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特許7113853オブジェクトの装飾のための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】オブジェクトの装飾のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220729BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20220729BHJP
   B44C 1/165 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B41J2/01 101
B41M3/00 Z
B41J2/01 129
B41J2/01 123
B41J2/01 401
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 121
B44C1/165 K
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019566838
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2018063659
(87)【国際公開番号】W WO2018219778
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】102017112259.1
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501161295
【氏名又は名称】イシマット ゲーエムベーハー ズィープドラックマシーネ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーダー ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】エゲテマイル ベルント
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-061743(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050777(WO,A1)
【文献】特表2018-520903(JP,A)
【文献】特表2016-508080(JP,A)
【文献】特開2013-132640(JP,A)
【文献】特開2013-166587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0139649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41M 3/00
B44C 1/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト(13)を装飾するための装置(100)であって、
前記オブジェクト(13)を保持するための保持装置(1)と、
装飾材料を備えた転写媒体(3)を前記オブジェクト(13)に押圧するためのプレス装置(2)と
記プレス装置(2)の前方に設けられた、前記装飾材料を前記転写媒体(3)に塗布するための印刷装置(7)と、
を備える装置であって
前記装置は、
前記装飾材料または前記オブジェクト(13)を備えた前記転写媒体(3)に接着剤を塗布するための接着剤塗布装置(4)と、
前記接着剤を硬化させるための硬化装置(5)と、
をさらに備え、
前記転写媒体(3)の前記装飾材料は、前記接着剤が設けられたオブジェクト(13)の位置において接着され、その後、押圧後に前記転写媒体(3)が前記オブジェクト(13)から除去されると、前記装飾材料は前記位置において前記オブジェクト(13)上に残存し、
前記オブジェクト(13)または前記転写媒体(3)の前記接着剤が塗布されていない位置では、前記装飾材料は前記オブジェクト(13)に接着されずに前記転写媒体(3)のキャリア材料上に残存する、ことを特徴とする装置(100)。
【請求項2】
記硬化装置(5)は、前記プレス装置(2)の領域に配置され、
前記プレス装置(2)は、前記転写媒体(3)の押圧および前記接着剤の硬化を同時に行うように設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記接着剤塗布装置(4)は、前記印刷装置(7)と前記プレス装置(2)との間に配置され、
前記接着剤塗布装置(4)は、前記印刷装置(7)によって印刷された前記転写媒体(3)に接着剤を塗布し、
前記接着剤塗布装置(4)は、前記印刷装置(7)の一部として形成されることが好ましい、ことを特徴とする請求項2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記印刷装置(7)は、前記装飾材料を予備硬化させるためのUV光源を有し、および/または、
接着剤塗布装置(4)は、接着剤を予備硬化させるためのUV光源を有し、および/または、
前記硬化装置(5)は、前記接着剤を硬化させるためのUV光源を有し、
前記接着剤を硬化させるための前記UV光源から前記オブジェクト(13)までの距離が、2mm~50mm、好ましくは2mm~40mmであり、かつ/または、
前記接着剤を硬化させるための前記UV光源の総UV放射照度が、1W/cm~50W/cm、好ましくは3W/cm~40W/cmであり、かつ/または、
前記接着剤を硬化させるための前記UV光源の正味UV放射照度が、4.8W/cm~8W/cmである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項5】
前記印刷装置(7)は、前記装飾材料が第1の領域において前記転写媒体(3)に塗布され、第2の領域において塗布されないように設計され、
特に、前記第1の領域および前記第2の領域は、1次元グリッドまたは2次元グリッドに従って配置され、および/または、前記第1の領域の平均幅と前記第2の領域の平均幅との比は、0.75:1~1:5である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項6】
前記転写媒体(3)に塗布された前記装飾材料を乾燥させるための乾燥ユニット(6)が設けられ、
前記乾燥ユニット(6)は、好ましくは、前記印刷装置(7)の一部として形成される、ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項7】
前記転写媒体(3)を前記オブジェクト(13)の外周に対して接線方向に案内するように設定された転写媒体ガイド(8)を有し、
前記プレス装置(2)は、前記転写媒体(3)を前記オブジェクト(13)と前記転写媒体(3)との間の接触領域(14)に沿って前記オブジェクト(13)に押圧するように配置され、
前記プレス装置(2)は、好ましくは、前記プレス装置(2)の表面速度を前記オブジェクト(13)の表面速度に一致させるように移動可能であり、
前記転写媒体(3)は、好ましくは、前記転写媒体(3)の表面速度を前記オブジェクト(13)の表面速度に一致させるように移動可能であり、
前記転写媒体(3)の表面速度と前記オブジェクト(13)の表面速度とが±15%未満、好ましくは±10%未満だけ異なるように、前記転写媒体(3)の表面速度を前記オブジェクト(13)の表面速度に適合させる、ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項8】
前記プレス装置(2)は、可撓性のプレス層をさらに有し、かつ/または、
前記転写媒体(3)は、エンドレスベルトとして設けられ、
エンドレスベルトとして設けられた前記転写媒体(3)は、好ましくは、前記プレス装置(2)と転写媒体ガイド(8)との間に延在しており、かつ/または、
前記転写媒体(3)は、前記プレス装置(2)、好ましくは前記プレス装置(2)のシリンダ(20)に直接配置される、ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項9】
前記装飾材料を塗布する前に前記転写媒体(3)を前処理するための前処理装置(9)、および/または、前記オブジェクト(13)に対して前記転写媒体(3)を押圧した後、印刷された前記転写媒体(3)を洗浄するための洗浄装置(10)をさらに有する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項10】
前記プレス装置(2)、好ましくは、前記プレス装置(2)のシリンダ(20)は、浮動した状態または吊り下げられた状態で設けられる、ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項11】
前記プレス装置(2)が、特に220nm~400nm、好ましくは350nm~400nm、さらに好ましくは365nm~395nmの波長範囲で透明または半透明であり、透明度が特に30%~100%、好ましくは40%~100%である、ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項12】
前記装飾材料の前記転写媒体(3)への特にパルス状の塗布が前記印刷装置(7)において、前記プレス装置(2)における装飾材料を備えた前記転写媒体(3)の前記オブジェクト(13)への特にパルス状の押圧中に同時に行われるように、前記装置(100)が設計されているか、または、
前記転写媒体(3)が、前記プレス装置(2)における装飾材料を備えた前記転写媒体(3)の前記オブジェクト(13)への特にパルス状の押圧に応じて駆動されるように、前記装置(100)が設計され、
前記転写媒体(3)の駆動は、好ましくは、前記オブジェクト(13)の搬送装置のパルスで行われるか、または、
前記装飾材料を備えた前記転写媒体(3)の前記オブジェクト(13)への押圧はパルス方式で行われ、
前記転写媒体(3)への前記装飾材料の塗布は、連続的なウェブ速度で行われる、ことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項13】
前記装置(100)は、補償モジュール(18)を備え、
前記装飾材料の前記転写媒体(3)への塗布および/または前記転写媒体(3)の搬送が、装飾材料を備えた前記転写媒体(3)の前記オブジェクト(13)への特にパルス状の押圧の休止段階の間に同時に、特に連続して行われるように、前記補償モジュール(18)が設計され、
前記補償モジュール(18)は、前記転写媒体(3)のループのための少なくとも1つの収容空間、および/または、ウェブ張力を維持するための手段を備え、かつ/または、
前記補償モジュール(18)または前記補償モジュール(18)内の機械的な格納部(18a)が、第1の方向への横方向移動によって前記転写媒体(3)を受容または格納し、前記横方向移動を第2の方向に変更することによって前記転写媒体(3)を再び解放するように、前記補償モジュール(18)が設計される、ことを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項14】
前記装置(100)は、前記オブジェクト(13)を前処理するための前処理装置をさらに含み、
特に、前記前処理装置は、オブジェクト洗浄装置および活性化装置を含み、
前記活性化装置は、好ましくは、前記オブジェクト洗浄装置の後方に配置され、
汚れおよび/または他に存在する保護コーティングまたは他の機能コーティングが除去され、および/または、前記オブジェクト(13)の表面の改質が少なくとも1つの酸化炎で行われるように、前記オブジェクト洗浄装置が設計される、ことを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の装置(100)。
【請求項15】
オブジェクト(13)を装飾する方法であって、
前記オブジェクト(13)は、保持装置(1)によって保持され、
第1のステップにおいて、装飾材料が印刷装置(7)によって転写媒体(3)に塗布され、
第2のステップにおいて、前記装飾材料が設けられた前記転写媒体(3)または前記オブジェクト(13)に接着剤が塗布され、
第3のステップにおいて、前記転写媒体(3)がプレス装置(2)によって前記オブジェクト(13)上に押圧され、同時に前記接着剤が硬化され、
前記転写媒体(3)の前記装飾材料は、前記接着剤が設けられたオブジェクト(13)の位置において接着され、その後、押圧後に前記転写媒体(3)が前記オブジェクト(13)から除去されると、前記装飾材料は前記接着剤が設けられた位置において前記オブジェクト(13)上に残存し、
前記オブジェクト(13)または前記転写媒体(3)の前記接着剤が塗布されていない位置では、前記装飾材料は前記オブジェクト(13)に接着されずに前記転写媒体(3)のキャリア材料上に残存する、ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1のステップにおいて、前記転写媒体(3)に塗布された前記装飾材料は、前記装飾材料を予備硬化させるためのUV光源によって予備硬化され、および/または、
前記第2のステップにおいて、前記接着剤は、前記接着剤を予備硬化させるためのUV光源によって予備硬化され、および/または、
前記第3のステップにおいて、前記接着剤は、前記接着剤を硬化させるためのUV光源によって硬化され、かつ/または、
前記第3のステップにおいて、前記接着剤を硬化させるための前記UV光源の総UV放射照度は、1W/cm~50W/cm、好ましくは3W/cm~40W/cm、かつ/または、
前記接着剤を硬化させるための前記UV光源の正味UV放射照度は、4.8W/cm~8W/cmである、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のステップにおいて、前記装飾材料は、前記印刷装置(7)によって前記転写媒体(3)に塗布され、前記装飾材料は、第1の領域において前記転写媒体(3)に塗布され、第2の領域には塗布されず、
特に、前記第1の領域および前記第2の領域は、1次元グリッドまたは2次元グリッドに従って配置され、かつ/または前記第1の領域の平均幅と前記第2の領域の平均幅との比は、0.75:1~1:5である、ことを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記オブジェクト(13)に対する前記転写媒体(3)の押圧は、前記オブジェクト(13)が回転軸を中心に回転し、前記転写媒体(3)が前記オブジェクト(13)の外周に対して接線方向に案内され、前記プレス装置(2)が前記オブジェクト(13)と前記転写媒体(3)との間の接触領域(14)に沿って前記オブジェクト(13)に対して前記転写媒体(3)を押圧することによって行われ、
前記プレス装置(2)は、好ましくは、当該プレス装置(2)の表面速度が前記オブジェクト(13)の表面速度に対応するように移動し、
前記転写媒体(3)は、好ましくは、前記転写媒体(3)の表面速度が前記オブジェクト(13)の表面速度に対応するように移動するか、または、
前記オブジェクト(13)への前記転写媒体(3)の押圧は、前記オブジェクト(13)が固定位置に保持され、前記転写媒体(3)が前記プレス装置(2)により前記オブジェクト(13)の表面に展開されることによって行われ、
前記プレス装置(2)は、前記オブジェクト(13)と前記転写媒体(3)との間の接触領域(14)に沿って前記オブジェクト(13)に対して前記転写媒体(3)を押圧し、
前記プレス装置(2)は、好ましくは、前記オブジェクト(13)に沿って移動する、ことを特徴とする請求項15~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記転写媒体(3)はエンドレスベルトとして設けられ、
請求項15に記載の一連のステップが複数回実行され、
各々の場合において、請求項15に記載の一連のステップが実行されるたびに、さらなるオブジェクト(13)に装飾材料が提供される、ことを特徴とする請求項15~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記転写媒体(3)は、前記装飾材料の塗布前に前処理され、かつ/または、
前記転写媒体(3)は押圧後に洗浄され、かつ/または、
エンドレスベルトとして設けられた前記転写媒体(3)は、前記プレス装置(2)を通過した後に洗浄され、次いで、新たな装飾材料の塗布のため、前記転写媒体(3)は、前記印刷装置(7)に戻る前に前処理される、ことを特徴とする請求項15~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記装飾材料の前記転写媒体(3)への特にパルス状の塗布は、前記印刷装置(7)において、前記プレス装置(2)における装飾材料を備えた前記転写媒体(3)の前記オブジェクト(13)への特にパルス状の押圧中に同時に行われ、または、
前記転写媒体(3)は、前記プレス装置(2)における装飾材料を備えた前記転写媒体(3)の前記オブジェクト(13)への特にパルス状の押圧に応じて駆動され、
特に、前記転写媒体(3)の駆動は、前記オブジェクト(13)の搬送装置のパルスで行われるか、または、
前記装飾材料を備えた前記転写媒体(3)の前記オブジェクト(13)への押圧はパルス方式で行われ、
