(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-28
(45)【発行日】2022-08-05
(54)【発明の名称】転落者検出システム、転落者検出方法、および転落者検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20220729BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220729BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20220729BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20220729BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220729BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20220729BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
H04N7/18 D
G08B25/04 K
G08B21/02
G06T7/00 350B
G06T7/20 300Z
F23G5/50 S
(21)【出願番号】P 2021040498
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2022-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】町田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 慶
(72)【発明者】
【氏名】坂井 美穂子
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/040110(WO,A1)
【文献】特開平09-182061(JP,A)
【文献】特開2016-57998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G5/00
5/40-5/42
5/50
G06T7/00-7/90
G06V10/00-20/90
30/418
40/16
40/20
G08B23/00-31/00
H04N7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が貯留される貯留設備内を撮像する第1カメラから第1画像データを取得する第1画像データ取得部と、
貯留設備に隣接するプラットホーム内を撮像する第2カメラから第2画像データを取得する第2画像データ取得部と、
第1画像データを画像解析して貯留設備内の人物を検出する第1画像解析部と、
第2画像データを画像解析してプラットホーム内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡する第2画像解析部と、
第1画像データの解析結果と第2画像データの解析結果との組み合わせに基づいて、プラットホームから貯留設備へと転落する転落者の有無を判定する転落者判定部と、
を備えた転落者検出システム。
【請求項2】
転落者判定部は、第2画像データの解析結果を確認し、第1時刻において貯留設備とプラットホームとの間を仕切る投入扉近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合に、第1時刻における第1画像データの解析結果を確認し、貯留設備内に人物が検出された場合に、転落者ありと判定する、請求項1に記載の転落者検出システム。
【請求項3】
転落者判定部は、第1時刻において投入扉近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合に、第1時刻における第1画像データのうち当該投入扉の位置に対応する貯留設備内の領域を撮像した画像の解析結果を確認する、請求項2に記載の転落者検出システム。
【請求項4】
転落者判定部は、第1時刻における第1画像データの解析結果を確認した際に貯留設備内に人物が検出されなかった場合には、第1時刻における第1画像データと、第1時刻から予め定められた時間経過後の第2時刻における第1画像データとの差分を抽出し、抽出した差分が予め定められた閾値を超えた場合に、転落者ありと判定し、差がない場合に、転落者なしと判定する、請求項2または3に記載の転落者検出システム。
【請求項5】
転落者判定部は、第1画像データの解析結果を確認し、第1時刻において貯留設備内に人物が検出された場合に、第1時刻に対して予め定められた時間前までの第2画像データの解析結果を確認し、貯留設備とプラットホームとの間を仕切る投入扉近傍の予め定められた領域内で人物が映像からフレームアウトしていた場合に、転落者ありと判定する、請求項1に記載の転落者検出システム。
【請求項6】
転落者判定部は、第1時刻において貯留設備内に人物が検出された場合に、第1時刻に対して予め定められた時間前までの第2画像データのうち貯留設備内で人物が検出された領域に対応する位置の投入扉を撮像した画像の解析結果を確認する、請求項5に記載の転落者検出システム。
【請求項7】
転落者判定部は、第1時刻に対して予め定められた時間前までの第2画像データの解析結果を確認した際に投入扉近傍の予め定められた領域外で人物が映像からフレームアウトしていた場合には、転落者なしと判定する、請求項5または6に記載の転落者検出システム。
【請求項8】
転落者判定部は、第1時刻に対して予め定められた時間前までの第2画像データの解析結果を確認した際に投入扉近傍の予め定められた領域内への人物の進入が検出されなかった場合に、転落者なしと判定する、請求項5~7のいずれかに記載の転落者検出システム。
【請求項9】
転落者判定部により転落者ありと判定された場合に、
(1)警報を発報する、
(2)貯留設備内に貯留された被処理物の攪拌または搬送を行うクレーンを停止するようクレーン制御装置に制御信号を送信する、
(3)貯留設備とプラットホームとの間を仕切る投入扉を閉じるよう投入扉制御装置に制御信号を送信する、
(4)クレーンを動作させて転落者の救出を行うようクレーン制御装置に制御信号を送信する、
(5)貯留設備に設けられた救出用機材を動作させて転落者の救出を行うよう救出用機材制御装置に制御信号を送信する、
のうちの少なくとも1つの処理を行う指示部をさらに備えた、請求項1~8のいずれかに記載の転落者検出システム。
【請求項10】
第1画像解析部は、貯留設備内の過去の画像データに対して人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与することにより生成した第1教師データを機械学習することにより構築された第1検出アルゴリズムを用いて、貯留設備内の新たな画像データを入力として、貯留設備内の人物を検出する、請求項1~9のいずれかに記載の転落者検出システム。
【請求項11】
第2画像解析部は、プラットホーム内の過去の画像データに対して人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与することにより生成した第2教師データを機械学習することにより構築された第2検出アルゴリズムを用いて、プラットホーム内の新たな画像データを入力として、プラットホーム内の人物を検出する、請求項1~10のいずれかに記載の転落者検出システム。
【請求項12】
第2教師データは、プラットホーム内の過去の画像データに対して人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与するするとともに搬入車両が存在している領域に人為的な別のラベルを情報として付与することにより生成したものである、請求項11に記載の転落者検出システム。
