(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ハンドヘルド医療デバイスのシステム抵抗を判定する方法およびハンドヘルド医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/145 20060101AFI20220729BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20220729BHJP
【FI】
A61B5/145
G01R31/389
(21)【出願番号】P 2020560245
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2019060276
(87)【国際公開番号】W WO2019206855
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-28
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ランバートソン,マイケル
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/006319(WO,A1)
【文献】特開2006-038859(JP,A)
【文献】特開2016-045212(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0164391(US,A1)
【文献】特開2000-299137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145-5/1455
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドヘルド医療デバイス(112)の少なくとも1つの電源(110)のシステム抵抗を判定する方法であって、
a)少なくとも1つの励起電圧信号(114)を生成するステップであって、前記励起電圧信号(114)が少なくとも1つの直流(DC)電圧信号を含み、前記励起電圧信号(114)が20ns以下の高速遷移DCフランクを有する、ステップと、
b)所定の抵抗値または既定の抵抗値を有する少なくとも基準抵抗器(116)に、前記励起電圧信号(114)を印加するステップであって、前記基準抵抗器(116)が前記電源(110)と直列に配置される、ステップと、
c)前記電源(110)の応答信号を測定するステップであって、前記応答信号は、
前記基準抵抗器(116)と前記電源(110)との間で決定される、前記印加された励起電圧信号に応答す
る前記基準抵抗器(116)における電圧変化であ
る、ステップと、
d)前記応答信号から信号フランクを判定し、前記信号フランクの形状および高さの1つまたは双方から、オーム信号部分を判定するステップと、
e)前記オーム信号部分から前記電源(110)のシステム抵抗を判定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1
に記載の方法において、前記励起電圧信号(114)が方形波信号または正弦波信号を含む、方法。
【請求項3】
請求項1
に記載の方法において、前記励起電圧信号(114)が、不連続信号を含む、方法。
【請求項4】
請求項3
に記載の方法において、前記不連続信号はパルス信号である、方法。
【請求項5】
請求項1~4
のいずれか1項に記載の方法において、前記基準抵抗器(116)が前記電源(110)の少なくとも1つの電気接点に接続される、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、前記電源(110)のシステム抵抗が、
【数1】
にしたがって判定され、
ここで、U
targetは前記励起電圧信号(114)のパルス高であり、R
refは基準抵抗であり、U
measuredは、応答信号の立ち上がり信号フランクの開始時における応答信号の高さである、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記方法が、少なくとも1つの状態を判定するステップを含み、前記電源(110)の少なくとも1つの状態情報が、前記電源(110)の判定されたシステム抵抗を、少なくとも1つの所定のシステム抵抗値または既定のシステム抵抗値と比較することによって判定される、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、前記方法が、少なくとも1つのフェイルセーフ・ステップを含み、フェイルセーフ・ステップにおいて、前記電源(110)の判定されたシステム抵抗を、少なくとも1つの所定の閾値または既定の閾値と比較する、方法。
【請求項9】
請求項8
に記載の方法において、前記フェイルセーフ・ステップにおいて、判定したシステム抵抗が、既定の値または所定の値だけ閾値を超えた場合に、警告を生成する、または判定したシステム抵抗が、既定の値または所定の値だけ閾値を超えた場合に、前記電源(110)の中断を開始する、の内一方または双方である、方法。
【請求項10】
ハンドヘルド医療デバイス(112)であって、
-前記ハンドヘルド医療デバイス(112)の少なくとも1つのエレメントに給電するための少なくとも1つの電源(110)と、
-所定の基準抵抗または既定の基準抵抗を有する少なくとも1つの基準抵抗器(116)であって、前記電源(110)と直列に配置される、基準抵抗器(116)と、
-少なくとも1つの励起電圧信号(114)を生成するように構成された少なくとも1つの信号生成デバイス(118)であって、前記励起電圧信号(114)が少なくとも1つの直流(DC)電圧信号を含み、DC電圧信号が20ns以下の高速遷移DCフランクを有し、前記励起電圧信号(114)を前記基準抵抗器(116)に印加するように構成される、信号生成デバイス(118)と、
-少なくとも1つの応答信号を受け取るように構成された少なくとも1つの測定ユニット(120)であって、前記応答信号は、
前記基準抵抗器(116)と前記電源(110)との間で決定される、前記印加された励起電圧信号に応答す
る前記基準抵抗器(116)における電圧変化であ
る、測定ユニット(120)と、
-前記応答信号から信号フランクを判定し、前記信号フランクの形状および高さの1つまたは双方からオーム信号部分を判定するように構成された少なくとも1つの評価デバイス(122)であって、前記オーム信号部分から前記電源(110)のシステム抵抗を判定するように構成される、評価デバイス(122)と、
を備える、ハンドヘルド医療デバイス(112)。
【請求項11】
請求項10
に記載のハンドヘルド医療デバイス(112)において、前記ハンドヘルド医療デバイス(112)が、少なくとも1つのハンドヘルド・メータのようなハンドヘルド分析デバイス、少なくとも1つのインシュリン・ポンプ、少なくとも1つの長期ECGのような、少なくとも1つの身体機能を監視する少なくとも1つの携帯用センサ、埋め込み可能または挿入可能な連続グルコース・センサから成る1群から選択される、ハンドヘルド医療デバイス(112)。
【請求項12】
請求項10
または11
に記載のハンドヘルド医療デバイス(112)において、前記電源(110)が、少なくとも1つのバッテリ、少なくとも1つの再充電可能バッテリ、少なくとも1つの電気二重層キャパシタ(EDLC)から成る1群から選択された少なくとも1つの電力源を含む、ハンドヘルド医療デバイス(112)。
【請求項13】
請求項10~12
のいずれか1項に記載のハンドヘルド医療デバイス(112)において、前記評価デバイス(122)が、少なくとも1つのマイクロプロセッサ(128)を含む、ハンドヘルド医療デバイス(112)。
【請求項14】
請求項10~13
のいずれか1項に記載のハンドヘルド医療デバイス(112)において、前記評価デバイス(122)が、少なくとも1つのアナログ/ディジタル変換器(ADC)(134)または少なくとも1つのディジタル/アナログ変換器(DAC)の1つまたは双方を備える、ハンドヘルド医療デバイス(112)。
【請求項15】
請求項10~14
のいずれか1項に記載のハンドヘルド医療デバイス(112)において、前記ハンドヘルド医療デバイス(112)が、前記ハンドヘルド医療デバイス(112)の少なくとも1つのエレメントに給電するように構成された少なくとも1つの電源回路(126)と、システム抵抗を判定するように構成された少なくとも1つのシステム抵抗測定回路(124)とを備え、前記ハンドヘルド医療デバイス(112)が、前記電源回路(126)およびシステム抵抗測定回路(124)を分離するように構成された少なくとも1つの切り替えエレメント(136)を備える、ハンドヘルド医療デバイス(112)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドヘルド医療デバイスの電源のシステム抵抗を判定する方法、およびそれぞれのハンドヘルド医療デバイスを開示する。本発明による方法およびデバイスは、身体組織または体液の一方または双方内に存在する少なくとも1つの検体を検出するデバイスにおいて使用することができる。特に、この方法およびデバイスは、専門的な診断の分野および家庭における監視の分野双方における血液、好ましくは、全血、血漿、血清、尿、唾液、間質液、またはその他の体液というような体液における、ぶどう糖、乳酸、中性脂肪、コレステロール、またはその他の検体、好ましくは、代謝物というような1つ以上の検体を検出する分野に適用される。しかしながら、他の応用分野も実現可能である。
【背景技術】
【0002】
品質が異なる1回使用または再充電可能バッテリというような、種々の型式の電力源(power source)が知られており、ハンドヘルド医療デバイスにおいて使用されている。ハンドヘルド医療デバイスにおける電力源の交換は、顧客に責任があると言ってよいであろう。バッテリの寿命は定量化が非常に難しい測定値である。また、電力源の変化、および電力源への電気接点の経年劣化も、特徴付けるのが非常に難しい。
【0003】
メータまたはインシュリン・ポンプにおいてバッテリ電力切れを検出するおよび/または一時的に切り抜けるための設計として電気二重層キャパシタ(EDLC:electric double layer capacitor)を使用すること、ならびに応急故障分析方法(first failure mode)においてそれらを使用することは、これらのコンポーネントが品質の問題を生じやすいこと、そして温度および湿度の変化に敏感であるという事実のために、問題になるおそれがある。EDLCは、信頼性がなく、それらの内部電解質を失いやすく、電子ボード上における短絡、更には内部抵抗の上昇、加熱、およびバッテリの短寿命化の原因となる可能性がある。
【0004】
電力源の時間の関数としての電圧降下は、既知の人工負荷を使用して放電曲線を判定することによって、特徴付けることができる。例えば、EP 2 338 546 A1は、ユーザによって身体外部で長時間携行され、視線から遮蔽されるように設計された外来輸液デバイスについて記載する。外来輸液デバイスは、個体特性が変わりやすい(variable individual characteristics)、ユーザ交換可能なバッテリを受け入れるように設計されている。バッテリは輸液デバイスの主電力源として機能し、使用中に連続的に消耗する。この外来輸液デバイスは、更に、電動アクチュエータを有する分与ユニット(dosing unit)と、外来輸液デバイスの動作を制御する電子コントローラと、コントローラに動作可能に結合された検査ユニットであって、バッテリ検査を実行するように設計された、検査ユニットと、バッテリのオフ回路電圧および内部抵抗を判定することを含むバッテリ検査と、警報ユニットであって、検査ユニットおよび/または電子コントローラに動作可能に結合され、バッテリ検査結果に応じてデバイスのユーザに警報を出す、警報ユニットとを含む。本開示によるデバイスでは、警報の発生は、個々のバッテリ特性に合わせて採用される。
