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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】整形外科用関節
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/64 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
A61F2/64
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020518761
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018077317
(87)【国際公開番号】W WO2019076664
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】102017124337.2
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502220838
【氏名又は名称】オットーボック・エスイー・ウント・コンパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ボイテン、ヘルマン
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102005029160(DE,A1)
【文献】特開平08-317944(JP,A)
【文献】米国特許第9066819(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0208430(US,A1)
【文献】米国特許第6113642(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部分(10)と、前記上部分に旋回軸(12)を中心に旋回可能に取り付けられた下部分(20)と、回転油圧装置(30)と、前記下部分(20)に対する前記上部分(10)の旋回動作を補助するプレテンション装置(40)とを備え
前記回転油圧装置が、チャンバ(32)と、前記チャンバ(32)の中に旋回可能に取り付けられた旋回ピストン(33)とを備えるハウジング(31)を有し、前記旋回ピストンが、前記チャンバ(32)を屈曲チャンバ(34)と伸展チャンバ(35)とに分割し、これら屈曲チャンバ、伸展チャンバ(34,35)が少なくとも1つの流路(36)を介して油圧的に相互に接続している整形外科用関節において、
前記プレテンション装置(40)が支材(41)を介して前記旋回ピストン(33)に直接的に結合されていることを特徴とする関節。
【請求項2】
前記支材(41)が、旋回可能に前記旋回ピストン(33)内に、又はこれに接して取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の関節。
【請求項3】
前記支材(41)が座屈に対して安定であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の関節。
【請求項4】
前記支材(41)が、前記プレテンション装置(40)からの引張力及び/又は押圧力を、前記旋回ピストン(33)に伝達することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の関節。
【請求項5】
前記支材(41)が油圧流体内に案内されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の関節。
【請求項6】
前記プレテンション装置(40)がばね(42)を有し、前記ばね(42)の上に、又はこれに接して前記支材(41)が取り付けられていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の関節。
【請求項7】
前記支材(41)が、前記ばね(42)と前記支材(41)との間に配置されている滑動体(43)の上に、又はこれに接して取り付けられていることを特徴とする、請求項6に記載の関節。
【請求項8】
前記滑動体(43)が、前記チャンバ(32)と流体連通しているブッシュ(50)内に案内されていることを特徴とする、請求項7に記載の関節。
【請求項9】
前記滑動体(43)の中に、又はこれに接して、油圧流体用の少なくとも1つの凹部及び/又は通路(431)が配置されていることを特徴とする、請求項7又は8に記載の関節。
【請求項10】
凹部(331)が前記旋回ピストン(33)内に形成されており、前記凹部(331)の中に前記支材(41)が受容されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の関節。
【請求項11】
前記支材(41)がS字型の形状を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の関節。
【請求項12】