【請求項13】
前記第1検出アルゴリズムは、最尤分類法、ボルツマンマシン、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ベイジアンネットワーク、スパース回帰、決定木、ランダムフォレストを用いた統計的推定、強化学習、深層学習、のうちの1つまたは2つ以上を含み、
前記第2検出アルゴリズムは、最尤分類法、ボルツマンマシン、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ベイジアンネットワーク、スパース回帰、決定木、ランダムフォレストを用いた統計的推定、強化学習、深層学習、のうちの1つまたは2つ以上を含む、請求項10を引用する請求項11または12に記載の転落者検出システム。
【請求項14】
前記第2画像解析部が人物の動線の追跡に用いるアルゴリズムは、オプティカルフロー、背景差分法、カルマンフィルタ、パーティクルフィルタ、深層学習、のうちの1つまたは2つ以上を含む、請求項1~13のいずれかに記載の転落者検出システム。
【請求項15】
前記第1カメラは、RGBカメラ、近赤外線カメラ、3DカメラまたはRGB-Dカメラのうちの1つまたは2つ以上を含み、
前記第2カメラは、RGBカメラ、近赤外線カメラ、3DカメラまたはRGB-Dカメラのうちの1つまたは2つ以上を含む、請求項1~14のいずれかに記載の転落者検出システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の転落者検出システムを備えた廃棄物処理施設。
【請求項17】
被処理物が貯留される貯留設備内を撮像する第1カメラから第1画像データを取得するステップと、
貯留設備に隣接するプラットホーム内を撮像する第2カメラから第2画像データを取得するステップと、
第1画像データを画像解析して貯留設備内の人物を検出するステップと、
第2画像データを画像解析してプラットホーム内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡するステップと、
第1画像データの解析結果と第2画像データの解析結果との組み合わせに基づいて、プラットホームから貯留設備へと転落する転落者の有無を判定するステップと、
を含む転落者検出方法。
【請求項18】
コンピュータに、
被処理物が貯留される貯留設備内を撮像する第1カメラから第1画像データを取得するステップと、
貯留設備に隣接するプラットホーム内を撮像する第2カメラから第2画像データを取得するステップと、
第1画像データを画像解析して貯留設備内の人物を検出するステップと、
第2画像データを画像解析してプラットホーム内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡するステップと、
第1画像データの解析結果と第2画像データの解析結果との組み合わせに基づいて、プラットホームから貯留設備へと転落する転落者の有無を判定するステップと、
を実行させる転落者検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を貯留する設備へ転落した人を自動的に検出する転落者検出システム、転落者検出方法、および転落者検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理関連施設において、特に廃棄物焼却施設では、件数は少ないものの、年に数件、ごみピット内へ人が転落する事故が報告されている。
【0003】
ごみピットへ人が転落した際には、クレーン運転士等へ伝達し、転落者の安全確保のため、クレーン操作を一時停止する必要がある。しかしながら、昨今クレーンの自動運転技術が発展してきており、たとえば、クレーン自動運転中(すなわち、クレーン運転士の不在時)に転落者が発生した場合、クレーン運転士等への伝達に時間を要し、重大な事故を起こす可能性がある。
【0004】
また、特に廃棄物焼却施設においては、ごみピット内への転落者を自動で検出し、クレーンを制御する等の事故防止システムは存在していない。
【0005】
他分野(特に鉄道業界)では、駅のホームから線路への転落者を画像処理等で検出するシステムが用いられている(たとえば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5386744号
【文献】特許第4041678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鉄道業界で用いられている転落者検出システムでは、転落起因側であるホームと転落結果側である線路を同時に撮影する監視カメラの画像を処理し、転落者の検出を行っている。これに対し、廃棄物焼却施設では、転落起因側であるプラットホームと転落結果側であるごみピットとの間がごみ投入扉で仕切られているため、転落起因側と転落結果側を同時に撮影できる場所にカメラなどの撮像装置を設置することが困難である。
【0008】
また、鉄道業界で用いられている転落者検出システムでは、監視カメラの画像を処理することにより、落下物の大きさを求め、その大きさから落下物が人であるか否かを判定する手法が用いられることがある。これに対し、廃棄物焼却施設では、搬入車両(パッカー車両や軽トラックなど)から大小さまざまな廃棄物がごみピットへ投入されるため、落下物の大きさだけで落下物が人であるか否かを判定することは困難である。
【0009】
また、上述したように、廃棄物焼却施設では、転落起因側(プラットホーム)と転落結果側(ごみピット)を同時に撮影できる場所にカメラを設置することが困難であるため、たとえば、ごみピット側にカメラを設置してごみピット内の画像を処理し、転落者を検出することが考えられる。しかしながら、ごみピット内では廃棄物の山が崩れるなどして転落者の上部に廃棄物がかぶさる可能性があり、その場合、ごみピット内の画像の処理により転落者を検出することは困難である。
【0010】
なお、焼却施設のようなピットアンドクレーン方式を採用している施設だけでなく、ピットアンドクレーン方式以外の例えば貯留設備への直接投入方式やコンバクタコンテナ方式のような構成の廃棄物処理施設(たとえば粗大ごみ破砕施設やリサイクル施設など)においても同様の課題がある。
【0011】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、廃棄物焼却施設等の廃棄物処理施設において、廃棄物を貯留する貯留設備への転落者を自動で検出できる転落者検出システム、転落者検出方法、および転落者検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様に係る転落者検出システムは、
被処理物が貯留される貯留設備内を撮像する第1カメラから第1画像データを取得する第1画像データ取得部と、
貯留設備に隣接するプラットホーム内を撮像する第2カメラから第2画像データを取得する第2画像データ取得部と、
第1画像データを画像解析して貯留設備内の人物を検出する第1画像解析部と、
第2画像データを画像解析してプラットホーム内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡する第2画像解析部と、
第1画像データの解析結果と第2画像データの解析結果との組み合わせに基づいて、プラットホームから貯留設備へと転落する転落者の有無を判定する転落者判定部と、
を備える。
【0013】
