(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための、コンピュータにより実施される方法および携帯型装置、ならびにコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
A61B 5/145 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
A61B5/145
(21)【出願番号】P 2019543239
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2018053669
(87)【国際公開番号】W WO2018149872
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-12
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリンバーグ、イツァク
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-037588(JP,A)
【文献】特開2011-147784(JP,A)
【文献】特開2012-020158(JP,A)
【文献】特開2008-229330(JP,A)
【文献】特表2015-530889(JP,A)
【文献】特表2009-500744(JP,A)
【文献】特表2004-520898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0274592(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145 - 5/157
G06Q 50/22
G16H 10/00 -80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための、コンピュータにより実施される方法であって、
前記方法は、1つまたは複数のプロセッサが設けられ、表示装置(6)に接続されるデータ処理装置(4)にて、
それぞれが測定時における体液中のグルコースレベルを示す複数の第1のグルコースモニタリング信号を表す第1のグルコースモニタリングデータを受信することであって、前記第1のグルコースモニタリング信号は、持続グルコースモニタリングの第1のモニタリング期間に亘り、1つまたは複数のグルコース測定期間にて検出され、前記第1のモニタリング期間は、24時間より短い、または24時間に等しい、第1のグルコースモニタリングデータを受信することと、
前記第1のグルコースモニタリングデータから、第1の範囲の事象を判定することであって、前記第1の範囲の事象は、以下の、
前記第1のグルコースモニタリング信号が、グルコースレベル目標範囲の目標上限および目標下限を含むグルコースレベル目標範囲内のグルコースレベルを示す場合に、判定される正常グルコースレベルの事象、
前記第1のグルコースモニタリング信号が、前記目標上限よりも大きい上限グルコースレベルを上回るグルコースレベルを示す場合に、判定される高血糖の事象、および
前記第1のグルコースモニタリング信号が、前記目標下限よりも小さい下限グルコースレベルを下回るグルコースレベルを示す場合に、判定される低血糖の事象、
の群から選択される少なくとも1つの第1の範囲の事象を含む、第1の範囲の事象を判定することと、
前記少なくとも1つの第1の範囲の事象について、前記第1のモニタリング期間中に前記少なくとも1つの第1の範囲の事象が何度判定されたかを示す、第1の範囲の事象の総数を判定することと、
前記第1のモニタリング期間よりも時間的に短い第1の最小合計測定期間を設けることと、
前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達する場合、前記少なくとも1つの第1の範囲の事象について、前記第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表す第1の表示データを生成することと、
前記表示装置を通して前記第1の表示データを出力することと
を含む、
方法。
【請求項2】
前記第1のグルコースモニタリングデータから、複数の第1の範囲の事象を含む第1の範囲の事象を判定することと、
前記複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、前記複数の第1の範囲の事象のそれぞれが、第1のモニタリング期間中に何度判定されたかを示す、前記第1の範囲の事象の総数を判定することと、
前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達する場合、前記複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、前記第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表示することとを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の表示データを生成することは、前記少なくとも1つの第1の範囲の事象、または複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、前記第1の範囲の事象の総数を、単一のグラフィック要素による表示で表す第1の表示データを生成することを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の最小合計測定期間は、5分よりも長く、24時間よりも短い、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のモニタリング期間は、日付に割り当てられる1日の期間を表す24時間の期間に対応する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
