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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】アルミニウム合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/10 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
C22C21/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019565852
(86)(22)【出願日】2017-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 RU2017000367
(87)【国際公開番号】W WO2018222065
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2019-11-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518108140
【氏名又は名称】オプシチェストボ エス オグラニチェンノイ オトヴェストヴェンノストユ “オベディネンナヤ カンパニア ルサール インゼネルノ-テクノロギケスキー チェントル”
【氏名又は名称原語表記】OBSHCHESTVO S OGRANICHENNOY OTVETSTVENNOST’YU ‘OBEDINENNAYA KOMPANIYA RUSAL INZHENERNO-TEKHNOLOGICHESKIY TSENTR’
【住所又は居所原語表記】ul.Pogranichnikov,37,str. 1,Krasnoyarsk,660111,Russia
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マン ヴィクトール クリストヤノヴィク
(72)【発明者】
【氏名】アラビン アレクサンドル ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クロヒン アレクサンドル ユルエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】フロロフ アントン ヴァレエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】エフィモフ コンスタンティン ヴァシリエヴィチ
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/058052(WO,A1)
【文献】特表2008-542534(JP,A)
【文献】特開2011-104656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00 - 21/18
C22F 1/04 - 1/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄、チタンを含むとともに、ケイ素、ニッケル、セリウム、ジルコニウム、スカンジウムからなるグループから選ばれる少なくとも1つの元素を含むアルミニウム基鋳造合金
本合金の成分の含有量は下記の通りである、質量%:
亜鉛(Zn)5~8
マグネシウム(Mg)1.5~2.1
カルシウム(Ca)0.10~1.9
鉄(Fe)0.08~0.5
チタン(Ti)0.01~0.15
ケイ素(Si)0.08~0.9
ニッケル(Ni)0.2~0.4
セリウム(Ce)0.2~0.4
ジルコニウム(Zr)0.08~0.15
スカンジウム(Sc)0.08~0.15
アルミニウム(Al)残り
ここでは、Ti+Zr+Scの合計が0.25質量%以下であり、
アルミニウム固溶体中および二次析出物中の亜鉛含有量は少なくとも4質量%であり、マグネシウム含有量は少なくとも1質量%である。
【請求項2】
カルシウムは、亜鉛および鉄を共晶成分とするとともに粒径が3μm以下の化合物の形で合金構造中に含まれることを特徴とする請求項1に記載の合金。
【請求項3】
カルシウムは、亜鉛、鉄およびケイ素を共晶成分とするとともに粒径が3μm以下の化合物の形で合金構造中に含まれることを特徴とする請求項1に記載の合金。
