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特許7113892非常モードで風力タービンを動作させる方法並びに制御器及び風力タービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】非常モードで風力タービンを動作させる方法並びに制御器及び風力タービン
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
F03D7/04 H
F03D7/04 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020514725
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2018074156
(87)【国際公開番号】W WO2019057522
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】102017121750.9
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Borsigstrasse 26, 26607 Aurich Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルムス ハロ
(72)【発明者】
【氏名】ベルゲマン コンスタンティン
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02169219(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0027566(US,A1)
【文献】特許第3679801(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0076142(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0056072(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105264221(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0230400(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0001409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常モードにおける風力タービン(10)についての方法であって、
a)前記風力タービンに掛かる少なくとも1つの力の変化を検出するステップ(52)であって、前記少なくとも1つの力の変化は、以前に測定された第1の検出済み力と現在測定されている第2の検出済み力との間の差分力が所定の差分力閾値を超えている場合に、検出される、検出するステップ(52)と、
b)ヨー設定のヨー角を維持するステップ(54)と、
c)前記検出された変化に応じて、ロータブレード(18)の少なくとも1つを調整するステップ(56)と、
を備えた前記方法。
【請求項2】
ステップc)において、前記少なくとも1つのロータブレード(18)が、前記維持されたヨー角で、前記ロータブレード(18)のフェザリング位置についての角度とは異なる角度に、調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)において、前記少なくとも1つのロータブレード(18)が、1つの角度に設定され、この1つの角度において、前記風力タービンに掛かる前記又は別の力が、前記少なくとも1つのロータブレード(18)及び/又はロータ(16)及び/又はロータシャフト(28)に作用する力及び/又は曲げモーメントが、複数の又は全ての他の角度の場合に比べて、最小化される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ロータブレード(18)を調整するための電力が、前記風力タービン(10)の非常用電源から、又は蓄電池から、取り出される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非常モードにおける前記非常用電源が全ての前記ロータブレード(18)の2つ又はそれより多くの調整動作用に設計されており、前記調整動作の各々には、各々の前記ロータブレード(18)をその長手方向軸(32)を中心にして少なくとも90度回転させることが含まれている、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ロータブレード(18)がその長手方向軸(32)を中心にして360度回転可能である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ロータブレード(18)が個別に調整される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
