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特許7113904多結晶セラミック固体、及び、多結晶セラミック固体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】多結晶セラミック固体、及び、多結晶セラミック固体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/499 20060101AFI20220729BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C04B35/499
C04B41/88 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020546143
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2018056263
(87)【国際公開番号】W WO2019174719
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァインツガー, マンフレッド
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102757232(CN,A)
【文献】特開平03-243913(JP,A)
【文献】特開平06-283378(JP,A)
【文献】特公昭61-028619(JP,B2)
【文献】特開平04-032213(JP,A)
【文献】特開平02-094579(JP,A)
【文献】国際公開第00/026924(WO,A1)
【文献】Effect of Composition on the Electromechanical Properties of (1-x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3xPbTiO3 Ceramics,Journal of the American Ceramic Society,1997年,80 [4],P957-964
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/499
C04B 41/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶セラミック固体であって、
・以下の一般式の組成を有する主相と、
(1-y)Pba(MgbNbc)O3-e + yPbaTidO3
ここで、
0.055≦y≦0.065;
0.95≦a≦1.02;
0.29≦b≦0.36;
0.63≦c<0.66;
0.9≦d≦1.1;
0≦e≦0.1;
・任意に1つ以上の副相と、
を含み、前記固体の各断面において、前記固体の任意の断面積に対する前記副相の面積比は0.5パーセント以下であるか、又は、前記固体は副相を含まない多結晶セラミック固体。
【請求項2】
前記固体の各断面において、前記固体の任意の断面積に対する前記副相の面積比は0.3パーセント以下である、請求項1に記載の多結晶セラミック固体。
【請求項3】
前記主相は、静的な画像分析を通じて数平均中央値として測定される中央粒径d50が4~9μmである粒から形成されている、請求項1又は2に記載の多結晶セラミック固体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の固体と、更に前記固体上に設けられた電気的接触部と、を備える電極。
【請求項5】
多結晶セラミック固体の製造方法であって、前記多結晶セラミック固体は、
・以下の一般式の組成を有する主相と、
(1-y)Pba(MgbNbc)O3-e + yPbaTidO3
ここで、
0.055≦y≦0.065;
0.95≦a≦1.02;
0.29≦b≦0.36;
0.63≦c<0.66;
0.9≦d≦1.1;
0≦e≦0.1;
・任意に1つ以上の副相と、
を含み、前記固体の各断面において、前記固体の任意の断面積に対する前記副相の面積比は0.5パーセント以下であり、又は、前記固体は副相を含まない方法であって、
A)元素Mg、Nb、Ti及びPbを含む出発物質を準備するステップ
B)前記出発物質を含む混合物を生産するステップ
C)焼成混合物を生産するために、前記混合物を焼成するステップ
E)前記焼成混合物を、グリーンボディに加工するステップ
F)前記グリーンボディを焼結するステップ
を含方法。
【請求項6】
ステップA)において、全てのPb非含有出発物質が互いに化学量論比で準備される一方、Pb含有出発物質は過剰に添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップA)において、Mg1/3Nb2/3O2である第1の出発物質が準備される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
ステップA)において、TiO2である第2の出発物質が準備される、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップA)において、PbO又はPb3O4である第3の出発物質が準備される、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップB)における前記出発物質の前記混合は湿式粉砕によって行われる、請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップC)における前記焼成は、800~860℃の温度で実行される、請求項5~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
TiO2及び/又はNb2O5が前記焼成混合物に添加されるステップD)を含み、添加されたTiO2及び/又はNb2O5の前記焼成混合物の重量に対する比率は、0.01~0.4重量パーセントである、請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップE)が
・前記焼成混合物を粉砕するステップ
・前記焼成混合物をバインダと混合するステップ
・セラミック粒子を生産するために、前記焼成混合物をバインダと共に噴霧乾燥させるステップ
・前記グリーンボディを生産するために、前記セラミック粒子をプレスするステップ
を含む、請求項5~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップF)は、1150~1280℃の温度で実行される、請求項5~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
鉛含有量を制御するために、閉鎖容器内でステップF)が行われ、前記閉鎖容器(1,2)は、その内部に1つ以上のグリーンボディが配置された内部空間(3)を備え、その結果、全てのグリーンボディの前記内部空間(3)の容積に対する容積充填度は、少なくとも30Vol.%である、請求項5~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記閉鎖容器は、Al2O3、ZrO2及びMgOから成る群から選択された材料のうちの少なくとも1つを含むか又は当該材料から成る、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記閉鎖容器の前記内部空間(3)内の全てのグリーンボディの前記内部空間(3)の容積に対する容積充填度は、少なくとも40Vol.%である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
請求項5~17のいずれか1項に記載の多結晶セラミック固体の製造方法と、それに続く前記固体に電気的接触部を設けるためのステップと、を含む、請求項4に記載の電極の製造方法。
【請求項19】