【請求項4】
カルシウムは、亜鉛、鉄およびニッケルを共晶成分とするとともに粒径が3μm以下の化合物の形で合金構造中に含まれることを特徴とする請求項1に記載の合金。
【請求項5】
カルシウムは、亜鉛、鉄およびセリウムを共晶成分とするとともに粒径が3μm以下の化合物の形で合金構造中に含まれることを特徴とする請求項1に記載の合金。
【請求項6】
亜鉛が、アルミニウム固溶体の組成中に少なくとも5質量%の含有量で含まれることを特徴とする請求項1に記載の合金。
【請求項7】
Ce/Fe比が>1.1であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の合金。
【請求項8】
ジルコニウムおよびスカンジウムが、最大20nmの平均サイズおよびL1型格子を有する二次析出物の形態で含まれることを特徴とする請求項1に記載の合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム基鋳造合金の冶金分野に関し、以下の分野で重要な役割のものを含む負荷構造で動作する製品を得るために使用することができる。輸送(合金ホイールを含む自動車部品製造)、スポーツ産業およびスポーツ機器(自転車、スクーター、運動器具など)、機械工学および産業の他の部門。
【背景技術】
【0002】
鋳造アルミニウム合金の中で最も広く使用されているのは、Al-Si系の合金である。Al-Si系の合金の硬化には、通常、銅、マグネシウムが主要な合金元素として使用され、一部の合金にはこれらの元素が一緒に使用される。(典型的な例は356種および354種の合金)T6状態での一時的な引張強度の値に関して、356種および354種の合金は、通常、それぞれ300MPaおよび380MPaを超えない。これは、従来の成形鋳造法を使用する場合の絶対最大値である。さらに、指定された強度特性は、合金の鉄含有量に大きく左右される。高い強度特性、特に疲労を達成するために、一次アルミニウムの「純粋」グレードの使用により、鉄含有量が制限される。(通常0.08~0.12質量%)鉄の濃度が高くなると、伸びの値と疲労特性が大幅に低下する。
【0003】
既知の最も高強度の鋳造アルミニウム合金の中では、マンガンと追加で合金化されたAl-Cu系の合金が注目される。ここで、AM5種の合金または2xxシリーズの合金は、T6状態でσv=400~450MPaに達する強度特性のレベルによって区別されることができる。(工業用アルミニウム合金/参考文献/Alieva S.G.、Altman M.B.ら M.、Metallurgy、1984、528頁)この種の合金の欠点には、鋳造特性が低いために鋳造中の加工性が比較的低いこと、特に高温割れや低流動性の傾向があり、成形鋳造品を製造する際に、特に金型鋳造する際に多くの問題が生じることが含まれる。
【0004】
ルサール社が開発した既知の材料は、「アルミニウム基高強度合金」(2015年9月29日付のRU2610578)発明に記載されている。この合金には、亜鉛5.2~6.0、マグネシウム1.5~2.0、ニッケル0.5~2.0、鉄0.4~1.0、銅0.01~0.25、ジルコニウム0.05~0.20を含むとともに、スカンジウム0.05~0.10、チタン0.02~0.05を含むグループから選ばれる少なくとも1つの元素が含まれ、残りはアルミニウムである。この材料からは、一時的な引張強度が約500MPaの自動車部品およびその他の用途の鋳物が製造できる。材料の欠点としては、鉄とニッケルを含む共晶成分の粗大化に関連する250℃を超える「高温」金型で鋳造する場合、鋳物の大量生産に多くの制限を課す、低い強度特性に注意する必要がある。
【0005】
特許文献Alcoa Int. EP1885898B1号(2008年2月13日公開、2008年7月会報)には、航空宇宙および自動車用途の鋳物用のAl-Zn-Mg-Cu-Sc系の別の高強度合金が開示されている。4~9%Zn;1~4%Mg;1~2.5%Cu;<0.1%Si;<0.12%Fe;<0.5%Mn;0.01から0.05%B;<0.15%Ti;0.05~0.2%Zr;0.1~0.5%Scを含む提案された合金から以下の鋳造方法により、高い強度特性を備えた鋳物を得ることができる。(合金A356種より100%高い)低圧鋳造法、重力金型鋳造法、結晶化を伴う高圧鋳造法など。この発明は、化学組成に共晶形成元素が欠如する(合金構造は主にアルミニウム固溶体である)という欠点があることにより、比較的複雑な形状の成形鋳物を得ることができない。さらに、合金の化学組成には鉄が制限されているため、比較的純粋なグレードの一次アルミニウムを使用する必要があり、スカンジウムなどの遷移金属の小量添加物の組み合わせも含まれるが、場合によって(例えば、砂型鋳造の場合、冷却速度が遅いため)は完全に正当化されいない。