【0005】
WO2012/022539 A1は、外来輸液デバイスについて記載し、その機能ユニットに給電するために、交換可能なエネルギ・ストレージを備えている。制御ユニットは、エネルギ消費活動についてのデータ、または機能ユニットによって消費されたエネルギについてのデータを、監視システムに提供する。このデータに基づいて、監視システムは、機能ユニットによって消費されたエネルギまたは電荷を判定し、ある時点よりも前の時間間隔において消費されたと判定したエネルギまたは電荷にしたがって、その時点におけるエネルギ・ストレージの電圧測定をトリガする。
【0006】
EP 2 338 545 A1は、外来輸液デバイスについて記載する。これは、(a)デバイスに給電するために必要な電気エネルギを蓄積するユーザ交換可能なエネルギ・ストレージであって、オフ回路電圧および内部抵抗を有する、エネルギ・ストレージと、(b)電動アクチュエータおよび電子コントローラを有する分与ユニットであって、コントローラがアクチュエータの動作を制御する、分与ユニットと、(c)検査ユニットであって、エネルギ・ストレージのオフ回路電圧および内部抵抗を判定する測定ユニットを含み、検査ユニットが、デバイスの動作中に検査を実行するように設計され、検査が、オフ回路電圧および内部抵抗を判定し、オフ電流電圧および内部抵抗を評価し、こうしてエネルギ・ストレージが未だこの先デバイスに給電することができるか否か判定することを含む、検査ユニットと、(d)警報ユニットであって、検査ユニットに結合され、エネルギ・ストレージがデバイスに更に給電する能力に欠けることを検査が示す場合、検査ユニットによって有効化される、警報ユニットとを含む。
【0007】
WO2017/006319 A1は、再充電可能Li-イオン・バッテリ(LIB)の安全性を監視する方法およびシステムについて記載する。LIBの内部電気状態を判定し、時間可変応答をトリガするために、DC電気刺激の印加または除去によってLIBの内部電気状態を変化させる。LIBの時間可変応答を測定し、測定された応答の関数形態と関連付けられた少なくとも1つの主応答パラメータを抽出する。主応答パラメータから、少なくとも1つの副応答パラメータを導き出す。更に、主応答パラメータおよび副応答パラメータから、複合応答パラメータを導き出してもよい。主応答パラメータ、副応答パラメータ、および/または複合応答パラメータにしたがって、短絡先駆状態の可能性(likelihood)を判定する。判定された可能性に基づいて、短絡由来の潜在的な危害の警告を出すことができ、および/または短絡由来の危害を軽減もしくは防止するための補正措置を講ずることができる。ハンドヘルド医療デバイスの電源の品質制御については、WO2017/006319 A1には開示されていないが、代わりに、WO2017/006319 A1は、ラップトップ、セルフォン、電気/ハイブリッド車両、および航空機における安全上の危害を回避するために、リチウム-イオン・バッテリの安全性監視に言及する。WO2017/006319 A1の第4ページ、第2節を参照のこと。WO2017/006319 A1は、システム抵抗を判定する具体的な手法、即ち、放電曲線を判定することによる手法について記載している。
図5Bおよび
図5C、ならびに46~47ページにおける対応する説明を参照のこと。しかしながら、放電曲線の使用は、放電を待たなければならないので、時間がかかり遅くなる。
【0008】
以上で述べた開発によって達成された利点および進歩にも拘わらず、重大な技術的課題がいくつか残っている。具体的には、既知の方法は、使用する放電曲線を決定しなければならず、時間がかかるおそれがある。更に、具体的には、人工負荷または既知の負荷を必要とするため、バッテリに不必要な負荷をかけなければならず、このためにもバッテリ寿命の一部が消費される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、システム抵抗の判定方法およびハンドヘルド医療デバイスを提供し、この種の既知のデバイスおよび方法の欠点を少なくとも部分的に回避し、更に前述の課題に少なくとも部分的に取り組むことである。具体的には、少なくとも1つの電源の有効で高速な品質制御を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つの電源のシステム抵抗を判定する方法、および独立請求項の特徴を有するハンドヘルド医療デバイスによって解決される。従属請求項には、個別に実現することができる好ましい実施形態、またはいずれかの任意の組み合わせで実現することができる好ましい実施形態を列挙する。
【0011】
以下で使用する場合、「有する」(have)、「備える」(comprises)、または「含む」(includes)という用語、またはこれらの任意のその他の文法的変形は、非排他的に使用される。つまり、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴を除いて、このコンテキストで記載されるエンティティには他の特徴が存在しない状況、および1つ以上の他の特徴が存在する状況の双方を指すことができる。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、および「AはBを含む」という表現は、B以外には、Aに他のエレメントが存在しない状況(即ち、AはBのみで排他的に構成される状況)、およびB以外にもエレメントC、エレメントCおよびD、または更に他のエレメントも、というように、1つ以上の他のエレメントがエンティティAに存在する状況の双方を指すことができる。
【0012】
更に、「少なくとも1つ」、「1つ以上」という用語、あるいは1つの特徴またはエレメントが1回または1回よりも多く存在し得ることを示す同様の表現は、通例、それぞれの特徴またはエレメントを導入するときに、1回だけ使用されることは、注記されてしかるべきである。以下では、殆どの場合、それぞれの特徴またはエレメントに言及するとき、それぞれの特徴またはエレメントが1回または1回よりも多く存在し得るという事実にも拘わらず、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という表現を繰り返さないこととする。
【0013】
更に、以下で使用する場合、「好ましくは」(preferably)、「更に好ましくは」(more preferably)、「特に」(particularly)、「更に特定すれば」(more particularly)、「具体的には」(specifically)、「更に具体的には」(more specifically)という用語、または同様の用語は、随意の特徴と合わせて使用され、代わりの可能性を制限することはないものとする。つまり、これらの用語によって導入される特徴は、随意の特徴であり、請求項の範囲を限定することは全く意図していない。当業者には認められように、代わりの特徴を使用することによって本発明が実施されてもよい。同様に、「本発明の実施形態において」または同様の表現によって導入される特徴は、随意の特徴であることを意図しており、本発明の代替実施形態に関して全く制限がなく、本発明の範囲に関して全く制限がなく、更にこのように導入される特徴を本発明の他の随意の特徴または随意でない特徴と組み合わせる可能性に関して全く制限がない。
【0014】
本発明の第1の態様では、ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つの電源のシステム抵抗を判定する方法を開示する。本明細書において使用する場合、「ハンドヘルド医療デバイス」という用語は、任意の携帯用医療デバイスを指す。ハンドヘルド医療デバイスは、少なくとも1つのハンドヘルド分析デバイス、具体的には、血糖値メータのような少なくとも1つのハンドヘルド・メータ、少なくとも1つのインシュリン・ポンプ、少なくとも1つの長期ECGのような、少なくとも1つの身体機能を監視する少なくとも1つの携帯用センサ、埋め込み可能または挿入可能な連続グルコース・センサから成る1群から選択されてもよい。ハンドヘルド医療デバイスは、低電圧高容量性電力源の使用を必要とする任意のデバイスでよい。この場合、この電力源が失われると、システム機能の逸失、または常に電力源を必要とする記憶デバイスにデータを供給する場合には、データの逸失に至る可能性がある。電源の電圧が低い程、システム抵抗に大きな影響を及ぼす可能性がある。一般に、無数のデバイスが、それらのシステムまたは緊急電源(critical power supply)を必要とする任意のシステムに給電するために、低電圧を使用する。携帯用医療デバイスの分野または携帯用医療用途等では、電源を監視するためには応急故障分析方法(first failure mode)が必要となる。
【0015】
本明細書において使用する場合、「電源」(power supply)という用語は、ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つの機能ユニット、例えば、ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つのセンサ・エレメント、および/または少なくとも1つの制御ユニット、および/または少なくとも1つの作動ユニットにというように、ハンドヘルド医療デバイスの少なくとの1つのエレメントに電力を供給するように構成された、ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つのユニットまたはシステムを指す。電源は、少なくとも1つの電力源(power source)、少なくとも1つの電気接点、少なくとも1つの供給線から成る1群から選択された少なくとも1つのエレメントを含んでもよい。電力源は、少なくとも1つのバッテリ、例えば、少なくとも1つのコイン・バッテリ、少なくとも1つのAA、AAA、またはその他のバッテリ、少なくとも1つの再充電可能バッテリ、少なくとも1つの電気二重層キャパシタ(EDLC)から成る1群から選択された少なくとも1つの電力源を含んでもよい。
【0016】
本明細書において使用する場合、「システム抵抗」(system resistance)という用語は、電源の抵抗値、具体的には、電源の内部抵抗を指す。システム抵抗は、電源の少なくとも1つの電気接点の抵抗、および/または線抵抗(line resistance)、および/または、例えば、経年劣化または温度による、電力源における内部抵抗を含んでもよい。システム抵抗は、リーク電流(creepage current)による抵抗を含むこともある。例えば、リーク電流は、2つの電極間の望ましくない電流路によって生じ、システム電圧が降下する(drop)おそれがある。システム抵抗は、接点間の腐食、および/またはEDLCもしくはバッテリにおける化学的変化による容量減少による抵抗を含むこともある。更に本明細書において使用する場合、「システム」という用語は、相互作用または相互依存して全体を形成する、任意の1組のコンポーネント部品を指す。具体的には、これらのコンポーネントは、少なくとも1つの共通の機能を達成するために、互いと相互作用することができる。少なくとも2つのコンポーネントは、独立して操作されてもよく、あるいは結合されても、または接続可能でもよい。本明細書において使用する場合、「システム抵抗を判定する」という言い回しは、システム抵抗を検出および/または監視することを指す。