前記旋回ピストン(33)における前記支材(41)との結合点(38)が、前記旋回ピストン(33)の最大伸展位置と最大屈曲位置において、前記旋回軸(12)に対して反対側にあることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の関節。
【請求項13】
前記流路(36)が前記ハウジング(31)内に形成されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の関節。
【請求項14】
スロットル(37)が前記流路(36)配置されていることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の関節。
【請求項15】
前記関節が義肢又は矯正器具に適しており、特に義肢用継手又は矯正器具用継手、特に義足膝継手として設計されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の関節。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部分と、上部分に旋回軸を中心に旋回可能に支持される下部分と、回転油圧装置と、下部分に対する上部分の旋回動作を補助するプレテンション装置とを有する整形外科用関節に関し、回転油圧装置は、チャンバとその中に旋回可能に支持される旋回ピストンとを備える旋回ハウジングを有し、旋回ピストンは、チャンバを屈曲チャンバと伸展チャンバとに分割し、これらは少なくとも1つの流路を介して油圧的に相互に接続している。
【背景技術】
【0002】
矯正器具または外部人工装具のような整形外科装置用の整形外科用関節は、上部分を下部分と柔軟に接続するために用いられる。上部分と下部分との間には旋回軸が形成され、これは単軸継手の場合は上部分および下部分に固定的に割り当てられているが、多軸継手の場合は、旋回軸は上部分または下部分に対して相対的に旋回角度に渡って可変である。
【0003】
独国実用新案第29723632号からは、コンピュータ制御される義肢用の油圧抵抗装置が公知であり、これは大腿断端用の義肢ソケットと、抵抗装置を有する膝制御構造と、下腿チューブと、義足の足部とを備える。膝ブラケットの形の上部分がロータ軸を有し、これに羽根が配置されている。膝ブラケットは羽根と共にロータ軸を介してフレームに対して相対的に移動し、このフレームは下部分を成しており、下肢チューブ用の受容部を有する。フレーム内にはハウジングが形成されており、この中で回転油圧機構が形成されるように羽根が旋回される。スロットルおよびバルブが配置されている接続路を介して、回転の際に油圧流体が伸展チャンバから屈曲チャンバへ導かれ、またその逆が行われる。流体の流路には、ピストンおよびばねが配置されているチャンバが配置されており、義足の膝継手の完全な伸展が保証される。
【0004】
欧州特許第1736121号は、継手ユニットと、足部接続ユニットと、両部品を接続するチューブとを有する油圧式膝継手に関し、継手ユニットはダンパチャンバとその中で可動であるダンパウィングとを有する回転軸を含み、これは油圧制御装置により制御される。足部接続ユニットは、制御線を介して中央バルブユニットと接続されている。足部接続ユニットの圧点を介して、圧力チャンバが制御線を作動させ、中央バルブユニットが起動される。膝継手を曲げた後に、簡単に伸ばすことができるように、伸長チャンバは別の油圧流路を介して油圧ばね機構と接続しており、これはダンパチャンバからの循環オイルにより作動されて、屈曲の際に保存されたエネルギーを逆の動作のために再び解放する。ばね機構は、油圧流体に圧力を加えるピストンに作用する。
【0005】
米国特許第7066964号は、回転油圧機構を有する義足膝継手に関する。上部分内のハウジングの中で、多軸膝継手の前方リンクを介して回転ピストンが旋回される。前進部材が、ばね荷重を受けるレバー機構を介して補助され、後方のリンクに作用する。
【0006】
独国特許第19506426号は、義足用の制動膝関節に関し、これは関節上部分と、関節下部分と、関節部分の1つと回転不能に接続される関節軸と、関節中間部分を形成する揺動レバーとを有し、揺動レバーは、伸展側の端部で、関節軸に対して平行、腹側、および末端に位置する揺動軸に固定されており、屈曲側の端部で関節軸を囲む。制動装置は、足に作用する荷重によって制御される。制動膝関節内部には、回転油圧機構が配置されており、オイル導管が弁ピストンを介して完全に、または部分的に閉鎖可能である。前進部材として用いられる連接棒が、一方の端部で関節上部分に、他方の端部では、関節下部分内に配置され、前進ばねによって付勢されるばね締付部材に枢着される。
【0007】
従来技術による装置において問題となるのは、伸展補助装置は高度な保守管理が必要であり、衣服が挟まる可能性があり、また汚れにより摩耗や、場合によっては異音が生じる傾向があることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国実用新案第29723632号明細書
【文献】欧州特許第1736121号明細書
【文献】米国特許第7066964号明細書
