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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】固体電解質及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20220729BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20220729BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220729BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/0565
H01M10/052
H01B13/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020570422
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 KR2019012594
(87)【国際公開番号】W WO2020067769
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115701
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェフン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-チャン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ルシア・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョプ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ナ・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ダウン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジ-フン・ペク
(72)【発明者】
【氏名】ワンス・チャン
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108281704(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01M 10/0565
H01M 10/052
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサンを含む固体電解質において、
前記固体電解質は窒化ホウ素(boron nitride、BN)を含み、
前記窒化ホウ素は、多環芳香族炭化水素(multi aromatic hydrocarbon)が結合されて表面改質された窒化ホウ素である、固体電解質。
【請求項2】
前記固体電解質は、ポリシロキサン高分子マトリックス;リチウム塩;有機溶媒;架橋剤;及びフィラーとして窒化ホウ素(boron nitride、BN);を含む、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記窒化ホウ素は、前記ポリシロキサンの重量を基準にして0.1ないし5質量%含まれたものである、請求項1または2に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記多環芳香族炭化水素は、ピレン(pyrene)、ペリレン(perylene)及びベンゾペリレン(benzoperylene)からなる群から選択される1種以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項5】
前記多環芳香族炭化水素は、ポリエチレングリコール(polyethylene、PEG)が結合されて末端が改質されたものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項6】
前記多環芳香族炭化水素は、前記表面改質された窒化ホウ素の総重量を基準にして4ないし10質量%含まれたものである、請求項からのいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項7】
前記ポリシロキサンの分子量(Mn)は800ないし1200である、請求項1からのいずれか一項に記載の固体電解質。
【請求項8】
前記リチウム塩は、LiN(SOCF(LiTFSI)LiSCN、LiN(CN)、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、Li(CFSOC、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiSbF、LiPF(CFCF、LiPF(C、LiPF(CF、及びLiB(Cで構成された群から選択された1種以上である、請求項2に記載の固体電解質。
【請求項9】
前記有機溶媒は、メタノール、アセトン、4-アセチルモルホリン(4-acetylmorpholine)、2-メチルピリジン-1-オキサイド(2-methylpyridine1-oxide)、2-ピロリドン(2-pyrrolidon)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(1-(2-hydroxyethyl)-2-pyrrolidinone)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、2-オキセパノン(2-oxepanone)、ブタノン(butanone)、2-ペンタノン(2-pentanone)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)及びメトキシノナフルオロブタン(methoxynonafluorobutane)で構成された群から選択される1種以上である、請求項2に記載の固体電解質。
【請求項10】
前記架橋剤はテトラアリルオキシエタン(tetraallyl oxy ethane、TAOE)である、請求項2に記載の固体電解質。
【請求項11】
(S1)窒化ホウ素と多環芳香族炭化水素(multi aromatic hydrocarbon)を反応させ、前記多環芳香族炭化水素と結合されて表面改質された窒化ホウ素を形成する段階;
(S2)ポリシロキサン、架橋剤及び光開始剤を有機溶媒に溶解させて混合液を形成する段階;
(S3)前記混合液に前記表面改質された窒化ホウ素とリチウム塩を添加してスラリーを形成する段階;及び
(S4)前記スラリーを基材上にキャスティングした後硬化させる段階;
を含む固体電解質の製造方法。
【請求項12】
前記開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(1-hydroxy-cyclohexyl phenyl ketone)及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド(2,4,6-trimethylbenzoyldiphenyl-phosphineoxide)からなる群から選択される1種以上の光開始剤である、請求項11に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の固体電解質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月28日付韓国特許出願第10-2018-0115701号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、イオン伝導度に優れる固体電解質及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在の携帯用電子機器には高エネルギー密度を有するリチウムイオン電池が主に使われる。この時、主に使われる液体電解質は漏出、爆発の危険性などの問題点を持っている。これを保護するために安全回路装置を要し、漏出を防ぐための金属外装カンで電池を封止することで重さの増加が不可避である。また、電池が厚くなるため電池設計において限界がある。また、電池が薄膜化及びフレキシブル化されるにつれ、現在液体を電解質で使用するリチウムイオン電池は、小型化、軽量化及びフレキシブル化のような要求条件を全て充たすことができない。
