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特許7113855カバーガラスまたは試料支持体の積層体の収容ホルダ
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  • 特許-カバーガラスまたは試料支持体の積層体の収容ホルダ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】カバーガラスまたは試料支持体の積層体の収容ホルダ
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
G01N1/28 U
G01N1/28 F
G01N1/28 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019570053
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019055218
(87)【国際公開番号】W WO2019174939
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】202018104076.6
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500113648
【氏名又は名称】ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】トゥルンプ、トビアス
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-512560(JP,A)
【文献】特開2009-222443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0080093(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0027333(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0165287(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0181875(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0199187(US,A1)
【文献】特開2013-109689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーガラス(11)または試料支持体(11)の積層体(10)を収容するためのホルダであって、
該ホルダ(40)は、少なくとも1つの側壁(21a、21b、22a、22b)が結合された底部(20)を有し、
前記底部(20)の内側は、前記カバーガラス(11)または前記試料支持体(11)の前記積層体(10)を載置し、この積層体(10)を支持するよう構成され、
前記底部(20)の外側及び/又は前記少なくとも1つの側壁の外側は、識別標識を受容するよう構成され、かつ、識別標識を有
前記底部(20)の前記外側は、該底部(20)に対し直角に延伸する少なくとも1つのスペーサ(23)を有し、
前記スペーサ(23)は、前記底部(20)に対し直角をなす方向において、識別標識を受容した前記底部(20)の前記外側上の受容部(2)のこの方向における伸びと少なくとも同じ程度で延伸している、
ホルダ。
【請求項2】
前記底部(20)は、前記カバーガラス(11)もしくは前記試料支持体(11)、または前記カバーガラス(11)もしくは前記試料支持体(11)の前記積層体(10)を取り出すための切欠部(8)を有し、前記少なくとも1つの側壁(21b)は、対応切欠部(24)を有する、
請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
前記底部(20)は、少なくとも1つの穴(25)を有する、
請求項1又は2に記載のホルダ。
【請求項4】
前記底部(20)から離隔する側における、前記少なくとも1つの側壁(21a)の少なくとも1つの端部に、少なくとも1つのとりわけ枢動可能なタブ(7)が形成されている、
請求項1~の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの側壁(21a、21b、22a、22b)の少なくとも1つに、案内溝(1)が形成されている、