【0017】
この方法は、対応する独立請求項において示され、以下のように列挙されるような方法ステップを含む。これらの方法ステップは所与の順序で実行することができる。しかしながら、方法ステップの他の順序も実現可能である。更に、方法ステップの内1つ以上は、並列におよび/または時間が重複して実行されてもよい。更に、方法ステップの1つ以上は繰り返し実行されてもよい。更に、列挙されていない追加の方法ステップがあってもよい。
【0018】
この方法は、以下のステップを含む。
a)少なくとも1つの励起電圧信号を生成するステップであって、励起電圧信号が少なくとも1つの直流(DC)電圧信号を含み、DC電圧信号が20ns以下の高速遷移DCフランクを有する、ステップ。
【0019】
b)所定の抵抗値または既定の抵抗値を有する少なくとも1つの基準抵抗器に、励起電圧信号を印加するステップであって、基準抵抗器が電源と直列に配置される、ステップ。
c)電源の応答信号を測定するステップ。
【0020】
d)応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの1つまたは双方から、オーム信号部分を判定するステップ。
e)オーム信号部分から電源のシステム抵抗を判定するステップ。
【0021】
本明細書において使用する場合、「少なくとも1つの励起電圧信号」という用語は、一般に、少なくとも1つの任意の電圧信号を指す。励起電圧信号は、少なくとも1つの直流(DC)電圧信号を含む。励起電圧信号は、方形波信号および/または正弦波信号を含んでもよい。例えば、励起電圧信号が正弦波信号でもよく、この場合、励起電圧信号の周波数は20Hzから300kHzとしてもよい。一般に、秒、分、時間、または日単位にまでも落とす(pulse down)することが可能である。システム抵抗データを収集するためには、1つの高速遷移パルスだけがあればよい。周波数は、被検査システムに応じて変化してもよく、更に判断を行うためにはシステム抵抗情報をどれ位素早く必要とするかに応じて変化してもよい。例えば、システム抵抗情報が50ミリ秒毎に必要とされる場合もある。励起電圧信号は、パルスのような不連続信号を含んでもよい。具体的には、励起電圧信号は高速遷移方形波を含んでもよい。励起電圧信号は、少なくとも1つの検査シーケンス、例えば、時間シーケンスの間に印加してもよい。励起電圧信号の更に他の実施形態に関して、2017年12月14日に出願されたヨーロッパ特許出願第EP17 207 345.4号を引用する。この特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。
【0022】
励起電圧信号は、20ns以下、好ましくは10ns以下、最も好ましくは5ns以下の高速遷移DCフランクを有する。例えば、励起電圧信号は繰り返し可能なサイクルを含んでもよく、繰り返し可能なサイクルは少なくとも1つの励起信号フランク(excitation signal flank)を含む。本明細書において使用する場合、「遷移フランク」(transition flank)または「信号フランク」(signal flank)という用語は、低から高信号値または高から低信号値への励起の遷移を指す。励起信号フランクは、立ち上がり信号フランクまたは立ち下がり信号フランクでもよい。励起電圧信号の信号フランクは、信号フランクの第1点から励起信号フランクの第2点までの、マイクロ秒からナノ秒範囲の信号変化を有してもよい。本明細書において使用する場合、「高速遷移DCフランク」という用語は、20ns以下程度、特に5から20nsの間で進む遷移DCフランクを指す。第1および第2「点」(point)という用語は、信号の領域または一点を指す。第1点は、励起電圧信号の局所的および/または全体的な最小値であってもよい。第1点は、励起電圧信号の第1プラトーであってもよい。第1点は、信号の通しの(through)値および/または低い値であってもよい。第2点は、励起信号の局所的および/または全体的な最大値であってもよい。第2点は、励起電圧信号の印加の間に到達することができる、励起電圧信号の第2プラトーであってもよい。第2点は、信号のピーク値または高い値であってもよい。励起電圧信号は、高速遷移方形波であってもよく、またはこれを含んでもよい。高速遷移方形波は、先に説明したような、立ち上がり信号フランクを有してもよい。具体的には、高速遷移方形波は、励起信号フランクの第1点から励起信号フランクの第2点への、50ns以下、好ましくは20ns以下の信号変化を有してもよい。高速遷移DCフランクを有する励起電圧信号を使用すると、以下で概説するように、電源のオーム信号部分および虚信号部分を分離することが可能になり、したがって、応答信号の分析を簡略化し、オーム信号部分からシステム抵抗を判定することが可能になるとして差し支えない。
【0023】
励起電圧信号は、少なくとも1つの信号生成デバイスによって生成されてもよい。「信号生成デバイス」(signal generator device)という用語は、一般に、電圧信号を生成するように構成されたデバイス、例えば、電圧源を指す。信号生成デバイスは、少なくとも1つの電圧源を含んでもよい。信号生成デバイスは、少なくとも1つの方形波生成器および少なくとも1つの正弦波生成器から成る1群から選択された少なくとも1つの関数生成器(function generator)を含んでもよい。信号生成デバイスは、1つ以上のシュミット・トリガを含む少なくとも1つの高速遷移方形波発振器、出力として構成された高速I/Oピン、フリップ/フロップ、スイッチとして構成されたトランジスタ、DAC(ディジタル/アナログ変換器)、シングル・ショットとして構成された任意の波形生成器、または方形波生成器を含んでもよい。信号生成デバイスは、測定電子機器の一部であってもよく、および/またはハンドヘルド医療デバイスの測定電子回路に接続されてもよい。信号生成デバイスは、評価デバイスの一部というように、測定電子機器の一部であってもよく、または別個のデバイスとして設計されてもよい。
【0024】
励起電圧信号は、所定の抵抗値または既定の抵抗値を有する少なくとも1つの基準抵抗器に印加される。本明細書において使用する場合、「基準抵抗器」(reference resistor)という用語は、所定の抵抗値または既定の抵抗値を有する抵抗器を指す。基準抵抗は、複数の基準測定値から決定された平均値、具体的には予め決定されている平均値であってもよい。基準抵抗は、オーム信号部分のような、測定される値を判定するのに適したものが選択されてもよい。基準抵抗は、測定されるシステムの予測測定範囲に適するように決定されてもよい。例えば、実装されるバッテリがミリオームまたは数十オームの範囲の作用範囲を有するとき、基準抵抗器は、対象の測定範囲の中央にある値を有するように選択されるとよい。一例として代謝センサでは、これはkΩ単位としてよいので、基準抵抗器には、kΩ基準抵抗器を選択するとよい。基準抵抗器は、例えば、直接または電気線によって、電源の少なくとも1つの電気接点に接続されてもよい。電源は2つの電気接点を含むことができ、第1電気接点が少なくとも基準抵抗器に接続されてもよく、第2電気接点が接地に接続されてもよい。信号生成デバイスは、励起電圧信号を基準抵抗器に印加するように構成することができる。基準抵抗器は、信号生成デバイスの少なくとも1つの出力端子に接続することができる。基準抵抗器は、電源と直列に配置される。例えば、基準抵抗器は第1電気接点を含むことができ、第1電気接点は、例えば、直接または間接的に、電気線を使用して、信号生成デバイスの出力端子に接続されてもよい。基準抵抗器は、第2電気接点を含むことができ、第2電気接点は、例えば、直接または間接的に、電気線を使用して、電源の少なくとも1つの電気接点に接続されてもよい。
【0025】
システム抵抗を判定する既知の方法は、例えば、文書WO2017/006319 A1に記載されているように、セルを開放することによって得られる放電曲線を使用する。これとは対照的に、本発明による方法では、非常に短いパルス信号の印加に対する応答信号を使用することができ、この応答信号からオーム信号部分を導き出すことができる。これによって、システム抵抗の判定を高速化することができ、具体的には、最終的に得られる放電曲線を使用する方法、つまりこれを待つ方法と比較すると、これよりも速く判定することができる。更に、前述のように、これは、放電を測定するために負荷を使用して、バッテリに不必要な負荷をかけることを回避することも可能にする。特に、これは、小さい容量を有するバッテリでは有利であると言える。
【0026】
ステップc)において、電源の応答信号を測定する。先に概説したように、基準抵抗器および電源は直列に配置される。励起電圧信号が基準抵抗器に印加されると、電流が抵抗器を通過して電源に流れる。本明細書において使用する場合、「応答信号」(response signal)は、一般に、印加された励起電圧信号に応答する、基準抵抗における電圧変化を指す。例えば、これは基準抵抗器と電源との間で判定することができる。応答信号は、少なくとも1つの測定ユニットを使用することによって測定することができる。測定ユニットは、少なくとも1つの応答信号検出器、例えば、少なくとも1つの信号アナライザおよび/または少なくとも1つのオシロスコープを備えてもよい。応答信号は、電流応答信号であってもよく、測定された応答電圧は、電流/電圧変換器を使用して判定することができる。
【0027】
ステップd)において、応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方から、オーム信号部分を判定する。先に概説したように、高速遷移フランクを有するDC電圧信号を使用することにより、オーム信号部分および虚信号部分の分離が可能になる。本明細書において使用する場合、「オーム信号部分」(ohmic signal portion)は、インピーダンスZの実部を指す。応答信号は、複素インピーダンスのオーム信号部分を含むことができる。複素インピーダンスZは、Z=R+iRと記述することができ、ここでRは複素インピーダンスの実部であり、Xは複素インピーダンスの虚部である。極型式では、複素インピーダンスは、Z=|Z|eiθとして記述することができ、ここで、Θは電圧と電流との間の位相差である。アドミタンスYは、Y=1/Zとして定義することができる。つまり、複素インピーダンス情報とは、アドミタンスについての1つ以上の情報のことであり、具体的には、アドミタンス値、位相情報、実部および/または虚部についての情報である。応答信号は、電源の容量部のために、オーム信号部分と非オーム信号部分とを含むとして差し支えない。応答信号の信号形状および信号高の一方または双方を分析することによって、オーム信号部分を判定することができる。オーム信号部分は、励起電圧信号の形状および/または高さ、ならびに応答信号の形状および/または高さを比較することによって、判定することができる。応答信号は、少なくとも1つの信号フランク、具体的には、少なくとも1つの立ち上がり信号フランクを含んでもよい。誘導方形波または正弦電圧信号の特徴付けを通じて、応答信号の信号フランクからオーム信号部分を判定することができる。具体的には、応答信号の信号形状および信号高の一方または双方を分析することによって、応答信号の実部および虚部の分離が可能になるとして差し支えない。ステップd)は、励起電圧信号の誘導信号形状および/または高さから、少なくとも1つの偏差(deviation)および/または差(difference)を判定するステップを含むことができる。具体的には、誘導信号形状および/または高さから、偏差および/または差を判定することができる。尚、応答信号は、励起電圧信号と比較すると、電源における電圧降下による垂直降下と、電源の容量部からの充電積分による後続の立ち上がり信号フランクとを呈することが分かった。以下では、これを立ち上がり信号フランクと呼ぶ。「電圧降下」(voltage drop)という用語は、一般に、電圧の変化、例えば、低下を指す。電圧降下は、システム抵抗の存在に起因するとしてよい。電圧降下は、観察可能な電圧変化であるとしてよい。例えば、電圧は、高い値からの5~50%の偏差を示す場合もある。また、システム抵抗の検出によって、システム性能に影響を及ぼす可能性がある、素早い抵抗変化遷移も検出することができる。応答信号のオーム信号部分は、電圧降下値、即ち、立ち上がり信号フランクの開始時における電圧値を判定することによって、識別することができる。ステップe)において、電源のシステム抵抗をオーム信号部分から判定する。具体的には、電源のシステム抵抗Rsystemは、次の式にしたがって判定することができる。
