの化合物は同じ表面電荷を有した(CMGについては+13±2.4mVおよびPSについては+68±5.6mVのゼータ電位値)。pHが6に上昇するとき、それらの間の静電相互作用および疎水性特性のためにCMG(ゼータ電位=-29±3.7mV)およびPS球(ゼータ電位=+51±2.5mV)が集められ、これらはその後、濾過プロセスによってPS/CMG複合紙に統合された。また、この方法はいくつかの欠点を有する:(a)この方法は、酸化グラフェンおよびPS粒子の両方の非常に時間のかかる化学処理を必要とする。(b)トルエンによるPSの除去はまた、弱化したマクロ多孔性構造体をもたらす。(c)トルエンは高度に調節された化学物質であり、非常に注意して処理されなければならない。(d)細孔径は典型的に過度に大きく(例えば数μm)、多くの有用な用途のために大きすぎる。
【0034】
上記の考察は明らかに、グラフェンフォームを製造するためのあらゆる先行技術の方法またはプロセスは大きな欠陥を有することを示す。さらに、先行研究のいずれも、グラフェンフォームをリチウムバッテリーのアノード活物質のための保護材料として利用していない。
【0035】
したがって、高導電性、機械的に強靭なグラフェンフォームを多量に製造するための費用効果が高いプロセスを提供することが本発明の目的である。また、このグラフェンフォームは、このフォームの細孔内に存在しており且つこのフォームによって保護されているアノード活物質(Siナノワイヤー)を含有する。これらのSiナノワイヤーの一部は、フォーム壁を構成するグラフェン面に化学接合している。この方法は、環境に優しくない化学物質の使用を必要としない。この方法は、柔軟な設計および多孔度レベルおよび細孔径の制御を可能にし、リチウムイオンバッテリーの高容量アノードに一般的に伴うSi膨張によって引き起こされるアノード層の体積膨脹問題を軽減する。
【0036】
グラフェンフォームで保護されたSiナノワイヤーを製造するための方法を提供することが本発明の別の目的であり、そこでグラフェンフォームは、黒鉛/炭素フォームの熱伝導率、電気導電率、弾性率、および/または圧縮強さと同等またはそれ以上を示す。保護グラフェンフォームの内部細孔は、埋め込まれたSiナノワイヤーの膨張および収縮と一致して膨張および収縮し、このような高容量アノードを特徴とするリチウムバッテリーの長期繰り返し安定性を可能にする。
【0037】
本発明の別の目的は、リチウムイオンバッテリーによって一般的に使用されるいずれのアノード層によっても匹敵するものがない非常に優れた熱伝導率、電気導電率、機械的強度、および弾性の組合せを示すアノード電極層を提供することである。結合剤(例えばSBRまたはPVDF)も導電性添加剤(例えばアセチレンブラック)もアノード電極内に必要とされるか含有されることはない。高い導電率は、アノード集電体としてグラフェンフォームホスト自体の使用を可能にし、別個の(付加的な)集電体(例えばCu箔)を有する必要をなくし、したがってバッテリーの重量および体積を低減する。さらに、従来のリチウムイオンバッテリーのアノードについての典型的に70~200μmの厚さとは対照的に、フォーム層の達成可能な厚さに制限はない(例えば、500μm超または数mm)。これらの特徴は、著しくより高い質量および体積エネルギー密度を有するリチウムイオンバッテリーの製造を可能にする。
【発明の概要】
【0038】
電子伝導路の強靭な3D網目構造および高い導電率を提供するだけでなく、アノード活物質(グラフェンフォーム構造物の細孔内に埋め込まれたSiナノワイヤー)を高い電極タップ密度、十分な量の出力電流を確実にする十分に大きな(典型的に50~800μmの)電極厚さ、(電極および組み合わせられた任意選択の別個の集電体内の導電性添加剤および結合剤などの非活物質の総量に対して)アノード活物質の大きな重量パーセント、および長期繰り返し安定性を有する電極層に容易に作り替えることも可能にする(好ましくは層の形態の)著しく改良されたアノード電極を製造するための方法が本明細書において報告される。また、可逆容量および第1サイクルの効率(例えば、典型的に60~80%に対して85%~91%)の両方が、最新技術のSi系アノード材料の可逆容量および第1サイクルの効率よりも著しく改良されている。
【0039】
簡単に言えば、本発明は、アノード活物質(すなわちSiナノワイヤー)がグラフェンフォーム構造物の細孔内でin situ成長させられて自然に容れられる新規なアノード電極組成物を提供する。Siナノワイヤーの一部は、フォーム構造物のグラフェン細孔壁に化学接合している。このような構成は、アノード活物質の膨張に対応する十分な空間を有するだけのものではない。また、細孔内にアノード層が作られてSiナノワイヤーがin situ形成されるときにセル壁(フォームの固体グラフェン部分)が圧縮されてアノード活物質を強く囲むことができるという点で本発明のグラフェンフォームは独特の「弾性」特性を示す。個々のSiナノワイヤーが膨張するとき(Liインターカレーション時)、アノード電極層全体の体積変化を引き起こさずに(したがって、バッテリーに内圧を加えずに)体積膨脹が局部セル壁によって吸収される。後続の放電サイクルの間、これらのSiナノワイヤーが収縮し、局部セル壁が収縮するかまたはコングルエント的に元に戻り、セル壁とSiナノワイヤーとの間の十分な接触を維持する(次の充電/放電サイクルの間にLi+イオンおよび電子を受けとることができるままである)。
【0040】
本発明の特定の実施形態において、リチウムイオンバッテリーのためのアノードまたは陰極を製造するための方法が提供され、そこでアノード電極(例えば層)は、複数の細孔および細孔壁と細孔内に存在しているSiナノワイヤーとから構成される固体グラフェンフォームの層を含む。これらのSiナノワイヤーは細孔内にin situ直接に形成され、Siナノワイヤーの一部は、それらの端部の一方で細孔壁に化学接合している。いくつかの好ましい実施形態において、方法は、
(a)触媒金属被覆Si粒子、グラフェンシート(好ましくは同じく触媒金属が被覆される)、および任意選択の発泡剤を液体媒体中に分散させてグラフェン/Si分散体を形成する工程において、Si粒子が0.2μm~20μm(好ましくは0.5μm~5μm)の粒径を有し、触媒金属が、Si粒子の表面上に堆積される0.5nm~100nmの直径を有するナノ粒子または1nm~100nmの厚さを有する薄いコーティングの形態であり、Si粒子が、Si元素を少なくとも99.9重量%有する高純度SiまたはSiを70重量%~99.9重量%その中に有するSi合金または混合物を含有する工程と、
(b)グラフェン/Si分散体を支持基材(例えばガラス、PETフィルム、またはステンレス鋼シート)の表面上に分配および堆積してグラフェン/Si混合物の湿潤層を形成し、液体媒体をグラフェン/Si混合物の湿潤層から部分的にまたは完全に除去して、グラフェン/Si混合物材料の乾燥された層を形成する工程と、
(c)グラフェンシートから揮発性ガス分子を誘導するかまたは発泡剤を活性化させてグラフェンフォームを製造すると共に、同時に、グラフェンフォームの細孔内の供給材料としてSi粒子から生じる複数のSiナノワイヤーの触媒金属触媒成長を可能にするために十分な時間の間、グラフェン/Si混合物の乾燥された層を好ましくは300℃~2,000℃(より好ましくは400℃~1,500℃、最も好ましくは500℃~1,200℃)の温度を含む高温環境に暴露して、アノード電極層を形成する工程において、Siナノワイヤーが100nm未満の直径および少なくとも5の長さ対直径アスペクト比を有し、Siナノワイヤーが、組み合わせられたグラフェンフォームおよびSiナノワイヤーの全重量に基づいて0.5重量%~99重量%の量である工程と
を含む。これらのSiナノワイヤーは、出発Si粒子から突き出てこれらのSi粒子の表面から生じるようにみえる。
【0041】
特定の実施形態において、グラフェンシートは、非炭素元素0.01重量%未満を有する純粋なグラフェン材料または非炭素元素0.01重量%~50重量%を有する非純粋なグラフェン材料を含有し、そこで非純粋なグラフェンは、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、グラフェンシートの表面もまた、触媒金属で堆積される。Si粒子表面だけが触媒金属で被覆される状態と比較したとき、Si粒子だけでなくグラフェンシート表面もまた触媒金属で堆積される場合、より多い数のより小さい直径のSiナノワイヤーが形成されることを我々は驚くべきことに観察した。これらのSiナノワイヤーは、出発Si粒子から突き出てグラフェンシートの表面からも生じるようにみえる。グラフェンシート表面(グラフェンフォーム内の細孔壁表面)から生じたSiナノワイヤーは非常に薄くみえる(典型的に直径<30nm、より典型的に<20nm、さらにいくらかは<10nm)。これらのSiナノワイヤーはまた、細孔壁(グラフェン面)に化学接合しており、低減した界面抵抗を有する。より薄いSiナノワイヤーは、Siナノワイヤー内へのおよびSiナノワイヤーからのリチウムイオンのより迅速な輸送を可能にし、リチウムイオンバッテリーのより高レートの能力(より高い出力密度)をもたらすことを我々はさらに発見した。
【0043】
方法において、好ましくは分配および堆積手順は、グラフェン/ケイ素分散体を配向誘起応力に供する工程を含む。これは、より高い構造統合性、より高い弾性、およびより高い導電率のグラフェンフォームを達成するのに不可欠である。
【0044】
好ましい実施形態として、複数の細孔の一部がSiナノワイヤーを容れられ、その他の細孔がSiを含有せず、グラフェンフォームは、アノード層の膨張を避けるためにバッテリー充電-放電サイクルの間にSiナノワイヤーの体積膨脹および収縮を吸収するために十分に弾性である。これは、リチウムイオンバッテリーのサイクル寿命を伸ばすのに役立つ。
【0045】
グラフェンシートは、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せの単一層シートまたは数層プレートレットから選択されてもよく、数層は、グラフェン面の10層未満として定義される。
【0046】
触媒金属被覆Si粒子は、物理蒸着、化学蒸着、スパッタリング、プラズマ堆積、レーザーアブレーション、プラズマ噴霧、超音波噴霧、印刷、電気化学堆積、電極めっき、無電極めっき、化学めっき、またはそれらの組合せの手順によって触媒金属をSi粒子表面上に堆積する工程によって製造されてもよい。触媒金属は、Cu、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Al、Ag、Au、Pt、Pd、またはそれらの組合せから選択されてもよい。Siナノワイヤー成長の必要とされる高温範囲は、使用される触媒金属に依存することを注記しておく。例えば、Cu、Ni、および/またはFeについては、範囲は好ましくは700℃~1,000℃である。貴金属を含有する触媒については、反応温度は好ましくはおよび典型的にはより高い。
【0047】
(a)触媒金属前駆体を液体中に溶解または分散させて前駆体溶液を形成する工程と、(b)前駆体溶液をグラフェンシートの表面およびSi粒子の表面と接触させる工程と、(c)液体を除去する工程と、(d)触媒金属前駆体を化学的にまたは熱的に変換して触媒金属被覆またはナノ粒子になる工程とを含む手順によって触媒金属がSiおよびグラフェンシート表面上に堆積されてもよい。
【0048】
本発明の方法において、触媒金属前駆体を化学的にまたは熱的に変換する工程(d)は、グラフェン/Si混合物の乾燥された層を高温環境に暴露する手順(c)と同時に行われてもよい。プロセス触媒金属前駆体は、Cu、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Al、またはそれらの組合せから選択される遷移金属の塩または有機金属分子であってもよい。好ましくは、触媒金属前駆体は、硝酸銅、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸チタン、硝酸アルミニウム、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酢酸鉄、酢酸チタン、酢酸アルミニウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、リン酸銅、リン酸ニッケル、リン酸コバルト、リン酸マンガン、リン酸鉄、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、水酸化銅、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化チタン、水酸化アルミニウム、カルボン酸銅、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸マンガン、カルボン酸鉄、カルボン酸チタン、カルボン酸アルミニウム、またはそれらの組合せから選択される。
【0049】
また、本発明は、リチウムバッテリーのためのアノードまたは陰極層を製造するための方法を提供し、そこでアノード層は、複数の細孔および細孔壁と細孔内に存在しているケイ素(Si)ナノワイヤーとから構成される固体グラフェンフォームの層を含む。Siナノワイヤーの一部は、それらの端部の一方がグラフェンをベースとした細孔壁に化学接合している。方法は、(A)Si粒子、グラフェンシート、触媒金属前駆体、および任意選択の発泡剤を液体中に分散させてグラフェン/Si分散体を形成する工程において、Si粒子が、0.2μm~20μmの直径を有し、Si元素を少なくとも99.9重量%有する高純度SiまたはSiを70重量%~99.9重量%その中に有するSi合金または混合物を含有する工程と、(B)グラフェン/Si分散体を支持基材の表面上に分配および堆積してグラフェン/Si混合物の湿潤層を形成し、液体媒体をグラフェン/Si混合物の湿潤層から部分的にまたは完全に除去して、グラフェン/Si混合物材料の乾燥された層を形成する工程と、(C)触媒金属前駆体を、Si粒子の表面および/またはグラフェンシートの表面上に堆積される触媒金属のコーティングまたはナノ粒子に熱的に変換するために十分な時間の間、グラフェン/Si混合物の前記乾燥された層を100℃~2,500℃の高温環境に暴露して、グラフェンシートから揮発性ガス分子を誘導するかまたは発泡剤を活性化させてグラフェンフォームを製造すると共に、同時にまたは順次に、グラフェンフォームの細孔内の供給材料としてSi粒子から生じる複数のSiナノワイヤーの触媒金属触媒成長を可能にしてアノード電極層を形成する工程において、Siナノワイヤーが100nm未満の直径および少なくとも5の長さ対直径アスペクト比を有し、Siナノワイヤーが、組み合わせられたグラフェンフォームおよびSiナノワイヤーの全重量に基づいて0.5重量%~99重量%の量である工程とを含む。
【0050】
特定の実施形態において、触媒金属前駆体は、Cu、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Al、またはそれらの組合せから選択される遷移金属の塩または有機金属分子である。触媒金属前駆体は、硝酸銅、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸チタン、硝酸アルミニウム、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酢酸鉄、酢酸チタン、酢酸アルミニウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、リン酸銅、リン酸ニッケル、リン酸コバルト、リン酸マンガン、リン酸鉄、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、水酸化銅、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化チタン、水酸化アルミニウム、カルボン酸銅、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸マンガン、カルボン酸鉄、カルボン酸チタン、カルボン酸アルミニウム、またはそれらの組合せから選択されてもよい。
