(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】塗装設備の排水リサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20220729BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220729BHJP
C25D 13/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C02F1/00 M
C02F1/00 S
C02F1/00 V
C02F1/00 L
C02F1/44 K
C25D13/00 307B
(21)【出願番号】P 2020563738
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2020040657
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 秀久
(72)【発明者】
【氏名】小池 俊彦
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147975(JP,A)
【文献】特開平08-141598(JP,A)
【文献】特開2002-059162(JP,A)
【文献】特開平09-302487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-78
B01D 61/00-58
C25D 9/00-12、13/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物が脱脂液により脱脂処理される脱脂処理部と、
前記脱脂処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される脱脂後水洗部と、
前記脱脂後水洗部で洗浄された被塗物が化成液により化成処理される化成処理部と、
前記化成処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される化成後水洗部と、
前記化成後水洗部で洗浄された被塗物が電着液により電着塗装される電着塗装部と、
前記電着塗装部で電着塗装された被塗物が洗浄水により洗浄される電着後水洗部とが備えられている塗装設備の排水リサイクルシステムであって、
前記電着後水洗部において被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を濾過処理し、前記化成後水洗部で使用する洗浄水を生成する濾過処理装置と、
前記化成後水洗部において被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を、系外への排出水と、前記電着後水洗部で使用する洗浄水とに分離する再生処理装置と、
前記化成後水洗部、前記再生処理装置、前記電着後水洗部、前記濾過処理装置を接続し洗浄水をこの順で循環させる循環路と、
洗浄水の流量を制御する制御部とを備え
、
前記電着後水洗部で使用する洗浄水として系外からの洗浄水を前記電着後水洗部に供給する第1洗浄水供給路が設けられ、
前記電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する第1計測手段が設けられ、
前記制御部は、前記第1計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第1洗浄水供給路から前記電着後水洗部に供給される洗浄水の流量を制御する、排水リサイクルシステム。
【請求項2】
前記電着後水洗部には、洗浄水により被塗物を洗浄する電着後水洗手段が被塗物の搬送方向に沿って複数段設けられ、
前記第1洗浄水供給路からの洗浄水は、最終段の電着後水洗手段で使用する洗浄水として最終段の電着後水洗手段に供給され、
前記第1計測手段は、最終段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、最終段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測し、
前記制御部は、前記第1計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第1洗浄水供給路から最終段の電着後水洗手段に供給される洗浄水の流量を制御する、請求項1に記載の排水リサイクルシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記再生処理装置から前記電着後水洗部に供給される洗浄水の流量を更に制御する、請求項1又は2に記載の排水リサイクルシステム。
【請求項4】
前記化成後水洗部で使用する洗浄水として系外からの洗浄水を前記化成後水洗部に供給する第2洗浄水供給路が設けられ、
前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する第2計測手段が設けられ、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第2洗浄水供給路から前記化成後水洗部に供給される洗浄水の流量を制御する、請求項1から3のいずれか一項に記載の排水リサイクルシステム。
【請求項5】
前記化成後水洗部には、洗浄水により被塗物を洗浄する化成後水洗手段が被塗物の搬送方向に沿って複数段設けられ、
前記第2洗浄水供給路からの洗浄水は、最終段の化成後水洗手段で使用する洗浄水として最終段の化成後水洗手段に供給され、
前記第2計測手段は、最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測し、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第2洗浄水供給路から最終段の化成後水洗手段に供給される洗浄水の流量を制御する、請求項4に記載の排水リサイクルシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記濾過処理装置から前記化成後水洗部に供給される洗浄水の流量を更に制御する、請求項4又は5に記載の排水リサイクルシステム。
【請求項7】
前記制御部は、系外からの洗浄水の流量と略同一になるように、前記再生処理装置から系外への排出水の流量を制御する、請求項1から6のいずれか一項に記載の排水リサイクルシステム。
【請求項8】
前記第1計測手段及び/又は前記第2計測手段は、濁度、電気伝導度、pH、化成液濃度及び電着液濃度の少なくとも一つを計測するものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の排水リサイクルシステム。
【請求項9】
被塗物が脱脂液により脱脂処理される脱脂処理部と、
前記脱脂処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される脱脂後水洗部と、
前記脱脂後水洗部で洗浄された被塗物が化成液により化成処理される化成処理部と、
前記化成処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される化成後水洗部と、
前記化成後水洗部で洗浄された被塗物が電着液により電着塗装される電着塗装部と、
前記電着塗装部で電着塗装された被塗物が洗浄水により洗浄される電着後水洗部とが備えられている塗装設備の排水リサイクルシステムであって、
前記電着後水洗部において被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を濾過処理し、前記化成後水洗部で使用する洗浄水を生成する濾過処理装置と、
前記化成後水洗部において被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を、系外への排出水と、前記電着後水洗部で使用する洗浄水とに分離する再生処理装置と、
前記化成後水洗部、前記再生処理装置、前記電着後水洗部、前記濾過処理装置を接続し洗浄水をこの順で循環させる循環路と、
洗浄水の流量を制御する制御部とを備え、
前記化成後水洗部で使用する洗浄水として系外からの洗浄水を前記化成後水洗部に供給する第2洗浄水供給路が設けられ、