前記転写媒体(3)への前記装飾材料の塗布は、連続的なウェブ速度で行われる、ことを特徴とする請求項15~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
補償モジュール(18)の使用により、前記装飾材料の前記転写媒体(3)への塗布および/または前記転写媒体(3)の搬送が、前記装飾材料を備えた前記転写媒体(3)の前記オブジェクト(13)への特にパルス状の押圧の休止段階の間に同時に、特に連続して行われ、かつ/または、
前記補償モジュール(18)または前記補償モジュール(18)内の機械的な格納部(18a)は、第1の方向への横方向移動によって前記転写媒体(3)を受容または格納し、前記横方向移動を第2の方向に変更することによって前記転写媒体(3)を再び解放する、ことを特徴とする請求項15~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記オブジェクト(13)は、前記装飾材料の塗布前に前処理され、
前記前処理は、特に、オブジェクト洗浄ステップおよび/または活性化ステップを含み、かつ/または、
前記オブジェクト洗浄ステップにおいて、汚れおよび/または他に存在する保護コーティングまたは他の機能コーティングが除去され、および/または、前記オブジェクト(13)の表面の改質が少なくとも1つの酸化炎により行われる、ことを特徴とする請求項15~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第1のステップにおいて、前記印刷装置(7)によって前記転写媒体(3)にプライマ層がさらに塗布され、
特に、前記プライマ層が、ポリアクリレートおよび/または酢酸ビニル共重合体からなり、および/または、0.1μm~1.5μm、好ましくは0.5μm~0.8μmの層厚で塗布され、
前記プライマ層が、キャリア材料、特にプラスチックキャリアフィルム(16)から離れた方向に面する転写媒体(3)の表面を形成するように、前記プライマ層が塗布される、ことを特徴とする請求項15~23のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾されるオブジェクト、特に三次元オブジェクト、好ましくは円筒形、楕円形または角形の断面を有するオブジェクト、特に、ガラス、セラミック、プラスチックまたは金属製の管、瓶、グラス、小瓶および容器ならびに実質的に二次元のオブジェクト、例えばトラック、ストリップ、円弧、プレート、ディスク、パネルまたはボードを装飾するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットスタンピングは、装飾フィルム、特に金属化フィルムを用いた紙、ラベル、プラスチックおよびガラス容器の装飾のために知られている。この方法では、転写フィルムまたはスタンピングフィルムをホットメルト接着剤でコーティングする。転写フィルムまたはスタンピングフィルムとは、好ましくは、プラスチックキャリアフィルム、特に金属層および/またはインク層上に取り外し可能に配置された装飾材料を意味する。ホットスタンピング装置において、接着剤層は、圧力および温度によりスタンピング金型で活性化され、その結果、装飾材料と印刷物との間に接着が生じる。次いで、プラスチックキャリアフィルムが剥離される。
【0003】
さらに、転写フィルムまたはスタンピングフィルムが同様に使用される、いわゆるコールドスタンピングがある。このプロセスにおいて、接着剤は、最初に、印刷方法(オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、またはスクリーン印刷)を使用して、第1のデバイスにおいて物品上に堆積される。展開装置からの装飾材料、特に金属層を備えた転写フィルムを物品上に積層して接着剤層を乾燥させる。金属層は、蒸着金属化層および/または印刷された金属顔料層とし得る。これにより、装飾材料は、既に接着剤が印刷された位置に接着され、プラスチックキャリアフィルムは、接着されていない残りの装飾材料とともに剥がされて廃棄される。接着剤として、UV光下で硬化する接着剤(UV接着剤)が使用される場合がある。接着剤の乾燥は、特にフィルムを通るUV光によって行われる。
【0004】
コールドスタンピングは、ホットスタンピングよりも有益である。1つには、スタンピング金型を用いて接着剤を加熱する必要がないことである。スタンピング金型が必要ないため、工具コストが削減される。さらに、コールドスタンピング装置を印刷装置に組み込むことができ、その結果、別個の製造プロセスが不要となる。
【0005】
公知の方法では、例えば、グラス、瓶または管などの三次元オブジェクトに対してコールドスタンピングを行うことはできない。公知の方法では、積層後、接着剤を乾燥させるため、装飾材料としてメタライゼーションを含む材料と転写フィルムとをしばらくの間平行に案内する必要がある。三次元オブジェクトは、例えば、独国実用新案第202004019382U1号明細書に開示された保持マンドレルなどの保持装置に押圧され、異なるワークステーションにおける印刷中に長手方向軸を中心に回転される。したがって、オブジェクトは、全ての面からアクセス可能であり、オブジェクト全体に印刷を行うことが可能となる。
【0006】
独国特許出願公開第102012112556号明細書には、コールドスタンピングのための方法および装置が開示されている。この方法および装置では、第1のステップにおいて、第1のワークステーションでオブジェクトに接着剤が塗布される。第2のステップでは、第2のワークステーションにおいて、搬送装置によりロールから供給された金属層を有する転写フィルムが、プレス装置によってオブジェクトに押圧され、同時に接着剤が硬化する。上記方法および装置は、使用される転写フィルムの製造が別個の製造プロセスで行われるという欠点を有する。装飾材料として、全く異なる層が転写フィルムのキャリアフィルムに連続的に塗布され、特に、印刷され、かつ/または蒸着される。次に、このようにして完成した転写フィルムは装置に搬送され、当該装置内において、オブジェクトが装飾されて取り付けられるか、あるいはクランプされる。したがって、搬送費用が必要となるとともに、装飾の形態は、装飾材料のどの層がどのような配置で転写フィルムに設けられるかということに依存している。さらに、1回の使用後にプラスチックキャリアフィルムを廃棄する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、公知の装置および方法では、転写フィルムは製造後に巻き取られ、プレス装置を有する装置へと搬送される。巻き取られる際、転写フィルムに印刷された装飾材料は、転写フィルムが巻き取られる方向に応じて、巻き取りにおける次のまたは先行する転写フィルムの裏面と必然的に接触する。この接触により、装飾材料がまだ完全に乾燥していない場合でも転写フィルムの裏面への接着が行われる。これにより、後に巻き戻す際に剥離が生じて、印刷されるオブジェクト上の表現に欠陥が生じる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、オブジェクトの装飾のための改良された装置および対応する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有するオブジェクトを装飾するための装置および請求項27に記載の特徴を有するオブジェクトを装飾するための方法によって実現する。装置および方法の利点は、従属請求項ならびに本明細書および図面から得られる。
【0010】
これに対応して、オブジェクトを装飾するための装置を提案する。この装置は、オブジェクトを保持するための保持装置と、装飾材料を有する転写媒体をオブジェクト上に押圧するためのプレス装置と、を有する。本発明によれば、プレス装置の前方に、装飾材料を転写媒体に塗布するための印刷装置が設けられている。印刷装置は、転写媒体上に多色装飾材料を印刷するように設計されていることが好ましい。これに対応して、装飾されるオブジェクトを保持装置により保持する、オブジェクトの装飾方法をさらに提案している。第1のステップにおいて、印刷装置により装飾材料が転写媒体に塗布される。第2のステップにおいて、接着剤が、装飾材料が設けられた転写媒体またはオブジェクトに塗布される。第3のステップにおいて、転写媒体が、プレス装置によりオブジェクトに押圧され、特に同時に、硬化装置により接着剤が硬化する。
【0011】
プレス装置の前方には、転写媒体に装飾材料を塗布するための印刷装置が設けられている。このため、押圧および転写の直前または略直前に、同一の装置で転写媒体に装飾材料を印刷することができ、これにより、オブジェクトに装飾が施される。その結果、装飾、印刷物のデザインおよび/または装飾されるオブジェクト量の変更に迅速かつ柔軟に対応することができる。フィルムウェブ全体への別個の印刷、印刷前の付加的に必要な巻き戻しおよび印刷後の巻き取りが不要となる。これにより、オブジェクトに印刷するための搬送費用および転写材料の浪費が削減される。さらに、転写フィルムを製造するための別個の装置および巻き取られた既製の転写フィルムを搬送するための任意の装置が省略されるため、装置を有するシステムは、最新技術として周知のシステムよりも小さくかつより単純に構成され得る。また、別個の装置における最新の方法に要求される、既製の転写フィルムの別個の製造、その後の巻き取りステップおよび巻き取られた印刷転写フィルムのさらなる装置への搬送を省略することができるため、本発明の方法に必要な構造はより単純なものとなる。
【0012】
さらに、これにより、転写媒体だけに印刷が行われ、オブジェクトへの直接的な印刷はもはや必要とされない。したがって、複雑または極端に湾曲した形状を有するオブジェクトに対して簡単な方法で印刷することができる。さらに、印刷またはスタンピングにおける条件は、実質的に常に同じである。これは、常に転写媒体に印刷が行われ、特に物理的および化学的特性に関して常に一定の表面に印刷されるため、印刷プロセスのパラメータを正確かつ最適に設定できるためである。この点において、オブジェクトを装飾するためのプロセスの負荷が軽くなる。
【0013】
本明細書において、「プレス装置の前方に」とは、印刷装置が、プレス装置の移動方向または転写媒体の移動方向においてプレス装置の上流側に位置することを意味する。つまり、転写媒体の一部分は、最初に印刷装置を通過し、次にプレス装置に到達する。その結果、最初に印刷装置によって少なくとも部分的に転写媒体上への装飾材料の印刷が行われ、次に、好ましくはその直後に、プレス装置によってオブジェクトへの装飾材料の転写が行われる。印刷された転写媒体および/またはオブジェクトへの接着剤の塗布は、好ましくは、装飾材料が転写媒体上に印刷された後であって、装飾材料がオブジェクトに転写される前に行われる。
【0014】
したがって、装飾材料が印刷された後に転写媒体を巻き上げる必要はなく、表面、特に巻き上げられた転写媒体の裏面に予め接触することなく、プレス装置に直接案内することができる。
【0015】
転写媒体とは、特に、可撓性のキャリア材料、特に、装飾材料を再び取り外し可能に塗布することができる可撓性のプラスチックキャリアフィルムを意味する。転写媒体は、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリイミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリスチレン(PS)から形成されたプラスチックキャリアフィルムであってもよく、特に、5μm~50μm、好ましくは7μm~23μmの層厚を有し、有利にはプライマ層が塗布される。したがって、転写媒体はプライマ層を含むことができる。
【0016】
本明細書において、プライマ層とは、好ましくは、接着促進層を意味し、これを介することで、後続の層がプラスチックキャリアフィルムにより良好に接着する。
【0017】
プライマ層は、好ましくは、0.1μm~1.5μm、好ましくは0.5μm~0.8μmの層厚を有するポリアクリレートおよび/または酢酸ビニル共重合体(コポリマー)からなり、これは、特に、キャリア材料から離れた方向に面する転写媒体の表面を形成する。プライマ層は、物理的および化学的特性に関して使用される接着剤に対して最適化され、その結果、オブジェクトと転写媒体との間の最適な接着が、オブジェクトにかかわらず可能な限り保証される。さらに、このように最適化されたプライマ層は、塗布された接着剤が流れたり、広がったりまたは圧搾されたりせずに、所望の状態で転写媒体上に残存させることができる。
【0018】
特に、プライマ層が微孔質であり、好ましくは100nm~180nm、さらに好ましくは120nm~160nmの表面粗さを有することが望ましい。接着剤は、そのような層に部分的に浸透することができ、これにより、高分解能で特に良好に固定される。
【0019】
1.5cm/g~120cm/gの顔料、好ましくは10cm/g~20cm/gの顔料を有するプライマ層を使用することが特に好ましいことが分かった。
【0020】
例えば、計算のため、プライマ層の組成を以下に示す(データの単位はg)。
4900:有機溶媒エチルアルコール
150:有機溶媒トルエン
2400:有機溶媒アセトン
600:有機溶媒ベンジン80/110
150:水
120:バインダI、エチルメタクリレート重合体
250:バインダII、酢酸ビニルホモポリマー
500:バインダIII、酢酸ビニルラウレート共重合体、SC=50±1%
400:バインダIV、イソブチルメタクリレート
20:顔料多官能性酸化ケイ素、平均粒径3μm
5:充填剤微粉化アミドワックス、粒径3μm~8μm
【0021】
このプライマ層の顔料については次の通りである。
【数1】
式中、
=20gの多官能性ケイ素酸化物、
f=ON/d=300/0.4g/cm=750cm/gの多官能性ケイ素酸化物、
BM=120gのバインダI+250gのバインダII+(0.5x500g)バインダIII+400gのバインダIV=1020g、
=0gである。
【0022】
このようにして、良好であることが見出されたプライマ層の組成から出発して、これから逸脱する可能性のあるさらなる色素沈着を複雑でない方法で迅速に計算することができる。
【0023】
さらに、プライマ層が38mN/m~46mN/m、好ましくは41mN/m~43mN/mの表面張力を有することが好ましい。そのような表面張力は、特に上記のような接着剤系の、規定された幾何学的形状を有する接着剤の液滴が流れることなく表面に接着されることを可能にする。
【0024】
熱可塑性トナーを使用する場合、顔料が0.5cm/g~120cm/g、好ましくは顔料が1cm/g~10cm/gであるプライマ層を使用するのが特に好ましいことが分かった。
【0025】
例えば、計算のため、使用するプライマ層の組成を以下に示す(データの単位はグラム)。
340:有機溶剤エチルアルコール
3700:有機溶剤トルエン
1500:有機溶剤アセトン
225:バインダI、塩素化ポリプロピレン
125:バインダII、ポリ-n-ブチル-メチル-メタクリレート
35:バインダIII、n-ブチル-メチル-メタクリレート共重合体
148:顔料多官能性酸化ケイ素、平均粒径12nm
【0026】
このプライマ層の顔料について以下のことが当てはまる。
【数2】
式中、
=148gの多官能性酸化ケイ素、
f=ON/d=220/50g/cm=4.4cm/gの多官能性酸化ケイ素、
BM=225gのバインダI+125gのバインダII+35gのバインダIII=385g、
=0gである。
【0027】
装飾材料は、好ましくは、転写媒体に直接塗布される。しかし、装飾材料を転写媒体の既存のコーティングに塗布してもよい。同様に、表面の所定の領域のみにおいて転写媒体に既存のコーティングを設けてもよく、既存のコーティングの間の自由領域にかつ/または既存のコーティングに装飾材料を塗布してもよい。例えば、既存のコーティングは、剥離層または別の機能層である。代替的にまたは追加的に、既存のコーティングは、例えば、印刷および/または蒸着されたインク層、金属層、反射層、保護層、機能層等で形成された既存の装飾コーティングであってもよい。
【0028】
剥離層は、好ましくは、アクリレート共重合体、特に水性ポリウレタン共重合体からなり、好ましくはワックスを含まずかつ/またはシリコーンを含まない。剥離層は、好ましくは、0.01μm~2μm、好ましくは0.1μm~0.5μmの層厚を有し、有利にはプラスチックキャリアフィルムの表面に配置される。剥離層は、オブジェクトへの塗布後に、転写媒体からのプラスチックキャリアフィルムの単純かつ損傷のない剥離を可能にする。
【0029】
装飾材料は、好ましくは、ニトロセルロース、ポリアクリレートおよびポリウレタン共重合体から一つまたは複数のワニス層を有し、その層厚は、それぞれ、0.1μm~5μm、好ましくは1μm~2μmであり、特にプラスチックキャリアフィルムから離れた方向に面する剥離層の表面に配置される。一つまたは複数のワニス層は、いずれの場合も、透明、半透明または不透明である。したがって、一つまたは複数のワニス層を透明、半透明または不透明に染色することができる。
【0030】