【0051】
好ましくは、グラフェン/Si混合物の乾燥された層を高温環境に暴露する手順は、不活性ガス、窒素ガス、水素ガス、それらの混合物の保護雰囲気中で、または真空中で行われる。
【0052】
本発明のアノード電極層は、複数の細孔および細孔壁から構成される固体グラフェンフォームの細孔内に埋め込まれるアノード活物質(Siナノワイヤー)を含み、そこで(a)細孔壁は、本質的に0%の非炭素元素を有する純粋なグラフェン材料または0.001重量%~5重量%の非炭素元素を有する非純粋なグラフェン材料を含有し、そこで非純粋なグラフェンは、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択され、(b)Siナノワイヤーは、組み合わせられたグラフェンフォームおよびアノード活物質の全重量に基づいて0.5重量%~99重量%の量であり、および(c)一部の細孔はアノード活物質の粒子を容れられ、その他の細孔は粒子を含有せず、グラフェンフォームは、アノード層の膨張を避けるためにバッテリーの充電-放電サイクルの間にアノード活物質の粒子の体積膨脹および収縮を吸収するために十分に弾性である。好ましくは、細孔壁は、弾性をグラフェンフォームに与える相互接続グラフェン面の3D網目構造を含有する。
【0053】
固体グラフェンフォームは、細孔内にSiナノワイヤーなしに単独で測定されるとき、典型的に、0.01~1.7g/cm3の密度、50~2,000m2/gの比表面積、単位比重当たり少なくとも100W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり1,000S/cm以上の電気導電率を有する。
【0054】
典型的に、本発明のアノード層において、細孔壁は、X線回折によって測定されるとき0.3354nm~0.36nmの面間間隔d002を有する積層グラフェン面を含有する。細孔壁は純粋なグラフェンを含有することができ、固体グラフェンフォームは0.5~1.7g/cm3の密度を有する。あるいは、非純粋なグラフェン材料が0.01重量%~2.0重量%の非炭素元素の含有量を含有する。一実施形態において、細孔壁は、フッ化グラフェンを含有し、固体グラフェンフォームは、0.01重量%~2.0重量%のフッ素含有量を含有する。別の実施形態において、細孔壁は酸化グラフェンを含有し、固体グラフェンフォームは、0.01重量%~2.0重量%の酸素含有量を含有する。典型的に、非炭素元素は、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、水素、またはホウ素から選択される元素を含む。典型的に、固体グラフェンフォームは200~2,000m2/gの比表面積または0.1~1.5g/cm3の密度を有する。
【0055】
好ましくは、固体グラフェンフォームは2つの細孔径範囲を含み、一方がSiナノワイヤーの体積膨脹を緩衝するために2nm~50nmであり、および他方が、Siナノワイヤーを収容するために200nm~20μmである。
【0056】
好ましい実施形態において、アノード層は、典型的に50μm~800μmの厚さおよび少なくとも2メートルの長さを有する連続長ロールシート形態である層から製造され、ロールツーロール法によって製造される。
【0057】
望ましい実施形態において、アノード層におけるグラフェンフォームは、1重量%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.35nm未満のグラフェン間の間隔を有し、単位比重当たり少なくとも250W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり2,500S/cm以上の電気導電率を有する。
【0058】
好ましい実施形態において、グラフェンフォームは、0.01重量%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.34nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、単位比重当たり少なくとも300W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,000S/cm以上の電気導電率を有する。さらに好ましくは、グラフェンフォームは、0.01重量%以下の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面、0.7以下のモザイクスプレッド値、単位比重当たり少なくとも350W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,500S/cm以上の電気導電率を有する。最も好ましくは、グラフェンフォームは、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面を含有する細孔壁、0.4以下のモザイクスプレッド値、単位比重当たり400W/mK超の熱伝導率、および/または単位比重当たり4,000S/cm超の電気導電率を有する。
【0059】
細孔壁は、0.337nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面および1.0未満のモザイクスプレッド値を含み得る。一実施形態において、固体グラフェンフォームは、80%以上の黒鉛化度および/または0.4未満のモザイクスプレッド値を示す。好ましい実施形態において、細孔壁が、相互接続グラフェン面の3次元網目構造を含有する。より好ましくは、固体グラフェンフォームは90%以上の黒鉛化度および/または0.4以下のモザイクスプレッド値を示す。典型的に、本発明のアノード層において、細孔壁は相互接続グラフェン面の3D網目構造を含有する。グラフェンフォームは20nm~500nmの細孔径を有する細孔を含有する。
【0060】
また、本発明は、上で定義したアノードまたは陰極と、カソードまたは陽極と、アノードおよびカソードとイオン接触している電解質とを含有するリチウムバッテリーを提供する。このリチウムバッテリーは、カソードと電子接触しているカソード集電体をさらに含有することができる。
【0061】
実施形態において、リチウムバッテリーは、アノードと電子接触しているアノード集電体をさらに含有する。代わりにおよびより好ましくは、リチウムバッテリーにおいて、グラフェンフォームはアノード集電体として機能してリチウムバッテリーの充電中に電子をアノード活物質から集め、それは別個のまたは付加的な集電体を含有しない。リチウムバッテリーは、リチウムイオンバッテリー、リチウム金属バッテリー、リチウム-硫黄バッテリー、またはリチウム-空気バッテリーであり得る。
【0062】
好ましい実施形態において、固体グラフェンフォーム保護アノード活物質は、200μm以下の厚さおよび長さ少なくとも1メートル、好ましくは少なくとも2メートル、さらに好ましくは少なくとも10メートル、最も好ましくは少なくとも100メートルの長さを有する連続長ロールシートの形態(連続したフォームシートのロール)に製造される。このシートロールは、ロールツーロール法によって製造される。シートロールの形態に製造される先行技術のグラフェンフォームはなかった。純粋または非純粋のどちらも、グラフェンフォームの連続長を製造するためにロールツーロール法を利用することはこれまで可能であると考えられず提案されもしなかった。
【0063】
アノード層内の固体グラフェンフォームは、Siなしに測定されるとき、典型的に0.01~1.7g/cm3(より典型的に0.1~1.5g/cm3、さらにより典型的に0.1~1.0g/cm3、最も典型的に0.2~0.75g/cm3)の密度、または50~3,000m2/g(より典型的に200~2,000m2/g、最も典型的に500~1,500m2/g)の比表面積を有する。
【0064】
グラフェン材料が5重量%以上の非炭素元素(例えばO、H、N、B、F、Cl、Br、I等々)の含有量(好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、さらにより好ましくは30%または40%以上、最も好ましくは50%まで)を有する場合、この任意選択の発泡剤は必要とされない。後続の高温処理は、これらの非炭素元素の大部分をグラフェン材料から除去し、細孔またはセルを固体グラフェン材料構造体内に製造する揮発性ガス種を生成するのに役立つ。言い換えれば、非常に驚くべきことに、これらの非炭素元素は発泡剤の役割を果たす。したがって、外部から添加される発泡剤は任意選択である(必要とされない)。しかしながら、発泡剤の使用は、所望の用途のために多孔度のレベルおよび細孔径を調節または調整する際の付加的な柔軟性を提供することができる。非炭素元素含有量が5%未満、例えば本質的に全て炭素である純粋なグラフェンなどである場合、発泡剤が典型的に必要とされる。
【0065】
発泡剤は、物理的発泡剤、化学発泡剤、それらの混合物、溶解および浸出剤、または機械的に導入された発泡剤であり得る。
【0066】
方法はさらに、アノード層を得るために十分な時間の間、アノード層を第1の熱処理温度よりも高い第2の熱処理温度において熱処理する工程を含んでもよく、そこで細孔壁は、0.3354nm~0.40nmの面間間隔d002を有する積層グラフェン面および5重量%未満(典型的に0.001%~2%)の非炭素元素の含有量を含有する。得られた非炭素元素含有量が0.1%~2.0%であるとき、面間間隔d002は典型的に0.337nm~0.40nmである。
【0067】
分散体中の元のグラフェン材料が、5重量%よりも高い非炭素元素の分率を含有する場合、(熱処理後の)固体グラフェンフォーム中のグラフェン材料は、熱処理の工程(d)の間に生じる構造欠陥を含有する。液体媒体は単に水および/またはアルコールであり得るが、それは環境に優しい。
【0068】
好ましい実施形態において、方法は、工程(b)および(c)が、支持基材をフィーダーローラーから堆積領域に供給する工程と、グラフェン分散体を支持基材の表面上に連続的にまたは不連続に堆積させて湿潤層をその上に形成する工程と、湿潤層を乾燥させて材料混合物の乾燥された層を形成する工程と、支持基材上に堆積された材料混合物の乾燥された層をコレクターローラー上に集める工程とを含む、ロールツーロール法である。このようなロールツーロールまたはリールツーリール法は、自動化され得る真に工業規模の、大規模製造法である。
【0069】
一実施形態において、第1の熱処理温度は100℃~1,500℃である。別の実施形態において、第2の熱処理温度には、少なくとも、(A)300~1,500℃、(B)1,500~2,100℃、および/または(C)2,100~3,200℃(好ましくは、2,500℃以下)から選択される温度が含まれる。特定の実施形態において、第2の熱処理温度には、少なくとも1時間の間300~1,500℃の範囲の温度そして次に少なくとも1時間の間1,500~1,500℃の範囲の温度が含まれる。
【0070】
第1および/または第2の熱処理を乾燥されたグラフェン-Si混合物層に行なうことのいくつかの驚くべき結果があり、異なった熱処理温度範囲によって異なった目的を達成することができ、例えば(a)グラフェン材料から非炭素元素を除去して(例えばフッ素化グラフェンを熱還元してグラフェンまたは還元フッ化グラフェン、RGF)を得る)揮発性ガスを生成し、細孔またはセルをグラフェン材料内に生じさせる、(b)化学的または物理的発泡剤を活性化して細孔またはセルを製造する、(c)グラフェンシートを化学的同化または連結して、フォーム壁(フォームの固体部分)内のグラフェンシートの横方向寸法を著しく増加させる、(d)黒鉛粒子中のグラフェン面のフッ素化、酸化、または窒化の間に生じた欠陥部の回復、および(e)黒鉛ドメインまたは黒鉛結晶の再組織化および完成など。これらの異なった目的または機能は、異なった温度範囲内で異なった程度に達成される。非炭素元素は典型的に、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、水素、またはホウ素から選択される元素を含む。非常に驚くべきことに、低温発泡条件下でも、熱処理は、しばしばエッジからエッジまでの方法で(一部は面から面までの方法で)グラフェンシート間の化学連結、同化、または化学結合を引き起こす。
【0071】
一実施形態において、固体グラフェンフォーム、マイナスSi、は200~2,000m2/gの比表面積を有する。一実施形態において、固体グラフェンフォームは、0.1~1.5g/cm3の密度を有する。実施形態において、第1の熱処理温度においてグラフェン-Si混合物の乾燥された層を熱処理する工程(d)は、圧縮応力下で行われる。別の実施形態において、方法は、グラフェンフォームのシートの厚さ、細孔径、または多孔度のレベルを低減する圧縮工程を含む。バッテリーセルにおいて、アノード層は典型的に、10μm~800μm、より典型的に50μm~500μmの厚さを有する。
【0072】
実施形態において、グラフェン分散体は、液体媒体中に分散された酸化グラフェン少なくとも3重量%を有し、液晶相を形成する。別の実施形態において、グラフェン分散体は、グラフェン分散体を得るために十分な時間にわたって反応温度において反応器内の酸化性液体中に粉末または繊維形態の黒鉛材料を浸漬することによって調製された酸化グラフェン分散体を含有し、そこで黒鉛材料は、天然黒鉛、人工黒鉛、メソフェーズ炭素、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビード、軟質炭素、硬質炭素、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せから選択され、酸化グラフェンは5重量%以上の酸素含有量を有する。
【0073】
実施形態において、第1の熱処理温度は80℃~300℃の範囲の温度を含み、結果として、グラフェンフォームは、5%未満の酸素含有量または非炭素元素含有量を有し、細孔壁は、0.40nm未満のグラフェン間の間隔、単位比重当たり少なくとも150W/mK(より典型的には少なくとも200W/mk)の熱伝導率、および/または単位比重当たり2,000S/cm以上の電気導電率を有する。
【0074】
好ましい実施形態において、第1のおよび/または第2の熱処理温度は300℃~1,500℃の範囲の温度を含み、結果として、グラフェンフォームは、1%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.35nm未満のグラフェン間の間隔、単位比重当たり少なくとも250W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり2,500S/cm以上の電気導電率を有する。
【0075】
第1のおよび/または第2の熱処理温度が1,500℃~2,100℃の範囲の温度を含むとき、グラフェンフォームは、0.01%未満の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.34nm未満のグラフェン間の間隔、単位比重当たり少なくとも300W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,000S/cm以上の電気導電率を有する。
【0076】