【0004】
これに対し、リチウムポリマー電池は、高い平均電圧、高エネルギー密度を有し、メモリー効果がないリチウムイオン電池の特性以外にも電池外部への電解液漏れを防ぐことができるので、電池の安定性が向上し、電極と分離膜が一体型になっているので、表面抵抗が減少して相対的に低い内部抵抗で高効率の充放電に有利である。また、電解質フィルムを薄膜化してフレキシブル機器及びいかなる模様の電池も作ることができ、金属外装カンを使わないので、電池の厚さをより薄くすることができる。したがって、安定性、小型化及び高容量の消費者要求が増える携帯電話、ノートパソコン、及びデジタルカメラなどポータブル電子機器の電池は、既存のリチウムイオン電池からリチウムポリマー電池に大量に代替されると思われる。また、リチウムポリマー電池は、ハイブリッド電気自動車などの高容量リチウム二次電池などへの応用が期待され、次世代電池として脚光を浴びている。
【0005】
現在常用化されているリチウムイオン電池は、有機カーボネート(Carbonate)基盤の溶媒にリチウム塩が溶解されている液体電解質を使っているが、外部刺激や昇温によって漏出、揮発、爆発などの安全性問題を内在するので、これを解決するための固体相高分子電解質に対する研究が必要である。
【0006】
最終的に、このような固体相高分子電解質に基づいて全固体電池システムを具現することが理想的で、このために高いイオン伝導度(>10-4S/cm、25℃)を有する固体相高分子電解質の開発が至急である。高分子固体電解質の場合、常温で10-5ないし10-6S/cm範囲の低いイオン伝導度を克服するためにグラフェンオキサイド、タンニン酸などのフィラーを含む複合体(composite)が開発されたことがある。
【0007】
例えば、特許文献1は窒化ホウ素フィラーを含む電解液を備えるリチウムイオン電池用分離膜を開示している。
【0008】
このようなフィラーの導入を通じて固体電解質のイオン伝導度を向上させることができる上、機械的強度も改善させることができる。しかし、フィラー自体の特性の限界及び分散性問題によって、固体電解質で高いイオン伝導度を得ることは依然として困難である。
【0009】
したがって、既存固体電解質に含まれたフィラーに比べて固体電解質の自由体積をさらに増加させることができるフィラーの開発を通じて固体電解質のイオン伝導度を向上させることができる技術開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5853639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、前記問題点を解決するために多角的に研究した結果、窒化ホウ素(boron nitride、BN)が導入されたポリシロキサン系固体電解質が高い熱的安定性及びイオン伝導度を示すことを確認した。
【0012】
したがって、本発明の目的はイオン伝導度が改善された固体電解質及びこの製造方法を提供することである。
【0013】
また、本発明の別の目的は前記固体電解質を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、ポリシロキサンを含む固体電解質において、前記固体電解質は窒化ホウ素(boron nitride、BN)を含む、固体電解質を提供する。
【0015】
前記固体電解質は、ポリシロキサン高分子マトリックス;リチウム塩;有機溶媒;架橋剤;及びフィラーとして窒化ホウ素(boron nitride、BN);を含むことができる。
【0016】
前記窒化ホウ素は前記ポリシロキサンの総重量を基準にして0.1ないし5重量%含まれたものであってもよい。
【0017】
前記窒化ホウ素は多環芳香族炭化水素(multi aromatic hydrocarbon)が結合されて表面改質された窒化ホウ素であってもよい。
【0018】
前記多環芳香族炭化水素は、ピレン(pyrene)、ペリレン(perylene)及びベンゾペリレン(benzoperylene)からなる群から選択される1種以上のものであってもよい。
【0019】
前記多環芳香族炭化水素は、ポリエチレングリコール(polyethylene、PEG)が結合されて末端が改質されたものであってもよい。
【0020】
前記多環芳香族炭化水素は、前記表面改質された窒化ホウ素の総重量を基準にして4ないし10重量%含まれたものであってもよい。
【0021】
前記ポリシロキサンの分子量(Mn)は800ないし1200g/molであってもよい。
【0022】
前記リチウム塩は、LiN(SOCF(LiTFSI)LiSCN、LiN(CN)、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、Li(CFSOC、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiSbF及びLiPF(CFCF、LiPF(C、LiPF(CF、及びLiB(Cで構成された群から選択された1種以上のものであってもよい。
【0023】
前記有機溶媒は、メタノール、アセトン、4-アセチルモルホリン(4-acetylmorpholine)、2-メチルピリジン-1-オキサイド(2-methylpyridine1-oxide)、2-ピロリドン(2-pyrrolidon)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(1-(2-hydroxyethyl)-2-pyrrolidinone)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、2-オキセパノン(2-oxepanone)、ブタノン(butanone)、2-ペンタノン(2-pentanone)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)及びメトキシノナフルオロブタン(methoxynonafluorobutane)で構成された群から選択される1種以上のものであってもよい。
【0024】
前記架橋剤は、テトラアリルオキシエタン(tetraallyl oxy ethane、TAOE)であってもよい。
【0025】
本発明は、また(S1)窒化ホウ素と多環芳香族炭化水素(multi aromatic hydrocarbon)を反応させ、前記多環芳香族炭化水素と結合されて表面改質された窒化ホウ素を形成する段階;(S2)ポリシロキサン、架橋剤及び光開始剤を有機溶媒に溶解させて混合液を形成する段階;(S3)前記混合液に前記表面改質された窒化ホウ素とリチウム塩を添加してスラリーを形成する段階;及び(S4)前記スラリーを基材上にキャスティングした後硬化させる段階;を含む固体電解質の製造方法を提供する。
【0026】
前記開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(1-hydroxy-cyclohexyl phenyl ketone)及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド(2,4,6-trimethylbenzoyldiphenyl-phosphineoxide)からなる群から選択される1種以上の光開始剤であってもよい。
【0027】
本発明は、また前記固体電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明による固体電解質によれば、窒化ホウ素をポリシロキサン系固体電解質に取り入れることで、イオン伝導度が改善されたポリシロキサン系固体電解質を得ることができる。
【0029】
また、前記窒化ホウ素をポリエチレングリコール-ピレン(PEG-pyrene)で表面改質することで、固体電解質内での分散性を高め、固体電解質のイオン伝導度の改善にもっと有利となる。
【0030】