前記電気的接触部は、ペーストを塗布し焼き付けることによって生じ、前記焼き付けは、680~760℃の温度において実行される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶セラミック固体に関する。更に、本発明は、当該セラミック固体を含む電極に関する。最後に、本発明は、セラミック固体及び当該固体を含む電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、多数のセラミック電極材料が公知である。電極での使用に適していると共に、電極の効率及びパワーロスに関して改善された特性を示す材料への高いニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の課題は、電極での使用に適した新しい材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1による材料によって解決される。それによれば、本発明は、第1の態様によれば、
・以下の一般式の組成を有する主相と、
(1-y)Pba(MgbNbc)O3-e+ yPbaTidO3
ここで、
0.055≦y≦0.065;
0.95≦a≦1.02;
0.29≦b≦0.36;
0.63≦c≦0.69;
0.9≦d≦1.1;
0≦e≦0.1;
・任意に1つ以上の副相と、
を含み、前記固体の各断面において、前記固体の任意の断面積に対する前記副相の面積比は0.5パーセント以下であり、又は、前記固体は副相を含まない多結晶セラミック固体に関する。
【0005】
多結晶固体は、ここでは、以下において粒(Koerner)とも称される結晶子を含む結晶質の固体と解釈されるべきである。結晶子は、粒界によって互いに分離されている。要するに、固体は、主相の材料を含むか又はそれから成る粒を含む。固体は、特に、焼結されている。
【0006】
固体は、以下の一般式を有する主相を含む。
(1-y)Pba(MgbNbc)O3-e+ yPbaTidO3
これは、ここでは単相系である。マグネシウムニオブ酸鉛成分Pba(MgbNbc)O3-e、及び、チタン酸鉛成分PbaTidO3は、したがって、共に安定した溶液、すなわち多結晶セラミック固体の主相である単一の相を形成する。主相は、ペロブスカイト構造によって特徴付けられている。
【0007】
多結晶セラミック固体は、主相とは異なる1つ以上の別の相を含むことができ、当該相は以下において副相と称される。固体が小さな割合の副相しか含まないか又は全く副相を含まないことが、本発明の中心的な特徴である。したがって、固体の任意の断面において、全ての副相の面積比は、合算して、固体の断面積に対して0.5パーセント以下である。
【0008】
固体が副相を含まないと有利である。この場合、固体は主相のみを含み、副相は含まない。特に、固体は主相から成ることができる。
【0009】
副相は、原則として、その組成において主相とは異なる独立したあらゆる相と解釈されるべきである。理論によって制約されることなく、副相は、例えばMg2/3Nb1/3O3相のような、Mgリッチな、主相の組成とは異なる組成であることができる。Mgリッチな副相においては、主相とは異なり、Mg含有量が増大されている。例えば、Mgリッチな副相は、同時にPbプーアであり得る、すなわち、主相と比較してPbの含有量が少ない可能性がある。
【0010】
しかしながら、副相は、Pbリッチな副相、すなわち、主相と比較してPb含有量が増大された副相であり得る。
【0011】
副相は、その元素組成において主相とは異なっているので、固体の断面積に対する副相の面積比を、元素マップによって定量化することが可能である。そのような元素マップは、REM-EDX測定によって得ることができる(REM:走査電子顕微鏡法;EDX:エネルギー分散X線分光法)。
【0012】
本発明による多結晶セラミック固体は、高い機械的安定性によって特徴付けられている。この材料から成形された、例えば電極のような部材は、したがって、堅牢であり且つ安定している。
【0013】
それに加えて、本発明による固体は、高い絶縁破壊電圧を有する。そのようなことは、電極材料としての安全な使用にとって重要である。
【0014】
本発明による固体は、特に、その高い誘電率及び静電容量の故に、電極材料としての使用に適している。
【0015】
主相の上述した組成は、20~45℃、特に30~42℃の温度範囲における予期せぬ高い静電容量を可能とする。この範囲における高い静電容量は、一連のセラミック電極における使用にとって特に好都合である。静電容量最大値は、例えば、以下の式におけるチタン酸鉛の比yによって可変に調整することができる。
(1-y)Pba(MgbNbc)O3-e+ yPbaTidO3
0.055≦y≦0.065の範囲のyを選択することにより、哺乳動物の体温の範囲において静電容量が最大値に達するセラミック固体を入手することができる。
【0016】
発明者らは、y含有量を利用することにより、静電容量を、電極が作動するそれぞれの温度に適合させることができることに気付いた。そのようにして、それぞれ所望の作動温度について最大の静電容量を設定することが可能である。
【0017】
0.055≦y≦0.065の固体は、20~45℃の温度範囲で作動する電極に適している。0.055~0.065のy含有量は、とりわけ、30~42℃の温度範囲、例えば35℃及び40℃(例えば37℃)の温度において、特に有利である。この組成の固体をベースとする電極は、上述した温度範囲において非常に高い静電容量を備えるだけでなく、同時に、非常に小さな損失係数及び小さな自己発熱を備えている。
【0018】
本発明による多結晶セラミック固体は、付加的に、副相を含まないか又は非常に僅かな比率でしか含まない点で、従来のセラミック固体と異なっている。本発明の発明者らは、同等の化学組成の主相を含む従来の方法で製造されたセラミック固体中に、明確な比率の副相が存在することを観察した。
【0019】
更に、これらの副相が固体の静電容量を低下させることが、本発明の発明者らによって実験で確認された。しかしながら、高い静電容量は、まさに電極での使用において好ましい。
【0020】
それに加えて、本発明の発明者らは、従来のセラミック固体中に存在する副相が、高い静電容量のセラミック電極での使用において、より劣悪なパワーロスをもたらすことを、実験的に観察することができた。これは、より高いエネルギー損失、及びしたがってより低い効率をもたらす。
【0021】
より高い電気的な損失及び熱の形態でのその放出は、更に固体の自己発熱をもたらす。そのような自己発熱は、望ましくない。それは廃熱の形態でのエネルギー損失の結果であり、低い効率を示唆する。それに加えて、自己発熱は、熱が、電極の周囲において損傷を引き起こすか、又は、触れた際に不快に感じられる可能性があるという理由でも、望ましくない。
【0022】
副相の比率を0.5パーセント以下(固体の任意の断面面積に対する面積比)に設定することにより、本発明の発明者らは、誘電率及び静電容量を高めることに成功した。パワーロスの改善も達成することができ、これにより、セラミック電極での使用における効率が改善され、望ましくない自己発熱が低減した。
【0023】
これらの有利な効果は、固体における副相の比率が小さいほど、より顕著となる。
【0024】
更に、本発明の発明者らは、副相の比率が注目に値するものとなることを回避することにより、セラミック固体の視覚的な外観も変化し得ることを、観察することができた。そのようにして、従来のセラミック固体に類似した組成は、しばしば黄色がかった色調によって特徴付けられる。それに対して、本発明によるセラミック固体は、それに匹敵する黄色い色調を有していない。
【0025】
固体における副相の比率が小さいほど、黄色がかった色の比率も小さくなる。黄色がかった色調は、要するに、副相の存在を反映している。それに対して、本発明によるセラミック固体は、淡いベージュ色の色調によって特徴付けられる。
【0026】