請求項1~の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項6】
当該ホルダの角領域にないし側壁が互いに当接する領域に、陥凹部(3)が存在する、
請求項1~の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの側壁(22a)の少なくとも1つから出発しホルダ(40)の内部に延伸する少なくとも1つの制限要素(5)が設けられている、
請求項1~の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項8】
前記底部(20)から離隔する側における、前記少なくとも1つの側壁(21a、21b、22a、22b)の境界ライン(6)は、前記底部(20)の面に対し角度をなす面にある、
請求項1~の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項9】
前記底部(20)から離隔する側における、前記少なくとも1つの側壁(21a、21b、22a、22b)の境界ライン(6)は、フランジ状に構成されている、
請求項1~の何れか1項に記載のホルダ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの側壁(21a、21b、22a、22b)は、突出形成された少なくとも1つの補強リブ(4)を有する、
請求項1~の何れか1項に記載のホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカバーガラス(Deckglaeser)ないし複数の被覆ガラス(Eindeckglaeser)の積層体を備えるホルダないしカートリッジに関する。カバーガラスの代わりに試料支持体(スライド)を使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡検査方法では、試料支持体上に存在する試料をその後の検査のために顕微鏡に配置し保護するために、カバーガラスないし被覆ガラスが使用される。そのような試料は、例えば、その後に行われる(蛍光)顕微鏡検査のために薄切片の形でかつ染色されて試料支持体上に配される組織試料である。組織試料は通常、パラフィンワックスに包埋された後、切断されて薄切片(複数)にされる。包埋、切断、染色、及びその後のカバーガラスによる被覆のプロセスは相応の自動装置(複数)で自動的に実行される。この場合、個々の自動装置は互いに結合可能であり、試料または試料支持体の移送は、ロボットアームによって(半)自動的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US2017/343571A1
【文献】DE102008050530A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試料をカバーするために使用されるカバーガラスは極めて薄く、壊れやすい。通常は、1つのカバーガラスが、カバーガラスの積層体から吸引部(吸盤)を有するロボットアームによって取り出され、次いで、カバーされるべき試料の上に配される。このために、カバーガラスの積層体はホルダないしカートリッジ内に保管(収容ないし装填)されている必要があり、この場合、ホルダないしカートリッジは、個々のカバーガラスに対するロボットアームの簡単なアクセスを可能にするよう構成されていることが望ましい。更に、プロセス(処理)の自動化はますます進展しているため、カバーガラス及び/又はカートリッジ及び/又はカバープロセスに関する更なる情報を提供可能にすることが望まれる。試料が配置される試料支持体ないしスライドもホルダないしカートリッジに保管(収容ないし装填)可能である;その限りにおいて、同様の記述(説明)が試料支持体の取り扱い(処理)に適用される。
【0005】
従って、本発明の課題は、カバーガラスないし被覆ガラスまたは試料支持体ないしスライドの積層体を備えるホルダないしカートリッジに相応の特性(属性)を与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載のホルダないしカートリッジによって解決される。本発明の一視点により、カバーガラスまたは試料支持体の積層体を収容するためのホルダが提供される。
該ホルダは、少なくとも1つの側壁が結合された底部を有し、
前記底部の内側は、前記カバーガラスまたは前記試料支持体の前記積層体を載置し、この積層体を支持するよう構成され、
前記底部の外側及び/又は前記少なくとも1つの側壁の外側は、識別標識を受容するよう構成され、かつ、識別標識を有し、