それぞれが測定時点における血液試料中で測定される血中グルコースレベルに対応する1つまたは複数の第2のグルコースモニタリング信号を表す第2のグルコースモニタリングデータを受信することであって、前記1つまたは複数の第2のグルコースモニタリング信号は、血中グルコースモニタリングの第2のモニタリング期間中の1つまたは複数の時点にて検出され、前記第2のモニタリング期間は、24時間よりも短い、または24時間に等しい、第2のグルコースモニタリングデータを受信することと、
前記第2のグルコースモニタリングデータから、第2の範囲の事象を判定することであって、前記第2の範囲の事象は、以下の、
前記第
2のグルコースモニタリング信号が、前記目標上限よりも大きい上限グルコースレベルを上回るグルコースレベルを示す場合に、判定される高血糖の事象、および
前記第
2のグルコースモニタリング信号が、前記目標下限よりも小さい下限グルコースレベルを下回るグルコースレベルを示す場合に、判定される低血糖の事象、
の群から選択される少なくとも1つの第2の範囲の事象を含む、第2の範囲の事象を判定することと、
前記少なくとも1つの第2の範囲の事象について、前記第2のモニタリング期間中に前記少なくとも1つの第2の範囲の事象が何度判定されたかを示す、第2の範囲の事象の総数を判定することと、
前記少なくとも1つの第2の範囲の事象について、前記第2の範囲の事象の総数をさらなるグラフィック表示で表す第2の表示データを生成することと、
前記第1のグルコースモニタリング信号が検出される前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達しない場合、前記表示装置を通して前記第2の表示データを出力することと
をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の範囲の事象および/または
前記少なくとも1つの第2の範囲の事象が前記範囲の事象の1つとして判定されるために必要とされる期間を示す最小範囲事象期間を設けることと、
前記少なくとも1つの第1
の範囲の事象/
前記少なくとも1つの第2の範囲の事象が前記最小範囲事象期間に適合する場合、前記第1
のグルコースモニタリングデータ/第2のグルコースモニタリングデータから、前記少なくとも1つの第1
の範囲の事象/
前記少なくとも1つの第2の範囲の事象を判定することと
をさらに含む、請求項
6記載の方法。
【請求項8】
前記第1のグルコースモニタリングデータについて、前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で、日付に割り当てられる1日の期間を表す前記第1のモニタリング期間内の少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達することを判定すること、および/または
前記表示装置上に、前記日付を表す日付表示データと共に、第3の表示データを表示することであって、前記第3の表示データは、前記日付に割り当てられる前記1日の期間について、前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達することを示す、第3の表示データを表示すること
をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の範囲の事象の群は、前記第1のグルコースモニタリング信号が、前記下限グルコースレベルを上回り、かつ前記目標上限を下回るグルコースレベルを示す場合に、判定される中低の事象をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1の範囲の事象、または複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達する場合、それぞれが前記第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表す第1の表示データセットをさらに備え、前記第1の表示データセットのそれぞれは、日付に割り当てられる1日の期間を表す前記第1のモニタリング期間中の第1のグルコースモニタリングデータに基づき、前記第1の表示データセットは、前記表示装置を通して出力される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第2の範囲の事象、または複数の第2の範囲の事象のそれぞれについて、それぞれが
前記第2の範囲の事象の総数をさらなるグラフィック表示で表す第2の表示データセットをさらに備え、前記第2の表示データセットのそれぞれは、日付に割り当てられる1日の期間を表す第2のモニタリング期間中の第2のグルコースモニタリングデータに基づき、前記第2の表示データセットは、前記表示装置を通して出力される、請求項
6または7記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1の範囲の事象、または複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達する場合、それぞれが前記第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表す第1の表示データセットをさらに備え、前記第1の表示データセットのそれぞれは、日付に割り当てられる1日の期間を表す前記第1のモニタリング期間中の第1のグルコースモニタリングデータに基づき、前記第1の表示データセットは、前記表示装置を通して出力され、
前記少なくとも1つの第2の範囲の事象、または複数の第2の範囲の事象のそれぞれについて、それぞれが前記第2の範囲の事象の総数をさらなるグラフィック表示で表す第2の表示データセットをさらに備え、前記第2の表示データセットのそれぞれは、日付に割り当てられる1日の期間を表す第2のモニタリング期間中の第2のグルコースモニタリングデータに基づき、前記第2の表示データセットは、前記表示装置を通して出力され、
前記第1の表示データセットおよび
前記第2の表示データセットについて、各データセットが、日付に割り当てられる1日の期間を表すこと、および前記第1の表示データセットおよび第2の表示データセットを、前記表示装置を通して出力することをさらに含む、請求項
