(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】医療容器を真空閉栓するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
A61J 1/00 20060101AFI20220729BHJP
B65B 31/06 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A61J1/00 C
B65B31/06
(21)【出願番号】P 2020501292
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2018068738
(87)【国際公開番号】W WO2019011961
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-03-17
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グウェン ル ディメ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ガリアーノ
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-204678(JP,A)
【文献】特開2008-212213(JP,A)
【文献】特開平07-227416(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02322851(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/00
B65B 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療容器(28)を真空閉栓するためのデバイス(1)であって、
- 真空ポンプ(30)に接続されるように構成された可変圧力室(5)を含む内部容積を画定する本体(2)と、
- 前記可変圧力室(5)と連通するように配置され、および前記本体(2)に関して定位置にストッパ(6)を受け入れおよび保持するように構成され、およびピストンロッド(7)の移動方向と整列させられた、ストッパホルダシステム(12)と、
- 前記本体(2)の前記内部容積の内側を、長手方向軸(A)に沿って、前記ピストンロッド(7)が前記ストッパ(6)から遠く離れている近位休止位置と前記ピストンロッド(7)が前記ストッパ(6)と接触しおよび前記医療容器(28)内に押す遠位操作位置との間で移動可能である、ピストンロッド(7)と、
- 前記本体(2)内に設けられ、前記ストッパホルダシステム(12)に関して遠位に配置され、および前記可変圧力室(5)と連通する、容器ホルダシステム(18)であって、前記容器ホルダシステム(18)は、移動するときに前記ピストンロッド(7)が前記ストッパ(6)を前記ストッパホルダシステム(12)から前記医療容器(28)内に押して前記医療容器(28)を閉栓するように、閉栓されるべき
前記医療容器(28)の
近位端を受け入れるようにおよび前記ピストンロッド(7)の前記移動方向と整列させられた前記医療容器(28)を保持するように構成された、容器ホルダシステムと、
を含
み、
前記本体(2)は、前記ピストンロッド(7)を長手方向軸(A)に沿って移動させるように構成されたスペーサー(8)を含む第1の部分(3)と、第1の部分(3)の遠位に隣接し、前記可変圧力室(5)、前記ストッパホルダシステム(12)、および前記容器ホルダシステム(18)を含む、第2の部分(4)と、を含み、
前記第1の部分(3)および前記第2の部分(4)は、選択的に互いに接続されまたは互いから分離されるように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記第1の部分(3)および前記第2の部分(4)は、ねじ接続またはスナップフィット接続によって接続されることを特徴とする請求項
1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記本体(2)は、各々異なるサイズの医療容器(28)の端部を受け入れるように構成された容器ホルダシステム(18)を含む、少なくとも2つの第2の部分(4)を含むことを特徴とする請求項
1または
2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記容器ホルダシステム(18)は、
- 前記可変圧力室(5)と連通する開口(11)を備える近位壁(19)であって、前記開口(11)は、前記ピストンロッド(7)の前記長手方向軸(A)と整列させられ、および前記ピストンロッドを押すとき、前記ピストンロッドが前記開口(11)を通過するように構成される、近位壁と、
- 前記近位壁(19)と対向し、およびスロット(25)を備える側壁(23)によって前記近位壁に結合される遠位壁(22)であって、前記遠位壁(22)は、前記スロット(25)に続きおよび前記スロット(25)から前記遠位壁(22)内において延びる通り抜け溝(26)を備える、遠位壁と、
を含み、
前記近位壁(19)、前記遠位壁(22)、および前記側壁(23)は、前記ピストンロッド(7)の前記移動方向と整列させられるように、前記スロット(25)を通して挿入されおよび前記溝(26)に沿って移動させられる前記医療容器(28)の端部を受け入れることができるハウジング(24)を間に画定することを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
医療容器(28)を真空閉栓するためのデバイス(1)であって、
- 真空ポンプ(30)に接続されるように構成された可変圧力室(5)を含む内部容積を画定する本体(2)と、
- 前記可変圧力室(5)と連通するように配置され、および前記本体(2)に関して定位置にストッパ(6)を受け入れおよび保持するように構成され、およびピストンロッド(7)の移動方向と整列させられた、ストッパホルダシステム(12)と、
- 前記本体(2)の前記内部容積の内側を、長手方向軸(A)に沿って、前記ピストンロッド(7)が前記ストッパ(6)から遠く離れている近位休止位置と前記ピストンロッド(7)が前記ストッパ(6)と接触しおよび前記医療容器(28)内に押す遠位操作位置との間で移動可能である、ピストンロッド(7)と、
- 前記本体(2)内に設けられ、前記ストッパホルダシステム(12)に関して遠位に配置され、および前記可変圧力室(5)と連通する、容器ホルダシステム(18)であって、前記容器ホルダシステム(18)は、移動するときに前記ピストンロッド(7)が前記ストッパ(6)を前記ストッパホルダシステム(12)から前記医療容器(28)内に押して前記医療容器(28)を閉栓するように、閉栓されるべき前記医療容器(28)の近位端を受け入れるようにおよび前記ピストンロッド(7)の前記移動方向と整列させられた前記医療容器(28)を保持するように構成された、容器ホルダシステムと、
を含み、
前記容器ホルダシステム(18)は、
- 前記可変圧力室(5)と連通する開口(11)を備える近位壁(19)であって、前記開口(11)は、前記ピストンロッド(7)の前記長手方向軸(A)と整列させられ、および前記ピストンロッドを押すとき、前記ピストンロッドが前記開口(11)を通過するように構成される、近位壁と、