前記底部の前記外側は、該底部に対し直角に延伸する少なくとも1つのスペーサを有し、
前記スペーサは、前記底部に対し直角をなす方向において、識別標識を受容した前記底部の前記外側上の受容部のこの方向における伸びと少なくとも同じ程度で延伸していることを特徴とする(形態1)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
有利な実施形態は従属請求項及び下記の説明から明らかとなる。
(形態1)上記本発明の一視点参照
形態)形態1のホルダにおいて、前記底部は、前記カバーガラスもしくは前記試料支持体、または前記カバーガラスもしくは前記試料支持体の前記積層体を取り出すための切欠部を有し、前記少なくとも1つの側壁は、対応切欠部を有することが好ましい。
(形態)形態1又は2のホルダにおいて、前記底部は、少なくとも1つの穴を有することが好ましい。
(形態)形態1~の何れかのホルダにおいて、前記底部から離隔する側における、前記少なくとも1つの側壁の少なくとも1つの端部に、少なくとも1つのとりわけ枢動可能なタブが形成されていることが好ましい。
(形態)形態1~の何れかのホルダにおいて、前記少なくとも1つの側壁の少なくとも1つに、案内溝が形成されていることが好ましい。
(形態)形態1~の何れかのホルダにおいて、当該ホルダの角領域にないし側壁が互いに当接する領域に、陥凹部が存在することが好ましい。
(形態)形態1~の何れかのホルダにおいて、前記少なくとも1つの側壁の少なくとも1つから出発しホルダの内部に延伸する少なくとも1つの制限要素が設けられていることが好ましい。
(形態)形態1~の何れかのホルダにおいて、前記底部から離隔する側における、前記少なくとも1つの側壁の境界ラインは、前記底部の面に対し角度をなす面にあることが好ましい。
(形態)形態1~の何れかのホルダにおいて、前記底部から離隔する側における、前記少なくとも1つの側壁の境界ラインは、フランジ状に構成されていることが好ましい。
(形態10)形態1~の何れかのホルダにおいて、前記少なくとも1つの側壁は、突出形成された少なくとも1つの補強リブを有することが好ましい。
【0008】
カバーガラスまたは試料支持体の積層体を備える(収容ないし装填する)本発明によるホルダ(カートリッジ)は少なくとも1つの側壁が結合された底部を有し、底部の内側(内側面)はカバーガラスまたは試料支持体の積層体を載置し、この積層体を支持するよう構成されており、該底部の外側(外側面)及び/又は少なくとも1つの側壁の外側(外側面)はRFIDなどの識別標識を受容するよう構成されておりかつRFIDなどのような識別標識を有する。少なくとも1つの側壁は、例えば、円形または楕円形の横断面を有するシリンダ状側壁であるか、または、とりわけ、夫々2つの側壁が互いに対向配置されている4つの側壁である。他のタイプの形状もあり得る。底部の内側は、カバーガラス積層体または試料支持体積層体を載置するよう構成されているが、有利な実施形態については更に以下において説明する。好ましくは底部の外側は識別標識を受容するよう構成されており、そのような識別標識はとりわけRFID(英語で“radio-frequency identification(無線自動識別)”)であり得る。そのようなRFIDないしRFIDタグは、リーダ(読取装置)によって読み取り可能な識別(特徴)コードを含むトランスポンダ(自動応答器)で実質的に構成されている。リーダとの接続は、リーダによって生成される近距離交番磁界によってまたは高周波数の電磁波によって実行される。これによって、データが伝送されるだけでなく、トランスポンダにエネルギも供給される。長距離を達成するためには、独自の電源を有するトランスポンダを使用する必要がある。例えばバーコードなどの他のタイプの識別標識も本発明に使用可能であるのは勿論である。RFIDタグないしRFIDチップの容量は、数ビットから数キロバイトに及ぶ。書き込み可能なRFIDタグも存在する。
【0009】