このような態様によれば、貯留設備内を撮像した第1画像データの解析結果と、プラットホーム内を撮像した第2画像データの解析結果とを組み合わせることで、プラットホームから貯留設備へと転落する転落者を自動で検出できる。一般に、機械学習モデルを利用して画像データから転落者を検出する場合には、機械学習モデルの検出精度は様々であり、100%の精度で転落者を検出することは不可能であるが、貯留設備内を撮像した第1画像データの解析結果と、プラットホーム内を撮像した第2画像データの解析結果とを組み合わせることで、転落者の検出精度を上げることができる。また、既存施設であっても、貯留設備内を撮像する第1カメラとプラットホーム内を撮像する第2カメラとを追加で設置するだけで、本件システムの動作が可能となるため、本件システムの導入にあたって既存施設の大幅な改造は不要であり、安価に既存施設の安全性を高めることが可能となる。
【0014】
本発明の第2の態様に係る転落者検出システムは、第1の態様に係る転落者検出システムであって、
転落者判定部は、第2画像データの解析結果を確認し、第1時刻において貯留設備とプラットホームとの間を仕切る投入扉近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合に、第1時刻における第1画像データの解析結果を確認し、貯留設備内に人物が検出された場合に、転落者ありと判定する。
【0015】
このような態様によれば、プラットホーム内を撮像した第2画像データの解析結果を確認し、投入扉近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合(すなわち第2画像データの解析結果において転落者が仮検出された場合)に、第1画像データの解析結果を確認し、貯留設備内に人物が検出された場合(すなわち第1画像データの解析結果においても転落者が仮検出された場合)に、転落者ありと最終判定することで、転落者を正確に検出できる。
【0016】
本発明の第3の態様に係る転落者検出システムは、第2の態様に係る転落者検出システムであって、
転落者判定部は、第1時刻において投入扉近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合に、第1時刻における第1画像データのうち当該投入扉の位置に対応する貯留設備内の領域を撮像した画像の解析結果を確認する。
【0017】
このような態様によれば、投入扉が複数設けられている大型の貯留設備であっても、プラットホーム内を撮像した第2画像データの解析結果を確認し、投入扉近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合(すなわち第2画像データの解析結果において転落者が仮検出された場合)に、貯留設備内を撮像した第1画像データ全体の解析結果を確認するのではなく、転落者が発生した可能性の高い投入扉の位置に対応する貯留設備内の領域の画像の解析結果を確認することで、より正確かつ短時間での転落者検出が可能となる。
【0018】
本発明の第4の態様に係る転落者検出システムは、第2または3の態様に係る転落者検出システムであって、
転落者判定部は、第1時刻における第1画像データの解析結果を確認した際に貯留設備内に人物が検出されなかった場合には、第1時刻における第1画像データと、第1時刻から予め定められた時間経過後の第2時刻における第1画像データとの差分を抽出し、抽出した差分が予め定められた閾値を超えた場合に、転落者ありと判定し、差がない場合に、転落者なしと判定する。
【0019】
このような態様によれば、たとえば、貯留設備内で転落者の上部に被処理物がかぶさった場合には、貯留設備内を撮像した第1画像データの解析結果では、(転落者の上部に被処理物がかぶさっているため)貯留設備内に人物が検出されなかったとなるが、第2画像データの解析結果において既に転落者が仮検出されていることから、さらに、第1時刻における第1画像データと、第1時刻から予め定められた時間経過後の第2時刻における第1画像データとを比較してそれらの差分を抽出する。そして、第1時刻における第1画像データと第2時刻における第1画像データとの差分が予め定められた閾値を超えた場合には、貯留設備内で被処理物の山が崩れるなどしたと考えられ、崩れた山の被処理物が転落者の上部にかぶさって転落者が見えていない可能性があると考えられることから、転落者ありと判定する。これにより、貯留設備内で転落者の上部に被処理物がかぶさった場合であっても、転落者を自動で検出することが可能となる。
【0020】
本発明の第5の態様に係る転落者検出システムは、第1の態様に係る転落者検出システムであって、
転落者判定部は、第1画像データの解析結果を確認し、第1時刻において貯留設備内に人物が検出された場合に、第1時刻に対して予め定められた時間前までの第2画像データの解析結果を確認し、貯留設備とプラットホームとの間を仕切る投入扉近傍の予め定められた領域内で人物が映像からフレームアウトしていた場合に、転落者ありと判定する。
【0021】
このような態様によれば、貯留設備内を撮像した第1画像データの解析結果を確認し、貯留設備内に人物が検出された場合(すなわち第1画像データの解析結果において転落者が仮検出された場合)に、第2画像データの解析結果を確認し、投入扉近傍で人物が映像からフレームアウトしていた場合(すなわち第2画像データの解析結果においても転落者が仮検出された場合)に、転落者ありと最終判定することで、転落者を正確に検出できる。
【0022】
本発明の第6の態様に係る転落者検出システムは、第5の態様に係る転落者検出システムであって、
転落者判定部は、第1時刻において貯留設備内に人物が検出された場合に、第1時刻に対して予め定められた時間前までの第2画像データのうち貯留設備内で人物が検出された領域に対応する位置の投入扉を撮像した画像の解析結果を確認する。
【0023】
このような態様によれば、投入扉が複数設けられている大型のプラットホームであっても、貯留設備内を撮像した第1画像データの解析結果を確認し、貯留設備内に人物が検出された場合(すなわち第1画像データの解析結果において転落者が仮検出された場合)に、プラットホーム内を撮像した第2画像データ全体の解析結果を確認するのではなく、転落者が発生した可能性の高い位置にある投入扉の画像の解析結果を確認することで、より正確かつ短時間での転落者検出が可能となる。
【0024】
本発明の第7の態様に係る転落者検出システムは、第5または6の態様に係る転落者検出システムであって、
転落者判定部は、第1時刻に対して予め定められた時間前までの第2画像データの解析結果を確認した際に投入扉近傍の予め定められた領域外で人物が映像からフレームアウトしていた場合には、転落者なしと判定する。
【0025】
このような態様によれば、プラットホーム内を撮像した第2画像データにて人物が貯留設備への転落とは無関係な理由(たとえば搬送車両の陰に一時的に隠れた場合など)で映像からフレームアウトしていた場合に、転落者ありと誤判定することを防ぐことができ、転落者検出の正確性を高めることができる。
【0026】
本発明の第8の態様に係る転落者検出システムは、第5~7のいずれかの態様に係る転落者検出システムであって、
転落者判定部は、第1時刻に対して予め定められた時間前までの第2画像データの解析結果を確認した際に投入扉近傍の予め定められた領域内への人物の進入が検出されなかった場合に、転落者なしと判定する。
【0027】
このような態様によれば、貯留施設内を撮像した第1画像データにて、たとえば人物と同程度の大きさの被処理物が誤って人物として検出された場合(すなわち第1画像データの解析結果において誤って転落者が仮検出された場合)であっても、プラットホーム内を撮像した第2画像データの解析結果を確認した際に投入扉近傍への人物の進入が検出されなかった場合に、転落者なしと判定することで、転落者ありと誤判定することを防ぐことができ、転落者検出の正確性を高めることができる。