風力タービン(10)用の制御手段であって、請求項1~のいずれか一項に記載の方法を実施するように適合化された制御手段。
【請求項9】
前記風力タービンに掛かる力の変化を検出するための少なくとも1つのセンサを含んでいる、請求項に記載の制御手段。
【請求項10】
請求項又は請求項に記載の制御手段を備えた風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常モードにおける風力タービンについての方法並びに制御手段及び風力タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
最先端の技術によれば、風力タービンは、自己のエネルギ出力を最大化するために、卓越風の要因に応じて調整できる複数の構成要素を備えている。これらの調整可能な構成要素の設定又は調整にはエネルギが必要である。
【0003】
従って、例えば、現代の風力タービンでは、空力ロータのロータブレードは、風のアフラックスフロー(afflux flow:到来する流れ)を理想的に受けるように、自己の長手方向軸を中心にして回転でき、従って、変位できる。それから生じるロータブレードの揚力効果が、空力ロータによって駆動される発電機のロータにおけるトルクを生成する役割を果たす。従って、風力タービンの発電機により、風の運動エネルギを電気エネルギに変換できる。
【0004】
更に、最新の風力タービンは、空力ロータ全体を卓越風の方向に向けるために、風方向追跡機構を備えている。風方向追跡機構は、ヨー調整とも呼ばれる。従って、ロータブレード平面、即ち、風力タービンのロータブレードが回転する平面が、常に、風のアフラックスフローに対して実質的に垂直に向けられ、これにより、ロータへの対称形のアフラックスフローが保証される。この対称形のアフラックスフローによって、曲げモーメントが低減され、エネルギ出力が最大化される。
【0005】
従って、ロータについてのアフラックスフローは、風方向とロータ位置との関係を意味している。対称形のアフラックスフローの場合、ロータ平面は、風方向追跡機構によって、風方向に対して実質的に垂直に方向付けられる、あるいは、換言すれば、対称形のアフラックスフローの場合、ロータの軸は、現在の風の方向ベクトルと平行に方向付けられる。従って、平行なアフラックスフローという用語も対称形のアフラックスフローの代わりに使用する。更に、対称形のアフラックスフローによって、風は、正面から、即ち、風力タービンのポッド(pod)の方を向いていないロータの面側から、ロータ平面に当たる。
【0006】
しかしながら、風力タービンの構成要素を、変化する風の状態に、適合させることができない状況がある。例えば、ここでは、風力タービンの非常動作について言及すると、この非常動作においては、風力タービンは、グリッド(高圧送電線網)から分離されており、従って、風力タービンの機械的構成要素の調整のためにグリッドから電力を取り出すことができない。
【0007】
従って、風力タービンの機械的構成要素は、特に、ロータが風力タービンの静止部分に取り付けられる際に使用されるロータシャフトは、これらの状況に備えて大きめに設計されており、それによって、例えば、ロータブレードに対する横方向の風の流れが生じた場合における負荷によるダメージを防止している。
【発明の概要】
【0008】
従って、風力タービンは、電力をグリッドから取得して給電できる通常動作に必要な場合よりも更に安定するように設計されている。しかしながら、このような更なる安定性により、更なる製造コストが発生し、その上、通常動作において部分的に効率が低下し、従って、風力タービンの出力が低下する。
【0009】
従って、非常モードにおいてでもロータブレードを所定の位置に移動させるために、風力タービンにエネルギ蓄積手段を設けることが従来技術において知られている。これにより、ロータブレードのスピンを可能にすることによって、ロータにブレーキ装置が設けられていない場合の非常モードにおいて、少なくともロータの回転速度を確実に所定の回転速度上限未満に保つことができる。
【0010】