本発明による多結晶セラミック固体の一実施形態によれば、固体の各断面において、固体の任意の断面積に対する副相の面積比は、0.3パーセント以下、有利には0.1パーセント以下、更に有利には0.05パーセント以下、特に有利には0.01パーセント以下である。多結晶セラミック固体が副相を含まないと、最も有利である。
【0027】
固体における副相の比率が小さいほど、誘電率及び静電容量は高く、パワーロスは小さくなる。したがって、副相のより小さな比率は、より小さな自己発熱をももたらす。それに加えて、副相の比率の減少に伴って、セラミック固体の黄色がかった色調も減少する。
【0028】
一実施形態によれば、固体は、例えば安定な立方晶系のパイロクロア相Pb3Nb4O13のようなパイロクロアを含まない。パイロクロア相は、特に、遊離したNb2O5が焼結の際に存在し、又は、PbOの不足が支配的である場合に、出現する。
【0029】
一実施形態によれば、本発明の固体は、Mgリッチ及び/又はNbリッチな副相を含まず、特にMgリッチな副相を含まない。例えば、固体は、正確な式に関して理論によって制約されることなく、Mg2/3Nb1/3O3相を含まない。そのような副相は、とりわけ、なかんずく焼結の際にPbOのガス放出によって生じ得る、焼結中のPbの不足の際に生成される可能性がある。
【0030】
別の実施形態によれば、本発明による固体は、Pbリッチな副相を含まない。発明者らは、Pbの不足のみならず過剰も、望ましくない副相の形成をもたらす可能性があることに気付いた。Pbリッチな副相も、前述した他の副相も、静電容量の低下をもたらす。
【0031】
一実施形態は、本発明による固体に関し、その際、以下の式が成り立つ:0.057≦y≦0.063、例えばy=0.06。
【0032】
別の実施形態は、本発明による固体に関し、その際、係数aについて以下の式が成り立つ:0.96≦a≦1.02、有利には0.97≦a≦1.01、更に有利には0.97≦a≦1.00、最も有利にはa=1.0。
【0033】
一実施形態は、本発明による固体に関し、その際、係数bについて以下の式が成り立つ:0.31≦b≦0.36。有利には、bについて以下の式が成り立つ:0.33≦b≦0.35。
【0034】
一実施形態は、本発明による固体に関し、その際、係数cについて以下の式が成り立つ:0.63≦c≦0.68。有利には、cについて以下の式が成り立つ:0.64≦c≦0.66。cが0.68より小さい、特に0.66より小さい場合、本発明によるセラミック固体が含むNg含有量は、増大されておらず僅かに低下しており、これは、パイロクロア相の回避に有利に作用する。
【0035】
別の実施形態は、本発明による固体に関し、その際、係数dについて以下の式が成り立つ:0.95≦d≦1.05、有利にはd=1.0。
【0036】
一実施形態は、本発明によるセラミック固体に関し、その際、係数eについて以下の式が成り立つ:0≦e≦0.09、有利には、e=0。この場合、主相の組成について、以下の一般式が成り立つ。
(1-y)Pba(MgbNbc)O3+ yPbaTidO3
【0037】
第1成分中の例えばニオビウムの原子価に応じて、成分(1-y)Pba(MgbNbc)O3の酸素含有量が、値3から、3よりも小さな値へ僅かに逸脱するという場合が生じ得る。有利には、この逸脱は0.09よりも小さい。通常は、注目に値する逸脱はなく、eは0に等しい。
【0038】
別の実施形態は、本発明による固体に関し、その際、主相は粒を含むか又は粒から成り、静的な画像分析を通じて数平均中央値として測定された当該粒の中央粒径d50は、4.0μmよりも大きく、有利には4.5μmよりも大きく、特に有利には5.0μmよりも大きい。
【0039】
例えば、静的な画像分析を通じて数平均中央値として測定された中央粒径d50は、4.0~9μm、有利には4.5~8μm、更に有利には5.0~7μm、特に有利には5.0~6.0μmの範囲にある。
【0040】
好ましくは、それぞれの粒は、静的な画像分析の際、いわゆる等価円直径(equal circle diameter (ECD))に基づく中央径によって決定される。多結晶固体の粒又は結晶子は、不規則な三次元的構造を備える。走査電子顕微鏡でのEDX/EBSD分析によって、粒の二次元投影を得ることができる(EDX/EBSDオーバーレイ画像)。この方法で、粒径は、粒の二次元投影の面積の大きさによって表現することができる。最後に述べた面積から、最終的にECDを決定することができる。このために、測定された粒の二次元投影に対応する面積を有する円の直径が算出される。本願においては、中央粒径は、したがって、面積平均によって確定される。
【0041】
より大きな中央粒直径は、固体内により大きな「ドメーネン」(Domaenen)、すなわち、その内部で電気双極子が同一の配向を有する領域をもたらし、これは、他方において、より大きな双極子モーメントの形成、及びしたがってより高い誘電率εを、固体自体にもたらす。これは、全体として多結晶セラミック固体の静電容量の増大をもたらす、共同効果である。中央粒径が大きいほど、したがって静電容量は高くなる。
【0042】
本発明の発明者らは、副相を回避するような方法を実行することにより、同時に、静的な画像分析を通じて数平均中央値として測定された中央粒径d50がより大きな多結晶セラミック固体を、得ることができることを確認した。副相の回避及びより大きな粒の生成は、要するに互いに関連しており、セラミック固体の電気的な特性を改善することを可能とする。
【0043】
一実施形態によれば、固体は細孔を備える。有利には、本発明の固体は、それにもかかわらず全体として1つの小さなポロシティを示し、したがって、電気的な特性に望ましくない態様で影響を及ぼす可能性のある湿気をさほど吸収しない傾向がある。例えば、固体の全容積に対する細孔容積は、10%よりも小さく、有利には5%よりも小さく、特に有利には2%よりも小さくすることができる。固体が細孔を含まないことも考えられる。湿気を吸収する傾向が小さいことは、食塩水中でのインピーダンス測定において、開路電圧(OCV)が得られることに反映されている。
【0044】
一実施形態によれば、固体は4~5.5g/ml、有利には4.5~5.9g/ml、例えば4.8g/mlのプレス密度を有する。
【0045】
一実施形態によれば、本発明によるセラミック固体は、インピーダンス測定の枠内において108オームより大きな直流抵抗を有する。
【0046】
一実施形態によれば、本発明による固体は、流動性の環境中において4000Vより大きな絶縁破壊電圧を有する。これにより、安全な適用が可能となる。
【0047】
一実施形態によれば、セラミック固体は、30~42℃の温度範囲において、200kHz及び1Vの下で50nFを超える、特に52nFを超える、例えば52~58nFの静電容量を有する。一実施形態によれば、セラミック固体の最大の静電容量は、30~42℃の温度範囲において、200kHz及び1Vの下で少なくとも53nF、例えば53~58nFである。
【0048】
一実施形態によれば、本発明による固体は、人間の目に見えない亀裂を有さない。本発明による組成は、良好な均質性及び安定性を有し、その結果、亀裂の形成を回避することができる。
【0049】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による多結晶セラミック固体、及び、更に当該固体の上に設けられた電気的接触部を備える電極に関する。
【0050】
電気的接触部が設けられた本発明によるセラミック固体は、電極を形成する。
【0051】
一実施形態によれば、本発明による電極は、1つの本発明によるセラミック固体と、1つの電気的接触部と、を備える。
【0052】
一実施形態によれば、電気的接触部は、貴金属、特に銀を含むか又は銀から成る。銀は、高い温度に曝された場合であっても、腐食しない傾向がある。それに加えて、銀はろう付け可能であり、且つ、良好に加工することができる。
【0053】