【0028】
【0029】
ここで、Utargetは励起電圧信号のパルス高であり、Rrefは基準抵抗であり、Umeasuredは、立ち上がり信号フランク、即ち、オーム信号部分の開始時における応答信号の高さである。励起電圧信号Utargetのパルス高は、予め分かっている値または所定の値であってもよい。誘導信号形状および/または高さの判定は、例えば、予め判定されていても、および/またはこの方法の間に判定されてもよい。例えば、この方法は、励起電圧信号のパルス形状および/または高さを判定するステップを含んでもよい。例えば、信号生成デバイスの出力端子を、少なくとも1つの測定ユニットに接続してもよい。少なくとも1つの測定ユニットは、励起電圧信号を受け取り、励起電圧信号のパルス高を判定するように構成することができる。励起電圧信号Utargetは、少なくとも1つのアナログ/ディジタル変換器を使用することによってというようにして、判定されてもよい。アナログ/ディジタル変換器は、信号生成デバイスと基準抵抗器との間に直列に配置されるとよい。加えて、または代わりに、励起電圧信号は、設計から把握することもでき、したがって特定の値であることを想定することができる。この場合、アナログ/ディジタル変換器は不要であり、設計においてコストを節約することができる。
【0030】
この方法は、少なくとも1つの状態判定ステップを含んでもよい。判定された電源のシステム抵抗を、少なくとも1つの所定のシステム抵抗値または既定のシステム抵抗値と比較することによって、電源の少なくとも1つの状態情報を判定することができる。状態情報は、電源の寿命、例えば、バッテリの寿命についての少なくとも1つの情報、充電についての少なくとも1つの情報、変化についての少なくとも1つの情報、電気接点の適正さおよび/または経年劣化についての少なくとも1つの情報から成る1群から選択された少なくとも1つの情報であってもよい。加えてまたは代わりに、システム抵抗の一部として水分を検出および/または判定することができる。これが重要であるのは、印刷回路ボード上のレイアウトが、+および-電位点間に十分な分離を許容しない場合、電流リークに至るおそれがあるからである。また、医療デバイスが高水分環境に晒される場合、または短期間に極端な温度変化を受ける場合、水分の検出を応急故障検出(first failure detection)として使用することができる。また、システム抵抗検出は、システム性能に影響を及ぼす可能性がある、素早い抵抗変化遷移も検出することができる。更に、静電放電(ESD)イベントからの遷移も恐らくは検出することができる。更に、経年劣化による接触圧力も、システム抵抗に影響を及ぼすおそれがある。更に、この方法は、活性化に酸素を必要とする亜鉛-空気バッテリの活性化プロセスを検査および/または監視するために使用することもできる。具体的には、この方法は、バッテリがどのように流入空気に反応したか判定し、バッテリがシステムに適正に給電するための特定値に達したか否か判定することを可能にすることができる。この方法は、経時的に状態情報を監視するステップを含むこともできる。所定の抵抗値とは、以前の測定において判定されたシステム抵抗値でもよい。所定の抵抗値は、システム抵抗の少なくとも2回の以前の測定の平均値を判定することによって判定された平均システム抵抗値であってもよい。状態情報は、繰り返し、例えば、連続的にまたは不連続的に、例えば、50ms毎というように、既定の間隔で判定されてもよい。しかしながら、他の実施形態および時間間隔も可能である。状態判定ステップは、製造段階で、および/または電子製造サービスによって、電源を特徴付けるために、具体的には、使用されたバッテリまたはEDLCを特徴付けるために実行されてもよい。状態判定ステップは、例えば、バッテリまたはEDLCの供給業者のために、要件の定義を決定するために実行されてもよい。
【0031】
この方法は、少なくとも1つのフェイルセーフ・ステップを含んでもよい。本明細書において使用する場合、「フェイルセーフ・ステップ」(failsafe step)とは、ハンドヘルド医療デバイスにおける電源の損傷および/または異常に起因する停電および/または誤動作を確実に防止する少なくとも1つのステップを指す。フェイルセーフ・ステップでは、判定された電源のシステム抵抗を、少なくとも1つの所定の閾値または既定の閾値と比較してもよい。この比較に基づいて、少なくとも1つのフェイルセーフ判断を決定することができ、および/または少なくとも1つのフェイルセーフ措置を実行することができる。例えば、フェイルセーフ・ステップは、システム抵抗が閾値を超えた場合、および/または既定の値または所定の値だけ閾値を超えた場合に、エラー・メッセージのような通知を発行および/または表示するステップを含んでもよい。フェイルセーフ・ステップは、システム抵抗が閾値を超えた場合、および/または既定の値または所定の値だけ閾値を超えた場合に、視覚的指示または音声指示のような警告を表示するステップを含んでもよい。フェイルセーフ・ステップにおいて、判定したシステム抵抗が、既定の値または所定の値だけ、例えば、10%だけ閾値を超えた場合に、警告を生成してもよい。フェイルセーフ・ステップにおいて、判定したシステム抵抗が、既定の値または所定の値だけ、例えば、10%だけ閾値を超えた場合に、電源の中断を開始してもよい。閾値は、経験的に、分析によって、または半経験的に判定してもよく、判定可能でもよい。閾値は、少なくとも1つの参照表において提示されてもよく、および/または、例えば、ハンドヘルド医療デバイスのストレージに保管(deposit)および/または格納されてもよい。閾値は、電源の動作開始時に判定してもよく、および/またはバッテリの交換後というような、電源の使用開始後直ちに判定してもよい。例えば、閾値は、システム抵抗の少なくとも1つの上限であってもよい。例えば、抵抗の限度は、500mΩ、好ましくは100mΩ、最も好ましくは20mΩにしてもよい。最適な内部抵抗は、ミリオームの範囲にしてもよい。例えば、システム抵抗は、電力源だけを考慮するならば、数オームが発生する可能性がある。フェイルセーフ・ステップは、判定したシステム抵抗を複数の抵抗値と比較するステップを含んでもよい。フェイルセーフ・ステップは、例えば、評価デバイスの測定エンジン電子回路内に、例えば、所定の抵抗限度および/または既定の抵抗限度を格納するステップを含んでもよい。フェイルセーフ・ステップは、電源によって給電されたエレメントの動作前および/または動作中に実行してもよい。フェイルセーフ・ステップは、繰り返し、例えば、50ms毎というような、既定の間隔で実行してもよい。しかしながら、他の実施形態および時間間隔も可能である。例えば、秒単位、分単位、日単位、週単位の間隔でさえも可能な場合がある。
【0032】
更に、本発明は、コンピュータ・プログラムであって、このプログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる(enclosed)実施形態の1つ以上における本発明による方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータ・プログラムを開示および提案する。具体的には、このコンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能データ担体上に格納されてもよい。つまり、具体的には、先に示した方法ステップの1つ、1つよりも多く、または全てであっても、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークを使用することによって、好ましくは、コンピュータ・プログラムを使用することによって、実行することができる。
【0033】
更に、本発明は、プログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる(enclosed)実施形態の1つ以上における本発明にしたがって、ハンドヘルド医療デバイスの電源のシステム抵抗を判定する方法を実行するためのプログラム・コード手段を有するコンピュータ・プログラム製品を開示および提案する。具体的には、プログラム・コード手段は、コンピュータ読み取り可能データ担体上に格納されてもよい。
【0034】
更に、本発明は、データ構造が格納されているデータ担体を開示および提案する。コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークの作業メモリまたは主メモリへというように、データ構造がコンピュータまたはコンピュータ・ネットワークにロードされた後、本明細書において開示した実施形態の1つ以上による方法を実行することができる。
【0035】
更に、本発明は、プログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、本明細書において開示する実施形態の1つ以上による方法を実行するために、機械読み取り可能担体上にプログラム・コード手段が格納されているコンピュータ・プログラム製品を提案および開示する。本明細書において使用する場合、コンピュータ・プログラム製品とは、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットでまたはコンピュータ読み取り可能データ担体上にというように、任意のフォーマットで存在することができる。具体的には、データ・ネットワークを通じてコンピュータ・プログラム製品を流通させることもできる。
【0036】
最後に、本発明は、本明細書において開示する実施形態の1つ以上による方法を実行するために、コンピュータ・システムまたはコンピュータ・ネットワークによって読み取り可能な命令を収容する変調データ信号を提案および開示する。
【0037】