一つまたは複数のワニス層の染色は、プロセス色のシアン、イエロー、マゼンタおよび黒色に基づくことができるが、(例えば、RALまたはHKSまたはパントーン(登録商標)色系における)スポット色にも基づいていてもよい。代替的にまたは追加的に、一つまたは複数のワニス層は、金属顔料および/または特に光学的に可変の効果を有する顔料を含有していてもよい。
【0031】
一つまたは複数のワニス層は、例えば、いわゆるスポットワニスとして、表面全体に亘ってまたは部分的に存在してもよい。表面の所定の領域における光学的効果は、スポットワニスにより得られる。このプロセスでは、表面の各々の領域を光学的に変化させるため、特に強化のため、例えば、光沢ワニスおよび/または艶消しワニスを用いて、所望のように所定の領域にワニスを塗布する。これにより、光学的効果の代わりにまたはこれに加えて、触覚効果を実現することも可能である。装飾材料は、好ましくは、アルミニウムおよび/またはクロムおよび/または銀および/または金および/または銅からなる金属層を有し、特に10nm~200nm、好ましくは10nm~50nmの層厚を有する。
【0032】
金属層の代わりにまたは金属層に加えて、HRI材料(HRI=高屈折率)からなる層を設けてもよい。HRI材料は、例えば、ZnS、TiOなどの金属酸化物、または対応するナノ粒子を有するワニスである。
【0033】
印刷装置は、好ましくは、スクリーン印刷、フレキソ印刷、デジタル印刷(例えば、インクジェット印刷、ゼログラフィ印刷、液体トナー印刷)またはオフセット印刷を用いて転写媒体に印刷を行うように設定される。
【0034】
UV放射線によって硬化可能な装飾材料が転写媒体に印刷される場合、転写媒体に印刷された直後にUV光源を使用して装飾材料を予備硬化させることが有利である。したがって、印刷装置は、好ましくは印刷装置の端部および/または接着剤塗布装置の前方に配置された、装飾材料を予備硬化させるためのUV光源を有する。特に、これにより装飾材料の粘度が増す。これは、さらなる処理の間に、装飾材料の塗布された領域が流れたり、過度に圧搾されたりすることを防止し、その結果、特に、装飾材料の縁部がシャープになり、かつオブジェクトに転写された層が特に高い表面品質を有することが可能となる。装飾材料の直接隣接する領域、特に、最も狭い領域、いわゆる画素を互いに接近させ、それらを組み合わせるため、装飾材料を僅かに圧搾することが実際には望ましい。これは、例えば、閉鎖された表面領域および/またはモチーフの縁部における表現の画素化を防止するため、すなわち、個々の画素が破壊的な方法で光学的に現れることを防止するために有利である。圧搾は、好ましくは、所望の解像度が極端に低下しない限り行ってもよい。有利には、UV光は、220nm~420nmの波長範囲、好ましくは350nm~400nmの波長範囲で放出される。
【0035】
装飾材料を予備硬化させるためのUV光源は、LED光源であることが好ましい。LED光源を用いることにより、実質的に単色の光を提供することができる。その結果、接着剤を硬化させるのに必要な波長範囲で必要な放射強度が得られる。これは、従来の中圧水銀灯では実現することができない。
【0036】
好ましい実施例では、装置は、装飾材料を備えた転写媒体および/またはオブジェクトに接着剤を塗布するための接着剤塗布装置と、接着剤を硬化させるための硬化装置と、をさらに有する。硬化装置は、好ましくは、プレス装置の領域に配置され、プレス装置は、転写媒体のプレスと接着剤の硬化とを同時に行うように設定される。これにより、転写媒体の装飾材料は、接着剤が設けられたオブジェクトの位置において接着される。その後、押圧後に転写媒体がオブジェクトから除去されると、装飾材料は所望の位置においてオブジェクト上に残存する。オブジェクトまたは転写媒体の接着剤が塗布されていない位置では、装飾材料はオブジェクトに接着されずに転写媒体のキャリア材料上に残存する。
【0037】
接着剤塗布装置は、好ましくは、スクリーン印刷、フレキソ印刷、デジタル印刷(例えば、インクジェット印刷、ゼログラフィ印刷、液体トナー印刷)によって接着剤を堆積させるように設計される。
【0038】
さらなる好ましい実施例では、接着剤塗布装置は、印刷装置とプレス装置との間に配置される。接着剤塗布装置は、特に、印刷装置によって印刷された転写媒体に、特に、キャリア材料から離れた方向に面する転写媒体の表面に接着剤を塗布する。これにより、後のオブジェクトへの転写媒体の押圧中に、装飾材料、代替的にオブジェクトに既に塗布された接着剤と装飾材料との間にオフセットまたは過度の許容範囲が存在して、装飾材料がオブジェクトに不正確に転写されなくなる。
【0039】
代替的または追加的に、接着剤は、上流のステーションにおいて接着剤塗布装置によりオブジェクトに転写される。
【0040】
接着剤塗布装置が印刷装置の一部として形成される場合、装置は、小型で単純な構造を有するため特に有利である。このプロセスにおいて、接着剤塗布装置は、好ましくは、印刷装置の端部に配置される。つまり、転写媒体に装飾材料を設けた後に接着剤の堆積が行われる。
【0041】
接着剤が紫外線によって硬化可能な成分を有する場合、特に接着剤のいわゆる「ピンニング(pinning)」のために、接着剤を転写媒体上に堆積させた直後に接着剤を予備硬化させることが有利である。したがって、有利には、接着剤塗布装置が、接着剤を予備硬化させるためのUV光源を有し、UV光源が、好ましくは接着剤塗布装置の端部におよび/またはプレス装置の前方に配置される。特に、これにより、接着剤の粘度が増す。これにより、さらなる処理の間に、塗布された接着剤が流れる(走行する)ことまたは過度に圧搾されることが防止される。その結果、装飾材料の縁部が特にシャープになるとともに、オブジェクト上の転写された層の表面品質が向上する。実際には、印刷媒体の直接隣接する領域、特に最小領域、いわゆる画素を互いに接近させて組み合わせるため、接着剤を僅かに圧搾することが望ましい。これは、例えば、閉鎖された表面領域および/またはモチーフ縁部における表現の画素化を防止するため、すなわち、個々の画素が破壊的な方法で光学的に現れることを防止するために有利である。圧搾は、好ましくは、所望の解像度が極端に低下しない限り行ってもよい。有利には、UV光は、220nm~420nmの波長範囲、好ましくは350nm~400nmの波長範囲で放出される。
【0042】
接着剤を予備硬化させるためのUV光源は、好ましくはLED光源である。LED光源を用いることにより、実質的に単色の光を提供することができる。その結果、接着剤を硬化させるのに必要な波長範囲で必要な放射強度が得られる。これは、従来の中圧水銀灯では実現することができない。
【0043】
さらなる好ましい実施例では、装飾材料を転写媒体に確実に接着するため、転写媒体に塗布された装飾材料を乾燥させるための乾燥ユニットが設けられる。乾燥ユニットは、好ましくは、印刷装置の一部として形成される。特に、印刷された転写媒体上に接着剤が堆積するとき、接着剤を転写媒体に塗布する最中に乾燥した装飾材料が流れたり、汚れたりしない。
【0044】
乾燥ユニットは、好ましくは、化学的または物理的乾燥および/または硬化のために、UV光照射および/または熱乾燥による乾燥および/または硬化が行われるように形成される。
【0045】
乾燥ユニットは、接着剤塗布装置の上流に位置する。その結果、最初に、転写媒体に塗布された装飾材料の乾燥が行われ、次に、転写媒体、したがって転写媒体上に印刷された装飾材料に対して接着剤が塗布される。
【0046】
好ましい実施例では、装置は、オブジェクトの外周に対して接線方向に転写媒体を案内するように設計された転写媒体ガイドを有する。プレス装置は、オブジェクトと転写媒体との間の接触領域に沿って転写媒体をオブジェクトに押圧するように配置される。このように、回転軸を中心としてオブジェクトを360°回転させることによって、オブジェクトの全ての位置に対して装飾材料を塗布することができる。
【0047】
プレス装置は、好ましくは、プレス装置の表面速度をオブジェクトの表面速度に合わせるように移動する。さらに、転写媒体は、好ましくは、転写媒体の表面速度をオブジェクトの表面速度に合わせるように移動する。つまり、転写媒体とオブジェクトとの相対的な移動は、可能な限り小さくなるか、好ましくはゼロになるように、プレス装置の移動とオブジェクトの移動とが互いに同期する。これにより、プレス装置、転写媒体およびオブジェクトが互いに擦れないようになる。その結果、オブジェクト上の接着剤の汚れが防止される。同様に、転写媒体またはオブジェクトに対する損傷の可能性が低減する。
【0048】
したがって、±5mm、好ましくは±3mmの最大巻き戻し公差、および/または±15%、好ましくは±10%のオブジェクトの周囲における最大速度公差が生じるように、転写媒体とオブジェクトとの相対運動が設定されると有利である。したがって、転写媒体の表面速度およびオブジェクトの表面速度は、±15%未満、好ましくは±10%未満だけ異なる。
【0049】
装置のさらに好ましい設計において、プレス装置は、シリンダの長手方向軸を中心として回転可能なシリンダを有する。オブジェクトへの転写媒体の押圧は、シリンダとオブジェクトとの間で、シリンダの長手方向軸を中心としたシリンダの回転および回転軸を中心としたオブジェクトの回転と同時に、転写媒体が案内されるか、あるいは、転写媒体がシリンダによってオブジェクトの好ましくは平坦または平滑な表面上に展開されることによって行われる。
【0050】
シリンダに代えてかつ/またはこれに加えて、プレス装置はプレートを有していてもよい。この場合、転写媒体は、直接プレートに沿って案内されて、オブジェクトに押し付けられる。
【0051】
接着剤がUV硬化接着剤であり、硬化装置が接着剤を硬化させるためのUV光源を有し、プレス装置が少なくとも部分的な領域においてUV光に対して少なくとも部分的に透明であり、かつUV光源と保持装置との間に少なくとも部分的に配置される場合、オブジェクトに対して装飾材料が確実に塗布される。UV光は、好ましくは、220nm~420nmの波長範囲、さらに好ましくは、350nm~400nmの波長範囲で放出される。
【0052】
オブジェクトの装飾のための装置は、いくつかのUV光源を有することができる。例えば、オブジェクトの装飾のための装置は、装飾材料を予備硬化するための第1のUV光源、接着剤を予備硬化するための第2のUV光源、および/または接着剤を硬化するための第3のUV光源を有する。第1のUV光源は、好ましくは印刷装置の端部および/または接着剤塗布装置の前方に配置される。第2のUV光源は、好ましくは接着剤塗布装置の端部および/またはプレス装置の前方に配置される。第3のUV光源は、好ましくは硬化装置によって囲まれる。硬化装置は、好ましくはプレス装置の領域に配置される。プレス装置は、転写媒体の押圧および接着剤の硬化を同時に行うことができるように設定される。
【0053】
プレス装置は、220nm~420nmの波長範囲、好ましくは350nm~400nm、特に好ましくは365nm~395nmの放射線に対して特に透明または半透明である。透明度または半透明度は、特に30%~100%、好ましくは40%~100%である。より低い透明度または半透明度は、より高いUV強度により補償される。
【0054】
例えば、LEDエミッタ、水銀灯または鉄をドープした水銀灯および/またはガリウムをドープした水銀灯をUV光源として使用することができる。
【0055】
接着剤を硬化させるためのUV光源は、好ましくはLED光源である。LED光源を用いることにより、実質的に単色の光を提供することができる。その結果、接着剤を硬化させるのに必要な波長範囲で必要な放射強度が得られる。これは、従来の中圧水銀灯では実現することができない。
【0056】
最適な完全硬化を実現すると同時に、特にUV光源とオブジェクトとの物理的な接触を防止するため、接着剤を硬化させるためのUV光源からオブジェクトまでの距離は、有利には2mm~50mm、好ましくは2mm~40mmである。接着剤を硬化させるためのUV光源の照射窓の装置方向の大きさは、好ましくは5mm~40mmである。
【0057】
LED光源が使用される場合、特にLED光源の比較的高い発散のため、通常、放射線のエネルギーは、LED光源からの距離が約5mm以上になると比較的大きく減少する。そのため、好ましくは、選択するオブジェクトからの距離を小さくすべきである。光学的な集束を含むLED光源を使用することにより、オブジェクトからの距離をより大きくすることができ、これにより、特に設計上困難な条件での使用も可能となる。さらに、光学的集束を含むLED光源を使用する場合、特に、光学的集束を含まないUV光源を使用する場合の照射窓と比較して、照射窓を小さくすることができる。
【0058】
総UV放射照度は、好ましくは1W/cm~50W/cm、好ましくは3W/cm~40W/cmである。これにより、接着剤は、約10m/分~60m/分(またはそれ以上)のウェブ速度で、および場合により予備硬化に関して既に述べた他の要素によって完全に硬化する。
【0059】
これらの要因を考慮する場合、接着剤は、本願の方法において、好ましくは4.8W/cm~8.0W/cmの正味UV放射照度で照射される。これは、約100mJ/cm~2000mJ/cm、好ましくは約100mJ/cm~1000mJ/cmの接着剤への約0.1秒(10m/分のウェブ速度および20mmの幅の照射窓の場合)から約0.04秒(30m/分のウェブ速度および20mmの幅の照射窓の場合)の好ましい照射時間での正味のエネルギー入力(線量)に対応し、特に、この正味のエネルギー入力は、要求される完全な硬化に応じて可変である。
【0060】
本明細書において、これらの値は、特に、(100%のランプ電力で)理論上でのみ可能であることに留意されたい。特に、接着剤を硬化させるためのUV光源のフルパワー、例えば、20W/cmおよび低いウェブ速度(例えば、10m/分)では、転写媒体は、非常に強く加熱されるため発火する虞がある。したがって、正味のエネルギー入力は、ウェブ速度に応じて100mJ/cmから500mJ/cmであることが特に好ましい。
【0061】
例えば、プレス装置のシリンダ内にUV光源を配置してもよい。このため、シリンダは、少なくともいくつかの位置において中空シリンダとして設計される。シリンダの材料は、接着剤の硬化に必要なUV光の波長がシリンダを透過するように選択される。シリンダは、UV光に対して完全に透明であってもよいが、透明な窓をシリンダ内に設けてもよい。これにより、UV光は、接着剤の硬化のためにUV光が必要なときだけシリンダから確実に流出する。
【0062】
UV光に対して透明な領域において、シリンダは、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート、アクリルガラス)および/またはホウケイ酸ガラスから形成されてもよい。双方の材料は、特に350nm~400nmの波長範囲において、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%の透過率を有する。
【0063】
透過率は、特に、入射電磁波、この場合は「光」が要素を透過する割合である。特性層の構造または層厚に応じて、透過率は異なる。したがって、透過率は、通過可能な、すなわち透過された強度の尺度であり、0~100%の値をとる。
【0064】
前述したように、プレス装置のシリンダを完全にまたは部分的に透明にしてもよい。これにより、特に接着剤を完全に硬化させるためにUV光を十分に透過させることができる。好ましくは、装飾材料は、特に、印刷された画像の裏面における接着剤をUV光により硬化させるように十分な透過率を有する。本明細書において、実際の試験では、特に多色印刷画像の場合、露光方向において背面に位置する接着剤の十分な露光を実現するためには、350nm~400nmのUV光の波長範囲で、装飾材料の透過率が少なくとも2.5%であれば十分であることを示している。
【0065】
装飾材料の透過率を測定したところ、例えば、以下のような値が得られた。
【表1】
【0066】
特に、接着剤を十分に露光させるためには装飾材料の透過率が低すぎる場合、例えば、前述の白色の不透明な装飾材料の場合、装飾材料は、装飾材料を有する第1の領域および装飾材料を有さない第2の領域においてグリッド(格子)状に配置されることが有利である。ここで、第1および/または第2の領域を、細い線および/または小さいグリッド要素の形状で、500μm未満、好ましくは250μm未満の線幅および/またはグリッド要素の最小寸法を有するように配置することが特に有利である。UV光は、装飾材料を有していない第2の領域を通過し、十分な量のUV光が接着剤に到達して、硬化のため当該領域を十分に露光する。第1の領域は相対的に小さいため、下方から少なくとも部分的に照射されてもよい。その結果、接着剤は少なくとも部分的に露光されて硬化する。
【0067】
第1の領域の平均幅と第2の領域の平均幅との比は、好ましくは0.75:1~1:5である。したがって、第1の領域の幅は、好ましくは、250μm未満であり、第2の領域の幅は、250μm以上である。
【0068】
第1および第2の領域は、好ましくは、1次元グリッドまたは2次元グリッド、例えば、線形グリッドまたは面グリッドに従って配置される。第1の領域および/または第2の領域をドット状または多角形状に形成してもよい。グリッド要素の形状は、ドット、ダイヤモンドおよび十字から選択されることが好ましい。しかし、異なるグリッド要素の形状を用いてもよい。