一実施形態によれば、電気的接触部は、セラミック固体の一方の面に強固に接続されており、35Nより大きな引張力によってのみ、セラミック固体から分離することができる。したがって、引張に対して特に安定的な、接触部を有する電極を得ることができる。
【0054】
本発明の第3の態様は、多結晶セラミック固体の製造方法であって、前記多結晶セラミック固体は、
・以下の一般式の組成を有する主相と、
(1-y)Pba(MgbNbc)O3-e+ yPbaTidO3
ここで、
0.055≦y≦0.065;
0.95≦a≦1.02;
0.29≦b≦0.36;
0.63≦c≦0.69;
0.9≦d≦1.1;
0≦e≦0.1;
・任意に1つ以上の副相と、
を含み、前記固体の各断面において、前記固体の任意の断面積に対する前記副相の面積比は0.5パーセント以下であり、又は、前記固体は副相を含まない方法であって、
A)元素Mg、Nb、Ti及びPbを含む出発物質を準備するステップ
B)前記出発物質を含む混合物を生産するステップ
C)焼成された混合物を生産するために、前記混合物を焼成するステップ
E)前記焼成された混合物を、グリーンボディに加工するステップ
F)前記グリーンボディを焼結するステップ
を含み、鉛含有量(Bleihaushalt)を制御するために、
・ステップF)が閉鎖系内で行われる、及び/又は、
・ステップA)又はステップF)に先行する他のステップにおいて、鉛を含む出発物質が過剰に添加される方法に関する。
【0055】
前記方法によって製造される多結晶セラミック固体は、特に、本発明の第1の態様による固体である。この関連において有利であるとして説明されるセラミック固体の全ての実施形態は、前記方法を考慮して、更に発展的な実施形態であるとも見なすことができる。
【0056】
本発明の意味での閉鎖系は、特に、周囲とのガス交換を許容しない、一例として例えばカプセルとして構成され得る容器のような系と、解釈されるべきである。
【0057】
本発明の方法は、鉛含有量の制御を通じて、望ましくない副相の生成を回避することを可能とする。
【0058】
それに対して、従来の方法では、焼結の際、制御されない鉛の損失が生じる。特に、鉛は、炉内での焼結の際、PbOの形態でガス放出され得る。したがって、高い焼結温度においては、グリーンボディから鉛が除去され、これにより、局所的に、Pbプーアな又はMgリッチな副相の形成がもたらされる。これは、本発明による方法においては、焼結過程の前に鉛が過剰に添加されることにより、又は、PbOのガス放出を効率的に妨げる閉鎖系内で焼結を行うことにより、阻止される。特に、2つの措置は互いに組み合わせることもできる。というのは、閉鎖系内においても、依然として限定された量のPbOが、たとえ飽和が生じて当該閉鎖系から出ることができない場合であっても、気相へと移行する可能性があるからである。Pb過剰と、同時に行われる閉鎖系内での焼結とを組み合わせることにより、副相は、特に効率的に減少し、又は、完全に回避することができるであろう。それに加えて、最初のPb過剰は、副相としてのパイロクロア相の回避を促進する。
【0059】
本発明の発明者らは、本発明による方法が、予期しない態様で、副相の回避を可能とするだけでなく、同時に、多結晶セラミック固体のより大きな粒径をもたらすことを、確認することができた。これは、望ましくない副相の回避と共に、得られたセラミック固体の誘電率を高めることを可能とする。それに加えて、改善された静電容量及びより遊離なパワーロスが得られると共に、望ましくない黄色がかった色調が回避される。
【0060】
ステップA)において準備される出発物質は、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、又は、これらに匹敵する元素Mg、Nb、Ti及びPbの塩であることができる。それは、有利には、元素Mg、Nb、Ti及びPbの酸化物、並びに、元素Mg、Nb、Ti及びPbのうち2つ以上の酸化物である。これらの化合物は、通常、是認し得る価格で市場にて入手可能であるか、又は、高い実験コストを要することなく製造することができる。
【0061】
本発明による方法の一実施形態によれば、ステップA)においては、Mg及びNbを含有する第1の出発物質が準備される。第1の出発物質がMg1/3Nb2/3O2であると有利である。第1の出発物質としてのMg1/3Nb2/3O2の使用は、副相としてのPb3Nb4O13のような望ましくないパイロクロア相の回避を促進する。第1の出発物質としてMg1/3Nb2/3O2が選択される場合、当該方法は、コロンバイト法(Columbit-Method)による方法とも称することができる。
【0062】
本発明による方法の一実施形態によれば、Mg1/3Nb2/3O2を製造するための別個のステップA0)が、ステップA)に先行する。Mg1/3Nb2/3O2は、例えば酸化マグネシウム(MgO)及び五酸化ニオブ(Nb2O5)から、例えば、湿式粉砕、それに続く乾燥(フィルタープレス、噴霧乾燥)、その次の焼成、及び、必要に応じてそれに続く破砕ステップによって、製造することができる。
【0063】
本発明による方法の一実施形態によれば、ステップA)においては、Tiを含有する第2の出発物質が準備される。有利には、TiO2が、第2の出発物質として用いられる。TiO2は、比較的安価に且つ容易に入手可能である。
【0064】
本発明による方法の別の実施形態によれば、ステップA)においては、Pbを含有する第3の出発物質が準備される。特に、Pb酸化物、PbO及びPb3O4が好適であることが判明した。それらは、良好な反応の実行を可能にすると共に、鉛含有量の制御を促進する。
【0065】
一実施形態によれば、第3の出発物質はPb3O4である。Pb3O4は、約500℃以上の温度で分解し、その際PbOを遊離させる。Pb3O4はPbOと比較して毒性が低く、その結果、その使用は、作業安全性を向上させる。PbOの代わりにPb3O4を選択することにより、反応容器及び反応装置の装備を、より安全に構成することが可能である。これは、特にセラミック固体の大規模で工業的な製造にとって重要である。
【0066】
一実施形態によれば、ステップA)における出発物質は、互いに化学量論比で準備される。この場合、ステップF)は、焼結の際のPbOのガス放出によるPbの損失を防止するために、閉鎖系内で行われる。
【0067】
別の実施形態によれば、ステップA)において、全てのPb非含有出発物質が互いに化学量論比で準備される一方、Pb含有出発物質は過剰に添加される。本発明の発明者らは、ステップA)におけるPb過剰が、Pbプーアな、又は、Mgリッチ及び/又はNbリッチな副相の回避を可能とすることを確認した。
【0068】
有利な実施形態によれば、Pb含有出発物質の(又は第3の出発物質の)過剰は、準備された出発物質全体のPb含有量が、1モルのPbあたり、獲得すべき主成分(1-y)Pba(MgbNbc)O3-e + yPbaTidO3の組成の0.02モルまでであるように、選択される。
【0069】
有利には、上述した過剰は0.01~0.02モルである。本発明の発明者らは、最後に述べた場合において、Pbプーアな副相もPbリッチな副相も、特に良好に回避され得ることを観察した。
【0070】
一つの発展形態によれば、Pb含有出発物質はPbOである。この場合、出発物質は、それらの化学量論が、互いに理論的に、Pb損失の無い反応の後に以下の一般式の組成を生み出すような量で、準備される。
(1-y)Pba(MgbNbc)O3-e+ yPbaTidO3 +xPbO
ここで、a~eは上述したように定義されており、0≦x≦0.02が成り立つ。有利には、以下が成り立つ:0<x≦0.02。更に有利には以下が成り立つ:0.01≦x≦0.02。すなわち、PbOは0.02モルまで過剰に添加され、その結果、組成は、達成すべきPb1モルあたり0.02モルまでの過剰なPbを主相中に含む。
【0071】