前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する第2計測手段が設けられ、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第2洗浄水供給路から前記化成後水洗部に供給される洗浄水の流量を制御する、排水リサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水リサイクルシステムに関し、詳しくは、被塗物が脱脂液により脱脂処理される脱脂処理部と、脱脂処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される脱脂後水洗部と、脱脂後水洗部で洗浄された被塗物が化成液により化成処理される化成処理部と、化成処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される化成後水洗部と、化成後水洗部で洗浄された被塗物が電着液により電着塗装される電着塗装部と、電着塗装部で電着塗装された被塗物が洗浄水により洗浄される電着後水洗部とを備えている塗装設備の排水をリサイクル処理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排水リサイクルシステムに関して、下記の特許文献1には、電着後水洗部において電着塗装後の被塗物の洗浄に使用された洗浄水に対して簡単な濾過処理を行い、この濾過処理によって洗浄水中に含まれる電着液以外の異物(例えば凝集物や塵埃など)を除去し、そして、異物を除去した後の洗浄水を、化成後水洗部又は脱脂後水洗部での被塗物の洗浄に使用する洗浄水として化成後水洗部又は脱脂後水洗部に給送する排水処理方法が提案されている。
【0003】
また、この種の排水リサイクルシステムに関して、下記の特許文献2には、電着後水洗部、化成後水洗部及び脱脂後水洗部から集められた塗装設備全体の排水に対して吸着、凝集及び逆浸透による一連の浄化処理を行って純水にし、浄化した純水を被塗物の洗浄に使用する洗浄水として化成後水洗部及び電着後水洗部に供給する無排水式の塗装設備排水処理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-147975号公報
【文献】特開2004- 16829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の排水処理方法では、電着後水洗部において使用された洗浄水が化成後水洗部、脱脂後水洗部での被塗物の洗浄に再利用されることにより、塗装設備の洗浄水の消費量及び後処理を要する使用済み洗浄水の排出量が低減される。しかし、化成後水洗部又は脱脂後水洗部において被塗物の洗浄に使用された洗浄水は外部に排出されるため、特許文献1の排水処理方法による洗浄水の消費量及び排出量の削減効果は限定的であった。
【0006】
一方、特許文献2の排水処理方法では、塗装設備全体の排水が浄化処理されて洗浄水として再利用されるため、洗浄水の消費量及び排出量がより効果的に削減される。しかし、電着後水洗部、化成後水洗部及び脱脂後水洗部を含む塗装設備全体からの排水は、流量が大きく且つ異なる態様の汚染物質が含まれているため、これを純水に処理する処理設備が大掛かりになり薬剤や分離膜等の資材の消耗量が多くなる。このため、特許文献2の排水処理方法では、設備コスト及び設備の運転コストが高く付く問題がある。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な設備形態を採ることで、上記問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、塗装設備の排水リサイクルシステムに係り、その特徴は、
被塗物が脱脂液により脱脂処理される脱脂処理部と、
前記脱脂処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される脱脂後水洗部と、
前記脱脂後水洗部で洗浄された被塗物が化成液により化成処理される化成処理部と、
前記化成処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される化成後水洗部と、
前記化成後水洗部で洗浄された被塗物が電着液により電着塗装される電着塗装部と、
前記電着塗装部で電着塗装された被塗物が洗浄水により洗浄される電着後水洗部とが備えられている塗装設備の排水リサイクルシステムであって、
前記電着後水洗部において被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を濾過処理し、前記化成後水洗部で使用する洗浄水を生成する濾過処理装置と、
前記化成後水洗部において被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を、系外への排出水と、前記電着後水洗部で使用する洗浄水とに分離する再生処理装置と、
前記化成後水洗部、前記再生処理装置、前記電着後水洗部、前記濾過処理装置を接続し洗浄水をこの順で循環させる循環路と、
洗浄水の流量を制御する制御部とを備え、
前記電着後水洗部で使用する洗浄水として系外からの洗浄水を前記電着後水洗部に供給する第1洗浄水供給路が設けられ、
前記電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する第1計測手段が設けられ、
前記制御部は、前記第1計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第1洗浄水供給路から前記電着後水洗部に供給される洗浄水の流量を制御する、点にある。
【0009】
この第1特徴構成では、電着後水洗部において電着塗装後の被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を、濾過処理装置により濾過処理した上で循環路を通じて化成後水洗部に供給して、化成後水洗部での化成処理後の被塗物の洗浄に使用する。さらに、化成後水洗部において化成処理後の被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を再生処理装置により分離処理し、分離した洗浄水を循環路を通じ電着後水洗部に供給して電着後水洗部での電着塗装後の被塗物の洗浄に再び使用する。
【0010】
上記第1特徴構成によれば、洗浄水は化成後水洗部、再生処理装置、電着後水洗部及び濾過処理装置をこの順で接続する循環路において循環し、処理装置によって処理された後に水洗部での洗浄に再利用される。したがって、化成後水洗部又は脱脂後水洗部において被塗物の洗浄に使用された洗浄水を外部に排出する場合と比べて、塗装設備全体の洗浄水の消費量及び後処理を要する使用済み洗浄水の排出量をより効果的に低減することができる。
【0011】
また、上記第1特徴構成では、化成後水洗部において使用された洗浄水のみが電着後水洗部での再利用のために処理される。電着後水洗部、化成後水洗部及び脱脂後水洗部において使用された洗浄水全体を処理する場合と比べて、再生処理装置の処理負荷が軽減するため、再生処理装置として大掛かりなものを用いなくて済む。したがって、上記構成によれば、塗装設備の設備コスト及び設備の運転コストを安価にすることができる。
【0012】
更に、上記第1特徴構成では、
前記電着後水洗部で使用する洗浄水として系外からの洗浄水を前記電着後水洗部に供給する第1洗浄水供給路が設けられ、
前記電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する第1計測手段が設けられ、
前記制御部は、前記第1計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第1洗浄水供給路から前記電着後水洗部に供給される洗浄水の流量を制御するから、次の効果も併せて得ることができる。
【0013】
つまり、塗装設備の生産負荷(即ち電着塗装される被塗物のサイズ)は常に一定ではなく、例えばサイズの異なる複数車種の自動車ボディに対して電着塗装を行う場合など、生産負荷に変動が生じることがある。サイズの大きい被塗物の場合では、その面積が増大する分、電着塗装部による電着塗装後に付着される電着液が多くなる。そのため、電着後水洗部では、同程度の洗浄効果を得るには洗浄水をより大きい流量で被塗物に浴びせる必要がある。それにもかかわらず電着後水洗部に一定の流量の洗浄水が供給されると、洗浄が十分に行われず被塗物に許容範囲を超えた量の電着液が残ることがある。一方、サイズの小さい被塗物の場合では、その面積が減少する分、電着塗装部による電着塗装後に付着される電着液が少なくなる。そのため、電着後水洗部では、同程度の洗浄効果を得るのに必要な洗浄水の流量がより少なくて済む。それにもかかわらず電着後水洗部に一定の流量の洗浄水が供給されると、電着後水洗部から必要量を超えた量の洗浄水が排出されることになり、濾過処理装置に不必要な負荷がかかり運転コストが嵩む。
【0014】