風力タービンがグリッドから分離されると直ぐに開始される非常モードは、ロータブレードが、1回限りの動作として、現在の位置から所定の位置に移動されることを規定している。適切な非常用電源が、この1回限りの調整用に設計されている。風方向追跡機構の調整、あるいは、ヨー設定、即ち、ヨー角の設定は、従来、非常モードにおいては設けられておらず、その理由は、そのために必要な電力が、やはり非常用電力蓄積手段において提供される必要があり、且つ、非常に高い電力であり、従って、ロータブレードの調整用の非常用電源の容量の数倍もの非常用電源を用意する必要があるからである。従って、ブレードに対して傾斜した風の流れによる非常状況におけるダメージを回避するために、風力タービンの大型化が依然として必要である。
【0011】
本発明の目的は、従来技術に関連して前述した問題の1つに対処することである。特に、風力タービンの安定化要件を低減することによって、非常モードにおける傾斜したアフラックスフローを含む状況用に設計する必要のある風力タービンの大型化を好ましくは回避する、あるいは、少なくとも大型化の程度を最小限に抑える。
【0012】
独国特許商標庁は、本出願についての優先権出願において、次の先行技術文献を調査した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許出願公開第20110076141号明細書
【文献】国際公開第2007/132303号
【文献】米国特許出願公開第20100078939号明細書
【文献】米国特許出願公開第20110280725号明細書
【0014】
この目的のために、本発明は、非常モードにおける風力タービンについての方法に関する。従って、この風力タービンは、非常モードにあり、従って、電力グリッドから分離されている。このグリッドからの分離は、ここでは、必ずしも物理的な分離が実施される必要があるわけではないが、この分離には、その状況も含まれていることを意味している。いずれにしても、このグリッドからの分離は、風力タービンの動作用の電力がグリッドから取り出せないことを意味している。このグリッドという用語は、電力供給グリッドを意味するために使用しており、この電力供給グリッドを介して、通常動作にある風力タービンが、生成したエネルギを供給する、例えば、それを消費者に給電する。
【0015】
本発明に従えば、風方向の変化が検出される。それに加えて、あるいは、その代わりに、風力タービンに作用する少なくとも1つの力の変化が検出される。その直後に、ヨー設定の現在のヨー角は維持されながら、少なくとも1つのロータブレードが異なる角度に調整され、その角度は検出された変化に依存している。
【0016】
ここでの検出は、測定として解釈されることを意図していない。むしろ、好ましくは、風方向の変化を検出するために、最初に風方向が測定され、及び/又は、力の変化を検出するために、最初に力が、連続的に又は断続的に、且つ、好ましくは確実に測定される。それから初めて、例えば制御手段において、その測定から、及び、以前の測定を考慮することによって、変化が検出され、その場合、現在測定されている風方向及び/又は力についての測定値が、以前に測定された風方向又は力と異なっている。
【0017】
風方向の変化とは、最初に第1の風方向があり、それが第2の風方向に変わることを意味している。その第1の風方向から第2の風方向への変化が、風方向における検出可能な変化に該当する。風力タービンに作用する力の変化は、好ましくは現在の風又は卓越風によって加えられる力の変化に関する。風が変化する場合、即ち、特に風の強さ又は風の方向が変化する場合、風力タービンに、特にその構成要素に、作用する特定の力が変化する。従って、好ましくは事前に規定されているこれらの力の変化のうちの少なくとも1つが、風に応じて変化し、その変化が検出される。
【0018】
この目的は、例えば、タービンタワー及び/又はロータブレードに配置されている歪み計量器(strain gauge)のような1つ又は複数のセンサによって達成される。この目的のために、3つ又は4つのセンサがタワーに周方向に均一に配置されていることが好ましい。力という用語は、ここでは、一般的に、直接作用する力の他に、モーメント、特に曲げモーメント、あるいは、他の負荷をも含む任意の力のパラメータを示すために使用されている。
【0019】
従って、本方法に従えば、風方向又は少なくとも1つの力がモニタされ、測定され、あるいは、検出されて、その風方向又は力が変化する状況において、その変化が検出され、その結果、次に、本方法における更なるステップが実施される。従って、少なくとも1つのロータブレードが、その風方向の変化又は力の変化の前に採用されていた位置とは異なる位置に設定される。従って、ロータブレードが第1の風方向又は力で第1の位置にある場合、そのロータブレードは、その変更後に、即ち、第2の風方向又は力で、第2の位置にあるように調整される。