また、前記固体電解質の製造過程において、キャスティング時にメタノールのような溶媒を使用し、乾燥後UV照射を通じて架橋反応を進め、フリースタンディングフィルム(free standing film)形態の固体電解質を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】製造例1で合成されたカルボキシル基で表面改質されたポリエチレングリコール(PEG-COOH)とPEGで表面改質された1-ピレンメタノール(PEG-pyrene)に対するHNMRグラフである。
図2】比較製造例1で合成されたパーフルオロポリエーテル-ピレン(PFPE-pyrene)のC-NMRグラフである。
図3】製造例2で合成されたポリシロキサン(BPS)に対するHNMRグラフである。
図4】製造例3で合成されたアリルポリエチレングリコール(APEG)に対するHNMRグラフである。
図5】実施例1で合成されたPEGで表面改質されたBNに対するTGA(Thermo Gravimetric Analyzer)グラフである。
図6a】実施例1ないし4で製造された固体電解質膜のFT-IRグラフを示すものである。
図6b】実施例1ないし4で製造された固体電解質膜のラマンスペクトル(Raman Spectrum)を示すものである。
図6c】比較例1で製造された固体電解質膜のFT-IRグラフを示すものである。
図7a】比較例2のゲル高分子電解質の製造時に使われるフィラーであるパーフルオロポリエーテル-ピレン(PFPE-pyrene)で表面改質された窒化ホウ素(FBN)に対するTEM(transmission electron microscope)写真である。
図7b】比較例2のゲル高分子電解質の製造時に使われるフィラーであるパーフルオロポリエーテル-ピレン(PFPE-pyrene)で表面改質された窒化ホウ素(FBN)に対するTEM(transmission electron microscope)ラマンスペクトルである。
図7c】比較例2のゲル高分子電解質の製造時に使われるフィラーであるパーフルオロポリエーテル-ピレン(PFPE-pyrene)で表面改質された窒化ホウ素(FBN)に対するTEM(transmission electron microscope)TGAグラフである。
図8】比較例2で製造されたゲル高分子電解質のFE-SEM(field emission scanning electron microscope)写真である。
図9a】実施例1ないし4及び比較例1で製造された固体電解質に対するイオン伝導度グラフを示すものである。
図9b】実施例1ないし4及び比較例1で製造された固体電解質に対する温度によるイオン伝導度グラフを示すものである。
図10】実施例1ないし4及び比較例1で製造された固体電解質に対する熱重量(TGA)グラフを示すものである。
図11】実施例3の固体電解質膜に対してリニアスイープボルタンメトリーによって測定した電流-電位曲線を示すものである。
図12a】比較例2、3、4のゲル高分子電解質(G-CFBN、G-PVH、LE-Celgard)をそれぞれ含むセルに対するリチウムデンドライト抑制性能実験結果を示すグラフである。
図12b】比較例2、3、4のゲル高分子電解質(G-CFBN、G-PVH、LE-Celgard)をそれぞれ含むセルに対する寿命性能実験結果を示すグラフである。
図13】比較例2、3、4のゲル高分子電解質(G-CFBN、G-PVH、LE-Celgard)を含むセルに対して測定したイオン伝導度及び陽イオン輸送率を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に対して理解しやすくするために本発明をより詳細に説明する。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲で使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0034】
高分子電解質
本発明は、ポリシロキサンを含む固体電解質に係り、イオン伝導度を向上するためのフィラーとして窒化ホウ素(boron nitride、BN)を含む固体電解質に関する。
【0035】
具体的に、本発明による固体電解質は、ポリシロキサン;リチウム塩;有機溶媒;架橋剤;及びフィラーとして窒化ホウ素(boron nitride、BN)を含む。
【0036】
本発明において、前記窒化ホウ素は板状構造であって、熱的安定性に優れ、電気伝導性がない特性を示し、固体電解質の自由体積を増加させてイオン伝導度を向上させることができる。
【0037】
前記窒化ホウ素は、前記ポリシロキサンの総重量を基準にして0.1ないし5重量%、好ましくは0.1ないし4重量%、より好ましくは0.1ないし3重量%で含まれてもよい。前記範囲未満であれば固体電解質のイオン伝導度改善効果が微々たるものであり、前記範囲超過の場合も前記窒化ホウ素の重量が増加するほどイオン伝導度が低下することがある。具体的に、前記窒化ホウ素の重量は前記ポリシロキサンの総重量を100重量%にした時の重量を意味する。
【0038】
また、前記窒化ホウ素は固体電解質内での分散性を向上するために表面改質されたものであってもよい。具体的に、前記窒化ホウ素は多環芳香族炭化水素(multi aromatic hydrocarbon)と物理的に結合されて表面改質されたものであってもよい。
【0039】
前記多環芳香族炭化水素は、ピレン(pyrene)、ペリレン(perylene)及びベンゾペリレン(benzoperylene)からなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくはピレンであってもよい。
【0040】
また、前記多環芳香族炭化水素は、ポリエチレングリコール(polyethylene、PEG)が結合されて末端が改質されたものであってもよい。例えば、前記多環芳香族炭化水素として1-ピレンメタノール(1-pyrenemethanol)の末端にポリエチレングリコールが結合されて形成されたポリエチレングリコール-ピレンは、前記窒化ホウ素を表面改質して分散性を向上させることに有利である。
【0041】
また、前記多環芳香族炭化水素で表面改質された窒化ホウ素において、前記多環芳香族炭化水素の含量は4ないし10重量%、好ましくは4ないし9重量%、より好ましくは4ないし8重量%であってもよい。前記範囲未満であれば窒化ホウ素の分散性が低下されることがあり、前記範囲超過であれば固体電解質のイオン伝導度が低下されることがある。この時、前記多環芳香族炭化水素はポリエチレングリコールで改質されたものであってもよい。
【0042】
また、前記窒化ホウ素の大きさは30ないし100nm、好ましくは40ないし90nm、より好ましくは50ないし80nmであってもよい。前記範囲未満であれば固体電解質のイオン伝導度の向上効果が微々たるものであり、前記範囲超過の場合も前記窒化ホウ素の大きさが大きくなるほどイオン伝導度が低下されることがある。この時、前記窒化ホウ素の大きさは窒化ホウ素の最長軸の長さを意味する。
【0043】
本発明において、前記ポリシロキサンはイオン伝導性高分子であって、ポリシロキサンマトリックスの形態で固体電解質に含まれることができる。
【0044】
前記ポリシロキサンの分子量(Mn)は800ないし1200g/mol、好ましくは850ないし1150g/mol、より好ましくは900ないし1100g/molであってもよい。前記範囲未満であれば固体電解質の耐久性が低下されることがあり、前記範囲超過であればイオン伝導性が低下されることがある。
【0045】
また、前記ポリシロキサンは、前記固体電解質の総重量を基準にして15ないし20重量%、好ましくは16ないし19重量%、より好ましくは17ないし19重量%で含まれてもよい。前記範囲未満であれば固体電解質の耐久性が低下されることがあり、前記範囲超過であればイオン伝導性が低下されることがある。
【0046】
また、前記固体電解質はポリシロキサン以外に高分子をもっと含むことができ、例えば、前記高分子はアリルポリエチレングリコール(allyl polyethylene glycol、APEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール(EG)及びポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0047】