【文献】独国特許第19506426号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明の課題は、摩耗が最小限に抑えられ、確実な取り扱いが保証される、従来技術に比べて容易な構造を提供することである。
【0010】
本発明により、この課題は主請求項の特徴を有する整形外科用関節により解決される。本発明の有利な実施形態および発展形態は、従属請求項、明細書ならびに図面に開示される。
【0011】
本発明に係る整形外科用関節、例えば義肢または矯正器具は、上部分と、上部分に旋回軸を中心に旋回可能に支持される下部分と、回転油圧装置と、下部分に対する上部分の旋回動作を補助するプレテンション装置とを有し、回転油圧装置は、チャンバとその中に旋回可能に支持される旋回ピストンとを備えるハウジングを有し、旋回ピストンは、チャンバを屈曲チャンバと伸展チャンバとに分割し、これらは少なくとも1つの流路を介して油圧的に相互に接続しており、この整形外科用関節は、プレテンション装置が支材を介して旋回ピストンに直接的に結合されていることを意図している。特に前進動作または伸展を補助するため、支材と旋回ピストンとの直接的な結合により、補助力は旋回ピストンに直接作用し、ピストン自体は上部分または下部分と回転不能に接続されている。旋回ピストンへの力の伝達により、それぞれ意図される旋回動作が補助される。支材が機械的固定部品として旋回ピストンに配置されることによって、支材の少なくとも一部が油圧流体内にもたらされており、これによりプレテンション装置が空気に触れることが回避される。プレテンション力を旋回ピストンに伝達する支材は、油圧機構のウェット領域内にあり、これにより回転油圧機構の外部に配置される前進部材、または油圧機構の外部に配置される動力伝達要素が不要になる。油圧機構内を通されることにより、音の発生が回避、または少なくとも低減される。油圧流体が水との接触を防御し、同時にさらに潤滑を保証するため、通常は油圧オイルである油圧流体内にプレテンション装置または前進装置が配置されることによって摩耗が最小限に抑えられる。
【0012】
本発明の発展形態では、支材が、旋回ピストン内に、またはこれに接して旋回可能に支持され、これによって下部分に対する旋回軸を中心とする上部分の大きな屈曲角度が達成される。押圧力の伝達のためには、支材が耐座屈性を備えて形成されていることが好ましく、支材はプレテンション装置からの押圧力のみを旋回ピストンに伝達するのではなく、本発明の変形例では引張力も吸収することができる。プレテンション装置の構成によっては、プレテンション装置が引張ばねを有する場合は、支材を介して引張力のみが旋回ピストンに伝達されることも可能である。
【0013】
好適には支材は完全に油圧流体内にもたらされており、これにより継手の取付スペースが最適に利用される。プレテンション装置は、ばねを有することが可能であり、この上に、またはこれに接して支材が支持されている。ばねは、特にコイルばねまたは巻きばねとして形成されており、これも油圧流体内に支持されていることが可能である。滑動体の配置により、ばね上での支材の最適な支持を達成することができ、これによりばね特性が支持部の特性とは無関係に設定されることが可能である。これによって例えば、巻きばねまたはコイルばねが使用可能であり、ばね端部に滑動体が設置され、そこに支材が、力を伝達させるように、特に押圧力を伝達するように、支持されることが可能である。同様に、ばねがエラストマ要素またはカプセル状にされたエアクッションとして形成されていることも可能であり、これにより滑動体による圧力分配が向上する。エラストマ要素または圧力クッションの場合には、油圧流体またはオイルが例えば調整容器へ排出されることができ、これによりチャンバ内でプレテンション装置による流体の圧力上昇が生じないように、油圧機構が構成される。
【0014】
本発明の変形例では、滑動体をブッシュ、特に直線状のブッシュ内に通すことが意図されている。ブッシュは、ハウジングまたは上部分ないしは下部分内にねじ締めまたはその他の方法でそこに挿入または固定されることができる。ブッシュは、チャンバと流体工学的に接続しており、油圧システムの一部を成している。これにより、プレテンション装置のばねも、滑動体および支材も油圧流体内にあり、これによりプレテンション装置および旋回動作補助のための装置の全ての可動部品が油圧流体内に支持されている。これによって、全体的に滑動体の摩耗も、また異音の発生も低減する。さらに、プレテンション装置および支材を旋回ピストンに直接的に接続することによって、部品の数も最低限に抑えられる。個別の支持位置が不要になり、個別に潤滑またはコストのかかるすべり軸受も不要になる。
【0015】
旋回ピストンが動かされる際に、旋回ピストンがあるチャンバから、滑動体が出入りさせられる空間へ油圧流体が到達することができるように、滑動体内には、油圧流体用の少なくとも1つの凹部および/または通路が配置または形成されていることが可能である。少なくとも1つの凹部および/または減衰部は、特段の減衰が生じないような大きさになっている。滑動体の流動抵抗により生じる減衰は操作不能で回転ピストンの旋回動作に対して作用するため、根本的に望ましいものではない。好適には、減衰が最小限で微小であるように滑動体が構成される。