好ましくは、本発明のコンピュータ実装される態様を参照すると、本明細書において開示する実施形態の1つ以上による方法の方法ステップの内1つ以上、または方法ステップの全てであっても、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークを使用することによって実行することができる。つまり、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップはいずれも、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークを使用することによって実行することができる。一般に、これらの方法ステップは、通例、試料を供給するというような手作業および/または実際の測定を実行するための特定の態様を必要とする方法ステップを除いて、方法ステップのいずれでも含むことができる。
【0038】
具体的には、本発明は、更に、
-少なくとも1つのプロセッサを備えているコンピュータまたはコンピュータ・ネットワークであって、プロセッサが、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法を実行するように構成される、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク、
-コンピュータにロード可能なデータ構造であって、このデータ構造がコンピュータ上で実行されている間、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法を実行するように構成される、データ構造、
-コンピュータ・プログラムであって、このプログラムがコンピュータ上で実行されている間、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法を実行するように構成される、コンピュータ・プログラム、
-コンピュータ・プログラムであって、コンピュータ上またはコンピュータ・ネットワーク上でこのコンピュータ・プログラムが実行されている間、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法を実行するためのプログラム手段を備えている、コンピュータ・プログラム、
-直前の実施形態によるプログラム手段を備えているコンピュータ・プログラムであって、プログラム手段が、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体上に格納される、コンピュータ・プログラム、
-記憶媒体であって、この記憶媒体上にデータ構造が格納され、このデータ構造が、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークの主ストレージおよび/または作業ストレージにロードされた後に、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法を実行するように構成される、記憶媒体、および
-プログラム・コード手段を有し、プログラム・コード手段を記憶媒体上に格納することができるまたは格納した、コンピュータ・プログラム製品であって、プログラム・コード手段がコンピュータ上またはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法を実行する、コンピュータ・プログラム製品を開示する。
【0039】
本発明の更に他の態様では、ハンドヘルド医療デバイスを開示する。このハンドヘルド医療デバイスは、
-ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つのエレメントに給電するための少なくとも1つの電源と、
-所定の基準抵抗または既定の基準抵抗を有する少なくとも1つの基準抵抗器であって、電源と直列に配置される、基準抵抗器と、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成するように構成された少なくとも1つの信号生成デバイスであって、励起電圧信号が少なくとも1つの直流(DC)電圧信号を含み、DC電圧信号が20ns以下の高速遷移DCフランクを有し、励起電圧信号を基準抵抗器に印加するように構成される、信号生成デバイスと、
-少なくとも1つの応答信号を受け取るように構成された少なくとも1つの測定ユニットと、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの1つまたは双方からオーム信号部分を判定するように構成された少なくとも1つの評価デバイスであって、オーム信号部分から電源のシステム抵抗を判定するように構成される、評価デバイスと、
を備える。
【0040】
ハンドヘルド医療デバイスは、本発明による方法の実施形態の1つ以上にしたがって、システム抵抗を判定する方法を実行するように構成することができる。ハンドヘルド医療デバイスの特徴の定義のため、そしてハンドヘルド医療デバイスの随意の詳細のために、以上で開示した方法、および以下で更に詳細に開示する方法の実施形態の1つ以上を参照するとよい。
【0041】
「測定ユニット」(measurement unit)という用語は、一般に、少なくとも1つの信号、具体的には、応答信号を検出するように構成することができる任意のデバイス、好ましくは電子デバイスを指すことができる。測定ユニットは、励起電圧信号に応答して生成される応答信号を検出するように構成することができる。測定ユニットおよび評価デバイスは、少なくとも部分的に分離されたコンポーネントとして設計されてもよい。測定ユニットは、評価デバイスの一部であってもよく、または別個のデバイスとして設計されてもよい。本明細書において使用する場合、「評価デバイス」(evaluation device)という用語は、一般に、応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの1つまたは双方からオーム信号部分を判定し、オーム信号部分から電源のシステム抵抗を判定するように構成された任意のデバイスを指す。評価デバイスは、応答を評価するように構成することができる。評価デバイスは、少なくとも1つのマイクロプロセッサを備えてもよい。一例として、評価デバイスは、1つ以上の特定用途集積回路(ASIC)のような1つ以上の集積回路、および/または1つ以上のコンピュータのような1つ以上のデータ処理デバイス、好ましくは、1つ以上のマイクロコンピュータおよび/またはマイクロコントローラのような1つ以上のデータ処理デバイスであってもよく、あるいはこれらを備えてもよい。1つ以上の前処理デバイス、および/または1つ以上の変換器および/または1つ以上のフィルタのような、電極信号を受け取りおよび/または前処理する1つ以上のデバイス等のデータ取得デバイスというような、追加のコンポーネントも含まれてもよい。更に、評価デバイスは、1つ以上のデータ記憶デバイスを備えてもよい。更に、先に概説したように、評価デバイスは、1つ以上のワイヤレス・インターフェースおよび/または1つ以上のワイヤ接続インターフェースのような、1つ以上のインターフェースを備えてもよい。評価デバイスは、少なくとも1つのアナログ/ディジタル変換器(ADC)および/または少なくとも1つのディジタル/アナログ変換器(DAC)を備えてもよい。例えば、ADCは、例えば、マイクロプロセッサの10~12ビットADCであってもよい。評価デバイスは、少なくとも1つのマイクロプロセッサ、セルラ・フォン、スマート・フォン、パーソナル・ディジタル・アシスタントの内1つ以上を備えてもよい。
【0042】
ハンドヘルド医療デバイスは、少なくとも1つの制御ユニット、および/または少なくとも1つの作動ユニットを備えてもよく、および/または少なくとも1つの制御ユニットおよび/または少なくとも1つの作動ユニットによって制御されるように構成されてもよい。本明細書において使用する場合、「制御ユニット」(control unit)という用語は、ハンドヘルド・デバイスの動作、例えば、インシュリン・ポンプの動作を制御する、および/またはハンドヘルド・デバイスの少なくとも1つの機能を制御するためというように、ハンドヘルド医療デバイスを制御するように構成された少なくとも1つのユニットを指す。本明細書において使用する場合、「作動ユニット」(actuation unit)という用語は、ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つの機能を作動させるように構成された少なくとも1つのユニットを指す。制御ユニットおよび/または作動ユニットが少なくとも1つのマイクロプロセッサで構成されてもよい。一例として、制御ユニットおよび/または作動ユニットは、1つ以上の特定用途集積回路(ASIC)のような1つ以上の集積回路、および/または1つ以上のコンピュータのような1つ以上のデータ処理デバイス、好ましくは1つ以上のマイクロコンピュータおよび/またはマイクロコントローラであってもよく、あるいはこれらを備えてもよい。更に、制御ユニットおよび/または作動ユニットは、1つ以上のワイヤレス・インターフェースおよび/または1つ以上のワイヤ接続インターフェースのような、1つ以上のインターフェースを備えてもよい。制御ユニットおよび/または作動ユニットは、セルラ・フォン、スマート・フォン、パーソナル・ディジタル・アシスタントの内1つ以上であってもよく、あるいはこれらを備えてもよい。
【0043】
ハンドヘルド医療デバイスは、このハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つのエレメントに給電するように構成された少なくとも1つの電源回路と、システム抵抗を判定するように構成された少なくとも1つのシステム抵抗測定回路とを備えてもよい。本明細書において説明する場合、「システム抵抗測定回路」(system resistance measurement circuit)という用語は、少なくとも1つの電子コンポーネントを含む電気回路を指す。例えば、システム抵抗測定回路は、先に説明したように、電源と、信号生成デバイスおよび測定ユニットに接続された基準抵抗器とを備えてもよい。ハンドヘルド医療デバイスは、電源回路およびシステム抵抗測定回路を分離し、および/または電源回路とシステム抵抗測定回路との間で切り替えるように構成された少なくとも1つの切り替えエレメントを備えてもよい。切り替えエレメントは、少なくとも1つのアナログ・スイッチ、少なくとも1つのダイオード、少なくとも1つの電界効果トランジスタ(FET)から成る1群から選択された切り替えエレメントでもよい。ハンドヘルド医療デバイスは、少なくとも2つの動作モードで動作するように構成することができる。第1動作モードでは、ハンドヘルド医療デバイスは、システム抵抗を判定するように構成することができ、第2動作モードでは、ハンドヘルド医療デバイスの電源は、ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つのエレメントに給電するように構成することができる。
【0044】