本発明の固体電解質でイオン供給化合物として使われるリチウム塩はリチウムイオン伝導度を向上させることができる。
【0048】
前記リチウム塩は 、LiSCN、LiN(CN)、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiN(SOF)、Li(CFSOC、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiSbF、LiPF(CFCF、LiPF(C、LiPF(CF、及びLiB(Cで構成された群から選択される1種以上であってもよい。好ましくは、前記リチウム塩はLiN(SOF)またはLiN(SOCFであってもよく、この場合、固体電解質のイオン伝導度及び機械的物性の向上にもっと有利である。
【0049】
また、前記リチウム塩は全体固体電解質内で10ないし30重量%、好ましくは15ないし25重量%、より好ましくは17ないし23重量%で含まれた方がよい。もし前記リチウム塩の含量が前記範囲未満であればリチウムイオン伝導度の確保が容易ではなく、これと逆に、前記範囲を超過する場合は、効果において大きい増加がなくて非経済的であるため、前記範囲内で適切に選択する。
【0050】
本発明において、前記有機溶媒は前記リチウム塩を溶解させることができる溶媒が使われてもよい。
【0051】
前記有機溶媒は、メタノール、アセトン、4-アセチルモルホリン(4-acetylmorpholine)、2-メチルピリジン-1-オキサイド(2-methylpyridine1-oxide)、2-ピロリドン(2-pyrrolidon)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(1-(2-hydroxyethyl)-2-pyrrolidinone)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、2-オキセパノン(2-oxepanone)、ブタノン(butanone)、2-ペンタノン(2-pentanone)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)及びメトキシノナフルオロブタン(methoxynonafluorobutane)で構成された群から選択される1種以上であってもよい。好ましくは、前記有機溶媒はメトキシノナフルオロブタン(methoxynonafluorobutane)であってもよい。
【0052】
前記有機溶媒の含量は、最終的に得られる固体電解質の粘度を考慮してその含量を限定する。すなわち、溶媒の含量が多いほど最終的に得られる組成の粘度が高くて固体電解質膜の製造工程が容易ではなく、これと逆に、少ないほど粘度が低くて作業性が低下することがある。
【0053】
また、本発明の固体電解質は30℃であって溶液粘度は特に限定されないが、好ましくは200ないし1,000cP、好ましくは300ないし800cP以下、より好ましくは500ないし700cPであってもよい。このような粘度調節は固体電解質を膜で製作するにあたってフィルム工程性を高める粘度を確保できるようにする。
【0054】
もし、粘度が前記範囲を超過すれば、コーティング液の平坦性低下による横方向(TD、Transverse Direction)の厚さが不均一で流動性が無くなるので均一な塗布が困難となる場合があり、逆に前記範囲より低ければコーティングの際にコーティング液の過度な流れによる染みの発生を防ぐことができ、機械方向(MD、Mechanical Direction)の厚さが不均一になる問題を引き起こす。
【0055】
本発明において、前記架橋剤は固体電解質膜の形成を容易にすることで、固体電解質の機械的物性を改善させることができる。
【0056】
前記架橋剤はテトラアリルオキシエタン(tetraallyl oxy ethane、TAOE)であってもよい。
【0057】
また、前記架橋剤は固体電解質の総重量を基準にして5ないし10重量%、好ましくは6ないし9重量%、より好ましくは7ないし8重量%で含まれてもよい。前記範囲未満であれば 固体電解質の形成が難しいことがあり、前記範囲超過であればイオン伝導度が低下されることがある。
【0058】
高分子電解質の製造方法
本発明はまた、従来の固体電解質に対して同等レベル以上の機械的物性を維持しながらイオン伝導度が改善された固体電解質の製造方法に係り、前記固体電解質の製造方法は(S1)窒化ホウ素と多環芳香族炭化水素(multi aromatic hydrocarbon)を反応させ、前記多環芳香族炭化水素と結合されて表面改質された窒化ホウ素を形成する段階;(S2)ポリシロキサン、架橋剤及び光開始剤を有機溶媒に溶解させて混合液を形成する段階;(S3)前記混合液に前記表面改質された窒化ホウ素とリチウム塩を添加してスラリーを形成する段階;及び(S4)前記スラリーを基材上にキャスティングした後架橋させる段階;を含むことができる。
【0059】
以下、前記高分子電解質の製造方法について各段階別により詳しく説明する。下記各段階で使われる物質の種類、物性及び重量は上述したものと同一である。
【0060】
(S1)段階
(S1)段階では、窒化ホウ素と多環芳香族炭化水素(multi aromatic hydrocarbon)を反応させ、前記多環芳香族炭化水素と結合されて表面改質された窒化ホウ素を形成することができる。
【0061】
前記固体電解質内で窒化ホウ素の分散性を向上させるために、前記窒化ホウ素の表面を改質し、この時、表面改質のために前記窒化ホウ素と多環芳香族炭化水素を反応させて物理的に結合させる。前記多環芳香族炭化水素はポリエチレングリコールが結合されて末端が改質されたものであってもよい。
【0062】
具体的に、前記窒化ホウ素とポリエチレングリコール-ピレンを含む溶液を超音波処理し、遠心分離させた後で得た上層液を濾過(filtering)させた後、洗浄(washing)及び乾燥させて表面改質された窒化ホウ素を得ることができる。
【0063】
前記ポリエチレングリコール-ピレンは末端がカルボキシル基で改質されたポリエチレングリコールと1-ピレンメタノールを反応させ、前記1-ピレンメタノールの末端を前記ポリエチレングリコールで改質したものである。
【0064】
(S2)段階
(S2)段階では、ポリシロキサン、架橋剤及び開始剤を有機溶媒に溶解させて混合液を形成することができる。前記ポリシロキサン、架橋剤及び有機溶媒の種類、特徴及び重量は前述したとおりである。
【0065】
本発明において、前記開始剤はポリシロキサンと架橋剤の反応を誘導して固体電解質マトリックスを形成させることができ、好ましくは前記開始剤は光開始剤であってもよい。
【0066】
前記光開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(1-hydroxy-cyclohexyl phenyl ketone)及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド(2,4,6-trimethylbenzoyldiphenyl-phosphineoxide)からなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンであってもよい。
【0067】
前記開始剤は最終的に製造された前記ポリシロキサンの重量を基準にして5ないし15重量%、好ましくは7ないし13重量%、より好ましくは9ないし11重量%になるように使用することができる。前記範囲未満であれば、固体電解質自体が形成されることができず、前記範囲超過であれば開始剤が過量添加されても固体電解質の形成反応がもっと多く、またはもっと速く進められることではないので、開始剤含量の増加による利益がない。
【0068】
(S3)段階
(S3)段階では、前記混合液に前記表面改質された窒化ホウ素とリチウム塩を添加してスラリーを形成することができる。前記表面改質された窒化ホウ素とリチウム塩の物性、特徴及び重量は前述したとおりである。
【0069】
この時、前記窒化ホウ素を有機溶媒に分散させた後、リチウム塩を添加してスラリーを形成することができる。
【0070】