これに対し、上記第1特徴構成では、電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測している。計測された洗浄水の水質が予め設定した所定の範囲を超えて低下したことは、被塗物のサイズが大きいことで洗浄が十分に行われず、被塗物に許容範囲を超えた電着液が残っていることを意味するところ、上記構成によれば、低下した水質が所定の範囲内に戻るように、第1洗浄水供給路から電着後水洗部に供給される系外の洗浄水の流量を増加させて、電着後水洗部において被塗物により多くの洗浄水を浴びせることができる。その結果、塗装設備によって電着塗装される被塗物のサイズが大きくなった場合でも、電着後水洗部による洗浄効果を維持することができる。反対に、計測された洗浄水の水質が予め設定した所定の範囲を超えて改善したことは、被塗物のサイズが小さく洗浄が必要以上に行われていることを意味するところ、上記構成によれば、過度に改善した水質が所定の範囲内に戻るように、第1洗浄水供給路から電着後水洗部に供給される系外の洗浄水の流量を減少させて、電着後水洗部において被塗物が浴びる洗浄水の量を少なくすることができる。その結果、系外からの洗浄水の消費量が低減すると共に、電着後水洗部から必要量を超えた量の洗浄水が排出されることを回避できるので濾過処理装置の運転コストが低減する。
なお、被塗物の表面から洗浄水を収集には、吸い取り又はエアの吹付け等によって被塗物の表面から洗浄水を収集すればよい。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記電着後水洗部には、洗浄水により被塗物を洗浄する電着後水洗手段が被塗物の搬送方向に沿って複数段設けられ、
前記第1洗浄水供給路からの洗浄水は、最終段の電着後水洗手段で使用する洗浄水として最終段の電着後水洗手段に供給され、
前記第1計測手段は、最終段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、最終段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測し、
前記制御部は、前記第1計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第1洗浄水供給路から最終段の電着後水洗手段に供給される洗浄水の流量を制御する点にある。
【0016】
この第2特徴構成によれば、第1洗浄水供給路から最終段の電着後水洗手段に供給されて被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水は、前段の電着後水洗手段に供給されて再利用されるので、電着後水洗部における洗浄水の消費量及び後処理を要する使用済み洗浄水の排出量を低減することができる。また、この第2特徴構成では、複数段の電着後水洗手段のうち、最終的な洗浄を行う最終段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、最終段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測し、これに基づいて第1洗浄水供給路から供給される洗浄水の流量を制御している。最終段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、最終段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質は、電着後水洗部での被塗物の最終的な洗浄状態を表しているため、前段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質や、前段の電着後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する場合と比べて、被塗物の最終的な洗浄状態をより容易に且つ正確に制御することができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御部は、前記第1計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記再生処理装置から前記電着後水洗部に供給される洗浄水の流量を更に制御する点にある。
【0018】
この第3特徴構成によれば、塗装設備によって電着塗装される被塗物のサイズの変動に応じて行われる電着後水洗部への洗浄水の流量の調整は、第1洗浄水供給路から電着後水洗部に供給される系外の洗浄水の流量の調整と、再生処理装置から電着後水洗部へ供給される洗浄水の流量の調整との両方によって実行することができる。これにより、例えば被塗物のサイズが大きい場合には電着後水洗部へ供給される洗浄水の流量を増加させなければならないところ、増加する流量の一部を再生処理装置からの洗浄水によって補うことが可能になり、その結果、電着後水洗部における洗浄水の消費量及び後処理を要する使用済み洗浄水の排出量をさらに効果的に低減することができる。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、第1から第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記化成後水洗部で使用する洗浄水として系外からの洗浄水を前記化成後水洗部に供給する第2洗浄水供給路が設けられ、
前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する第2計測手段が設けられ、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第2洗浄水供給路から前記化成後水洗部に供給される洗浄水の流量を制御する点にある。
【0020】
前述したように、塗装設備の生産負荷は常に一定ではなく、変動することがある。化成後水洗部へ供給される洗浄水の流量が一定であると、被塗物のサイズが大きくなった場合では、化成後水洗部での洗浄が十分に行われず被塗物に許容範囲を超えた量の化成液が残ることがある一方、被塗物のサイズが小さくなった場合では、化成後水洗部から必要量を超えた量の洗浄水が排出されることにより、再生処理装置に不必要な負荷がかかり運転コストが嵩む。
【0021】
これに対し、上記第4特徴構成では、化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測している。計測された洗浄水の水質が予め設定した所定の範囲を超えて低下したことは、被塗物のサイズが大きいことで洗浄が十分に行われず、被塗物に許容範囲を超えた化成液が残っていることを意味するところ、上記第4特徴構成によれば、低下した水質が所定の範囲内に戻るように、第2洗浄水供給路から化成後水洗部に供給される系外の洗浄水の流量を増加させて、化成後水洗部において被塗物により多くの洗浄水を浴びせることができる。その結果、被塗物のサイズが大きくなった場合でも、化成後水洗部による洗浄効果を維持することができる。反対に、計測された洗浄水の水質が予め設定した所定の範囲を超えて改善したことは、被塗物のサイズが小さく洗浄が必要以上に行われていることを意味するところ、上記第4特徴構成によれば、過度に改善した水質が所定の範囲内に戻るように、第2洗浄水供給路から化成後水洗部に供給される系外の洗浄水の流量を減少させて、化成後水洗部において被塗物が浴びる洗浄水の量を少なくすることができる。その結果、系外からの洗浄水の消費量が低減すると共に、化成後水洗部から必要量を超えた量の洗浄水が排出されることを回避できるので再生処理装置の運転コストが低減する。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記化成後水洗部には、洗浄水により被塗物を洗浄する化成後水洗手段が被塗物の搬送方向に沿って複数段設けられ、
前記第2洗浄水供給路からの洗浄水は、最終段の化成後水洗手段で使用する洗浄水として最終段の化成後水洗手段に供給され、
前記第2計測手段は、最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測し、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第2洗浄水供給路から最終段の化成後水洗手段に供給される洗浄水の流量を制御する点にある。
【0023】