第1のおよび/または第2の熱処理温度が2,100℃を超える温度を含むとき、グラフェンフォームは、0.001%以下の酸素含有量または非炭素含有量を有し、細孔壁は、0.336nm未満のグラフェン間の間隔、0.7以下のモザイクスプレッド値、単位比重当たり少なくとも350W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり3,500S/cm以上の電気導電率を有する。
【0077】
第1のおよび/または第2の熱処理温度が2,500℃以上の温度を含む場合、グラフェンフォームは、0.336nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面を含有する細孔壁、0.4以下のモザイクスプレッド値、および単位比重当たり400W/mK超の熱伝導率、および/または単位比重当たり4,000S/cm超の電気導電率を有する。
【0078】
一実施形態において、細孔壁は、0.337nm未満のグラフェン間の間隔を有する積層グラフェン面および1.0未満のモザイクスプレッド値を有する。別の実施形態において、グラフェンフォームの固体壁部分は、80%以上の黒鉛化度および/または0.4未満のモザイクスプレッド値を示す。さらに別の実施形態において、グラフェンフォームの固体壁部分は、90%以上の黒鉛化度および/または0.4以下のモザイクスプレッド値を示す。
【0079】
典型的に、細孔壁は、電子伝導経路である相互接続グラフェン面の3次元網目構造を含有する。セル壁は、20nm以上、より典型的にはおよび好ましくは40nm以上、さらにより典型的にはおよび好ましくは100nm以上、さらにより典型的にはおよび好ましくは500nm以上、しばしば1μm超、そして時には10μm超の横方向寸法(La、長さまたは幅)を有する黒鉛ドメインまたは黒鉛結晶を含有する。黒鉛ドメインは典型的に、1nm~200nm、より典型的には1nm~100nm、さらにより典型的には1nm~40nm、最も典型的には1nm~30nmの厚さを有する。
【0080】
また、本発明は、前述のアノード層、カソードまたは陽極と、アノードおよびカソードとイオン接触している電解質とを含有するリチウムバッテリーを提供する。特定の実施形態において、リチウムバッテリーは、カソードと電子接触しているカソード集電体をさらに含有する。いくつかの実施形態において、リチウムバッテリーは、アノード層と電子接触しているアノード集電体をさらに含有する。いくつかの好ましい実施形態において、リチウムバッテリー内のグラフェンフォームは、別個のまたは付加的な集電体を含有しない、リチウムバッテリーの充電中に電子をアノード活物質から集めるアノード集電体として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1A】
図1(A)は、先行技術のアノードにおいて、リチウムインターカレーション時にSi粒子の膨張は、Si粒子の微粉化、導電性添加剤によって形成される導電路の遮断、および集電体との接触の喪失をもたらし得るという概念を説明する略図である。
【
図1B】
図1(B)は、本発明の実施形態によるグラフェンフォームで保護されたアノード活物質(Siナノワイヤー端部がグラフェンをベースとした細孔壁に接合している)の略図である。
【
図2】
図2は、純粋なグラフェンフォーム40aまたは酸化グラフェンフォーム40bを製造するための方法と共に、剥離黒鉛製品(可撓性黒鉛箔および膨張黒鉛フレーク)を製造する様々な先行技術の方法を説明するフローチャートである。
【
図3A】
図3(A)は、アノード層がアノード活物質自体の薄いコーティング(例えばSiコーティング)である、先行技術のリチウムイオンバッテリーセルの略図である。および
【
図3B】
図3(B)は、別のリチウムイオンバッテリーの略図である。アノード層は、アノード活物質の粒子、導電性添加剤(図示せず)および樹脂結合剤(図示せず)から構成される。
【
図4】
図4は、酸化グラフェンシート間の化学連結のあり得る機構であり、その機構は、グラフェンシート横方向寸法を有効に増加させ、細孔壁を相互接続させ、電子伝導路経路の3D網目構造を形成すると共に高い構造統合性および弾性(完全に回復可能である弾性変形を受ける能力)を与える。
【
図5A】
図5(A)は、本発明の方法によって製造されたGO懸濁液由来のフォーム、メソフェーズピッチ由来の黒鉛フォーム、およびNiフォームテンプレート支援CVDグラフェンフォームの熱伝導率の値対比重である。
【
図5B】
図5(B)は、GO懸濁液由来のフォーム、犠牲プラスチックビードによってテンプレート化されたGOフォーム、および熱水還元GOグラフェンフォームの熱伝導率の値である。
【
図5C】
図5(C)は、本発明の方法によって製造されたGO懸濁液由来のフォームおよび熱水還元GOグラフェンフォームの電気導電率のデータである。
【
図6A】
図6(A)は、GO懸濁液由来のフォーム、メソフェーズピッチ由来の黒鉛フォーム、およびNiフォームテンプレート支援CVDグラフェンフォームの(1.02g/cm
3までの比重の値に対する)熱伝導率の値である。
【
図6B】
図6(B)は、GO懸濁液由来のフォーム、犠牲プラスチックビードによってテンプレート化されたGOフォーム、および熱水還元GOグラフェンフォームの(1.02g/cm
3までの比重の値に対する)熱伝導率の値である。
【
図7】
図7は、比重の関数としてGOおよびGF(フッ化グラフェン)から得られるグラフェンフォーム試料の熱伝導率の値である。
【
図8】
図8は、最終(最高)熱処理温度の関数としてGOおよび純粋なグラフェンから得られたグラフェンフォーム試料の熱伝導率の値である。
【
図9A】
図9(A)は、X線回折によって測定されるときのグラフェンフォーム壁中のグラフェン面間間隔である。
【
図9B】
図9(B)は、GO懸濁液由来のグラフェンフォーム中の酸素含有量である。
【
図10A】
図10(A)は、以前はより大きい直径のSi粒子(最初は3~5μm)から成長したSiナノワイヤーを示すSEM画像である。より小さくなるかまたはさらに見えなくなる(完全に消費される)これらのSi粒子を利用してこれらのSiナノワイヤーが成長する。
【
図10B】
図10(B)は、グラフェン表面から生じたSiナノワイヤーを示すSEM画像である。触媒金属被覆グラフェンシートが存在せずにSiミクロン粒子から直接に生じたSiナノワイヤーと比較してこれらのSiナノワイヤーは直径がずっと小さい。
【
図11】
図11は、3つのリチウムイオンセルのサイクル試験結果である:アノード活物質としてグラフェンフォームの細孔内に埋め込まれた元のSi粒子を含有する(Siナノワイヤーは無い)第1のセル、未被覆グラフェンシートから製造されるグラフェンフォームの細孔内のNi金属被覆Si粒子から成長したSiナノワイヤーを含有する第2のセル、およびグラフェンフォーム構造物内のNi被覆Si粒子およびNi被覆グラフェンシートの両方から生じたSiナノワイヤーを含有する第3のセル。
【
図12】
図12は、3つのリチウムイオンセルのラゴーンプロット(出力密度対エネルギー密度)である:フォームの細孔内に元のSi粒子を含有する(Siナノワイヤーは無い)グラフェンフォームのアノード層を含有する第1のセル、未被覆グラフェンシートから製造されるグラフェンフォームの細孔内のNi金属被覆Si粒子から成長したSiナノワイヤーを含有する第2のセル、およびグラフェンフォーム内のNi被覆Si粒子およびNi被覆グラフェンシートの両方から生じたSiナノワイヤーを含有する第3のセル。
【
図13】
図13は、4つのリチウムイオンセルのサイクル試験結果である:アノード活物質として単に一緒に混合した元のSi粒子およびグラフェンシートを含有する(Siナノワイヤーは無い)第1のセル、Ni/Al金属被覆Si粒子から生じたSiナノワイヤーと未被覆グラフェンシートとの簡単な混合物を含有する第2のセル、単に一緒に混合したNi/Al被覆Si粒子およびNi/Al被覆グラフェンシートの両方から生じたSiナノワイヤーを含有する第3のセル、およびグラフェンフォーム層内のNi/Al被覆Si粒子およびNi/Al被覆グラフェンシートの両方から生じたSiナノワイヤーを含有する第4のセル。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、好ましくは非水電解質(例えば有機溶媒中に溶解されたリチウム塩)、ポリマーゲル電解質、イオン性液体電解質、疑似固体電解質、または固体状態電解質をベースとした、リチウムイオンバッテリーのためのグラフェンで保護されたSiナノワイヤーを含有するアノード電極(例えば層の形態の陰極)を目的としている。リチウム二次バッテリーの形状は、円筒形、四角形、ボタン状等々であり得る。本発明は、任意のバッテリー形状または形態に限定されない。Siナノワイヤーは主に、各々のSiナノワイヤーの2つの端部の一方でグラフェン細孔壁に化学接合している。
【0083】
図3(A)および
図3(B)において説明されるように、リチウムイオンバッテリーセルは典型的に、アノード集電体(例えばCu箔)、アノードまたは陰極(アノード活物質、導電性添加剤、および樹脂結合剤を典型的に含有するアノード層)、多孔性セパレーターおよび/または電解質成分、カソード電極(典型的にカソード活物質、導電性添加剤、および樹脂結合剤を含有する)、およびカソード集電体(例えばAl箔)から構成される。より一般的に使用されるセル構成(
図3(B))において、アノード層は、アノード活物質(例えば黒鉛、Sn、SnO
2、またはSi)の粒子、導電性添加剤(例えばカーボンブラック粒子)、および樹脂結合剤(例えばSBRまたはPVDF)から構成される。このアノード層は、単位電極面積当たり十分な量の電流を生じるために典型的に厚さ50~300μm(より典型的に100~200μm)である。この厚さの範囲は、バッテリー設計者が働く業界で認められた制約である。この制約は、いくつかの理由による:(a)既存のバッテリー電極コーティング機は、過度に薄いまたは過度に厚い電極層を被覆する能力は備わっていない、(b)より薄い層は、リチウムイオン拡散経路の長さの低減を考慮して好ましいが、非常に薄い層(例えば<<100μm)は十分な量のリチウム吸蔵活物質を含有しない(したがって、不十分な電流出力)、および(c)バッテリーセル内の全ての非活物質層(例えば集電体、導電性添加剤、結合剤樹脂、およびセパレーター)は、最小オーバーヘッド重量および最大リチウム吸蔵能力、したがって、最大化したエネルギー密度(Wk/kgまたはWh/Lのセル)を得るために最小に保たれなければならない。
【0084】
図3(A)において説明されるように、それほど一般的に使用されないセル形態において、アノード活物質は、銅箔のシートなど、薄膜の形でアノード集電体上に直接に堆積される。しかしながら、極度に小さな厚さ方向寸法(典型的に500nmよりずっと小さく、しばしば必然的に100nmより薄い)を有するこのような薄いフィルム構造物は、(同じ電極または集電体表面積が与えられたとすると)ほんの少量の活物質を電極に混入することができ、低い全リチウム吸蔵容量および低いリチウム吸蔵容量/単位電極表面積を提供することを意味する。このような薄いフィルムは、サイクルの繰り返しによって引き起こされるクラッキングにいっそう耐性であるために100nm未満の厚さを有さなくてはならない。このような制約は、全リチウム吸蔵容量およびリチウム吸蔵容量/単位電極表面積をさらに減少させる。このような薄フィルムバッテリーは、非常に限られた適用範囲を有する。他方、100nmより厚いSi層は、バッテリーの充電/放電サイクルの間に不十分なクラッキング耐性を示すことが見出された。このような厚いフィルムがばらばらになるのにほんの数サイクルしか要さない。これらの薄フィルム電極(厚さ<100nmを有する)は、必要とされる厚さに3桁届かない。(望ましい電極厚さは少なくとも100μm、好ましくは200μm超である。)さらなる問題として、SiまたはSnO
2フィルムをベースとしたアノード層もまた、これらの材料が電子およびリチウムイオンの両方にあまり伝導性でないので、あまり厚くすることはできない。大きな層厚さは、過度に高い内部抵抗を意味する。
【0085】
換言すれば、材料のタイプ、形状、サイズ、多孔度、および電極層厚さの観点からアノード活物質の設計および選択に関して言えば同時に考慮されなければならないいくつかの相容れない要因がある。これまでのところ、これらのしばしば相容れない問題に対していずれかの先行技術の教示によって提供された有効な解決策はなかった。30年以上にわたってバッテリーの設計者および電気化学者を等しく煩わせてきたこれらの厄介な問題をグラフェンフォームによって保護されたアノード活物質(高容量Siナノワイヤー)を開発することによって我々は解決した。
【0086】
好ましい実施形態において、本発明は、(A)複数の細孔および細孔壁から構成される固体グラフェンフォームのシートと、(B)これらの細孔の一部の中に存在していて細孔壁に化学接合しているSiナノワイヤー(一部の細孔は空いているままであり、アノード活物質の体積膨脹を緩和するように作用する)とを含有するアノード層を提供する。また、本発明は、このようなアノード層を製造するための方法を提供する。
【0087】
より具体的には、
図1(B)において説明されるように、本発明のアノード層は、複数の細孔および細孔壁(グラフェンフォームの固体部分)から構成される、固体グラフェンフォームの細孔内に埋め込まれるアノード活物質(Siナノワイヤー)を含み、そこで(a)細孔壁は、本質的に0%の非炭素元素を有する純粋なグラフェン材料、または0.001重量%~5重量%の非炭素元素を有する非純粋なグラフェン材料を含有し、そこで非純粋なグラフェンは、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択され、(b)Siナノワイヤーは、組み合わせられたグラフェンフォームおよびSiナノワイヤーの全重量に基づいて0.5重量%~99重量%(好ましくは2重量%~90重量%およびより好ましくは5重量%~80重量%)の量であり、および(c)一部の細孔がSiナノワイヤーを容れられ、その他の細孔がSiを含有せず、グラフェンフォームは、バッテリー充電-放電サイクルの間にSiナノワイヤーの体積膨脹および収縮を吸収するために十分に弾性であり、アノード層の膨張を避ける。本発明の方法によって製造されるフォーム壁内の接合グラフェン面は、Siナノワイヤーの膨張および収縮にすぐに応答する程度に弾性変形し得ることが見出されている。
【0088】
固体グラフェンフォーム(単独で、Siなしで)は典型的に、0.01~1.7g/cm3、(より典型的に0.05~1.6g/cm3、さらにより典型的に0.1~1.5g/cm3、より望ましくは0.5~0.01~1.3g/cm3)の密度、50~2,000m2/gの比表面積、単位比重当たり少なくとも100W/mKの熱伝導率、および/または単位比重当たり1,000S/cm以上の電気導電率を有する。物理的密度のこれらの範囲は、任意に選択される範囲ではないことを注記しておく。他方、内部細孔量(多孔度のレベル)は、Siナノワイヤーの最大膨張(例えばSiについて約300%~380%の最大体積膨脹)を吸収するために十分に大きいようにこれらの密度が設計される。他方、細孔量が非常に大きいことはできない(または物理的密度が非常に低い)。さもなければ、グラフェンフォーム構造物の細孔壁は十分に弾性であることはできない(または、完全に回復可能または可逆的である大きな変形を受けることができない)。
【0089】
理想的には、細孔は、取り囲まれるSiナノワイヤーが膨張するのと同じ程度に膨張するのがよく、アノード活物質粒子と同じ程度に収縮するのがよい。換言すれば、グラフェンフォーム壁は、このような要件を満たすために十分に弾性でなければならない。これは最も厄介な課題であるが、驚くべきことに、グラフェンフォームの良い弾性は、十分に長い/幅が広いグラフェン面(細孔直径より大きいグラフェン面の長さ/幅)およびSiナノワイヤーによって占められていない十分な量(全細孔体積の5%~50%)の小さな細孔(2~100nm)によって達成することができることを我々は観察した。