前記有機溶媒は、メタノール、アセトン、4-アセチルモルホリン(4-acetylmorpholine)、2-メチルピリジン-1-オキサイド(2-methylpyridine1-oxide)、2-ピロリドン(2-pyrrolidon)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(1-(2-hydroxyethyl)-2-pyrrolidinone)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、2-オキセパノン(2-oxepanone)、ブタノン(butanone)、2-ペンタノン(2-pentanone)及びメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)からなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは前記有機溶媒はメタノールであってもよい。
【0071】
(S4)段階
(S4)段階では、前記スラリーを基材上にキャスティングした後硬化させることができる。
【0072】
具体的には、前記スラリーを基材上にキャスティングして大気条件で溶媒を蒸発させて取り除いた後、UVを照射して硬化させて固体電解質を製造することができる。
【0073】
前記基材はスラリーをキャスティングすることができる基材であれば特に制限されない。例えば、前記基材はガラス基材または離型フィルムであってもよい。例えば、前記離型フィルムでは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリイミド樹脂;アクリル樹脂;ポリスチレン及びアクリロニトリル-スチレンなどのスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ乳酸樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体のようなポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル樹脂;ポリアミド樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテル-エーテルケトン系樹脂;アリレート系樹脂;または前記樹脂の混合物で形成された離型フィルムが使われることができる。
【0074】
また、前記スラリーを基材上にキャスティングする方法では、スプレー法、スクリーンプリンティング、ドクターブレード法及びスロットダイ法で構成された群から選択されることができるが、当業界で使われることができる基材上に溶液またはスラリーを塗布する方法であればこれに制限されない。
【0075】
前記基材上にキャスティングされたスラリーが硬化されれば、形成された固体電解質を前記基材から剥離することができる。
【0076】
前記硬化は熱硬化または光硬化であってもよい。前記熱硬化は50ないし80℃、好ましくは55ないし75℃、より好ましくは60ないし70℃の温度で加熱して硬化させることであってもよい。前記熱硬化温度が前記範囲未満であれば望むほどの硬化が行われないため固体電解質を得ることができず、前記範囲超過であれば固体電解質自体の物性が変性されることがある。前記光硬化はUV硬化であってもよい。
【0077】
リチウム二次電池
本発明はまた、前述したような固体電解質を含むリチウム二次電池に関する。
【0078】
本発明によるリチウム二次電池は、正極、負極及びこれらの間に介在された電解質を含み、この時、前記電解質として前述したような固体電解質を使用することができる。
【0079】
前記高分子電解質は電気化学的に優れる電圧安定性及び陽イオン輸送率を全て充たしながらも高いリチウムイオン伝導度を示し、電池の電解質として好ましく使って電池性能を改善することができる。
【0080】
同時に、前記電解質はリチウムイオン伝導度をもっと高めるため、このような目的で使われる物質をさらに含むことができる。
【0081】
必要な場合、前記高分子電解質は無機固体電解質または有機固体電解質をもっと含む。
【0082】
前記無機固体電解質はセラミック系列の材料で、結晶性または非結晶性材質が使われてもよく、チオ-リシコン(Thio-LISICON:Li3.25Ge0.250.75)、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、LiS-P、LiPS、Li11、LiO-B、LiO-B-P、LiO-V-SiO、LiO-B、LiPO、LiO-LiWO-B、LiPON、LiBON、LiO-SiO、LiI、LiN、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、LiPO(4-3/2w)(wは、w<1)、Li3。6Si0.60.4などの無機固体電解質が可能である。
【0083】
前記有機固体電解質の例では、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマー系列の材料にリチウム塩を混合したものを使用することができる。この時、これらは単独でまたは少なくとも一つ以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
高分子電解質への具体的な適用方法は本発明で特に限定せず、この分野における通常の知識を有する者によって公知された方法を選定または選択して適用することができる。
【0085】
高分子電解質が電解質として適用可能なリチウム二次電池は正極または負極の制限がなく、特に高温で作動するリチウム-空気電池、リチウム酸化物電池、リチウム-硫黄電池、リチウム金属電池及び全固体電池などに適用可能である。
【0086】
リチウム二次電池の正極は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(0≦x≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa;0.01≦x≦0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-x(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa;0.01≦x≦0.1)またはLiMnMO(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNiMn2-x(0≦x≦0.2)で表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoO、CuMo、FeS、CoS及びMiSなどのカルコゲン化物、スカンジウム、ルテニウム、チタン、バナジウム、モリブデン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの酸化物、硫化物またはハロゲン化物が使われることができ、より具体的には、TiS、ZrS、RuO、Co、Mo、Vなどが使われることができるが、これに限定されない。
【0087】
このような正極活物質は正極集電体上に形成されることができる。前記正極集電体は当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を有するものであれば特に制限されないし、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使われることができる。この時、前記正極集電体は、正極活物質との接着力を高めることもできるように、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を使用することができる。
【0088】
また、負極は負極集電体上に負極活物質を有する負極合剤層が形成されたり、負極合剤層(一例として、リチウムホイル)を単独で使用する。
【0089】
この時、負極集電体や負極合剤層の種類は本発明で特に限定せずに、公知の材質を使用可能である。
【0090】
また、負極集電体は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使われることができる。また、前記負極集電体は正極集電体と同様、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態が使われることができる。
