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特許71138352つの周囲当接リッジを有する切削インサート、および切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】2つの周囲当接リッジを有する切削インサート、および切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/04 20060101AFI20220729BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B23B27/04
B23B27/16 A
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019543843
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 IL2018050270
(87)【国際公開番号】W WO2018178968
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】15/472,653
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ケルツマン オレグ
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-538010(JP,A)
【文献】特開2000-246515(JP,A)
【文献】特表2010-535638(JP,A)
【文献】実開昭63-182806(JP,U)
【文献】登録実用新案第3056024(JP,U)
【文献】特開昭63-139602(JP,A)
【文献】特開2003-291008(JP,A)
【文献】特開2005-305635(JP,A)
【文献】特開2006-167874(JP,A)
【文献】登録実用新案第3192622(JP,U)
【文献】特表2005-518948(JP,A)
【文献】特表2012-514540(JP,A)
【文献】国際公開第2013/151137(WO,A1)
【文献】米国特許第05921724(US,A)
【文献】米国特許第06000885(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0236256(US,A1)
【文献】スイス国特許発明第00686935(CH,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23C 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する前方方向および後方方向(D、D)を画定するインサート長手軸(A)を有し、かつ、前記インサート長手軸(A)を含むインサート軸方向平面(P)をさらに有する、交換式の切削インサート(22)であって、
対向するインサート内側側面(28)およびインサート外側側面(30)ならびにそれらの間に延在するインサート周囲面(32)であって、前記インサート周囲面(32)が、対向するインサート前端面(34)およびインサート後端面(36)、ならびに前記インサート前端面(34)と前記インサート後端面(36)とを接続する対向するインサート上面(38)およびインサート下面(40)を含む、インサート内側側面(28)およびインサート外側側面(30)ならびにインサート周囲面(32)と、
前記インサート前端面(34)と前記インサート上面(38)の交差部に形成された主切刃(48)を含む切削部分(42)と、
前記切削部分(42)に接続された取付け部分(44)と、を備え、
前記取付け部分(44)が、
前記インサート外側側面(30)の末端であり前記インサート後端面(36)および前記インサート下面(40)のそれぞれに沿って延在しかつ前記主切刃(48)から離れる前記切削インサート(22)の後方方向(D)において鋭角のインサートくさび角(θ)で互いに収束する、離間された2つの周囲当接リッジ(58、60)を含
各周囲当接リッジ(58、60)が、前記インサート外側側面(30)よりも前記インサート内側側面(28)に接近して配置される、切削インサート(22)。
【請求項2】
前記インサート軸方向平面(P)が、前記インサート内側側面(28)と前記インサート外側側面(30)との間を通り、かつ、前記主切刃(48)も通過し、
各周囲当接リッジ(58、60)が、前記インサート軸方向平面に平行なリッジ平面(P)内に位置し、かつ、一定のリッジ距離(D)だけ前記インサート軸方向平面(P)から離間される、請求項1に記載の切削インサート(22)。
【請求項3】
各周囲当接リッジ(58、60)の長手方向範囲に垂直でありかつそこを通る平面において取られた断面において、前記周囲当接リッジ(58、60)に接する仮想接線(L)が、前記インサート内側側面(28)とともに鋭角の内的なリッジ角(α)を形成する、請求項1または2に記載の切削インサート(22)。
【請求項4】
前記仮想接線(L)が、前記インサート周囲面(32)上の他の点と交わらない、請求項に記載の切削インサート(22)。
【請求項5】
各周囲当接リッジ(58、60)が、前記インサート内側側面(28)から前記インサート外側側面(30)への方向において面状に湾曲される、請求項1からのいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項6】