【0069】
第1および第2の領域のグリッドまたは分布は、規則的またはランダム(確率的)または擬似ランダムに形成されることが好ましい。
【0070】
さらに、1次元グリッドまたは2次元グリッドは、幾何学的に変換されたグリッドであってもよい。したがって、例えば、円形または波状に変換された1次元のグリッドであってもよい。例えば、第1の領域は、同心円状をなす円形のリング状または波状の線形であってもよい。
【0071】
UV光が照射されるオブジェクトの領域は、好ましくは、転写媒体の装飾層がオブジェクトに付着するまで、転写媒体を接着剤に押圧する間にUV接着剤の硬化が進行するように設定され、転写媒体から装飾層が剥離される。このため、使用する接着剤およびUV光の強度に応じて、オブジェクトと転写媒体との間の接触線の前方におけるオブジェクト上の接着剤を照射することが必要である。照射する領域の設定は、例えば、UV光源とオブジェクトとの間の(任意選択的に設定可能または交換可能である)ダイアフラム(絞り)によって行うことができる。一つまたは複数のダイアフラムをプレス装置に直接取り付けてもよい。上記設定は、UV光源から放射されるUV光の発散の設定によっても行うことができる。
【0072】
本方法のさらなる好ましい実施例では、接着剤塗布装置は、フレキソ印刷ステーションである。次に、接着剤は、印刷ブロックシリンダに取り付けられた印刷版によってオブジェクトに塗布される。代替例では、接着剤塗布装置は、スクリーン印刷ステーションまたはデジタル印刷ステーション(例えば、インクジェット印刷ステーション、電子写真印刷ステーション、液体トナー印刷ステーション)であってもよい。
【0073】
装置のさらなに好ましい実施例では、プレス装置は、可撓性のプレス層をさらに有する。これにより、オブジェクト、転写媒体および/または機械構造の不規則性に対応することができる。可撓性のプレス層は、例えば、シリコーンからなる。
【0074】
本方法のさらに好ましい実施例では、プレス層は、少なくとも部分的な領域においてUV光に対して透明である。プレス層の透明領域は、プレス装置の透明領域に一致させることができる。しかし、プレス層を完全に透明にし、プレス装置を所定の領域においてのみ透明にしてもよい。
【0075】
特に好ましいさらなる実施例では、転写媒体はエンドレスベルトとして提供される。これにより、転写媒体を複数回使用することができる。つまり、転写媒体は、印刷装置による印刷およびプレス装置におけるオブジェクトへの装飾材料の転写の後に巻き上げられて廃棄されずに、方向転換されて再び印刷装置に供給される。転写媒体は、寸法が安定しており、特に張力が安定している、透明なエンドレスベルトとして形成されることが好ましい。本実施例では、特に、装飾材料は、転写媒体からオブジェクトに完全に転写され、その結果、転写媒体には装飾材料がほとんど残っていないため、再利用することができる。
【0076】
硬化装置から放出される放射線が十分な強度で転写媒体を貫通するように、転写媒体は、各々の波長範囲に対して透明に形成されてもよく、および/または装飾材料をオブジェクト、特に剥離層に転写する間に分離するためのコーティングを有していてもよい。これにより、装飾材料の確実な転写および接着剤の確実な硬化が実現する。
【0077】
好ましい実施例において、エンドレスベルトとして提供される転写媒体は、転写媒体ガイドとプレス装置との間に延在する。これにより、転写媒体が常に正しく整列される。同時に、転写媒体は、転写媒体ガイドと転写媒体との間における摩擦によって移動方向に駆動される。エンドレスベルトとして提供される転写媒体は、好ましくは、プレス装置における好ましくはモータ駆動式のシリンダと、転写媒体ガイドにおける好ましくはモータ駆動式のテンションローラとの間に延在する。
【0078】
さらなる好ましい実施例では、転写媒体は、プレス装置に直接配置され、好ましくは、プレス装置のシリンダ上に配置される。これにより、装置の構造が特に簡単なものとなる。
【0079】
さらに好ましい実施例では、装置は、オブジェクトに転写媒体を印刷した後に、印刷された転写媒体を洗浄するための洗浄装置をさらに有する。これにより、プレス装置によって転写媒体からオブジェクトに転写されなかった接着剤の残渣および装飾材料の残部を転写媒体から除去することができる。これにより、洗浄された転写媒体の再利用が可能となる。
【0080】
さらなる好ましい実施例では、装置は、装飾材料の塗布前に転写媒体を前処理するための前処理装置をさらに有する。これにより、転写媒体おける装飾材料の接着挙動に関して、印刷される転写媒体の表面を改善することができる。加えて、転写媒体の印刷中の装飾材料の確実な接着と、装飾材料のオブジェクトへの転写中の転写媒体からの装飾材料の確実な剥離とを実現することができる。
【0081】
装飾材料の特に効率的かつ確実な印刷および転写を実現するために、転写媒体には、装飾材料のオブジェクトに対する転写中により良好に分離するためのコーティング、特に剥離層が前処理装置によって設けられてもよい。さらに、転写媒体の表面の不規則性は、前処理装置によって対処することができる。
【0082】
好ましい実施例では、オブジェクトの表面は、装飾前に前処理される。この前処理は、特に、オブジェクト洗浄ステップおよび/または活性化ステップを含むことができる。
【0083】
好ましくは、オブジェクト洗浄ステップにおいて、特にオブジェクトの搬送および/またはオブジェクトの製造時に生じた汚れおよび/または既存の保護コーティングまたは他の機能コーティングが除去される。
【0084】
ガラス表面の場合、特に、表面上の水分により問題が生じる。水分は、特にゲル層の形態で生じ、このゲル層は、後に表面に塗布される層の接着特性に悪影響を及ぼす。
【0085】
続いて塗布される層、特に装飾に対する接着を可能にする表面の性能は、後に塗布される層の結合のための基礎となるものであって、表面に対する塗布または生成される反応基に依存している。特に、ガラスにおけるケイ酸塩層の反応性OH基の密度は、公知の方法では十分ではなく、後に塗布される層の接着性を低下させる。
【0086】
好ましくは、オブジェクト洗浄ステップ後に行われる活性化ステップにおいて、後に塗布される装飾の接着性が増加しかつ改善されるように、オブジェクトの表面が改質されることが有益である。改質は化学的および/または物理的に行われる。
【0087】
オブジェクト洗浄ステップは、特に、少なくとも1つの酸化炎によるオブジェクトの表面の改質を含む。オブジェクト洗浄ステップは、不均一なゲル層の形態でコンパクトな基板の非晶質表面に結合した水分が減少するという利点を有する。驚くべきことに、ゲル層は、オブジェクト洗浄ステップによって再現性良く減少する。ゲル層は、それぞれの非晶質(アモルファス)構造ならびにゲル層のエージング(経時変化)の状態に依存する。ゲル層、したがって結合した水分は、酸化炎により減少する。ゲル層の減少により、再現性が高い均一な表面特性がもたらされる。
【0088】
本明細書において、酸化炎とは、過剰の酸素を含み、かつ/または酸化作用を有する任意の着火ガス、ガス―空気混合物、エアロゾルまたはスプレーを意味する。
【0089】
活性化ステップは、特に、少なくとも1つのシリケート化炎(silicating flame)によりオブジェクトの表面を改質することを含む。このプロセスでは、60nm以下、好ましくは5nm~50nm、さらに好ましくは10nm~30nmの厚さの酸化ケイ素層が塗布される。この層は、高含有量の反応性OH基を特徴としている。堆積した酸化ケイ素層の均一性および良好な接着特性は、オブジェクト洗浄ステップと活性化ステップとの組み合わせによって実現する。有利には、1~10、特に1~5の酸化および/またはシリケート化炎がオブジェクトの表面を改質するように炎の数が選択される。
【0090】
表面上の反応基は、続いて塗布される表面処理層、例えばワックス層および/またはワニス層および/またはインク層の化学結合のための化学的な基礎となる。表面が非晶質物質、例えばガラスからなる場合、本発明による成形基板の表面のOH基の面積密度は、未処理表面の場合よりも2~5倍高い。
【0091】
第2の処理ステップにおいて塗布される酸化ケイ素層またはケイ酸塩層は、極微小(サブミクロン)の粗さを有する。さらなる層のための粗さおよび対応する機械的な固定により、全ての後続の層の接着性が明らかに改善する。オブジェクト洗浄ステップおよび活性化ステップにより、再現性が高く、均質でかつ微小保持性を有する表面が生成される。驚くべきことに、前記2つの方法ステップの組み合わせにより、ゲル層の減少、密度の増加および反応性OH基の均一な分布がもたらされる。
【0092】
活性化ステップでは、火炎処理のために、アルキルシラン、アルコキシシラン、アルキルチタン、アルコキシチタン、アルキルアルミニウム、アルコキシアルミニウム、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を有する化合物を含有するガスが使用される。
【0093】
そのような化合物の好ましい例としては、テトラメチルシラン、テトラメチルチタン、テトラメチルアルミニウム、テトラエチルシラン、テトラエチルチタン、テトラエチルアルミニウム、1,2-ジクロロテトラメチルシラン、1,2-ジクロロテトラメチルチタン、1,2-ジクロロテトラメチルアルミニウム、1,2-ジフェニルテトラメチルシラン、1,2-ジフェニルテトラメチルチタン、1,2-ジフェニルテトラメチルアルミニウム、1,2-ジクロロテトラエチルシラン、1,2-ジクロロテトラエチルチタン、1,2-ジクロロテトラエチルアルミニウム、1,2-ジフェニルテトラエチルシラン、1,2-ジフェニルテトラエチルチタン、1,2-ジフェニルテトラエチルアルミニウム、1,2,3-トリクロロテトラメチルシラン、1,2,3-トリクロロテトラメチルチタン、1,2,3-トリクロロテトラメチルアルミニウム、1,2,3-トリフェニルテトラメチルシラン、1,2,3-トリフェニルテトラメチルチタン、1,2,3-トリフェニルテトラメチルアルミニウム、ジメチルジエチルテトラシラン、ジメチルジエチルテトラチタン、ジメチルジエチルテトラアルミニウムおよびこれらに類する化合物が挙げられる。
【0094】
また、そのようなアルキル化合物の中でも、シラン化合物、アルキルチタン化合物およびアルキルアルミニウム化合物、テトラメチルシラン、テトラメチルチタン、テトラメチルアルミニウム、テトラエチルシラン、テトラエチルチタンおよびテトラエチルアルミニウムは、特に沸点が低く、空気および同様のガスとの混和が容易であるため、調整に適した化合物である。一方、1,2―ジクロロテトラメチルシランなどのシランハライド化合物は、好ましくは調製剤として使用される。
【0095】
さらに、アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物およびアルコキシアルミニウム化合物は、一般にエステル構造により高い沸点を有するが、沸点が10℃~100℃であれば、固体基材のさらに良好な表面改質作用を可能にするため好ましい化合物である。
【0096】
本発明の意味におけるシリケート化炎とは、任意の着火ガス、ガス―空気混合物、エアロゾルまたはスプレーを意味する。そして、これらの補助によって、シリコン含有物質の火炎熱分解により酸化ケイ素層が表面に塗布される。特に、ケイ素含有コーティングが実質的に炭素を含まずに塗布され、火炎熱分解において、ケイ素アルコキシシランが、ケイ素含有物質として、空気と燃焼ガスおよび必要に応じて酸素との混合物中に導入される。燃焼ガスは、例えば、プロパンガス、ブタンガス、石炭ガスおよび/または天然ガスを含む。
【0097】
質量スペクトル分析により測定した調整化合物の平均分子量の値は、50~1000、好ましくは60~500、さらに好ましくは70~200にあると有利である。調整化合物の平均分子量が50未満であると、揮発性が高く、取り扱いが困難になることがある。一方、調整化合物の平均分子量の値が1000を超えると、加熱による気化や、空気等のガスとの微量混合が困難になることがある。
【0098】
さらに、液状の調整化合物の比重が、0.3g/cm~0.9g/cm、好ましくは0.4g/cm~0.8g/cm、さらに好ましくは0.5g/cm~0.7g/cmであると好都合である。液体中の調整物(改質物)の密度が0.3g/cm以下の場合、取扱いが困難になり、エアゾール缶における収容上、問題が生じることがある。一方、液状の調整化合物(改質化合物)の比重が0.9g/cmを超えると気化しにくくなり、エアゾール缶に収容されている場合、完全に気化することがあり、空気または同様のガスと完全に分離する可能性がある。
【0099】
調整化合物を加熱して気化させ、気化した状態で燃焼ガスと混合させ、燃焼させると有利である。調整化合物の沸点は、好ましくは10℃~80℃である。
【0100】
燃焼ガス中の調整化合物の量は、特に燃焼ガスの全量の1×10-10モル%~10モル%である。
【0101】
表面改質後のぬれ指数は、特に、25℃の測定温度で40mN/m(dyn/cm)~80mN/m(dyn/cm)の値を有する。
【0102】
酸化および/またはシリケート化炎の火炎温度は、好ましくは500℃~1500℃、特に900℃~1200℃であり、および/またはオブジェクトの表面は、有利には、35℃~150℃、特に50℃~100℃に加熱される。
【0103】
酸化および/またはシリケート化炎による処理の持続時間は、特に0.1秒~100秒、好ましくは0.1秒~10秒、特に好ましくは0.1秒~5秒である。
【0104】
酸化炎および/またはシリケート化炎の火炎温度を容易に制御できるようにするため、燃焼ガスに可燃性ガスを添加することが推奨される。このような可燃性ガスとして、プロパンガスや天然ガスなどの炭化水素ガスや、水素、酸素、空気などの可燃性ガスを用いることができる。エアゾール缶に収容される可燃性ガスを使用する場合、プロパンガスおよび圧縮空気などを使用することが好ましい。
【0105】
含有される可燃性ガスの量は、燃焼ガスの総量の80モル%~99.9モル%、好ましくは85モル%~99モル%、さらに好ましくは90モル%~99モル%であることが好ましい。80モル%未満の燃焼ガス含有量では、調整化合物の混合特性が低下し、場合によって空気が調整化合物の不完全燃焼をもたらすことがある。一方、燃焼ガス量の含有量が99.9モル%を超える場合、場合によっては表面に改質作用が生じないことがある。
【0106】
また、調整化合物を燃焼ガス中に均一に混合するために、酸化および/またはシリケート化炎のためのキャリアガスを添加することが好ましい。調整化合物をキャリアガスと予備混合し、次いで可燃性ガス、例えば空気と混合することが好ましい。搬送が困難である相対的に高い分子量の調整化合物を用いた場合でも、キャリアガスの添加によって空気に均一に混合することができる。キャリアガスの添加により、調整化合物は容易に可燃性となり、物品の表面の改質を均一かつ十分に行うことができる。
【0107】
可燃性ガスと同じ種類のガス、例えば、空気および酸素、またはプロパンガスおよび天然ガスなどの炭化水素ガスをキャリアガスに使用することが好ましい。
【0108】
少なくとも1つの酸化炎および少なくとも1つのシリケート化炎による組み合わせ表面処理によって、高密度の反応基を有する均一な微小保持性を有する表面が提供される。
【0109】
活性化ステップにおいて塗布されるケイ酸塩層の粗さおよび良好な接着特性は、有利には、後に塗布される装飾、特に後に塗布される装飾材料、例えば印刷インクまたは他の装飾もしくは機能層が非常に良好に接着するという結果をもたらす。ケイ酸塩層に塗布される装飾材料は、有利には、スクラッチ傷に強くかつ耐摩耗性であり、水および水蒸気に対して高い耐性を有する。生成された均質なケイ酸塩層により、装飾に用いられた印刷インクの高いインキ被覆率が有利に実現する。色相、色強度、メタメリズム、被覆率および透明性などの装飾層の特性は、対応するように前処理された表面に基づいて実質的に自由に選択することができるため有利である。
【0110】
オブジェクト洗浄ステップおよび/または活性化ステップは、特に、オブジェクトを前処理するためのさらなる前処理装置によって実行することができる。オブジェクトを前処理するためのさらなる前処理装置は、双方のステップを実施するように設計されてもよいし、またはオブジェクト洗浄装置および活性化装置をそれぞれ別々に設けてもよい。
【0111】
オブジェクトを前処理するためのさらなる前処理装置および/またはオブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、オブジェクトの装飾のための装置、特に保持装置に対する設置のためのモジュールとして設計されてもよい。対応するモジュールを用いて、後続のプロセスステップが実行される前に、オブジェクトの表面の前処理を装置内で実行することができる。
【0112】
前処理装置および/またはオブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、さらなる装置から独立して、オブジェクトの表面を前処理することができる別個の装置として設計されてもよい。
【0113】
オブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、好ましい実施例では、リング状の火炎処理装置を有する。前処理されるオブジェクトはリング内に配置され、酸化炎またはシリケート化炎は、オブジェクトの表面方向に向けてリングから供給される。
【0114】
さらなる実施例では、オブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、少なくとも部分的に直線状に形成された火炎処理装置を有する。この火炎処理装置は、オブジェクトの前処理される表面の一部分に案内されるかまたは移動される。
【0115】
さらなる実施例において、オブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、点で生じる一つまたは複数の火炎を有する火炎処理装置を有する。この火炎処理装置は、オブジェクトの前処理される表面の一部分に案内されるかまたは移動する。三次元オブジェクトの装飾中、オブジェクトは、好ましくは回転軸を中心に回転可能な保持装置に保持される。この回転軸は、オブジェクトの長手方向軸であることが好ましい。
【0116】
他の実施例では、装置は、好ましくは転写媒体のための転写媒体ガイドを備えた転写媒体展開装置および/または転写媒体巻取り装置を有する。
【0117】
オブジェクトの装飾のための装置または方法において、転写媒体は連続的またはパルス状(pulsed)に搬送される。装飾材料を備えた転写媒体のオブジェクトへの押圧、すなわち、特にオブジェクトの装飾および/またはオブジェクトの搬送は、パルス状に行われると好都合である。
【0118】
したがって、転写媒体が連続的に搬送される可能性がある。ここで、特に、転写媒体の連続的なウェブ速度は、印刷装置、例えば、高品質のデジタル印刷技術による転写媒体への連続的な印刷のための最適な前提条件である。
【0119】
したがって、プレス装置において、装飾材料を備えた転写媒体をオブジェクトに特にパルス状に押圧する間に、これと同時に、印刷装置において装飾材料を転写媒体に特にパルス状に塗布することができる。
【0120】
好ましくは、個々の印刷セクション間の繰り返しパターンは、パルス(pulse)および/または印刷速度に応じて決定される。したがって、パルスおよび/または印刷速度に応じて、個々の印刷セクション間の繰り返しパターンを大きくまたは小さくすることができる。特に、繰り返しパターンは、公知のオブジェクト搬送におけるパルス速度およびオブジェクト装飾から決定または計算される。好ましくは、特に、転写媒体の搬送が連続的な場合、転写媒体上のパルス状の印刷は、パルス状のオブジェクトの装飾の間に同時に行われる。有利には、繰り返しパターンは、オブジェクトのパルス(オブジェクト装飾およびオブジェクト搬送)の「長さ」(転写媒体の搬送速度に対する長さ)の略半分である。好ましくは、繰り返しパターンは、通常、全経路に亘って一定に設定され、規制されない。
【0121】
そのような連続的なプロセスの欠点は、特に、転写媒体の消費が非常に多いため、コストが増加することである。
【0122】
さらなる例では、転写媒体は、オブジェクトの搬送装置と同じパルスで駆動される。この場合、転写媒体は連続的に駆動されず、プロセスのセクションに応じて転写媒体が駆動または休止される。
【0123】
したがって、プレス装置における、装飾材料を備えた転写媒体のオブジェクトに対する(特にパルス状の)押圧に応じて転写媒体を駆動することができる。ここで、転写媒体の駆動は、オブジェクトの搬送装置におけるパルスで行われることが好ましい。したがって、装飾材料の転写媒体への塗布および装飾材料を備えた転写媒体のオブジェクトへの押圧をパルス状に行うことができる。転写媒体は、転写媒体のパルス状の押圧に応じて駆動または休止される。
【0124】
ここで、有利には、装飾材料、特に印刷画像間の繰り返しパターンおよび転写媒体の消費が減少する。印刷は、好ましくは、オブジェクトと同じパルスで行われる。しかし、印刷処理の間、転写媒体の加速および制動が行われ、その結果、印刷処理は、非常に頻繁に異なる速度で行われる。
【0125】
このようなパルス状のプロセスは、塗布される装飾材料の品質、例えば、デジタル印刷の印刷品質が、特に、常に変化するウェブ速度によって悪影響を受けるという欠点を有する。
【0126】
さらに有利な例として、連続プロセスとパルス状のプロセスとを組み合わせてもよい。ここで、好ましくは、一方では、印刷プロセス中の転写媒体の連続的なウェブ速度、他方では、オブジェクト装飾中、すなわち、特に、装飾材料を備えた転写媒体のオブジェクトに対する押圧が好都合に行われる転写プロセスにおけるオブジェクトのパルス状のウェブ速度が求められる。
【0127】
したがって、装飾材料を備えた転写媒体をオブジェクトにパルス状に押圧することができる。装飾材料の転写媒体への塗布は連続的なウェブ速度で行われる。
【0128】
2つの変形例を組み合わせることができるように、装置は、好ましくは、補償モジュールまたは「格納部」を備え、特に、オブジェクトのためのパルス状のプロセスの休止段階中に格納部内に転写媒体を「収集」または格納する。その結果、印刷の品質に有利な転写媒体の連続ウェブ速度が損なわれなくなる。補償モジュールは、特に、機械的な格納部として形成されており、この機械的な格納部は、プロセスのセクションに応じて、必要なプロセス速度で必要な転写媒体を提供する。そのような補償モジュールは、例えば、特に転写媒体のウェブ張力を維持するための手段を有する、転写媒体のループのための受容空間であってもよい。
【0129】
好ましくは、補償モジュールまたは機械的な格納部は、横方向の移動によって補償モジュール内に転写媒体を格納し、移動方向を変更することによって転写媒体を再び解放することができる。ここで、補償モジュールまたは補償モジュール内の機械的な格納部の横方向移動の最大距離は、好ましくは、所定の時間において連続的なウェブ速度で転写媒体に覆われる距離よりも大きく、特に平均2倍大きい。ここで、所定の時間は、好ましくは、特に装飾材料の押圧によりオブジェクトが装飾される休止段階に対応している。つまり、抽出中の転写媒体のパルス状の抽出速度は、格納部があふれないように、転写媒体を充填する連続的な速度よりも、例えば、1.5倍速いことが好ましい。
【0130】
さらなる好ましい実施例では、装飾されるオブジェクトの寸法の変動を補償するため、プレス装置、好ましくはプレス装置のシリンダは、浮遊した状態で取り付けられるか、または吊り下げられる。例えば、圧力調整された空気圧シリンダおよび/または圧力調整された油圧シリンダを使用してもよい。装飾材料の搬送中におけるオブジェクトに対するシリンダの押圧力は、空気圧シリンダの空気圧設定または油圧シリンダの流体圧設定を変更することにより調整可能である。オブジェクトの表面に対する寸法変動の補償は、設定された押圧力に対応するシリンダの弾性的な垂直方向の持ち上げ運動により行うことができる。代替例では、可変の垂直方向の持ち上げ運動および押圧力の制御は、圧縮空気および空気圧シリンダまたは流体圧および油圧シリンダの代わりに、設定可能なばね張力を有する圧縮ばねを用いて行ってもよい。
【0131】
好ましくは、三次元オブジェクトを装飾するため、好ましい展開では、オブジェクトに対する転写媒体の押圧は、オブジェクトが回転軸を中心として回転すること、転写媒体がオブジェクトの外周に対して接線方向に案内されること、およびプレス装置がオブジェクトと転写媒体との間の接触領域に沿ってオブジェクト上に転写媒体を押圧することにより行われる。プレス装置は、好ましくは、プレス装置の表面速度がオブジェクトの表面速度に対応するように移動する。転写媒体は、好ましくは、転写媒体の表面速度がオブジェクトの表面速度に対応するように移動する。
【0132】
さらなる好ましい実施例では、オブジェクト対する転写媒体の押圧は、オブジェクトが固定位置に保持され、転写媒体がプレス装置によってオブジェクトの表面上で巻き戻されることにより行われる。プレス装置は、オブジェクトと転写媒体との間の接触領域に沿ってオブジェクトに転写媒体を押圧する。プレス装置は、好ましくはオブジェクトに沿って移動する。
【0133】
本方法の特に好ましいさらなる実施例では、転写媒体は、エンドレスベルトとして提供される。前述した一連のステップは、複数回実行され、各々の場合において、さらなるオブジェクトには、前述の一連のステップが実行されるたびに装飾材料が提供される。これにより、一度使用して廃棄される転写材料や転写フィルムを無駄にすることなく、複数のオブジェクトに転写媒体を印刷することができる。本実施例では、特に、装飾材料は、転写媒体からオブジェクトに完全に転写される。その結果、転写媒体は装飾材料をほとんど有さないため再利用される。
【0134】
転写媒体上の装飾材料の接着挙動に関して転写媒体の表面を改善するため、したがって、転写媒体への印刷中における装飾材料の確実な接着および装飾材料のオブジェクトへの転写中における転写媒体からの装飾材料の確実な剥離を可能にするため、並びに、転写媒体の表面の不規則性に対応することを可能にするため、さらなる好ましい実施例において、転写媒体は、装飾材料の塗布前に前処理される。前処理中、装飾材料をオブジェクト、特に剥離層に転写する間により良好な剥離のためのコーティングが転写媒体に設けられる場合、装飾材料の特に効率的かつ確実な印刷および転写をさらに実現することができる。
【0135】
さらなる好ましい実施例に対応して、転写媒体が押圧後に洗浄される場合、転写媒体の押圧中にオブジェクトに転写されなかった装飾材料の部分および接着剤の残渣を転写媒体から除去することができる。したがって、洗浄された転写媒体を再使用することができる。
【0136】
エンドレスベルトとして提供される転写媒体が、プレス装置を通過した後に洗浄され、次いで、装飾材料の新たな塗布のために転写媒体が印刷装置にフィードバックされる前に前処理される場合に特に有利である。
【0137】
UV接着剤は、好ましくは、接着剤として使用され、この接着剤の硬化は、UV光の照射によって行われる。
【0138】
以下の組成の透明接着剤を使用することが好ましい。
2-フェノキシエチルアクリレート:10%~60%、好ましくは25%~50%、
4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン:5%~40%、好ましくは10%~25%、
エキソ-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-アクリレート:10%~40%、好ましくは20%~25%、
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド:5%~35%、好ましくは10%~25%、
ジプロピレングリコールジアクリレート:1%~20%、好ましくは3%~10%、
ウレタンアクリレートオリゴマー:1%~20%、好ましくは1%~10%
【0139】
物理的または化学的硬化型の接着剤を使用する場合、代替的に、熱乾燥ユニットにより接着剤の乾燥を行ってもよい。
【0140】
好ましくは、UV光はUV光源から照射される。プレス装置は、少なくとも部分的な領域においてUV光に対して透明であり、UV光源と保持装置との間に少なくとも部分的に配置される。
【0141】
装飾されるオブジェクトが、プラスチック、ガラスまたは金属、特に化粧品容器、金属容器、ガラス瓶、飲用グラスおよび他のグラス、金属およびプラスチック容器、特に円筒形、楕円形または角形の断面を有する金属およびプラスチック容器、特に管、瓶、グラス、小瓶からなる場合、ガラス、セラミック、プラスチックまたは金属からなる容器の場合、並びにトラック、ストリップ、円弧、プレート、ディスク、パネルまたはボードなどの実質的に二次元のオブジェクトである場合に上記装置および方法が装飾材料の転写に特に適している。
【0142】
本発明のさらに好ましい実施例について、以下の図面を参照してより詳細に説明する。図面の簡単な説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0143】
図1図1は、装飾されるオブジェクトの装飾のための装置の概略図である。
図2図2は、装飾されるオブジェクトの装飾のための装置の概略図である。
図3図3は、装飾されるオブジェクトの装飾のための装置の概略図である。
図4図4は、装飾されるオブジェクトの装飾のための装置の概略図である。
図5図5は、装飾されるオブジェクトの装飾のための装置の概略図である。
図6a図6aは、転写媒体の概略図である。
図6b図6bは、転写媒体の概略図である。
図7a図7aは、補償モジュールの概略図である。
図7b図7bは、補償モジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0144】
以下に図面を参照して好ましい実施例を説明する。異なる図面において、同一または類似の構成要素あるいは同一に作用する構成要素には、同一の参照番号を用いる。なお、冗長性を回避するため、上記構成要素を繰り返して説明しないことがある。
【0145】
図1は、装飾されるオブジェクト13を装飾するための装置100の概略図である。装置100は、転写媒体展開装置11を有している。この装置から転写媒体3が展開される。転写媒体3に装飾材料を塗布する印刷装置7は、転写媒体3の移動方向80に移動する。印刷装置7によって印刷された後、転写媒体3は、保持装置1に対向して配置されたプレス装置2に送られる。プレス装置2の下流側には、転写媒体巻取り装置12が配置されており、当該装置の周囲に沿って使用済みの転写媒体が巻き取られる。
【0146】
装置100は、転写媒体ガイド8をさらに有する。転写媒体ガイド8は、転写媒体3の移動が規定し、装置100に亘って転写媒体3を案内する。
【0147】
保持装置1は、例えば、三次元オブジェクト13が押し付けられる保持マンドレルである。オブジェクト13は、保持マンドレルとオブジェクト13の内面との摩擦によって内側から保持される。代替例では、オブジェクトは、保持装置1により外側から保持される。
【0148】
転写媒体3は、転写媒体展開装置11から、設定可能な偏向ローラ82を介して真空ローラ83に供給される。転写媒体ガイドおよび転写媒体の張力は、偏向ローラ82を介して制御される。転写媒体3の設定可能な供給速度は、真空ローラ83によって予め規定されている。移動方向80の下流側にはさらに別の真空ローラ83が配置されている。印刷装置7における十分なベルト張力を確保するため、第2の真空ローラ83の回転速度は、第1の真空ローラ83の回転速度よりも少し速く設定されてもよい。第1の真空ローラ83による転写媒体3の供給はより大きな負圧となるように予め規定され、第2の真空ローラ83は、真空度が低く、第2の真空ローラ83と転写媒体3との摩擦によって張力が調整される。上記を満たすように、第1および第2の真空ローラ83の負圧強度が設定される。異なるオブジェクト13の装飾に対する異なる要件に対応して、真空ローラ83の作動は反対の強度で行ってもよい。したがって、第1の真空ローラ83は減圧した負圧となり、第2の真空ローラ83は増圧した負圧となる。真空ローラ83は、所望の方法で真空ローラ83の各々の領域を作動させるため、複数部分からなる真空区域を備えていてもよく、これにより、前記区域における真空度を異なる設定とすることができる。
【0149】
第2の真空ローラ83の後、転写媒体3は、さらなる偏向ローラ82を介してプレス装置2に送られる。さらなる偏向ローラ82は、印刷装置7における印刷プロセス(以下でさらに詳細に説明する)に基づいてパルス化される印刷装置7の転写媒体送りを補償し、転写媒体張力を変動させる。転写媒体3は、プレス装置2から転写媒体の張力設定用のさらに2つの偏向ローラ82を介して、転写媒体巻取り装置12へと送られ、転写媒体巻取り装置12によって巻き取られる。
【0150】
印刷装置7とプレス装置2との間に配置された偏向ローラ82は、転写媒体3の裏側、すなわち印刷されていない側において転写媒体3と接触するように配置されている。これにより、印刷装置7において装飾材料が塗布された転写媒体3は、装飾材料が塗布された表面がローラの表面に接触することなく、プレス装置2に供給される。
【0151】
印刷装置7は、デジタル印刷(例えば、インクジェット印刷、電子写真印刷、液体トナー印刷)により転写媒体3に印刷を行うデジタル印刷装置として形成される。代替例では、印刷装置7は、スクリーン印刷、フレキソ印刷またはオフセット印刷用の装置として形成される。印刷は単色または多色で行われる。
【0152】
印刷装置7は、水平に配置された印刷ベースプレート72を有する。装飾される転写媒体3は、転写媒体展開装置11から偏向ローラ82および第1の真空ローラ83を介して印刷ベースプレート72を通って第2の真空ローラ83へと案内される。印刷装置7は、印刷ベースプレート72の上方に複数のプリントヘッド70を有する。第1のプリントヘッド70は、剥離ワニス層または剥離層としてまたは装飾材料の転写のための塗布補助材としてワニス層を印刷するため設けられている。次いで、さらに4つのプリントヘッド70が設けられている。4つのプリントヘッド70は、転写媒体3に対するカラー印刷のために設けられ、シアン、イエロー、マゼンタおよびブラックにそれぞれ対応している。印刷ベースプレート72上に配置または固定されている転写媒体3は、プリントヘッドの移動方向71に沿って、予め規定された速度でプリントヘッド70を印刷ベースプレート72に亘って移動させることによって印刷される。