類似した方法で、PbOの代わりにPb3O4を過剰に添加することができる。Pb含有出発物質がPb3O4である場合、Pb3O4は、達成すべき組成のPb1モルあたり0.0067モルまで過剰に、主成分に添加される。1モルのPb3O4は3モルのPbOを遊離させるので、これも、0.02モルまでのPb過剰に相当する。有利には、Pb3O4は、0.0033~0.0067モル過剰に添加される。出発物質Pb3O4のこの比率は、副相を回避し良好な粒径を達成するために特に適している。
【0072】
一実施形態によれば、方法ステップB)における混合物の生産は、出発物質の粉砕、特に湿式粉砕によって行われる。湿式粉砕の場合、出発物質の粉砕は、懸濁液中で、例えば水性の懸濁液中で行われる。
【0073】
粉砕は、出発物質の粉末又は懸濁液の、静的な画像分析を通じて数平均中央値として測定された粒径d50が、1.5μm未満、有利には1μm未満となるまで、続けられる。
【0074】
上述した粒径を有する混合物は、更なる加工において良好な結果をもたらす。当該混合物は、良好な混合を許容し、したがって焼成の際に良好な均質性を達成することを容易とする。
【0075】
本発明による方法の一実施形態によれば、湿式粉砕に続いて乾燥ステップB1)が行われる。乾燥ステップは、焼成の準備として行われる。
【0076】
一実施形態によれば、焼成ステップC)は、800~860℃の温度において、例えば840℃において、行われる。これらの温度は、湿気の効率的な除去を保証する。
【0077】
いま述べた実施形態の発展形態によれば、焼成ステップC)は、例えばステップF)による閉鎖容器のような閉鎖系内では行われない。これが必要ではないのは、上述した温度が、注目に値するPbO損失を引き起こすのに十分に高くないからである。しかしながら、焼成ステップを、同様に閉鎖系内で実行することも、基本的に可能である。
【0078】
一実施形態によれば、本発明による方法はステップD)を含み、当該ステップにおいては、TiO2及び/又はNb2O5が、焼成された混合物に添加される。ステップD)は、有利にはステップC)の後で且つステップF)の前に行われる。
【0079】
TiO2及び/又はNb2O5の添加によって、セラミック固体の静電容量の最大値を、温度に応じてずらす又は調整することが可能となる。
【0080】
それに加えて、ステップD)でのTiO2及び/又はNb2O5の添加によって、焼成された混合物中の例えばPbOの形態の過剰な鉛を、ペロブスカイト相の形成を通じて消費することが可能となる。したがって、方法ステップD)でのTiO2及び/又はNb2O5の添加は、鉛含有量を制御するための別の手段である例えば、パイロクロア相を回避するために有利な初期のPb過剰の組み合わせは、ステップD)でのTiO2及び/又はNb2O5の添加との組み合わせにおいて、初期のPb過剰を低減することを可能とし、したがって、完成した固体におけるPbの過剰の危険性を阻止することを可能とする。後者は、誘電率又は静電容量の低下をもたらす。
【0081】
一実施形態によれば、焼成された混合物に対する添加されたTiO2及び/又はNb2O5の比率は、焼成された混合物の重量に対して0.4重量パーセントまで、有利には0.001~0.4重量パーセント、更に有利には0.01~0.4重量パーセント、特に有利には0.1~0.4重量パーセントである。
【0082】
一実施形態は、本発明による方法に関し、ステップA)においてPbを含む出発物質が過剰に添加され、本発明による方法は、同時にステップC)の後にステップD)を含み、当該ステップにおいては、TiO2及び/又はNb2O5が焼成された混合物に添加される。それに加えて、同時にステップF)が閉鎖系内で行われると有利である。過剰な鉛を気化させる代わりに、例えば、ステップD)においてTiO2及び/又はNb2O5を添加することが可能であり、その結果、過剰な鉛が固化する。これは、焼結ステップにおける過剰なPbOの気化と比較して、結果として生じる多結晶セラミック固体が全体として明確に均質であるという利点を有する。固体内における鉛の拡散速度は、気相内と比較して、2オーダ以上小さい。これは、表面近傍の過剰なPbOが、焼結の際に、PbOと比較して迅速に固体を離れ、固体の内部から拡散し続けることができる、という結果をもたらす。特に、焼結が閉鎖系内で行われない場合、特に多量のPbOが気化される。これは、拡散速度の違いに起因して、固体内の局所的な不均質性をもたらし、それは、望ましくない副相の形成を助長する。したがって、例えばステップA)において過剰なPb含有出発物質(第3の出発物質)の形態で添加される過剰なPbが、ステップD)におけるTiO2及び/又はNb2O5の添加によって補償され、同時に、焼結が閉鎖系内でおこなわれると、特に有利である。
【0083】
一実施形態は本発明による方法に関し、ステップE)は以下を含む:
・焼成された混合物を粉砕するステップ
・焼成された混合物をバインダと混合するステップ
・セラミック粒子を製造するために、焼成された混合物をバインダと共に噴霧乾燥させるステップ
・グリーンボディを製造するために、セラミック粒子をプレスするステップ
【0084】
ここで、焼成された混合物の粉砕は、有利には、静的な画像分析を通じて数平均中央値として測定される、得られた粒径d50が、2μm未満、有利には1μm未満、例えば約0.8μmとなるまで、続けられる。任意に、必要に応じて行われるステップD)において添加されたTiO2及び/又はNb2O5が、ステップE)において焼成された混合物と共に粉砕される。微細な粉砕によって、均質なグリーンボディの入手が促進される。
【0085】
焼成された混合物の重量に対するバインダの比率は、有利には0.5~10重量パーセント、更に有利には1~5重量パーセント、特に2~4重量パーセント、例えば3重量パーセントである。バインダは、例えばPVAバインダ(PVA:ポリビニル・アルコール)であることができる。
【0086】
焼成された混合物をバインダと共に噴霧乾燥させることにより、セラミック粒子が得られ、当該セラミック粒子をプレスすることにより、グリーンボディを生産することができる。
【0087】
グリーンボディは、ステップF)の焼結により、本発明の第1の態様による本発明によるセラミック固体へと変化する。
【0088】
本発明による方法の一実施形態によれば、ステップF)は、1150~1280℃の最高温度において実行される。例えば、当該方法は、1250℃の最高温度において実行することができる。
【0089】
一実施形態によれば、ステップF)の間、最高温度は1~6時間、例えば4時間、保持される。
【0090】
焼結の際のこれらの温度及び保持時間は、出発物質の完全な反応に加えて、結果として得られるセラミック固体の良好な均質性を可能とし、これにより、望ましくない副相の回避が促進される。
【0091】
本発明による方法の一実施形態によれば、ステップF)は閉鎖系内で行われ、当該閉鎖系は閉鎖容器である。
【0092】
本発明の意味において、閉鎖容器は、特に、その内部空間と周囲との間でガス交換が行われない容器と解釈されるべきである。
【0093】
一実施形態によれば、容器は、10~40cm、例えば15~25cmの高さと、20~50cm、例えば25~35cmの幅と、30~50cm、例えば35~45cmの深さと、を有する。
【0094】
一実施形態によれば、閉鎖容器は、Al2O3、ZrO2及びMgOから成る群から選択された材料のうちの少なくとも1つを含むか、又は、当該容器はこれらの材料のうちの1つから成る。
【0095】
有利には、閉鎖容器はMgOを含むか又はMgOから成る。発明者らは、MgOが、PbOと比較して非常に高い密度を有し、PbOを吸収する傾向もないため、非常に適していることを見出した。例えば、MgOは、PbOに対して、例えばコーディエライト又はムライトのような従来の容器材料によって可能であるよりも良好な密封性を、達成することが可能である。特に、MgOは、他の金属酸化物とは対照的に、PbOを吸収する傾向もない。このようにして、従来の容器材料の場合と比較して良好な遮蔽を達成することができ、その結果、PbOのガス放出を、例えば容器材料としてのコーディエライト又はムライトのような他の材料の場合と比較して、良好に防止することができる。