6または7記載の方法。
【請求項13】
リアルタイムで持続的に測定される第1のグルコースモニタリングデータが第1の期間内で受信されるたびに、以下の、
前記第1のグルコースモニタリングデータから、前記第1の範囲の事象を判定することと、
前記第1のグルコースモニタリングデータから、前記第1のモニタリング期間中に前記少なくとも1つの第1の範囲の事象が何度判定されたかを示す、前記第1の範囲の事象の総数を判定することと、
前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達する場合、前記第1の範囲の事象の総数を前記グラフィック表示で表す前記第1の表示データを生成することと
を実行および更新することを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための携帯型装置であって、前記携帯型装置は、1つまたは複数のプロセッサが設けられるデータ処理装置(4)および表示装置(6)を備え、
前記データ処理装置(4)は、
それぞれが測定時における体液中のグルコースレベルを示す複数の第1のグルコースモニタリング信号を表す第1のグルコースモニタリングデータを受信することであって、前記第1のグルコースモニタリング信号は、持続グルコースモニタリングの第1のモニタリング期間に亘り、1つまたは複数のグルコース測定期間にて検出され、前記第1のモニタリング期間は、24時間より短い、または24時間に等しい、第1のグルコースモニタリングデータを受信し、
前記第1のグルコースモニタリングデータから、第1の範囲の事象を判定することであって、前記第1の範囲の事象は、以下の、
前記第1のグルコースモニタリング信号が、グルコースレベル目標範囲の目標上限および目標下限を含むグルコースレベル目標範囲内のグルコースレベルを示す場合に、判定される正常グルコースレベルの事象、
前記第1のグルコースモニタリング信号が、前記目標上限よりも大きい上限グルコースレベルを上回るグルコースレベルを示す場合に、判定される高血糖の事象、および
前記第1のグルコースモニタリング信号が、前記目標下限よりも小さい下限グルコースレベルを下回るグルコースレベルを示す場合に、判定される低血糖の事象、
の群から選択される少なくとも1つの第1の範囲の事象を含む、第1の範囲の事象を判定し、
前記少なくとも1つの第1の範囲の事象について、第1のモニタリング期間中に前記少なくとも1つの第1の範囲の事象が何度判定されたかを示す、第1の範囲の事象の総数を判定し、
前記第1のモニタリング期間よりも時間的に短い第1の最小合計測定期間を設け、
前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達する場合、前記少なくとも1つの第1の範囲の事象について、前記第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表す第1の表示データを生成し、
前記表示装置を通して前記第1の表示データを出力するように
構成される、
携帯型装置。
【請求項15】
1つまたは複数のプロセッサを有し、表示装置(6)に接続されるデータ処理装置(4)に搭載されると、
前記データ処理装置(4)を、
それぞれが測定時における体液中のグルコースレベルを示す複数の第1のグルコースモニタリング信号を表す第1のグルコースモニタリングデータを受信することであって、前記第1のグルコースモニタリング信号は、持続グルコースモニタリングの第1のモニタリング期間に亘り、1つまたは複数のグルコース測定期間にて検出され、前記第1のモニタリング期間は、24時間より短い、または24時間に等しい、第1のグルコースモニタリングデータを受信し、
前記第1のグルコースモニタリングデータから、第1の範囲の事象を判定することであって、前記第1の範囲の事象は、以下の、
前記第1のグルコースモニタリング信号が、グルコースレベル目標範囲の目標上限および目標下限を含むグルコースレベル目標範囲内のグルコースレベルを示す場合に、判定される正常グルコースレベルの事象、
前記第1のグルコースモニタリング信号が、前記目標上限よりも大きい上限グルコースレベルを上回るグルコースレベルを示す場合に、判定される高血糖の事象、および
前記第1のグルコースモニタリング信号が、前記目標下限よりも小さい下限グルコースレベルを下回るグルコースレベルを示す場合に、判定される低血糖の事象、
の群から選択される少なくとも1つの第1の範囲の事象を含む、第1の範囲の事象を判定し、
前記少なくとも1つの第1の範囲の事象について、前記第1のモニタリング期間中に前記少なくとも1つの第1の範囲の事象が何度判定されたかを示す、第1の範囲の事象の総数を判定し、
前記第1のモニタリング期間よりも時間的に短い第1の最小合計測定期間を設け、
前記1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも前記第1の最小合計測定期間に達する場合、前記少なくとも1つの第1の範囲の事象について、前記第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表す第1の表示データを生成し、
前記第1の表示データを、前記表示装置を通して出力するように
構成させるプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための、コンピュータにより実施される方法および携帯型装置、ならびにコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコースモニタリングは、糖尿病を患う人が疾患を管理し、その関連の問題を回避することに役立つ。人は、グルコースモニタリングの結果を用いて、食事、身体活動、および薬物治療に関する決定を行うことができる。グルコースレベルを確認する一般的な方法は、非持続モニタリングを行うことである。そのような確認は、通常、自動穿刺装置を用いて指先を突いて、血液試料を取得し、そして、グルコース計を使用して血液試料のグルコースレベルを測定することを伴う。そのようなモニタリングは、スポットモニタリングとも呼称されることがある。