【0153】
代替例では、第1または第2の真空ローラ83の代わりに、一つまたは複数のさらなる偏向ローラを配置してもよい。さらに、転写媒体3を移動させるため、他の形式の駆動装置を設けてもよい。
【0154】
さらに、印刷装置7は、一体化された乾燥ユニット6および接着剤塗布装置4を備える。乾燥ユニット6は、転写媒体3に塗布された装飾材料を乾燥させるため、プリントヘッド70と同期して移動可能である。接着剤塗布装置4は、装飾材料を備えた転写媒体3に接着剤を塗布する。転写媒体3の印刷後、乾燥ユニット6は、上流側のプリントヘッド70から供給されたインクを乾燥させ、かつ/または部分的に、または事前にまたは完全に硬化させる。この場合、乾燥ユニット6は、UV光乾燥ユニットとして形成され、このUV光乾燥ユニットは、転写媒体3に塗布された装飾材料を部分的に乾燥または完全に乾燥および/または部分的に硬化または予備硬化または完全に硬化させる。代替例では、他の乾燥方法を使用してもよい。
【0155】
特に、UV光の放射によって硬化する装飾材料が転写媒体に印刷される場合、転写媒体3に印刷した直後にUV光源を用いて装飾材料を予備硬化させることが有利である。このため、印刷装置7は、好ましくは、印刷装置7の端部および/または接着剤塗布装置4の前方に配置された、装飾材料を予備硬化させるためのUV光源を有する。これにより、特に、装飾材料の粘度が増す。これにより、さらなる処理の間に、塗布された装飾材料が流れたり、過度に圧搾されたりしなくなる。その結果、特にシャープな縁部を有する装飾材料の塗布が可能となり、かつオブジェクトに転写された層の表面品質が特に向上する。実際には、装飾材料の直接隣接する領域、特に最小領域、いわゆる画素を互いに接近させて組み合わせるため、装飾材料を僅かに圧搾することが望ましい。これは、例えば、閉鎖された表面領域および/またはモチーフの縁部における表現の画素化を防止するため、すなわち、個々の画素が破壊的な方法で光学的に現れることを防止するために有利である。圧搾は、好ましくは、所望の解像度が極端に低下しない限り行ってもよい。有利には、UV光は、220nm~420nmの波長範囲、好ましくは350nm~400nmの波長範囲で放出される。
【0156】
装飾材料を予備硬化させるためのUV光源は、LED光源であることが好ましい。LED光源を用いることにより、実質的に単色の光が放射される。その結果、接着剤を硬化させるのに必要な波長範囲で必要な放射強度が得られる。これは、従来の中圧水銀灯では実現することができない。
【0157】
乾燥後、接着剤塗布装置4は、接着剤プリントヘッド40を用いて装飾材料層に接着剤を印刷する。この接着剤の印刷は、後にプレス装置2において三次元オブジェクト13に転写される装飾材料層の位置に対して行われる。
【0158】
特に、接着剤が紫外線により硬化可能な成分を有する場合、特に接着剤のいわゆる「ピンニング(pinning)」のため、接着剤を転写媒体上に堆積させた直後に予備硬化させることが有利である。したがって、接着剤塗布装置が、接着剤を予備硬化させるためのUV光源を有し、UV光源が、接着剤塗布装置の端部および/またはプレス装置の前方に配置されることが好ましい。これにより、接着剤の粘度が増す。これにより、さらなる処理の間に、塗布された接着剤が流れることまたは過度に圧搾されることが防止される。その結果、装飾材料の縁部が特にシャープになるとともに、オブジェクトに転写された層の表面品質が向上する。実際には、印刷媒体の直接隣接する領域、特に最小領域、いわゆる画素を互いに接近させて組み合わせるために、接着剤を僅かに圧搾することが望ましい。これは、例えば、閉鎖された表面領域および/またはモチーフの縁部における表現の画素化を防止するため、すなわち、個々の画素が破壊的な方法で光学的に現れることを防止するために有利である。圧搾は、好ましくは、所望の解像度が極端に低下しない限り行ってもよい。有利には、UV光は、220nm~420nmの波長範囲、好ましくは350nm~400nmの波長範囲で放出される。
【0159】
接着剤を予備硬化させるためのUV光源は、好ましくはLED光源である。LED光源を用いることにより、実質的に単色の光が放射される。その結果、接着剤を硬化させるのに必要な波長範囲で必要な放射強度が得られる。これは、従来の中圧水銀灯では実現することができない。
【0160】
代替的に、プリントヘッド70および印刷ベースプレート72を固定位置に配置してもよい。印刷プロセス中、転写媒体展開装置11から供給される転写媒体3は、第1の真空ローラ83および第2の真空ローラ83により、プリントヘッド70の下方に位置する印刷ベースプレート72に案内される。転写媒体3の供給速度は、プリントヘッド70の印刷能力に応じて設定される。
【0161】
印刷ベースプレート72は、印刷プロセスのため、プレート移動方向73に沿って移動可能に配置され得る。
【0162】
印刷装置7により、転写媒体3におけるオブジェクト13に転写される装飾領域の外側部分に測定点が印刷される。これにより、センサまたは少なくとも1つのカメラを用いて転写媒体3上の装飾材料の位置を検出することができる。
【0163】
印刷プロセスが完了すると、転写媒体3は、装飾材料をオブジェクト13に転写するためにプレス装置2へとさらに送られる。
【0164】
プレス装置2は、回転可能であり透明で中空のシリンダ20を有する。シリンダ20の外方には、透明な弾性材料、好ましくはシリコーン材料から形成されたフレキシブルなプレス層が設けられている。プレス層が弾性を有するため、三次元オブジェクト13、転写媒体3および/または機械構造の不規則性に対応することができる。本実施例において、シリンダ20およびプレス層は、UV光に対して透明であり、したがって、UV光はシリンダ20およびプレス層に対して透過可能である。
【0165】
この場合、接着剤は、UV光により硬化するUV接着剤である。シリンダ20内には、接着剤を硬化させるUV光源の一形態である硬化装置5が配置される。硬化装置5の放射領域は、転写媒体3とオブジェクト13との接触領域14に向けられる。オブジェクト13に向けたUV光がUV光源によりシリンダ20から放出されるように、シリンダ20およびプレス層は、UV光に対して透明な材料から形成される。同様に、転写媒体3はUV光に対して透明である。
【0166】
接着剤を硬化させるためのUV光源は、好ましくは、220nm~420nm、好ましくは350nm~400nmの波長範囲のUV光を放射する。
【0167】
プレス装置2は、220nm~420nmの波長範囲、好ましくは350nm~400nm、特に好ましくは365nm~395nmの放射線に対して、特に透明または半透明である。透明度または半透明度は、特に30%~100%、好ましくは40%~100%である。透明度または半透明度が低い場合には、より強いUV光を用いることが好ましい。
【0168】
例えば、LEDエミッタ、水銀灯、または鉄をドープした水銀灯および/またはガリウムをドープした水銀灯をUV光源として使用してもよい。接着剤を硬化させるためのUV光源は、好ましくはLED光源である。LED光源を用いることにより、実質的に単色の光を放射することができる。その結果、接着剤を硬化させるのに必要な波長範囲で必要な放射強度が得られる。これは、従来の中圧水銀灯では実現することができない。
【0169】
最適な完全硬化を実現すると同時に、特にUV光源とオブジェクト13との物理的な接触を防止するため、接着剤を硬化させるためのUV光源からオブジェクト13までの距離は、有利には2mm~50mm、好ましくは2mm~40mmである。接着剤を硬化させるためのUV光源の照射窓の装置方向の大きさは、好ましくは5mm~40mmである。
【0170】
LED光源が使用される場合、特にLED光源の発散が比較的高いため、通常、放射線のエネルギーは、LED光源からの距離が約5mm以上になると相対的に大きく減少する。そのため、選択するオブジェクトからの距離を小さくすることが好ましい。光学的に集束するLED光源を使用することにより、オブジェクト13からの距離をより大きくすることができ、これにより、特に困難な設計条件下でも使用可能となる。さらに、光学的に集束するLED光源を使用する場合、このLED光源の照射窓を、特に光学的に集束しないUV光源を使用する場合の照射窓よりも小さくすることができる。
【0171】
総UV放射照度は、好ましくは1W/cm~50W/cm、好ましくは3W/cm~40W/cmである。これにより、接着剤は、約10m/分~60m/分(またはそれ以上)のウェブ速度および予備硬化に関して既に述べた他の要素によって完全に硬化する。
【0172】
上記の要素を考慮する場合、接着剤は、本願の方法において、好ましくは4.8W/cm~8.0W/cmの正味UV放射照度で照射される。これは、約100mJ/cm~2000mJ/cm、好ましくは約100mJ/cm~1000mJ/cmの接着剤への約0.1秒(10m/分のウェブ速度および20mmの幅の照射窓を有する場合)から約0.04秒(30m/分のウェブ速度および20mmの幅の照射窓を有する場合)の好ましい照射時間での正味のエネルギー入力(線量)に対応する。特に、この正味のエネルギー入力は、要求される完全な硬化に応じて可変である。
【0173】
本明細書において、これらの値は、特に、(100%のランプ電力での)理論上でのみ可能であることに留意されたい。特に、接着剤を硬化させるためのUV光源のフルパワー(例えば、20W/cm)および低いウェブ速度(例えば、10m/分)では、転写媒体は、非常に強く加熱されるため発火する虞がある。したがって、正味のエネルギー入力は、特に好ましくは、ウェブ速度に応じて100mJ/cm~500mJ/cmであることが特に好ましい。
【0174】
シリンダ20におけるUV光に対して透明な領域は、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート、アクリルガラス)および/またはホウケイ酸ガラスから形成されてもよい。これらの材料は、特に350nm~400nmの波長範囲において、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%の透過率を有する。
【0175】
さらに、プレス装置2のシリンダ20を完全にまたは部分的に透明にしてもよい。これにより、特に接着剤を完全に硬化させるようにUV光を十分に透過させることができる。好ましくは、装飾材料は、特に、印刷された画像の裏面における接着剤をUV光により硬化させるように十分な透過性を有する。本明細書において、実際の試験では、特に多色印刷画像の場合、露光方向の裏面側に位置する接着剤の十分な露光を実現するため、350nm~400nmのUV光の波長範囲で装飾材料の透過率が少なくとも2.5%であれば十分であることを示している。
【0176】
例えば、装飾材料の透過率の測定では、測定値は以下の通りである。
【表2】
【0177】
特に、装飾材料の透過率が接着剤の十分な露光には低すぎる場合、例えば、上記の白色で不透明な装飾材料の場合、装飾材料は、装飾材料を有する第1の領域および装飾材料を有さない第2の領域においてグリッド(格子)状に配置されると有利である。ここで、第1の領域および/または第2の領域を、500μm未満、好ましくは250μm未満の線幅および/または最小グリッド要素寸法を有する細い線および/または小さいグリッド要素の形態で配置すると特に有利である。UV光は、装飾材料を有していない第2の領域を通過し、十分な量のUV光が接着剤に到達して、当該領域を硬化のために十分に露光する。第1の領域の大きさは相対的に小さいため、下方から少なくとも部分的に照射されてもよい。その結果、接着剤は少なくとも部分的に露光されて硬化する。
【0178】
第1の領域の平均幅と第2の領域の平均幅との比は、好ましくは0.75:1~1:5である。したがって、第1の領域の幅は、好ましくは、250μm未満であり、第2の領域の幅は、250μm以上である。
【0179】
第1の領域および第2の領域は、好ましくは、1次元または2次元のグリッド、例えば、線形のグリッドまたは面グリッドに従って配置される。第1の領域および/または第2の領域をドット状または多角形状に形成してもよい。グリッド要素の形状は、ドット状、ダイヤモンド状および十字形から選択されることが好ましい。しかし、異なるグリッド要素の形状を用いてもよい。
【0180】
第1および第2の領域のグリッドまたは分布は、規則的またはランダム(確率的)または擬似ランダムに形成されることが好ましい。
【0181】
さらに、1次元グリッドまたは2次元グリッドは、幾何学的に変換されたグリッドであってもよい。したがって、例えば、円形または波状に変換された1次元グリッドであってもよい。例えば、第1の領域は、同心円状をなす円形リング状または波状の線形であってもよい。
【0182】
代替例では、接着剤は、物理的または化学的に硬化する接着剤であってもよい。この場合、好ましくは、熱乾燥による乾燥が行われる。このため、硬化装置5は熱乾燥装置として形成される。
【0183】
転写媒体3からオブジェクト13に装飾材料を転写するため、オブジェクト13は、保持装置1によってプレス装置2の下方に配置されている。次に、転写媒体3は、装飾層および接着剤層がオブジェクト13に面した状態でシリンダ20に沿って移動し、保持装置1に固定されたオブジェクト13の上方に案内される。転写媒体3の装飾層は、オブジェクト13の装飾面に面している。装飾材料の転写は、接触領域14に沿った接線方向にオブジェクト13に亘って案内される転写媒体3に対して、シリンダ20がオブジェクト13を所定の押圧力で押圧することによって行われる。シリンダ20およびオブジェクト13は、転写媒体3の表面速度がオブジェクト13の表面速度に対応するように回転する。
【0184】
UV接着剤は、転写媒体3がオブジェクト13に押し付けられると同時にUV光によって硬化する。オブジェクト13の回転およびオブジェクト13に対する転写媒体3の接線方向の進行により、転写媒体3は、接着剤の硬化直後にオブジェクト13から取り外される。接着剤が転写媒体3に塗布されている位置において、装飾材料(例えば、装飾インクまたは金属層)は、接着剤の硬化後、硬化した接着剤によってオブジェクト13に付着する。接着剤が存在しない位置では、装飾材料は転写媒体に残存する。
【0185】
オブジェクト13の寸法変動に対応するため、シリンダ20は、プレス装置22内に浮遊した状態または吊り下げられた状態で取り付けられる。例えば、圧力調整された空気圧シリンダを使用してもよい。オブジェクト13に対するシリンダ20の押圧力は、空気圧シリンダの空気圧設定を変更することにより可変に調整可能である。オブジェクト13の表面に対する寸法変動の補償は、設定された押圧力に対応するシリンダ20の弾性的な垂直方向の上昇運動により行われる。代替例では、可変の垂直方向の上昇運動および押圧力の制御は、圧縮空気および空気圧シリンダの代わりに、設定可能なばね張力を有する圧縮ばねを介して行われる。
【0186】
装飾材料を転写する中空シリンダ20を有するプレス装置2の設計は、平坦なオブジェクトに対する転写にも適している。平坦な表面を有するオブジェクト、例えば、正方形または長方形の断面を有するオブジェクトならびに平坦でかつ硬質のオブジェクトの場合、同様に、接着剤は、オブジェクトおよび転写媒体の装飾層の両方に塗布される。プレス装置2は、装飾材料の転写のため水平に移動する。硬化装置5による照射と同時にシリンダ20をオブジェクト上で半径方向に展開させることにより、装飾材料がオブジェクトの表面に転写される。
【0187】
図2は、オブジェクト13の装飾のための装置100の概略図である。図1の装置に対応した装置100は、転写媒体3の移動方向80において、転写媒体展開装置11、印刷装置7、プレス装置2および転写媒体巻取り装置12を有する。
【0188】
転写媒体展開装置11からの転写媒体3は、転写媒体ガイド8の第1の真空ローラ83を介してプレス装置2の中空シリンダ20に直接案内される。転写媒体3は、約300°の偏向角度でシリンダ20を取り囲んでいる。次いで、転写媒体3は、別の真空ローラ83を介して転写媒体巻取り装置12に供給される。
【0189】
図1の装置100と異なり、第2の実施例による印刷装置7は、プレス装置2のシリンダ20に対して直接配置されている。したがって、シリンダ20は、印刷装置7の印刷ベース部としても機能する。したがって、印刷装置7のプリントヘッド70は、シリンダ20の外面から所定の半径方向の距離を隔てて半径方向に配置されている。乾燥ユニット6および接着剤塗布装置4は、印刷装置7の一部として形成され、同様に、所定の半径方向の距離を隔ててプリントヘッド70の下流側に配置されている。乾燥ユニット6から放射されるUV光が散乱するのを防止するため、乾燥ユニット6に対応するシリンダ20内の領域に光不透過性カバー60が配置される。
【0190】
転写媒体3に印刷して乾燥させ、接着剤を塗布するために、シリンダ20は、所定の印刷速度または印刷能力に対応する所定の回転速度で回転される。さらに、転写媒体3への接着剤の印刷、乾燥および塗布は、図1を参照して説明した手順に対応して行われる。