【0096】
一実施形態によれば、閉鎖容器は、容器ボディ及び容器プレートを備え、これらは、有利には、直前に述べた材料を含むか又は当該材料から成る。
【0097】
一実施形態によれば、複数のグリーンボディが、同時に閉鎖容器内で焼結される。例えば、グリーンボディの複数の積層体が、同時に閉鎖容器内で焼結される。例えば、それぞれ5~30のグリーンボディの5~25の積層体が、容器内で焼結される。このようにして、複数のグリーンボディの存在によって、閉鎖容器内におけるPbOの飽和がより迅速に達成され、それにより、望ましくない鉛損失が過剰に大きくなることを防止することができる。
【0098】
有利な実施形態は、本発明による方法に関し、閉鎖容器は、その内部に1つ以上のグリーンボディが配置された内部空間を備え、その結果、内部空間の容積に対する全てのグリーンボディの容積充填度は、少なくとも30Vol.%、有利には少なくとも40Vol.%である。
【0099】
容積充填度は、閉鎖容器の内部空間内に配置され焼結される全てのグリーンボディの総容積の、閉鎖容器の内部空間の総容積に対する比を示す。
【0100】
閉鎖容器内に単一のグリーンボディのみが存在する限り、「全てのグリーンボディの容積」は、この単一のグリーンボディの容積に等しい。閉鎖容器内に複数のグリーンボディが存在する場合、「全てのグリーンボディの容積」は、閉鎖容器の内部空間内に配置されたグリーンボディの個々の容積の和に等しい。
【0101】
0Vol.%の容積充填度は、閉鎖容器が空であること、即ちグリーンボディが含まれていないことを意味するであろう。100Vol.%の容積充填度は、容器が1つ又は複数のグリーンボディによって完全に充填されていること、即ち間隙が残されていないことを意味するであろう。
【0102】
本発明の発明者らは、焼結の際のPb損失を低く保つためには、少なくとも30Vol.%の容積充填度が特に適していることを観察した。少なくとも30Vol.%の容積充填度の場合、閉鎖容器の内部空間内におけるPbOの飽和が迅速に達成され得る。このようにして、更なるPbOの気相への移行が妨げられる。これにより、有利には存在するグリーンボディ内のPb過剰を、焼結の際に、ゆっくりと制御しつつ解消することが可能となる。したがって、結果として得られるセラミック固体中のPbの不足は、低減又は完全に回避することができ、これにより、望ましくない副相の回避が促進される。
【0103】
容器の容積充填度が低ければ低いほど、より多くのPbOが閉鎖容器の内部空間内で気相に移行し、鉛含有量の制御がより困難となる。
【0104】
少なくとも40Vol.%の容積充填度が、より一層適している。これにより、特に効率的な鉛含有量の制御が可能となる。
【0105】
更なる実施形態によれば、容積充填度は60Vol.%未満である。発明者らは、容積充填度が60Vol.%を上回らないと有利であることに気付いた。容積充填度がより高い場合、グリーンボディが、共に焼結されるよう互いに十分に離れて閉鎖容器内に配置されることが困難となる。
【0106】
特に有利な実施形態によれば、容積充填度は30~60Vol.%、有利には40~60Vol.%である。この場合、注目に値するPb過剰も、より大きなPb不足も、結果として得られる本発明によるセラミック固体において発生することはなく、その結果、Pbリッチな副相もPbプーアな副相も回避することができる。
【0107】
発明者らは、例えば、MgOを含有する容器内のグリーンボディの45Vol.%の容積充填度が、PbOの気化に起因する約0.6重量パーセントのグリーンボディの重量損失をもたらすのみであることを観察することができた。そのように僅かな鉛損失により、卓越した鉛含有量制御、及びしたがって望ましくない副相の効率的な回避が可能となる。
【0108】
一実施形態によれば、容積充填度は少なくとも30Vol.%であり、同時に、第1の出発物質はMg1/3Nb2/3O2、Pb含有出発物質はPb3O4であり、Mg1/3Nb2/3O2とPPb3O4の物質量の比は、1:0.34~1:0.38、有利には1:0.35~1:0.37、更に有利には1:0.355~1:0.36、例えば1:0.356~1:0.358である。これらの空間的条件により、副相を含まず、静電容量及びパワーロスに関して卓越した値を可能とするセラミック固体を得ながら、安全性に対する高い要求を遵守しつつ、卓越した鉛含有量制御が可能となる。更に、この場合、Ti含有出発物質は例えばTiO2であることができ、Mg1/3Nb2/3O2とTi含有出発物質の物質量の比は、例えば1:0.055~1:0.065であることができる。
【0109】
一実施形態によれば、焼結は、内部に閉鎖容器が配置された炉内で行われる。本発明による方法の更なる重要な効果は、ステップF)において閉鎖容器を使用することにより、焼結に使用される炉が、PbOの排ガスから保護されることである。Pb含有排ガスは、炉の内部ライナーが、時間が経つにつれて相当な量のPbを吸収するという結果をもたらす。これは、内部ライナーに用いられている材料の損傷という結果をもたらす。これらは、しばしばケイ酸塩又はアルミノケイ酸塩を含むので、それらは、鉛の吸収の際に「ガラス化」する傾向がある。しかしながら、炉の他の種類の内部ライナーも、Pb吸収によって損傷を受ける可能性がある。内部ライナーは、鉛の吸収により、時間が経つにつれて脆くなって亀裂が入り、修繕しなければならなくなる。これが、有利には前述した材料を含むか又は当該材料から成る閉鎖容器内での焼結によって、特に効率的に阻止され得ることに、本発明の発明者らは気付いた。
【0110】
本発明の第5の態様は、本発明の第2の態様による電極の製造方法に関し、当該方法は、本発明の第4の態様による多結晶セラミック固体の製造方法を含むと共に、固体に電気的接触部を設けるために続いて行われるステップを含む。
【0111】
一実施形態によれば、電気的接触部は、ペーストを塗布し焼き付けることによって生じ、焼き付けは、有利には680~760℃の温度において実行される。有利には、ペーストは銀ペーストである。銀は、高温においても耐食性であり、ろう付け可能であり、また、多結晶セラミック固体との強固な接続を可能とする。
【0112】
(一般的な合成例)
以下において、本発明の第4及び第5の態様による方法が、例示的な合成ルートに沿って更に説明される。
【0113】
準備されるべき出発物質の化学量論は、それらの量が以下の調合に対応するように選択される。
0.94*Pb(Mg1/3Nb2/3)O3+ 0.06*PbTiO3 + x*PbO
ここで、0≦x≦0.02。
【0114】
主相の組成のPb1モルあたり0.02モルまでの計量されたPbO過剰は、焼結プロセスの過程で最終的に低減する。
【0115】
その際、製造は、例えばMg1/3Nb2/3O3のようなMg及びNb含有出発物質を起点として、例えばいわゆるコロンバイト法によって行われる。その際、Mg及びNb含有出発物質は、例えばPb3O4のようなPb含有出発物質及び例えばTiO2のようなTi含有出発物質と共に、湿式粉砕(粒径d50<1μm)され、乾燥され、800~860℃の温度で焼成される。Pb含有出発物質は、これに関して、有利には過剰に準備される。完成した代謝粉末(Umsatzpulver)は、任意に、(付加的な)TiO2又はNb2O5(代謝粉末の重量に対して0~0.4重量パーセント)と共に微細に粉砕され、例えばPVAバインダのようなバインダと混合される。続いて、得られた混合物は噴霧乾燥され、その結果、プレス可能なセラミック粒子が生じる。粒子は、プレスされ焼結されて、グリーンボディとなる。焼結は1150~1280℃で行われ、当該焼結温度は1~6時間保持される。鉛含有量を制御するために、焼結は、例えばMgOから成るカプセルの形態の閉鎖容器内で、30Vol.%を上回る容積充填度の下で実行される。