この第5特徴構成によれば、第2洗浄水供給路から最終段の化成後水洗手段に供給されて被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水は、前段の化成後水洗手段に供給されて再利用されるので、化成後水洗部における洗浄水の消費量及び後処理を要する使用済み洗浄水の排出量を低減することができる。また、この第5特徴構成では、複数段の化成後水洗手段のうち、最終的な洗浄を行う最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測し、これに基づいて第2洗浄水供給路から供給される洗浄水の流量を制御している。最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質は、化成後水洗部での被塗物の最終的な洗浄状態を表しているため、前段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質や、前段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する場合と比べて、被塗物の最終的な洗浄状態をより容易に且つ正確に制御することができる。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、第4又は第5特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記濾過処理装置から前記化成後水洗部に供給される洗浄水の流量を更に制御する点にある。
【0025】
この第6特徴構成によれば、塗装設備によって電着塗装される被塗物のサイズの変動に応じて行われる化成後水洗部への洗浄水の流量の調整は、第2洗浄水供給路から化成後水洗部に供給される系外の洗浄水の流量の調整と、濾過処理装置から化成後水洗部へ供給される洗浄水の流量の調整との両方によって実行することができる。これにより、例えば被塗物のサイズが大きい場合には化成後水洗部へ供給される洗浄水の流量を増加させなければならないところ、増加する流量の一部を濾過処理装置からの洗浄水によって補うことが可能になり、その結果、化成後水洗部における洗浄水の消費量及び後処理を要する使用済み洗浄水の排出量をさらに効果的に低減することができる。
【0026】
本発明の第7特徴構成は、第1から第6特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御部は、系外からの洗浄水の流量と略同一になるように、前記再生処理装置から系外への排出水の流量を制御する点にある。
【0027】
この第7特徴構成によれば、化成後水洗部、再生処理装置、電着後水洗部及び濾過処理装置において循環する洗浄水の量を一定に維持することができる。
【0028】
本発明の第8特徴構成は、第1から第7特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記第1計測手段及び/又は前記第2計測手段は、濁度、電気伝導度、pH、化成液濃度及び電着液濃度の少なくとも一つを計測するものである点にある。
【0029】
この第8特徴構成によれば、化成後水洗部又は電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、化成後水洗部又は電着後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を、濁度、電気伝導度、pH、化成液濃度、電着液濃度のうちの一つ又はこれらの組み合わせをもって判断することができる。
本発明の第9特徴構成は、前記第1特徴構成と同様、塗装設備の排水リサイクルシステムに係り、その特徴は、
被塗物が脱脂液により脱脂処理される脱脂処理部と、
前記脱脂処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される脱脂後水洗部と、
前記脱脂後水洗部で洗浄された被塗物が化成液により化成処理される化成処理部と、
前記化成処理部で処理された被塗物が洗浄水により洗浄される化成後水洗部と、
前記化成後水洗部で洗浄された被塗物が電着液により電着塗装される電着塗装部と、
前記電着塗装部で電着塗装された被塗物が洗浄水により洗浄される電着後水洗部とが備えられている塗装設備の排水リサイクルシステムであって、
前記電着後水洗部において被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を濾過処理し、前記化成後水洗部で使用する洗浄水を生成する濾過処理装置と、
前記化成後水洗部において被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を、系外への排出水と、前記電着後水洗部で使用する洗浄水とに分離する再生処理装置と、
前記化成後水洗部、前記再生処理装置、前記電着後水洗部、前記濾過処理装置を接続し洗浄水をこの順で循環させる循環路と、
洗浄水の流量を制御する制御部とを備え、
前記化成後水洗部で使用する洗浄水として系外からの洗浄水を前記化成後水洗部に供給する第2洗浄水供給路が設けられ、
前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する第2計測手段が設けられ、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第2洗浄水供給路から前記化成後水洗部に供給される洗浄水の流量を制御する点にある。
この第9特徴構成では、前記第1特徴構成と同様、電着後水洗部において電着塗装後の被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を、濾過処理装置により濾過処理した上で循環路を通じて化成後水洗部に供給して、化成後水洗部での化成処理後の被塗物の洗浄に使用する。さらに、化成後水洗部において化成処理後の被塗物の洗浄に使用された後の洗浄水を再生処理装置により分離処理し、分離した洗浄水を循環路を通じ電着後水洗部に供給して電着後水洗部での電着塗装後の被塗物の洗浄に再び使用する。
上記第9特徴構成によれば、洗浄水は化成後水洗部、再生処理装置、電着後水洗部及び濾過処理装置をこの順で接続する循環路において循環し、処理装置によって処理された後に水洗部での洗浄に再利用される。したがって、化成後水洗部又は脱脂後水洗部において被塗物の洗浄に使用された洗浄水を外部に排出する場合と比べて、塗装設備全体の洗浄水の消費量及び後処理を要する使用済み洗浄水の排出量をより効果的に低減することができる。
また、上記第9特徴構成では、化成後水洗部において使用された洗浄水のみが電着後水洗部での再利用のために処理される。電着後水洗部、化成後水洗部及び脱脂後水洗部において使用された洗浄水全体を処理する場合と比べて、再生処理装置の処理負荷が軽減するため、再生処理装置として大掛かりなものを用いなくて済む。したがって、上記構成によれば、塗装設備の設備コスト及び設備の運転コストを安価にすることができる。
更に、上記第9特徴構成では、
前記化成後水洗部で使用する洗浄水として系外からの洗浄水を前記化成後水洗部に供給する第2洗浄水供給路が設けられ、
前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測する第2計測手段が設けられ、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第2洗浄水供給路から前記化成後水洗部に供給される洗浄水の流量を制御するから、次の効果も併せて得ることができる。
つまり、前述したように、塗装設備の生産負荷は常に一定ではなく、変動することがある。化成後水洗部へ供給される洗浄水の流量が一定であると、被塗物のサイズが大きくなった場合では、化成後水洗部での洗浄が十分に行われず被塗物に許容範囲を超えた量の化成液が残ることがある一方、被塗物のサイズが小さくなった場合では、化成後水洗部から必要量を超えた量の洗浄水が排出されることにより、再生処理装置に不必要な負荷がかかり運転コストが嵩む。
これに対し、上記第9特徴構成では、前記第4特徴構成と同様、化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、前記化成後水洗部によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測している。計測された洗浄水の水質が予め設定した所定の範囲を超えて低下したことは、被塗物のサイズが大きいことで洗浄が十分に行われず、被塗物に許容範囲を超えた化成液が残っていることを意味するところ、上記第9特徴構成によれば、低下した水質が所定の範囲内に戻るように、第2洗浄水供給路から化成後水洗部に供給される系外の洗浄水の流量を増加させて、化成後水洗部において被塗物により多くの洗浄水を浴びせることができる。その結果、被塗物のサイズが大きくなった場合でも、化成後水洗部による洗浄効果を維持することができる。反対に、計測された洗浄水の水質が予め設定した所定の範囲を超えて改善したことは、被塗物のサイズが小さく洗浄が必要以上に行われていることを意味するところ、上記第9特徴構成によれば、過度に改善した水質が所定の範囲内に戻るように、第2洗浄水供給路から化成後水洗部に供給される系外の洗浄水の流量を減少させて、化成後水洗部において被塗物が浴びる洗浄水の量を少なくすることができる。その結果、系外からの洗浄水の消費量が低減すると共に、化成後水洗部から必要量を超えた量の洗浄水が排出されることを回避できるので再生処理装置の運転コストが低減する。