【0028】
本発明の第9の態様に係る転落者検出システムは、第1~8のいずれかの態様に係る転落者検出システムであって、
転落者判定部により転落者ありと判定された場合に、
(1)警報を発報する、
(2)貯留設備内に貯留された被処理物の攪拌または搬送を行うクレーンを停止するようクレーン制御装置に制御信号を送信する、
(3)貯留設備とプラットホームとの間を仕切る投入扉を閉じるよう投入扉制御装置に制御信号を送信する、
(4)クレーンを動作させて転落者の救出を行うようクレーン制御装置に制御信号を送信する、
(5)貯留設備に設けられた救出用機材を動作させて転落者の救出を行うよう救出用機材制御装置に制御信号を送信する、
のうちの少なくとも1つの処理を行う指示部をさらに備える。
【0029】
このような態様によれば、転落者の迅速な救助が可能となり、施設の安全性を高めることができる。
【0030】
本発明の第10の態様に係る転落者検出システムは、第1~9のいずれかの態様に係る転落者検出システムであって、
第1画像解析部は、貯留設備内の過去の画像データに対して人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与することにより生成した第1教師データを機械学習することにより構築された第1検出アルゴリズムを用いて、貯留設備内の新たな画像データを入力として、貯留設備内の人物を検出する。
【0031】
本発明の第11の態様に係る転落者検出システムは、第1~10のいずれかの態様に係る転落者検出システムであって、
第2画像解析部は、プラットホーム内の過去の画像データに対して人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与することにより生成した第2教師データを機械学習することにより構築された第2検出アルゴリズムを用いて、プラットホーム内の新たな画像データを入力として、プラットホーム内の人物を検出する。
【0032】
本発明の第12の態様に係る転落者検出システムは、第11の態様に係る転落者検出システムであって、
第2教師データは、プラットホーム内の過去の画像データに対して人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与するとともに搬入車両が存在している領域に人為的な別のラベルを情報として付与することにより生成したものである。
【0033】
このような態様によれば、プラットホーム内にて人物(たとえば作業員)は搬入車両の近傍で作業している頻度が高く、人物の位置と搬入車両の位置との間には関係性があるため、プラットホーム内の過去の画像データに対して人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与するとともに搬入車両が存在している領域に人為的な別のラベルを情報として付与することにより生成した教師データを機械学習することにより構築された第2検出アルゴリズムを用いることで、プラットホーム内の人物の検出精度を高めることができることに加えて、搬入車両の落下も検出できるようになる。
【0034】
本発明の第13の態様に係る転落者検出システムは、第10の態様に係る転落者検出システムであって、
前記第1検出アルゴリズムは、最尤分類法、ボルツマンマシン、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ベイジアンネットワーク、スパース回帰、決定木、ランダムフォレストを用いた統計的推定、強化学習、深層学習、のうちの1つまたは2つ以上を含む。
【0035】
本発明の第14の態様に係る転落者検出システムは、第11または12の態様に係る転落者検出システムであって、
前記第2検出アルゴリズムは、最尤分類法、ボルツマンマシン、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ベイジアンネットワーク、スパース回帰、決定木、ランダムフォレストを用いた統計的推定、強化学習、深層学習、のうちの1つまたは2つ以上を含む。
【0036】
本発明の第15の態様に係る転落者検出システムは、第1~14のいずれかの態様に係る転落者検出システムであって、
前記第2画像解析部が人物の動線の追跡に用いるアルゴリズムは、オプティカルフロー、背景差分法、カルマンフィルタ、パーティクルフィルタ、深層学習、のうちの1つまたは2つ以上を含む。
【0037】
本発明の第16の態様に係る転落者検出システムは、第1~15のいずれかの態様に係る転落者検出システムであって、
前記第1カメラは、RGBカメラ、近赤外線カメラ、3DカメラまたはRGB-Dカメラのうちの1つまたは2つ以上を含む。
【0038】
本発明の第17の態様に係る転落者検出システムは、第1~16のいずれかの態様に係る転落者検出システムであって、
前記第2カメラは、RGBカメラ、近赤外線カメラ、3DカメラまたはRGB-Dカメラのうちの1つまたは2つ以上を含む。
【0039】
本発明の第18の態様に係る廃棄物処理施設は、第1~17のいずれかの態様に係る転落者検出システムを備える。
【0040】
本発明の第19の態様に係る転落者検出方法は、
被処理物が貯留される貯留設備内を撮像する第1カメラから第1画像データを取得するステップと、
貯留設備に隣接するプラットホーム内を撮像する第2カメラから第2画像データを取得するステップと、
第1画像データを画像解析して貯留設備内の人物を検出するステップと、
第2画像データを画像解析してプラットホーム内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡するステップと、
第1画像データの解析結果と第2画像データの解析結果との組み合わせに基づいて、プラットホームから貯留設備へと転落する転落者の有無を判定するステップと、
を含む。
【0041】
本発明の第20の態様に係る転落者検出プログラムは、
コンピュータに、
被処理物が貯留される貯留設備内を撮像する第1カメラから第1画像データを取得するステップと、
貯留設備に隣接するプラットホーム内を撮像する第2カメラから第2画像データを取得するステップと、
第1画像データを画像解析して貯留設備内の人物を検出するステップと、
第2画像データを画像解析してプラットホーム内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡するステップと、
第1画像データの解析結果と第2画像データの解析結果との組み合わせに基づいて、プラットホームから貯留設備へと転落する転落者の有無を判定するステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、廃棄物焼却施設等の廃棄物処理施設において、廃棄物を貯留する貯留設備への転落者を自動で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る廃棄物処理施設の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係る転落者検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態に係る転落者検出システムによる転落者検出方法の第1例を示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、プラットホーム内を撮像した第2画像データの解析結果の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、ごみピット内を撮像した第1画像データの解析結果の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施の形態に係る転落者検出システムによる転落者検出方法の第2例を示すフローチャートである。