【0116】
その際、容器は、特に、容器ボディ及び容器プレートを備えることができる。容器ボディ及び容器プレートは、互いに組み合わされて容器を形成する。それらは、容器が閉鎖されるよう、互いに重ね合わせて配置される。
【0117】
この方法は、対応する大きな容器又は多数の容器を焼結炉内で用いることによって、大量生産の目的のために容易に拡張することができる。当該方法によって、副相を含まない多結晶セラミック固体が生産される。
【0118】
プレスの過程で、多結晶セラミック固体の幾何学的形状が構成され得る。電気的接触部は、メタライゼーションによって得られる。有利には、Agを含むか又はAgから成る電気的接触部を得るために、銀ペーストが使用される。ペーストは、680~760℃の温度において焼き付けられ、ろう付け可能である。
【0119】
以下において、本発明が、図面に基づいて更に説明される。その際、従来の多結晶セラミック固体(比較対象)が、本発明による多結晶セラミック固体(試料)と比較される。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1A】従来の固体の走査電子顕微鏡写真(BSE写真)を示す。
図1B】本発明による固体の走査電子顕微鏡写真(BSE写真)を示す。
図2A】従来の固体の走査電子顕微鏡写真(SE写真)を示す。
図2B】本発明による固体の走査電子顕微鏡写真(SE写真)を示す。
図3A】従来のセラミック固体におけるマグネシウム元素の元素マップを示す。
図3B】本発明によるセラミック固体におけるマグネシウム元素の元素マップを示す。
図4A】主相の元素組成のEDX結果を含む表を示す。
図4B】従来のセラミック固体の副相のEDX結果を含む表を示す。
図5】本発明によるセラミック固体の主相の元素組成の結果(EDX結果)を示す。
図6A】従来の固体のEDX/EBSDオーバーレイ画像(EBSD:電子後方散乱回折)を示す。
図6B】本発明による固体のEDX/EBSDオーバーレイ画像(EBSD:電子後方散乱回折)を示す。
図7A】従来の固体の粒径の評価結果を示す。
図7B】本発明による固体の粒径の評価結果を示す。
図8】本発明による多結晶セラミック固体及び従来の副相を有する多結晶セラミック固体の静電容量と温度との関係を示す。
図9】本発明による多結晶セラミック固体及び従来の副相を有する多結晶セラミック固体の損失係数と温度との関係を示す。
図10A】試料の製造及び比較対象に対応する固体の製造のために使用することができる、間隙を有する容器を示す。
図10B】試料の製造及び比較対象に対応する固体の製造のために使用することができる、完全に閉鎖された容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0121】
以下において、図面及び結果が詳細に説明される。
【0122】
図1A~2Bは、それぞれ走査電子顕微鏡写真である。これらの及び以下で説明される更なる電子顕微鏡写真及び測定結果は、Zeis Merlin Compact VP走査電子顕微鏡で得られたものである。4つの写真は全て、それぞれ約2.2×10-6mbarの真空中で、20kVの加速電圧の下、1000倍の倍率で撮影されたものである。試料及び比較対象は、それぞれ多結晶セラミック固体である。試料及び比較対象のいずれも、走査電子顕微鏡撮影のために、鋸で細かく挽かれ、埋め込まれ、研がれ、研磨された。帯電を防止するために、研磨面には薄いカーボン層が蒸着された。
【0123】
図1A及び1Bは、比較対象(図1A)及び試料(図1B)の後方散乱電子コントラスト画像(BSE写真;BSE:後方散乱電子)を示す。図2A及び2Bは、比較対象(図2A)及び試料(図2B)の二次電子コントラスト画像(SE写真;SE:二次電子)を示す。図1A及び2AのBSE写真及びSE写真は、それぞれ、比較対象の同一の面において撮影されたものである。同様に、図1B及び2BのBSE写真及びSE写真は、試料の同一の面において撮影されたものである。BSE写真が良好な材料コントラスト(相コントラスト)を可能とする一方、SE写真によれば、より多くのトポグラフィ情報を得ることができる。比較対象及び試料のBSE写真上では、黒みがかった部位を認識することができる。これらの黒みがかった部位は、主に細孔に由来するものである。というのは、試料も比較対象も同様に、全体としては僅かであるとしても、ある程度の多孔性を有しているからである。それに対して、明るい背景は、それぞれ主相に由来するものである。
【0124】
既に述べたように、SE写真は、調査対象の固体の表面トポグラフィを逆推論することを可能とする。図2A及び2BのSE写真においても、BSE写真上で見ることができる黒みがかった部位を認識することができる。しかしながら、図2Aの比較対象のSE写真においては、黒みがかった部位の2つの異なる態様を区別することができるのに対して、図2Bでは、黒みがかった部位の異なる態様を認識することはできない。図2Aは、明るい周縁部を有する黒みがかった部位と、明るい周縁部のないそのような部位とを含む。明るい周縁部を有する黒みがかった部位は、細孔に由来するものである。明るい周縁部は、細孔の領域におけるトポグラフィの変化によって生じる。しかしながら、図2Aは、以下において更に説明されるように、細孔ではなく副相に由来する、明るい周縁部のない黒みがかった領域も含む。副相の一部である黒みがかった部位は、図2Aにおいて、また、図1Aにおいても、それぞれ円によってマーキングされている。それに対して、図2Bにおいては、細孔のみを認識することができ、副相を認識することはできない。比較対象が相当な量の副相によって特徴付けられている一方、本発明による試料は副相を含まない。図1A及び2Aにおいてマーキングされた副相は、部分的に針状の又は角張った構造によって際立っている。それらは、写真の背景を形成する明るい主相とは異なる化学的組成を有する。これは、特に、比較対象の主相及び副相、並びに、試料の単一の主相の化学的組成を調査することにより、明らかになる(図3~5)。
【0125】
図3A及び3Bは、比較対象(図3A)及び試料(図3B)の、REM-EDX測定(EDX:エネルギー分散X線分光法)によって得られたマグネシウム元素の元素マップを示す。EDX測定には、Oxford SDD 80mm2検出器(Aztec)が用いられた。画像は、比較対象、及び、本発明による方法によって製造された試料について、マグネシウムの分布を示している。元素マップは、ここでも、既に図1及び2において示された同一の部位を示している。明るい部位は、高いマグネシウム比率を示している。図3A及び3Bの比較から、比較対象がMgリッチな部位を有することが明らかになる。比較対象に存在する副相は、即ちMgリッチな副相である。元素マップによって、比較対象の多結晶セラミック固体における副相の比率も、定量化することができる。従来のセラミック固体におけるMg元素マップの評価によって、望ましくない副相の高い比率が示されている。したがって、比較対象は、固体の中央部の断面において、固体の断面積に対する副相の面積比が0.7%である副相を含む。それに対して、図3Bの本発明によるセラミック固体には、Mgリッチな部位がない。当該セラミック固体は、副相を含まない。
【0126】
それに加えて、比較対象及び試料について、元素C、O、Ti、Nb及びPbの更なる元素マップが記録された。ここで注目に値するのは、比較対象のMgリッチな副相に属する部位の鉛(Pb Mα1写真)の元素マップにおいて、主相と比較して鉛の減少が認識できることである。様々な元素マップから、試料に望ましくない副相がないのに対して、リファレンがMgリッチで同時にPbプーアな副相を含むことが、明らかになる。試料及び比較対象の主相、並びに、比較対象の副相の元素組成の調査の最も重要な結果が、図4A、4B及び5の表に要約されている。
【0127】