【0016】
好適には、プレテンション装置による流体への力の伝達はほとんどなく、完全にまたはほぼ支材を介してのみ旋回ピストンに作用するようにプレテンション装置は構成される。これにより油圧効率とプレテンション装置による旋回動作の操作が分けられるため、継手の調節の際に相互作用に留意する必要がない。
【0017】
旋回ピストン内には、支材を受ける凹部が形成されることができる。旋回ピストン内の凹部により、支材は旋回時に先端位置へと旋回ピストンの形状内へ進入することができるため旋回角度がさらに拡大される。凹部は、貫通するようには形成されておらず、これにより旋回ピストンは依然として伸展チャンバと屈曲チャンバとを隔てている。
【0018】
旋回ピストンの終端位置が可能な限り相互に離間して継手の屈曲を最大限にできるようにするため、支材はS字型の形状を有することができる。凹部を有する旋回ピストン、および支材がS字型の形状である構成によって、150度を超える曲げ角度が実現可能になる。
【0019】
本発明の一変形例では、旋回ピストンの支材との結合点は、旋回ピストンの各終端位置で旋回軸の異なる側にあることになっており、これによりプレテンション装置によるいずれかの終端位置への支材のプレテンションの際に各終端位置の固定が行われ、これによって例えば最大屈曲位置または最大伸展位置から伸展または屈曲へ至るために、強めの力が必要になる。
【0020】
伸展チャンバから屈曲チャンバへ、またその逆の容積輸送を可能にするために、チャンバ間に流路が配置されており、旋回ピストンが動かされると、これを通り油圧流体が流れることができる。流路は好適には、旋回ピストンが支持されているチャンバも中に形成されているハウジングに形成される。流路は、個別の導管として形成されていることも可能である。流路には、好適に設定可能なスロットルが配置されていることができ、これを介して継手装置の旋回抵抗が、油圧抵抗の調節により変更されることができる。スロットルは持続的な抵抗を提供することが可能であるが、適切な油圧構成によって、伸展方向および屈曲方向に異なる抵抗を設けることも可能である。同様に、バイパス弁により旋回動作が一方向へほぼ油圧抵抗なく実行されることも可能である。同様に、センサ装置および制御装置、ならびに調節装置を介して、コンピュータ制御される膝継手を上述のプレテンション装置と結合することも可能である。
【0021】
整形外科用関節は、特に義肢または矯正器具に適しているが、特に義肢継手または矯正器具継手として形成されており、本発明の実施形態では義足の膝継手として形成されている。
【0022】
添付の図面に基づき、本発明の実施例を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】義足膝継手の形の人工関節の側面図である。
図2図1の義足膝継手の部分断面図である。
図3】最大伸展位置における詳細図である。
図4図3の最大屈曲位置における詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、外部人工装具の膝継手1の形で、整形外科用関節の側面図が示され、これはピラミッドアダプタの形で上部接続手段11を備える上部分10を有する。上部接続手段11には、大腿断端を受けるための義足シャフトが固定可能である。上部分10は、旋回軸12を中心に
下部分20に支持されており、下部分の遠位端には下腿チューブ用の受容部21が形成されている。下部分20内にはハウジング31が形成、または配置されており、この中に回転油圧機構が収容されている。下部分20内には、回転油圧機構の別の構成部品が配置されることができ、図2との関連で説明される。
【0025】
図2は、図1の義足膝継手1の一部を断面図で示しており、これは、中にチャンバ32が形成されているハウジング30を有し、チャンバ内には旋回ピストン33が旋回軸12を中心に旋回可能に支持されている。義足膝継手1は単軸膝継手として構成されており、旋回ピストン33は上部分10と回転不能に接続されている。図2に示される位置では、旋回ピストン33は伸展終端位置にあり、義足膝継手が最大伸展状態に達している。図示されている実施例では、伸展ストッパが上部分内の外部緩衝器により実現されており、極限位置において生じる力は油圧機構部品に伝達される。端部ストッパに生じ得る大きさの機械的な力に対応させて旋回ピストンを設計する必要がないように、関節内の端部ストッパは旋回ピストン33を介しては形成されない。旋回ピストン33は、チャンバ20を伸展チャンバ35と屈曲チャンバ34とに分割する。上部分10が下部分20に対して屈曲方向に旋回されると、旋回ピストン30は上部分10に回転不能に結合されているため、旋回ピストン33は反時計回りにチャンバ32内で旋回される。チャンバ32内にある油圧流体は、屈曲チャンバから流路36を通りハウジング30へ、そしてスロットル装置37を通り伸展チャンバ35へ移動する。スロットル37は、調節可能または設定可能に形成されていることができる。調節は、センサに基づくコンピュータ制御によって行われることが可能である。あるいは、スロットル37は、長期的に各使用者用に設定されることができる。調節の際は、外部からスロットル37が手動で長期的に調節されることが可能である。