【0006】
提案された発明に最も近いのは、特許文献NUST「MISiS」RU2484168C1号(2013年10月10日公開、会報16号)に開示されている、アルミニウム基の高強度合金である。この材料には、合金元素が次の比率(質量%)で含まれる。亜鉛7~12%、カルシウム2~5%、マグネシウム2.2~3.8%、ジルコニウム0.02~0.25%、残りアルミニウム、材料の硬度は150HV以上、一時強度(σv)は450MPa以上、降伏強度(σ0.2)は400MPa以上である。強度この材料は、航空機、自動車およびその他の車両の部品、スポーツ用品の部品など、最高100~150℃の温度で高負荷下で動作する製品を製造するために使用できる。この材料の欠点は、マグネシウム濃度により、アルミニウム固溶体のマトリックスの高い過剰応力、およびその結果、伸びの値の減少である。この材料の他の欠点は、許容される鉄含有量の記載がないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、成形鋳物を鋳造する際に高レベルの強度特性を特徴とし、金型における成形鋳造する際に高レベルの機械的特性(一時的な引張強度、伸びおよび疲労特性)と高い加工性(高い流動性)の組み合わせを特徴とする、新しい鋳造アルミニウム合金の作成である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
技術的な結果は、課題の解決、合金中の共晶成分による高い加工性(流動性)の達成、および分散硬化中に構造に形成される二次析出物による合金とその合金から製造される製品の強度特性の増加である。
【0009】
この技術的結果は、亜鉛、マグネシウム、カルシウムを含むアルミニウム基鋳造合金により達成される。さらに、本合金は、鉄、チタンを含むとともに、ケイ素、セリウムとニッケル、ジルコニウムとスカンジウムを含むグループから選ばれる少なくとも1つの元素を、次の成分の濃度、質量%で含む。
【0010】
亜鉛5~8
マグネシウム1.5~2.1
カルシウム0.10~1.9
鉄0.08~0.5
チタン0.01~0.15
ケイ素0.08~0.9
ニッケル0.08~1.0
セリウム0.10~0.4
ジルコニウム0.08~0.15
スカンジウム0.08~0.15
残りアルミニウム
ここで、アルミニウム固溶体および/または二次析出物中の亜鉛含有量は少なくとも4.0質量%である。
【0011】
特別な場合では、カルシウムが、亜鉛、鉄、ニッケル、およびケイ素を共晶成分とする化合物の形で、3μm以下の粒子で構造中に含まれることがある。
【0012】
さらに、高強度合金には、不活性アノード電解技術によって得られたアルミニウムが含まれ、ジルコニウムとスカンジウムは、主に最大20nmの寸法とL1格子の二次析出物の形で含まれる場合がある。
【0013】
特別な場合では、合金は、低圧および高圧鋳造、重力鋳造、および結晶化を伴う高圧鋳造により、鋳物の形で製造されることがある。
【0014】
アルミニウム合金の構造が次の条件を満たしている場合、請求される合金元素の範囲は、高レベルの機械的特性の達成を保証する。硬化剤の準安定相の二次析出物と、カルシウム、ニッケルを含むとともに、ケイ素、セリウム、ニッケルからなるグループから選ばれる1つの元素を含む共晶成分によって硬化したアルミニウム固溶体である。
【0015】
合金化元素の最初の選択は、Thermocalcソフトウェアパッケージの使用を含む、対応する相状態図の分析に基づいて行われた。濃度範囲を確定する基準は、亜鉛、カルシウム、鉄、およびニッケルを含む初晶化する結晶がないことにした。セリウムを含む合金は、対応する状態図が不足しているため、経験的データに基づいて製造された。
本合金における、所定の構造の達成を保証する、合金成分の請求される量の根拠を以下に示す。