- 前記近位壁(19)と対向し、およびスロット(25)を備える側壁(23)によって前記近位壁に結合される遠位壁(22)であって、前記遠位壁(22)は、前記スロット(25)に続きおよび前記スロット(25)から前記遠位壁(22)内において延びる通り抜け溝(26)を備える、遠位壁と、
を含み、
前記近位壁(19)、前記遠位壁(22)、および前記側壁(23)は、前記ピストンロッド(7)の前記移動方向と整列させられるように、前記スロット(25)を通して挿入されおよび前記溝(26)に沿って移動させられる前記医療容器(28)の端部を受け入れることができるハウジング(24)を間に画定することを特徴とするデバイス。
【請求項6】
前記容器ホルダシステム(18)の前記近位壁(19)は、前記開口(11)を備える凹部(21)を含み、前記凹部(21)は、前記医療容器が前記ハウジング(24)内に位置付けられたときおよび前記可変圧力室(5)が真空下にあるときに、前記医療容器(28)の前記端部と接触し、および前記医療容器(28)を半径方向にブロックするように構成されることを特徴とする請求項
5に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記ストッパホルダシステム(12)は、クラウン内に配置される複数のブロッキング要素(13)を含み、前記ストッパホルダシステム(12)は、移動するときに前記ピストンロッド(7)が前記ブロッキング要素(13)から離れて前記ストッパ(6)を押すように前記クラウンの中心を通過するように配置されることを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
各ブロッキング要素(13)は、拡大されたヘッド(15)
が上に乗ったステム(14)を含み、および各ブロッキング要素(13)は、
前記ストッパホルダシステム(12)内の適所にあるときに、前記ストッパ(6)は、前記ブロッキング要素(13)の前記ステム(14)と接続し、および前記ブロッキング要素(13)の前記ヘッド(15)によって、前記休止位置から前記操作位置への前記ピストンロッド(7)の前記移動方向に関して近位方向にブロックされ、および前記ストッパ(6)は、
前記クラウンの壁を形成する円形壁(16)によって、前記ブロッキング要素(13)および前記クラウンの前記壁(16)と共
に複数の空気循環通路(17)を画定するように
、隣接物に接続されることを特徴とする請求項
7に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記ストッパホルダシステム(12)は、2組のブロッキング要素(13)を含み、前記2組のブロッキング要素の各々は、2つの同心性のクラウンとして配置され、各ブロッキング要素は、
各前記クラウンの壁を形成する円形壁(39、40)によって隣接物に接続され、および
-
第1の組の前記ブロッキング要素(13)は、
第1のクラウンの前記壁(39)から半径方向に延びる角部(37)を形成し、
-
第2の組の前記ブロッキング要素(13)は、
第2のクラウンの前記壁(40)から半径方向に延びるベアリング部(38)を形成し、各ベアリング部(38)は、少なくとも1つの穿孔(41)を含み
、
前記2つの組の前記ブロッキング要素は、前記ストッパホルダシステム(12)内の適所にあるときに前記ストッパ(6)は前記角部(37)の頂部と接触し、および前記ベアリング部(38)によって前記休止位置から操作位置への前記ピストンロッド(7)の前記移動方向に関し
て近位方向にブロックされ、および前記ベアリング部(38)の前記穿孔(41)は、前記室(5)と前記容器(28)との間の空気循環のために形成されているように構成され
ることを特徴とする請求項
7に記載のデバイス。
【請求項10】
医療容器(28)を真空閉栓するためのデバイス(1)であって、
- 真空ポンプ(30)に接続されるように構成された可変圧力室(5)を含む内部容積を画定する本体(2)と、
- 前記可変圧力室(5)と連通するように配置され、および前記本体(2)に関して定位置にストッパ(6)を受け入れおよび保持するように構成され、およびピストンロッド(7)の移動方向と整列させられた、ストッパホルダシステム(12)と、
- 前記本体(2)の前記内部容積の内側を、長手方向軸(A)に沿って、前記ピストンロッド(7)が前記ストッパ(6)から遠く離れている近位休止位置と前記ピストンロッド(7)が前記ストッパ(6)と接触しおよび前記医療容器(28)内に押す遠位操作位置との間で移動可能である、ピストンロッド(7)と、
- 前記本体(2)内に設けられ、前記ストッパホルダシステム(12)に関して遠位に配置され、および前記可変圧力室(5)と連通する、容器ホルダシステム(18)であって、前記容器ホルダシステム(18)は、移動するときに前記ピストンロッド(7)が前記ストッパ(6)を前記ストッパホルダシステム(12)から前記医療容器(28)内に押して前記医療容器(28)を閉栓するように、閉栓されるべき医療容器(28)の前記近位端を受け入れるようにおよび前記ピストンロッド(7)の前記移動方向と整列させられた前記医療容器(28)を保持するように構成された、容器ホルダシステムと、
を含み、
前記ストッパホルダシステム(12)は、クラウン内に配置される複数のブロッキング要素(13)を含み、前記ストッパホルダシステム(12)は、移動するときに前記ピストンロッド(7)が前記ブロッキング要素(13)から離れて前記ストッパ(6)を押すように前記クラウンの中心を通過するように配置され、
前記複数のブロッキング要素は、2組のブロッキング要素(13)を含み、前記2組のブロッキング要素の各々は、2つの同心性のクラウンとして配置され、各ブロッキング要素は、各前記クラウンの壁を形成する円形壁(39、40)によって隣接物に接続され、および
- 第1の組の前記ブロッキング要素(13)は、第1のクラウンの前記壁(39)から半径方向に延びる角部(37)を形成し、
- 第2の組の前記ブロッキング要素(13)は、第2のクラウンの前記壁(40)から半径方向に延びるベアリング部(38)を形成し、各ベアリング部(38)は、少なくとも1つの穿孔(41)を含み、
前記2つの組の前記ブロッキング要素は、前記ストッパホルダシステム(12)内の適所にあるときに前記ストッパ(6)は前記角部(37)の頂部と接触し、および前記ベアリング部(38)によって前記休止位置から操作位置への前記ピストンロッド(7)の前記移動方向に関して近位方向にブロックされ、および前記ベアリング部(38)の前記穿孔(41)は、前記室(5)と前記容器(28)との間の空気循環のために形成されているように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
前記ピストンロッド(7)は、使用者によって手動で移動させられるようにハンドル(9)を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
前記デバイス(1)はハンドヘルドであることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項13】