なお、上記第9特徴構成の実施においては、前記第5特徴構成と同様に、
前記化成後水洗部には、洗浄水により被塗物を洗浄する化成後水洗手段が被塗物の搬送方向に沿って複数段設けられ、
前記第2洗浄水供給路からの洗浄水は、最終段の化成後水洗手段で使用する洗浄水として最終段の化成後水洗手段に供給され、
前記第2計測手段は、最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物から滴下した洗浄水の水質、又は、最終段の化成後水洗手段によって洗浄された後の被塗物の表面から収集した洗浄水の水質を計測し、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記第2洗浄水供給路から最終段の化成後水洗手段に供給される洗浄水の流量を制御するようにしてもよい。
また、前記第6特徴構成と同様に、
前記制御部は、前記第2計測手段によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、前記濾過処理装置から前記化成後水洗部に供給される洗浄水の流量を更に制御するようにしてもよい。
また、前記第7特徴構成と同様に、
前記制御部は、系外からの洗浄水の流量と略同一になるように、前記再生処理装置から系外への排出水の流量を制御するようにしてもよい。
そしてまた、前記第8特徴構成と同様に、
前記第2計測手段は、濁度、電気伝導度、pH、化成液濃度及び電着液濃度の少なくとも一つを計測するものであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
基礎例の排水リサイクルシステムを示す構造図である。
【
図2】
基礎例の排水リサイクルシステムを示すブロック図である。
【
図3】第
1実施形態の排水リサイクルシステムを示すブロック図である。
【
図4】第
2実施形態の排水リサイクルシステムを示すブロック図である。
【
図5】他の実施形態の排水リサイクルシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔
基礎例〕
図1及び
図2は、
基礎例の塗装設備の排水リサイクルシステムを示す構造図及びブロック図である。この
基礎例では、塗装設備には脱脂処理部A、脱脂後水洗部B、化成処理部C、化成後水洗部D、電着塗装部E、電着後水洗部Fの夫々が、被塗物1(本例では自動車ボディであるがこれに限られない)の搬送方向における上手側からその順に並べて設けられている。
【0032】
脱脂処理部Aでは、脱脂槽a1内の脱脂液La中に被塗物1が浸漬され、また、被塗物1に対してシャワー装置a2により脱脂液Laが吹き付けられ、これら浸漬及び吹き付けによる脱脂液Laとの接触により被塗物1が脱脂処理され、この脱脂処理により、被塗物1の表面に付着していた油分が除去される。
【0033】
脱脂後水洗部Bには、2段の脱脂後水洗手段B1、B2が被塗物1の搬送方向における上手側から順に設けられている。第1段の脱脂後水洗手段B1は、被塗物1に対して洗浄水Wを吹き付けるシャワー装置から成る。脱脂処理部Aにおいて脱脂液La中へ浸漬されて脱脂処理された後の被塗物1に対して第1段の脱脂後水洗手段B1によって洗浄水Wが吹き付けられることにより、被塗物1に付着する脱脂液Laが洗い流される。
【0034】
また、第2段の脱脂後水洗手段B2は、被塗物1に対して洗浄水Wを吹き付けるシャワー装置から成る。第1段の脱脂後水洗手段B1で洗浄された後の被塗物1に対して第2段の脱脂後水洗手段B2によって洗浄水Wが吹付けられることにより、被塗物1に付着する脱脂液Laがさらに洗浄される。
【0035】
第2段の脱脂後水洗手段B2のシャワー装置には、新鮮洗浄水路2を通じて新鮮洗浄水W(本例では新鮮工水IW)が供給され、これにより、第2段の脱脂後水洗手段B2では、新鮮洗浄水W(新鮮工水IW)を使用して被塗物1の洗浄が行われる。
【0036】
これに対し、第2段の脱脂後水洗手段B2において被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水W(工水IW)は、回収槽b2を経て第1段の脱脂後水洗手段B1のシャワー装置に供給され、これにより、第2段の脱脂後水洗手段B2で被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水W(工水IW)は、前段である第1段の脱脂後水洗手段B1での被塗物1の洗浄に再利用される。
【0037】
そして、第1段の脱脂後水洗手段B1において被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wは、回収槽b1に回収された後に排水路9を通じて外部に排出される。
【0038】
化成処理部Cでは、脱脂後水洗部Bで洗浄された後の被塗物1が化成槽c1内の化成液Lc中に浸漬され、この浸漬による化成液Lcとの接触により、脱脂後水洗部Bで洗浄された後の被塗物1が化成処理され、この化成処理により、被塗物1の表面には化成皮膜が形成される。
【0039】
化成後水洗部Dには、3段の化成後水洗手段D1~D3が被塗物1の搬送方向における上手側から順に設けられている。第1段の化成後水洗手段D1は、被塗物1に対して洗浄水Wを吹き付けるシャワー装置から成る。化成処理部Cにおいて化成液Lc中へ浸漬されて化成処理された後の被塗物1に対して第1段の化成後水洗手段D1によって洗浄水Wが吹付けられることにより、被塗物1に付着する化成液Lcが洗い流される。
【0040】
第2段の化成後水洗手段D2は、被塗物1に対して洗浄水Wを吹き付けるシャワー装置から成る。第1段の化成後水洗手段D1で洗浄された後の被塗物1が第2段の化成後水洗手段D2において洗浄水Wにより洗浄されることにより、被塗物1に付着する化成液Lcがさらに洗い流される。
【0041】
そして、最終段である第3段の化成後水洗手段D3は、被塗物1に対して洗浄水Wを吹き付けるシャワー装置から成る。第2段の化成後水洗手段D2で洗浄された後の被塗物1に対して第3段の化成後水洗手段D3によって洗浄水Wが吹き付けられることにより、被塗物1に付着する化成液Lcがさらに洗い流される。
【0042】
第3の化成後水洗手段D3において被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wは、回収槽d3を経て第2段の化成後水洗手段D2のシャワー装置に供給され、これにより、第3段の化成後水洗手段D3において被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wは、前段である第2段の化成後水洗手段D2での被塗物1の洗浄に再利用される。
【0043】
また、第2段の化成後水洗手段D2において被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wは、回収槽d2を経て第1段の化成後水洗手段D1のシャワー装置に供給され、これにより、第2段の化成後水洗手段D2において被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wは、さらに前段である第1段の化成後水洗手段D1での被塗物1の洗浄に再利用される。
【0044】
そして、第1段の化成後水洗手段D1において被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wは、化成後洗浄水循環路51(本発明に係る循環路に相当)を通じて再生処理装置7に供給される。再生処理装置7では、第1段の化成後水洗手段D1の回収槽d1から供給される洗浄水Wが再生処理され、汚濁物質(即ち、洗浄水W中の各種イオン成分の反応により生成される物質)が除去された再生水ReWと、汚濁物質が濃縮された濃縮水CWとに分離される。化成後洗浄水循環路51は、回収槽d1から再生処理装置7の一次側の注入口にわたる配管と、配管に配設されたポンプ、バルブ及び流量センサ等とから構成される。再生処理装置7は、膜ろ過装置(RO膜、NF膜、UF膜などの濾過膜による濾過装置)又は電解式水処理装置によって構成されるが、さらに凝集沈殿装置、イオン交換装置等の水処理装置が設けられることもある。