【0016】
請求される量の亜鉛、マグネシウムは、分散硬化による硬化相の二次析出物の形成に必要である。低濃度の場合、必要な強度特性を達成するには量が不十分であり、大量の場合、伸びが必要以下に減少することができる。
【0017】
亜鉛は、結晶化中に異なる比率で構造成分(アルミニウム固溶体、非平衡共晶MgZnおよび共晶相(Al,Zn)Ca)の間で再分布できる。そのような再分布は、主に合金中の亜鉛自体の濃度と他の合金元素の濃度に依存する。また、MgZnの準安定相の二次析出による著しい硬化を保証するために、熱処理後、過飽和固溶体には少なくとも約(質量%)4.0%の亜鉛と約1%のマグネシウムが含まれる必要がある。アルミニウム固溶体の亜鉛含有量は、2つの割合に同時に依存する。1)合金中のZn/Ca比と2)Ca/(Fe+Si+Ni)比。
【0018】
カルシウム、鉄、ケイ素、セリウム、ニッケルは共晶形成元素であり、請求される量は、構造中に鋳造中の高い加工性を保証する共晶成分の形成に必要である。カルシウムの濃度が高い場合、共晶相が増加しがらアルミニウム固溶体中の亜鉛の濃度が低下することにより、強度特性が低下する。鉄、シリコン、ニッケルの濃度が高い場合、機械的特性を大幅に低下させる構造内に初晶化相が形成される可能性が高くなる。請求される共晶形成元素(カルシウム、鉄、ケイ素、セリウム、ニッケル)よりも含有量が少ない場合、鋳造中に高温割れが発生する可能性が高くなる。
【0019】
請求される濃度範囲では、カルシウムが共晶成分の以下の化合物を形成する。
【0020】
亜鉛との化合物 (Al,Zn)Ca
鉄との化合物 Al10FeCa
ケイ素との化合物 AlSiCa
ニッケルとの化合物 AlNiCa
請求される量のチタン含有量は、アルミニウム固溶体を改質するために必要であり、より低い含有量は高温割れが発生するリスクが高くなる。含有量が高い場合、構造にTi含有相の初晶が形成される可能性が高くなる。
【0021】
改質の要素としては、チタンの追加およびチタンの代わりにジルコニウム、スカンジウム、その他の要素を使用することもできる。この場合の改質効果は、初晶化アルミニウム固溶体の種である初晶化対応相の形成により達成される。
【0022】
追加の硬化として、請求される材料はジルコニウムとスカンジウムの添加により硬化できる。請求される量のジルコニウムおよびスカンジウムは、平均サイズが10~20nm以下のL1格子を有する二次相AlZrおよび/またはAl(Zr,Sc)の形成のために必要である。濃度が低い場合、粒子の数が鋳物の強度特性を高めるには足りなくなり、大量の場合、鋳物の機械的特性に悪影響を与える初晶(結晶格子D023)の形成の危険がある。
【0023】
ジルコニウム、チタン、およびスカンジウムの合計に対する請求される0.25質量%以下の制限は、これらの元素を含む初晶が形成される可能性があるため、機械的特性の低下につながる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、高強度アルミニウム合金の典型的な微細構造を示している。背景にカルシウムを含む共晶成分が表されるアルミニウム固溶体が示されている。
図2図2は、工業用合金A356.2と比較した実験用合金の試験結果を示している。
図3図3は、356種の合金と比較して、請求される合金から鋳物を製造するための工程図を示している。工程図では、合金356種の例を使用して、水焼入れ処理(固溶化処理)およびその後の時効の使用を含む、強度特性を向上させるために必要である熱処理を含む鋳造の古典的な順番を示す。請求される材料の特徴は、その硬化のために、水焼入れ処理を除外できることである。請求される材料の合金元素(亜鉛とマグネシウム)を含む固溶体の必要な過飽和は、450℃以下の加熱にさらされ、その後空気中の冷却により達成できる。
図4図4は、低圧鋳造により製造されたホイールの鋳物の例を示す。
図5図5は、合金A356.2と比較した請求される材料の疲労破壊曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例1