医療容器(28)を真空閉栓するためのシステム(29)であって、
請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス(1)と、真空を引きおよび前記デバイス(1)の前記可変圧力室(5)内の圧力を、大気圧(P
0)よりも低い圧力(P
1)まで調節するための真空ポンプ(30)および真空弁(31)と、前記可変圧力室(5)内の圧力
を大気圧(P
0)に調節し戻すように真空を破るためのバックバルブ(33)と、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記可変圧力室(5)内の前記圧力を測定しおよび使用者に表示するように、前記可変圧力室(5)の内部に位置付けられるプローブと関連付けられるデジタル表示(32)をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のシステム(29)。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス(1)または請求項13もしくは14に記載のシステムを用いて医療容器(28)を真空閉栓するための方法であって、
a)ストッパ(6)を前記ストッパホルダシステム(12)内に位置付ける工程と、
b)組成物で事前充填された医療容器(28)を前記容器ホルダシステム(
18)内に位置付ける工程と、
c)前記可変圧力室(5)の内側の圧力を低減させるように前記可変圧力室(5)内の真空を引く工程と、
d)前記圧力が所望のレベルまで下がったときに、前記ストッパ(6)を前記医療容器(28)の内側に位置付けるように、前記ピストンロッド(7)を前記操作位置に移動させる工程と、
e)前記可変圧力室(5)の内側の圧力を増大させるように真空を破り、前記ストッパ(6)が、前記組成物の表面まで、前記医療容器(28)をさらに下に移動するようにさせる工程と、
を含む方法。
【請求項16】
前記デバイス(1)の前記本体は、使用者の片手に保持され、ならびに少なくとも工程a)、b)、およびd)は、前記使用者によって手動で実施されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空(vacuum)を用いるシリンジまたは同様のものとしての医療容器を閉栓(stoppering)するためのデバイス、そのようなデバイスを含む医療容器を閉栓するためのシステム、およびそのようなデバイスまたはシステムにより、真空を用いる医療容器を閉栓するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事前充填式注入デバイスは、薬物またはワクチンを患者に送達するための一般的な容器であり、ならびにシリンジ、カートリッジおよび自動注入装置または同様のものを含む。それらは、大抵、容器内に滑らかに係合する(in gliding engagement)密封ストッパ(sealing stopper)を含み、容器は、患者に対してすぐに使える(ready-to-use)注入デバイスを施術者(practitioners)に提供するために、医薬組成物で充填されている。
【0003】
容器は、実質的に円筒形状を有し、ならびに密封ストッパによって閉栓され得る近位端、医薬組成物がそこで容器から放出される遠位端、および容器の近位端と遠位端との間に延びる側壁、を含む。実際には、密封ストッパは、プランジャロッドによって圧力が及ぼされると、容器本体の近位端から容器本体の遠位端に向かって移動し、それによって容器本体内に含まれた薬物を放出することが目的とされる。
【0004】
バイアルに収容された医薬組成物で患者の体への注入の直前に充填される空の注入デバイスと比較したときに、事前充填式注入デバイスの使用は、いくつかの利点をもたらす。特に、注入前の準備(preparation)を限定することによって、事前充填式注入デバイスは、医療投薬過誤の低減、微生物汚染の最小化されたリスク、および施術者に対する使用の向上された便利さを提供する。なおさらに、そのような事前充填式容器は、治療の費用を低減しおよび患者アドヒアランスを向上させることが可能である患者による自己投与を助長および単純化し得る。最後に、事前充填式注入デバイスは、医薬組成物がバイアルから非事前充填式注入デバイスに移されるときに大抵生じる高価な医薬組成物の損失を低減する。これは、医薬品の所与の製造バッチに関する可能な注入の数の増大につながり、このようにして購買およびサプライチェーン費用を低減させる。
【0005】
事前充填式注入デバイスは、大抵、空の医療容器を所望の医薬組成物で充填し、次いで、充填された容器を真空下または通気管もしくは両方の組み合わせによって閉栓することによって、得られる。
【0006】
本明細書において使用される用語「真空(vacuum)」は、1013.25ヘクトパスカル(hPa)(1.013バールに等しい)の、および好ましくは0hPaに近い、大気圧にはるかに及ばない低圧を意味する。
【0007】
充填された容器は、概して、容器本体内への薬物の充填の直後に、以下の方法により閉栓機(stoppering machines)を用いて閉栓される。閉栓されるべき医療容器は、その近位端が上の状態で、すなわちその遠位端が下の状態で、適合される支持体上に(例えば、入れ子に(in a nest)または閉栓機上に直接的に留められて)位置付けられ、およびその位置に維持される。
【0008】
通気管閉栓(vent tube stoppering)の場合において、ストッパは、ストッパが容器内へ位置付けられる前の通気管と容器との間の空気循環を可能にするように、その外径が容器の内径よりも小さい大抵「通気管」と呼ばれる管内で圧縮される。
【0009】
真空閉栓(vacuum stoppering)の場合において、可変圧力室と連通する吸引カップ(suction cup)は、次いで、容器の遠位端上にそれを漏らない(tight)方法で閉鎖するように位置付けられる。この時点において、可変圧力室の内側の圧力および組成物より上方の医療容器の部分内の圧力は、両方とも、大気圧P0に実質的に等しい。可変圧力室は、真空ポンプまたは同様のものに接続され、および真空下に置かれる。結果として、可変圧力室および組成物より上方の医療容器の部分内の圧力は、両方とも、初期圧力P0よりも下の圧力P1で真空下にある。室の内側に前もって位置付けられた密封ストッパは、次いで、ピストンロッドによって、組成物より上方の容器の近位端に移動させられる。可変圧力室の内側の真空の破壊は、次いで、ストッパに、圧力の平衡まで医療容器をさらに下に移動させる。医療容器は次いで閉栓される。
【0010】
医療容器を真空下で閉栓するこの方法の主な利点は、ストッパと組成物の表面との間に残存する小容量の空気に由来する閉栓された容器内側の残存する泡が、したがって、可能な限り小さくされることである。加えて、ストッパの小さな圧縮に起因して、ストッパにほとんど制約が加えられず、これは、特に、コーティングされたストッパ上で、より少ない欠陥につながる。
【0011】
この方法は、大きくおよび重い機械を用いて実施され、このようにして、以下の欠点を含む。
【0012】
この分野において一般的に使用される実験室規模の機械は、滅菌され得ない。実際に、これらの機械は、操作者によって容易に動かすことができず、およびそれらの寸法、重さおよび設計に起因してオートクレーブ内に配置され得ない。それらは、また、オートクレーブ処理できない電気および電子部品を含む。