提案する方法およびハンドヘルド医療デバイスは、既知のデバイスおよび方法に対して多くの利点を提供する。提案する方法およびハンドヘルド医療デバイスは、ハンドヘルド医療デバイスの電源の有効で高速な品質制御を可能にする。具体的には、提案する方法およびハンドヘルド医療デバイスは、ハンドヘルド医療デバイスの電源の不足電圧またはバッテリの故障を信頼性高く判定することを可能にすることができる。更に具体的には、提案する方法およびハンドヘルド医療デバイスは、電源のシステム抵抗の迅速で信頼性の高いオンボード測定(on-board measurement)を、非常に簡素にそして低コストで可能にする。具体的には、高速遷移DCフランクを有する励起電圧信号を使用することにより、電源のオーム信号部分および虚信号部分を分離することが可能となり、したがって、応答信号の分析の簡素化、およびオーム信号部分からのシステム抵抗の判定を可能にする。つまり、システム抵抗の迅速な判定、ならびに電源についての情報、例えば、バッテリ寿命および/または充電、および/または変化、具体的には欠陥についての情報、および/または電気接点の経年劣化についての情報の迅速な判定が可能になるとして差し支えない。更に、ハンドヘルド医療デバイスの標準的なハードウェアまたは利用可能なハードウェアへの簡単な実装が、例えば、今日一般的なマイクロプロセッサにおいて見られる標準的な10ビット~12ビットのADCを使用することによって可能になる。更に、オーム信号部分を使用して、分析を簡素化することにより、測定された応答データを時間ドメインに残しておくことが可能になり、複雑なハードウェアを必要とする、周波数ドメインへの変換が不要になる。つまり、標準的なマイクロプロセッサのような、ハンドヘルド医療デバイスの標準的なまたは利用可能なハードウェアの部品を使用することが可能になる。更に具体的には、ハンドヘルド医療デバイスのこのような設計は、比較的簡素で価格効率的であり、不良部品のリスクを下げ、電力性能を高め、ハンドヘルド医療デバイスを一層安全にそして堅牢にする。DCパルスの使用による利点は、例えば、コード空間および複雑なハードウェアを必要とするフーリエ変換によって、時間系測定値から周波数系測定値に変換する必要がないことである。他の利点は、測定所要時間(duration)を短縮すること、具体的には、測定時間(times)、測定周期(period)、取得時間、または検査時間を短縮できる場合があることである。具体的には、後続の非常に短い時間間隔で電源の品質を監視し、ほぼ連続的な監視を可能にすることができる。
【0045】
本発明の発見を纏めると、以下の実施形態が好ましい。
実施形態1:ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つの電源のシステム抵抗を判定する方法であって、この方法は、
a)少なくとも1つの励起電圧信号を生成するステップであって、励起電圧信号が少なくとも1つの直流(DC)電圧信号を含み、DC励起電圧信号が20ns以下の高速遷移DCフランクを有する、ステップと、
b)所定の抵抗値または既定の抵抗値を有する少なくとも1つの基準抵抗器に、励起電圧信号を印加するステップであって、基準抵抗器が電源と直列に配置される、ステップと、
c)電源の応答信号を測定するステップと、
d)応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの1つまたは双方から、オーム信号部分を判定するステップと、
e)オーム信号部分から電源のシステム抵抗を判定するステップと、
を含む。
【0046】
実施形態2:直前の実施形態による方法において、励起電圧信号が方形波信号または正弦波信号を含む。
実施形態3:前出の実施形態のいずれか1つによる方法において、励起電圧信号が、パルスのような、不連続信号を含む。
【0047】
実施形態4:前出の実施形態のいずれか1つによる方法において、基準抵抗器が電源の少なくとも1つの電気接点に接続される。
実施形態5:前出の実施形態のいずれか1つによる方法において、ステップd)が、励起電圧信号の誘導信号形状から少なくとも1つの偏差および/または差を判定するステップを含む。
【0048】
実施形態6:前出の実施形態のいずれか1つによる方法において、電源のシステム抵抗Rsystemが、
【0049】
【0050】
にしたがって判定され、
ここで、Utargetは励起電圧信号のパルス高であり、Rrefは基準抵抗であり、Umeasuredは、応答信号の立ち上がり信号フランクの開始時における応答信号の高さである。
【0051】
実施形態7:前出の実施形態のいずれか1つによる方法において、この方法が、少なくとも1つの状態を判定するステップを含み、電源の少なくとも1つの状態情報が、電源の判定されたシステム抵抗を、少なくとも1つの所定のシステム抵抗値または既定のシステム抵抗値と比較することによって判定される。
【0052】
実施形態8:前出の実施形態のいずれか1つによる方法において、この方法が、少なくとも1つのフェイルセーフ・ステップを含み、フェイルセーフ・ステップにおいて、電源の判定されたシステム抵抗を、少なくとも1つの所定の閾値または既定の閾値と比較する。
【0053】
実施形態9:前出の実施形態のいずれか1つによる方法において、フェイルセーフ・ステップにおいて、判定したシステム抵抗が、既定の値または所定の値だけ閾値を超えた場合に、警告を生成する。
【0054】
実施形態10:2つの直前の実施形態のいずれか1つによる方法において、フェイルセーフ・ステップにおいて、判定したシステム抵抗が、既定の値または所定の値だけ閾値を超えた場合に、電源の中断を開始する。
【0055】
実施形態11:コンピュータ・プログラムであって、このプログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、前出の実施形態のいずれか1つにしたがって、システム抵抗を判定する方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含む。
【0056】
実施形態12:前出の実施形態のいずれか1つにしたがって、システム抵抗を判定する方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ読み取り可能媒体であって、コンピューティング・デバイスがコンピュータによって装備される。
【0057】
実施形態13:プログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、前出の実施形態のいずれか1つにしたがって、システム抵抗を判定する方法を実行するためのプログラム・コード手段が機械読み取り可能担体上に格納されている、コンピュータ・プログラム製品。
【0058】
実施形態14:ハンドヘルド医療デバイスであって、
-ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つのエレメントに給電するための少なくとも1つの電源と、
-所定の基準抵抗または既定の基準抵抗を有する少なくとも1つの基準抵抗器であって、電源と直列に配置される、基準抵抗器と、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成するように構成された少なくとも1つの信号生成デバイスであって、励起電圧信号が少なくとも1つの直流(DC)電圧信号を含み、DC電圧信号が20ns以下の高速遷移DCフランクを有し、励起電圧信号を基準抵抗器に印加するように構成される、信号生成デバイスと、
-少なくとも1つの応答信号を受け取るように構成された少なくとも1つの測定ユニットと、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの1つまたは双方からオーム信号部分を判定するように構成された少なくとも1つの評価デバイスであって、オーム信号部分から電源のシステム抵抗を判定するように構成される、評価デバイスと、
を備える。
【0059】
実施形態15:直前の実施形態によるハンドヘルド医療デバイスにおいて、ハンドヘルド医療デバイスが、少なくとも1つのハンドヘルド・メータのような少なくとも1つのハンドヘルド分析デバイス、少なくとも1つのインシュリン・ポンプ、少なくとも1つの長期ECGのような、少なくとも1つの身体機能を監視する少なくとも1つの携帯用センサ、埋め込み可能または挿入可能な連続グルコース・センサから成る1群から選択される。
【0060】
実施形態16:ハンドヘルド医療デバイスに言及する前出の実施形態のいずれか1つによるハンドヘルド医療デバイスにおいて、電源(power supply)が、少なくとも1つのバッテリ、少なくとも1つの再充電可能バッテリ、少なくとも1つの電気二重層キャパシタ(EDLC)から成る1群から選択された少なくとも1つの電力源(power source)を含む。
【0061】
実施形態17:ハンドヘルド医療デバイスに言及する前出の実施形態のいずれか1つによるハンドヘルド医療デバイスにおいて、評価デバイスが、少なくとも1つのマイクロプロセッサ、セルラ・フォン、スマート・フォン、パーソナル・ディジタル・アシスタントの内1つ以上を含む。
【0062】
実施形態18:ハンドヘルド医療デバイスに言及する前出の実施形態のいずれか1つによるハンドヘルド医療デバイスにおいて、評価デバイスが、少なくとも1つのアナログ/ディジタル変換器(ADC)および/または少なくとも1つのディジタル/アナログ変換器(DAC)を備える。
【0063】
実施形態19:ハンドヘルド医療デバイスに言及する前出の実施形態のいずれか1つによるハンドヘルド医療デバイスであって、このハンドヘルド医療デバイスが、ハンドヘルド医療デバイスの少なくとも1つのエレメントに給電するように構成された少なくとも1つの電源回路と、システム抵抗を判定するように構成された少なくとも1つのシステム抵抗測定回路とを備え、ハンドヘルド医療デバイスが、電源回路およびシステム抵抗測定回路を分離するように構成された少なくとも1つの切り替えエレメントを備える。
【図面の簡単な説明】
【0064】
本発明の更に他の随意の特徴および実施形態について、好ましい実施形態についての後続の説明において更に詳しく、好ましくは従属請求項と併せて開示する。当業者には認められるであろうが、本発明において、それぞれの随意の特徴は、別個に実現されても、任意の実現可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されるのではない。図において、実施形態を模式的に示す。本明細書において、これらの図における同一の参照番号は、同一のエレメントまたは機能的に同等のエレメントを指す。
【
図1】
図1は、本発明によるハンドヘルド医療デバイスの電源のシステム抵抗を判定する方法を実行するための検査設定を示す。
【
図3】
図3は、本発明によるハンドヘルド医療デバイスへのシステム抵抗測定回路の実装の実施形態を示す。
【
図4】
図4A~
図4Fは、実験結果、具体的には、測定された励起電圧信号(
図4A、
図4D)、曲がっていない接点(non-bent contact)を有する電源に対する応答信号(
図4B、
図4E)、および曲がった接点を有する電源に対する応答信号(
図4C、
図4F)を示す。
【
図5】
図5は、本発明によるハンドヘルド医療デバイスへのシステム抵抗測定回路の実装の他の実施形態を示す。
【
図6】
図6は、本発明によるハンドヘルド医療デバイスへのシステム抵抗測定回路の実装の更に他の実施形態を示す。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、理想的な作用EDLC(参照番号144で示す)を用いて室温で行ったシステム抵抗の実験の結果を示し、加熱中(参照番号146で示す)および加熱後(参照番号148で示す)における2つの型のEDLCについてΩ単位で示す。
【
図8】
図8は、本発明によるハンドヘルド医療デバイスへのシステム抵抗測定回路の実装の更に他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、本発明によるハンドヘルド医療デバイス112の電源110のシステム抵抗を判定する方法を実行するための検査設定を示す。電源110は、少なくとも1つの電力源(power source)、少なくとも1つの電気接点、少なくとも1つの供給線から成る1群から選択された少なくとも1つのエレメントを備えることができる。電力源110は、少なくとも1つのバッテリ、例えば、少なくとも1つのコイン・バッテリ、少なくとも1つのAA、AAA、または他のバッテリ、少なくとも1つの再充電可能バッテリ、少なくとも1つの電気二重層キャパシタ(EDLC)から成る1群から選択された少なくとも1つの電力源を備えることができる。