【0003】
代替として、または追加して、持続グルコースモニタリング(CGM)が適用されてもよい。CGMのためのシステムは、グルコースレベルを確認するために、皮下に挿入される身体センサを使用し得る。センサは、所定の位置に数日から数週間留まり、そして交換されなければならない。送信機が、グルコースレベルを示す分析物値または分析物レベルに関する情報を(たとえば、無線データ転送により)センサからモニタ装置へと送信する。ユーザは、グルコース計を用いて血液試料を確認して、装置を較正することができる。
【0004】
糖尿病を患う患者は、慢性的なDCを診断するため、または療法を最適化するために、多くの収集を行うように求められることがある。たとえば、糖尿病患者は、患者の生活様式に応じて起こる様々なイベントと同時にグルコースレベルを測定することがある。イベントは、慢性的なDCのバイオマーカまたは療法の最適化に相互に関連してもしなくてもよい、または慢性的なDCのバイオマーカまたは療法の最適化に影響を及ぼしても及ぼさなくてもよい。しかし、慢性的なDCのバイオマーカにおいて、イベント間の相関関係を識別することは困難となり得る。グルコースデータとイベントとの相関関係を視覚化するために、方法およびシステムが提案されている。
【0005】
特許文献1は、報告に利用される様々な閾値パラメータを選択する糖尿病管理システムに言及する。食事イベント前時間枠のために、第1の低閾値グルコース読み出し値および第1の高閾値グルコース読み出し値が選択される。食事イベント後時間枠のために、第2の低閾値グルコース読み出し値および第2の高閾値グルコース読み出し値が選択される。閾値読み出し値は、データベースに記憶される。糖尿病データ管理システムは、食事イベント周辺のグルコースの挙動を分析する。システムは、ある期間の複数のグルコース読み出し値を受信し、第1の食事イベントについて食前分析期間として第1の時間範囲を受信し、第1の食事イベントについて食後分析期間として第2の時間範囲を受信する。システムは、食前分析期間、食後分析期間を強調し、その期間の複数のグルコース読み出し値を表示するグラフを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2012/059673号明細書
【発明の概要】
【0007】
体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための改良された技術を提供することが目的である。目的によると、グルコースモニタリング信号の不正確な分析が回避される。
【0008】
さらなる目的によると、技術は、ユーザに、ユーザの血糖状態に対し単純かつ効率的な指示を与えるための要約情報を提供するために、持続的な、準リアルタイムモニタリングデータを分析する単純かつ効率的な方法を提供する。
【0009】
体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための、コンピュータにより実施される方法が、請求項1に従い提供される。さらに、体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための携帯型装置、および非一時的コンピュータ可読媒体が、それぞれ請求項13および14に従い提供される。代替の実施形態が、従属請求項に開示される。
【0010】
一態様によると、体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための、コンピュータにより実施される方法が提供される。方法は、1つまたは複数のプロセッサが設けられ、表示装置に接続されるデータ処理装置にて、それぞれが測定時における体液中のグルコースレベルを示す複数の第1のグルコースモニタリング信号を表す第1のグルコースモニタリングデータを受信することであって、第1のグルコースモニタリング信号は、持続グルコースモニタリングの第1のモニタリング期間に亘り、1つまたは複数のグルコース測定期間にて検出され、第1のモニタリング期間は、24時間より短い、または24時間に等しい、第1のグルコースモニタリングデータを受信することと、第1のグルコースモニタリングデータから第1の範囲の事象(range event)を判定することであって、第1の範囲の事象は、以下の、
-第1のグルコースモニタリング信号が、グルコースレベル目標範囲の目標上限および目標下限を含むグルコースレベル目標範囲内のグルコースレベルを示す場合に、判定される正常グルコースレベルの事象、
-第1のグルコースモニタリング信号が、目標上限よりも大きい上限グルコースレベルを上回るグルコースレベルを示す場合に、判定される高血糖の事象、および
-第1のグルコースモニタリング信号が、目標下限よりも小さい下限グルコースレベルを下回るグルコースレベルを示す場合に、判定される低血糖の事象、
の群から選択される少なくとも1つの第1の範囲の事象を含む、第1の範囲の事象を判定することと、を含む。
【0011】
方法は、少なくとも1つの第1の範囲の事象について、第1のモニタリング期間中に少なくとも1つの第1の範囲の事象が何度判定されたかを示す、第1の範囲の事象の総数を判定することと、第1のモニタリング期間よりも時間的に短い第1の最小合計測定期間を設けることと、1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達する場合、少なくとも1つの第1の範囲の事象について、第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表す第1の表示データを生成することと、表示装置を通して第1の表示データを出力することとをさらに含む。
【0012】
さらなる態様によると、体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための携帯型装置が提供される。携帯型装置は、1つまたは複数のプロセッサが設けられるデータ処理装置と、表示装置とを備える。データ処理装置は、