【0045】
再生処理装置7において分離された再生水ReWは、被塗物1の洗浄に使用される洗浄水Wとして、再生水循環路52(本発明に係る循環路に相当)を通じて後述の第5段の電着後水洗手段F5に供給される。再生水循環路52は、再生処理装置7の二次側の再生水排出口から第5段の電着後水洗手段F5のシャワー装置にわたる配管と、配管に配設されたポンプ、バルブ及び流量センサ等とから構成される。また、再生処理装置7において分離された濃縮水CWは、排出水として排水路8を通じて外部に排出される。
【0046】
電着塗装部Eでは、化成後水洗部Dで洗浄された後の被塗物1が通電下にある電着槽e1内の電着液Leに浸漬され、この通電下での浸漬による電着液Leとの接触により、化成後水洗部Dで洗浄された後の被塗物1の表面に電着液Le中の塗料成分が集積して塗膜が形成され、これにより、化成後水洗部Dで洗浄された後の被塗物1に下塗り塗装としての電着塗装が施される。
【0047】
電着後水洗部Fには、5段の電着後水洗手段F1~F5が被塗物1の搬送方向における上手側から順に設けられている。第1段、第3段の電着後水洗手段F1,F3は、被塗物1に対して洗浄水Wを吹き付けるシャワー装置から成り、第2段の電着後水洗手段F2は、洗浄水Wが貯留された水洗槽とから成る。電着塗装部Eにおいて電着液Le中へ浸漬されて電着塗装された後の被塗物1は、第1段の電着後水洗手段F1によって洗浄水Wが吹付けられることにより付着の電着液Leが洗い流され、次に、第2段の電着後水洗手段F2に貯留された洗浄水Wに浸漬されることにより付着の電着液Leがさらに洗い流され、さらに次に、第3段の電着後水洗手段F3によって洗浄水Wが吹付けられることにより付着の電着液Leがさらに洗い流される。
【0048】
この第1段~第3段の電着後水洗手段F1~F3で使用された洗浄水Wは、図示しない限外濾過装置により清浄化された後、第1段~第3段の電着後水洗手段F1~F3での被塗物1の洗浄に繰り返して再利用される。
【0049】
第4段の電着後水洗手段F4は、洗浄水Wが貯留された水洗槽から成る。第3段の電着後水洗手段F3で洗浄された後の被塗物1が第4段の電着後水洗手段に貯留された洗浄水Wに浸漬されることにより、被塗物1に付着する電着液Leがさらに洗い流される。
【0050】
そして、最終段である第5段の電着後水洗手段F5は、被塗物1に対して洗浄水Wを吹き付けるシャワー装置から成る。第4段の電着後水洗手段F4で洗浄された後の被塗物1に対して第5段の電着後水洗手段F5により洗浄水Wが吹き付けられることにより、被塗物1に付着する電着液がさらにまた洗い流される。
【0051】
電着後水洗部Fで洗浄された電着塗装後の被塗物1は、その後、中塗り塗装工程、上塗り塗装工程、乾燥工程をその順に経て塗装が完了する。
【0052】
第5段の電着後水洗手段F5におけるシャワー装置には、新鮮洗浄水路3(本発明に係る第1洗浄水供給路に相当)を通じて系外の新鮮洗浄水W(本例では新鮮純水FrW)が供給される。新鮮洗浄水Wは、例えば、再生水循環路52を通じて供給される再生処理後の洗浄水W(再生水ReW)と混合されて第5段の電着後水洗手段F5に供給される。これにより、最終段である第5段の電着後水洗手段F5では、新鮮洗浄水路3を通じて供給される新鮮洗浄水W(新鮮純水FrW)と再生水循環路52を通じて供給される再生処理後の洗浄水W(再生水ReW)とを使用して被塗物1の洗浄が行われる。また、これにより、再生処理装置7からの排出水の排出による系内の水の減少が補われる。
【0053】
これに対し、第5段の電着後水洗手段F5で被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wは、回収槽f5を経て第4段の電着後水洗手段F4の水洗槽に供給され、これにより、第5段の電着後水洗手段F5で被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wは、第4段の電着後水洗手段F4での被塗物1の洗浄に再利用される。
【0054】
第4段の電着後水洗手段F4において被塗物1の洗浄に使用された洗浄水Wは、電着後洗浄水循環路53(本発明に係る循環路に相当)を通じて簡易な濾過処理装置4に供給される。電着後洗浄水循環路53は、第4段の電着後水洗手段F4の水洗槽から濾過処理装置4にわたる配管と、配管に配設されたポンプ、バルブ及び流量センサ等とから構成される。この濾過処理装置4では、第4段の電着後水洗手段F4の水洗槽から供給される洗浄水Wが全量濾過処理され、この濾過処理により、洗浄水W中に含まれている固形分が洗浄水Wから分離除去される。
【0055】
即ち、第4段及び第5段の電着後水洗手段F4,F5において被塗物1の洗浄に使用された洗浄水Wには、電着塗装後の被塗物1に付着していた電着液Leに含まれる塵芥などの固形分が含まれるが、これら洗浄水W中の固形分のみが濾過処理装置4において洗浄水Wから分離除去される。
【0056】
簡易な濾過処理装置4において洗浄水W中の固形分が除去された全量濾過処理後の洗浄水W(濾過水FiW)は、濾過水循環路54(本発明に係る循環路に相当)を通じて第3段の化成後水洗手段D3のシャワー装置に供給される。濾過水循環路54は、濾過処理装置4から第3段の化成後水洗手段D3のシャワー装置にわたる配管と、配管に配設されたポンプ、バルブ及び流量センサ等とから構成される。また、第3段の化成後水洗手段D3のシャワー装置には、新鮮洗浄水路6(本発明に係る第2洗浄水供給路に相当)を通じて新鮮洗浄水W(本例では新鮮純水FrW)が供給される。新鮮洗浄水Wは、例えば、濾過水循環路54を通じて供給される濾過処理後の洗浄水W(濾過水FiW)と混合されて第3段の化成後水洗手段D3のシャワー装置に供給される。これにより、最終段である第3段の化成後水洗手段D3では、新鮮洗浄水路6を通じて供給される新鮮洗浄水W(新鮮純水FrW)と濾過水循環路54を通じて供給される濾過処理後の洗浄水W(濾過水FiW)とを使用して被塗物1の洗浄が行われる。なお、系外からの新鮮洗浄水Wの供給は、新鮮洗浄水路3,6のいずれか一方のみにおいて行われてもよい。また、新鮮洗浄水路3,6を通じて供給される新鮮洗浄水Wは、水質が互いに異なるものであってもよい。
【0057】
また、排水リサイクルシステムには、系外から供給される新鮮洗浄水Wの流量(新鮮洗浄水路3、6の流量)、系内で循環する洗浄水Wの流量(循環路5を構成する化成後洗浄水循環路51、再生水循環路52、電着後洗浄水循環路53及び濾過水循環路54の流量)、系外へ排出される濃縮水CWの流量(排水路8の流量)を制御する制御部Gが更に設けられている。制御部Gは、各流路を構成する配管に配設された流量センサの検出結果に基づいてポンプやバルブを調節することによって流量を所望値に制御する。
【0058】
〔第
1実施形態〕
図3は、第
1実施形態の塗装設備の排水リサイクルシステムを示すブロック図であり、この第
1実施形態では、電着後水洗部Fにおける第5段の電着後水洗手段F5によって洗浄された後の被塗物1から滴下した洗浄水Wの水質を計測する水質センサH1(本発明に係る第1計測手段に相当)がさらに設けられている。水質センサH1は、例えば、第5段の電着後水洗手段F5による洗浄を終えて下手側へ搬送される被塗物1から重力により滴下した洗浄水Wを集める不図示の集水路又は集水槽内に配置され、この集水路又は集水槽を流れる洗浄水Wの水質を計測する。なお、集水路又は集水槽により集められた被塗物1から滴下した洗浄水Wは、第4の電着後水洗手段F4での被塗物1の洗浄に再利用されるか、または、濾過処理装置4に供給されるか、さらにまたは、外部へ排出される。
【0059】
第5段の電着後水洗手段F5によって洗浄された後の被塗物1から滴下した洗浄水Wには、被塗物1から洗い落とされた電着液Leが含まれており、洗浄水Wの水質は、含まれている電着液Leの量に応じて変化する。水質センサH1は、被塗物1から滴下した洗浄水Wの水質として、濁度、電気伝導度、pH及び電着液濃度の少なくとも一つを計測するが、電着液Leの量に関連する洗浄水Wの任意の数値を水質として測定し得る。
【0060】
制御部Gは、水質センサH1によって計測された水質である濁度、電気伝導度、pH及び電着液濃度のすべて又は一部が予め設定され得る所定の範囲内に収まるように、新鮮洗浄水路3を通じて第5段の電着後水洗手段F5に供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量を制御する。
【0061】