【
図6A】
図6Aは、ごみピット内を撮像した第1画像データの解析結果の一例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、プラットホーム内を撮像した第2画像データの解析結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明および以下の説明で用いる図面では、同一に構成され得る部分について、同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0045】
(廃棄物処理施設の構成)
図1は、一実施の形態に係る廃棄物処理施設100の構成を示す概略図である。
【0046】
図1に示すように、廃棄物処理施設100は、廃棄物を積載する搬送車両(パッカー車両や軽トラックなど)22が停車するプラットホーム21と、プラットホーム21から投入される廃棄物が貯留されるごみピット(貯留設備)3と、ごみピット3内に貯留される廃棄物を攪拌および搬送するクレーン5と、クレーン5により搬送される廃棄物が投入されるホッパ4と、ホッパ4から投入された廃棄物を焼却する焼却炉1と、焼却炉1内で生じる排ガスから排熱を回収する排熱ボイラ2と、を備えている。焼却炉1の種類は、
図1に示すようなストーカ炉に限られるものではなく、流動炉(流動床炉ともいう)も含まれる。また、ごみピット3の構造は、
図1に示すような1段ピットに限られるものではなく、ごみピットを投入部と貯留部に分割した2段ピットも含まれる。ごみピット3とプラットホーム21との間は投入扉24により仕切られている。また、廃棄物処理施設100には、投入扉24の動作を制御する投入扉制御装置20と、クレーン5の動作を制御するクレーン制御装置30とが設けられている。
【0047】
搬送車両22に積載された状態で搬入される廃棄物は、プラットホーム21から投入扉24を介してごみピット3内へと投入され、ごみピット3内にて貯留される。ごみピット3内に貯留される廃棄物は、クレーン5によって攪拌されるとともに、クレーン5によってホッパ4へと搬送され、ホッパ4を介して焼却炉1内部へと投入され、焼却炉1内部にて焼却されて処理される。
【0048】
図1に示すように、廃棄物処理施設100には、ごみピット3内を撮像する第1カメラ6と、ごみピット3内の廃棄物の種類を識別するごみ識別システム40とが設けられている。
【0049】
第1カメラ6は、ごみピット3の上方に配置され、図示された例ではクレーン5のレールに固定されており、ごみピット3の上方からごみピット3内に貯留される廃棄物を撮像できるようになっている。第1カメラ6は、1台のみ設置されてもよいし、複数台設置されてもよい。
【0050】
第1カメラ6は、撮像結果として廃棄物の形状および色彩画像データを出力するRGBカメラであってもよいし、撮像結果として廃棄物の近赤外線画像データを出力する近赤外線カメラであってもよいし、撮像結果として廃棄物の3次元画像データを撮像する3DカメラまたはRGB-Dカメラであってもよいし、これらのうちの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0051】
ごみ識別システム40は、ごみピット3内を撮像する第1カメラ6から画像データ(第1画像データともいう)を取得し、第1画像データを画像解析して、ごみピット3内に貯留されている廃棄物の種類を識別する。たとえば、ごみ識別システム40は、ごみピット3内を撮像した過去の画像データに廃棄物の種類がラベリングされた教師データを機械学習することにより構築された識別アルゴリズム(学習済みモデル)を用いて、ごみピット3内の新たな画像データを入力としてごみピット3内に貯留されている廃棄物の種類を識別してもよい。
【0052】
ごみ識別システム40は、ごみピット3内に貯留されている廃棄物の種類の識別結果として、廃棄物の種類の比率を領域毎に表示するマップを生成し、クレーン制御装置30へと送信する。クレーン制御装置30は、ごみ識別システム40から受信するマップに基づいて、廃棄物の種類の比率が全ての領域で等しくなるように、クレーン5を動作させてごみピット3内の廃棄物を攪拌させる。これにより、クレーン5の自動運転が可能となる。
【0053】
ごみ識別システム40としては、具体的には、たとえば、特許6731680号公報に記載の情報処理装置を利用することができる。
【0054】
図1に示すように、廃棄物処理施設100には、プラットホーム21内を撮像する第2カメラ23と、プラットホーム21からごみピット3へと転落する転落者を検出する転落者検出システム10とがさらに設けられている。
【0055】
第2カメラ23は、プラットホーム21の上方に配置され、図示された例では投入扉24の正面付近に位置するプラットホーム21の壁に固定されており、投入扉24の正面付近からプラットホーム21内を撮像できるようになっている。第2カメラ23は、1台のみ設置されてもよいし、複数台設置されてもよい。
【0056】
第2カメラ23は、撮像結果として対象物(作業員などの人物や搬送車両22など)の形状および色彩画像データを出力するRGBカメラであってもよいし、撮像結果として対象物の近赤外線画像データを出力する近赤外線カメラであってもよいし、撮像結果として対象物の3次元画像データを撮像する3DカメラまたはRGB-Dカメラであってもよいし、これらのうちの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0057】
(転落者検出システムの構成)
次に、プラットホーム21からごみピット3へと転落する転落者を検出する転落者検出システム10の構成について説明する。
図2は、転落者検出システム10の構成を示すブロック図である。転落者検出システム10は、1台のコンピュータによって構成されてもよいし、互いに通信可能に接続された複数のコンピュータによって構成されてもよい。
【0058】
図2に示すように、転落者検出システム10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13とを有している。各部は、バスやネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
【0059】
このうち通信部13は、第1カメラ6、第2カメラ23、クレーン制御装置30および投入扉制御装置20に対する通信インターフェースである。通信部13は、第1カメラ6、第2カメラ23、クレーン制御装置30および投入扉制御装置20の各々と転落者検出システム10との間で情報を送受信する。
【0060】
記憶部12は、たとえばハードディスクやフラッシュメモリ等の不揮発性データストレージである。記憶部12には、制御部11が取り扱う各種データが記憶される。また、記憶部12には、後述する第1モデル構築部11c1により構築された第1検出アルゴリズム12a1と、第2モデル構築部11c2により構築された第2検出アルゴリズム12a2と、第1画像データ取得部11a1により取得された第1画像データ12b1と、第2画像データ取得部11a2により取得された第2画像データ12b2と、第1教師データ生成部11b1により生成された第1教師データ12c1と、第2教師データ生成部11b2により生成された第2教師データ12c2とが記憶される。
【0061】
制御部11は、転落者検出システム10の各種処理を行う制御手段である。