それぞれが測定時における体液中のグルコースレベルを示す複数の第1のグルコースモニタリング信号を表す第1のグルコースモニタリングデータを受信することであって、第1のグルコースモニタリング信号は、持続グルコースモニタリングの第1のモニタリング期間に亘り、1つまたは複数のグルコース測定期間にて検出され、第1のモニタリング期間は、24時間より短い、または24時間に等しい、第1のグルコースモニタリングデータを受信し、
第1のグルコースモニタリングデータから、第1の範囲の事象を判定することあって、第1の範囲の事象は、以下の、
-第1のグルコースモニタリング信号が、グルコースレベル目標範囲の目標上限および目標下限を含むグルコースレベル目標範囲内のグルコースレベルを示す場合に、判定される正常グルコースレベルの事象、
-第1のグルコースモニタリング信号が、目標上限よりも大きい上限グルコースレベルを上回るグルコースレベルを示す場合に、判定される高血糖の事象、および
-第1のグルコースモニタリング信号が、目標下限よりも小さい下限グルコースレベルを下回るグルコースレベルを示す場合に、判定される低血糖の事象、
の群から選択される少なくとも1つの第1の範囲の事象を含む、第1の範囲の事象を判定するように
構成される。
【0013】
データ処理装置は、少なくとも1つの第1の範囲の事象について、第1のモニタリング期間中に少なくとも1つの第1の範囲の事象が何度判定されたかを示す、第1の範囲の事象の総数を判定し、第1のモニタリング期間よりも時間的に短い第1の最小合計測定期間を設け、1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達する場合、少なくとも1つの第1の範囲の事象について、第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表す第1の表示データを生成し、表示装置を通して第1の表示データを出力するようにさらに構成される。
【0014】
別の態様は、コンピュータプログラム製品に言及し、好ましくは記憶媒体に記憶され、携帯型装置上での動作中にグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析する方法を実行するように構成されるコンピュータプログラム製品に言及する。
【0015】
本開示の態様によると、持続的な、準リアルタイムモニタリングデータは、ユーザに、ユーザの血糖状態に対し単純かつ効率的な指示を与えるための要約情報を提供するために、単純かつ効率的な方法で分析され得る。さらに、単純かつ効率的な分析により、日常的に血糖管理の良い、悪いを容易に見分けることが可能であるため、ユーザへの動機づけツールとして機能することが可能になる。
【0016】
方法は、以下の、第1のグルコースモニタリングデータから、複数の第1の範囲の事象を含む第1の範囲の事象を判定することと、複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、複数の第1の範囲の事象のそれぞれが、第1のモニタリング期間中に何度判定されたかを示す、第1の範囲の事象の総数を判定することと、1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達する場合、複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、第1の範囲の事象の総数を、グラフィック表示で表示することとをさらに含んでもよい。
【0017】
第1の表示データの生成は、少なくとも1つの第1の範囲の事象、または複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、第1の範囲の事象の総数を、グラフィックバー表示で表す第1の表示データを生成することを含んでもよい。
【0018】
第1の表示データの生成は、少なくとも1つの第1の範囲の事象、または複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、第1の範囲の事象の総数を、グラフィック単一要素表示、たとえば、グラフィック単一バー表示で表す第1の表示データを生成することを含んでもよい。
【0019】
生成は、1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも2時間または18時間に達する場合、第1の表示データを生成することを含んでもよい。第1の最小合計測定期間は、5分よりも長く、24時間よりも短くてもよい。さらなる実施形態では、第1の最小合計測定期間は、第1の範囲の事象の総数の判定に対する十分な統計を可能にするために、2時間、5時間、8時間、10時間、12時間、14時間または18時間より長くてもよい。
【0020】
モニタリング期間は、24時間の期間を含んでもよい。第1のモニタリング期間は、1日の期間を決定してもよい。グラフィック表示は、1日の要約を表してもよい。第1のモニタリング期間は、日付に割り当てられる1日の期間を表す24時間の期間に対応してもよい。
【0021】
方法は、以下の、
それぞれが測定時点における血液試料中で測定される血中グルコースレベルに対応する1つまたは複数の第2のグルコースモニタリング信号を表す第2のグルコースモニタリングデータを受信することであって、1つまたは複数の第2のグルコースモニタリング信号は、血中グルコースモニタリングの第2のモニタリング期間中の1つまたは複数の時点にて検出され、第2のモニタリング期間は、24時間よりも短い、または24時間に等しい、第2のグルコースモニタリングデータを受信することと、
第2のグルコースモニタリングデータから、第2の範囲の事象を判定することであって、第2の範囲の事象は、以下の、
-第2のグルコースモニタリング信号が、目標上限よりも大きい上限グルコースレベルを上回るグルコースレベルを示す場合に、判定される高血糖の事象、および