【0090】
簡単に言えば、本発明のアノード層を製造するための方法は、以下の工程を含む:
(a)触媒金属被覆Si粒子およびグラフェン材料のシート(グラフェンシート表面上に堆積される触媒金属の有無にかかわらない)が液体媒体中に分散されるグラフェン分散体を調製する工程において、グラフェン材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択され、そこで分散体は任意選択の発泡剤を含有し、発泡剤対グラフェン材料の重量比は0/1.0~1.0/1.0である(この発泡剤は通常、グラフェン材料が純粋なグラフェンである場合に必要とされ、典型的に発泡剤対純粋なグラフェンの重量比は0.01/1.0~1.0/1.0である)。
(b)グラフェン分散体を支持基材(例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、金属箔、ガラスシート、紙シート等)の表面上に分配および堆積してグラフェン-Si混合物の湿潤層を形成する工程において、分配および堆積手順(例えばコーティングまたは流延)が好ましくは、グラフェン分散体を配向誘起応力に供する工程を含む。この後に、液体媒体をグラフェン材料の湿潤層から部分的にまたは完全に除去して材料混合物の乾燥された層を形成し、グラフェン材料が5重量%以上の非炭素元素(例えばO、H、N、B、F、Cl、Br、I等)の含有量を有する(この非炭素含有量は、熱誘導分解によって除去されるとき、フォーミング剤または発泡剤として作用する揮発性ガスを生じる)工程、および
(c)供給材料としてケイ素粒子を使用して複数のケイ素ナノワイヤーの触媒金属触媒成長を可能にするために十分な時間の間、触媒金属被覆混合物塊を高温環境(好ましくは300℃~2,500℃、より好ましくは400℃~1,500℃、最も好ましくは500℃~1,200℃)に暴露して、グラフェンフォームで保護されたSiナノワイヤーのアノードを形成する工程。これらのSiナノワイヤーは、出発Si粒子から突き出て(グラフェンシート表面もまた、触媒金属で堆積される場合)グラフェンシートの表面から生じるようにみえる。このようにして製造されたケイ素ナノワイヤーは、100nm未満の直径(グラフェン細孔壁表面からさらに生じる場合典型的に<20nm)および少なくとも5の長さ対直径アスペクト比(より典型的にl/d=10~10,000および最も典型的に100~1,000)を有する。熱暴露はまた、グラフェン材料中の非炭素元素から揮発性ガス分子を誘導するかまたは発泡剤を活性化させて固体グラフェンフォームを製造する。得られたグラフェンフォームは、Siなしに測定されるとき、典型的に、0.01~1.7g/cm3(より典型的に0.1~1.5g/cm3、さらにより典型的に0.1~1.0g/cm3、最も典型的に0.2~0.75g/cm3)の密度、または50~3,000m2/g(より典型的に200~2,000m2/g、最も典型的に500~1,500m2/g)の比表面積を有する。
【0091】
本発明は、粒径0.2μm~20μmを有するミクロンまたはサブミクロンスケールのケイ素粒子から開始してSiナノワイヤーを成長させるための方法を提供する。換言すれば、出発原料はミクロンまたはサブミクロンスケールのケイ素粒子であり、それらは、直径または厚さ100nm未満、より典型的に50nm未満および最も典型的に20nm未満(しばしば2~10nmしかない)を有するナノスケールの、ワイヤー形状のSiに直接に熱的におよび触媒的に変換される。走査電子顕微鏡法(SEM)を使用する調査は、数十または数百のナノワイヤーが出発固体Si粒子から成長または「押し出され」得ることを示す。例として、
図10(A)は、数百のSiナノワイヤーが、最初は直径3~5μmであったほんの少数のSi粒子から成長または生じたことを示す。これらのSiナノワイヤーは、必要とされるSi原子を少数の出発Si粒子から引き出している。このような多数のナノワイヤーを「吐き出す」ことによって、元のSi粒子は(グラフェンシートからの助けなしに)直径が約0.6μmまで低減された。触媒金属を堆積したグラフェン細孔壁によって囲まれるとき、本質的に全てのミクロンまたはサブミクロンSi粒子は完全に「食い尽くされ」、典型的に残留Si粒子は残されない(例えば
図10(B))。
【0092】
Si粒子またはグラフェンシート表面上に堆積される触媒金属は好ましくは、ナノスケールのコーティング(100nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは20nm未満、最も好ましくは10nm未満の厚さを有する)またはナノスケールの粒子(100nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは20nm未満、最も好ましくは10nm未満の直径を有する)の形態である。より薄い金属被覆またはより小さい金属粒子は、より多数のより小さいSiナノワイヤーを製造するのにいっそう有効であり、それらは、Siナノワイヤーをリチウムイオンバッテリーのアノード活物質として使用する際には好ましい特徴である。
【0093】
Si粒子表面および/またはグラフェンシート表面上の触媒金属被覆または粒子の堆積のために従う少なくとも3つの順序がある。第1の可能な順序は、これらのSi粒子がグラフェン懸濁液中に分散される前にミクロンサイズまたはサブミクロンサイズのSi粒子の表面に触媒金属(例えばNi)を堆積することを必要とする。第2の可能な順序は、これらのSi粒子およびグラフェンシートが液体媒体中に分散されてグラフェン分散体を形成する前に触媒金属をSi粒子の表面およびグラフェンシートの表面の両方の上に堆積する工程を必要とする。第3の可能な順序は、その中に溶解された触媒金属前駆体もまた含有する、液体媒体中にSi粒子(触媒金属で未被覆)およびグラフェンシート(触媒金属で未被覆)を分散させる工程を必要とする。分散体を分配および堆積させて層を形成した後および後続の熱処理の間、前駆体を触媒金属被覆またはナノ粒子に熱的に変換し、それはSi粒子の表面および得られたグラフェンフォームの細孔壁(グラフェン面の表面)上に自然に堆積する。
【0094】
第1の2つの可能な順序において、触媒金属被覆Si粒子は、物理蒸着、化学蒸着、スパッタリング、プラズマ堆積、レーザーアブレーション、プラズマ噴霧、超音波噴霧、印刷、電気化学堆積、電極めっき、無電極めっき、化学めっき、またはそれらの組合せの手順を使用して触媒金属をSi粒子表面上に堆積する工程によって製造されてもよい。触媒金属は、Cu、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Al、Ag、Au、Pt、Pd、またはそれらの組合せから選択されてもよい。Siナノワイヤー成長の必要とされる高温範囲は、使用される触媒金属に依存することを注記しておく。例えば、Cu、Ni、および/またはFeについては、範囲は好ましくは700℃~1,000℃である。貴金属を含有する触媒については、反応温度は好ましくはおよび典型的にはより高い。
【0095】
(a)触媒金属前駆体を液体中に溶解または分散させて前駆体溶液を形成する工程と、(b)前駆体溶液をグラフェンシートの表面およびSi粒子の表面と接触させる工程と、(c)液体を除去する工程と、(d)触媒金属前駆体を化学的にまたは熱的に変換して触媒金属被覆またはナノ粒子になる工程とを含む手順によって触媒金属がSiおよびグラフェンシート表面上に堆積されてもよい。
【0096】
第3の可能な順序を必要とする本発明の方法において、触媒金属前駆体を化学的にまたは熱的に変換する工程(d)は、グラフェン/Si混合物の乾燥された層を高温環境に暴露する手順(c)と同時に行われてもよい。プロセス触媒金属前駆体は、Cu、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Al、またはそれらの組合せから選択される遷移金属の塩または有機金属分子であってもよい。好ましくは、触媒金属前駆体は、硝酸銅、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸チタン、硝酸アルミニウム、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酢酸鉄、酢酸チタン、酢酸アルミニウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、リン酸銅、リン酸ニッケル、リン酸コバルト、リン酸マンガン、リン酸鉄、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、水酸化銅、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化チタン、水酸化アルミニウム、カルボン酸銅、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸マンガン、カルボン酸鉄、カルボン酸チタン、カルボン酸アルミニウム、またはそれらの組合せから選択される。
【0097】
したがって、本発明の特定の実施形態において、方法は、(A)Si粒子、グラフェンシート、触媒金属前駆体、および任意選択の発泡剤を液体中に分散させてグラフェン/Si分散体を形成する工程において、Si粒子が、0.2μm~20μmの直径を有し、Si元素を少なくとも99.9重量%有する高純度SiまたはSiを70重量%~99.9重量%その中に有するSi合金または混合物を含有する工程と、(B)グラフェン/Si分散体を支持基材の表面上に分配および堆積してグラフェン/Si混合物の湿潤層を形成し、液体媒体をグラフェン/Si混合物の湿潤層から部分的にまたは完全に除去して、グラフェン/Si混合物材料の乾燥された層を形成する工程と、(C)触媒金属前駆体を、Si粒子の表面および/またはグラフェンシートの表面上に堆積される触媒金属のコーティングまたはナノ粒子に熱的に変換するために十分な時間の間、グラフェン/Si混合物の前記乾燥された層を100℃~2,500℃の高温環境に暴露して、グラフェンシートから揮発性ガス分子を誘導するかまたは発泡剤を活性化させてグラフェンフォームを製造すると共に、同時にまたは順次に、グラフェンフォームの細孔内の供給材料としてSi粒子から生じる複数のSiナノワイヤーの触媒金属触媒成長を可能にしてアノード電極層を形成する工程において、Siナノワイヤーが100nm未満の直径および少なくとも5の長さ対直径アスペクト比を有し、Siナノワイヤーが、組み合わせられたグラフェンフォームおよびSiナノワイヤーの全重量に基づいて、0.5重量%~95重量%の量である工程とを含む。
【0098】
グラフェン材料のシートまたは分子を(1)典型的に100~1,500℃の温度で(エッジからエッジまでおよび/または面から面まで)一緒に化学連結/同化しておよび/または(2)高温(典型的に>2,100℃およびより典型的には>2,500℃)で細孔壁に沿ってより大きな黒鉛結晶またはドメインに再組織化する(本明細書において再黒鉛化と称される)少し前、間、または後にグラフェンフォーム中の細孔が形成される。
【0099】
Siナノワイヤーはグラフェン細孔壁によって自然に取り囲まれ、典型的にはナノワイヤーと細孔壁との間に若干の間隙を残す。したがって、Si粒子が存在している場合、グラフェンフォーム内の細孔がある。しかしながら、乾燥されたグラフェン層の熱処理の間に(発泡剤および/または非炭素元素、例えば-OH、-F等からの)揮発性ガスの発生のために形成される付加的な細孔がある。これらの細孔は、Siナノワイヤーの局部体積膨脹を緩衝する役割を果たし、それによって、得られたアノード層の全体的な膨張を避ける。細孔壁がアノード活物質(Siナノワイヤー)の収縮の程度と一致して戻る能力は、熱処理の間に接着および接合されてより大きなおよびより強いグラフェン面を形成する取り囲んでいるグラフェンシートに由来する。
【0100】
発泡剤またはフォーミング剤は、ポリマー(プラスチックおよびゴム)、ガラス、および金属など、固化または相転移を受ける様々な材料中に発泡法によってセルまたは発泡構造体を生じ得る物質である。それらは典型的に、発泡される材料が液体状態であるときに適用される。発泡剤は、固体状態である間に発泡材料を作るために使用できることはこれまで知られていなかった。それ以上に重要なことは、グラフェンシートの集合体を発泡剤によってグラフェンフォームに変換することができることは教示も示唆もされていない。ポリマー母材中のセル構造体は典型的に、元のポリマーの厚さおよび相対的な剛性を増加させながら、密度を低減し、耐熱性および防音を高める目的で作られる。
【0101】
発泡またはセル状材料を製造するために母材中に細孔またはセル(気泡)を作る発泡剤または関連の発泡機構は、以下の群に分類され得る:
(a)物理的発泡剤:例えば炭化水素(例えばペンタン、イソペンタン、シクロペンタン)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、および液体CO2。気泡/フォーム製造プロセスは吸熱性であり、すなわちそれは、液体発泡剤を気化させるための、(例えば溶融プロセスまたは架橋による化学発熱からの)熱を必要とする。
(b)化学発泡剤:例えばイソシアネート、アゾ-、ヒドラジンおよびその他の窒素系材料(熱可塑性およびエラストマーフォーム用)、重炭酸ナトリウム(熱可塑性フォームにおいて使用される、例えば重曹)。ここでガス生成物およびその他の副生成物が化学反応によって形成され、プロセスによってまたは反応ポリマーの発熱によって促進される。ブローイング反応は、吹込ガスとして作用する低分子量化合物を形成する工程を必要とするので、付加的な発熱も出る。粉末水素化チタンが金属フォームの製造においてフォーミング剤として使用され、それが分解して高温でチタンおよび水素ガスを形成する。水素化ジルコニウム(II)が同じ目的のために使用される。形成されると低分子量化合物は決して元の発泡剤に戻らず、すなわち反応は不可逆的である。
(c)混合物理/化学発泡剤:例えば、非常に低い密度を有する可撓性ポリウレタン(PU)フォームを製造するために使用される。化学的および物理的ブローイングの両方を直列に使用して、放出/吸収される熱エネルギーに対して互いに相殺する;したがって、温度上昇を最小にする。例えば、マットレスのための非常に低密度の可撓性PUフォームの製造においてイソシアネートと水(反応してCO2を形成する)を液体CO2(沸騰して気体形態を生じる)と組み合わせる。
(d)機械的注入される薬剤:機械的に製造されるフォームは、気泡を液体重合性母材(例えば液体ラテックスの形態の未加硫エラストマー)中に導入する方法を必要とする。方法は、空気または他のガスまたは低沸点揮発性液体を低粘度ラチス中で泡立てる工程、または押出機バレルまたはダイ内への、または射出成形バレルまたはノズル内へのガスの注入、およびスクリューの剪断/混合作用によってガスを均一に分散させて溶融体中に非常に微細な気泡またはガスの溶液を形成する工程を含む。溶融体が成形または押し出されて加工品が大気圧にあるとき、ガスが溶液から出て凝固の直前にポリマー溶融体を膨張させる。
(e)可溶性および浸出性剤:可溶性充填剤、例えば、液体ウレタン系に混合される固体塩化ナトリウム結晶であり、次いでそれを固体ポリマー加工品に造形し、塩化ナトリウムは、固体成形品をしばらくの間水中に浸漬することによって後で洗浄除去され、小さな相互接続孔を比較的高密度のポリマー製品中に残す。
(f)上記の5つの機構を全て使用して固体状態である間にグラフェン材料中に細孔を作ることができることを我々は見出した。グラフェン材料中に細孔を製造する別の機構は、それらの非炭素元素を高温環境において除去することによって揮発性ガスを発生および気化することによる。これは、これまで決して教示も示唆もされていない独特の自己発泡法である。