図2に示すように、制御部11は、第1画像データ取得部11a1と、第2画像データ取得部11a2と、第1教師データ生成部11b1と、第2教師データ生成部11b2と、第1モデル構築部11c1と、第2モデル構築部11c2と、第1画像解析部11d1と、第1画像解析部11d2と、転落者判定部11eと、指示部11fと、を有している。これらの各部は、転落者検出システム10内のプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、ハードウェアで実装されてもよい。
【0062】
このうち第1画像データ取得部11a1は、ごみピット3内を撮像する第1カメラ6から第1画像データを取得する。第1画像データは、動画像であってもよいし、連続した静止画像であってもよい。第1画像データのフレームレートは、一般的なフレームレート(30fps程度)のものであればよく、特に高フレームレートである必要はなく、また、低フレームレート(5~10fps程度)であってもよい。第1画像データのメタデータには撮影日時の情報が含まれている。第1画像データ取得部11a1により取得された第1画像データ12b1は、記憶部12に記憶される。
【0063】
第2画像データ取得部11a2は、プラットホーム21内を撮像する第2カメラ23から第2画像データを取得する。第2画像データは、動画像であってもよいし、連続した静止画像であってもよい。第2画像データのフレームレートは、一般的なフレームレート(30fps程度)のものであればよく、特に高フレームレートである必要はなく、また、低フレームレート(5~10fps程度)であってもよい。第2画像データのメタデータには撮影日時の情報が含まれている。第2画像データ取得部11a2により取得された第2画像データ12b2は、記憶部12に記憶される。
【0064】
第1教師データ生成部11b1は、ごみピット3内を撮像した過去の画像データに対して、廃棄物焼却施設100の運転を行う熟練運転員が目視で識別した人物(すなわち転落者)または人物を模したダミー人形が存在している領域の情報をラベリングする(すなわち、人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与する)ことにより、第1教師データを生成する。一例として、第1教師データ生成部11b1は、意図的に人物を模したダミー人形がごみピット3内へ投下された後、当該ごみピット3内を撮像した画像データに対して第1教師データを生成してもよいし、ごみピット3内を撮像した過去の画像データに人物の画像を合成した画像データ(合成画像データ)に対して第1教師データを生成してもよい。第1教師データ生成部11b1は、ごみピット3内を撮像した過去の画像データに対して、廃棄物焼却施設100の運転を行う熟練運転員が目視で識別した人物(すなわち転落者)または人物を模したダミー人形が存在している領域の情報と搬送車両22が存在している領域の情報とをラベリングする(すなわち、人物または人物を模したダミー人形が存在している領域と搬送車両が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与する)ことにより、第1教師データを生成してもよい。人物または人物を模したダミー人形が存在している領域の情報および搬送車両22が存在している領域の情報は、たとえばレイヤーとして画像データに重ね合わせた状態でラベリング(すなわち人為的なラベルが情報として付与)される。第1教師データ生成部11b1により生成された第1教師データ12c1は、記憶部12に記憶される。
【0065】
第2教師データ生成部11b2は、プラットホーム21内を撮像した過去の画像データに対して、廃棄物焼却施設100の運転を行う熟練運転員が目視で識別した人物または人物を模したダミー人形が存在している領域の情報をラベリングする(すなわち、人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与する)ことにより、第2教師データを生成する。一例として、第2教師データ生成部11b2は、意図的に人物を模したダミー人形がプラットホーム21内に設置された後、当該プラットホーム21内を撮像した画像データに対して第2教師データを生成してもよいし、プラットホーム21内を撮像した過去の画像データに人物の画像を合成した画像データ(合成画像データ)に対して第2教師データを生成してもよい。第2教師データ生成部11b2は、ごみピット3内を撮像した過去の画像データに対して、廃棄物焼却施設100の運転を行う熟練運転員が目視で識別した人物または人物を模したダミー人形が存在している領域の情報と搬送車両22が存在している領域の情報の情報とをラベリングする(すなわち、人物または人物を模したダミー人形が存在している領域と搬送車両が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与する)ことにより、第2教師データを生成してもよい。プラットホーム21内にて人物(たとえば作業員)は搬入車両22の近傍で作業している頻度が高く、人物の位置と搬入車両22の位置との間には関係性があるため、後述する第2モデル構築11c2が、プラットホーム21内を撮像した画像データに対して人物または人物を模したダミー人形が存在している領域に人為的なラベルを情報として付与するとともに搬入車両22が存在している領域に人為的な別のラベルを情報として付与した教師データを機械学習することにより、第2検出アルゴリズム12a2を構築することで、第2検出アルゴリズム12a2によるプラットホーム21内の人物の検出精度を高めることができることに加えて、搬送車両22の落下も検出できるようになる。人物または人物を模したダミー人形が存在している領域の情報および搬送車両22が存在している領域の情報は、たとえばレイヤーとして画像データに重ね合わせた状態でラベリング(すなわち人為的なラベルが情報として付与)される。第2教師データ生成部11b2により生成された第2教師データ12c2は、記憶部12に記憶される。
【0066】
第1モデル構築部11c1は、記憶部12に記憶された第1教師データ12c1を機械学習することにより、ごみピット3内の新たな画像データを入力としてごみピット3内の人物(すなわち転落者)を検出する第1検出アルゴリズム12a1(学習済みモデル)を構築する。第1検出アルゴリズム12a1は、最尤分類法、ボルツマンマシン、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ベイジアンネットワーク、スパース回帰、決定木、ランダムフォレストを用いた統計的推定、強化学習、深層学習、のうちの1つまたは2つ以上を含んでいてもよい。第1モデル構築部11c1により構築された第1検出アルゴリズム12a1は、記憶部12に記憶される。
【0067】
第2モデル構築部11c2は、記憶部12に記憶された第2教師データ12c2を機械学習することにより、プラットホーム21内の新たな画像データを入力としてプラットホーム21内の人物を検出する第2検出アルゴリズム12a2(学習済みモデル)を構築する。第2検出アルゴリズム12a2は、最尤分類法、ボルツマンマシン、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ベイジアンネットワーク、スパース回帰、決定木、ランダムフォレストを用いた統計的推定、強化学習、深層学習、のうちの1つまたは2つ以上を含んでいてもよい。第2モデル構築部11c2により構築された第2検出アルゴリズム12a2は、記憶部12に記憶される。
【0068】