代替的にまたは付加的に、識別標識はホルダの少なくとも1つの側壁において受容されることもできる。真正性(Echtheit)を検査可能にするために、識別標識は、ホルダないしカートリッジ及び/又はホルダないしカートリッジの内容を一義的に識別する。更に、識別標識から読み取られたデータが予め設定されたデータに一致することに依存して、ホルダないしカートリッジを相応の自動装置に装填した後に、さらなる作業プロセスを行うことも可能である。使用されるカバーガラスまたは試料支持体のタイプ、サイズ及び個数、及び/又はそれらの使用態様・用途(Verwendungseinsatz)を記述ないしコード化するデータを読み取ることも可能である。このようにして、例えば、後に行われるカバープロセスに対して誤ったカバーガラス積層体を使用することを排除することができる。これにより、例えば、試料が短すぎるまたは長すぎるカバーガラスでカバーされることを回避することができる。一方、例えば、使用日、使用時間、使用場所、積層体のカバーガラスの個数、積層体に残存しているカバーガラスの個数などのようなデータを記憶するために、書き込み可能な識別標識を使用することも可能であると好都合である。カバーガラスの代わりに試料支持体を使用する場合も、同様の記述が妥当する。
【0010】
以下においては、簡潔さのために、但し一般化を制限することなく、特にカバーガラスに基づいて説明する。試料支持体についても、対応する記述が妥当する。試料支持体もカバーガラスもガラスまたはプラスチックで製造可能である。
【0011】
本発明によるホルダないし本発明によるカートリッジは、従って、前述のプロセスの自動化を容易化する。ホルダの内部に存在するカバーガラスの積層体を有する本発明によるそのようなホルダは、本出願では、代替的に「カバーガラス積層体収容(貯蔵)ホルダ」とも称される。同様のことが、試料支持体の積層体を備える本発明によるホルダを表す「試料支持体積層体収容(貯蔵)ホルダ」についても妥当する。
【0012】
有利な一実施形態では、ホルダの底部の外側は、底部に対して実質的に直角に延伸するスペーサ(間隔保持部材)を有する。底部は、ホルダの転倒又は傾きを回避するために、そのようなスペーサを少なくとも3つ、好ましくは4つ有することが望ましい。これらのスペーサは、従って、ホルダの「脚部」と同義である。別の一実施形態では、スペーサは、底部の縁の全周にわたってまたは底部の縁の少なくとも2つのとりわけ対向配置する側部に存在する。スペーサは、ホルダが立置きされる載置(支持)面から識別標識を引き離すのに役立つ。このため、スペーサは、底部に対し直角をなす方向において、識別標識を受容した底部の外側上の受容部のこの方向における伸びと少なくとも同じ程度に延伸していることが望ましい。このようにして、ホルダが載置(支持)面上に載置される際に、識別標識が損傷することを回避することができる。
【0013】
さらなる一実施形態では、本発明によるホルダの底部は、カバーガラスもしくはカバーガラス(または、前述のように、試料支持体)の積層体を特に手動で取り出すための切欠部を有する。少なくとも1つの側壁は対応切欠部を有する。このようにして、例えば、カバーガラス積層体は、ホルダの上面が開いている場合、切欠部の領域で上方及び下方から(手の指によってまたはロボットの掴持指によって)掴まれ、ホルダの上部開口部から上方に持ち上げられることができる。
【0014】
更に、本発明によるホルダは少なくとも1つの、好ましくは2つの穴を有する底部を備えると有利である。これらの穴は、カバーガラス掴持器の吸引部に対応して配されると好都合である。これらの穴は、カバーガラス(または、前述のように、試料支持体)の積層体が全て取り出されて空になった時、ホルダの底部自体が吸引され、上方へ引っ張られることを回避する。(両方の吸引部が同じ真空ラインに接続されている場合、ホルダの底部の穴は1つで十分である。)
【0015】
さらなる有利な一実施形態では、底部から離隔する側における、少なくとも1つの側壁の少なくとも1つの端部に、少なくとも1つのとりわけ枢動可能な(折り曲げ式の)タブ(Lasche)が形成されている。このタブは、特に、ホルダを確実に保持し、装置受容部に確実に位置付けることを可能にするために役立つ。タブが枢動可能である場合、このタブは、とりわけ、装置内への挿入のために上方に、装置内への挿入後は側方に、更に、タブがホルダの側壁と平行に延在するよう下方に、折り曲げられることができる。このため、ホルダを包装する場合、スペースを節約することができる。
【0016】