-第2のグルコースモニタリング信号が、目標下限よりも小さい下限グルコースレベルを下回るグルコースレベルを示す場合に、判定される低血糖の事象、
の群から選択される少なくとも1つの第2の範囲の事象を含む、第2の範囲の事象を判定することと、
少なくとも1つの第2の範囲の事象について、第2のモニタリング期間中に少なくとも1つの第2の範囲の事象が何度判定されたかを示す、第2の範囲の事象の総数を判定することと、
少なくとも1つの第2の範囲の事象について、第2の範囲の事象の総数をさらなるグラフィック表示で表す第2の表示データを生成することと、
第1のグルコースモニタリング信号が検出される1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達しない場合、表示装置を通して第2の表示データを出力することと
をさらに含んでもよい。
【0022】
さらなるグラフィック表示は、グラフィック非バー表示であってもよい。概して、第2の表示データは、第1の表示データにより提供されるグラフィック要素とは異なるさらなるグラフィック要素を表してもよい。
【0023】
方法は、少なくとも1つの第1の範囲の事象および/または少なくとも1つの第2の範囲の事象が範囲の事象の1つとして判定されるために必要とされる期間を示す最小範囲事象期間を設けることと、少なくとも1つの第1/第2の範囲の事象が最小範囲事象期間に適合する場合、第1/第2のグルコースモニタリングデータから、少なくとも1つの第1/第2の範囲の事象を判定することとをさらに含んでもよい。たとえば、最小範囲事象期間は、5分であってもよく、それにより、ある範囲の事象は、少なくとも5分間のグルコースモニタリング信号中にその範囲の事象が存在すると判定される場合にのみ表示されることが規定される。グラフィック表示において、最小範囲事象期間は、最小グラフィック要素長さ、たとえば表示される合計グラフィック要素長さの5パーセントまたは10パーセントなどの、最小相対サブ要素長さで表されてもよい。グラフィックバー表示の場合、最小範囲事象期間は、最小バー要素長さ、たとえば、表示される全体バー長さの5パーセントまたは10パーセントの、最小相対サブバー長さにより表されてもよい。
【0024】
第1の範囲の事象の群は、第1のグルコースモニタリング信号が、下限グルコースレベルを上回り、かつ目標上限を下回るグルコースレベルを示す場合に、判定される中低の事象をさらに含んでもよい。
【0025】
少なくとも1つの第1の範囲の事象、または複数の第1の範囲の事象のそれぞれについて、1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達する場合、第1の表示データセットのそれぞれが、第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表してもよく、第1の表示データセットのそれぞれは、日付に割り当てられる1日の期間を表す第1のモニタリング期間中の第1のグルコースモニタリングデータに基づき、第1の表示データセットは、表示装置を通して出力される。グラフィック表示は、グラフィックバー表示であってもよい。
【0026】
少なくとも1つの第2の範囲の事象、または複数の第2の範囲の事象のそれぞれについて、第2の表示データセットのそれぞれが、第2の範囲の事象の総数をさらなるグラフィック表示で表してもよく、第2の表示データセットのそれぞれは、日付に割り当てられる1日の期間を表す第2のモニタリング期間中の第2のグルコースモニタリングデータに基づき、第2の表示データセットは、表示装置を通して出力される。さらなるグラフィック表示は、グラフィック非バー表示であってもよい。
【0027】
第1の表示データセットおよび第2の表示データセットについて、各データセットが、日付に割り当てられる1日の期間を表してもよく、第1の表示データセットおよび第2の表示データセットは、表示装置を通して出力される。
【0028】
リアルタイムで持続的に測定される第1のグルコースモニタリングデータが第1の期間内で受信されるたびに、第1のグルコースモニタリングデータから、第1の範囲の事象を判定することと、第1のグルコースモニタリングデータから、第1のモニタリング期間中に少なくとも1つの第1の範囲の事象が何度判定されたかを示す、第1の範囲の事象の総数を判定することと、1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達する場合、第1の範囲の事象の総数をグラフィック表示で表す第1の表示データを生成することと、が実行および更新されてもよい。グラフィック表示は、グラフィックバー表示であってもよい。
【0029】
方法は、以下の、第1のグルコースモニタリングデータについて、1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で、日付に割り当てられる1日の期間を表す第1のモニタリング期間内の少なくとも第1の最小合計測定期間に達することを判定することと、表示装置上に、日付を表す日付表示データと共に、第3の表示データを表示することであって、第3の表示データは、日付に割り当てられる1日の期間について、1つまたは複数のグルコース測定期間が合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達することを示す、第3の表示データを表示することをさらに含んでもよい。日付表示データは、日付の数値表示を示してもよい。第3の表示データは、表示装置上で、日付の数値表示の近傍に表示されるグラフィック要素を含んでもよい、またはグラフィック要素により表されてもよい。たとえば、グレーのバーまたはラインなど、別のグラフィックバーまたはグラフィックラインが表示されてもよい。代替のグラフィック要素が適用されてもよい。
【0030】
持続グルコースモニタリング(CGM)に使用されるセンサは、シングルユースセンサと呼称されてもよい使い捨てセンサであってもよい。身体に装着されるセンサは、生体内のセンサデータを収集するためのセンサであってもよい。身体に装着されるセンサは、間質液中のグルコースレベルを測定するための皮下センサであってもよい。