【0020】
これにより、風力タービンに対する傾斜したアフラックスフローが発生し、且つ、非常モードによってヨー角の調整ができない状況であっても、風によって風力タービンに作用する力を最小限に抑えることができる。従って、風力タービンに掛かる負荷は傾斜したアフラックスフローで低減され、従って、風力タービンは、大型化される必要はなく、あるいは、少なくとも大型化の程度が低減され得る。
【0021】
第1の実施形態に従えば、この少なくとも1つのロータブレードは、特に対称形のアフラックスフローの場合における、この維持されたヨー角、即ち、現在のヨー角でのフェザリング位置(feathered position)についての角度とは異なる角度に調整される。
【0022】
別の一実施形態に従えば、少なくとも1つのロータブレードの調整が、風方向の変化及び/又は力の変化が検出された後に、実施され、その際、そのロータブレードの角度が1つの角度に設定され、この1つの角度から得られる結果として、この少なくとも1つのロータブレード及び/又はロータ及び/又はロータシャフトに掛かる力及び/又は曲げモーメントが、1つ又は複数の他の角度の場合に比べて、最小化される。好ましくは、このロータブレードは、新しい風方向、即ち、変化後の風方向に対してフェザリング位置に動かされ、その結果、その風方向によって生じる力が、低圧側と高圧側とにおいて、互いに実質的に相殺される。
【0023】
従って、傾斜したアフラックスフローがある場合、風力タービンに生じる力は低減される。
【0024】
別の一実施形態に従えば、第1の風方向と第2の風方向との間の水平方向の差分角が所定の差分角閾値を超える場合には風方向の変化が検出される。従って、差分角が差分角閾値に等しいか、あるいは、差分角閾値より小さい限り、風方向の変化は検出されず、ロータブレードは、現在の位置に留まる。これによって、アフラックスフローの傾斜がほんの僅かであり、従って、ロータブレード又は風力タービンにまだ大きな負荷が掛かっていないにもかかわらず、小さな差分角でブレード調整が行われてしまうことを回避できる。従って、ロータブレードの不必要な往復調整が回避される。差分角閾値は、好ましくは1~10度の範囲内、特に2~5度の範囲内であり、シミュレーションによって予め決定できる。
【0025】
それに加えて、あるいは、その代わりに、この実施形態においては、第1の検出済み力と第2の検出済み力との間の差分力が第1の所定の差分力閾値を超える場合には、風力タービンに掛かる力の変化が検出される。同様に、差分力が差分力閾値に等しいか、あるいは、差分力閾値より小さい場合には、風力タービンに掛かる力の変化は検出されない。
【0026】
別の一実施形態に従えば、風速が特定されて所定の風速閾値と比較される。風速が所定の風速閾値を超えている場合であり、且つ、風方向の変化又は風力タービンに掛かる力の変化が検出された状況において、ヨー角が維持されて、同時に少なくとも1つのロータブレードが別の角度に調整される。風速が風速閾値よりも小さいか、あるいは、風速閾値に等しい場合には、ロータブレードは現在の位置に留まる。この風速を特定して風速閾値と比較する手順は、風方向の変化を検出するステップの前に実施されることが好ましい。風速閾値もシミュレーションによって予め決定できる。
【0027】
ここでは、風力タービンに対するダメージが、高風速によって引き起こされる所与の力の発生からのみ生じ得るという事実を考慮している。風速が、ここで風速閾値と呼称するこの制限値を下回っていれば、風力タービンに対する危険性はなく、従って、調整の必要もない。従って、前述の如く、この実施形態において、1つ又は複数のロータブレードについての不必要な調整手順を回避できる。
【0028】
別の一実施形態に従えば、風力タービンの少なくとも1つの構成要素に、特に1つ又は複数のロータブレード、ロータ又はロータシャフトに、作用する少なくとも1つの力の変化が、モニタされた力が所定の力閾値を超える場合に、検出される。例えば、歪み計量器のようなセンサが力をモニタする役割を果たす。このようにして、例えば、ロータシャフト又は1つ又は複数のロータブレードに対する曲げ力が測定され、風力タービンの少なくとも1つの構成要素に作用している力がその測定から特定される。次に、その力又はそれらの力が力閾値と比較される。
【0029】
変化の検出と、ヨー設定のヨー角の維持と、少なくとも1つのロータブレードの調整とは、所与の力が力閾値を超えた場合にのみ実施される。この力が力閾値よりも小さいか、あるいは、その値に等しい場合には、ロータブレードは現在の位置に留まる。この少なくとも1つの力を特定して力閾値と比較する作業は、風方向の変化を検出するステップの前に実施されることが好ましい。この力閾値もシミュレーションによって予め決定できる。