図1に示す実施形態では、電源はバッテリで構成することができる。
【0066】
本発明の方法は、以下のステップ、
a)少なくとも1つの励起電圧信号(
図1において参照番号114で示す)を生成するステップであって、励起電圧信号が少なくとも1つの直流(DC)電圧信号を含み、DC電圧信号が20ns以下の高速遷移DCフランクを有する、ステップと、
b)所定の抵抗値または既定の抵抗値を有する少なくとも基準抵抗器116に、励起電圧信号114を印加するステップであって、基準抵抗器116が電源110と直列に配置される、ステップと、
c)電源の応答信号を測定するステップと、
d)応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの1つまたは双方から、オーム信号部分を判定するステップと、
e)オーム信号部分から電源116のシステム抵抗を判定するステップと、
を含む。
【0067】
励起電圧信号114は、少なくとも1つの直流(DC)電圧信号を含む。励起電圧信号114は、方形波信号および/または正弦波信号を含んでもよい。例えば、励起電圧信号114が正弦波信号でもよく、この場合、励起電圧信号114の周波数は20Hzから300kHzとしてもよい。励起電圧信号114は、パルスのような不連続信号を含んでもよい。励起電圧信号114は、20ns以下、好ましくは10ns以下、最も好ましくは5ns以下の高速遷移DCフランクを有する。例えば、励起電圧信号114は繰り返し可能なサイクルを含んでもよく、繰り返し可能なサイクルは少なくとも1つの励起信号フランクを含む。励起信号フランクは、立ち上がり信号フランクまたは立ち下がり信号フランクでもよい。励起電圧信号114の信号フランクは、信号フランクの第1点から励起信号フランクの第2点までの、マイクロ秒からナノ秒範囲の信号変化を有してもよい。第1点は、励起電圧信号114の局所的および/または全体的な最小値であってもよい。第1点は、励起電圧信号の第1プラトーであってもよい。第1点は、信号の通しの(through)値および/または低い値であってもよい。第2点は、励起励起信号の局所的および/または全体的な最大値であってもよい。第2点は、励起電圧信号114の印加の間に到達することができる、励起電圧信号114の第2プラトーであってもよい。第2点は、信号のピーク値または高い値であってもよい。励起電圧信号114は、少なくとも1つの信号生成デバイス118によって生成されてもよい。信号生成デバイス118は、少なくとも1つの電圧源を含んでもよい。信号生成デバイス118は、少なくとも1つの方形波生成器および少なくとも1つの正弦波生成器から成る1群から選択された少なくとも1つの関数生成器(function generator)を含んでもよい。信号生成デバイス118は、1つ以上のシュミット・トリガを含む少なくとも1つの高速遷移方形波発振器を含んでもよい。信号生成デバイス118は、測定電子機器の一部であってもよく、および/またはハンドヘルド医療デバイス112の測定電子回路に接続されてもよい。信号生成デバイス118は、評価デバイスのというような、測定電子機器の一部であってもよく、または別個のデバイスとして設計されてもよい。
【0068】
励起電圧信号114は、所定の抵抗値または既定の抵抗値を有する少なくとも1つの基準抵抗器116に印加される。基準抵抗は、複数の基準測定値から決定された、具体的には予め決定されている、平均値であってもよい。基準抵抗器116は、例えば、直接または電気線によって、電源110の少なくとも1つの電気接点に接続されてもよい。電源110は2つの電気接点を含むことができ、第1電気接点が少なくとも基準抵抗器116に接続されてもよく、第2電気接点が接地に接続されてもよい。基準抵抗器116は、信号生成デバイス118の少なくとも1つの出力端子に接続することができる。基準抵抗器116は、電源110と直列に配置される。例えば、基準抵抗器116は第1電気接点を含むことができ、第1電気接点は、例えば、直接または間接的に、電気線を使用して、信号生成デバイス118の出力端子に接続されてもよい。基準抵抗器116は、第2電気接点を含むことができ、第2電気接点は、例えば、直接または間接的に、電気線を使用して、電源110の少なくとも1つの電気接点に接続されてもよい。信号生成器118は、基準抵抗器116を介して、電源110に接続されてもよい。例えば、基準抵抗器116は56Ωの抵抗を有してもよい。
【0069】
ステップc)において、電源110の応答信号を測定する。先に概説したように、基準抵抗器116および電源110は直列に配置される。励起電圧信号114が基準抵抗器116に印加されると、電流が抵抗器を通過して電源110に流れる。少なくとも1つの測定ユニット120を使用することによって、応答信号を測定することができる。測定ユニット120は、少なくとも1つの応答信号検出器、例えば、少なくとも1つの信号アナライザおよび/または少なくとも1つのオシロスコープを備えてもよい。応答信号は、電流応答信号であってもよく、測定された応答電圧は、電流/電圧変換器を使用して判定することができる。
図1において、測定ユニット120は、10MΩの入力を有するオシロスコープであってもよい。
【0070】
ステップd)において、具体的には、少なくとも1つの評価デバイス122を使用することによって、応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方から、オーム信号部分を判定する。先に概説したように、高速遷移フランクを有するDC電圧信号を使用することにより、オーム信号部分および虚信号部分の分離が可能になる。応答信号は、電源の容量部のために、オーム信号部と非オーム信号部分とを含むとして差し支えない。応答信号の信号形状および信号高の一方または双方を分析することによって、オーム信号部分を判定することができる。オーム信号部分は、励起電圧信号114の形状および/または高さ、ならびに応答信号の形状および/または高さを比較することによって、判定することができる。応答信号は、少なくとも1つの信号フランク、具体的には、少なくとも1つの立ち上がり信号フランクを含んでもよい。誘導方形波または正弦電圧信号の特徴付けを通じて、応答信号の信号フランクからオーム信号部分を判定することができる。具体的には、応答信号の信号形状および信号高の一方または双方を分析することによって、応答信号の実部および虚部の分離が可能になるとして差し支えない。ステップd)は、励起電圧信号の誘導信号形状および/または高さから少なくとも1つの偏差(deviation)および/または差(difference)を判定するステップを含むことができる。具体的には、誘導信号形状および/または高さから、偏差および/または差を判定することができる。応答信号は、励起電圧信号と比較すると、電源における電圧降下による垂直降下と、電源の容量部からの充電積分による後続の立ち上がり信号フランクとを呈することが分かった。以下では、これを立ち上がり信号フランクと呼ぶ。電圧降下は、システム抵抗の存在に起因するとしてよい。電圧降下は、観察可能な電圧変化であるとしてよい。例えば、電圧は、高い値からの5~50%の偏差を示す場合もある。また、システム抵抗の検出によって、システム性能に影響を及ぼす可能性がある、素早い抵抗変化遷移も検出することができる。応答信号のオーム信号部分は、電圧降下値、即ち、立ち上がり信号フランクの開始時における電圧値を判定することによって、識別することができる。
【0071】
ステップe)において、電源110のシステム抵抗を、具体的には、評価デバイス122を使用することによって、オーム信号部分から判定する。具体的には、電源のシステム抵抗Rsystemは、次の式にしたがって判定することができる。
【0072】
【0073】
ここで、Utargetは励起電圧信号のパルス高であり、Rrefは基準抵抗であり、Umeasuredは、立ち上がり信号フランク、即ち、オーム信号部分の開始時における応答信号の高さである。誘導信号形状および/または高さの判定は、例えば、予め判定されていても、および/またはこの方法の間に判定されてもよい。例えば、この方法は、励起電圧信号114のパルス形状および/または高さを判定するステップを含んでもよい。例えば、信号生成デバイス118の出力端子を、少なくとも1つの測定ユニット120に接続してもよい。少なくとも1つの測定ユニット120は、励起電圧信号114を受け取り、励起電圧信号のパルス高を判定するように構成することができる。
【0074】
図2は、例示的な測定応答信号、具体的には、電圧UをmV単位で、μsを単位とする時間tの関数として示す。
図2に示す応答信号は、立ち上がり信号フランクを有し、U
measuredの電圧値から開始し、励起電圧信号U
targetのパルス高まで立ち上がる。
図2において、オーム信号部分は「Re」で示され、虚信号部分は「Im」で示されている。オーム信号部分および虚信号部分は、応答信号の形状および/または高さを分析することによって、即ち、立ち上がりフランクの開始時における電圧値を判定することによって分離することができる。
【0075】
図3は、ハンドヘルド医療デバイス112へのシステム抵抗測定回路124の実装の実施形態を示す。ハンドヘルド医療デバイス112は、ハンドヘルド医療デバイス112の少なくとも1つのエレメント128に給電するように構成された少なくとも1つの電源回路126と、システム抵抗を判定するように構成された少なくとも1つのシステム抵抗測定回路124とを備えることができる。システム抵抗測定回路124は、電源110と、信号生成デバイス118および測定ユニット120に接続された基準抵抗器116とを備えることができる。
図3に示す実施形態では、電源110は、バッテリ電源および接点抵抗、接点端子上に可能な腐食を含む線抵抗、同様に抵抗を形成し電圧降下に至る可能性があるフューズ、およびバッテリ自体における内部抵抗を含む。内部抵抗は、バッテリの容量を低下させ、貧弱な性能に陥らせる可能性がある。
図3に示す実施形態では、信号生成デバイス118および測定ユニット120は、ハンドヘルド医療デバイス112のマイクロプロセッサ128として具体化されてもよい。マイクロプロセッサおよびそのサブシステムは、ハンドヘルド医療デバイス112の他のコンポーネント130を制御するように構成することができ、他のコンポーネント130へのピンが
図3において示されている。例えば、ハンドヘルド医療デバイスがメータである場合、他のコンポーネント130は、ユーザ・インターフェース、血液または試料測定、および他の機能を備えるのでもよい。参照番号132は、マイクロプロセッサ128上の汎用I/Oピンを表す。
【0076】