【0102】
好ましい実施形態において、分散体中のグラフェン材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。上記のグラフェン材料のいずれか一つを製造するための出発黒鉛材料は、天然黒鉛、人工黒鉛、メソフェーズ炭素、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビード、軟質炭素、硬質炭素、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せから選択されてもよい。
【0103】
例えば、背景技術の節に記載の通り、酸化グラフェン(GO)は、ある期間(出発原料の性質および使用される酸化剤のタイプに応じて典型的に0.5~96時間)、所望の温度の反応器内で酸化性液体媒体(例えば硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物)中に出発黒鉛材料の粉末またはフィラメント(例えば天然黒鉛粉末)を浸漬することによって得られてもよい。次に、得られた黒鉛酸化物粒子を熱剥離または超音波による剥離に供してGOシートを製造してもよい。
【0104】
純粋なグラフェンは、黒鉛粒子の直接超音波処理(液相製造としても知られる)または超臨界流体剥離によって製造されてもよい。これらの方法は本技術分野に公知である。界面活性剤の補助によって複数の純粋なグラフェンシートを水または他の液体媒体中に分散させて懸濁液を形成してもよい。次に、化学発泡剤を分散体中に分散させてもよい(
図2の38)。次に、この懸濁液を固体基材(例えばガラスシートまたはAl箔)の表面上に流延またはコートする。所望の温度に加熱されるとき、化学発泡剤が活性化または分解されて揮発性ガス(例えばN
2またはCO
2)を発生させ、それらが作用して固体グラフェンシートの他の状態の塊に気泡または細孔を形成し、純粋なグラフェンフォーム40aを形成する。
【0105】
フッ素化グラフェンまたはフッ化グラフェンがここにおいてハロゲン化グラフェン材料の群の例として使用される。フッ素化グラフェンを製造するために用いた2つの異なった方法がある:(1)予め合成されたグラフェンのフッ素化:この方法は、機械的剥離によってまたはXeF2などのフッ素化剤を使用するCVD成長、またはF系プラズマによって作製されたグラフェンを処理することを必要とする。(2)複数層フッ化黒鉛の剥離:フッ化黒鉛の機械的剥離および液相剥離の両方とも容易に達成することができる[F.Karlicky,et al. “Halogenated Graphenes: Rapidly Growing Family of Graphene Derivatives” ACS Nano, 2013, 7 (8),pp 6434-6464]。
【0106】
高温でのF2と黒鉛との相互作用は、共有結合性フッ化黒鉛(CF)nまたは(C2F)nをもたらすが、低温では黒鉛層間化合物(GIC)CxF(2≦x≦24)が形成される。(CF)nにおいて炭素原子は、sp3-混成であり、したがってフルオロカーボン層は波形であり、トランス結合シクロヘキサンいす形からなる。(C2F)nにおいてC原子の半分だけがフッ素化され、隣接した炭素シートの全ての対がC-C共有結合によって一緒に連結される。得られたF/C比は一般に、フッ素化温度、フッ化ガス中のフッ素の分圧の他、黒鉛化度、粒度、および比表面積などの黒鉛前駆体の物理的特性に依存していることをフッ素化反応に関する組織的な研究は示した。フッ素(F2)の他に、他のフッ素化剤を使用してもよいが、入手できる文献の大部分は、場合によってはフッ化物の存在下での、F2ガスによるフッ素化を含む。
【0107】
層状前駆体材料を単独層または数層の状態に剥離するために、隣接した層間の引力を克服すると共に層をさらに安定化することが必要である。これは、官能基によるグラフェン表面の共有結合修飾によるかまたは特定の溶剤、界面活性剤、ポリマー、またはドナー-アクセプター芳香族分子を使用する非共有結合修飾によるかどちらによって達成されてもよい。液相剥離の方法には、液体媒体中のフッ化黒鉛の超音波処理が含まれる。
【0108】
グラフェンの窒化は、酸化グラフェンなどのグラフェン材料を高温(200~400℃)のアンモニアに暴露することによって行なうことができる。また、窒素化グラフェンをより低温において熱水法によって、例えばGOおよびアンモニアをオートクレーブ内に封止することによって形成し、次に温度を150~250℃に上昇させることができる。窒素ドープトグラフェンを合成する他の方法には、グラフェンの窒素プラズマ処理、アンモニアの存在下での黒鉛電極間のアーク放電、CVD条件での酸化グラフェンの加安分解、および異なった温度での酸化グラフェンおよび尿素の熱水処理が含まれる。
【0109】
本発明のアノードのグラフェンフォーム中の細孔壁(セル壁または固体グラフェン部分)は、化学結合および同化したグラフェン面を含有する。これらの平面芳香族分子またはグラフェン面(六方晶構造炭素原子)は物理的におよび化学的に十分に相互接続される。これらの面の横方向寸法(長さまたは幅)は非常に大きく(例えば、20nm~>10μm)、出発黒鉛粒子の最大微結晶寸法(または最大構成グラフェン面寸法)よりも典型的に数倍またはさらに数桁大きい。グラフェンシートまたは面は本質的に同化および/または相互接続されて、低い抵抗を有する電子伝導経路を形成する。これは、これまで発見されたり、開発されたり、またはおそらく存在することが示唆されていない独自で新規なクラスの材料である。
【0110】
本発明の方法がどのように機能してグラフェンフォームで保護されたアノード層を製造するのかということを説明するために、本明細書において酸化グラフェン(GO)およびフッ化グラフェン(GF)を2つの例として利用した。これらは、請求の範囲を限定すると解釈されるべきでない。各々の場合において、第1の工程は、任意選択の発泡剤を含有するグラフェン分散体(例えばGO+水またはGF+有機溶剤、DMF)の調製を必要とする。グラフェン材料が、非炭素元素を含有しない純粋なグラフェンである場合、発泡剤が必要とされる。
【0111】
工程(b)において、GFまたはGO懸濁液(
図2の21)(しかしここでSi粒子も含む)を好ましくは剪断応力の影響下で固体基材表面(例えばPETフィルムまたはガラス)上に湿潤GFまたはGO層35に形成する。このような剪断手順の一例は、コーティング機を使用するGFまたはGO懸濁液の薄いフィルムの流延またはコーティングである。この手順は、固体基材上にコートされるワニス、ペイント、コーティング、またはインクの層に似ている。フィルムが造形されるときかまたはローラー/ブレード/ワイパーと支持基材との間に高い相対運動があるときにローラー、またはワイパーは剪断応力を生じる。極めて予想外にそして重要なことに、このような剪断作用によって、平面GFまたはGOシートを例えば、剪断方向に沿って十分に整列させることができる。さらに驚くべきことに、GFまたはGO懸濁液中の液体成分をその後に除去して少なくとも部分的に乾燥される高整列化GFまたはGOシートの十分に充填された層を形成するときにこのような分子整列状態または好ましい配向は破損されない。乾燥されたGFまたはGO質量37aは、平面内の方向と平面に垂直な方向との間の高い複屈折係数を有する。
【0112】
実施形態において、このGFまたはGO層(それぞれSi粒子を含む)を次に、発泡剤を活性化する熱処理および/または非炭素元素(例えばF、O等々)をグラフェンシートから除去して副生成物として揮発性ガスを生成する熱的誘起反応に供する。これらの揮発性ガスは、固体グラフェン材料中に細孔または気泡を生成し、固体グラフェンシートをフォーム壁構造体中に押し込み、酸化グラフェンフォーム(
図2の40b)を形成する。発泡剤が添加されない場合、グラフェン材料中の非炭素元素は好ましくは、グラフェン材料の少なくとも10重量%(好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%)を占める。第1の(初期)熱処理温度は典型的に80℃超、好ましくは100℃超、より好ましくは300℃超、さらにより好ましくは500℃超であり、1,500℃もの高い温度であり得る。発泡剤は典型的に、80℃~300℃の温度で活性化されるが、より高くなり得る。フォーミング手順(細孔、セル、または気泡の形成)は典型的に、80~1,500℃の温度範囲内で完了される。非常に驚くべきことに、エッジからエッジまでおよび面から面までの方法でのグラフェン面(GOまたはGF面)間の化学連結または同化は、比較的低い熱処理温度(例えば、実に150~300℃しかない)で起こり得る。
【0113】
発泡グラフェン材料は、第1の熱処理温度よりも著しく高い少なくとも第2の温度を必要とするさらなる熱処理に供されてもよい。
【0114】
適切にプログラムされた熱処理手順は、単に単一熱処理温度(例えば第1の熱処理温度だけ)、少なくとも2つの熱処理温度(一定時間の間第1の温度、そして次に第2の温度に上げ、さらに別の一定時間の間この第2の温度に維持する)、または初期処理温度(第1の温度)と、第1の温度よりも高い、最終HTT(第2の温度)とを含む熱処理温度(HTT)の任意の他の組合せを含むことができる。乾燥されたグラフェン層が受ける最も高いまたは最終HTTは、3つの異なったHTTレジームに分けられてもよい:
【0115】
レジーム1(80℃~300℃):この温度範囲において(熱還元レジームと、また、存在する場合、発泡剤のための活性化レジーム)、GOまたはGF層は最初に熱誘導還元反応を受け、酸素含有量またはフッ素含有量の、典型的に(GO中のOの)20~50%または(GF中のFの)10~25%から約5~6%への低減をもたらす。この処理は、フォーム壁内のグラフェン間の間隔の、約0.6~1.2nm(乾燥されたとき)から約0.4nmへの低減、および単位比重当たり200W/mKまでの熱伝導率の増加および/または単位比重当たり2,000S/cmまでの電気導電率の増加をもたらす。(グラフェンフォーム材料の多孔度のレベル、したがって、比重を変えることができ、同じグラフェン材料が与えられれば、熱伝導率および電気導電率の両方の値が比重と共に変化するので、これらの特性値を比重によって分けて公正な比較を助けなければならない。)このような低温範囲を使用しても、グラフェンシート間の若干の化学連結が起こる。GO間またはGF間面間隔は比較的大きいままである(0.4nm以上)。多くのO含有またはF含有官能基は残る。
【0116】
レジーム2(300℃~1,500℃):2つの重要な事象がこの温度範囲において起こる:
a)第1の事象は、グラフェンフォーム構造物の形成に関する。この化学連結のレジームにおいて、隣接したGOまたはGFシート間に広範な化合、重合、および架橋が起こる。化学連結の後に酸素またはフッ素含有量は典型的に<1.0%(例えば0.7%)に低減され、グラフェン間の間隔を約0.345nmに低減するという結果をもたらす。黒鉛化を開始するために2,500℃もの温度を典型的に必要とする従来の黒鉛化可能な材料(炭化ポリイミドフィルムなど)と著しい対照をなして、若干の初期再黒鉛化がこのような低温においてすでに始まっていることをこれは意味する。これは、本発明のグラフェンフォームおよびその製造プロセスの別の異なった特徴である。これらの化学連結反応は、単位比重当たり250W/mKまで熱伝導率の増加、および/または単位比重当たり2,500~4,000S/cmまで電気導電率の増加をもたらす。
b)第2の事象は、グラフェンフォームの細孔内の金属触媒被覆Si粒子からのSiナノワイヤーの成長を伴ない、(元のグラフェンシートもまた触媒金属被覆であるならば)一部はグラフェン細孔壁表面からさらに生じている。
【0117】
レジーム3(1,500~2,500℃):この秩序化および再黒鉛化のレジームにおいて、広範な黒鉛化またはグラフェン面の同化が起こる、フォーム壁内の著しく改良された程度の構造秩序化をもたらす。結果として、酸素またはフッ素含有量は典型的に0.01%に低減され、グラフェン間の間隔は約0.337nmに低減される(実際のHTTおよび時間に応じて1%~約80%の黒鉛化度を達成する)。また、改良された秩序化度は、単位比重当たり>350W/mKまで熱伝導率の増加、および/または単位比重当たり>3,500S/cmまで電気導電率の増加によって反映される。
【0118】
アノード活性材料を含む本発明のグラフェンフォーム構造体は、少なくとも第1のレジーム(温度が500℃を決して超えない場合この温度範囲において1~4時間を典型的に必要とする)にわたる、より一般的には最初の2つのレジーム(1~2時間が好ましい)、さらにより一般的には最初の3つのレジーム(レジーム3において好ましくは0.5~2.0時間)にわたる、そして全ての4つのレジーム(0.2~1時間のレジーム4を含めて、最も高い導電率を達成するために実施されてもよい)にわたり得る温度プログラムを使用して、乾燥されたGOまたはGF層を熱処理することにより得ることができる。
【0119】
グラフェン材料が、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せからなる非純粋なグラフェン材料の群から選択され、そして最高熱処理温度(例えば第1および第2の熱処理温度の両方)が2,500℃未満である場合、得られた固体グラフェンフォームは典型的に、0.01重量%~2.0重量%の範囲の非炭素元素の含有量を含有する(非純粋なグラフェンフォーム)。
【0120】
X線回折パターンは、CuKcv放射線を備えたX線回折計を使用して得られた。回折ピークのシフトおよび広幅化は、ケイ素粉末標準を使用して較正された。黒鉛化度、gは、メーリング(Mering)の式d002=0.3354g+0.344(1-g)(式中、d002は、nm単位の黒鉛またはグラフェン結晶の中間層間隔である)を使用して、X線パターンから計算された。この式は、d002が約0.3440nm以下であるときにだけ有効である。0.3440nmよりも高いd002を有するグラフェンフォーム壁は、スペーサーとして作用してグラフェン間の間隔を増加させる酸素含有またはフッ素含有官能基(例えば、グラフェン分子平面の表面またはエッジ上の-F、-OH、>O、および-COOHなど)の存在を反映する。
【0121】
グラフェンおよび従来の黒鉛結晶のフォーム壁内の積層および接着グラフェン面の秩序化度を特性決定するために使用できる別の構造指数は、(002)または(004)反射のロッキング曲線(X線回折強度)の半値全幅によって表わされる、「モザイクスプレッド」である。この秩序化度は、黒鉛またはグラフェン結晶サイズ(または結晶粒径)、粒界およびその他の欠陥の量、および好ましい結晶粒配向度を特性決定する。黒鉛のほぼ完全な単結晶は、0.2~0.4のモザイクスプレッド値を有することを特性とする。我々のグラフェン壁の大部分は、0.2~0.4のこの範囲のモザイクスプレッド値を有する(2,500℃以上の熱処理温度(HTT)を使用して製造される場合)。しかしながら、HTTが1,500~2,500℃の間である場合いくつかの値は0.4~0.7の範囲であり、HTTが300~1,500℃の間である場合0.7~1.0の範囲である。
【0122】