第1画像解析部11d1は、第1画像データ取得部11a1により取得された第1画像データを画像解析してごみピット3内の人物を検出する。具体的には、たとえば、第1画像解析部11dは、第1モデル構築部11c1により構築された第1検出アルゴリズム12a1(学習済みモデル)を用いて、ごみピット3内の新たな画像データを入力として、ごみピット3内の人物を検出する。一変形例として、第1画像解析部11d1は、第1画像データ取得部11a1により取得された第1画像データを画像解析してごみピット3内の人物および搬送車両22を検出してもよい。具体的には、たとえば、第1画像解析部11dは、第1モデル構築部11c1により構築された第1検出アルゴリズム12a1(学習済みモデル)を用いて、ごみピット3内の新たな画像データを入力として、ごみピット3内の人物および搬送車両22をそれぞれ検出してもよい。
【0069】
第1画像解析部11d1は、ごみピット3の表面を複数のブロックに分割し、ごみピット3内の新たな画像データをブロック単位で第1検出アルゴリズム12a1(学習済みモデル)に入力し、ブロック単位で人物(または人物および搬送車両22)の検出結果を取得してもよい。これにより、ごみピット3内のどの場所に転落者(または転落者および搬送車両22の転落)が発生したのかを正確に把握することが可能となる。
【0070】
第2画像解析部11d2は、第2画像データ取得部11a2により取得された第2画像データを画像解析してプラットホーム21内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡する。具体的には、たとえば、第2画像解析部11dは、第2モデル構築部11c2により構築された第2検出アルゴリズム12a2(学習済みモデル)を用いて、プラットホーム21内の新たな画像データを入力として、プラットホーム21内の人物を検出する。次いで、第2画像解析部11dは、検出された人物をトラッキングし、投入扉24の近傍の予め定められた領域への人物の進入を検出する。一変形例として、第2画像解析部11d2は、第2画像データ取得部11a2により取得された第2画像データを画像解析してプラットホーム21内の人物および搬送車両22をそれぞれ検出し、検出された人物および搬送車両22の動線をそれぞれ追跡する。具体的には、たとえば、第2画像解析部11dは、第2モデル構築部11c2により構築された第2検出アルゴリズム12a2(学習済みモデル)を用いて、プラットホーム21内の新たな画像データを入力として、プラットホーム21内の人物および搬送車両22をそれぞれ検出する。次いで、第2画像解析部11dは、検出された人物および搬送車両22をそれぞれトラッキングし、投入扉24の近傍の予め定められた領域への人物および搬送車両22の進入を検出する。トラッキングに用いるアルゴリズムは、オプティカルフロー、背景差分法、カルマンフィルタ、パーティクルフィルタ、深層学習、のうちの1つまたは2つ以上を含んでいてもよい。
【0071】
一変形例として、第2画像解析部11d2は、第2画像データ取得部11a2により取得された第2画像データを画像解析してプラットホーム21内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡するとともに、検出された人物の安全装備(安全帯またはヘルメット)の着用状況を画像処理により検出し、安全装備を着用せずに投入扉24付近で作業している人物がいるか否かを判定してもよい。そして、安全装備を着用せずに投入扉24付近で作業している人物がいると判定された場合には、後述する指示部11fは、警報(アラーム)を発報してもよいし、投入扉24を(閉じている場合には)開かなくしたり(開いている場合には)閉じたりするよう投入扉制御装置20に制御信号を送信してもよい。
【0072】
転落者判定部11eは、第1画像解析部11d1による第1画像データの解析結果と第2画像解析部11d2による第2画像データの解析結果との組み合わせに基づいて、プラットホーム21からごみピット3へと転落する転落者の有無を判定する。一般に、機械学習モデルを利用して画像データから転落者を検出する場合には、機械学習モデルの検出精度は様々であり、100%の精度で転落者を検出することは不可能であるが、本実施の形態では、ごみピット3内を撮像した第1画像データの解析結果と、プラットホーム21内を撮像した第2画像データの解析結果とを組み合わせることで、転落者の検出精度を上げることができる。
【0073】
一例として、転落者判定部11eは、まず、第2画像データの解析結果を確認し、
図4Aに示すように、第1時刻において投入扉24の近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合(すなわち第2画像データの解析結果において転落者が仮検出された場合)に、第1時刻における第1画像データの解析結果を確認し、
図4Bに示すように、ごみピット3内に人物が検出された場合(すなわち第1画像データの解析結果においても転落者が仮検出された場合)に、転落者ありと最終判定してもよい。これにより、転落者を正確に検出することが可能となる。
【0074】
転落者判定部11eは、
図4Aに示すように、第1時刻において投入扉25(図示された例では投入扉B)の近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合に、
図4Bに示すように、第1時刻における第1画像データのうち当該投入扉(すなわち投入扉B)の位置に対応するごみピット3内の領域(
図4Bにおいて符号B1を付した一点鎖線で囲まれた領域)を撮像した画像の解析結果を確認してもよい。これにより、投入扉24が複数設けられている大型のごみピット3であっても、プラットホーム21内を撮像した第2画像データの解析結果を確認し、投入扉Bの近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合に、ごみピット3内を撮像した第1画像データ全体の解析結果を確認するのではなく、転落者が発生した可能性の高い投入扉Bの位置に対応するごみピット3内の領域B1の画像の解析結果を確認することで、より正確かつ短時間での転落者検出が可能となる。
【0075】
また、転落者判定部11eは、第1時刻における第1画像データの解析結果を確認した際にごみピット3内に人物が検出されなかった場合には、第1時刻における第1画像データと、第1時刻から予め定められた時間経過後(たとえば5分後)の第2時刻における第1画像データとを比較してそれらの差分を抽出し、第1時刻における第1画像データと第2時刻における第1画像データとの差分が予め定められた閾値を超えた場合に、転落者ありと判定し、差がない場合に、転落者なしと判定してもよい。この理由は、以下のとおりである。すなわち、たとえば、ごみピット3内で転落者の上部に廃棄物がかぶさった場合には、第1画像データの解析結果では、(転落者の上部に廃棄物がかぶさっているため)ごみピット3内に人物が検出されなかったとなるが、第2画像データの解析結果において既に転落者が仮検出されているのであるから、さらに、第1時刻における第1画像データと第2時刻における第1画像データとを比較してそれらの差分を抽出する。そして、第1時刻における第1画像データと第2時刻における第1画像データとの差分が予め定められた閾値を超えた場合には、ごみピット3内で廃棄物の山が崩れるなどしたと考えられ、崩れた山の廃棄物が転落者の上部にかぶさって転落者が見えていない可能性があると考えられることから、転落者ありと判定する。これにより、ごみピット3内で転落者の上部に廃棄物がかぶさった場合であっても、転落者を自動で検出することが可能となる。
【0076】
一変形として、転落者判定部11eは、まず、第1画像データの解析結果を確認し、
図6Aに示すように、第1時刻においてごみピット3内に人物が検出された場合(すなわち第1画像データの解析結果において転落者が仮検出された場合)に、第1時刻に対して予め定められた時間前(たとえば5分前)までの第2画像データの解析結果を確認し、