各周囲当接リッジ(58、60)が、リッジ半径(R)を有する仮想円筒によって画定され、
前記リッジ半径(R)が、0.25mm≦R≦0.75mmの範囲内である、請求項に記載の切削インサート(22)。
【請求項7】
各周囲当接リッジ(58、60)が、外側逃げ面(64)により前記インサート外側側面(30)から離間され、
前記外側逃げ面(64)が、平面状であり、かつ、前記インサート外側側面(30)から前記インサート内側側面(28)に向かう方向において外向きに傾斜する、
請求項1からのいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項8】
前記外側逃げ面(64)が、前記インサート内側側面(28)とともに鋭角の内的な外側逃げ角(β)を形成し、前記外側逃げ角(β)が、60°≦β≦65°の範囲内である、請求項に記載の切削インサート(22)。
【請求項9】
各周囲当接リッジ(58、60)が、内側逃げ面(66)により前記インサート内側側面(28)から離間され、
前記内側逃げ面(66)が平面状である、請求項1からのいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項10】
各周囲当接リッジ(58、60)が、前記インサート内側側面(28)まで延在する、請求項1からのいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項11】
前記インサート内側側面(28)が、前記インサート長手軸(A)沿いの中途で前記インサート上面(38)と前記インサート下面(40)との間に延在しかつ前記インサート長手軸(A)に対して横断方向に配向された内側横断面(46)を含み、前記内側横断面(46)が、前記切削部分(42)と前記取付け部分(44)とを区切る、請求項1から10のいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項12】
前記取付け部分(44)が、貫通孔軸(T)に沿って前記インサート内側側面(28)および前記インサート外側側面(30)を通過するインサート貫通孔(52)を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項13】
前記切削インサート(22)の上面図において、
前記取付け部分(44)が、前記インサート軸方向平面(P)に垂直な方向に測定される取付け部分幅(W)を有し、
前記切削部分(42)が、前記インサート軸方向平面(P)に垂直な方向に測定される切削部分幅(W)を有し、
前記切削部分幅(W)が、前記取付け部分幅(W)未満である、請求項1から12のいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項14】
前記切削インサート(22)の上面図において、
前記取付け部分(44)が、前記インサート長手軸(A)に沿って測定される取付け部分長さ(L)を有し、
前記切削部分(42)が、前記インサート長手軸(A)に沿って測定される切削部分長さ(L)を有し、
前記切削部分長さ(L)が、前記取付け部分長さ(L)を上回る、請求項1から13のいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項15】
前記取付け部分(44)における前記インサート内側側面(28)が、前記取付け部分(44)から突出している離間された3つのインサート突出部(54)を含み、各インサート突出部(54)が、内側当接面(56)を含み、前記内側当接面(56)が、互いに共平面である、請求項1から14のいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項16】
前記インサート上面(38)の前方部分(38a)が、前記前方方向(D)において前記インサート長手軸(A)に向かって傾斜し、
前記主切刃(48)が、前記切削部分(42)の高さ方向(H)において前記切削インサート(22)の中途部分に配置される、請求項1から15のいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項17】
前記取付け部分(44)には、前記インサート前端面(34)および前記インサート上面(38)上の当接面が全くない、請求項1から16のいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項18】
前記切削インサート(22)が、前記インサート外側側面(30)から離間しかつ前記取付け部分(44)において前記切削インサート(22)の前記インサート周囲面(32)の全体に沿って周囲方向に連続的に延在する取付け部分周囲リッジ(62)を備え、
前記2つの周囲当接リッジ(58、60)が、前記取付け部分周囲リッジ(62)上に形成される、請求項1から17のいずれか一項に記載の切削インサート(22)。
【請求項19】
ホルダ長手軸(B)を有するインサート・ホルダ(24)と、
固定部材(88)により前記インサート・ホルダ(24)に取外し可能に取り付けられる、請求項1から18のいずれか一項に記載の切削インサート(22)と、を組み合わせて備える、切削工具(20)。
【請求項20】
前記取付け部分(44)における前記インサート内側側面(28)が、そこから突出している離間された3つのインサート突出部(54)を含み、各インサート突出部(54)が、内側当接面(56)を含み、