図4に示されるのは、2個だけの整列GO分子が例として示される妥当な化学連結機構であるが、非常に多数のGO分子が一緒に化学連結してフォーム壁を形成することができる。さらに、GO、GF、および化学官能化グラフェンシートについて化学連結はまた、エッジからエッジまでだけでなく、面から面まで生じ得る。分子が化学的に同化され、連結され、単一実体に統合されるようにこれらの連結および同化反応が進む。グラフェンシート(GOまたはGFシート)がそれら自体の元の本質を完全に失い、それらはもう離散シート/プレートリット/フレークではない。得られた生成物は、単独グラフェンシートの単純な集合体ではなく、本質的に無数の分子量を有する相互接続巨大分子の本質的に網目構造である単一実体である。また、これは、グラフェン多結晶(若干の結晶粒を有するが、識別できる、明瞭な粒界を典型的に有さない)として説明されてもよい。全ての構成グラフェン面は横方向寸法(長さおよび幅)において非常に大きく、HTTが十分に高い場合(例えば>1,500℃またはより高い)、これらのグラフェン面は互いに一緒に本質的に接着される。本発明のアノード層のグラフェンフォームは、これまで教示も示唆もされていない以下の独特のおよび新規な特徴を有する。
【0123】
(1)SEM、TEM、制限視野回折、X線回折、AFM、ラマン分光学、およびFTIRの組合せを使用する綿密な研究は、グラフェンフォーム壁はいくつかの非常に大きいグラフェン面(典型的に>>20nm、より典型的には>>100nm、しばしば>>1μm、そして、多くの場合、>>10μm、またはさらに>>100μmの長さ/幅を有する)から構成されることを示す。最終熱処理温度が2,500℃よりも低い場合、これらの巨大グラフェン面は、しばしばファンデルワールス力(従来の黒鉛微結晶におけるように)だけでなく、共有結合によっても厚さ方向(c軸結晶方向)に沿って積層および接合される。これらの場合、理論によって限定されることを望まないが、ラマンおよびFTIR分光法研究は、グラフェン面中における従来のsp2だけでなくsp2(支配的)およびsp3(弱いが存在している)電子配置の共存を示すと思われる。
【0124】
(2)グラフェンフォーム壁内のこれらの相互接続された大きなグラフェン面は、高伝導性であるだけでなく弾性でもありフォーム細孔が可逆的におよびバッテリーのアノード電極の著しい膨張または収縮を引き起こさずに細孔内に容れられるSiナノワイヤーと一致して膨張および収縮することを可能にするグラフェンの一体3D網目構造を形成する。
【0125】
(3)このグラフェンフォーム壁は、樹脂結合剤、リンカー、または接着剤を使用して離散フレーク/プレートリットを接着または接合することによって製造されない。代わりに、外部から添加されるリンカーまたは結合剤分子またはポリマーを全く使用せずにGO分散体からのGOシート(分子)またはGF分散体からのGFシートを、互いの共有結合の接合または形成によって同化して、統合されたグラフェン実体にする。このようなアノード層を特徴とするリチウムバッテリーについては、リチウムを貯蔵することができない、樹脂結合剤または導電性添加剤などの非活物質を有する必要はない。これは、アノード中の非活物質の低下した量または活物質の増加した量を意味し、比容量/(複合物の)全アノード重量、mAh/gを有効に増加させる。
【0126】
(4)グラフェンフォーム細孔壁は典型的に、不完全なまたは定義が不十分な粒界を有する大きなグラフェン結晶粒から構成される多結晶である。この実体は、GOまたはGF懸濁液から得られ、それはさらには、本来複数の黒鉛微結晶を有する天然黒鉛または人工黒鉛粒子から得られる。化学的に酸化またはフッ素化される前に、これらの出発黒鉛微結晶は、初期長さ(a軸結晶方向のLa)、初期幅(b軸方向のLb)、および厚さ(c軸方向のLc)を有する。酸化またはフッ素化したとき、これらの初期離散黒鉛粒子は、かなりの濃度のエッジ担持または表面担持官能基(例えば-F、-OH、-COOH等々)を有する高級芳香族酸化グラフェンまたはフッ化グラフェン分子に化学的に変化される。懸濁液中のこれらの芳香族GOまたはGF分子は、黒鉛粒子またはフレークの一部であるそれらの元の本性を失っている。液体成分を懸濁液から除去するときに、得られたGOまたはGF分子は、本質的非晶質構造体を形成する。熱処理時に、これらのGOまたはGF分子は、フォーム壁を構成する単体またはモノリシックグラフェン実体に化学的に同化および連結される。このフォーム壁は、高度に秩序化されている。
【0127】
フォーム壁中の得られた単体グラフェン実体は典型的に、元の微結晶のLaおよびLbよりも著しく大きい長さまたは幅を有する。このグラフェンフォーム壁実体の長さ/幅は、元の微結晶のLaおよびLbよりも著しく大きい。多結晶グラフェン壁構造体中の単独結晶粒でも、元の微結晶のLaおよびLbよりも著しく大きい長さまたは幅を有する。
【0128】
(5)グラフェン面の大きな長さおよび幅は、フォーム壁が高い機械的強度および弾性を有することを可能にする。比較実験において、この特徴がなければ(すなわちグラフェン面の化学的同化がない)、離散的グラフェンシートの集合体から構成される慣例的に製造されるグラフェンフォームは、非常に弱く、脆く、非弾性であり(可逆的でない変形)、フォーム壁が容易に潰れるかまたは破壊されることを我々は観察する。
【0129】
(6)これらの独特の化学組成(酸素またはフッ素含有量を含む)のために、モルホロジー、結晶構造(グラフェン間の間隔を含む)、および構造特徴(例えば高い配向度、わずかな欠陥、不完全な粒界、化学結合およびグラフェンシート間の間隙がないこと、ならびにグラフェン面の割り込みがほとんどないこと)、GO由来またはGF由来のグラフェンフォームは、著しい熱伝導率、電気導電率、機械的強度、および剛性(弾性率)の独特の組合せを有する。
【実施例】
【0130】
以下の実施例は、本発明を実施する最良の方式についていくつかの具体的な詳細を説明するために使用され、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0131】
実施例1:様々な発泡剤および細孔形成(気泡製造)方法
プラスチック加工の分野において、化学発泡剤を粉末またはペレットの形態でプラスチックペレット中に混合し、高めの温度で溶解させる。発泡剤の溶解のために特定される特定の温度を超えると、ガス反応生成物(通常窒素またはCO2)が生成され、それは発泡剤として作用する。しかしながら、化学発泡剤を液体でなく、固体である、グラフェン材料に溶解させることはできない。これは、化学発泡剤を利用して細孔またはセルをグラフェン材料中に生成する課題をもたらす。
【0132】
広範な実験の後、第1の熱処理温度がブローイング反応を活性化するのに十分であるときにほとんど任意の化学発泡剤(例えば粉末またはペレット形態の)を使用して、細孔または気泡をグラフェンの乾燥された層中に作ることができることを我々は発見した。化学発泡剤(粉末またはペレット)が液体媒体中に分散されて懸濁液中の第2の分散相になり(グラフェン材料のシートが第1の分散相である)、それを固体支持基材上に堆積させて湿潤層を形成することができる。次に、グラフェン材料のこの湿潤層を乾燥させ、熱処理して化学発泡剤を活性化させてもよい。化学発泡剤が活性化されて気泡が生成された後、得られた発泡グラフェン構造体は一般に、その後により高い熱処理温度が構造体に適用されるときにでも維持される。これは本当に、全く予想外である。
【0133】
化学発泡剤(CFA)は、熱分解したときにガスを放出する有機または無機化合物であり得る。中~高密度フォームを得るためにCFAが典型的に使用され、低密度フォームを得るために物理的発泡剤と共にしばしば使用される。CFAは、吸熱性または発熱性のどちらかに類別することができ、それはそれらが受ける分解のタイプを意味する。吸熱性タイプは分解したときにエネルギーを吸収し、典型的に二酸化炭素および湿分を放出し、他方、発熱性タイプは、分解したときにエネルギーを放出し、通常は窒素を生成する。発熱性発泡剤によって放出される全ガス発生量およびガス圧力はしばしば、吸熱性タイプの全ガス発生量およびガス圧力よりも高い。吸熱性CFAは一般的に、130~230℃(266~446°F)の範囲で分解することが知られており、他方、より一般的な発熱性発泡剤のいくつかは約200℃(392°F)で分解する。しかしながら、大抵の発熱性CFAの分解範囲は、特定の化合物の添加によって低下させることができる。CFAの活性化(分解)温度が我々の熱処理温度の範囲になる。適した化学発泡剤の例には、重炭酸ナトリウム(重曹)、ヒドラジン、ヒドラジド、アゾジカルボンアミド(発熱性化学発泡剤)、ニトロソ化合物(例えばN,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン)、ヒドラジン誘導体(例えば4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)およびヒドラゾジカルボンアミド)、および炭酸水素(例えば炭酸水素ナトリウム)が含まれる。これらは全てプラスチック工業において商業的に入手可能である。
【0134】
発泡プラスチックの製造において、フォーム押出または射出成形発泡の間に物理的発泡剤をプラスチック溶融液中に計量しながら供給するか、またはポリウレタンの発泡中に前駆体材料の1つに供給する。物理的発泡剤を使用して、固体状態である(溶融されない)、グラフェン材料中に細孔を作ることができることはこれまで知られていない。支持基材上にコートまたは流延される前に物理的発泡剤(例えばCO2またはN2)をグラフェン懸濁液のストリーム中に注入することができることを驚くべきことに我々は観察した。これは、液体媒体(例えば水および/またはアルコール)が除去されるときでも発泡構造体をもたらす。グラフェン材料の乾燥された層は、液体の除去および後続の熱処理の間に細孔または気泡の制御された量を維持することができる。
【0135】
技術的に実行可能な発泡剤には、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、イソブタン(C4H10)、シクロペンタン(C5H10)、イソペンタン(C5H12)、CFC-11(CFCI3)、HCFC-22(CHF2CI)、HCFC-142b(CF2CICH3)、およびHCFC-134a(CH2FCF3)が含まれる。しかしながら、発泡剤を選択するときに、環境安全は考慮すべき主要因である。モントリオール議定書および帰結される合意へのその影響は、フォームの製造業者に大きな課題を提起する。以前に適用されたクロロフルオロカーボンの有効な性質および簡単な取扱いにもかかわらず、それらのオゾン破壊係数(ODP)のためにこれらを禁止する世界的な合意があった。部分ハロゲン化クロロフルオロカーボンもまた環境上安全ではなく、このため多くの国々においてすでに禁止されている。別の選択肢はイソブタンおよびペンタンなどの炭化水素、ならびにCO2および窒素などのガスである。
【0136】
それらの規制された物質以外、上に列挙された全ての発泡剤が我々の実験において試験された。物理的発泡剤および化学発泡剤の両方について、懸濁液中に導入される発泡剤の量は、発泡剤対グラフェン材料の重量比として定義され、それは、典型的に0/1.0~1.0/1.0である。
【0137】
実施例2:離散的官能化GOシートおよびグラフェンフォームの調製
12μmの平均直径を有する細断した黒鉛繊維および天然黒鉛粒子を出発原料として別々に使用し、それを(化学インターカレートおよび酸化剤として)濃硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物中に浸漬して黒鉛層間化合物(GIC)を調製した。最初に出発原料を24時間の間80℃で真空炉内で乾燥させた。次いで、(4:1:0.05の重量比の)濃硫酸、発煙硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物を、適切な冷却および撹拌下で、繊維セグメントを含有する三首フラスコにゆっくりと添加した。5~16時間の反応後に、酸処理黒鉛繊維または天然黒鉛粒子を濾過し、溶液のpHレベルが6に達するまで脱イオン水で十分に洗浄した。一晩100℃で乾燥処理した後、得られた黒鉛層間化合物(GIC)または黒鉛酸化物繊維を水-アルコール中に再分散させてスラリーを形成した。
【0138】
1つの試料において、黒鉛酸化物繊維5グラムを15:85の比でアルコールおよび蒸留水からなるアルコール溶液2,000mlと混合してスラリー塊を得た。次いで、混合物スラリーを様々な長さの時間の間200Wの出力で超音波照射に供した。20分の音波処理の後、GO繊維を有効に剥離し、約23重量%~31重量%の酸素含有量を有する薄い酸化グラフェンシートに分離した。アンモニア水を得られた懸濁液の1つのポットに添加し、それをもう1時間超音波処理してNH2官能化酸化グラフェン(f-GO)を製造した。GOシートおよび官能化GOシートを別々に5%の重量分率に稀釈して所望の量のSi粒子(直径0.6~2.5μm)を懸濁液に添加した。別の基準で、水中の(触媒金属前駆体として)カルボン酸コバルトおよびカルボン酸マンガンの金属塩溶液を調製した。次に、金属塩溶液を発泡剤として2%の重曹と共にGO/Siまたはf-GO/Si懸濁液に添加して、混合物スラリーを形成した。得られたスラリーを2日間、一切の機械的撹乱なしに容器内に放置しておいた。
【0139】
次に、GO/Si/金属塩またはf-GO/Si/金属塩を含有する得られたスラリーをPETフィルム表面上にコンマコートした。GO/Si/金属塩またはf-GO/Si/金属塩の得られたコーティングフィルムは、液体の除去後に、100~800μmの厚さを有する。次に、フィルムを(H2およびN2の混合物中で)2時間500℃の初期熱処理温度を必要とする熱処理に供して、発泡構造物の形成およびSi粒子と細孔壁との両方の表面上へのCoまたはMnの堆積を可能にした。この後に、異なった試験体のために(Arガス雰囲気中で)800~1,200℃の第2の温度にフォームを暴露してSi粒子および細孔壁の両方からSiナノワイヤーの成長を引き起こした。
【0140】
実施例3:メソカーボンマイクロビード(MCMB)およびグラフェンフォームからの単一層グラフェンシートの調製
メソカーボンマイクロビード(MCMB)は、China Steel Chemical Co.(Kaohsiung,Taiwan)から供給された。この材料は、約2.24g/cm3の密度ならびに約16μmのメジアン粒度を有する。MCMB(10グラム)を48~96時間にわたって酸溶液(4:1:0.05の比の硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウム)でインターカレートした。反応の終了時に、混合物を脱イオン水中に流し込み、濾過した。インターカレートされたMCMBをHClの5%溶液中で繰り返して洗浄して硫酸イオンの大部分を除去した。次に、ろ液のpHが4.5以上になるまで試料を脱イオン水で繰り返して洗浄した。次に、スラリーを10~100分にわたって超音波処理に供してGO懸濁液を製造した。GOシートの大部分は、酸化処理が72時間を超えるときに単一層グラフェンであり、酸化時間が48~72時間であるときに2層または3層グラフェンであることをTEMおよび原子間力顕微鏡研究は示す。
【0141】
GOシートは、48~96時間の酸化処理時間の間約35重量%~47重量%の酸素の比率を含有する。GOシートは水中に懸濁された。Ni被覆Si粒子(1~6μmの直径)をGO懸濁液に添加した。流延の直前に化学発泡剤として重曹(5~20重量%)も懸濁液に添加した。次に、懸濁液をドクターブレードを使用してガラス表面上に流延して剪断応力を加え、GOシート配向を誘導した。いくつかの試料を流延したが、発泡剤を含有するものも含有しないものもある。液体を除去した後、得られたGOフィルムは、約10~500μmで変化し得る厚さを有する。
【0142】
次に、発泡剤を有する、または有さないGOフィルムのいくつかのシートを1~5時間の間80~500℃の初期(第1の)熱還元温度を必要とする熱処理に供した。この第1の熱処理はグラフェンフォームを生成した。次に、フォームを750~950℃の第2の温度に供し、グラフェンフォーム層の細孔内のSi粒子からのSiナノワイヤーの成長を可能にした。