具体的には、水質センサH1により所定の範囲を超えて低下した水質が計測された場合、制御部Gは、第5段の電着後水洗手段F5に供給される新鮮洗浄水Wの流量が増加するように、新鮮洗浄水路3のポンプやバルブを調節する。第5段の電着後水洗手段F5に供給される新鮮洗浄水Wの流量が増加することにより、第5段の電着後水洗手段F5において被塗物1により多くの洗浄水Wが浴びせられることで、第5段の電着後水洗手段F5によって洗浄された後の被塗物1から滴下した洗浄水Wの水質が改善する。制御部Gは、水質センサH1によって計測された洗浄水Wの水質が改善して所定の範囲内に収まるまで、新鮮洗浄水路3の流量を増加させ続ける。
【0062】
一方、水質センサH1により所定の範囲を超えて改善した水質が計測された場合、制御部Gは、第5段の電着後水洗手段F5に供給される新鮮洗浄水Wの流量が減少するように、新鮮洗浄水路3のポンプやバルブを調節する。第5段の電着後水洗手段F5に供給される新鮮洗浄水Wの流量が減少することにより、第5段の電着後水洗手段F5によって洗浄された後の被塗物1から滴下した洗浄水Wの水質が低下する。制御部Gは、水質センサH1によって計測された洗浄水Wの水質が低下して所定の範囲内に収まるまで、新鮮洗浄水路3の流量を減少させ続ける。
【0063】
また、制御部Gは、新鮮洗浄水路3を通じて第5段の電着後水洗手段F5に供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量に対する制御に伴い、再生処理装置7から排水路8を通じて系外へ排出される排出水の流量を制御する。
【0064】
具体的には、制御部Gは、水質の低下に応じて系外からの新鮮洗浄水Wの流量を増加させる際に、増加した新鮮洗浄水Wの流量と略同一になるように、再生処理装置7から排水路8を通じて系外へ排出される排出水の流量を増加させる。一方、制御部Gは、水質の改善に応じて系外からの新鮮洗浄水Wの流量を減少させる際に、減少した新鮮洗浄水Wの流量と略同一になるように、再生処理装置7から排水路8を通じて系外へ排出される排出水の流量を減少させる。
【0065】
例えば、塗装設備の初期の生産負荷に対し、第5段の電着後水洗手段F5には、新鮮洗浄水路3を通じて系外の新鮮洗浄水W(新鮮純水FrW)が34L/minの流量で供給されると共に、再生水循環路52を通じて再生処理装置7からの洗浄水W(再生水ReW)が133L/minの流量で供給される。そして、濾過処理装置4には、第4、第5の電着後水洗手段F4,F5において洗浄に使用された洗浄水Wが167L/minの流量で供給され、化成後水洗部Dには、濾過処理装置4において濾過処理された洗浄水W(濾過水FiW)が167L/minの流量で供給され、再生処理装置7には、第1段~第3段の化成後水洗手段D1~3において洗浄に使用された洗浄水Wが167L/minの流量で供給される。再生処理装置7においては、分離された濃縮水CWが34L/minの流量で排出されると共に、分離された再生水ReWが133L/minの流量で第5段の電着後水洗手段F5に供給される。このようにして、化成後水洗部D、再生処理装置7、電着後水洗部F及び濾過処理装置4には、洗浄水Wが167L/minの流量で供給される。
【0066】
ここで、塗装設備の生産負荷が上がって電着後水洗部Fへよりサイズの大きい被塗物が搬送されたことにより、電着後水洗部Fでの洗浄が十分に行われず予め設定された所定の範囲を超えて低下した水質が計測された場合、制御部Gは、水質が所定の範囲に収まるように、新鮮洗浄水路3を通じて供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量を例えば10L/min増加させて44L/minとした。これに伴い、制御部Gは、増加した系外からの新鮮洗浄水Wの流量に合わせて、再生処理装置7から排水路8を通じて系外へ排出される排出水の流量を10L/min増加させて44L/minとし、系内の洗浄水Wを同一の量に維持する。なお、第5段の電着後水洗手段F5に供給される洗浄水Wの流量の変化に伴い、制御部Gは、循環路5での洗浄水Wの循環が正常に行われるように、化成後洗浄水循環路51、再生水循環路52、電着後洗浄水循環路53及び濾過水循環路54の夫々の流量を適宜制御する。
【0067】
塗装設備の生産負荷が上がった場合のみを説明したが、塗装設備の生産負荷が下がった場合においても、同様の制御が行われる。その他の点は、前述した〔基礎例〕の塗装設備と同じである。
【0068】
〔第1実施形態の変形例〕
第1実施形態では、制御部Gは、水質センサH1によって計測された水質に応じて、第5段の電着後水洗手段F5に供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量を制御するように構成されているが、本変形例では、制御部Gは、第5段の電着後水洗手段F5に供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量に加えて、再生処理装置7から第5段の電着後水洗手段F5に供給される系内の洗浄水Wの流量を制御するように構成されている。
【0069】
具体的には、水質センサH1により所定の範囲を超えて低下した水質が計測された場合、制御部Gは、第5段の電着後水洗手段F5に供給される新鮮洗浄水Wの流量及び再生処理後の洗浄水Wの流量の夫々が増加するように、新鮮洗浄水路3及び再生水循環路52のポンプやバルブを調節する。一方、水質センサH1により所定の範囲を超えて改善した水質が計測された場合、制御部Gは、第5段の電着後水洗手段F5に供給される新鮮洗浄水Wの流量及び再生処理後の洗浄水Wの流量の夫々が減少するように、新鮮洗浄水路3及び再生水循環路52のポンプやバルブを調節する。
【0070】
例えば、塗装設備の生産負荷が上がったことにより、所定の範囲を超えて低下した水質が計測された場合、制御部Gは、水質が所定の範囲に収まるように、新鮮洗浄水路3を通じて供給される系外の新鮮洗浄水W(新鮮純水FrW)の流量を5L/min増加させて39L/minとすると共に、再生水循環路52を通じて供給される再生処理後の洗浄水W(再生水ReW)の流量を5L/min増加させて138L/minとした。これに伴い、制御部Gは、増加した系外からの新鮮洗浄水Wの流量に合わせて、再生処理装置7から系外へ排出される排出水(濃縮水CW)の流量を5L/min増加させて39L/minとし、系内の洗浄水Wを同一の量に維持する。なお、塗装設備の生産負荷が上がった場合のみを説明したが、塗装設備の生産負荷が下がった場合においても、同様の制御が行われる。
【0071】
〔第
2実施形態〕
図4は、第
2実施形態の塗装設備の排水リサイクルシステムを示すブロック図であり、この第3実施形態では、水質センサH1の代わりに、化成後水洗部Dにおける第3段の化成後水洗手段D3によって洗浄された後の被塗物1から滴下した洗浄水Wの水質を計測する水質センサH2(本発明に係る第2計測手段に相当)が設けられている。水質センサH2は、例えば、第3段の化成後水洗手段D3による洗浄を終えて下手側へ搬送される被塗物1から重力により滴下した洗浄水Wを集める不図示の集水路又は集水槽内に配置され、この集水路又は集水槽を流れる洗浄水Wの水質を計測する。なお、集水路又は集水槽により集められた被塗物1から滴下した洗浄水Wは、第2段の化成後水洗手段D2での被塗物1の洗浄に再利用されるか、または、再生処理装置7に供給されるか、さらにまたは、外部へ排出される。
【0072】
第3段の化成後水洗手段D3によって洗浄された後の被塗物1から滴下した洗浄水Wには、被塗物1から洗い落とされた化成液Lcが含まれており、洗浄水Wの水質は、含まれている化成液Lcの量に応じて変化する。水質センサH2は、被塗物1から滴下した洗浄水Wの水質として、濁度、電気伝導度、pH及び化成液濃度の少なくとも一つを計測するが、化成液Lcの量に関連する洗浄水Wの任意の数値を水質として測定し得る。
【0073】
制御部Gは、水質センサH2によって計測された水質である濁度、電気伝導度、pH及び化成液濃度のすべて又は一部が予め設定され得る所定の範囲内に収まるように、新鮮洗浄水路6を通じて第3段の化成後水洗手段D3に供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量を制御する。また、制御部Gは、新鮮洗浄水路6を通じて第3段の化成後水洗手段D3に供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量に対する制御に伴い、再生処理装置7から排水路8を通じて系外へ排出される排出水の流量を制御する。
【0074】