前記2つの周囲当接リッジ(58、60)が、前記インサート後端面(36)上に配置された後部周囲当接リッジ(58)、および、前記インサート下面(40)上に配置された下部周囲当接リッジ(60)を含み、
前記インサート・ホルダ(24)が、
ホルダ前方端面(70)、およびその円周方向境界を形成するホルダ周囲面(72)と、
前記ホルダ周囲面(72)に凹設されたインサート・ポケット(26)と、
を備え、前記インサート・ポケット(26)が、
前記ホルダ前方端面(70)に開いているポケット開口部(74)と、
ポケット基部面(76)、および前記ポケット基部面(76)に実質的に垂直に配向されたポケット周壁面(78)であって、前記ポケット基部面(76)が、ポケット側部当接面(80)を含み、前記ポケット周壁面(78)が、ポケット後部当接面(84)およびポケット下部当接面(86)を含み、前記ポケット後部当接面(84)および前記ポケット下部当接面(86)が、前記ホルダ周囲面(72)から前記ポケット基部面(86)に向かう方向において外向きに傾斜し、かつ、前記ポケット開口部(74)から離れる方向において鋭角のポケットくさび角(μ)で互いに向かって収束する、ポケット基部面(76)およびポケット周壁面(78)と、を備え、
前記切削工具(20)の組立位置では、
前記ポケット下部当接面(86)が、前記下部周囲当接リッジ(60)に当接し、前記ポケット後部当接面(84)が、前記後部周囲当接リッジ(58)に当接し、前記ポケット側部当接面(80)が、前記インサート内側側面(28)に当接する、請求項19に記載の切削工具(20)。
【請求項21】
前記ポケット下部当接面(86)および前記ポケット後部当接面(84)が、前記ホルダ周囲面(72)よりも前記ポケット基部面(76)に接近している、請求項20に記載の切削工具(20)。
【請求項22】
前記取付け部分(44)が、貫通孔軸(T)に沿って前記インサート内側側面(28)および前記インサート外側側面(30)を通過するインサート貫通孔(52)を含み、
前記ポケット基部面(76)が、ねじ付きポケット孔(82)を含み、
前記固定部材(88)が、前記インサート貫通孔(52)内に配置されて前記ねじ付きポケット孔(82)と螺合される留めねじである、請求項20または21に記載の切削工具(20)。
【請求項23】
前記インサート上面(38)が、前記ポケット周壁面(78)から離間される、請求項20から22のいずれか一項に記載の切削工具(20)。
【請求項24】
前記インサートくさび角(θ)が、前記鋭角のポケットくさび角(μ)を上回る、請求項20から23のいずれか一項に記載の切削工具(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の主題は、切削工具に関し、詳細には、溝削りおよび突切りをする切削工具に関し、さらに詳細には、切削インサートが固定部材によりインサート・ホルダに取外し可能に取り付けられるタイプの側面溝削り切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
溝削り金属加工作業のための切削工具は、インサート・ホルダに取外し可能に取り付けられる切削インサートを備え得る。より正確には、インサート・ホルダは、側方インサート・ポケットを有し、切削インサートは、インサート・ポケット内に解放可能に保持される。
【0003】
上述の金属加工作業中、切刃において切削インサートに切削力が印加される。切削力の方向は、中心体に向かって実質的に下向きであり、かつ、多少内向きである。前述の切削力は、枢支点を中心としたトルクを生じさせ、この枢支点は、典型的には、切削インサートの下面とインサート・ホルダの下部支持面との間の最も前方の当接点である。トルクは、切削インサートを枢支点の回りで回転方向に回転させる。切削インサートの回転のずれを防ぐために、インサート・ポケットは、回転方向の反対に面する、ポケット基部面から延在する少なくとも1つの周壁当接面を有する。
【0004】
いくつかのそのような切削工具では、切削インサートの周囲面とインサート・ポケットの周壁当接面との間の周囲接触は、平面対平面である。そのような切削工具の例は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4,890,961号
【文献】米国特許第6,000,885号
【文献】米国特許第7,094,006B2号
【文献】米国特許第7,726,218B2号
【文献】米国特許第8,747,032B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の主題の目的は、新規かつ改善された切削インサートを提供することである。
【0007】
本願の主題の別の目的は、新規かつ改善された切削工具を提供することである。
【0008】
本願の主題のさらなる目的は、インサート・ホルダにおける交換式切削インサートの新規かつ改善された連結を提供することである。
【0009】
本願の主題のなおもさらなる目的は、インサート・ポケットの周壁当接面に印加される力がポケット基部面の近位におけるものである連結を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の主題の第1の態様によれば、対向する前方方向および後方方向を画定するインサート長手軸を有し、かつ、インサート長手軸を含むインサート軸方向平面をさらに有する、交換式の切削インサートが提供され、この切削インサートは、