【0143】
実施例4:純粋なグラフェンフォーム(0%の酸素)の調製
GOシートの高い欠陥群が単独グラフェン面の伝導率を低下させるように作用することを認識して、純粋なグラフェンシート(酸化されないおよび酸素を含有しない、ハロゲン化されないおよびハロゲンを含有しない等々)の使用はより高い熱伝導率を有するグラフェンフォームをもたらすことができるかどうかを我々は調べることにした。純粋なグラフェンシートは、直接超音波処理または液相製造プロセスを使用して製造された。
【0144】
典型的な手順において、約20μm以下のサイズに微粉砕された5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(DuPont製のZonyl(登録商標)FSO、分散助剤0.1重量%を含有する)中に分散させて懸濁液を得た。85Wの超音波エネルギーレベル(BransonS450ウルトラソニケーター)を15分~2時間にわたってグラフェンシートの剥離、分離、および粉砕のために使用した。得られたグラフェンシートは、少しも酸化されておらず酸素を含有せず比較的欠陥がない純粋なグラフェンである。他の非炭素元素は実質的に存在しない。
【0145】
Si粒子および/または様々なグラフェンシート(純粋なグラフェン、RGO、およびGO)上への金属触媒(例えばNi、Ag、およびNi/Ag混合物)の堆積のためにスパッタリングを使用した。
【0146】
様々な量(グラフェン材料に対して1重量%~30重量%)の化学発泡剤(chemical bowing agents)(N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミンまたは4.4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)および金属被覆Si粒子を純粋なグラフェンシートと界面活性剤とを含有する懸濁液に添加した。次に、懸濁液をPETフィルム表面上にスロットダイ被覆し、それはグラフェンシートの剪断応力-誘起配向を含む。得られたグラフェン-Siフィルムは、液体の除去後に、約100~750μmの厚さを有する。
【0147】
次に、グラフェンフィルムを1~5時間の間80~1,500℃の初期(第1の)温度を含む熱処理に供し、それによってグラフェンフォーム層が製造される。次に、純粋なフォーム試料のいくつかを700~2,500℃の第2の温度の熱処理に供して、Si粒子からのSiナノワイヤーの成長を引き起こす。
【0148】
実施例4-aおよび比較例4-b:純粋なグラフェンフォームで保護されたアノード対先行技術の純粋なグラフェン紙/フィルムで保護されたアノード
別々に、Si粒子65重量%(+化学発泡剤5重量%)を含有するグラフェンフィルムを流延し、1,500℃まで熱処理して、グラフェンフォームで保護されたアノード活物質の層を得た。比較目的のために、Siナノワイヤー65重量%を含有するグラフェンフィルム(紙)(発泡剤を全く有さない)を流延し、1,500℃まで熱処理して、グラフェンで保護されたアノード活物質の層を得た。次に、ハーフセル構成において対向電極としてリチウム金属を使用してこれらの2つのアノード層のアノード比容量を評価した。電極材料として純粋なグラフェンフォームで保護されたSiを有するリチウムバッテリーの比容量値および純粋なグラフェン-Si混合物の比容量値は、充電-放電サイクル数の関数としてプロットされる。これらの結果は、Siナノワイヤーによって占められるそれらの細孔と共に小さな細孔を有する本発明のグラフェンフォームは、より安定な繰り返し安定性を有するリチウムバッテリーを提供することを明らかに示す。
【0149】
比較例3/4-b:Niフォームテンプレート上のCVDグラフェンフォーム
手順は、公開文献:Chen,Z.et al.,“Three-dimensional flexible and conductive interconnected graphene networks grown by chemical vapor deposition,”Nat. Mater. 10, 424-428(2011)に開示された手順から転用された。ニッケルフォーム、ニッケルの相互接続3D足場を有する多孔性構造体が、グラフェンフォームの成長のためのテンプレートとして選択された。簡単に言えば、周囲圧力下で1,000℃においてCH4を分解することによって炭素をニッケルフォーム中に導入し、次に、グラフェンフィルムをニッケルフォームの表面上に堆積させた。ニッケルとグラフェンとの間の熱膨脹率の差のために、波皺および皺がグラフェンフィルム上に形成された。グラフェンフォームを回収する(分離する)ために、Niフレームをエッチングにより除去しなければならない。高温HCl(またはFeCl3)溶液によってニッケル骨格をエッチングにより除去する前に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の薄層を支持体としてグラフェンフィルムの表面上に堆積させてニッケルエッチングの間にグラフェン網目構造が潰れないようにした。高温アセトンによってPMMA層を注意深く除去した後、脆いグラフェンフォーム試料が得られた。PMMA支持体層の使用は、グラフェンフォームの自立フィルムを作製するために重要である。PMMA支持体層を使用しない場合ひどく歪んだ変形したグラフェンフォーム試料だけが得られた。これは、環境に優しくなくスケーラブルでない時間のかかる方法である。
【0150】
比較例3/4-c:ピッチ系炭素フォームからの従来の黒鉛フォーム
ピッチ粉末、粒体、またはペレットをフォームの所望の最終形状を有するアルミニウム型内に置く。三菱ARA-24メソフェーズピッチを利用した。試料を1トール未満に脱気し、次に約300℃の温度に加熱した。この時点で、真空を窒素ブランケットに解放し、次に1,000psiまでの圧力を適用した。次に、システムの温度を800℃に上げた。これは、2℃/分の速度で行われた。温度を少なくとも15分間保持して浸漬を達成し、次に炉の電源を切り、約2psi/分の速度で圧力を解放しながら約1.5℃/分の速度で室温に冷却した。最終フォーム温度は630℃および800℃であった。冷却サイクルの間に、圧力を大気条件まで徐々に解放した。次に、フォームを窒素ブランケット下で1050℃に熱処理し(炭化)、そして次に、別個の送りでアルゴン中黒鉛るつぼ内で2500℃および2800℃に加熱処理(黒鉛化)した。
【0151】
この従来の黒鉛フォームからの試料を熱伝導率を測定するための試験体に機械加工した。黒鉛フォームのバルク熱伝導率は、67W/mK~151W/mKの範囲であるとわかった。試料の密度は0.31~0.61g/cm3であった。材料の多孔度レベルが考慮されるとき、メソフェーズピッチ由来フォームの比熱伝導率は約67/0.31=216および151/0.61=247.5W/mK/比重(または/物理的密度)である。対照的に、本発明のフォームの比熱伝導率は典型的に>>250W/mK/比重である。
【0152】
0.51g/cm3の平均密度を有する従来の黒鉛フォーム試料の圧縮強さは測定すると3.6Mpaであり、圧縮弾性率は測定すると74MPaであった。それと対照して、同等の物理的密度を有するGOに由来する本発明のグラフェンフォーム試料の圧縮強さおよび圧縮弾性率はそれぞれ5.7MPaおよび103Mpaである。
【0153】
図5(A)および
図6(A)には、GO懸濁液由来フォーム(実施例3)、メソフェーズピッチ由来黒鉛フォーム(比較例3/4-b)、およびNiフォームテンプレート支援CVDグラフェンフォーム(比較例3/4-c)の熱伝導率の値対比重が示されている。これらのデータは、以下の予想外の結果を明らかに示す:
1)本発明の方法によって製造された、GO由来のグラフェンフォームは、同じ物理的密度が与えられたとすると、メソフェーズピッチ由来の黒鉛フォームおよびNiフォームテンプレート支援CVDグラフェンの両方と比較したとき著しく高い熱伝導率を示す。電極のより高い熱伝導率および電気導電率はリチウムイオンバッテリーの電気化学挙動に大いに有益である。
2)CVDグラフェンは、決して酸化を受けず且つ酸化グラフェン(GO)と比較してより高い熱伝導率を示した本質的に純粋なグラフェンであるという見解を考慮してこれは全く驚くべきことである。従来の熱還元または化学還元方法によって酸素含有官能基が除去された後でもGOは非常に欠陥がある(高い欠陥群、したがって、低い伝導率を有する)ことが知られている。ここにおいて製造されたGO由来のグラフェンフォームを使用して観察されたこれらの非常に高い熱伝導率の値は、我々には非常に驚くべきものである。良い放熱能力は、再充電可能リチウムイオンバッテリーに伴なう最も重要な問題である熱暴走および爆発の防止に不可欠である。
3)
図6(A)は、曲線(異なったセグメントにおいてほぼ直線)の傾きに基づいて全ての3つの黒鉛フォーム材料について比導電率(導電率の値、W/mKを物理的密度の値、g/cm
3で割った値)の計算を可能にする比重の値の同等の範囲にわたる熱伝導率の値を示す。これらの比導電率の値は、各々のフォーム中に固体黒鉛材料の同じ量が与えられたとするとこれらの3つのタイプの黒鉛フォームの熱伝導率の値の公正な比較を可能にする。これらのデータは、フォーム材料の固体部分の固有導電率の指標を提供する。これらのデータは明らかに、固体材料の同じ量が与えられたとすると、本発明のGO由来のフォームは本質的に、最も伝導性であることを示し、高レベルの黒鉛結晶完成(より大きな結晶寸法、より少ない粒界およびその他の欠陥、より良い結晶配向等々)を反映する。これもまた予想外である。
4)本発明のGO由来のおよびGF由来のフォームの比導電率の値は、単位比重当たり250~500W/mKの値を示すが、他の2つのフォーム材料の比導電率の値は典型的に単位比重当たり250W/mKよりも低い。
【0154】
図8に記載されるのは、一連のGO由来のグラフェンフォームおよび一連の純粋なグラフェン由来のフォームの熱伝導率のデータであり、両方とも最終(最高)熱処理温度についてプロットされる。これらのデータは、GOフォームの熱伝導率は最終熱処理温度(HTT)に非常に影響されやすいことを示す。HTTが非常に低いときでも、明らかにいくつかのタイプのグラフェンの同化または結晶完成反応がすでに活性化されている。熱伝導率は最終HTTと共に単調に増加する。対照的に、約2,500℃の最終HTTが達せられるまで純粋なグラフェンフォームの熱伝導率が比較的一定のままであり、黒鉛結晶の再結晶化の開始および完成の信号を送る。比較的低いHTTにおいてグラフェンシートの化学連結を可能にする、GO中の-COOHなどの官能基は純粋なグラフェン中に存在しない。1,250℃しかないHTTによって、GOシートが同化して、粒界およびその他の欠陥が低減された著しくより大きなグラフェンシートを形成することができる。GOシートは純粋なグラフェンよりも本質的に欠陥があるけれども、本発明の方法は、GOシートが純粋なグラフェンフォームよりも優れているグラフェンフォームを形成することを可能にする。これは別の予想外の結果である。
【0155】
実施例5:天然黒鉛からの酸化グラフェン(GO)懸濁液の調製およびGOフォームの後続の調製
黒鉛酸化物は、黒鉛フレークを4:1:0.05の比の硫酸、硝酸ナトリウム、および過マンガン酸カリウムからなる酸化剤液体で30℃で酸化することによって調製された。天然黒鉛フレーク(14μmの粒度)が48時間にわたって酸化剤混合物液体中に浸漬および分散されるとき、懸濁液またはスラリーは光学的に不透明且つ暗くみえ、そのままである。48時間後に、反応塊を水で3回洗浄してpH価を少なくとも3.0に調節した。次に、最終的な量の水を添加して一連のGO-水懸濁液を調製した。GOシートが>3%および典型的に5%~15%の重量分率を占めるとき、GOシートが液晶相を形成することを我々は観察した。
【0156】
スラリーコーターでGO懸濁液(金属被覆Si粒子を含有する)をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に分配および被覆し、液体媒体をコーティングフィルムから除去することによって、乾燥された酸化グラフェンの薄いフィルムが得られた。次に、いくつかのGOフィルム試料を異なった熱処理に供し、それらは典型的に、1~10時間の間100℃~500℃の第1の温度、および0.5~5時間の間750~1,500℃の第2の温度の熱還元処理と、その後の、制御された冷却手順とを含む。圧縮応力下で同様に、これらの熱処理を使用して、GOフィルムをグラフェンフォームに変化させ、Siナノワイヤーをフォーム細孔内に成長させた。
【0157】
比較例5-a:熱水還元酸化グラフェンからのグラフェンフォーム
比較のために、自己組織化グラフェンヒドロゲル(SGH)試料を一段階熱水法によって調製した。典型的な手順において、SGHは、12時間にわたって180℃のテフロン内張りオートクレーブ内に封止された2mg/mLの均質な酸化グラフェン(GO)水性分散体を加熱することによって容易に調製することができる。約2.6%(重量による)のグラフェンシートと97.4%の水とを含有するSGHは、約5×10-3S/cmの電気導電率を有する。乾燥させて1,500℃で熱処理したとき、得られたグラフェンフォームは約1.5×10-1S/cmの電気導電率を示し、それは同じ温度で熱処理することによって製造された本発明のグラフェンフォームの電気導電率の1/2未満である。
【0158】
比較例5-b:還元酸化グラフェンフォームのプラスチックビードテンプレート支援形成
マクロ多孔性気泡発生グラフェンフィルム(MGF)のための硬質テンプレート指示された秩序化組立体が作製された。単一分散ポリメチルメタクリレート(PMMA)ラテックス球が硬質テンプレートとして使用された。実施例5において作製されたGO液晶はPMMA球懸濁液と混合された。次に、後続の真空濾過を実施してPMMA球とGOシートとの組立体を作製するが、GOシートはPMMAビードの周りに巻き付けられている。複合フィルムをフィルターから剥離し、空気乾燥させ、800℃においてか焼してPMMAテンプレートを除去し、同時にGOをRGOに熱還元した。灰色の自立PMMA/GOフィルムはか焼後に黒くなったが、グラフェンフィルムは多孔性のままだった。
【0159】
図5(B)および
図6(B)は、本発明のGO懸濁液由来のフォーム、犠牲プラスチックビードテンプレート支援法によって製造されたGOフォーム、および熱水還元GOグラフェンフォームの熱伝導率の値を示す。最も驚くべきことに、同じ出発GOシートが与えられたとすると、本発明の方法は、最も高性能のグラフェンフォームを製造する。また、
図5(C)にまとめられた電気導電率データは、この結論と一致している。固体材料の同じ量が与えられたとすると、(応力誘起配向を有する)本発明のGO懸濁液の堆積および後続の熱処理は、本質的に最も伝導性であり、最も高レベルの黒鉛結晶完成(細孔壁に沿って、より大きな結晶寸法、より少ない粒界およびその他の欠陥、より良い結晶配向等々。)を反映するグラフェンフォームを生じるという見解をこれらのデータはさらに支持する。
【0160】
黒鉛フォームまたはグラフェンフォームを製造する全ての先行技術の方法は、所期の用途の大部分のためにわずか約0.2~0.6g/cm3の範囲の物理的密度を有し、細孔径が典型的に非常に大きい(例えば20~300μm)マクロ多孔性フォームを提供すると思われることを注記しておくべきである。対照的に、本発明は、最低0.01g/cm3および最高1.7g/cm3もあり得る密度を有するグラフェンフォームを生成する方法を提供する。細孔径は、非炭素元素の含有量および使用される発泡剤の量/タイプに応じて、メソスケール(Siナノワイヤーの局部体積膨脹を緩衝するために、2~50nm)からマクロスケール(Si粒子を収容するために、1~50μm)までの間で変化し得る。様々なタイプのグラフェンフォームを設計する際のこのレベルの柔軟性および多角性は、先行技術のいずれの方法によっても前例がなく、他に並ぶものがない。