【0026】
旋回ピストン33には、S字型の棒の形で支材41が直接的に支持される。支材41は、旋回ピストン側で結合点38を有する。結合点38は、支材41が結合点38を中心に旋回可能であるように形成される。これにより、屈曲動作の際、すなわち旋回ピストン33の反時計回りの旋回時に、結合点38が円弧動作を行うと、支材41が結合点38へ移行することが可能になる。結合点38における支持は、押圧力および引張力を伝達するように形成されていることが可能である。
【0027】
支材41の他方の丸い端部は、滑動体43に支持されており、これは、旋回ピストン33とは反対側の支材41の端部が挿入されているくぼみを有する。ここでもまた、旋回ピストン33の旋回時に生じる支材41の旋回動作を滑動体側の支持点39でも実行することができるように、滑動体43上の支持点39における回転動作が可能である。
【0028】
滑動体43は、ハウジング30内にねじ締めされているブッシュ50内に案内されている。ブッシュ50内にはコイルばね42が配置されており、これによってばね42と滑動体43と支材41との組み合わせからプレテンション装置40ができ、これを介して、圧縮されたばね42からの押圧力が直接的に旋回ピストン33に伝達されることが可能である。
【0029】
旋回ピストン33が図示される位置にある場合には、滑動体43はチャンバ32へ進入している。
【0030】
図3では、図2の状態が部分的に示されている。滑動体43の外側には、例えば溝の形で通路、凹部または流路431が形成されており、ここを通り油圧流体がチャンバ32からブッシュ50内に出入りできる。これによって、ブッシュ50もチャンバ32も、また接続流路36も油圧流体で満たされている。ばね42、滑動体43、そして支材41も油圧流体内にあり、これにより油圧流体は同時に潤滑機能、防音機能、ならびにプレテンション装置40の可動部品を外部からの影響から保護する機能を担う。滑動体43は、旋回動作に対して油圧抵抗がない、またはほぼないように、通路431を有して構成されている。
【0031】
図3では、旋回ピストン33が凹部331を有することが見てとれる。この凹部は、支材41の支持領域内で旋回ピストン33に形成されている。凹部331は溝として形成されていることができ、旋回ピストン33の幅全体に渡っては延伸していない。凹部331は主に、最大屈曲位置において、支材41がチャンバ内壁32と衝突することを回避するために用いられ、これにより最大限の大きさの旋回角度が達成される。溝状の凹部331は、旋回ピストン33の高さ全体に渡って延伸しておらず、また幅は支材41がその中で動くことができるだけの幅のみであることが好ましい。支持点38はピストンにおける偏心的な配置であるにもかかわらず、凹部331によって、支材31が旋回軸12に可能な限り近づくことができるようになり、これによって取付スペースが小さくできる。凹部331は、旋回ピストン33のチャンバ壁32に向いた先端から、対向する、旋回ピストン33の旋回軸12とは反対側の下端領域まで延伸する。
【0032】
上部分10が屈曲される際に旋回ピストン33が反時計回りに回転すると、支材41の結合点38は旋回ピストン33と共に旋回軸12を中心とする円軌道を移動する。その際結合点38、よって支材41も、下方の支持点39を中心に、横方向に最大限振り出されるまで、反時計回りに旋回する。さらなる反時計回りの回転の際には、結合点38は旋回軸の下方で旋回し、その際結合点38の円運動により支材41が金属または頑強な合成物質からなる押圧力伝達部品として、同様に下方への動作を行い、これにより、滑動体43はばね42のばね張力に反してブッシュ50へ押し込まれる。結合点38が垂直に、旋回軸12の下方にある場合、滑動体43は最大限ブッシュ50内へ押し込まれる。
【0033】
図4には膝関節1のほぼ最大に屈曲された位置が示されており、伸展チャンバ35はほぼ最大の容積を有する一方で、屈曲チャンバ34はほぼ最小の容積を有する。結合点38は旋回軸12の右側、すなわち図3に示す最大伸展位置と比較すると旋回軸12の反対側にある。支材41のS字型の形状および旋回ピストン33の凹部331により、旋回ピストン33が旋回軸12を中心にほぼ180度旋回することが可能である。ばね42は、予荷重を受けた状態にある。旋回軸12の右側の位置によって、ばね42は滑動体43および支材41を介してピストン43をさらに屈曲位置へ押す。このような旋回ピストン33の反時計回りの回転を力の作用線が補助しているためである。関節1が再び伸展されると、結合点38が、回転軸12を通る垂線を超えて移動されてからのみ、伸展補助が行われる。ばね42の解放により生じる旋回ピストン33に直接支持される支材41の押圧力は、伸展補助をもたらし、この義足膝継手の場合は下部分20の前進動作がもたらされる。