対向するインサート内側側面およびインサート外側側面ならびにそれらの間に延在するインサート周囲面であって、インサート周囲面が、対向するインサート前端面およびインサート後端面、ならびにインサート前端面とインサート後端面とを接続する対向するインサート上面およびインサート下面を含む、インサート内側側面およびインサート外側側面ならびにインサート周囲面と、
インサート前端面とインサート上面の交差部に形成された主切刃を含む切削部分と、
切削部分に接続された取付け部分と、
を備え、取付け部分は、
インサート外側側面の末端でありインサート後端面およびインサート下面のそれぞれに沿って延在しかつ主切刃から離れる切削インサートの後方方向において鋭角のインサートくさび角で互いに向かって収束する、離間された2つの周囲当接リッジを含む。
【0011】
本願の主題の第2の態様によれば、
ホルダ長手軸を有するインサート・ホルダと、
固定部材によりインサート・ホルダに取外し可能に取り付けられる、上記のような切削インサートと、
を組み合わせて備える切削工具がさらに提供される。
【0012】
上記は概要であり、以下で説明される特徴は、本願の主題の任意の組合せで適用可能とされ得ること、例えば以下の特徴のうちのいずれもが、切削インサートまたは切削工具に適用可能とされ得ることが、理解される。
【0013】
各周囲当接リッジは、インサート外側側面よりもインサート内側側面に接近して配置され得る。
【0014】
インサート軸方向平面は、インサート内側側面とインサート外側側面との間を通り、かつ、主切刃も通過する。各周囲当接リッジは、インサート軸方向平面に平行なリッジ平面内に位置し、かつ、一定のリッジ距離だけそこから離間され得る。
【0015】
各周囲当接リッジの長手方向範囲に垂直でありかつそこを通る平面において取られた断面において、周囲当接リッジに接する仮想接線が、インサート内側側面とともに鋭角の内的なリッジ角を形成し得る。
【0016】
仮想接線は、インサート周囲面の他の点と交わり得ない。
【0017】
各周囲当接リッジは、インサート内側側面からインサート外側側面への方向において凹面状に湾曲され得る。
【0018】
各周囲当接リッジは、リッジ半径を有する仮想円筒によって画定され得る。リッジ半径は、0.25mm≦R≦0.75mmの範囲内とされ得る。
【0019】
リッジ半径は、0.5mmに等しくされ得る。
【0020】
各周囲当接リッジは、外側逃げ面によりインサート外側側面から離間され得る。外側逃げ面は、平面状であり、かつ、インサート外側側面からインサート内側側面に向かう方向において外向きに傾斜し得る。
【0021】
外側逃げ面は、インサート内側側面とともに鋭角の内的な外側逃げ角を形成し得る。
【0022】
外側逃げ角は、60°≦β≦65°の範囲内とされ得る。
【0023】
各周囲当接リッジは、内側逃げ面によりインサート内側側面から離間され得る。内側逃げ面は、平面状とされ得る。
【0024】
内側逃げ面は、インサート内側側面に垂直とされ得る。
【0025】
内側逃げ面は、内側逃げ面幅を有する。内側逃げ面幅は、0.5mm≦W≦0.9mmの範囲内とされ得る。
【0026】
各周囲当接リッジは、インサート内側側面まで延在し得る。
【0027】
切削インサートは、刃先非交換式(non-indexable)とされ得る。
【0028】
インサート内側側面は、インサート長手軸沿いの中途でインサート上面とインサート下面との間に延在しかつインサート長手軸に対して横断方向に配向された内側横断面を含むことができ、この内側横断面は、切削部分と取付け部分とを区切る。
【0029】
取付け部分は、貫通孔軸に沿ってインサート内側側面およびインサート外側側面を通過するインサート貫通孔を含み得る。
【0030】
切削インサートの上面図において、
取付け部分は、インサート軸方向平面に垂直な方向に測定される取付け部分幅を有する。切削部分は、インサート軸方向平面に垂直な方向に測定される切削部分幅を有する。切削部分幅は、取付け部分幅未満とされ得る。
【0031】
切削インサートの上面図において、
取付け部分は、インサート長手軸に沿って測定される取付け部分長さを有する。切削部分は、インサート長手軸に沿って測定される切削部分長さを有する。切削部分長さは、取付け部分長さを上回り得る。
【0032】
取付け部分におけるインサート内側側面は、そこから突出している離間された3つのインサート突出部を含むことができ、各インサート突出部は、内側当接面を含むことができ、内側当接面は、互いに共平面とされ得る。
【0033】
切削部分におけるインサート内側側面およびインサート外側側面は、切削インサートの正面図において湾曲され得る。
【0034】
インサート上面の前方部分は、前方方向においてインサート長手軸に向かって傾斜し得る。主切刃は、切削部分の高さ方向において切削インサートの中途部分に配置され得る。
【0035】
取付け部分には、インサート前端面およびインサート上面上の当接面が全くなくてもよい。
【0036】
切削インサートは、インサート外側側面の末端でありかつ取付け部分において切削インサートのインサート周囲面の全体に沿って周囲方向に連続的に延在する取付け部分周囲リッジを備え得る。2つの周囲当接リッジは、取付け部分周囲リッジ上に形成され得る。
【0037】
取付け部分におけるインサート内側側面は、そこから突出している離間された3つのインサート突出部を含むことができ、各インサート突出部は、内側当接面を含む。2つの周囲当接リッジは、インサート下面上に配置された下部周囲当接リッジ、および、インサート後端面上に配置された後部周囲当接リッジを含み得る。インサート・ホルダは、