【0030】
従って、風速の代わりに、あるいは、それに加えて、風によって風力タービンに掛かる力を特定でき、そして、力閾値を設定することによって、その力が風力タービンに対するダメージにつながる可能性がある場合にのみ、直ぐに、少なくとも1つのロータブレードを調整する。一方、発生した所与の力によるダメージの危険性がない場合には、ロータブレードの調整を回避できる。
【0031】
別の一実施形態に従えば、ロータブレードを調整するための電力は、風力タービンの非常用電源から、特に蓄電池から、取り出される。
【0032】
従って、本方法は、風力タービンが接続されているグリッドからエネルギを取り出すことができない非常モードにおいて、実施される。従って、非常用電源を設けることによってグリッドから電力を取り出す必要なしに、ロータブレードを調整するためのモータに給電することにより、ロータブレードの調整を実施できる。
【0033】
別の一実施形態に従えば、非常モードにおけるこの非常用電源は、全てのロータブレードの2つ又はそれより多くの調整動作用に設計又は寸法付けされており、特に、調整動作の各々には、各々のロータブレードをその長手方向軸を中心にして少なくとも90度回転させることが含まれている。従って、非常動作モード中に複数回変化する傾斜したアフラックスフローについて、ロータブレードの複数の調整が可能である。従って、例えば、風方向の最初の変化が検出されて、それに応じてロータブレードが調整された後に、風方向が更に変化すると、ロータブレードは新たに設定され得る。
【0034】
別の一実施形態に従えば、ロータブレードは、その長手方向軸を中心にして360度回転可能である。従って、風方向がロータの前側からの対称形のアフラックスフローに対して180度変化する場合、その風方向の変化後の風の方向ベクトルは、それに応じて、ロータブレード平面の裏側を指し示す。この場合、ロータブレードは180度調整できる。横方向のアフラックスフローの場合には、ロータブレードは、それに応じて、それぞれ、現在のヨー角から見て、平行なアフラックスフローが存在する場合の、即ち、対称形のアフラックスフローについての、フェザリング位置に対して、90度又は270度調整できる。従って、風方向の如何を問わず、ロータブレードは、風によってロータブレードに作用する力が可能な限り小さくなるように、ヨー角とは無関係に、調整できる。
【0035】
別の一実施形態に従えば、ロータブレードは、個別に調整可能である。従って、各々のロータブレードを、風によって各々のロータブレードに作用する力が可能な限り小さくなるように、設定できる。
【0036】
更に、本発明は、上述の実施形態のうちの1つに従う方法を実施するように適合化された風力タービン用制御手段に関する。この目的のために、制御手段には、コンピュータ装置と、特に、センサデータとして、風方向、風速、風力タービンの構成要素に作用する少なくとも1つの力、及び/又は、別のパラメータを検出するための1つ又は複数のセンサと、が含まれていることが好ましい。従って、風力タービンは、センサデータを制御手段に送信するように適合化されている。
【0037】
更に、制御手段は、ロータブレード調整用の非常用電源を用いて、風力タービンを非常モードで動作させる働きをする。この場合、制御手段は、アクチュエータに、ロータブレードを、この制御手段において決定された位置に従って、調整させるように適合化されている。この調整は、検出された風方向の変化に応じて決定される。
【0038】
本発明は、更に、上述の実施形態のうちの1つに従う制御手段を備えた風力タービンに関する。
【0039】
以下、更なる構成が、図面の参照により、更に詳細に説明される例としての実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】風力タービンの側面図を示す図である。
図2】ロータブレードがフェザリング位置にある風力タービンの上面図を示す図である。
図3】ロータブレードの位置を変更した図2の概観を示す図である。
図4】ロータブレードの位置を再び変更した図2及び図3から得られる上面図の概観を示す図である。
図5】本方法の一実施形態のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、タワー12とポッド14とを備えた風力タービン10を示している。ポッド14には、3つのロータブレード18とスピナ20とを備えた空力ロータ16が配置されている。動作中、ロータ16は、風によって回転駆動されて、それにより、ポッド14内の発電機を駆動する。