【0091】
また、負極活物質は結晶質人造黒鉛、結晶質天然黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパー-P、グラフェン(graphene)、繊維状炭素からなる群から選択される一つ以上の炭素系物質、Si系物質、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe'(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを含むことができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0092】
これに加え、負極活物質はSnMe1-xMe'(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi及びBiなどの酸化物などを使用することができ、結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質が単独で、または2種以上が混用されて使われることができる。
【0093】
この時、前記電極合剤層は、バインダー樹脂、導電材、充填剤及びその他添加剤などをさらに含むことができる。
【0094】
前記バインダー樹脂は、電極活物質と導電材の組み合わせと集電体に対する組み合わせのために使用する。このようなバインダー樹脂の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などを挙げることができる。
【0095】
前記導電材は、電極活物質の導電性をもっと向上させるために使用する。このような導電材は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などが使われることができる。
【0096】
前記充填剤は電極の膨脹を抑制する成分として選択的に使われ、当該電池に化学的変化を引き起こさずに繊維状材料であれば特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオリフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使われる。
【0097】
前述したリチウム二次電池の形態は特に制限されず、例えば、ゼリー-ロール型、スタック型、スタック-フォールディング型(スタック-Z-フォールディング型を含む)、またはラミネーション-スタック型であってもよく、好ましくはスタック-フォールディング型であってもよい。
【0098】
このような前記負極、高分子電解質及び正極が順次積層された電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れ、キャッププレート及びガスケットで密封して組み立ててリチウム二次電池を製造する。
【0099】
この時、リチウム二次電池は、使用する正極/負極の材質によってリチウム-硫黄電池、リチウム-空気電池、リチウム-酸化物電池、リチウム全固体電池など様々な電池で分類可能であり、形態によって円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などで分類されることができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプで分けることができる。これらの電池の構造と製造方法はこの分野に広く知られているので詳しい説明は省略する。
【0100】
本発明によるリチウム二次電池は、高容量及び高いレート特性などが要求されるデバイスの電源で使われることができる。前記デバイスの具体例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0101】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0102】
製造例1:ポリエチレングリコール-ピレン合成(PEG-pyrene)
固体電解質のフィラーで使うための窒化ホウ素の表面改質に使用するためのポリエチレングリコール-ピレン(PEG-pyrene)を合成した。
【0103】
(1)PEG-pyrene合成
PEG-pyreneの合成過程は下記反応式1のとおりである。
【0104】
[反応式1]
【化1】
【0105】
(1-1)PEGの末端をカルボキシル基で改質
溶媒のクロロホルム(chloroform)にPEG(Mn=400、n=8.3)を溶解させ、無水コハク酸(Succinic anhydride)と触媒としてDMAP(4-ジメチルアミノピリジン(4-dimethylaminopyridine))を添加し、25℃で24時間反応させた。この時、前記PEG1モルに対して無水コハク酸1.2モルの割合で添加し、前記DMAPは前記PEG1モルに対して10モルの割合で添加した。
【0106】
前記反応終了後、塩化メチレン(Methylene chloride、MC)に溶かして水との抽出(extraction)を通じて精製し、末端がカルボキシル基で改質されたPEGを得た(PEG-COOH)。
【0107】
(1-2)1-ピレンメタノール末端をPEGで改質
溶媒のジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)に1-ピレンメタノール(1-pyrenmethanol)を溶解させ、前記末端がカルボキシル基で改質されたPEG(PEG-COOH)と触媒としてEDC(エチレンジクロライド(Ethylene Dichloride))/DMAPを添加し、50℃で21時間反応させた。この時、前記1-ピレンメタノール1モルに対して前記末端がカルボキシル基で改質されたPEG(PEG-COOH)を1.5モルの割合で添加し、前記EDC/DMAPはそれぞれ1モル及び0.1モルの割合で添加した。
【0108】
前記反応終了後、塩化メチレン(Methylene chloride、MC)に溶かして水との抽出(extraction)を通じて精製し、1-ピレンメタノールの末端をPEGで改質した(PEG-pyrene)。
【0109】
(2)PEG-pyreneの合成確認
図1は、製造例1で合成されたカルボキシル基で表面改質されたポリエチレングリコール(PEG-COOH)とPEGで表面改質された1-ピレンメタノール(PEG-pyrene)に対するHNMRグラフである。
【0110】
図1を参照すれば、製造例1で実施された合成反応によってPEG-COOH及びPEG-pyreneが合成されたことをHNMRによって確認することができる。
【0111】
比較製造例1:パーフルオロポリエーテル-ピレン合成(PFPE-pyrene)
固体電解質のフィラーで使うための窒化ホウ素の表面改質に使用するためのパーフルオロポリエーテル-ピレン(PFPE-pyrene)を合成した。
【0112】
(1)PFPE-pyrene合成
PFPEと1-ピレンメタノールを1.2:1のモルの割合で塩化チオニル(thionyl chloride、SOCl)に溶かした後、80℃で12時間反応させ、下記化学式1で表されるPFPE-pyreneを合成した。残っている塩化チオニルは蒸発させ、クロロホルムを利用して反応していない1-ピレンメタノールを洗浄して取り除いた。
【0113】
[化学式1]
【化2】
【0114】
前記式において、nは10ないし30の定数である。
【0115】
(2)PFPE-pyreneの合成確認実験
図2は、比較製造例1で合成されたパーフルオロポリエーテル-ピレン(PFPE-pyrene)のC-NMRグラフである。
【0116】
図2を参照すれば、比較製造例1で実施された合成反応によってPFPE-pyreneが合成されたことをC-NMRによって確認することができ、1-ピレンメタノールのヒドロキシル(hydroxyl)基がPFPEでよく改質されたことが分かる。
【0117】
製造例2:ポリシロキサン合成(BPS、Branched polysiloxane)