【0013】
さらに、医療容器の滅菌性(sterility)を保証するために、医療容器を真空閉栓するプロセスは、概して、クリーンルーム内で実施されるので、対応する機器もまた、クリーンルーム内に配置されなければならない。
【0014】
滅菌状態で実施されることを必ずしも必要としない医療容器の真空閉栓の迅速かつ簡単な実施の履行は、このようにして、機械がクリーンルームから移動させられ得ないので、なんにせよ、クリーンルーム内で実施されなければならない。例えば、小規模の無菌充填(aseptic filling)は、ラミナーフローフード(laminar flow hood)下のような軽減された滅菌環境において実施され得る。そのような小さな環境は、それらの寸法、重さ、およびそれらが滅菌され得ないという事実に起因して、重い閉栓機器の配置を可能にしない。
【0015】
その上、適宜身支度をしおよび厳密なかつ特定の作業手順を観察しなければならない操作者にとって、クリーンルーム内での操作は、非常に制約があり、このようにして、真空閉栓の実施をはるかに長くおよび実施するのに過酷にする。
【0016】
結果として、同時に、滅菌可能でありおよび場所の制限なしに使用されるように1つの場所から別の場所に容易にかつ急速に移動可能である、ならびにクリーンルームの外で使用され得る、医療容器を真空閉栓するためのデバイスの強い必要性がある。
【0017】
加えて、また、使いやすい、特にそのような医療容器を含む注入デバイスの使用を含む臨床治験の前に医療容器の真空閉栓の迅速かつ簡単な実施の履行を可能にする、デバイスの必要性がある。
【発明の概要】
【0018】
本発明の簡単な説明
本発明の目的は、このようにして、知られているデバイスの欠点を克服する、医療容器を真空閉栓するためのデバイスを提供することである。
【0019】
そのような改善されたデバイスは、滅菌可能でありおよび容易にかつ急速に移動可能であり、ならびに場所(area)の制約なしに使用され得る。
【0020】
デバイスは、特に、そのような医療容器を含む注入デバイスの使用を含む臨床治験の前に、医療容器の真空閉栓の迅速かつ簡単な実施の履行を可能にする。
【0021】
本発明の1つの目的は、医療容器を真空閉栓するためのデバイスであって、
- 真空ポンプに接続されるように構成された可変圧力室を含む内部容積を画定する本体と、
- 可変圧力室と連通して配置され、および本体に対して定位置(fixed position)にストッパを受け入れおよび保持するように構成され、およびピストンロッドの移動方向(direction of travel)と整列させられた、ストッパホルダシステムと、
- 本体の内部容積の内側を、長手方向軸に沿って、ピストンロッドがストッパから遠く離れている近位休止位置(rest position)と、ピストンロッドがストッパと接触しおよび医療容器内に押す遠位操作位置(operative position)と、の間で移動可能である、ピストンロッドと、
- 本体内に設けられ、ストッパホルダシステムに対して遠位に配置され、および可変圧力室と連通する、容器ホルダシステムであって、当該容器ホルダシステムは、移動するときにピストンロッドがストッパをストッパホルダシステムから医療容器内へ押して医療容器を閉栓するように、閉栓されるべき医療容器の近位端を受け入れるようにおよびピストンロッドの移動方向と整列させられた医療容器を保持するように構成された、容器ホルダシステムと、
を含む。
【0022】
本出願において、「遠位方向(distal direction)」は、医療容器内へのストッパの導入の方向を意味するものとして理解されるべきであり、および「近位方向(近位方向)」は、当該医療容器内へのストッパの導入の方向とは逆の方向を意味するものとして理解されるべきである。
【0023】
本発明のデバイスの他の任意選択的な特徴によると、
- 本体は、長手方向軸に沿ってピストンロッドを案内するように構成されたスペーサーを含む第1の部分と、第1の部分の遠位に隣接し、可変圧力室、ストッパホルダシステム、および容器ホルダシステムを含む、第2の部分と、を含む。
- 第1の部分および第2の部分は、選択的に、互いに接続されまたは互いから分離されるように構成される。
- 第1の部分および第2の部分は、優先的に、ねじ接続(threaded connection)またはスナップフィット接続(snap-fit connection)によって接続される。第1の部分および第2の部分は、あるいはまた、例えば接続上に密封(seal)をさらに位置付けることによって、十分な気密性(tightness)が達成され得る限り、他の適当な接続によって接続され得る。
- 本体は、各々異なるサイズの医療容器の端部を受け入れるように構成された容器ホルダシステムを含む、少なくとも2つの第2の部分を含む。
- 容器ホルダシステムは、
・ 可変圧力室と連通する開口を備える近位壁であって、開口は、ピストンロッドの長手方向軸と整列させられ、およびピストンロッドを押すとき、当該ピストンロッドが開口を通過するように構成される、近位壁と、
・ 近位壁と対向し、およびスロットを備える側壁によって近位壁に結合される遠位壁であって、遠位壁は、スロットに続きおよびスロットから遠位壁内に延びる通り抜け溝(through groove)を備える、遠位壁と、
を含み、
近位壁、遠位壁、および側壁は、ピストンロッドの移動方向と整列させられるように、スロットを通して挿入されおよび溝に沿って移動させられる医療容器の端部を受け入れることができるハウジングを間(in- between)に画定する、
を含む。
- 容器ホルダシステムの近位壁は、開口を備える凹部を含み、凹部は、医療容器の端部と接触しおよび医療容器がハウジング内に位置付けられたときおよび可変圧力室が真空下にあるときに医療容器を半径方向にブロックするように構成される。
- 容器ホルダシステムは、容器が容器ホルダシステム内に受け入れられたときに、容器の近位端が容器ホルダシステムの表面と対向しおよび軸方向に接触するように構成される。そのような方法で、容器ホルダシステムの表面は、容器の近位端を閉鎖し、それにより、デバイスと環境との間の何らかの空気漏れを回避することによって、デバイスの効果的な密封を提供する。
- ストッパホルダシステムは、ストッパを軸方向および半径方向の両方において維持するように構成される。
- ストッパホルダは、ストッパを半径方向に圧縮するように構成される。
- ストッパホルダは、空気がストッパホルダを通って循環するのを可能にしつつ、ストッパを半径方向に圧縮するように構成される。
- ストッパホルダシステムは、曲面を有する複数のブロッキング要素を含み、曲面は、ストッパを半径方向に圧縮するように構成される。
- ストッパホルダシステムは、クラウンとして配置される複数のブロッキング要素を含み、ストッパホルダシステムは、移動するときに、ピストンロッドがクラウンの中心を通過してストッパをブロッキング要素から離れて押すように配置される。