ホルダ前方端面、およびその円周方向境界を形成するホルダ周囲面と、
ホルダ周囲面に凹設されたインサート・ポケットと、
を備え、インサート・ポケットは、
ホルダ前方端面に開いているポケット開口部と、
ポケット基部面、およびポケット基部面に実質的に垂直に配向されたポケット周壁面であって、ポケット基部面が、ポケット側部当接面を含み、ポケット周壁面が、ポケット後部当接面およびポケット下部当接面を含み、ポケット後部当接面およびポケット下部当接面が、ホルダ周囲面からポケット基部面に向かう方向において外向きに傾斜し、かつ、ポケット開口部から離れる方向において鋭角のポケットくさび角で互いに向かって収束する、ポケット基部面およびポケット周壁面と、
を備え、切削工具の組立位置では、ポケット下部当接面は、下部周囲当接リッジに当接することができ、ポケット後部当接面は、後部周囲当接リッジに当接することができ、ポケット側部当接面は、インサート内側側面に当接することができる。
【0038】
ポケット下部当接面およびポケット後部当接面は、ホルダ周囲面よりもポケット基部面に接近していてもよい。
【0039】
取付け部分は、貫通孔軸に沿ってインサート内側側面およびインサート外側側面を通過するインサート貫通孔を含み得る。ポケット基部面は、ねじ付きポケット孔を含み得る。固定部材は、インサート貫通孔内に配置されてねじ付きポケット孔と螺号される留めねじとされ得る。
【0040】
インサート上面は、ポケット周壁面から離間され得る。
【0041】
0インサートくさび角は、鋭角のポケットくさび角を上回り得る。
【0042】
次に、本願のさらなる理解ため、また、本願が実際にどのようにして実施され得るかを示すために、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】切削インサートおよびインサート・ホルダのインサート・ポケットを示す、切削工具の分解組立斜視図である。
図2図1に示された切削インサートの外側側面図である。
図3図2に示された切削インサートの内側側面図である。
図4図2に示された切削インサートの上面図である。
図5図2に示された切削インサートの底面図である。
図6図2に示された切削インサートの正面図である。
図7図1に示されたインサート・ポケットの斜視図である。
図8】内部に切削インサートが解放可能に保持された、図1に示されたインサート・ポケットの側面図である。
図9図8に示された線IX-IXに沿った断面の一部分の図である。
図10図9の細部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図に示された要素は図示の簡潔さおよび明瞭さのために必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが、理解されるであろう。例えば、要素のうちのいくつかの寸法は、明瞭さのために他の要素に対して強調される場合があり、または、いくつかの物理的な構成要素が、1つの機能ブロックもしくは要素に含まれる場合がある。適当であると考えられる場合、対応するまたは類似の要素を示すために、図の間で参照番号が繰り返される可能性がある。
【0045】
以下の記述では、本願の主題の様々な態様が説明される。解説のために、特定の構成および細部が、本願の主題の完全な理解を提供するのに十分なだけ詳細に提示される。しかし、本願の主題が本明細書において提示された特定の構成および細部を伴わずに実施され得ることもまた、当業者には理解されるであろう。
【0046】
まず、本願の主題の一実施形態による、溝削り、より正確には側面溝削りのために使用されるタイプの切削工具20を示す図1に注目する。切削工具20は、交換式切削インサート22、およびインサート・ホルダ24を有する。切削工具20は、組立位置と未組立位置との間で調整可能である。切削工具20の組立位置では、切削インサート22は、インサート・ホルダ24のインサート・ポケット26内に取外し可能に保持される。
【0047】
インサート・ホルダ24は、第1の硬質材料で作られてもよく、切削インサート22は、第1の硬質材料よりも硬い第2の硬質材料で作られてもよい。例えば、インサート・ホルダ24は、鋼鉄で作られてもよく、切削インサート22は、超硬合金で作られてもよい。
【0048】
図2から6を参照すると、本願の主題の第1の態様が、切削インサート22に関する。切削インサート22は、対向する前方方向Dおよび後方方向Dを画定するインサート長手軸Aを有する。切削インサート22は、対向するインサート内側側面28およびインサート外側側面30、ならびにそれらの間に延在するインサート周囲面32を含む。インサート周囲面32は、対向するインサート上面38およびインサート下面40を接続する、対向するインサート前端面34およびインサート後端面36を含む。インサート後端面36は、インサート下面40に隣接する。インサート長手軸Aは、インサート後端面36と交わり、かつ、インサート上面38とインサート下面40との間を通過する。一般的に言えば、インサート長手軸Aはまた、インサート前端面34と交差することができる。しかし、側面溝削りの分野で知られているように、インサート上面38の前方部分38aが(図2に見られるように)前方方向Dにおいてインサート長手軸Aに向かって傾斜し得ることが、留意される。そのような構成では、インサート長手軸Aは、インサート前端面34とは対照的に、インサート上面38と交わり得る。切削インサート22は、インサート中心軸Cを有する。インサート周囲面32は、インサート中心軸Cの回りに円周方向に、インサート中心軸Cとは反対の側を向いて延在する。インサート中心軸Cは、インサート長手軸Aと交わることができ、かつ、インサート長手軸Aに垂直であり得る。切削インサート22は、インサート長手軸Aを含みかつインサート内側側面28とインサート外側側面30との間を通過する、インサート軸方向平面Pを有する。インサート軸方向平面Pはまた、主切刃48を通過する。インサート軸方向平面Pは、インサート中心軸Cに垂直であり得る。