具体的には、水質センサH2により所定の範囲を超えて低下した水質が計測された場合、制御部Gは、第3段の化成後水洗手段D3に供給される新鮮洗浄水Wの流量が増加するように、新鮮洗浄水路6のポンプやバルブを調節する。一方、水質センサH2により所定の範囲を超えて改善した水質が計測された場合、制御部Gは、第3段の化成後水洗手段D3に供給される新鮮洗浄水Wの流量が減少するように、新鮮洗浄水路6のポンプやバルブを調節する。また、新鮮洗浄水Wの流量に対する制御に伴い、制御部Gは、再生処理装置7から排水路8を通じて系外へ排出される排出水の流量を制御する。
【0075】
本実施形態における流量の制御は、第1実施形態において説明した、水質センサH1によって計測された水質に基づく第5段の電着後水洗手段F5への新鮮洗浄水の流量及び系外への排出水の流量等に対する制御と同様に行われるため、更なる詳細な説明は省略する。
【0076】
〔第2実施形態の変形例〕
第3実施形態では、制御部Gは、水質センサH2によって計測された水質に応じて、第3段の化成後水洗手段D3に供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量を制御するように構成されているが、本変形例では、制御部Gは、第3段の化成後水洗手段D3に供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量に加えて、濾過処理装置4から第3段の化成後水洗手段D3に供給される系内の洗浄水Wの流量を制御するように構成されている。
【0077】
具体的には、水質センサH2により所定の範囲を超えて低下した水質が計測された場合、制御部Gは、第3段の化成後水洗手段D3に供給される新鮮洗浄水Wの流量及び濾過処理後の洗浄水Wの流量の夫々が増加するように、新鮮洗浄水路6及び濾過水循環路54のポンプやバルブを調節する。一方、水質センサH2により所定の範囲を超えて改善した水質が計測された場合、制御部Gは、第3段の化成後水洗手段D3に供給される新鮮洗浄水Wの流量及び濾過処理後の洗浄水Wの流量の夫々が減少するように、新鮮洗浄水路6及び濾過水循環路54のポンプやバルブを調節する。
【0078】
本実施形態における流量の制御は、第1実施形態の変形例において説明した、水質センサH1によって計測された水質に基づく第5段の電着後水洗手段F5への新鮮洗浄水W及び再生処理後の洗浄水Wの流量並びに系外への排出水の流量等に対する制御と同様に行われるため、更なる詳細な説明は省略する。
【0079】
〔別実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
【0080】
[1]上記各実施形態では、処理装置7、4において処理後の洗浄水Wは、最終段の水洗手段F5,D3に供給されて被塗物の洗浄に再利用される。しかし、処理装置7,4において処理後の洗浄水Wは、
図5に示すように最終段以外の水洗手段F4,D1,D2に供給されてもよい。最終段以外の水洗手段F4,D1,D2によって洗浄された後の被塗物の洗浄度合は、最終段の水洗手段F5,D3によって洗浄された後の被塗物の洗浄度合に直接的に影響するので、最終段以外の水洗手段F4,D1,D2に供給される場合においても、最終段の水洗手段F5,D3に供給される場合と同様に、処理後の洗浄水Wの流量の増減に応じて、最終段の水洗手段F5,D3によって洗浄された後の被塗物1から滴下した洗浄水Wの水質が変化する。したがって、この実施形態においても、前述した第
1、第
2実施形態の変形例と同様の制御が可能である。
【0081】
[2]上記第1、第2実施形態では、水質センサH1,H2は、最終段の水洗手段F5,D3によって洗浄された後の被塗物1から滴下した洗浄水Wの水質を計測するように構成されている。しかし、水質センサH1,H2は、最終段以外の水洗手段F1~F4,D1,D2によって洗浄された後の被塗物1から滴下した洗浄水Wの水質を計測するように構成されてもよい。最終段以外の水洗手段F1~F4,D1,D2によって洗浄された後の被塗物の洗浄度合は、最終段の水洗手段F5,D3によって洗浄された後の被塗物の洗浄度合に直接的に影響するので、この実施形態においても、前述した第1、第2実施形態及びそれらの変形例と同様の制御が可能である。また、上記第1、第2実施形態では、水質センサH1,H2は、被塗物1から重力により滴下した洗浄水Wの水質を計測するように構成されている。しかし、水質センサH1,H2は、吸い取り又はエアの吹付け等によって被塗物1の表面から収集した洗浄水Wの水質を計測するように構成されてもよい。
【0082】
[3]上記第
1、第
2実施形態では、電着後水洗部F、化成後水洗部Dのいずれか一方にのみ水質センサが設けられている。しかし、
図5に示すように、電着後水洗部F、化成後水洗部Dに水質センサH1,H2がそれぞれ設けられてもよい。この実施形態の場合、制御部Gは、それぞれの水質センサH1,H2によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、電着後水洗部F、化成後水洗部Dに供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量及び/又は処理装置7、4から供給される処理後の洗浄水Wの流量を制御すると共に、系外からの新鮮洗浄水Wの合計流量と略同一になるように、再生処理装置7から系外へ排出される排出水の流量を制御する。
【0083】
[4]上記各実施形態では、電着後水洗部Fにおいて使用された洗浄水Wが濾過処理装置4によって全量濾過処理され、濾過処理された後の洗浄水Wが化成後水洗部Dに供給される。しかし、濾過処理装置4は、電着後水洗部Fにおいて使用された洗浄水Wの一部を排出水として系外へ排出するように構成されてもよい。この実施形態の場合では、濾過処理装置4から系外へ排出される排出水の流量と、再生処理装置7から系外へ排出される排出水の流量との合計流量は、新鮮洗浄水路3及び/又は新鮮洗浄水路6を通じて供給される系外からの新鮮洗浄水Wの流量と同一になるように設定される。
【0084】
[5]上記各実施形態では、系外からの新鮮洗浄水Wが新鮮洗浄水路3,6を通じて電着後水洗部F、化成後水洗部Dに供給される。しかし、系外からの新鮮洗浄水Wは、必ずしも塗装設備の運転中に常に供給されなくてもよい。この場合では、制御部Gは、水質センサH1、H2によって計測された水質が所定の範囲内に収まるように、電着後水洗部F、化成後水洗部Dに供給される再生水ReW、濾過水FiWの流量を制御する。また、この場合では、例えば再生処理装置7において分離された濃縮水CWを化成後洗浄水循環路51に戻すことにより、系内の水量を一定の量に維持することができる。
【0085】
[6]脱脂後水洗部B、化成後水洗部D、電着後水洗部Fの夫々において何段階の水洗収手段を設けるかについては、前述の各実施形態で示した段数に限らず、種々の変更が可能である。また、脱脂後水洗部B、化成後水洗部D、電着後水洗部Fの夫々における各段階の水洗手段においてシャワー式や浸漬槽式など、どのような洗浄方式で洗浄水Wにより被塗物1を洗浄するかについても、前述の各実施形態で示した洗浄方式に限らず、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 被塗物
2 新鮮洗浄水路2
3 新鮮洗浄水路3(第1洗浄水供給路)
4 濾過処理装置
5 循環路
51 化成後洗浄水循環路
52 再生水循環路
53 電着後洗浄水循環路
54 濾過水循環路
6 新鮮洗浄水路6(第2洗浄水供給路)
7 再生処理装置
8 排水路
9 排水路
La 脱脂液
A 脱脂処理部
W 洗浄水
B 脱脂後水洗部
Lc 化成液
C 化成処理部
D 化成後水洗部
D1~D3 第1段~第3段の化成後水洗手段
Le 電着液
E 電着塗装部
F 電着後水洗部
F1~F5 第1段~第5段の電着後水洗手段
G 制御部
H1 水質センサ(第1計測手段)
H2 水質センサ(第2計測手段)
【要約】
塗装設備での洗浄水の消費量及び後処理を要する使用済洗浄水の排出量を低減する。脱脂処理部Aと脱脂後水洗部Bと化成処理部Cと化成後水洗部Dと電着塗装部Eと電着後水洗部Fとを備える塗装設備における排水リサイクルシステムにおいて、電着後水洗部Fにおいて被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wを濾過処理する濾過処理装置4と、化成後水洗部Dにおいて被塗物1の洗浄に使用された後の洗浄水Wを系外への排出水と電着後水洗部Fで使用する洗浄水Wとに分離する再生処理装置7と、濾過処理装置4で濾過処理された後の洗浄水Wを化成後水洗部Dに給送し且つ再生処理装置7で分離された洗浄水Wを電着後水洗部Fに給送する循環路5とが設けられている。