塩酸(0.104mol)をエタノール水溶液(水4.3g+エタノール18.4g)に溶かした後、前記溶液に3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)methyldimethoxysilane、0.02mol)と3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane、0.02mol)を添加し、50℃で3時間反応させた。その後、反応物を蒸溜水に沈澱させて不純物を取り除いた後、合成されたポリシロキサンを得た。
【0118】
図3は、製造例2で合成されたポリシロキサン(BPS)に対するHNMRグラフである。
【0119】
図3を参照すれば、製造例2の合成反応によってポリシロキサンが合成されたことを確認することができる。
【0120】
製造例3:アリルポリエチレングリコールの合成(APEG、Allyl functionalized poly(ethylene glycol))
ポリエチレングリコールメチルエーテル(Poly(ethylene glycol)methyl ether、Mw350g/mol、35g、0.10mol)と臭化アリル(allyl bromide、0.11mol)をトルエン100mlに溶かし、NaOH(0.11mol)を溶かして45℃で16時間反応させた。その後、反応物をNaCl水溶液とジクロロメタン(dichloromethane)で抽出して精製し、合成されたAPEGを得た。
【0121】
図4は、製造例3で合成されたアリルポリエチレングリコール(APEG)に対するHNMRグラフである。
【0122】
図4を参照すれば、製造例3の合成反応によってAPEGが合成されたことを確認することができる。
【0123】
実施例1ないし実施例4
下記表1に記載された組成比によって以下のような方法で固体電解質を製造した。
【0124】
1)窒化ホウ素の表面改質
下記反応式2によって窒化ホウ素(BN)の表面改質反応を実施した。
【0125】
[反応式2]
【化3】
【0126】
BN0.1gと前記製造例1で得たPEG-pyrene0.1gを水100mlに溶かし、20時間超音波(sonification)処理した。
【0127】
その後、10000rpmの速度で15分間遠心分離をしながら、3回にわたって上層液を集めた後、50℃で乾燥させてPEG-pyreneで表面改質された窒化ホウ素を得た(PBN)。
【0128】
この時、前記BNとPEG-pyreneの非共有結合機能化(noncovalent functionalization)によって結合し、BNの表面が改質される。
【0129】
(2)ポリシロキサン、架橋剤及び光開始剤の混合液製造
前記製造例2で得たポリシロキサン(Mn=1000g/mol)0.1gに、製造例3で得たアリルポリエチレングリコール(APEG)とテトラアリルオキシエタン(tetraallyloxyethane、TAOE)を4:1のモルの割合で混合した。光開始剤である2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone、DMPA)をポリシロキサンに対して10重量%さらに混合した後、メタノール0.4gに溶かして混合液を得た。
【0130】
(3)表面改質された窒化ホウ素を含むスラリー製造
前記(1)で得た表面改質されたBN(PBN)と、リチウム塩としてLiTFSI([EO/Li]=0.07)を前記(2)で得た混合液に添加して3時間超音波処理してスラリーを得た。この時、EOはエチレンオキサイド(ethylene oxide)を意味し、[EO/Li]はEOとLiのモル比を意味する。
【0131】
(4)固体電解質の製造
前記(3)で得たスラリーを2.5cm×2.5cmのガラスにキャスティングした後、1時間UV照射して硬化させて固体電解質膜を製造した。
【0132】
【表1】
【0133】
比較例1
前記表1に記載された組成によって実施例1と同様の方法で実施するが、PEGで表面改質された窒化ホウ素(PBN)を使わずに固体電解質を製造した。
【0134】
比較例2
前記表1に記載された組成によって実施例1で使ったフィラーであるPEGで表面改質されたBN(PBN)の代わりにPFPEで表面改質されたBN(FBN)を使って固体電解質を製造した。
【0135】
(1)窒化ホウ素の表面改質
下記反応式3によって窒化ホウ素(BN)の表面改質反応を実施した。
【0136】
[反応式3]
【化4】
【0137】
BN0.1gと前記比較製造例1で得たPFPE-pyrene0.1gをメトキシノナフルオロブタン(methoxynonafluorobutane)100mlに溶かし、20時間超音波(sonification)処理した。
【0138】
その後、30000rpmの速度で15分間遠心分離しながら、3回にわたって上層液を集めた後、アセトンを蒸発させ、PFPE-pyreneで表面改質された窒化ホウ素を得た(FBN)。
【0139】
この時、前記BNとPFPE-pyreneの非共有結合機能化(noncovalent functionalization)によって結合し、BNの表面が改質される(FBN)。
【0140】
(2)ゲル高分子電解質の製造(G-CFBN)
下記反応式4によってゲル高分子電解質(Gel Polymer Electrolyte、G-CFBN)を製造した。
【0141】
[反応式4]
【化5】
【0142】
アセトン溶媒にFBNを溶かして3時間超音波(sonication)処理した後、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン):PVDF-HFP(Poly(vinylidene fluoride-hexafluoropropylene)、PVH)と混合して混合液を得た。この時、FBNの使容量は最終的に製造された固体電解質膜の総重量を基準にして0.5重量%になるようにした。
【0143】
ドクターブレード(doctor blade)によって前記混合液をキャスティングして膜(Composite Membrane、CFBN)を形成した。
【0144】
その後、アルゴン条件下で前記混合液を液体電解質に24時間含浸させてゲル高分子電解質を製造した(Gel Polymer Electrolyte、G-CFBN)。前記液体電解質は、EC/DEC(v/v=1:1)及びLiTFSIを含むものである。
【0145】
比較例3
フィラーを含んでいないPVH(ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン):PVDF-HFP(Poly(vinylidene fluoride-hexafluoropropylene)))膜を製作した後、これを電解液(1M LiTFSI in EC:EDC(1:1vol%)に含浸させて作ったゲル高分子電解質を製造した(G-PVH)。
【0146】
比較例4
常用化された電解質膜のCelgardR 2325を電解液(1M LiTFSI in EC:EDC(1:1vol%)に含浸させて電解質を製造した(LE-Celgard)。
【0147】
実験例1
実施例及び比較例で製造された物質に対する構造を確認する実験を行った。
【0148】
図5は、実施例1で合成されたPEGで表面改質されたBNに対するTGA(Thermo Gravimetric Analyzer)グラフである。
【0149】
図5を参照すれば、BNに4.3重量%以上のPEG-pyreneが物理的に結合されたことが分かる。
【0150】
図6aは実施例1ないし4で製造された固体電解質膜のFT-IRグラフを示すもので、図6bは実施例1ないし4で製造された固体電解質膜のラマンスペクトル(Raman Spectrum)を示すもので、図6cは比較例1で製造された固体電解質膜のFT-IRグラフを示すものである。
【0151】
図6aを参照すれば、実施例1ないし4でUVを架橋した後でポリシロキサン(BPS)のチオール(thiol、-SH)基に該当するピークが消えることで、アリルポリエチレングリコール(APEG)のアリル基とBPSのチオール間の反応が行われ、ポリシロキサンの側鎖がPEGで改質されたことが分かる。
【0152】
また、図6bを参照すれば、実施例1ないし4でUVを架橋した後でアリルポリエチレングリコール(APEG)のC=C結合ピークが消えることが分かる。
【0153】