【0042】
ポッド14は、垂直軸22を中心にして矢印24の方向に調整可能である。この調整は、ヨー調整又は風方向追跡とも呼ばれ、従って、風力タービン10のヨー角を設定する役割を果たす。従って、ヨー設定は、ロータ16を卓越風方向26に向ける役割を果たす。ここに示されたヨー又はヨー角は、例えば、ゼロ度のヨー角として定義されている。図示のヨー角及び卓越風方向26を用いて、平行なアフラックスフロー又は対称形のアフラックスフローを参照する。これは、風26が、ロータ16に、前側30から、ロータシャフト28に実質的に平行に、当たる場合である。
【0043】
ロータブレード18は、自己の長手方向軸32を中心にして回転できる。これは、矢印34によって図示されている。この例では、ロータブレード18は、フェザリング位置に配向されている。これは、風方向26からロータ16に到来する風がロータシャフト28にトルクを全く生成しないか、あるいは、僅かなトルクしか生成しないことを意味している。この理由は、ロータブレード18のこの位置によって、それぞれのロータブレード18に作用する力が実質的に互いに相殺するか、あるいは、合わさってゼロになるからである。
【0044】
このフェザリング位置は、風力タービン10がグリッドにエネルギを供給しない場合に、あるいは、風力タービン10が、この風力タービン10の更なる被制御調整のための電力がグリッドから取り出せない非常モードにある場合に、想定されることが好ましい。
【0045】
図2は、図1の風力タービン10の上面図を示している。同一の参照番号は、同一の特徴的な要素を示している。図2では、風力タービン10は、同じく、風に関連して配向されており、従って、これには平行なアフラックスフローが含まれている。ロータブレード18は、同じく、フェザリング位置に設定されている。従って、風力タービン10に掛かる負荷は最小限である。
【0046】
次に、図3は、本発明による方法に従う被調整ロータブレード18についての第1の例を示している。この場合、風方向26は、図2における風方向を基準にして時計回りの方向に、図2に示された第1の風方向26aから90度回転して第2の風方向26bに変化している。従って、これは、図2に示されたような平行なアフラックスフローではなく、概して傾斜したアフラックスフロー、あるいは、ここでは、具体的には、横方向のアフラックスフローを伴っている。従って、風力タービン10は、第1の風方向26aから第2の風方向26bへの風方向の変化が生じていることを検出する。その代わりに、あるいは、それに加えて、風方向のこの変化は、風力タービン10に作用する力の変化によっても検出できる。この目的のために、負荷又は負荷の変化が、例えば歪み計量器によってモニタされている。
【0047】
図3に示されているように、ヨー設定のヨー角は、風方向の変化にもかかわらず、維持されており、ロータブレード18は、第2の角度とも呼称できる別の角度に動かされる。この第2の角度は、現在のヨー配向での平行なアフラックスフローに対するフェザリング位置についての角度とは異なる。更に具体的には、ロータブレード18は、風によりロータブレード18に作用する力が可能な限り小さくなるように、その風について設定される。図3から分かるように、ロータブレード18は、図2における位置に対して90度だけ調整されている。
【0048】
図4には、風方向26の変化が検出された、及び/又は、風力タービン10に掛かる力が変化した、別の例が示されており、ここでは、風方向26が風力タービン10の裏側に対して向いている。ここでもロータブレード18は、風方向の変化又は力の変化が検出され、即ち、新たな風方向が検出され、それが現在のヨー配向での平行なアフラックスフローとは異なる時に、ヨー角が維持された状態で、調整される。ここで、ロータブレード18は、風方向26から見た場合にフェザリング位置にあるように調整され、そのフェザリング位置は、図2におけるような現在のヨー配向での平行なアフラックスフローについてのフェザリング位置とは異なる。
【0049】
従って、ロータブレード18の位置、即ち、ピッチ角は、風方向26に応じて、この変化する風方向26に適合化される。
【0050】
図5は、一実施形態に従う本方法における複数のステップの一実施例を示している。ステップ50において、風方向26又は風力タービン10に掛かる力がモニタされており、ステップ52では、その風方向26又は力が変化したことが検出される。従って、ステップ54において、風力タービンのヨー設定のヨー角が維持され、ステップ56では、ロータブレード18が、変化した風方向26に応じて、調整される。
図1
図2
図3
図4
図5