【0031】
グルコースモニタリングは、CGMシステムとして提供される医療用モニタリングシステムにより実行されてもよい。
【0032】
携帯型装置は、無線接続により、身体に装着されるセンサから持続モニタリングデータを受信してもよい。そのような無線通信のためのインターフェース装置またはモジュールは、Bluetooth(登録商標)、特にはBluetooth Low Energy Standardの下で動作可能であってもよい。センサセッションの始動または開始のために、センサは皮下に挿入されてもよい。そして、携帯型装置および身体に装着されるセンサユニットがペアリングされる(特に、少なくともID情報が交換される)。
【0033】
身体に装着されるセンサは、生体内のセンサデータを収集するためのセンサであってもよい。身体に装着されるセンサは、持続モニタリングセンサ、具体的には、間質中に提供されるように構成される持続グルコースモニタリングセンサであってもよい。グルコース測定またはモニタリングに関して、グルコースレベルまたはグルコース値は、完全に、または部分的に埋め込まれたセンサによる持続グルコースモニタリングにより血液試料を分析することによって判定されてもよい。概して、CGMの文脈において、体液中のグルコース値またはグルコースレベルが判定されてもよい。分析物値は、たとえば、間質液中で、皮下で測定されてもよい。CGMは、ユーザとの対話なしで、頻繁に、または自動的に分析物値を提供/更新する、略リアルタイムまたは準持続のモニタリング手順として実施されてもよい。
【0034】
表示装置は、携帯型装置内に設けられてもよい。代替例として、表示装置は、携帯型装置と分離して設けられてもよい。出力のために、無線または有線データ転送接続により、ビデオデータが、携帯型装置から、分離した表示装置へと転送されてもよい。
【0035】
携帯型装置は、携帯電話、タブレット型コンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯型医療用装置、携帯型医療用測定装置、およびスマートウォッチから成る携帯型装置の群から選択されてもよい。携帯型装置は、インターネットからダウンロードされる、たとえば、いわゆるアプリの形式のプログラムソフトウェアを有して構成されてもよい。
【0036】
以下において、実施形態を、例として、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】携帯型装置および身体に装着されるセンサ装置を備える構成の概略図である。
【
図2】体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための方法の概略図である。
【
図3】異なるグラフィックデータの出力を表すディスプレイ上のウィンドウの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、携帯型装置1と、患者により装着されるセンサが設けられるセンサ装置2とを備える構成の概略図を示す。センサ装置2は、持続グルコースモニタリングのために構成される。携帯型装置には、データインターフェース装置3、データ処理装置4、記憶装置5、および表示装置6が設けられる。データ処理装置4は、少なくとも一方向性のデータ転送のために、データインターフェース装置3、記憶装置5、および表示装置6に接続される。さらなる機能構成要素7が設けられてもよい。
【0039】
データ処理装置4は、1つまたは複数のプロセッサを備えてもよい。
【0040】
携帯型装置1とセンサ装置2との間でのデータ転送は、無線および/または有線データ転送により提供されてもよい。典型的には、携帯型装置1は、無線接続により、身体に装着されたセンサ装置2からのデータを受信する。そのような無線通信のための好ましいインターフェースは、BluetoothまたはBluetooth Low Energy Standardの下で動作可能である。センサセッションの開始時に、携帯型装置1および身体に装着されたセンサ装置2はペアリングされ(特に、ID情報の交換)、センサセッションの間、身体に装着されたセンサ装置2は、未処理の、または前処理されたモニタリングデータを携帯型装置1に常に転送してもよく、モニタリングデータは、保存され表示されるか、または表示されずに保存のみされてもよい。
【0041】
携帯型装置1は、携帯電話、タブレット型コンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯型医療用装置、携帯型医療用測定装置、およびスマートウォッチから成る携帯型装置の群から選択されてもよい。携帯型装置は、インターネットからダウンロードされる、たとえば、いわゆるアプリの形式のプログラムソフトウェアを有して構成されてもよい。
【0042】
図2は、携帯型装置1にて、体液中のグルコースレベルを示すグルコースモニタリングデータを分析するための方法の概略図を示す。
【0043】
工程20にて、一連の第1のグルコースモニタリングデータが、携帯型装置1に受信される。示された実施形態によると、第1のグルコースモニタリングデータは、センサ装置2から受信される。第1のグルコースモニタリングデータは、それぞれが測定時における体液中のグルコースレベルを示す複数の第1のグルコースモニタリング信号を表している。第1のグルコースモニタリング信号は、持続グルコースモニタリングの第1のモニタリング期間に亘り、1つまたは複数のグルコース測定期間中に、たとえば、センサ装置2により検出される。たとえば、第1のグルコースモニタリング信号は、数時間、たとえば12時間もしくは18時間に亘る、または1日もしくは数日に亘る、患者の持続グルコースモニタリングの結果を表してもよい。特に、1日または1日の期間のような24時間の期間が、患者またはユーザの関心の対象となり得る。
【0044】
工程21では、携帯型装置1にて、その一連の第1のグルコースモニタリングデータの流れが分析または処理される。
【0045】