- ブロッキング要素は、有利には、マッシュルーム形状であり、各ブロッキング要素は、拡大されたヘッドによって覆われたステムを含み、および各ブロッキング要素は、ストッパホルダシステム内の適所にあるときにストッパがブロッキング要素のステムと接触しおよびブロッキング要素のヘッドによって休止位置から操作位置までのピストンロッドの移動方向に関して近位方向にブロックされるように、クラウンの壁を形成する円形壁によって隣接物(adjacent one)に接続され、およびストッパは、ブロッキング要素およびクラウンの壁と共に、複数の空気循環通路を画定する。
- ストッパホルダシステムは、有利には、2組のブロッキング要素を含み、2組のブロッキング要素の各々は、2つの同心性のクラウンとして配置され、各ブロッキング要素は、各クラウンの壁を形成する円形壁によって隣接物に接続される。
・ 第1の組のブロッキング要素は、第1のクラウンの壁から半径方向に延びる角部(angular parts)を形成する。
・ 第2の組のブロッキング要素は、第2のクラウンの壁から半径方向に延びるベアリング部を形成し、各ベアリング部は、少なくとも1つの穿孔(perforation)を含む。
- 2組のブロッキング要素は、ストッパホルダシステム内の適所にあるとき、ストッパは、角部の頂部と接触し、およびベアリング部によって遠位方向にブロックし、および前記ベアリング部の穿孔は、室と容器との間の空気循環のために構成される、ように構成される。
- ピストンロッドは、使用者によって手動で移動させられるようにハンドルを含む。
- デバイスは、ハンドヘルドであり、すなわち、使用および1つの場所から別の場所への移送の間、使用者の一方の手の中で支持され得る。デバイスの寸法および重さは、有利には、この目的のために適合される。
【0024】
本発明の別の目的は、上述されるようなデバイスを含む医療容器を真空閉栓するためのシステムである。好ましい実施形態によると、システムは、真空を引きおよびデバイスの可変圧力室内の圧力を大気圧P0よりも下の圧力P1に調節するための真空ポンプおよび真空弁と、可変圧力室内の圧力を大気圧P0に調節し戻すように真空を破るためのバックバルブと、を含む。システムは、有利には、操作者のために可変圧力室内の圧力を測定しおよび表示するように可変圧力室の内部に位置付けられるデジタル表示と関連付けられるプローブを含む。
【0025】
本発明の別の目的は、上述されるようなデバイスまたはシステムを用いて医療容器を真空閉栓するための方法である。方法は、
a)ストッパをストッパホルダシステム内に位置付ける工程と、
b)組成物で事前充填された医療容器を容器ホルダシステム内に位置付ける工程と、
c)可変圧力室の内側の圧力を低減させるように可変圧力室内で真空を引く工程と、
d)圧力が所望のレベルまで下がったとき、医療容器内側にストッパを位置付けるように、ピストンロッドを操作位置に移動させる工程と、
e)可変圧力室の内側の圧力を増大させるように真空を破り、ストッパに医療容器を組成物の表面までさらに下に移動させる、工程と、
の連続的工程を含む。
【0026】
有利には、方法を実施するために、デバイスは使用者の手中に保持され、および少なくとも工程a)、b)、およびd)は、使用者によって手動で実施される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照して、次に続く詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1】本発明のデバイスの実施形態の斜視図である。
【
図2A】ピストンロッドの異なる位置による
図1に示されるデバイスの断面斜視図である。
【
図2B】ピストンロッドの異なる位置による
図1に示されるデバイスの断面斜視図である。
【
図2C】ピストンロッドの異なる位置による
図1に示されるデバイスの断面斜視図である。
【
図3】デバイスのストッパホルダシステムの実施形態の斜視図である。
【
図4】デバイスのストッパホルダシステムの別の実施形態の斜視図である。
【
図5】本発明のデバイスを含むシステムの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態の詳細な説明
本発明は、医療容器28を真空閉栓するためのデバイス1であって、使いやすくおよび移動しやすいデバイス、を提案する。特に、デバイス1は、医療容器28の真空閉栓の迅速かつ簡単な実施を容易に履行するように、操作者によって取り扱われ得る。
【0029】
デバイス1は、本体2と、ストッパ6を、閉栓されるべき容器28内へのその位置付けの前に、定位置に維持するのに適合されたストッパホルダシステム12と、閉栓されるべき容器28の近位端内にストッパ6を位置付けるために本体2内側を長手方向軸(A)に沿って移動可能なピストンロッド7と、ピストンロッドの移動の長手方向軸(A)と整列させられた、容器28を定位置に維持するのに適合された、容器ホルダシステム18と、を含む。
【0030】
図1の実施形態によると、デバイスの本体2は、実質的に円筒形状を有し、ならびに第1の部分3および第1の部分に遠位に隣接する第2の部分4を含む。本体2の第1の部分および第2の部分の両方は、それらの側壁によって範囲が定められる内部容積を画定し、ならびに第1の部分3は、好ましくは、第2の部分4のものよりも小さい直径を有する。
【0031】
本体2は、第2の部分4内に、内部容積内側に位置する可変圧力室5を含む。可変圧力室5は、本体2の第2の部分4の側壁の対応する部分に設けられた出口36を介して真空ポンプ30(
図4に見られるように)または同様のものに接続されるように構成される。可変圧力室5内側の圧力は、このようにして、変更、特に、可変圧力室5が真空下になるように大気圧未満に低減され得る。
【0032】
図2A、
図2B、および
図2Cによると、デバイスのピストンロッド7は、長手方向軸(A)に沿って延び、および本体2の内部容積の内側を長手方向軸(A)に沿って本体2の第1の部分3から本体の第2の部分4におよびその逆に移動可能である。
図1の実施形態において、ピストンロッド7の長手方向軸(A)は、その周りを本体2が回転するデバイス1の回転軸に相当する。特に、ピストンロッド7は、長手方向軸(A)に沿って可変圧力室5を通って移動可能であり、および本体2の第2の部分4の近位端および遠位端にそれぞれ位置する、本体2の第1の開口10および第2の開口11と交差する。
【0033】
第1の部分3から本体の第2の部分4への軸(A)に沿ったピストンロッド7の移動方向は、「遠位方向」といい、一方、第2の部分4から本体2の第1の部分3への軸(A)に沿ったピストンロッド7の移動方向を、「近位方向」という。
【0034】
より詳細には、ピストンロッド7は、使用者によって押されたとき、ピストンロッドの遠位端が、本体2の2つの部分3、4間の第1の開口10の近くで室5内に位置する
図2Aに示される休止位置と、ピストンロッド7の遠位端が、ストッパ6と接触しおよび、ピストンロッドの移動の前に、容器ホルダシステム18内に位置付けられる容器28内へストッパを押す、
図2Cに示される操作位置と、の間で、移動可能である。
図2Bに示されるピストンロッド7の位置は、前記ストッパを遠位方向に押す前に、ピストンロッド7の遠位端がストッパ6と接触する中間位置に相当する。
【0035】
本記載の理解を容易にするために、デバイス1を構成する要素の位置付けは、上述されるようなピストンロッド7の移動の近位または遠位方向を参照して記載される。