6つの合金が鋳物の形で調製され、その組成は以下の表1に示される。この合金は、誘導炉で黒鉛るつぼに次の装入材料(質量%)から調製された。アルミニウム(99.85%)、亜鉛(99.9%)、マグネシウム(99.9%)およびAl-6Ca、Al-10Fe、Al-20Ni、Al-10S、Al-20Ce、Al-2Sc、Al-5Ti、およびAl-10Zr合金材。この合金は、直径22mmのPrutok型の金型に鋳造され、大量上供給(GOST 1583)、初期金型温度は約300℃で行われた。
【0026】
硬化レベルの評価は、T6モード(水焼入れと時効)による最大強度の熱処理後、引張試験の結果によって評価された。引張試験は、直径5mm、設計長25mmの削られたサンプルで実施した。試験速度は10mm/分であった。合金中の合金元素の濃度は、ARL4460発光分光計で測定された。アルミニウム固溶体中および二次析出物中の亜鉛含有量は、X-MaxN SDD検出器を備えたFEI Quanta FEG 650電子走査顕微鏡を使用してX線微量分析によって監視された。
【0027】
化学組成の結果と(T6状態における)機械的特性の確定は、それぞれ表1と表2に示される。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示される結果の分析から、本発明の合金(組成3~5号)のみが必要な引張の機械的特性を提供することが分かる。高強度と伸びの特性の組み合わせは、準安定相MgZnの二次析出物によって硬化したアルミニウムマトリックスの背景にある、カルシウムを含む共晶相の好ましい形態によって保証される。T6状態の合金第3号の構造は、考慮される濃度範囲に典型的であり、図1に示される。
【0031】
合金組成第1号および第2号は、固溶体の熱処理後のアルミニウム固溶体中および二次析出物中の亜鉛の濃度が低いため、二相MgZnの強化材の低体積分率による、一時的な引張強度の値がそれぞれ202MPaで258MPaを超えず、必要な強度特性を提供できない。合金第6号の組成は、粗鉄含有相の体積分率が大きいため、特定の伸びが得られず、その値は1%未満である。
【0032】
検討された合金のうち、鋳物を得るためには、表1の組成第4号が最も相応しい。
【0033】
実施例2
複雑な共晶を構成する他の元素の影響を評価するために、表3に示す次の組成を調製した。直径10mmの棒状のサンプルは、300℃で銅型に鋳造して得られた。化学組成と(T6状態の)機械的特性の確定の結果をそれぞれ表3と表4に示す。合金第7-1号と第7-2号、および合金第8-1号と第8-2号の構造は、質的には異ならない。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
実施例3
流動性を評価するために、356種の合金と比較して、合金第4号および第7-1号をスパイラル金型に注いだ。スパイラル金型の温度は約200℃だった。
【0037】
請求される合金組成第4号および第7-1号からの図2に示すスパイラル金型の鋳物は、請求される材料が合金A356.2に匹敵する高い流動性を持っていることを示す。
【0038】
【表5】
【0039】
実施例4
請求される合金の合金を硬化させるための追加の要素として、以下のジルコニウムおよびスカンジウム添加剤を検討した。検討した化学組成を表6に示す。ジルコニウムとスカンジウムの効果は、表1の合金第3号の合金成分の含有量の例を使用して評価した。
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
合金第9-13号の微細構造の分析は、Ti+Zr+Scの合計が0.25質量%以下である場合、Ti+Zr+Scの合計が0.2質量%であった合金第14号と違い、これらの元素を含むD023種の初晶は構造中にないことを示した。構造中にD023種の初晶が含まれることは、機械的特性への悪影響のために認められていない。
【0043】
表7に示す引張結果の分析から、合金第9号、第10号と第11号の結果を比較すると、マグネシウムの濃度を低下させても、代わりにジルコニウムとスカンジウム)を添加することにより強度を維持できることがわかる。この場合の硬化は、L1型格子のAl(Zr,Sc)相の二次析出物の形成によって保証される。
【0044】
i、ZrおよびScの割合が、それぞれ0.02、0.15、および0.08質量%である合金第11号、0.02、0.08、および0.15質量%である合金第12号、また、TiおよびScの割合が0.05、および0.07質量%である合金第13号において、さらなる硬化が得られた