また、図6cを参照すれば、比較例1でUVを架橋した後でポリシロキサン(BPS)のチオール(thiol、-SH)基に該当するピークが消えることが分かる。
【0154】
図7aないし7cは、それぞれ比較例2のゲル高分子電解質を製造する時使われるフィラーのパーフルオロポリエーテル-ピレン(PFPE-pyrene)で表面改質された窒化ホウ素(FBN)に対するTEM(transmission electron microscope)写真、ラマンスペクトル及びTGAグラフである。
【0155】
図7aを参照すれば、比較例2のゲル高分子電解質(G-CFBN)を製造する時使われたフィラーのFBNに対するTEM写真においてFとOのシグナルを確認することができた。
【0156】
また、図7bを参照すれば、ラマンスペクトルを通じて前記FBNでPFPE-pyreneのラマンバンドを確認することができた。
【0157】
また、図7cを参照すれば、熱重量(TGA)グラフを通じてFBNの総重量を基準にしてPFPE-pyreneが4.7重量%含まれてBNの表面を改質したことを確認することができる。
【0158】
図8は、比較例2で製造されたゲル高分子電解質のFE-SEM(field emission scanning electron microscope)写真である。
【0159】
図8を参照すれば、比較例2のゲル高分子電解質(G-CFBN)の膜に気孔が存在する構造であることが分かる。
【0160】
実験例2
実施例及び比較例で製造された固体電解質膜に対するイオン伝導度を計算した。
【0161】
抵抗測定機(IM-6ex、ZAHNER-Elektrik GmbH)を利用して25℃、10mV、10ないし10Hzの条件で固体電解質膜の抵抗を測定した後、下記式1にしたがってイオン伝導度(σ)を計算した。
【0162】
[式1]
σ=(1/R)x(d/A)
前記式において、σはイオン伝導度、Rは固体電解質の抵抗、dは固体電解質の厚さ、Aは固体電解質の面積である。
【0163】
図9a及び9bはそれぞれ実施例1ないし4及び比較例1で製造された固体電解質に対するイオン伝導度グラフ及び温度によるイオン伝導度グラフを示すものである。
【0164】
図9aを参照すれば、フィラーであるPBNが含まれていない比較例1(CPE0)の固体電解質膜は2×10-5S/cmないし3×10-5S/cm(25℃)のイオン伝導度を示す一方、PBNを含む実施例1ないし4(CPE0.1ないし CPE1)の固体電解質膜は比較例1に比べて大きいイオン伝導度を示し、特に、PBNの含量が0.5重量%である実施例3(CPE0.5)のイオン伝導度が1.3×10-4S/cmで最も高いものとして示された。
【0165】
また、図9bを参照すれば、固体電解質の温度とイオン伝導度は比例することが分かる。
【0166】
また、下記表2は実施例3と比較例1のイオン伝導度を比べたことで、60℃で比較例1のイオン伝導度が25℃で実施例3のイオン伝導度と類似になることが分かる。
【0167】
【表2】
【0168】
実験例3
実施例及び比較例で製造された固体電解質膜に対する熱的安定性に対する実験を行った。
【0169】
熱重量分析機(TGA Q-5000IR、TA instrument)を利用して、固体電解質膜の熱分解温度を測定した。
【0170】
図10は、実施例1ないし4及び比較例1で製造された固体電解質に対する熱重量(TGA)グラフを示すものである。
【0171】
図10を参照すれば、固体電解質膜の初期重量を基準にして5重量%が減少された温度(Td、5wt%)は、PBNの含量が相違する実施例1ないし4及び比較例1のいずれも270℃程度で類似であると示された。このような結果から、固体電解質膜は一般的な液体電解質に比べて高い熱安定性を示すことが分かる。
【0172】
実験例4
実施例の中でイオン伝導度が最も高く表れたPBNの含量が0.5重量%の実施例3(図9a参照)の固体電解質膜に対する電気化学的安定性に対する実験を行った。
【0173】
電気化学的安定性は25℃、スキャン速度(scan rate)1mVs-1の条件下でリニアスイープボルタンメトリー(Linear Sweep Voltammetry、LSV)によって測定した。
【0174】
図11は、実施例3の固体電解質膜に対してリニアスイープボルタンメトリーによって測定した電流-電位曲線であって、実験を全部で2回行い、その結果を示すものである。
【0175】
図11を参照すれば、Li正極対比駆動電圧約4.5Vから電流が急激に増加し始めるものと表れ、これより前記駆動電圧内では電気化学的に充分に安定的な固体電解質膜というのが分かる。
【0176】
一方、比較例1はフィラーのPBNを含んでいない固体電解質膜であって、電気化学的安定性に対する実験を行ってはいないが、一般的にフィラーが増加すれば膜の電気化学的安定性も増加するので、実施例3と同一なポリシロキサンマトリックスを使用するので類似な水準の電気化学的安定性が確保されると予想される。
【0177】
実験例5
比較例2、3、4でそれぞれ製造されたゲル高分子電解質(G-CFBN、G-PVH、LE-Celgard)を含む電池に対する性能実験を行った。
【0178】
負極をリチウム金属(Li)、電解質は前記ゲル高分子電解質(G-CFBN、G-PVH、LE-Celgard)、正極をLiFePO(LFP)とするセル(Li/G-CFBN/LFP、Li/G-PVH/LFP、Li/LE-Celgard/LFP)に対するセル短絡実験及び寿命性能実験を行った。
【0179】
前記出力性能実験は、1mA/cmの電流密度で1950時間実施した。
【0180】
また、前記寿命性能実験は、10Cで500サイクル間実施した。
【0181】
図12a及び12bは、それぞれ比較例2、3、4のゲル高分子電解質(G-CFBN、G-PVH、LE-Celgard)をそれぞれ含むセルに対するリチウムデンドライト抑制性能及び寿命性能実験結果を示すグラフである。
【0182】
図12aを参照すれば、比較例2のゲル高分子電解質(G-CFBN)を含むセルの場合、1950時間セルが短絡されないことを確認した。
【0183】
また、図12bを参照すれば、比較例2のゲル高分子電解質(G-CFBN)を含むセルの場合、10Cの条件で500サイクル試験後も82%の容量が維持(retention)されることを確認した。
【0184】
このような結果は前記G-CFBNでフィラーで使われた板状のBNが負極のリチウム金属デンドライトの形成を抑制したことに起因したことなのを推測することができる。
【0185】
比較例2で製造されたゲル高分子電解質(G-CFBN)に対するイオン伝導度(ionic conductivity)及び陽イオン輸送率(tLi+)を測定した。
【0186】
前記イオン伝導度は実験例2と同様の方法で実施した。
【0187】
前記陽イオン輸送率は、前記Li/G-CFBN/LFPセルに対して10mVの電圧を与え、20時間の電流変化測定を利用した。陽イオン輸送率(tLi+)は下記式2によって正常状態の電流量(I)と初期状態の電流量(I)の比にして計算した。
【0188】
[式2]
【数1】
【0189】
図13は、比較例2、3、4のゲル高分子電解質(G-CFBN、G-PVH、LE-Celgard)を含むセルに対して測定したイオン伝導度及び陽イオン輸送率を測定したグラフである。
【0190】
図13を参照すれば、窒化ホウ素(FBM)、PVDF-HFP及びアセトン間の相溶性(compatibility)の差によって、キャスティング後アセトンが優勢した(dominant)部分のアセトン蒸発によって気孔がたくさん形成され、0.5重量%のFBNを含んだゲル電解質の場合、210%の高い液体電解質のアップテイク(uptake)値が測定された。これによって常温で8×10-4S/cmの高いイオン伝導度が具現された。
【0191】
以上、本発明はたとえ限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれに限定されず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と下記の特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12a
図12b
図13