【0036】
ピストンロッド7は、デバイス1の第1の部分3内に位置するスペーサー8によって軸(A)に沿って駆動される。
【0037】
スペーサー8は、ピストンロッド7によって横断される本体2の第1の開口10を通して可変圧力室5と連通する。スペーサー8は、その端部の両方に位置付けられるラジアルシールリング35によって室5および環境の両方から密封(sealed)される。
【0038】
デバイスは、任意選択的に、ピストンロッド7を軸(A)に沿って駆動するためのアクチュエータ(不図示)を備えていてもよい。アクチュエータは、好ましくは、空気圧式アクチュエータまたは電気式アクチュエータであり、例えば、作動させるために流体力学的システムを必要とする流体力学的アクチュエータとは対照的に、両者は使用するのに極めて実際的である。アクチュエータは、デバイスが滅菌されおよび携帯可能であり得るように、および特に、デバイスがラミナーフローフード下のような滅菌条件下で使用され得るように、適合される。
【0039】
ピストンロッド7は、有利には、ハンドル9を備える。この方法で、操作者によるピストンロッド7の使用は、より容易におよびより快適になり、一方、同時に、本体2に沿ったピストンロッドの位置付けは、より正確になる。
【0040】
ストッパホルダシステム12は、ストッパ6を定位置に受け入れおよび保持するように構成され、および前記ストッパ6を容器28内へ位置付ける前に、ピストンロッド7の移動方向とだけでなく長手方向軸(A)とも整列させられる。ストッパホルダシステムは、有利には、ストッパを軸方向および半径方向の両方において維持するように構成される。
【0041】
デバイス1のストッパホルダシステム12は、室5と、および優先的に室5内側と連通するように、位置する。
【0042】
図1、
図2A、
図2B、および
図2Cの実施形態において、ストッパホルダシステム12は、より具体的には、本体2の第2の部分4の遠位端で、本体の第2の開口11の近くに、位置する。この方法で、ストッパホルダシステム12によって保持されたとき、ストッパ6は、閉栓されるべき容器28の近くに位置し、このようにして、ピストンロッドがストッパ6と接触しおよび前記容器28内へ押すピストンロッド7の移動経路を、低減させる。したがって、ストッパ6は、室5に沿って初めから最後まで移動する必要はなく、これは、軸(A)と整列させられたストッパ保持するための駆動または案内手段を提供する工程を回避する。
【0043】
ストッパホルダシステム12は、複数のブロッキング要素13を含む。
図1および
図2A~
図Bから
図C、および
図3に示される実施形態によれば、ブロッキング要素13は、第2の開口11の周りに延びるクラウン内に配置される。ストッパホルダシステム12は、有利には、軸(A)がクラウンの中心を通過するように配置され、このようにして、ピストンロッド7が、ストッパ6を押す間に、クラウンの中心を通過することを可能にする。
【0044】
ブロッキング要素13は、ピストンロッド7の移動の長手方向軸(A)と平行に延び、およびクラウンの壁16によって連結されている。それらは、有利には、マッシュルーム形状であり、すなわち、それらは、拡大されたヘッド15によって覆われたステム14を含む。ストッパ6がストッパホルダシステム12内に位置付けられたときに、ストッパの側壁は、ブロッキング要素13のステム14と接触し、およびストッパ6の近位端は、ブロッキング要素13のヘッド15と当接する。したがって、可変圧力室5内の圧力が大気圧未満に低下したとき、このようにして、室5内の圧力と容器28内の圧力との圧力差によって、近位方向に取り付けられるべきストッパ6を含み、ストッパ6は、ブロッキング要素13のヘッド15と当接し、および室5内へ近位に移動することが防止される。したがって、ストッパ6は、ピストンロッド7によって押し進められるまで、ストッパホルダシステム12内の適所に残る。ストッパ6に囲まれるステム14は、ストッパを半径方向において維持する。前記ステム14は、ストッパの軸方向および半径方向のブロッキングをさらに改善させるように、ストッパを半径方向に圧縮するように構成されてもよい。
【0045】
さらに、ストッパホルダシステム12は、ストッパ6がストッパホルダシステム12内に位置付けられたときに当該ストッパ6に関して少なくとも空気循環通路17を画定するように構成される。この方法で、空気は、ストッパホルダシステム12の一方の側から他方の側に流れ得る。
【0046】
ストッパ6がストッパホルダシステム12内に位置付けられたときに、ブロッキング要素13のヘッド15、クラウンの壁16、およびストッパ6の辺縁は、室5から容器28内におよびその逆に茎が流れるための空気循環通路17を画定する。
【0047】
室5内において真空が引かれたとき、空気は、空気循環通路17および室5を通って容器28の内側から真空ポンプ30に近位方向に流れる(
図4に示される)。真空が破れたとき、空気は、室5および空気循環通路17を通って真空ポンプ30から容器28に遠位方向に流れる。
【0048】
ストッパホルダシステム12の別の実施形態は、
図4に示される。この実施形態のストッパホルダシステムは、
図1、
図2A、
図2B、
図2C、および
図3の実施形態のストッパホルダシステムと同一の場所に位置付けられる。
【0049】
図4によると、ストッパホルダシステム12は、第2の開口11の周りに延びる2つの同心性のクラウン内にそれぞれに配置される、第1の組37および第2の組38のブロッキング要素を含む、2組のブロッキング要素を含む。ストッパホルダシステム12は、有利には、長手方向軸(A)がクラウンの中心を通過し、このようにして、ピストンロッド7が、ストッパ6を押しながら、クラウンの中心を通過するのを可能にするように配置される。
【0050】
第1の組のブロッキング要素37に関して、ブロッキング要素は、各角部を隣接物に接続する第1のクラウンの壁39から半径方向に(すなわち、軸(A)に垂直な方向に)延びる角部、好ましくは、三角部(triangular parts)を形成する。
【0051】
第2の組のブロッキング要素38に関し、ブロッキング要素は、各ベアリング部を隣接物に接続する第2のクラウンの壁40から半径方向に延びるベアリング部を形成し、および壁40に沿って互いから規則正しく離間される。各ベアリング部38は、ベアリング部を通って軸方向(すなわち、軸(A)に平行な方向)に延びる少なくとも1つの穿孔41を含む。さらに、ベアリング部38の穿孔41は、ストッパ6によって、後者がストッパホルダシステム12内に位置付けられたときに、部分的に覆われ得、空気が室5から容器28内へおよびその逆に通って流れるための空気循環通路としての役割を果たす。角部37は、有利には、よりよい空気流を提供するために、ベアリング部38からオフセットされる。そのような空気循環通路の機能は、ストッパホルダシステム12の前の実施形態のために以前に既に論じられている。
【0052】