【0049】
説明および特許請求の範囲を通して、「前方の」および「後方の」という用語の使用は、図2~6において左および右のそれぞれに向かうインサート長手軸Aの方向における相対位置を意味することが、留意されるべきである。本開示において、「前方の」は、切削工具20の切削端部に関連する。説明および特許請求の範囲を通して、「上方の」および「下方の」という用語の使用は、図2~3において上部および底部のそれぞれに向かうインサート長手軸Aに垂直な方向における相対位置を意味することもまた、留意されるべきである。
【0050】
切削インサート22は、切削部分42、および切削部分42に接続された取付け部分44を含む。切削インサート22は、切削インサート22の前方端部に配置された厳密に1つの切削部分42と切削インサート22の後端部に配置された取付け部分44とを含む、刃先非交換式の、つまり単頭のものであってよい。
【0051】
特に図4および5を参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート内側側面28は、インサート上面38とインサート下面40との間に延在しかつインサート長手軸A沿いの中途に配置され得る内側横断面46を含むことができる。内側横断面46は、インサート長手軸Aに対して横断方向に、好ましくは垂直に配向され得る。内側横断面46は、切削部分42と取付け部分44とを区切ることができる。切削インサート22の上面図(すなわち、図4)では、取付け部分44は、インサート内側側面28とインサート外側側面30との間でインサート軸方向平面Pに垂直な方向に測定される取付け部分幅Wを有する。切削部分42は、同じくインサート内側側面28とインサート外側側面30との間でインサート軸方向平面Pに垂直な方向に測定される切削部分幅Wを有する。切削部分幅Wは、取付け部分幅W未満であってもよい。また、切削インサート22の上面図では、取付け部分44は、インサート長手軸Aに沿って測定される取付け部分長さLを有する。同様に、切削部分42は、インサート長手軸Aに沿って測定される切削部分長さLを有する。切削部分長さLは、取付け部分長さLを上回ってもよい。切削部分42は、インサート中心軸Cに沿って見たときにインサート長手軸Aに垂直な方向に測定される切削部分高さHを有する。
【0052】
次に図4を参照すると、切削部分42は、インサート前端面34とインサート上面38の交差部に形成された、溝削り/突切り金属切削作業のための主切刃48を含む。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削部分42はまた、インサート上面38とインサート内側側面28および外側側面30それぞれの交差部に形成されかつ主切刃48のどちらかの側から延在する、溝削り-旋削金属切削作業のための2つの副切刃50を含み得る。
【0053】
図6を参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削部分42におけるインサート内側側面28およびインサート外側側面30は、円弧溝(radiused groove)の側面溝削りを可能にするために、切削インサート22の正面図において湾曲され得る。有利には、前に言及したように、主切刃48が切削部分42の高さ方向において切削インサート22の中途部分に配置されるように、インサート上面38の前方部分38aが、前方方向Dにおいてインサート長手軸Aに向かって傾斜し得る。
【0054】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、取付け部分44は、貫通孔軸Tに沿ってインサート内側側面28およびインサート外側側面30を通過するインサート貫通孔52を含み得る。貫通孔軸Tは、インサート中心軸Cと位置合わせされ得る。図4および5で最も良く分かるように、取付け部分44におけるインサート内側側面28は、平面状であり得る。図3を参照すると、取付け部分44におけるインサート内側側面28は、そこから突出している離間された3つのインサート突出部54を含み得る。インサート突出部54は、インサート貫通孔52の回りに角度離間され得る。各インサート突出部54は、インサート・ポケット26内のそれぞれの当接面に当接するように設計された内側当接面56を含み得る。内側当接面56は、互いに共平面とされ得る。
【0055】