【0191】
第1の実施例と同様に、水平に配置されたシリンダ20の下方にオブジェクト13を保持する保持装置1が配置されている。プレス装置2による装飾材料の転写は、第1の実施例について説明した方法と同様に行われる。したがって、シリンダ20によるオブジェクト13に対する転写媒体3の押圧と、硬化装置5による接着剤の硬化とが同時に行われる。第2の真空ローラ83の位置は設定可能である。装飾材料の最適な剥離を実現するように、オブジェクト13からの転写媒体3の剥離角度を適合させることができる。
【0192】
さらに、装飾する前にオブジェクト13の表面を前処理すると好都合である。この前処理は、特に、オブジェクト洗浄ステップおよび/または活性化ステップを含む。
【0193】
好ましくは、オブジェクト13の洗浄ステップにおいて、特にオブジェクト13の搬送および/またはオブジェクトの製造時に生じた汚れおよび/または既存の保護コーティングまたは他の機能コーティングが除去される。
【0194】
ガラス表面の場合、特に、表面上の水分により問題が生る。水分は、特にゲル層の形態で生じ、このゲル層は、後に表面に塗布される層の接着特性に悪影響を及ぼす。
【0195】
続いて塗布される層、特に装飾への接着を可能にする表面の性能は、後に塗布される層の固定のための基礎となるため、表面上の塗布または生成される反応基に依存する。ガラスのケイ酸塩層中における反応性OH基の密度は、公知の方法では十分ではなく、後に塗布される層の接着性を低下させる。
【0196】
好ましくはオブジェクトの洗浄ステップの後に行われる活性化ステップにおいて、オブジェクトの表面は、有利には、後に塗布される装飾の接着性が増加し、改善されるように改質される。改質は、化学的および/または物理的に行われる。
【0197】
オブジェクト洗浄ステップは、特に、少なくとも1つの酸化炎によるオブジェクト13の表面の改質を含む。オブジェクト洗浄ステップは、不均一なゲル層の形態でコンパクトな基板の非晶質表面に結合した水分が減少するという利点を有する。驚くべきことに、ゲル層は、オブジェクト洗浄ステップによって再現性良く減少する。ゲル層は非晶質(アモルファス)構造ならびにゲル層のエージング(経時変化)の状態に依存する。ゲル層、したがって結合した水分は酸化炎により減少する。ゲル層の減少は再現性のある均一な表面特性をもたらす。
【0198】
本明細書において、酸化炎とは、過剰の酸素を含み、および/または酸化作用を有する任意の着火ガス、ガス-空気混合物、エアゾールまたはスプレーを意味する。
【0199】
活性化ステップは、特に、少なくとも1つのシリケート化炎によりオブジェクト13の表面を改質することを含む。このプロセスでは、60nm以下、好ましくは5nm~50nm、さらに好ましくは10nm~30nmの厚さの酸化ケイ素層が塗布され、これは高含有量の反応性のOH基を特徴とする。堆積された酸化ケイ素層の均一性および良好な接着特性は、オブジェクト洗浄ステップと活性化ステップとの組み合わせによって実現する。有利には、1~10、特に1~5の酸化炎および/またはシリケート化炎がオブジェクトの表面を改質するように炎の数が選択される。
【0200】
表面上の反応基は、続いて塗布される表面処理層、例えばワックス層および/またはワニス層および/またはインク層の化学結合のための化学的な基礎となる。表面が非晶質物質、例えばガラスからなる場合、本発明による成形基板の表面のOH基の面積密度は、未処理表面の場合よりも2~5倍高い。
【0201】
第2の処理ステップで塗布される酸化ケイ素層またはケイ酸塩層は、極微小(サブミクロン)の粗さを有する。さらなる層のための粗さおよび対応する機械的な固定は、後続の全ての層における接着を改善する。オブジェクト洗浄ステップおよび活性化ステップにより、再現性が高く、均質でかつ微小保持性を有する表面が生成される。驚くことに、2つの方法ステップの組み合わせにより、ゲル層の減少、密度の増加および反応性OH基の均一な分布がもたらされる。
【0202】
活性化ステップでは、火炎処理のために、アルキルシラン、アルコキシシラン、アルキルチタン、アルコキシチタン、アルキルアルミニウム、アルコキシアルミニウム、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を有する化合物を含有するガスが使用される。
【0203】
そのような化合物の好ましい例としては、テトラメチルシラン、テトラメチルチタン、テトラメチルアルミニウム、テトラエチルシラン、テトラエチルチタン、テトラエチルアルミニウム、1,2-ジクロロテトラメチルシラン、1,2-ジクロロテトラメチルチタン、1,2-ジクロロテトラメチルアルミニウム、1,2-ジフェニルテトラメチルシラン、1,2-ジフェニルテトラメチルチタン、1,2-ジフェニルテトラメチルアルミニウム、1,2-ジクロロテトラエチルシラン、1,2-ジクロロテトラエチルチタン、1,2-ジクロロテトラエチルアルミニウム、1,2-ジフェニルテトラエチルシラン、1,2-ジフェニルテトラエチルチタン、1,2-ジフェニルテトラエチルアルミニウム、1,2,3-トリクロロテトラメチルシラン、1,2,3-トリクロロテトラメチルチタン、1,2,3-トリクロロテトラメチルアルミニウム、1,2,3-トリフェニルテトラメチルシラン、1,2,3-トリフェニルテトラメチルチタン、1,2,3-トリフェニルテトラメチルアルミニウム、ジメチルジエチルテトラシラン、ジメチルジエチルテトラチタン、ジメチルジエチルテトラアルミニウムおよびこれらに類する化合物が挙げられる。
【0204】
また、そのようなアルキル化合物の中でも、シラン化合物、アルキルチタン化合物およびアルキルアルミニウム化合物、テトラメチルシラン、テトラメチルチタン、テトラメチルアルミニウム、テトラエチルシラン、テトラエチルチタンおよびテトラエチルアルミニウムは、特に沸点が低く、空気および同様のガスとの混和が容易であるため、調整(改質)に好ましい化合物である。一方、1,2-ジクロロテトラメチルシランなどのシランハライド化合物は、好ましくは調製剤として使用される。
【0205】
さらに、アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物およびアルコキシアルミニウム化合物は、一般にエステル構造により高い沸点を有するが、沸点が10℃~100℃の範囲にあれば、固体基材のさらに良好な表面改質作用を可能にするため好ましい化合物である。
【0206】
本発明の意味におけるシリケート化炎とは、任意の着火ガス、ガス-空気混合物、エアゾールまたはスプレーを意味する。そして、これらの補助によって、シリコン含有物質の火炎熱分解により酸化ケイ素層が表面に塗布される。特に、ケイ素含有コーティングが実質的に炭素を含まずに塗布され、火炎熱分解でケイ素アルコキシシランが、ケイ素含有物質として、空気と燃焼ガスおよび必要に応じて酸素との混合物中に導入される。燃焼ガスは、例えば、プロパンガス、ブタンガス、石炭ガスおよび/または天然ガスを含む。
【0207】
質量スペクトル分析を用いて測定した調整化合物の平均分子量の値は、50~1000、好ましくは60~500、さらに好ましくは70~200にあると有利である。調整化合物の平均分子量が50未満であると、揮発性が高く、取り扱いが困難になることがある。一方、調整化合物の平均分子量の値が1000を超えると、加熱による気化および空気等のガスとの微量混合が困難になることがある。
【0208】
さらに、液状の調整化合物の比重が、0.3g/cm~0.9g/cm、好ましくは0.4g/cm~0.8g/cm、さらに好ましくは0.5g/cm~0.7g/cmであると好都合である。液状の調整化合物の密度が0.3g/cm以下の場合、取扱いが困難になり、エアゾール缶への収容上、問題が生じることがある。一方、液状の調整化合物の比重が0.9g/cmを超えると気化しにくくなり、エアゾール缶に収容する場合、完全に気化することがあり、空気または同様のガスと完全に分離する可能性がある。
【0209】
調整化合物を加熱して気化させ、気化した状態で燃焼ガスと混合させ、燃焼させると有利である。調整化合物の沸点は、好ましくは10℃~80℃である。
【0210】
燃焼ガス中の調整化合物の量は、特に燃焼ガスの全量の1×10-10モル%~10モル%である。
【0211】
表面改質後のぬれ指数は、特に、25℃の測定温度で40mN/m(dyn/cm)~80mN/m(dyn/cm)である。
【0212】
酸化および/またはシリケート化炎の火炎温度は、好ましくは500℃~1500℃、特に900℃~1200℃であり、および/またはオブジェクトの表面は、有利には、35℃~150℃、特に50℃~100℃に加熱される。
【0213】
酸化および/またはシリケート化炎による処理の持続時間は、特に0.1秒~100秒、好ましくは0.1秒~10秒、特に好ましくは0.1秒~5秒である。
【0214】
酸化炎および/またはシリケート化炎の火炎温度を容易に制御できるようにするため、燃焼ガスに可燃性ガスを添加することが推奨される。このような可燃性ガスとして、プロパンガスや天然ガスなどの炭化水素ガスや、水素、酸素、空気などの可燃性ガスを用いることができる。エアゾール缶に収容される可燃性ガスを使用する場合、プロパンガスおよび圧縮空気などを使用することが好ましい。
【0215】
含有される可燃性ガスの量は、燃焼ガスの総量の80モル%~99.9モル%、好ましくは85モル%~99モル%、さらに好ましくは90モル%~99モル%であることが好ましい。80モル%未満の燃焼ガス含有量では、調整化合物の混合特性が低下し、場合により、空気が調整化合物の不完全燃焼をもたらす。一方、燃焼ガス量の含有値が99.9モル%を超える場合、表面に改質作用が生じないことがある。
【0216】
また、調整化合物を燃焼ガス中に均一に混合するために、酸化および/またはシリケート化炎のためのキャリアガスを添加することが好ましい。調整化合物をキャリアガスと予備混合し、次いで可燃性ガス、例えば空気流中に混合することが好ましい。移送が困難である相対的に高い分子量の調整化合物を用いた場合でも、キャリアガスの添加により、空気流に均一に混合することができる。キャリアガスの添加により、調整化合物は容易に可燃性となり、物品の表面の改質を均一かつ十分に行うことができる。
【0217】
可燃性ガスと同じ種類のガス、例えば、空気および酸素、またはプロパンガスおよび天然ガスなどの炭化水素ガスをキャリアガスに使用することが好ましい。
【0218】
少なくとも1つの酸化炎および少なくとも1つのシリケート化炎による表面の組み合わせ処理によって、高密度の反応基を有する均一な微小保持性表面が提供される。
【0219】
活性化ステップにおいて塗布されるケイ酸塩層の粗さおよび良好な接着特性は、有利には、後に塗布される装飾、特に後に塗布される装飾材料、例えば印刷インクまたは他の装飾もしくは機能層が非常に良好に接着するという結果をもたらす。ケイ酸塩層に塗布される装飾材料は、有利には、スクラッチ傷に強くかつ耐摩耗性であり、水および水蒸気に対して高い耐性を有する。生成された均質なケイ酸塩層により、装飾により塗布された印刷インクの高いインキ被覆率が有利に実現する。色相、色強度、メタメリズム、被覆率および透明性などの装飾層の特性は、有利には、対応するように前処理された表面に基づいて実質的に自由に選択することができる。
【0220】
オブジェクト洗浄ステップおよび/または活性化ステップは、特に、オブジェクト13を前処理するためのさらなる前処理装置により行うことができる。オブジェクト13を前処理するためのさらなる前処理装置は、上記の両ステップの実施のために設計されてもよいし、またはオブジェクト洗浄装置および別個の活性化装置をそれぞれ別々に設けてもよい。
【0221】
オブジェクト13を前処理するためのさらなる前処理装置および/またはオブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、オブジェクト13の装飾のための装置100、特に保持装置1に設置するためのモジュールとして設計されてもよい。対応するモジュールを用いて、後続のステップが実行される前に、オブジェクト13の表面の前処理を装置100内で実行することができる。
【0222】
前処理装置および/またはオブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、さらなる装置から独立して、オブジェクト13の表面を前処理する別個の装置として設計されてもよい。
【0223】
オブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、好ましい実施例では、リング状の火炎処理装置を有する。前処理されるオブジェクト13はリング内に配置され、酸化炎またはシリケート化炎はリングからオブジェクト13の表面方向に供給される。
【0224】
さらなる実施例では、オブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、少なくとも部分的に直線状に形成された火炎処理装置を有する。この火炎処理装置は、オブジェクト13の前処理される表面の一部分に案内されるかまたは移動される。
【0225】
さらなる実施例において、オブジェクト洗浄装置および/または活性化装置は、点で現れる一つまたは複数の火炎を有する火炎処理装置を有する。この火炎処理装置は、オブジェクト13の前処理される表面の一部分に案内されるかまたは移動される。三次元オブジェクトの装飾中、オブジェクト13は、好ましくは回転軸を中心に回転可能な保持装置1に保持される。この回転軸は、オブジェクト13の長手方向軸であることが好ましい。
【0226】
図3は、オブジェクト13の装飾のための装置100を概略的に示している。本実施例における装置100は、図2による装置100に実質的に対応している。しかし、プレス装置は、寸法的に安定したエンドレスベルトとして形成された張力安定ガイドベルト81をさらに有する。ガイドベルト81は、テンションローラ84と、駆動されるシリンダ20との間に延在しており、約250°の偏向角度でシリンダ20を取り囲んでいる。ガイドベルト81は、硬化装置5から放射される放射線に対して透明である。さらに、シリンダ20の外側に可撓性のプレス層が設けれている。印刷装置7における装飾材料および接着剤の印刷の間、転写媒体3は、少なくともオブジェクト13に押し付けられるまでガイドベルト81上に亘っている。このため、転写媒体3が確実に案内される。
【0227】
図4は、オブジェクト13の装飾のための装置100の概略図である。装置100は、透明で中空のシリンダ20を有するプレス装置2と、シリンダ20内に配置された硬化装置5と、を有する。
【0228】
さらに、この装置は、エンドレスベルトとして形成された転写媒体3を有する。この転写媒体3は、図3のエンドレスベルトに対応し、寸法および張力が安定している。さらに、転写媒体3は、テンションローラ84と、駆動されるシリンダ20との間に延在しており、約250°の偏向角でシリンダ20を取り囲んでいる。シリンダ20は、外側に可撓性のプレス層を有する。このプレス層を介して、エンドレスベルトとして形成された転写媒体3が案内される。
【0229】
転写媒体3への印刷およびオブジェクト13への装飾材料の転写は、図3を参照して説明した方法と同様に行われる。保持装置1により保持されたオブジェクト13への転写媒体3の押圧および装飾材料の転写後のオブジェクト13からの転写媒体3の剥離の後、転写媒体3は、テンションローラを介して偏向されて印刷装置7に戻される。そして、印刷装置7において、装飾材料および接着剤が再び提供され、新たな装飾材料が少なくとも1つのさらなるオブジェクトに提供される。
【0230】
転写媒体3への新たな印刷中に転写媒体3に残存している装飾材料によって装飾が歪まないように、保持装置1と印刷装置7との間に、転写媒体3から装飾材料および接着剤の残渣を除去する洗浄装置10が配置されている。洗浄装置10の下流でかつ印刷装置7の上流には、前処理装置9が設けられている。この前処理装置9により、洗浄により生じた転写媒体3の剥離層への損傷が修復される。さらに、前処理装置9は、例えば、剥離ワニスまたは剥離層および/または印刷装置により塗布される装飾材料の塗布補助材を転写媒体3に印刷するための少なくとも1つのプリントヘッドを有していてもよい。
【0231】
図5は、オブジェクト13の装飾のための装置100を概略的に示している。
【0232】
装置100は、透明であり、寸法および張力が安定したエンドレスベルトとして形成された転写媒体3を有する。転写媒体3は、駆動ローラ85によって案内される。転写媒体3は、水平に取り付けられた駆動ローラ85の周囲に約130°の角度で巻かれている。駆動ローラ85は、転写媒体3との間の接触領域に真空支持体を備えており、これにより、摩擦のない一連の運動が実現する。
【0233】