工程22によると、第1のグルコースモニタリングデータが、少なくとも1つの要求基準を満たすかどうかが判定される。代替例では、第1の最小合計測定期間が設けられ、第1の最小合計測定期間は、第1のモニタリング期間よりも時間的に短い。1つまたは複数のグルコース測定期間が、合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達するかどうかが確認される。
【0046】
第1のグルコースモニタリングデータが、少なくとも1つの要求または確認された基準を満たす場合、第1のグルコースモニタリングデータに対し、工程23にて、統計分析を第1のグルコースモニタリングデータに適用することで、統計グルコースレベル情報が判定される。たとえば、第1のグルコースモニタリング信号に対し、以下の事象、すなわち、第1のグルコースモニタリング信号が、グルコースレベル目標範囲内のグルコースレベルを示す、第1のグルコースモニタリング信号が、上限グルコースレベルを超える高いグルコースレベルを示す(高血糖の事象)、および第1のグルコースモニタリング信号が、下限グルコースレベルを下回る低いグルコースレベルを示す(低血糖の事象)、という事象のうちの少なくとも1つが、どの程度の長さで観察されるかにについての第1のモニタリング期間に関する相対値が統計分析により判定されてもよい。たとえば、24時間のグルコースモニタリング期間の場合、以下のこと、すなわち、期間の30パーセントでグルコースレベルが高い、モニタリング期間の10パーセントでグルコースレベルが低い、およびモニタリング期間の60パーセントでグルコースレベルがグルコースレベル目標範囲(「正常」)内である、ということが判定されてもよい。モニタリング時間に関するそのような相対値は、バー表示にてサブバー要素により提示されてもよい(たとえば
図3参照)。代替のグラフィック要素およびサブ要素が適用されてもよい。たとえば、円グラフが適用されてもよい。
【0047】
工程24にて、既に判定された統計情報を示す第1の表示データが生成される。第1の表示データは、工程25にて、表示装置6を通して出力される。たとえば、統計情報は、表示装置6上の連続したバーとして表されてもよく、連続したバーによる表示は、複数のサブセクションまたはサブバー要素、たとえば、高グルコースレベル、低グルコースレベル、正常グルコースレベルをそれぞれ表す3つの連続した(色または陰影の異なる)サブセクションを含む。そのようなグラフィック出力の例を
図3に示す。
【0048】
統計グルコースレベル情報の判定、および第1の表示データの生成のうちの少なくとも1つは、第1のグルコースモニタリングデータが少なくとも1つの要求基準を満たす場合にのみ、実行されてもよい。たとえば、1つまたは複数のグルコース測定期間は、合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達する。
【0049】
代替の実施形態では、第2のグルコースモニタリングデータが、携帯型装置1内で受信されてもよい。第2のグルコースモニタリングデータは、それぞれが測定時点における血中グルコースレベルを示す複数の第2のグルコースモニタリング信号を表している。第2のグルコースモニタリング信号は、第1のグルコースモニタリング信号を検出するためのものとは異なる種類のグルコースモニタリングである血中グルコースモニタリングにて検出される。第2のグルコースモニタリングは、非持続グルコースモニタリング(スポットモニタリングと呼称されることもある)または持続グルコースモニタリングであってもよい。
【0050】
第2の血中グルコースモニタリングは、第2のモニタリング期間に亘り実行される。続いて、第2のグルコースモニタリングデータについて、そのような第2の血中グルコースモニタリングデータが、少なくとも1つの要求基準を満たさないことが判定される。たとえば、1つまたは複数のグルコース測定期間は、合計で、第2のグルコースモニタリング分析のために提供される少なくとも第2の最小合計測定期間に達しない。第2の最小合計測定時間は、第1の最小合計測定時間と等しくてもよく、または異なってもよい。
【0051】
それに応じて、第2の血中グルコースモニタリングデータについて、非統計グルコースレベル情報が、非統計分析を第2の血中グルコースモニタリングデータに適用することによって判定される。たとえば、そのような非統計分析は、第2のグルコースモニタリング期間内での、低グルコースレベル、高グルコースレベル、および正常グルコースレベルのうちの少なくとも1つの数を判定することを含んでもよい。非統計情報を示す第2の表示データが生成される。続いて、第2の表示データは、表示装置6を通して出力される。第2の表示データの例も
図3に示す。
【0052】
図3は、上で説明したように、判定された第1および第2の表示データの出力を表す、ディスプレイ上、たとえば表示装置6上のウィンドウ30の概略図を示す。第1の表示データは、グラフィックサブバー要素31a~31cを有する連続したグラフィックバー要素31により表示される。
【0053】
第2表示データは、ドット32a、32bなどの、2つの別個のグラフィック非バー要素32により表される。ドット32a、32bはそれぞれ、範囲の事象、つまり、低血糖の事象および高血糖の事象の数を表す。
【0054】
グラフィック要素31、32により表される第1および第2の表示データは、2つの異なる日(2つの異なるグルコースモニタリング期間)に収集されたグルコースモニタリング信号の分析の結果をグラフィックで表したものを指す。異なる日は、数字表記の日付情報33、34により表される。初日(グラフィックバー要素31、月曜日参照)の間、たとえば、1つまたは複数のグルコース測定期間が、合計で少なくとも第1の最小合計測定期間に達するため、グルコースモニタリング信号は、グラフィックバー表示に対する要件を満たす。2日目(火曜日)に検出されたグルコースモニタリング信号の場合は、この通りではない。したがって、2日目のために提供されるグルコースモニタリングデータが要件に適合しないという判定に応じて、非バー要素32のみが生成され、表示装置6により出力される。