ストッパ6がストッパホルダシステム12内に位置付けられたときに、ストッパ6の側壁は、角部37の頂部と接触し、およびストッパ6の近位端は、ベアリング部38と当接する。したがって、可変圧力室5内の圧力が大気圧未満に低減したとき、このようにして、圧力差ΔP (圧力P0、典型的には、医療容器27を取り巻く環境の大気圧と、真空下でのストッパの機械的位置付けの後のデバイスの内側の圧力P1と、の間の差)によって近位方向に引き付けられることとなるストッパ6を含み、ストッパ6は、ベアリング部38と当接し、および室5内へ近位に移動することが防止される。ストッパ6は、このようにして、ピストンロッド7によって押し進められるまで、ストッパホルダシステム12内の適所に残る。ストッパ6を取り巻く角部37は、半径方向においてストッパを維持する。前記角部37は、ストッパの軸方向および半径方向のブロッキングをさらに向上させるように、ストッパを半径方向に圧縮するように構成されてもよい。
【0053】
ベアリング部38の内部部分42は、好ましくは、ベアリング部38の曲率が実質的にピストンロッド7の形状に相当する内円を形成するように湾曲している。もちろん、ベアリング部38および角部37の直径は、ストッパ6の軸方向ブロックを提供し、およびピストンロッド7がストッパ6を押すためにストッパホルダシステム12を通る変位を可能にするのに、適合される。
【0054】
図4の実施形態は、特に、より小さいストッパ、例えば、5ml未満の容積を有する容器のためのストッパに好ましい。
【0055】
もちろん、注入デバイスは、本発明の範囲から逸脱することなく、ストッパホルダシステムの他の実施形態を含んでいてもよい。例えば、ストッパホルダシステムは、ストッパを半径方向に圧縮するように構成される曲面を有する複数のブロッキング要素を含んでいてもよい。
【0056】
前に言及されたように、ストッパホルダシステム12は、ストッパ6を、それが容器内へ導入される前に、ストッパが実質的にピストンロッド7の移動の軸(A)と整列させられるある位置に維持することを可能にする。ピストンロッドが遠位方向に押されたとき、ピストンロッド7は、ストッパ6と衝突し、および次いで、容器の近位端を通って、前記ストッパを遠位方向に容器28内へ押す。
【0057】
デバイスの容器ホルダシステム18は、閉栓されるべき容器28の近位端を受け入れるように構成される。容器ホルダシステム18は、ストッパホルダシステム12に関して遠位に位置し、および、遠位方向に移動するときに、ピストンロッド7が、ストッパホルダシステム12内に前に位置付けられたストッパ6を、容器28内へ押すように、実質的に、ピストンロッド7の移動の軸(A)と整列させられる位置において容器28内に維持するように構成される。
【0058】
一般的な方法において、容器ホルダシステム18は、容器28が容器ホルダシステム内に受け入れられたときに、容器の近位端が容器ホルダシステムの表面と対向しおよび軸方向に接触するように構成される。そのような方法で、容器ホルダシステムの表面は、容器の近位端を閉鎖し、それにより、デバイスと環境との間の何らかの空気漏れを回避することによって、デバイスの効果的な密封を提供する。
【0059】
図1、
図2A、
図2Bおよび
図2Cの実施形態によると、容器ホルダシステム18は、本体2の遠位端の第2の部分4において、ストッパホルダシステム12に近接して位置し、このようにして、ストッパホルダシステム12に位置付けられたストッパ6と容器28との間の距離を最小化する。これは、ピストンロッドがストッパ6と接触し遠位方向に前記容器28内へ押すピストンロッド7の移動経路を、上で説明した理由により、低減させることを可能にする。
【0060】
容器ホルダシステム18は、近位壁19、近位壁と対向する遠位壁22、ならびに近位壁および遠位壁を接合する側壁23を含む。近位壁19、遠位壁22、および側壁23は、閉栓されるべき容器28の近位端を受け入れるように構成されるハウジング24を画定する。
【0061】
容器ホルダシステム18は、この中に挿入される容器28を定位置に維持すること、およびストッパ6が容器内へ位置付けられる間に、デバイス1から落ちることを防止することによって、容器を固定することを可能にする。
【0062】
図1、
図2A、
図2Bおよび
図2Cの実施形態によると、近位壁19は、凹部21を取り巻く辺縁20を含み、前記凹部は、本体の第2の部分4の遠位端に相当する。密封または吸引カップ(図には表されていない)は、第2の開口11と辺縁20との間に延びるように、凹部21内に位置付けられる。密封は、デバイスと環境との間の何らかの空気漏れを回避し、および例えばゴムのような任意の適合された材料製であり得る。密封は、有利にはOリングであり、または平坦であり得る。容器ホルダシステム18内に位置付けられるとき、容器28の近位端は、凹部21内に挿入され、およびと密封と接触し、このようにして、真空が引かれ、および本体2の第2の開口11を覆う(covers)ときに、任意の漏出を防止する。容器28は、また、第2の開口11と、および結果として、ピストンロッド7の移動の長手方向軸(A)と、整列させられる。
【0063】
さらに、実用的観点から、室5内において、大気圧P0より低い(inferior to)圧力P1まで真空が引かれたとき、真空の力によって近位方向に向かって引っ張られる容器28は、および結果として、近位壁19に押し付けられる。
【0064】
側壁23はスロット25を備え、および遠位壁22はスロット25に続く通り抜け溝26を備え、当該溝は、スロットから遠位壁22を通って延びる。実際的な方法において、容器28の近位端は、側壁のスロット25を通して挿入され、および容器28が本体2の第2の開口11と整列させられるまで、遠位壁の溝26に沿って半径方向に移動させられる。容器28の近位端は、次いで、凹部21内に位置する密封に接して上方に移動させられる。
【0065】
溝26は、容器がデバイス1から落ちるのを回避しつつ、容器28の挿入を可能にするように構成される。この目的を達成するために、溝26の幅は、有利には、容器28の近位端の幅より小さい。
【0066】
溝26は、溝の内面が容器28の本体と接触するように構成される。特に、溝26は、容器が操作者によって移動させられない限り、この中に挿入された容器28が半径方向に移動するのを防止するように構成され得る。溝は、好ましくは、例えば、容器が閉栓されている間に容器をハウジング24内の定位置に維持するのに寄与するだけでなく、その中における容器の挿入をより容易にするために、剛性のプラスチックまたは金属(アルミニウム、ステンレス鋼)のような剛性かつ滑らかな材料からできている。
【0067】
この目的を達成するために、溝26は、溝の幅を調節するための調節手段を含み得る。
【0068】
同じ目的のために、スロット25および溝26の両方の構造は、デバイス1によって閉栓されることが意図される容器28の種類により適合されてもよい。
【0069】
例えば容器28がシリンジまたは同様のものであるとき、容器28の近位端の幅はその本体の幅よりも大きいので、スロット25の幅は、溝26の幅よりも大きい。この構成は、
図1および
図2A、
図2B、
図2Cの実施形態に表されるものである。溝26の入口は、近位壁に対向する遠位壁に形成される突出部27によって、範囲が定められる。この構成において、溝26に挿入されたとき、容器28の近位端は、突出部27に当接し得、このようにして、容器が溝から落ちるのを防止する。
【0070】