図4A及び4Bは、比較対象に対する比較対象の走査電子顕微鏡で得られたEDX結果を示しており、図4Aはセラミック固体の主相のEDX結果を、図4Bはセラミック固体の副相のEDX結果を、それぞれ描出している。図5は、試料に対する比較対象の走査電子顕微鏡で得られたEDX結果を示している。それぞれ4つのEDXスペクトルが記録された。元素O、Mg、Ti、Nb及びPbの測定された比率は、それぞれのスペクトルについて原子パーセントで提示されている。4つのスペクトルから、それぞれMg、Ti、Nb及びPbの比率の平均値が形成された。経験によれば、EDX測定においては、酸素のようなより軽い元素の比率は過小評価される。したがって、分子式を決定するための標準化は、合目的的に、Mg + Ti + Nbの総含有量が総和1に対応するように行われた。関連する化学式のそのようにして得られた係数は、同様に、それぞれ、表から見て取れる。主相については、更に、それぞれ定量に基づいて期待される係数が提示された。図4A及び5の比較により、本発明による試料の場合、鉛比率が理想的な組成より少ない側へ逸脱しているという結果が得られる。比較対象の主相の鉛含有量は0.941であり、理想値1.0と比較して明らかに少ない。それに対して、試料の主相は、理想値に明らかにより近くなっている。最後に、図4Bから、副相の化学組成を逆推論することができる。既に前述したように、副相はMgリッチで且つPbプーアである。Nb含有量は、主相と比較して僅かに高い。理論によって制約されることなく、副相は、大抵の場合、式Mg2/3Nb1/3O3相によって記述され得ると考えられる。
【0128】
図6A及び図6Bは、比較対象(図6A)及び試料(図6B)のEDX/EBSDオーバーレイ画像(EBSD:電子後方散乱回折)を示している。撮影のために、FSD(前方散乱検出器)が使用された。EBSD測定は、エッチングした試料で実行された。その際、比較対象及びプローブについて、それぞれ以下の設定が選択された:加速電圧 20.00kV;試料傾斜 69.99°;ヒット率 94.25~94.99%;撮影速度66.25~66.35Hz。撮影のための相は、Pb相((Mg1/3Nb2/3)O3)に対して、a=4.05Å、b=4.05Å、c=4.05Å、α=90.00°;β=90.00°;γ=90.00°;空間群 221;データバンク ICSD。図から特に、比較対象及び試料の結晶子の粒径を、互いに良好に比較することができる。試料は、明らかにより大きな粒径によって特徴付けられている。
【0129】
粒径の相違の定量的な評価は、図7A及び7Bに示されている。等価円直径(ECD)の決定については、既に前述した。図から、5.32μmの本発明による試料(図7B)が、3.79μmの比較対象(図7B)と比較して、静的な画像分析を通じて数平均中央値として測定される粒径d50が明らかに大きいことが読み取れる。したがって、粒径の全体としての分布は、試料では、比較対象と比較して、より大きな粒径にずれている。これは、それによって試料が製造された本発明による方法が、副相の回避だけではなく、同時により大きな結晶子をももたらすことを示し、それにより、改善された静電容量(図8)及びより低いパワーロス(図9)が達成される。
【0130】
図8は、試料及び比較対象の静電容量を比較している。グラフは、ナノファラド[nF]で示された静電容量の、摂氏[℃]の温度に対する依存性を示している。測定は、それぞれ200kHz及び1Vにおいて実行された。2つの固体は、30~42℃の温度範囲に静電容量の最大値を有している。これは、主相の化学組成が同様であることに起因している。得られた測定カーブの比較から、試料の静電容量が、全ての測定された温度範囲に亘って、比較対象の静電容量と比較して一貫して明らかに高いことが明らかになる。本発明による試料の静電容量は、中央において約5%高い。
【0131】
図9は、損失係数の、摂氏[℃]の温度に対する依存性を示している。測定は、それぞれ200kHz及び1Vにおいて実行された。試料及び比較対象について、損失係数は、温度が上昇するにつれて低下している。しかしながら、比較対象とは対照的に、20~45℃の重要な温度範囲の損失係数は明らかに低く、これは、本発明による固体を電極に適用する際に、小さなパワーロスが得られることを意味している。これは、より高い効率、及びとりわけより小さな自己発熱をもたらす。
【0132】
図10A及び10Bは、図1~9に記載された比較対象及び試料が、どのようにして得られるかを説明している。試料は、本発明の第4の態様の本発明による方法によって得られる、本発明の第1の態様による本発明による多結晶セラミック固体である。その際、ステップF)は、容器ボディ(1)及び容器プレート(2)を有する図10Bの容器内で実行された。それらは協働して、その内部空間(3)内で本発明による方法のステップF)が実行される閉鎖容器を形成する。このために、1つ以上のグリーンボディが、閉鎖容器の内部空間(3)内に配置される。閉鎖容器は閉鎖系を形成し、当該閉鎖系はPbOのガス放出を防止する。容器の形態は、異なってもよい。容器の材料は、PbOを吸収する傾向がなく、PbOを透過させないように選択され、その結果、焼結の際の鉛含有量の特に効率的な制御が可能となる。それに対して、患者の治療のための高い静電容量の電極に必要となる従来の多結晶セラミック固体は、鉛含有量の十分な制御の下で焼結されない。これは、焼結の際のPbOのガス放出、及びしたがって固体内の不均質性をもたらす。とりわけ、本発明の発明者らは、これが、従来のセラミック固体で見い出され得るような望ましくない副相の形成の原因であることを、見い出すことができた。副相は、静電容量の低下をもたらすと共に、従来のセラミック固体に黄色い色調を与える。不十分な鉛含有量の制御の結果は、比較対象の例に示される。比較対象は、図10Aによる装置内での焼結により得ることができる。図10Aは、容器ボディ(1)及び容器プレート(2)、並びに、容器ボディと容器プレートとの間に間隙(4)を設けるための手段を示している。即ち、図10Aの容器は間隙を有している。間隙の大きさは5mmである。したがって、容器の内部空間(3)と周囲との間では、ある程度のガス交換が可能である。これは、固体のPbの一部が焼結の際にPbOの形態で遊離するという結果をもたらす。この方法で得られた比較対象は、試料とは対照的に、黄色い色調を有している。
【0133】
(試料及び比較対象の合成)
試料及び比較対象は、以下のようにして得られた。
【0134】
両方のケースにおいて、最初に、同一の組成のグリーンボディが製造された。このために、それぞれ、34.9494kgのMg1/3Nb2/3O2と、83.8043kgのb3O4と、1.7488kgのTiO2とが計量された。出発物質が、100リットルの脱イオン水内で、約1.0μmの粒径d50を目標として粉砕された。そのようにして得られた混合物が、噴霧乾燥にさらされた。その後、混合物は、820℃で6時間焼成され、約0.8μmの粒径d50へと粉砕されると共に、3重量パーセントのPVAバインダと共に噴霧造粒された。
【0135】
セラミック粒から、プレスによって、グリーンボディが製造された。プレス密度は4.8g/mlであった。グリーンボディは、450℃で脱炭された。
【0136】
試料は、図10Bによる閉鎖されたMgO容器内での焼結により得られた。比較対象は、図10AによるMgO容器内での焼結により得られた。間隙は、ここでは5mmであった。焼結温度としては、それぞれ1250℃が選択された。1250℃における保持時間は、4時間であった。試料の場合の容積充填度は、約45Vol.%であった。
【0137】
本発明は上記の実施例を参照した説明によって限定されない。むしろ、本発明は、全ての新しい特徴、及び、特に特許請求の範囲における全ての特徴の組み合わせを含む全ての特徴の組み合わせを、たとえ当該特徴又は組み合わせ自体が特許請求の範囲又は実施例において明示的に提示されていない場合であっても、含む。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B