【0045】
参考例
実験室条件で水焼入れ処理を使用せずに材料の硬化を評価するために、表8に示す組成の合金を検討した。
【0046】
【表8】
【0047】
硬化は、450℃で3時間アニールし、空気中で冷却し、続いて180℃で3時間に時効した後に評価した。引張試験の結果を表9に示す。
【0048】
【表9】
【0049】
得られた結果から、検討された合金では、水焼入れ処理を使用せずに固溶体の熱処理を使用できるため、水焼入れ処理が必須の操作である合金356種と比較して鋳造生産サイクルが大幅に簡素化されることがわかる。新しい材料の利点は図3に最も明確に示される。
【0050】
実施例6
鋳物を鋳造する際の製造可能性を評価するために、SKAD工場の産業環境で17インチの半径のホイール(図4)を、低圧鋳造法により、請求される合金組成第3号(表1)から鋳造した。請求される材料は、鋳造時に高い加工性を示し、ディスクリム、ハブ、スポークを形成することができた。
【0051】
請求されるアルミニウム合金から他の製品、特に板金、プレス半製品、鍛造品など、変形処理を使用して製造できる。
【0052】
特許請求されるのは、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄、チタンを含むとともに、シリコン、セリウム、ニッケル、ジルコニウム、スカンジウムを含むグループから選ばれる少なくとも1つの元素を含む高強度アルミニウム合金である。合金の成分は、次の含有量である、質量%:
亜鉛(Zn)5~8
マグネシウム(Mg)1.5~2.1
カルシウム(Ca)0.10~1.9
鉄(Fe)0.08~0.5
チタン(Ti)0.01~0.15
ケイ素(Si)0.08~0.9
ニッケル(Ni)0.2~0.4
セリウム(Ce)0.2~0.4
ジルコニウム(Zr)0.08~0.15
スカンジウム(Sc)0.08~0.15
アルミニウム(Al)残り
ここでは、アルミニウム固溶体中の亜鉛含有量と二次析出物は少なくとも4質量%である。
【0053】
カルシウムは、亜鉛および鉄を共晶成分とするとともに粒径が3μm以下の化合物の形で合金構造中に含まれる場合がある。また、カルシウムは、亜鉛、鉄およびケイ素を共晶成分とするとともに粒径が3μm以下の化合物の形で合金構造中に含まれる場合がある。また、カルシウムは、亜鉛、鉄およびニッケルを共晶成分とするとともに粒径が3μm以下の化合物の形で合金構造に含まれる場合がある。また、カルシウムは、亜鉛、鉄およびセリウムを共晶成分とするとともに粒径が3μm以下の化合物の形で合金構造中に含まれる場合がある。
【0054】
亜鉛は、アルミニウム固溶体の組成中に少なくとも5質量%の含有量で含まれることが望ましい。
【0055】
Ca/Fe比は>1.1であり、Ce/Fe比は>1.1であることが望ましい。
【0056】
本合金は、低圧鋳造法または重力鋳造法により、または結晶化を伴う高圧鋳造法により、または高圧鋳造法により、鋳物の形態で製造することができる。
【0057】
アルミニウム合金の構造は、硬化剤の準安定相の二次析出物、およびカルシウム、ニッケルを含むとともに、ケイ素、セリウム、ニッケルのグループから選ばれる1つの元素を含む共晶成分によって硬化したアルミニウム固溶体であることが重要である。亜鉛とマグネシウムは、分散硬化による硬化相の二次析出物の形成に必要であり、カルシウム、鉄、シリコン、セリウム、ニッケルは共晶形成元素であり、鋳造において高い加工性を保証する共晶成分の形成に必要であり、チタンはアルミニウム固溶体を改質するために必要である。
【0058】
実施例7
合金第4号および合金A356.2の場合、図5に示す疲労破壊曲線が作成された。対称荷重下での純粋な曲げのスキームに従って、10サイクルに基づいて疲労試験を実施した。試験にはInstron R.R. Moor型機器を使用した。作業部の直径は7.5mm、試験は、両方の材料に対してT6状態で実行された。
【0059】
得られた結果から、請求される材料の耐久限度は、10サイクルに基づいて合金A356.2の疲労強度よりも50%以上高いことがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5