あるいはまた、容器28が円筒または同様のものであるとき、円筒の幅はその長さに沿ってずっと同一であるので、スロット25の幅は、溝26の幅と同一であり得る。この構成において、容器28の近位端は、遠位壁22に当接し得ないが、当該溝が、この中に挿入される容器28が半径方向におよび前に記載されたように移動するのを防止するように、構成されている場合、容器28は、溝26内に依然として維持され得る。
【0071】
密封は、同様に、容器28の種類により適合され得る。例えば、容器がシリンジまたは同様のものであるとき、密封は平面シールであり得、一方、容器が円筒であるとき、密封は、Oリングシールであり得る。
【0072】
何ら容器ホルダシステムを含まない(容器は、単に、ピストンロッドと整列して配置されている)従来技術の真空閉栓装置とは対照的に、本発明によるデバイスの容器ホルダシステムは、本体に取り付けられ、これにより、容器は、使用の間、本体に固定される。これは、特に、医療容器の真空閉栓の迅速かつ簡単な実施を実行するために、低減された寸法および重量を有するデバイスの一般的な構造と共に、デバイスをハンドヘルドにし、および使用のために携帯し易くするのに寄与する。その上、デバイスは、全体として、または第2の部分4のみ、すなわち、容器内に含まれる組成物と接触する傾向のあるデバイスの部分、のいずれかは、オートクレーブ内で容易に滅菌され得る。
【0073】
デバイスは、ハンドヘルドであり、これは、使用および1つの場所から別の場所への移送の間、それが使用者の一方の手の中で支持され得ることを意味する。デバイスの寸法および重さは、有利には、この目的のために適合される。例えば、本体2は、好ましくは、20センチメートルから30センチメートルの間の長さ、1キログラムより軽い、より好ましくは、50グラムから300グラムの間の重さ、および5センチメートルから10センチメートルの間の直径を有する。
【0074】
デバイスを使用するとき、使用者は、一方の手で実質的に垂直の位置に本体を保持し、さらに他方の手で容器ホルダシステム内に医療容器を据え付けることができる。次いで、デバイス内で真空を引くために、使用者は、一方の手で本体を把持した状態を保ち、および他方の手で真空ポンプ30および真空弁31それぞれにより真空を引き、次いで調節し、その後、当該他方の手でピストンロッド7を押してもよい。必要ならば、デバイスは、もちろん、プロセスを容易にするように例えばハンガーアームのような適当なデバイス上に固定されてもよい。
【0075】
デバイスの好ましい実施形態において、第1の部分3はスペーサー8を含み、および第2の部分4は可変圧力室5を含み、ストッパホルダシステム12、および容器ホルダシステム18は、互いから分離可能である。他の観点から、第1および第2の部分3、4は、デバイス1が使用されるときに互いに対して選択的に接続され得、またはそうでなければ互いから分離され得る。ピストンロッド7は、好ましくは、また、デバイスの第1の部分3から分離され得る。
【0076】
この理由で、医療容器28の真空閉栓の所与の実施のために、デバイスの第2の部分4のみを滅菌すること、および前に滅菌され、それを再び滅菌する必要のない第1の部分3を再使用することが可能である。ピストンロッド7に関しても、前記ピストンロッドが、実施の前に第1の部分で滅菌されたときに、同様のことが言える。
【0077】
ねじ接続またはスナップフィット接続は、例えば、特に、デバイスの第1および第2の部分3、4を接続しおよび分離するのに適当である。第1の部分および第2の部分は、あるいはまた、例えば接続上に密封をさらに位置付けることによって十分な気密性(tightness)が達成され得る限り、他の適当な接続によって接続され得る。
【0078】
さらに、デバイス1は、少なくとも2つの第2の部分4を含み得、各第2の部分は、異なるサイズの医療容器28の端部を受け入れるように構成された容器ホルダシステム18を含む。
【0079】
この理由で、その容器ホルダシステム12は容器28のサイズに適する複数の取り外し可能な第2の部分4を備える任意の所与のサイズの容器28に合うデバイス1を適合することが可能である。
【0080】
本発明の別の目的は、前述されたようなデバイス1を含む医療容器28を真空閉栓するためのシステム29、およびそのようなデバイス1またはシステム29を用いる容器28を真空閉栓する方法ある。プロセスは、
図5に示されるシステムと共に、さらに説明される。
【0081】
システム29は、デバイス1、真空ポンプ30、マイクロメートルの(micrometric)または任意の他の型の真空弁31、バックバルブ33、デジタル表示32に接続される圧力プローブ(不図示)、および電力源34を含む。
【0082】
第1に、ストッパ6は、大気圧P0下で、デバイス1のストッパホルダシステム12内に位置付けられる。組成物で前に充填された容器28は、次いで、前記デバイス1の容器ホルダシステム18内に位置付けられる。この時点において、ピストンロッド7は、休止位置にある。既に行われていない場合、可変圧力室5は、真空ポンプ30 に、出口36を介して接続される。次いで、室5において、圧力が大気圧P0よりも低い所定の圧力P1に達するまで、真空が引かれる。圧力は、手動で取り扱われ得るマイクロメートルの真空弁31を用いて調節され、および室5内の圧力は、室5の内側または真空ライン内に位置付けられるプローブからの圧力測定値を受けるデジタル表示32を介してチェックされ得る。容器28は、直接的に真空の力によって、または操作者による第1の工程において、デバイス1に抗して近位方向に引っ張られ、一方、ストッパ6は、ストッパホルダシステム12内の適所に残る。
【0083】
表示器32上の圧力読取値が所定の圧力P1と一致すると、ピストンロッド7は、軸(A)に沿って遠位方向に操作位置まで押され、前記ピストンロッドは、ストッパ6を遠位方向にストッパホルダシステム12から容器28の内側に至るまで押す。ピストンロッド7は、次いで、休止位置に戻るまで近位方向に引っ張られ移動される。
【0084】
容器28内側のストッパ6の位置は、ストッパ6が容器28の近位端に近すぎずに位置付けられる限り、厳密である必要はないことに留意されたい。
【0085】
次いで、バックバルブ33によって真空を破る工程は、室5内側の圧力を増大させ、およびストッパ6に、容器28を、組成物の表面までさらに下に移動させる。容器は、次いで閉栓される。
【0086】
より詳細には、ストッパ6は、ピストンロッド7からの援助なしにひとりでに下に移動する。実際に、ストッパ6と組成物の表面との間の容器の部分内の圧力はP1に等しく、一方、ストッパの他方の側の圧力は増大する。圧力差は、ストッパ6を遠位方向に圧力平衡に達するまで移動させ、これは、後者が組成物の表面の真上にあるストッパ6の位置に相当する。
【0087】
デバイス1のおかげで、方法の工程は、以下の順序で操作者によって手動で実行され得る。特に、操作者は、
1) ストッパ6をデバイス1のストッパホルダシステム12内に手動で位置付け、
2) 容器28をデバイス1の容器ホルダシステム18内に位置付け、および
3) ストッパ6を医療容器28の内側に位置付けるように、ピストンロッド7を遠位方向に押す、ことができる。
【0088】
これは、クリーンルーム、滅菌環境または非制御環境のような任意の種類の環境条件における医療容器の真空閉栓の迅速かつ簡単な実施、ならびに一方から他方への切り替えの実行を容易に可能にする。