洗浄装置10における洗浄およびその後の前処理装置9における前処理の後、転写媒体3は、印刷装置7において印刷され、接着剤が塗布される。印刷装置7は、実質的に図1の印刷装置7と同様の構造を有している。本実施例では、印刷ベースプレート72は、不規則な曲率を有しており、プリントヘッド70は、印刷ベースプレート72上の曲率に対応して配置される。これに続き、転写媒体3は、複数の偏向ローラ82を介して、プレス装置2に案内される。複数の偏向ローラ82は、特に転写媒体3の張力を設定するように転写媒体3の非印刷側に配置されている。プレス装置2は、外側に可撓性のプレス層が設けられた透明のシリンダ20を有する。プレス装置2は、オブジェクト13を保持する保持装置1に対向して配置されている。装飾材料の転写および接着剤の硬化は、前述した方法と同様に行われる。装飾材料の転写後、転写媒体3は駆動ローラ85を介して再び洗浄装置10に供給される。
【0234】
デジタル印刷によって転写媒体3に装飾材料を印刷するため、転写媒体3は、印刷装置7の印刷能力に対応して予め定められた移動速度で湾曲した印刷ベースプレート72上に案内される。
【0235】
代替例では、転写媒体3が装飾材料の印刷のため印刷ベースプレート72に固定され、印刷装置7のプリントヘッド70、乾燥ユニット6および接着剤塗布装置4の下方を通って移動するように、印刷装置7が形成されてもよい。支持のため、真空ローラ(図示せず)を印刷ベースプレート72の上流および下流に取り付けてもよい。
【0236】
さらに、代替例では、印刷ベースプレート72の上流および下流に設けられた真空ローラ(図示せず)によって、固定位置に保持された印刷ベースプレート72に亘る転写媒体の供給が行われるように装置を形成してもよい。
【0237】
図6aおよび図6bは、転写媒体3の概略図である。
【0238】
図6aおよび図6bに示すように、転写媒体は、特に、装飾材料15が再び取り外し可能に塗布される可撓性のキャリア材料であってもよい。例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリイミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリスチレン(PS)からなる可撓性のプラスチックキャリアフィルム16をキャリア材料として使用してもよい。さらに、キャリア材料、特にプラスチックキャリアフィルム16にプライマ層を塗布してもよい。
【0239】
プライマ層は、好ましくは、0.1μm~1.5μm、好ましくは、0.5μm~0.8μmの層厚を有するポリアクリレートおよび/または酢酸ビニル共重合体からなり、これは、キャリア材料から離れた方向に面する転写媒体3の表面を形成する。プライマ層の物理的および化学的特性は、使用される接着剤に対して最適化され、その結果、オブジェクト13と転写媒体3との間の最適な接着が、オブジェクト13にかかわらず可能な限り保証される。さらに、このように最適化されたプライマ層により、塗布された接着剤が流れたり、広がったり、圧搾されたりせずに、所望の状態で転写媒体3上に残存する。
【0240】
特に、プライマ層が微孔質であり、好ましくは100nm~180nm、さらに好ましくは120nm~160nmの表面粗さを有することが望ましい。接着剤は、そのような層に部分的に浸透することができ、これにより、高分解能で特に良好に固定される。
【0241】
1.5cm/g~120cm/gの顔料、好ましくは10cm/g~20cm/gの顔料を有するプライマ層を使用することが特に好ましいことが分かった。
【0242】
例えば、計算のため、プライマ層の組成を以下に示す(データの単位はgである)。
4900:有機溶媒エチルアルコール
150:有機溶媒トルエン
2400:有機溶媒アセトン
600:有機溶媒ベンジン80/110
150:水
120:バインダI、エチルメタクリレート重合体
250:バインダII、酢酸ビニルホモポリマー
500:バインダIII、酢酸ビニルラウレート共重合体、SC=50±1%
400:バインダIV、イソブチルメタクリレート
20:顔料多官能性酸化ケイ素、平均粒径3μm
5:充填剤微粉化アミドワックス、粒径3μm~8μm
【0243】
このプライマ層の顔料については次の通りである。
【数3】
式中、m=20gの多官能性ケイ素酸化物、
f=ON/d=300/0.4g/cm=750cm/gの多官能性ケイ素酸化物、
BM=120gのバインダI+250gのバインダII+(0.5×500g)のバインダIII+400gのバインダIV=1020g、
=0gである。
【0244】
このようにして、良好であることが見出されたプライマ層の組成から出発して、これから逸脱する可能性のあるさらなる色素沈着を複雑でない方法で迅速に計算することができる。
【0245】
さらに、プライマ層が38mN/m~46mN/m、好ましくは41mN/m~43mN/mの表面張力を有することが好ましい。そのような表面張力は、特に上記のような接着剤系の、規定された幾何学的形状を有する接着剤液滴が流れることなく表面に接着されることを可能にする。
【0246】
熱可塑性トナーを使用する場合、顔料が0.5cm/g~120cm/g、好ましくは顔料が1cm/g~10cm/gであるプライマ層を使用するのが特に好ましいことが分かった。
【0247】
例えば、計算のため、プライマ層の組成を以下に示す(データの単位はgである)。
340:有機溶媒エチルアルコール
3700:有機溶媒トルエン
1500:有機溶媒アセトン
225:バインダI、塩素化ポリプロピレン
125:バインダII、ポリ-n-ブチル-メチルメタクリレート
35:バインダIII、n-ブチル-メチル-メチル-メタクリレート共重合体
148:顔料多官能性酸化ケイ素、平均粒径12nm
【0248】
このプライマ層の顔料については次の通りである。
【数4】
式中、
=148gの多官能性ケイ素酸化物、
f=ON/d=220/50g/cm=4.4cm/gの多官能性ケイ素酸化物、
BM=225gのバインダI+125gのバインダII+35gのバインダIII=385g、
=0gである。
【0249】
装飾材料15は、好ましくは、転写媒体3に直接塗布される。しかし、装飾材料15を転写媒体3の既存のコーティングに塗布してもよい。同様に、表面の所定の領域のみにおいて転写媒体3に既存のコーティングを設けてもよく、既存のコーティングの間の自由領域かつ/または既存のコーティングに装飾材料15を塗布してもよい。既存のコーティングは、例えば、剥離層または別の機能層である。代替的にまたは追加的に、既存のコーティングは、例えば、印刷および/または蒸着されたインク層、金属層、反射層、保護層、機能層等で形成された既存の装飾コーティングであってもよい。
【0250】
剥離層は、好ましくは、アクリレート共重合体、特に水性ポリウレタン共重合体からなり、好ましくはワックスを含まずかつ/またはシリコーンを含まない。剥離層は、好ましくは、0.01μm~2μm、好ましくは0.1μm~0.5μmの層厚を有し、有利にはプラスチックキャリアフィルム16の表面に配置される。剥離層は、オブジェクト13への塗布後に、転写媒体3からのプラスチックキャリアフィルム16の単純かつ損傷のない剥離を可能にする。
【0251】
装飾材料15は、好ましくは、ニトロセルロース、ポリアクリレートおよびポリウレタン共重合体から一つまたは複数のワニス層を有し、その層厚は、それぞれ、0.1μm~5μm、好ましくは1μm~2μmであり、特に、プラスチックキャリアフィルム16から離れた方向に面する剥離層の表面に配置される。一つまたは複数のワニス層は、いずれの場合も、透明、半透明または不透明である。したがって、一つまたは複数のワニス層を透明、半透明または不透明に染色することができる。
【0252】
一つまたは複数のワニス層の染色は、プロセス色のシアン、イエロー、マゼンタおよび黒色に基づくことができるが、(例えば、RALまたはHKSまたはパントーン(登録商標)色系における)スポット色にも基づいていてもよい。代替的にまたは追加的に、一つまたは複数のワニス層は、金属顔料および/または特に光学的に可変の効果を有する顔料を含有していてもよい。
【0253】
一つまたは複数のワニス層は、例えば、いわゆるスポットワニスとして、表面全体に亘ってまたは部分的にのみ存在してもよい。表面領域における光学的効果は、スポットワニスにより実現する。ここで、各々の表面領域を光学的に変化させるため、特に強化のため、例えば、光沢ワニスおよび/または艶消しワニスを用いて、所望のように所定の領域にワニスを塗布する。これにより、光学的効果の代わりにまたはこれに加えて、触覚効果を実現することもできる。装飾材料1は、好ましくは、アルミニウムおよび/またはクロムおよび/または銀および/または金および/または銅からなる金属層を有し、特に10nm~200nm、好ましくは10nm~50nmの層厚を有する。
【0254】
金属層の代わりにまたは金属層に加えて、HRI材料(HRI=高屈折率)からなる層を設けてもよい。HRI材料は、例えば、ZnS、TiOなどの金属酸化物または対応するナノ粒子を有するワニスである。
【0255】
オブジェクト13の装飾のための装置100または方法において、転写媒体3は連続的またはパルス状に搬送される。装飾材料1を備えた転写媒体3のオブジェクト13への押圧、すなわち、特にオブジェクトの装飾および/またはオブジェクトの搬送は、パルス状に行われる。図6aおよび図6bは、転写媒体3の連続的またはパルス状の搬送による異なる効果を示している。
【0256】
図6aおよび図6bに示すように、装飾材料15は、領域17aではプラスチックキャリアフィルム16に塗布され、領域17bではキャリアフィルム16には塗布されていない。特に領域17bの位置は、転写媒体3の搬送形態に依存している。装飾材料15が塗布された領域17aの間に位置する、装飾材料15が転写媒体3に塗布されていない領域17bは、繰り返しパターン17bとも呼ばれる。繰り返しパターン17bは、例えば、転写材料の消費を削減するため可能な限り小さいことが有利である。
【0257】
図6aは、転写媒体3が連続的に搬送される可能性を示している。ここで、特に、転写媒体3の連続的なウェブ速度は、印刷装置7、例えば、高品質のデジタル印刷技術による転写媒体3への連続的な印刷のための最適な前提条件である。
【0258】
したがって、プレス装置において、装飾材料1を備えた転写媒体3をオブジェクト13に特にパルス状に押圧する間に、これと同時に、印刷装置7において装飾材料1を転写媒体3に特にパルス状に塗布することができる。
【0259】
好ましくは、個々の印刷領域17a間の繰り返しパターン17bは、パルスおよび/または印刷速度に応じて決定される。したがって、パルスおよび/または印刷速度に応じて、個々の印刷領域17a間の繰り返しパターン17bを大きくまたは小さくしてもよい。特に、繰り返しパターン17bは、公知のオブジェクトの搬送におけるパルス速度およびオブジェクト装飾から決定または計算される。好ましくは、特に、転写媒体3の連続的な搬送の場合、転写媒体3上のパルス状の印刷は、パルス状のオブジェクト装飾の間に同時に行われる。有利には、繰り返しパターン17bは、オブジェクトのパルス(オブジェクト装飾およびオブジェクト搬送)の「長さ」(転写媒体の搬送速度に対する長さ)の略半分である。好ましくは、繰り返しパターン17bは、通常、全経路に亘って一定に設定され、規制されない。
【0260】
そのような連続的なプロセスは、特に、転写媒体3の消費が非常に多く、コストが増加するという欠点を有する。
【0261】
図6bは、転写媒体3が、オブジェクト13の搬送装置における特に同じパルス状に駆動されるさらなる例を示している。この場合、転写媒体3は連続的に駆動されず、プロセスのステップに応じて転写媒体3が駆動または休止される。
【0262】
したがって、プレス装置2における、装飾材料15を備えた転写媒体3のオブジェクト13に対する(特にパルス状の)押圧に応じて転写媒体3を駆動することができる。ここで、転写媒体3の駆動は、オブジェクト13の搬送装置におけるパルス状に行われることが好ましい。したがって、装飾材料15の転写媒体3への塗布および装飾材料15を備えた転写媒体3のオブジェクト13への押圧をパルス状に行うことができる。転写媒体3は、転写媒体3のパルス状の押圧に応じて駆動または休止される。
【0263】
ここで、有利には、装飾材料15、特に印刷画像間の繰り返しパターン17bおよび転写媒体3の消費が減少する。印刷は、好ましくは、オブジェクト13のパルスと同じパルスで行われる。しかし、印刷処理の間、転写媒体3の加速および制動が行われ、その結果、印刷処理は、非常に頻繁に異なる速度で行われる。
【0264】
このようなパルス状のプロセスは、塗布される装飾材料15の品質、例えば、デジタル印刷の印刷品質が、特に、常に変化するウェブ速度によって悪影響を受けるという欠点を有する。
【0265】
さらに有利な例として、連続プロセスとパルス状のプロセスとを組み合わせてもよい。好ましくは、一方では、装飾材料15を転写媒体に塗布する間(例えば、デジタル印刷プロセス中)における転写媒体3の連続ウェブ速度、他方では、装飾材料15を備えた転写媒体3をオブジェクト13に押圧する間(すなわち、オブジェクト装飾中)におけるオブジェクト13のパルス状のウェブ速度が求められる。したがって、装飾材料15を備えた転写媒体3をオブジェクト13にパルス状に押圧することができる。装飾材料15の転写媒体3への塗布は連続的なウェブ速度で行われる。したがって、換言すると、プレス装置2において装飾材料15を備えた転写媒体のオブジェクト13への押圧がパルス方式で行われると同時に、転写媒体3が印刷装置7において連続的に搬送される。特に転写媒体3の連続的な搬送中に装飾材料が転写媒体に塗布される。
【0266】
2つの変形例を組み合わせることができるように、装置100は、好ましくは、補償モジュール18または「格納部」を備え、特に、オブジェクト13のためのパルス状のプロセスの休止段階中に格納部内に転写媒体3を「収集」または格納する。その結果、印刷の品質に有利な転写媒体3の連続ウェブ速度が損なわれなくなる。このような補償モジュール18を図7aおよび図7bに概略的に示す。例えば、図7aは、プロセスの開始時の補償モジュール18の状態を示し、図7bは、プロセスの終了時の補償モジュール18の状態を示している。
【0267】
補償モジュール18は、特に、機械的な格納部18aとして形成されており、この機械的な格納部18aは、プロセスのセクションに応じて、必要なプロセス速度で必要な転写媒体3を提供する。このような補償モジュール18は、例えば、特に、転写媒体3のウェブ張力を維持するための手段を有する、転写媒体3のループのための受容空間であってもよい。図7aおよび図7bに示すように、補償モジュール18によって転写媒体3のループが形成される。有利には、装飾材料を備えた転写媒体3をオブジェクト13に押圧するためのプレス装置2がループ内に配置される。プレス装置2およびオブジェクト13は破線で示されている。プレス装置2の設計に関しては、上記の説明を参照されたい。さらに、図7aおよび図7bに示す補償モジュール18は、偏向ローラまたはテンションローラ86の形態をなす転写媒体3のウェブ張力を維持する手段を備える。
【0268】
好ましくは、図7aおよび7bに示すように、補償モジュール18または補償モジュール18内の機械的な格納部18aは、横方向の移動によって転写媒体3を格納し、移動方向を変更することによって転写媒体3を再び解放することができる。したがって、補償モジュール18または補償モジュール18内の機械的な格納部18aが、第1の方向への横方向の移動によって転写媒体3を受けるかまたは格納し、横方向の移動を第2の方向に変更することによって転写媒体3を再び解放することができる。ここで、補償モジュールまたは補償モジュール18内の機械的な格納部18aの横方向移動の最大距離は、好ましくは、所定の時間において連続的なウェブ速度で転写媒体に覆われる距離よりも大きく、特に平均2倍大きい。ここで、所定の時間は、好ましくは、特に装飾材料の押圧によりオブジェクト13が装飾される休止段階に対応している。つまり、抽出中の転写媒体3のパルス状の抽出速度は、格納部18aがあふれないように、転写媒体3を充填する連続的な速度よりも、例えば、1.5倍速いことが好ましい。このような補償モジュール18を介して、特に印刷装置7の領域における連続ウェブ速度19aと、特にプレス装置2の領域におけるパルス状のウェブ速度19bとが、装置100内で実現することが好ましい。
【0269】
適用可能な場合には、本発明の範囲から逸脱することなく、実施例における全ての個々の特徴を互いに組み合わせ、かつ/または交換してもよい。
【符号の説明】
【0270】
100 装置
1 保持装置
2 プレス装置
20 シリンダ
22 プレス装置
3 転写媒体
4 接着剤塗布装置
40 接着剤プリントヘッド
5 硬化装置
6 乾燥ユニット
60 カバー
7 印刷装置
70 プリントヘッド
71 プリントヘッド移動方向
72 印刷ベースプレート
73 プレート移動方向
8 転写媒体ガイド
80 移動方向
81 ガイドベルト
82,86 偏向ローラ
83 真空ローラ
84,86 テンションローラ
85 駆動ローラ
9 前処理装置
10 洗浄装置
11 転写媒体展開装置
12 転写媒体巻取り装置
13 オブジェクト
14 接触領域
15 装飾材料
16 プラスチックキャリアフィルム
17a 領域
17b 繰り返しパターン
18 補償モジュール
18a 機械的格納部
18b 移動方向
19a 連続ウェブ速度
19b パルス状ウェブ速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b