【0034】
基本的には、このような関節装置またはこのような関節1を矯正器具に組み込むことも可能である。また、その他の箇所の関節、例えばひじ関節に応用することも可能である。ばね42ならびに支材41の結合の方向に応じて、伸展補助の代わりに、プレテンション装置40の適切な配置によって屈曲補助が行われることも可能である。
【0035】
ばね42により常時作用している予荷重によって、上方の結合点38および下方の支持点39における支材41の支持は、張力を伝達する形でなくてよい。基本的には、例えばスルーアクスルにより支材41が回転ピストン33に旋回可能に張力および押圧力を伝達するように支持されることも可能である。これはまた、滑動体43への支持に関しても該当する。
【0036】
ブッシュ50は、直線的な構成以外にも、湾曲した構成にされてもよい。コイルばね42の代わりに、異なるばね装置または動力蓄積装置、例えば皿ばね、螺旋皿ばね、または類似物が設けられることができる。ブッシュ50は、下部分20内にある。ブッシュ50は、ハウジング内にねじ締めされることが可能であり、これによりプレテンション装置40の容易な取付が可能になる。これによって、異なるばね42を設置する、または継手装置に後からプレテンション装置40を装備することも可能である。プレテンション装置40がない場合は、チャンバ32への出入り口は単に栓で閉鎖される。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 上部分(10)と、前記上部分に旋回軸(12)を中心に旋回可能に支持される下部分(20)と、回転油圧装置(30)と、前記下部分(20)に対する前記上部分(10)の旋回動作を補助するプレテンション装置(40)とを有し、
前記回転油圧装置が、チャンバ(32)と、前記チャンバ(32)の中に旋回可能に支持される旋回ピストン(33)とを備えるハウジング(31)を有し、
前記旋回ピストンが、前記チャンバ(32)を屈曲チャンバ(34)と伸展チャンバ(35)とに分割し、これらが少なくとも1つの流路(36)を介して油圧的に相互に接続している整形外科用関節において、
前記プレテンション装置(40)が支材(41)を介して前記旋回ピストン(33)に直接的に結合されていることを特徴とする関節。
[2] 前記支材(41)が、旋回可能に前記旋回ピストン(33)内に、又はこれに接して取り付けられていることを特徴とする、[1]に記載の関節。
[3] 前記支材(41)が耐座屈性を備えるように設計されていることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の関節。
[4] 前記支材(41)が、前記プレテンション装置(40)からの引張力及び/又は押圧力を、前記旋回ピストン(33)に伝達することを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一項に記載の関節。
[5] 前記支材(41)が油圧流体内に案内されていることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載の関節。
[6] 前記プレテンション装置(40)がばね(42)を有し、前記プレテンション装置(40)の上に、又はこれに接して前記支材(41)が支持されていることを特徴とする、[1]から[5]のいずれか一項に記載の関節。
[7] 前記支材(41)が、前記ばね(42)と前記支材(41)との間に配置されている滑動体(43)の上に、又はこれに接して支持されていることを特徴とする、[6]に記載の関節。
[8] 前記滑動体(43)が、前記チャンバ(32)と流体工学的に接続しているブッシュ(50)内に案内されていることを特徴とする、[7]に記載の関節。
[9] 前記滑動体(43)の中に、又はこれに接して、油圧流体用の少なくとも1つの凹部及び/又は通路(431)が配置されていることを特徴とする、[7]又は[8]に記載の関節。
[10] 凹部(331)が前記旋回ピストン(33)内に形成されており、前記凹部(331)の中に前記支材(41)が受けられていることを特徴とする、[1]から[9]のいずれか一項に記載の関節。
[11] 前記支材(41)がS字型の形状を有することを特徴とする、[1]から[10]のいずれか一項に記載の関節。
[12] 前記旋回ピストン(33)における前記支材(41)との結合点(38)が、前記旋回ピストン(33)の複数の終端位置で、前記旋回軸(12)のそれぞれ異なる側にあることを特徴とする、[1]から[11]のいずれか一項に記載の関節。
[13] 前記流路(36)が前記ハウジング(31)内に形成されていることを特徴とする、[1]から[12]のいずれか一項に記載の関節。
[14] スロットル(37)が前記流路(36)内に配置されていることを特徴とする、[1]から[13]のいずれか一項に記載の関節。
[15] 前記関節が義肢又は矯正器具に適しており、特に義肢用継手又は矯正器具用継手、特に義足膝継手として設計されていることを特徴とする、[1]から[14]のいずれか一項に記載の関節。
図1
図2
図3
図4