さらに有利な一実施形態では、ホルダの少なくとも1つの側壁の少なくとも1つに、案内溝が形成されている。案内溝は、側壁におけるスリットであることが可能であり、または原理的に、側壁における溝状の隆起部(nutenfoermige Woelbungen)であることが可能である。一方では、案内溝はホルダないしカートリッジの整列(位置合わせ)に役立つことができるが、他方では、実用上より重要であるのは、そのような案内溝によるカバーガラス積層体(または、前述のように、試料支持体積層体)の整列である。案内溝には、カバーされるべき試料支持体ないしスライドに対する関係でカバーガラス積層体を整列させる(位置合わせする)(例えば直角の)プロフィル(輪郭形状)が係合(嵌合)することができる。プロフィルは、組み立て中に較正ツールによって既に、試料支持体ないしスライドセンタリング装置に対しかつラック(Rack)に対し面一になるよう整列されている(位置合わせされている)と好都合である。カバーガラスをホルダから取り出すことができるためには、カバーガラスが整列状態においてある程度の遊びを有するよう、プロフィルに対し少しの間隔(距離)が必要である。前述のプロフィルによるカバーガラス積層体の整列のために、案内溝は関連する側壁のスリットとして構成されていると有利である。
【0017】
さらに有利な一実施形態では、ホルダの角領域(複数)にないし側壁が互いに当接する領域(複数)に陥凹部(複数)(Ausnehmungen)が存在し(形成されている)、これらの陥凹部はとりわけカバーガラス積層体(または、前述のように、試料支持体積層体)の方向に、すなわち底部に対し直角をなす方向に延伸する。陥凹部はホルダないしカートリッジの角(コーナー)に及び/又はカバーガラスの角が配置されている位置に存在し(形成されており)、カバーガラスの角の保護に役立つ。更に、陥凹部は、このようにしてより大きな遊びが形成されるため、カバーガラスのより容易な取り出しを可能にする。
【0018】
さらなる有利な一実施形態では、本発明によるホルダには、少なくとも1つの側壁からないし複数の側壁の少なくとも1つから出発しホルダの内部に延伸する少なくとも1つの制限要素(境界形成要素)が設けられている。更に、制限要素は、ホルダの底部に対して直角に延伸することができる。このようにして、制限要素は、関連するホルダ内には相応により小さい広がり(長さ)のカバーガラス(または、前述のように、試料支持体)のみが収容可能であることを可能にすることができる。制限要素がない場合、これに応じてより大きい寸法(長さ)のカバーガラスを収容することができる。これによって、デバイスないし自動装置を改造(Umbauten)することなく、様々なサイズのカバーガラスを本発明によるホルダと共に使用することが可能となり、この場合、ホルダは種々異なるサイズのカバーガラスに対しても同一の外部寸法を有する。
【0019】
さらなる有利な一実施形態では、底部から離隔する側における、少なくとも1つの側壁の境界ラインはホルダの底部の面に対し(或る)角度をなす面(内)にある。ホルダの上部開口のこの種の斜めの境界ラインは、相応の掴持アームが簡単な方法で湾曲した経路に沿ってホルダの内部に進入してカバーガラス(または、前述のように、試料支持体)の方に向かうことを可能にするために役立つ。
【0020】
代替的にまたは付加的に、ホルダないしカートリッジの上部開口の境界ラインは、全周に延在するフランジ状の縁部(Steg)として構成されている。これは、フランジ状縁部が対応する相手部材上に載置されることにより、ホルダないしカートリッジを装置内に挿入し、そこで整列(位置合わせ)することを可能にする。
【0021】
ホルダの少なくとも1つの側壁が機械的安定性の向上のための補強リブを有する場合、とりわけ上記の案内溝がスリットとして構成されている場合、好都合である。
【0022】
本発明によるホルダないし本発明によるカートリッジの上記の実施形態は、様々な態様で互いに組み合わせることができ、または単独で使用することもできることに留意されたい。特に、本発明は識別標識を使用しない組み合わせも対象とすることも意図されている。その限りにおいて、識別標識の存在は、別の実施形態において既に説明されているような本発明によるホルダないし本発明によるカートリッジの一実施形態であり得るに過ぎない。
【0023】
以下に、本発明及びその利点について一実施例に基づいて詳細に説明する。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態におけるカバーガラスの積層体のための本発明によるホルダの一例の上方から見た斜視図。
図2図1に示した本発明によるホルダの実施形態の側面から見た斜視図。
図3】本発明によるカバーガラス積層体収容(貯蔵)ホルダの一実施形態。
【実施例
【0025】
図1による一実施例は、カバーガラスないし被覆ガラス(または試料支持体)の積層体(ここでは図示せず)のためのホルダ40ないしカートリッジ40の一例を示す。ホルダ40は4つの側壁21a、21b及び22a、22bを備えた底部20を有し、これらの側壁のうち夫々2つは互いに対向して配置されている。底部20の内側(内側面)は、カバーガラスの積層体を載置するよう構成されている。底部20の外側(外側面)は、識別標識を、ここではRFIDを対応するRFID受容部2によって受容するよう構成されている。底部20における受容部2の位置は原理的に任意に選択することができる。その位置は、主として、読み取り装置(リーダ)の位置に依存する。原理的には、受容部2は複数の側壁の1つに配されることも可能である。