取付け部分44は、インサート後端面36上に配置された後部周囲当接リッジ58、および、インサート下面40上に配置された下部周囲当接リッジ60の、離間された2つの周囲当接リッジを含む。2つの周囲当接リッジ58、60は、インサート・ポケット26内のそれぞれの当接面に当接するように構成される。各周囲当接リッジ58、60は、インサート外側側面30の末端である。2つの周囲当接リッジ58、60は、主切刃48から離れる切削インサート22の後方方向Dにおいて鋭角のインサートくさび角θで互いに収束する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、くさび角θは、45°≦θ≦55°の範囲内であり得る。くさび角θは、50°の値を有し得ることが好ましい。取付け部分44には、インサート前端面34およびインサート上面38上の当接面が全くなくてもよい。各周囲当接リッジ58、60は、インサート周囲面32とインサート内側側面28およびインサート外側側面30それぞれの接合部間に引かれた仮想線ILに対して外向きに突出する。
【0056】
図面(例えば、図2)に示されたこの非限定的な例では、切削インサート22は、取付け部分44において切削インサート22のインサート周囲面32の全体に沿って周囲方向に連続的に延在する取付け部分周囲リッジ62を含み得る。2つの周囲当接リッジ58、60は、取付け部分周囲リッジ62上に形成されて、取付け部分周囲リッジ62に沿って互いに離間され得る。あるいは、切削インサート22は、取付け部分44において切削インサート22のインサート周囲面32の一部分に沿って延在する、離間された複数の取付け部分周囲リッジ62を含み得る。そのような構成では、2つの周囲当接リッジ58、60は、異なる取付け部分周囲リッジ62上に形成され得る(図示せず)。
【0057】
説明および特許請求の範囲を通して、「周囲方向」という用語の使用は、図2で分かるようにインサート中心軸Cに関する方向を意味することが、留意されるべきである。
【0058】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、各周囲当接リッジ58、60は、インサート外側側面30よりもインサート内側側面28に接近して配置され得る。各周囲当接リッジ58、60は、それぞれのリッジ軸RAに沿って延在し得る。各周囲当接リッジ58、60は、インサート軸方向平面Pに平行な共通リッジ平面P内に配置され、かつ、一定のリッジ距離Dだけインサート軸方向平面Pから離間され得る。したがって、各リッジ軸RAは、インサート内側側面28に平行であり得る。
【0059】
図6で分かるように、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、各周囲当接リッジ58、60は、外側逃げ面64により、インサート外側側面30から離間され得る。外側逃げ面64は、平面状であり得る。外側逃げ面64は、インサート外側側面30からインサート内側側面28に向かう方向において外向きに、つまりインサート中心軸Cから離れるように、傾斜し得る。すなわち、ここで図9を参照すると、外側逃げ面64は、インサート内側側面28とともに、鋭角の内的な外側逃げ角βを形成し得る。外側逃げ角βは、60°≦β≦65°の範囲内であり得る。図9~10は後部周囲当接リッジ58または下部周囲当接リッジ60のどちらかを通る断面に関することが、留意される。
【0060】
本願の主題のいくつかの他の実施形態によれば、各周囲当接リッジ58、60は、内側逃げ面66により、インサート内側側面28から離間され得る。そのような構成では、各周囲当接リッジ58、60は、外側逃げ面64と内側逃げ面66の交差部に形成される。内側逃げ面66は、平面状であってよく、かつ、インサート内側側面28に垂直であってよい。図10を参照すると、内側逃げ面66は、内側逃げ面幅Wを有し得る。内側逃げ面幅Wは、0.5mm≦W≦0.9mmの範囲内であり得る。
【0061】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、各周囲当接リッジ58、60の長手方向範囲に垂直でありかつそこを通る平面において取られた断面(すなわち、図9および10)では、周囲当接リッジ58、60に接する仮想接線Lが、インサート内側側面28とともに鋭角の内的なリッジ角αを形成し得る。仮想接線Lは、インサート周囲面32上の他の点と交わることができない。図9で分かるように、各周囲当接リッジ58、60は、インサート内側側面28からインサート外側側面30への方向において凹面状に湾曲され得る。したがって、インサート周囲面32は、インサート内側側面28からインサート外側側面30に向かって延在するにつれて、インサート中心軸Cに接近する。
【0062】
各周囲当接リッジ58、60は、リッジ半径Rを有する仮想円筒によって画定され得る。リッジ半径Rは、0.25mm≦R≦0.75mmの範囲内であり得る。リッジ半径Rは、0.5mmに等しくされ得ることが好ましい。下部周囲当接リッジ60の仮想円筒は、インサート長手軸Aと共方向性であり得る軸を有する。
【0063】
本願の主題の第2の態様は、前述したような切削インサート22とインサート・ホルダ24とを含む切削工具20に関する。ここで、ホルダ長手軸Bを有するインサート・ホルダ24を示している図7を参照する。ホルダ長手軸Bは、インサート長手軸Aと同じ方向に延在し得る。インサート・ホルダ24は、ホルダ前方端部68を有する。インサート・ホルダ24は、ホルダ前方端部68に形成されたホルダ前方端面70、およびホルダ周囲面72を含み、ホルダ周囲面72は、ホルダ前方端面70の円周方向境界を形成する。
【0064】
図面に示されたこの非限定的な例では、ホルダ周囲面72は円筒形であってよく、この場合、ホルダ周囲面72には1つだけの連続的な表面が存在する。しかし、ホルダ周囲面72は、複数の、例えば4つのホルダ周囲部分表面を含み得ることが、理解されるであろう。