測定ユニット120は、励起電圧信号114に応答して生成された応答信号を検出するように構成する(adapted)ことができる。測定ユニット120および評価デバイス122は、マイクロプロセッサ128のコンポーネントとして設計してもよい。評価デバイス122は、応答を評価するように構成することができる。評価デバイス122は、1つ以上の特定用途集積回路(ASIC)のような1つ以上の集積回路、および/または1つ以上のコンピュータ、好ましくは、1つ以上のマイクロコンピュータおよび/またはマイクロコントローラのような1つ以上のデータ処理デバイスであってもよく、あるいはこれらを備えてもよい。1つ以上の前処理デバイス、および/または1つ以上の変換器および/または1つ以上のフィルタのような、電極信号を受け取りおよび/または前処理する1つ以上のデバイスのようなデータ取得デバイスというような、追加のコンポーネントも含まれてもよい。更に、評価デバイス122は、1つ以上のデータ記憶デバイスを備えてもよい。更に、評価デバイス122は、1つ以上のデータ記憶デバイスを備えてもよい。更に、先に概説したように、評価デバイス122は、1つ以上のワイヤレス・インターフェースおよび/または1つ以上のワイヤ接続インターフェースのような、1つ以上のインターフェースを備えてもよい。評価デバイス122は、少なくとも1つのアナログ/ディジタル変換器(ADC)134を備えてもよい。例えば、ADC134は10~12ビットADCであってもよい。システム抵抗測定回路124は、
図8に示す、他のADC135を備えてもよい。他のADC135は、励起電圧信号U
targetを判定するために使用することができる。したがって、ADC135を、信号生成デバイス118と基準抵抗器116と直列に、そしてこれらの間に配置するとよい。
図8の他のエレメントの説明に関して、
図3を引用する。
【0077】
ハンドヘルド医療デバイス112は、少なくとも1つの切り替えエレメント136を備えてもよい。例えば、
図3の実施形態では、切り替えエレメントは、電源回路126およびシステム抵抗測定回路124を分離し、および/または電源回路126とシステム抵抗測定回路124との間で切り替えるように構成された少なくとも1つの電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。ハンドヘルド医療デバイス112は、少なくとも2つの動作モードで動作するように構成することができる。第1動作モードでは、ハンドヘルド医療デバイス112は、システム抵抗を判定するように構成することができ、第2動作モードでは、ハンドヘルド医療デバイス112の電源110は、ハンドヘルド医療デバイス112の少なくとも1つのエレメント130に給電するように構成することができる。I/Oピンと切り替えエレメント136との間で発見されるような、既知の基準抵抗器116を使用することにより、システム抵抗を判定することができる。有利なこととして、必要なインターフェース、ADC、I/Oピン、基準抵抗器116、切り替え回路136は、低コストで入手可能なコンポーネントとなる。
【0078】
図4A~
図4Fは、
図1に示す検査設定によって、検査対象のAAAバッテリおよび抵抗R
ref=10Ωを有する基準抵抗器を用いて判定した実験結果を示す。
図4D~
図4Fは、オシロスコープ上における測定のスクリーンショットを示し、
図4A~
図4Cは対応する抽出模式図を示し、システム抵抗の判定のための量を示す。
図4A~
図4Dは、測定された励起電圧信号114、この場合は、方形波DC電圧信号の電圧曲線を、時間の関数として示す。U
targetの全パルス高は、183mVと判定された。
図4Bおよび
図4Eは、曲がっていない接点を有するAAAバッテリについての、対応する応答信号を示す。立ち上がりフランクの開始時における電圧値は、U
measured=125mVと判定された。つまり、曲がっていない接点を有する電源のシステム抵抗は、次の式にしたがって判定することができる。
【0079】
【0080】
図4Cおよび
図4Fは、同じAAAバッテリであるが、接点が曲がっている電源についての応答信号を示す。これは、バッテリの腐食した接点または悪い接点をシミュレートしたものであり、即ち、内部抵抗の上昇によって、接点抵抗が高くなり、バッテリの寿命を短縮させる場合の応答信号を示す。立ち上がりフランクの開始時における電圧値は、U
measured=134mVと判定された。つまり、曲がった接点を有する電源のシステム抵抗は、次の式にしたがって判定することができる。
【0081】
【0082】
曲がっていない接点を有するシステム抵抗と比較すると、5.7Ωの余分なシステム抵抗が観察された。これはバッテリの「寿命」を著しく短縮させる。具体的には、バッテリの「寿命」として示すが、実際には、バッテリ自体は影響を受けず、曲がった接点によって誘発されるIR降下の増大により、給電されるシステムが予測よりも早く停止する(shut down)おそれがある。他の測定例は、経年劣化、腐食等が原因で生じる内部抵抗増大による真のシステム抵抗の蓄積(resistance build up)を示す。EDLCのシステム抵抗の判定は、アナログ検査設定で実行することもできる。例えば、EDLCの状態をその使用中に特徴付けるために、内部抵抗を測定することができる。
【0083】
図5は、ハンドヘルド医療デバイス112へのシステム抵抗測定回路124の実装の更に他の実施形態を示す。電源110は、少なくとも1つのバッテリまたは少なくとも1つのEDLCを、電力源として備えてもよい。
図3におけると同様、ハンドヘルド・デバイス112は、システム抵抗測定回路124と1つの電源回路126とを備えることができる。
図5において、電源110は、ハンドヘルド医療デバイスにおけるバックアップ電源として実装されてもよい。主電源は、
図5においてVCCと示されている。主電源およびバックアップ電源は、D2で示すダイオード138を使用することによって、分離されている。
図5の実施形態では、システム抵抗測定回路124および1つの電源回路126は、D1で示すダイオード138を使用することによって、分離することができる。
図5に示す他のコンポーネントの説明に関しては、
図3の説明を引用する。
【0084】
図6は、ハンドヘルド医療デバイス112へのシステム抵抗測定回路124の実装の更に他の実施形態を示す。
図6の実施形態では、ハンドヘルド医療デバイス112はインシュリン・ポンプとして具体化されてもよい。ハンドヘルド医療デバイスは、主電力源139を備えることができ、電源110はバックアップ電源として具体化されてもよい。この実施形態におけるシステム抵抗測定回路124は、電気二重層キャパシタを含む電源110のシステム抵抗を判定するように構成する(adapted)ことができる。電源110は、バッテリの変更中における電力バックアップとして、具体的には、リアル・タイム・クロックのためのバックアップとして、またはバッテリ電源喪失中における電力バックアップとしても使用することができ、ユニットに問題があること、例えば、インシュリン・ポンプ内においてバッテリの故障または電力喪失があることをユーザに警告し、ポンプがインシュリンを送出していないことをユーザに警告することができる。
図3におけると同様、ハンドヘルド医療デバイス112は、アナログ・スイッチまたはFETのような、切り替えエレメント136を備えてもよく、切り替えエレメント136は、システム抵抗測定回路124を電源回路126から分離するように構成され(adapted)、ハンドヘルド医療デバイスおよびEDLDにエネルギを供給するための標準的な設定としてよい。更に、ハンドヘルド医療デバイス112は、リアル・タイム・クロック(RTC)140を備えてもよい。リアル・タイム・クロック140は、クロックを動作させ続けるために、常に電力を必要とする。これは、例えば、追加インスリン療法を規則的なスケジュールで時間指定するためにクロックを使用するインシュリン・ポンプ・ユーザにとっては極めて重要であると言える。故障またはドリフトは、これらの用量投与が誤った時機に行われることに繋がる可能性がある。電力喪失が起こると、EDLCが直ちに電源を引き継ぎ、製品に問題があることをユーザに警告する流れが、
図6において参照番号142で示されている。先に説明したように、基準抵抗器116は、電源110を通る応答信号の高さを計算するために使用することができる。システム抵抗は、EDLCへの完全な接続、ならびに全ての接触抵抗、接点端子上において生じ得る腐食を含む線抵抗、EDLCに接続されており同様に抵抗を形成し電圧降下の原因となる他の電子コンポーネント、EDLD自体の内部抵抗を含むことができ、EDLCの容量を低下させ、性能低下および短絡を招く可能性がある。
【0085】
図7Aおよび
図7Bは、理想的な作用EDLC(参照番号144で示す)を用いて室温で行ったシステム抵抗の実験の結果を示し、加熱中(参照番号146で示す)および加熱後(参照番号148で示す)における2つの型のEDLCについてΩ単位で示す。
図1におけると同様の実験設定を使用し、
図1の電源110を2つの型のEDLC、即ち、CG 5.5V 1.0FおよびXH141と置き換えた。双方ともSeiko社から入手可能である。EDLCの応答信号を、室温、即ち、25°Cで測定し、次いで約50°Cに加熱し、更に室温まで冷却した。
図7Aは、CG 5.5V 1.0F型の7つのEDLCについての実験結果を示し、
図7Bは、XH141型の5つのEDLCについての実験結果を示す。双方の図において、加熱の前、最中、および後における°C単位の温度Tを、EDLDの数の関数として示す。最初の室温における測定中では、棒グラフ144を参照すると、1からの内部抵抗が、CG5.5V 1.0Fでは、0.5Ωまで異なり(
図7Aにおける棒グラフ144を参照)、またはXH141では5Ωまで異なる(
図7Bにおける棒グラフ144を参照)ことを観察することができる。これは、EDLCがその電気的仕様の範囲内で動作していることを示す。この種の測定は、設置前のEDLCを評価する(qualify)ために使用することができる。EDLCを50°Cまで加熱したとき(
図7Aおよび
図7Bにおける棒グラフ146を参照)、EDLCは高い内部抵抗を発生し、もはやキャパシタとして機能していない。加熱サイクル後の測定では、棒グラフ148を参照すると、2回目の室温での測定は、非常に高い残留内部抵抗を示すか、または加熱によってEDLCが破壊されており、測定値を判定できないことを示す。加熱後のキャパシタの一部は、判定できる測定値を有していない。何故なら、これらは短絡に至っており、内部抵抗も容量も全く伝えていない(deliver)からである。短絡は、瞬時的なバッテリ放電、加熱、そして恐らくはユーザにとって危険な状況を招ずる原因となり得る。例えば、リチウム・ポリマー・バッテリのようなエネルギ源が使用される場合、膨大な量の電流および熱を発生する可能性がある。
【0086】
バッテリまたはキャパシタ電源のいずれかにおいてパルス測定を使用すると、生産時点および製品寿命の間において悪い変化(negative changes)を検出する際に多くの利点を示す。この型式の測定戦略は、高価な電子ハードウェアもソフトウェア・サポートも必要ない。また、この技法を使用すると、漏れやすいスーパー・キャパシタ(leaky super-cap)、不良バッテリ接点、および容量を検出する方法も原因となる可能性がある、患者に対するリスクを低減することができる。
【符号の説明】
【0087】
110 電源
112 ハンドヘルド医療デバイス
114 励起電圧信号
116 基準抵抗器
118 信号生成デバイス
120 測定ユニット
122 評価デバイス
124 システム抵抗測定回路
126 電源回路
128 マイクロプロセッサ
130 他のコンポーネント
132 I/Oピン
134 ADC
135 他のADC
136 切り替えエレメント
138 ダイオード
139 主電力源
140 リアル・タイム・クロック
142 電力喪失
144 棒グラフ
146 棒グラフ
148 棒グラフ