【0026】
側壁22a、22b及び21a、21bは、ホルダ40により大きな安定性を与えるために、補強リブ4を有する。更に、側壁には案内溝1が形成されており、この例では、底部20に対し直角に延伸しそこで終端する側壁のスリットとして構成されている。案内溝1は、まず第一に、ホルダ40の内部におけるカバーガラス積層体の整列に役立つ。案内溝1には、カバーガラス積層体をカバーされるべき試料支持体に対する関係で整列(位置合わせ)させる相応に形成された、例えば直角のプロフィル(Profile)が係合(嵌合)する。カバーガラスをホルダ40から取り出すことを可能にするために、カバーガラスが整列状態においてある程度の遊びを有するよう、案内溝1に係合するプロフィルに対して少しの間隔(距離)が必要である。さらに、ホルダ40の角領域には、そこでは側壁(複数)が互いに当接しているが、同様に底部20に対し直角の方向に延伸する陥凹部3が形成されている。陥凹部3は、カバーガラスの保管の際にもカバーガラスの取り出しの際にも、カバーガラスの角の保護に役立つ。
【0027】
図1に示されるホルダ40の実施形態において、側壁22aから出発しホルダ40の内部に延伸する制限要素5を見出すことができる。同時に、制限要素5は、ホルダ40の底部20に対し直角をなしている。制限要素(部分壁状部ないし区画部)5は、図示のホルダ40には相応の(より短い)長さのカバーガラスのみが収容可能であること、すなわちカバーガラスの長さがホルダ40の内部空間の長さないし底部20の長さよりも短いことを確保する。原理的には、ホルダ40の幅を適合化可能に制限する制限要素を設けることも可能である。そのような制限要素5の意義は、様々なサイズのカバーガラスが相応のホルダ40内に存在できることであるが、この場合、これらのホルダ40は全て同一の外寸を有する。従って、種々異なるサイズのカバーガラスを使用可能にするために、デバイスないし自動装置を改造(再構成)する必要はない。
【0028】
図1から明らかなように、ホルダ40の底部20は、ホルダ40からカバーガラスの積層体を手動で取り出すための切欠部8を有する。側壁21bは対応切欠部24を有する。これにより、カバーガラスの積層体は、ホルダ40の上側が開放されている場合、切欠部8の領域において上下から掴まれ、ホルダ40の上部開口を通して上方に持ち上げられるないしは滑り出されることができる。これにより、取り出し又は新たなカバーガラス積層体のホルダ40への挿入(装填)が容易になる。
【0029】
ホルダ40の底部20は、さらに、カバーガラス掴持器の吸引部に対応して配置された2つの穴25を有する。穴25は、カバーガラスの積層体が全て取り出されて空になったとき、ホルダ40の底部20自体がカバーガラス掴持器の吸引部によって吸引されて、上方へ引っ張られることを防ぐ。
【0030】
図示される実施形態では、ホルダ40は、側壁21aに形成された枢動可能(折り曲げ式)タブ7を有する。タブ7は、本来的なカバーガラス積層体領域に接触することなく、ホルダ40を安全に(確実に)取り扱う(操作する)ことを可能にするために役立つ。タブ7は枢動可能(折り曲げ可能)であるため、タブ7は側壁21aと平行に下向きに折り曲げられることができ、これにより、例えばホルダ40を包装する際にスペースを節約することができる。
【0031】
境界ライン6、すなわち底部20から離隔する側における、側壁21a、21b、22a、22bの上部境界ライン6は、底部20の面に対し(或る)角度(鋭角)をなす面にある。このようにして、とりわけ図2からも明らかであるように、側壁22aは側壁22bよりもより低い高さを有する。ホルダ40の上部開口のそのような斜めの境界ライン6は、相応の掴持アームが側壁22aの側方から簡単な方法で湾曲した経路に沿ってホルダ40の内部に進入してカバーガラスの方に向かうことを可能にするために役立つ。更に、境界ライン6は、デバイスまたは自動装置における対応する相手部材上におけるホルダ40の載置部として機能するリムフランジ(Randsteg)として構成されている。これにより、デバイスないし自動装置内でのホルダ40の容易な挿入(装填)及び整列(位置合わせ)が可能になる。
【0032】