【0065】
インサート・ポケット26は、ホルダ周囲面72に凹設され、かつ、ホルダ前方端面70に開いているポケット開口部74を含む。インサート・ポケット26の目的は、切削インサート22がインサート・ホルダ24に取外し可能に取り付けられるときにそれを収容することである。インサート・ポケット26は、ポケット基部面76と、ポケット基部面76に実質的に垂直に配向されたポケット周壁面78とを含む。ポケット基部面76は、切削インサート22上のそれぞれの表面に当接するためのポケット側部当接面80を含む。インサート・ポケット26は、ポケット中心軸Eを有し、ポケット周壁面78は、ポケット中心軸Eの回りに円周方向に延在し、かつ、ポケット中心軸Eに面する。ポケット中心軸Eは、ポケット基部面76に垂直であり得る。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット側部当接面80は、平面状であり得る。ポケット基部面76は、ねじ付きポケット孔82を含み得る。ねじ付きポケット孔82は、切削インサート22をインサート・ホルダ24に取外し可能に取り付けるための手段を提供するように設計される。
【0066】
ポケット周壁面78は、切削インサート22のそれぞれの表面に当接するためのポケット後部当接面84およびポケット下部当接面86を含む。ポケット後部当接面84およびポケット下部当接面86は、ホルダ周囲面72からポケット基部面76に向かう方向において、外向きに、つまりポケット中心軸Eから離れるように傾斜する。すなわち、ここで図9を参照すると、ポケット後部当接面84およびポケット下部当接面86は、ポケット基部面76とともに鋭角の外的なポケット側部角γを形成し得る。ポケット側部角γは、内的な外側逃げ角βよりも大きくてよい。ポケット後部当接面84およびポケット下部当接面86は、ポケット開口部74から離れる方向において鋭角のポケットくさび角μで互いに収束する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット後部当接面84およびポケット下部当接面86は、平面状であり得る。ポケット下部当接面86およびポケット後部当接面84は、ホルダ周囲面72よりもポケット基部面76に接近していてもよい。インサートくさび角θは、鋭角のポケットくさび角μよりも大きくされ得る。
【0067】
切削インサート22は、固定部材88によりインサート・ホルダ24に取外し可能に取り付けられる。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、固定部材88は、インサート貫通孔52内に配置されてねじ付きポケット孔82と螺合される留めねじであり得る。インサート貫通孔52およびねじ付きポケット孔82は、締付け力の成分が後方および下方に向けられ得るように、互いに対して偏心していてもよい。
【0068】
切削工具20の組立位置では、ポケット後部当接面84は、後部周囲当接リッジ58に当接し、ポケット下部当接面86は、下部周囲当接リッジ60に当接し、ポケット側部当接面80は、インサート内側側面28に当接する。より正確には、ポケット側部当接面80は、3つの内側当接面56に当接する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート上面38は、ポケット周壁面78から離間され得る。ホルダ前方端面70は、内側横断面46と位置合わせされ得る。
【0069】
切削インサート22とインサート・ホルダ24との間の周囲接触は平面対平面ではないことが、留意される。むしろ、切削インサート22上の周囲接触部は、後部周囲当接リッジ58および下部周囲当接リッジ60上に形成され、この場合、外側逃げ面64および内側逃げ面66は、ポケット周壁面78の部分に接触しない。したがって、切削インサート22上の周囲当接領域は、本質的に、インサート・ポケット26上のポケット側部当接面80に接触する線または帯である。有利には、当接リッジ58、60のおかげで、周囲接触部は、予め定められた的確な位置に配置され得る。
【0070】
インサート・ポケット26上の周囲接触部は、ホルダ周囲面72から離間されたポケット後部当接面84およびポケット下部当接面86上に形成されることが、さらに留意される。したがって、切削インサート22によって印加される力は、ホルダ周囲面78の外側部分とは対照的にホルダ周囲面78の内側部分におけるものである。前述の内側部分は、前述の外側部分よりも剛性があって頑丈であり、したがって、切削インサート22とインサート・ホルダ24との間のより強力な連結が達成される。
【0071】
上記の切削インサート22とインサート・ホルダ24との間の連結のおかげで、被加工物の表面仕上げの品質低下をもたらす可能性のある切削部分42の振動を増大させるリスクを伴わずに、切削部分長さLによって画定される最大切込み深さが増大され得る。例えば、切削部分長さLは、15mm以上であり得る。これは、側面溝削りでは切削部分高さHが制限されるので、小径の(例えば、約10mmの外径を持つ)環状溝を側面溝削りするにあたって特に重要である。
【0072】
本願の主題は、ある程度具体的に説明されたが、以下の特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく様々な変更および修正がなされ得ることが、理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10