【0161】
実施例6:フッ化グラフェンからのグラフェンフォームの調製
GFを製造するためにいくつかの方法が使用されたが、本明細書において実施例としてただ1つの方法が説明される。典型的な手順において、高度剥離黒鉛(HEG)は、インターカレートされた化合物С2F・xClF3から調製された。HEGを三フッ化塩素の蒸気によってさらにフッ素化して、フッ素化高度剥離黒鉛(FHEG)をもたらした。予備冷却されたテフロン反応器に20~30mLの液体予備冷却ClF3を入れ、反応器を閉じて、液体窒素温度に冷却した。次に、1g以下のHEGをClF3ガスが入っていく孔を有する容器内に置き、反応器内に配置した。7~10日で、近似式C2Fを有する灰色-ベージュ色の生成物が形成された。
【0162】
その後、少量のFHEG(約0.5mg)を20~30mLの有機溶剤(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、イソアミルアルコール)と混合し、30分間にわたって超音波処理(280W)に供し、均質な黄色がかった分散体を形成した。5分の音波処理は比較的均質な分散体を得るために十分であったが、より長い音波処理時間はより良い安定性を確実にした。溶剤を除去したガラス表面上に流延したとき、分散体はガラス表面上に形成された茶色がかったフィルムになった。GFフィルムが熱処理されたとき、フッ素が、フィルム中に細孔を生成するのに役立つガスとして放出された。いくつかの試料において、物理的発泡剤(N2ガス)が、流延される間に湿潤GFフィルム中に注入された。これらの試料は、ずっと高い細孔体積またはずっと低いフォーム密度を示す。発泡剤を使用しなければ、得られたフッ化グラフェンフォームは、0.35~1.38g/cm3の物理的密度を示す。発泡剤が使用されるとき(0.5/1~0.05/1の発泡剤/GF重量比)、0.02~0.35g/cm3の密度が得られた。典型的なフッ素含有量は、必要とされる最終熱処理温度に応じて、0.001%(HTT=2,500℃)~4.7%(HTT=350℃)である。
【0163】
図7は、比重の関数としてGOおよびGF(フッ化グラフェン)それぞれから得られるグラフェンフォーム試料の熱伝導率の値の比較を示す。GOフォームと比較して、GFフォームは、同等の比重の値においてより高い熱伝導率の値を示すと思われる。両方とも、すばらしい熱伝導能力を与え、全ての公知の発泡材料のなかで最良である。
【0164】
実施例7:窒素化グラフェンからのグラフェンフォームの調製
実施例2において合成された酸化グラフェン(GO)を異なった比率の尿素と共に微粉砕し、ペレット化された混合物をマイクロ波反応器(900W)内で30秒間加熱した。生成物を脱イオン水で数回洗浄し、真空乾燥させた。この方法において酸化グラフェンは同時に、窒素で還元およびドープされる。1:0.5、1:1および1:2のグラフェン:尿素の質量比によって得られた生成物はそれぞれNGO-1、NGO-2およびNGO-3と呼ばれ、これらの試料の窒素含有量はそれぞれ、元素分析によって確認されるとき14.7、18.2および17.5wt%であった。これらの窒素化グラフェンシートは、水中に分散可能なままである。次に、得られた懸濁液を流延し、乾燥させ、初期に第1の熱処理温度として200~350℃で熱処理し、その後1,500℃の第2の温度で処理した。得られた窒素化グラフェンフォームは、0.45~1.28g/cm3の物理的密度を示す。フォームの典型的な窒素分は、必要とされる最終熱処理温度に応じて0.01%(HTT=1,500℃)~5.3%(HTT=350℃)である。
【0165】
実施例8:様々なグラフェンフォームおよび従来の黒鉛フォームの特性決定
いくつかの乾燥されたGO層、および熱処理の異なった段階の熱処理フィルムの内部構造(結晶構造および配向)がX線回折を使用して調査された。天然黒鉛のX線回折曲線は典型的に、約2θ=26°のピークを示し、約0.3345nmのグラフェン間の間隔(d002)に相当する。酸化したとき、得られたGOは、約2θ=12°のX線回折ピークを示し、それは約0.7nmのグラフェン間の間隔(d002)に相当する。150℃での或る熱処理によって、乾燥されたGOコンパクトは、22°を中心とするハンプの形成を示し、化学連結および秩序化プロセスの開始のためにグラフェン間の間隔を減少させるプロセスをそれが開始したことを示す。1時間にわたる2,500℃の熱処理温度によってd002間隔は、黒鉛単結晶の0.3354nmに近い、約0.336に減少した。
【0166】
1時間にわたる2,750℃の熱処理温度によって、d002間隔は、黒鉛単結晶のd002間隔に等しい、約0.3354nmに減少する。さらに、高強度を有する第2の回折ピークは、(004)面からのX線回折に相当する2θ=55°に出現する。同じ回折曲線上の(002)強度に対する(004)ピーク強度、またはI(004)/I(002)比は、グラフェン面の結晶完成度および好ましい配向の良い表示である。2,800℃よりも低い温度で熱処理された全ての黒鉛材料について(004)ピークは存在していないかまたは比較的弱いかどちらかであり、I(004)/I(002)比<0.1である。3,000~3,250℃で熱処理された黒鉛材料(例えば、高度配向熱分解黒鉛、HOPG)のI(004)/I(002)比は、0.2~0.5の範囲である。対照的に、1時間にわたって2,750℃の最終HTTで調製されたグラフェンフォームは、0.78のI(004)/I(002)比および0.21のモザイクスプレッド値を示し、良い程度の好ましい配向を有するほぼ完全なグラフェン単結晶を示す。
【0167】
「モザイクスプレッド」値は、X線回折強度曲線の(002)反射の半値全幅から得られる。秩序化度のためのこの指標は、黒鉛またはグラフェン結晶サイズ(または結晶粒径)、粒界およびその他の欠陥の量、および好ましい結晶粒配向度を特性決定する。黒鉛のほぼ完全な単結晶は、0.2~0.4のモザイクスプレッド値を有することを特性とする。我々のグラフェンフォームのいくつかは、2,500℃以上の最終熱処理温度を使用して製造されるときに0.2~0.4のこの範囲のモザイクスプレッド値を有する。
【0168】
広い温度範囲にわたって様々な温度で熱処理することによって得られた、GO懸濁液由来の試料の両方のグラフェン間の間隔の値を
図9(A)にまとめる。GO懸濁液由来の単体グラフェン層の相当する酸素含有量の値が
図9(B)に示される。
【0169】
500℃しかない熱処理温度は細孔壁に沿うGOシートの平均グラフェン間間隔を0.4nm未満にするのに十分であり、天然黒鉛の平均グラフェン間間隔または黒鉛単結晶の平均グラフェン間間隔にますます近づいていることを注記しておくべきである。この方法の長所は、このGO懸濁液法によって、本来異なった黒鉛粒子またはグラフェンシートからの平面酸化グラフェン分子を再組織化、再配向、および化学的に同化して、全てのグラフェン面がいま横方向寸法においてより大きい(元の黒鉛粒子のグラフェン面の長さおよび幅よりも著しく大きい)統合構造を形成できたということである。可能性がある化学連結機構が
図4において説明される。これは、並外れた熱伝導率および電気導電率の値をもたらした。
【0170】
実施例9:様々な再充電可能リチウムバッテリーセルのサイクル安定性
リチウムイオンバッテリー産業において、バッテリーのサイクル寿命は必要とされる電気化学的形成後に測定される初期容量に基づいてバッテリーが容量の20%減衰を受ける充電-放電サイクル数として定義するのが慣例である。以下の表1において、グラフェンフォームで保護されたSiナノワイヤーの本発明のアノード層対他のタイプのアノード材料を特徴とする広範囲のバッテリーのサイクル寿命のデータが要約される。
【0171】
これらのデータは、本発明の以下の特別な特徴または利点をさらに裏づける:
(1)Si粒子およびグラフェンシートの両方が触媒金属で被覆される場合/時、得られたグラフェンフォームはより多数のさらにより薄いSiナノワイヤーを含有し、著しく改良されたバッテリー性能をもたらす。
(2)グラフェンフォームは、(Si膨張/収縮によって引き起こされる微粉化問題に対処することに加えて)アノード膨張/収縮問題を軽減するのに非常に有効である。アノード活物質によって占められていない細孔(Siを含有しない細孔)を含有するグラフェンフォームは、リチウムイオンバッテリーのサイクル安定性を高めるのに著しくいっそう有効である。
(3)官能化グラフェンフォーム(例えばフッ素化または窒素化グラフェン)もまた、Siナノワイヤーのための有効な保護体である。
【0172】
実施例11:グラフェンフォームの細孔内にSiナノワイヤーを含有するアノードを特徴とするリチウムイオンバッテリーの評価
電気化学試験のために、いくつかのタイプのアノードおよびカソードを作製した。例えば、層タイプのアノードは、フォームを(アノード集電体として)Cu箔のシートに対して単にロールプレスすることによって作製された。in situ成長したSiナノワイヤーを含有するいくつかのフォーム試料は、別個のCu箔集電体を使用せずにアノード電極として使用された。
【0173】
比較目的のために、スラリーコーティングもまた使用して、従来の電極を作製した。例えば、作業電極は、N-メチル-2-ピロリドン(pyrrolidinoe)(NMP)中に溶解された85重量%の活物質(Siナノワイヤー-グラフェン、7重量%のアセチレンブラック(Super-P)、および8重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF、5重量%の固形分)結合剤を混合することによって作製された。スラリーをCu箔上に被覆した後、電極を2時間の間真空中で120℃で乾燥させて、加圧前に溶媒を除去した。
【0174】
次に、電極をディスク(φ=12mm)に切断し、真空中で24時間の間100℃で乾燥させた。対向/参照電極としてリチウム金属、セパレーターとしてCelgard2400膜、およびエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合物(EC-DEC、1:1v/v)中に溶解された1MのLiPF6電解質溶液を有するCR2032(3V)コイン型セルを使用して電気化学測定を実施した。(簡単な混合物においてまたは細孔内に保護されたSiナノワイヤーを含有する本発明のグラフェンフォームにおいて)Si粒子とグラフェンシートとの簡単な混合物、金属被覆グラフェンシートからの助けを借りてまたは借りずにSi粒子から成長したSiナノワイヤーを含有する組成物など、様々なアノード材料組成物を評価した。セルの組立をアルゴン充填グローブボックス内で行なった。CV測定は、1mV/sの走査速度で電気化学ワークステーションを使用して実施された。また、グラフェン-Siナノワイヤーフォーム構造物の電気化学的性能は、LAND電気化学ワークステーションを使用して50~1,000mA/gの電流密度で定電流充電/放電サイクル繰り返しによって評価された。リン酸鉄リチウムおよび酸化コバルトリチウムカソードを使用するフルセルパウチ構成もまた作製され、試験された。
【0175】
図11において、サイクル数の関数としてプロットされるアノード比容量を用いて3つのリチウムイオンセルの充電/放電サイクル繰り返し試験の結果が示される。第1のバッテリーセルは、アノード活物質として細孔内に存在している元のSi粒子(平均直径=3.5μm)を含有する(しかしSiナノワイヤーは無い)グラフェンフォームのアノード層を含有する。第2のセルは、未被覆グラフェンシートから製造されるグラフェンフォームの細孔内に存在しているアノード活物質としてSiナノワイヤー(Ni金属被覆Si粒子から成長した、直径60~90nm)を含有する。第3のセルのアノードは、グラフェンフォームの細孔内のNi被覆Si粒子およびNi被覆グラフェンシートの両方から生じたSiナノワイヤー(直径5~20nm)を含有する。
【0176】
これらの結果は、Ni被覆Si粒子およびNi被覆グラフェンシートの両方から生じたSiナノワイヤーを含有するフォームが、全てのリチウムイオンセルの中で最も安定なサイクル繰り返し挙動を提供することを示す。(未被覆グラフェンシートからではなく、Ni金属被覆Si粒子だけから成長した)Siナノワイヤーを含有するグラフェンフォームの層は、安定な充電/放電サイクル応答を有するリチウムイオンセルを提供するのにそれほど有効ではない。しかしながら、この応答は、グラフェンフォーム構造物内に埋め込まれた元のミクロンスケールのSi粒子をベースとしたアノードによって達成され得るものよりもずっと良い。後者は、充電および放電が繰り返されるときに急速な容量減衰を受ける。相違は非常に顕著で且つ予想外である。
【0177】
図12は、3つのリチウムイオンセルの代表的なラゴーンプロットを示す:グラフェンフォーム構造物内のアノード活物質として元のSi粒子およびグラフェンシートを含有する(Siナノワイヤーは無い)第1のセル、グラフェンフォーム構造物内のNi金属被覆Si粒子および未被覆グラフェンシートから生じたSiナノワイヤーを含有する第2のセル、およびグラフェンフォーム構造物内のNi被覆Si粒子およびNi被覆グラフェンシートの両方から生じたSiナノワイヤーを含有する第3のセル。グラフェンフォーム内の金属被覆Si粒子および金属被覆グラフェンシート(細孔壁)の両方から生じた膨大な量の小直径Siナノワイヤーを含有するアノード活物質を特徴とするセルは、最も高いエネルギー密度および最も高い出力密度の両方を示す。352Wh/kgのセルエネルギー密度は、先行技術のリチウムイオンバッテリーの典型的に150~220Wh/kgよりも著しく高い。998W/kgの出力密度はまた、典型的に300~500W/kgよりもずっと高い。これらは驚くべきことであり高い利用価値がある。
【0178】
図13は、4つのリチウムイオンセルのサイクル繰り返し試験結果を示す:アノード活物質として元のSi粒子とグラフェンシートとの簡単な混合物(Siナノワイヤーは無い)を含有する第1のセル、Ni/Al金属被覆Si粒子から生じたSiナノワイヤーと未被覆グラフェンシートとの簡単な混合物(混合後にSiナノワイヤーがin situ成長した)を含有する第2のセル、Ni/Al被覆Si粒子およびNi/Al被覆グラフェンシートの両方から生じたSiナノワイヤーの簡単な混合物を含有する第3のセル、およびグラフェンフォーム内のNi/Al被覆Si粒子およびNi/Al被覆グラフェンシートの両方から生じたSiナノワイヤーを含有する第4のセル(フォーム形成後にSiナノワイヤーがin situ成長した)。これらの結果は、グラフェンフォームの細孔内にSiナノワイヤーを成長させる方法が、驚くべきことに、リチウムイオンバッテリーの最も安定なサイクル繰り返し挙動を提供することを示す。
【0179】
結論として、リチウムイオンバッテリーのための絶対的に新しい、新規な、予想外の、明白に区別される種類のアノード電極を我々は成功裏に開発した。このアノードは、グラフェンフォーム構造物の細孔内にin situ形成される高伝導性グラフェンフォーム保護Siナノワイヤーを含有する。細孔内にSiナノワイヤーを含有する、この新しい種類のグラフェンフォームの化学組成(酸素、フッ素、およびその他の非炭素元素の%)、構造(結晶完全性、結晶粒径、欠陥群等)、結晶配向性、モルホロジー、製造方法、および性質は全ての先行技術のアノード構造物とは根本的に異なり明白に区別される。本発明のグラフェンフォーム構造物は、任意の先行技術のアノード構造物と比較して高容量アノードにより高い熱伝導率、より高い電気導電率、最小の電極体積の変化、より有効なアノード保護能力、改良されたサイクル安定性、および著しくより高いエネルギー貯蔵能力を与える。