図2には、図1のホルダ40が斜視側面図で模式的に示されている。ここでは、ホルダ40の同じ要素には同じ図面参照符号が付されている。これらの要素についてはここではさらに説明しないが、代わりに図1に関連する記述を参照する。ホルダ40の底部20は、相応の受容部2に設置されたRFID30を有する。更に、ホルダ40の底部20の外側には、底部20に対し直角に延伸するスペーサ23が設けられている。これらのスペーサ23は、足部または側壁21a及び21bに沿って延在するフランジを構成することができる。スペーサ23は、一方では、ホルダ40の傾きまたは転倒を防ぎ、従ってカバーガラスへの起こり得る損傷を防ぐために、載置(支持)面上にホルダ40を確実に(安全に)立置きするために役立つ。同時に、スペーサ23は、RFID30を載置(支持)面から引き離すために、従って載置(支持)面との接触からRFID30を保護するために役立つ。ホルダ40を安定的な立置きのために、スペーサ23は、底部20に対し直角をなす方向において、RFID30が挿入されたRFID受容部2と少なくとも同じ長さを有する必要がある。
【0033】
図3は、一実施形態におけるカバーガラス積層体収容(貯蔵)ホルダまたは試料支持体積層体収容(貯蔵)ホルダ50を示す。但し、ホルダ40は図1のホルダ40に対応する。従って、ホルダ40ないしカートリッジ40に関しては、図1に関連する記述を参照されたい。同一の図面参照符号は同一の要素を指す。ホルダ40の側壁は、図3では特に符号は付記されていない。補強リブ4及び枢動可能タブ7はここでは破線で描かれているが、このことは特に意味はない。
【0034】
ホルダ40の内部にはカバーガラス11の積層体10が存在し、カバーガラス11は、通常は2つの吸引部を備える掴持アームによって、個別にかつ自動的に取り出されることができる。さらなる実施形態に関しては、図1及び図2による実施例を参照されたい。
ここに、本発明の可能な態様を付記する。
[付記1]カバーガラスまたは試料支持体の積層体を備えるホルダ。
該ホルダは、少なくとも1つの側壁が結合された底部を有する。
前記底部の内側は、前記カバーガラスまたは前記試料支持体の前記積層体を載置し、この積層体を支持するよう構成されている。
前記底部の外側及び/又は前記少なくとも1つの側壁の外側は、RFIDなどの識別標識を受容するよう構成され、かつ、RFIDなどのような識別標識を有する。
[付記2]上記のホルダにおいて、前記底部の前記外側は、該底部に対し直角に延伸する少なくとも1つのスペーサを有する。
前記スペーサは、特に前記底部に対し直角をなす方向において、識別標識、特にRFIDを受容した前記底部の前記外側上の受容部のこの方向における伸びと少なくとも同じ程度で延伸している。
[付記3]上記のホルダにおいて、前記底部は、前記カバーガラスもしくは前記試料支持体、または前記カバーガラスもしくは前記試料支持体の前記積層体を取り出すための切欠部を有する。前記少なくとも1つの側壁は、対応切欠部を有する。
[付記4]上記のホルダにおいて、前記底部は、少なくとも1つの穴を有する。
[付記5]上記のホルダにおいて、前記底部から離隔する側における、前記少なくとも1つの側壁の少なくとも1つの端部に、少なくとも1つのとりわけ枢動可能なタブが形成されている。
[付記6]上記のホルダにおいて、前記少なくとも1つの側壁の少なくとも1つに、案内溝が形成されている。
[付記7]上記のホルダにおいて、当該ホルダの角領域にないし側壁が互いに当接する領域に、陥凹部が存在する。
[付記8]上記のホルダにおいて、前記少なくとも1つの側壁の少なくとも1つから出発しホルダの内部に延伸する少なくとも1つの制限要素が設けられている。
[付記9]上記のホルダにおいて、前記底部から離隔する側における、前記少なくとも1つの側壁の境界ラインは、前記底部の面に対し角度をなす面にある。
[付記10]上記のホルダにおいて、前記底部から離隔する側における、前記少なくとも1つの側壁の境界ライン、フランジ状に構成されている。
[付記11]上記のホルダにおいて、前記少なくとも1つの側壁は、突出形成された少なくとも1つの補強リブを有する。
【符号の説明】
【0035】
1 案内溝
2 RFID受容部
3 陥凹部
4 補強リブ
5 制限要素
6 境界ライン、リムフランジ
7 タブ
8 底部の切欠部
10 積層体
11 カバーガラス
20 底部
21a、b 側壁
22a、b 側壁
23 スペーサ
24 側壁の切欠部
25 穴(貫通孔)
30 RFID
40 ホルダ、カートリッジ
50 カバーガラス積層体収容(貯蔵)ホルダ
図1
図2
図3