図6Bに示すように、投入扉24の近傍の予め定められた領域内で人物が映像からフレームアウトしていた場合(すなわち第2画像データの解析結果においても転落者が仮検出された場合)に、転落者ありと最終判定してもよい。これにより、転落者を正確に検出することが可能となる。
【0077】
転落者判定部11eは、
図6Aに示すように、第1時刻においてごみピット3内に人物が検出された場合に、
図6Bに示すように、第1時刻に対して予め定められた時間前(たとえば5分前)までの第2画像データのうちごみピット3内で人物が検出された領域(
図6Aにおいて符号B2を付した一点鎖線で囲まれた領域)に対応する位置の投入扉(図示された例では投入扉B)を撮像した画像の解析結果を確認してもよい。これにより、投入扉24が複数設けられている大型のプラットホーム21であっても、ごみピット3内を撮像した第1画像データの解析結果を確認し、ごみピット3内に人物が検出された場合に、プラットホーム21内を撮像した第2画像データ全体の解析結果を確認するのではなく、転落者が発生した可能性の高い位置にある投入扉Bの画像の解析結果を確認することで、より正確かつ短時間での転落者検出が可能となる。
【0078】
また、転落者判定部11eは、第1時刻に対して予め定められた時間前(たとえば5分前)までの第2画像データの解析結果を確認した際に投入扉24の近傍の予め定められた領域外で人物が映像からフレームアウトしていた場合には、転落者なしと判定してもよい。これにより、プラットホーム21内を撮像した第2画像データにて人物がごみピット3への転落とは無関係な理由(たとえば搬送車両22の陰に一時的に隠れた場合など)で映像からフレームアウトしていた場合に、転落者ありと誤判定することを防ぐことができ、転落者検出の正確性を高めることができる。
【0079】
また、転落者判定部11eは、第1時刻に対して予め定められた時間前(たとえば5分前)までの第2画像データの解析結果を確認した際に投入扉24の近傍の予め定められた領域内への人物の進入が検出されなかった場合に、転落者なしと判定してもよい。これにより、ごみピット3内を撮像した第1画像データにて、たとえば人物と同程度の大きさの廃棄物が誤って人物として検出された場合(すなわち第1画像データの解析結果において誤って転落者が仮検出された場合)であっても、プラットホーム21内を撮像した第2画像データの解析結果を確認した際に投入扉24の近傍への人物の進入が検出されなかった場合に、転落者なしと判定することで、転落者ありと誤判定することを防ぐことができ、転落者検出の正確性を高めることができる。
【0080】
指示部11fは、転落者判定部11eによる判定結果を確認し、転落者判定部11eにより転落者ありと判定された場合に、
(1)警報(アラーム)を発報する、
(2)ごみピット3内に貯留された廃棄物の攪拌または搬送を行うクレーン5を停止するようクレーン制御装置30に制御信号を送信する、
(3)ごみピット3とプラットホーム21との間を仕切る投入扉24を閉じるよう投入扉制御装置20に制御信号を送信する、
(4)クレーン5を動作させて転落者の救出を行うようクレーン制御装置30に制御信号を送信する、
(5)ごみピット3に設けられた救出用機材(不図示)を動作させて転落者の救出を行うよう救出用機材制御装置(不図示)に制御信号を送信する、
のうちの少なくとも1つの処理を行う。これにより、クレーン5の自動運転中(すなわち、クレーン運転士の不在時)に転落者が発生した場合であっても、転落者の迅速な救助が可能となり、施設の安全性を高めることができる。
【0081】
(転落者検出方法の第1例)
次に、このような構成からなる転落者検出システム10による転落者検出方法の第1例について説明する。
図3は、転落者検出方法の第1例を示すフローチャートである。
【0082】
図3に示すように、まず、第1画像データ取得部11a1が、ごみピット3内を撮像する第1カメラ6から第1画像データを取得する(ステップS10)。取得された第1画像データ12b1は、記憶部12に記憶される。
【0083】
次いで、第2画像データ取得部11a2が、プラットホーム21内を撮像する第2カメラ23から第2画像データを取得する(ステップS11)。取得された第1画像データ12b2は、記憶部12に記憶される。なお、ステップS10とステップS11の順番はどちらが先でもよく、同時であってもよい。
【0084】
次に、第2画像解析部11d2が、第2画像データ取得部11a2により取得された第2画像データを画像解析してプラットホーム21内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡する(ステップS12)。
【0085】
転落者判定部11eは、第2画像解析部11d2による第2画像データの解析結果を確認する(ステップS13)。
【0086】
第1時刻において投入扉24の近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出されなかった場合(すなわち第2画像データの解析結果において転落者が仮検出されなかった場合)には(ステップS13:NO)、転落者判定部11eは、転落者なしと判定する(ステップS19)。
【0087】
他方、
図4Aに示すように、第1時刻において投入扉24の近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合(すなわち第2画像データの解析結果において転落者が仮検出された場合)には(ステップS13:YES)、第1画像解析部11d1は、第1画像データ取得部11a1により取得された第1時刻における第1画像データを画像解析してごみピット3内の人物を検出する(ステップS14)。
【0088】
そして、転落者判定部11eは、第1画像解析部11d1による第1時刻における第1画像データの解析結果を確認する(ステップS15)。ここで、転落者判定部11eは、
図4Aに示すように、第1時刻において投入扉25(図示された例では投入扉B)の近傍の予め定められた領域への人物の進入が検出された場合に、
図4Bに示すように、第1時刻における第1画像データのうち当該投入扉(すなわち投入扉B)の位置に対応するごみピット3内の領域(
図4Bにおいて符号B1を付した一点鎖線で囲まれた領域)を撮像した画像の解析結果を確認してもよい。
【0089】
図4Bに示すように、ごみピット3内に人物が検出された場合(すなわち第1画像データの解析結果においても転落者が仮検出された場合)には(ステップ15:YES)、転落者判定部11eは、転落者ありと判定する(ステップS17)。
【0090】
他方、ごみピット3内に人物が検出されなかった場合(すなわち第1画像データの解析結果において転落者が仮検出されなかった場合)には(ステップ15:NO)、転落者判定部11eは、第1時刻における第1画像データと、第1時刻から予め定められた時間経過後(たとえば5分後)の第2時刻における第1画像データとの差分を抽出し、抽出した差分を予め定められた閾値と比較する(ステップS16)。
【0091】
第1時刻における第1画像データと第2時刻における第1画像データとの差分が予め定められた閾値を超えた場合には(ステップS16:YES)、ごみピット3内で廃棄物の山が崩れるなどしたと考えられ、崩れた山の廃棄物が転落者の上部にかぶさって転落者が見えていない可能性があると考えられることから、転落者判定部11eは、転落者ありと判定する(ステップS17)。
【0092】
他方、第1時刻における第1画像データと第2時刻における第1画像データとの差分が予め定められた閾値を超えていない場合には(ステップS16:NO)、転落者判定部11eは、転落者なしと判定する(ステップS19)。
【0093】
そして、転落者判定部11eが転落者ありと判定した場合には(ステップS17の後)、指示部11fは、他の作業員へ周知するために警報(アラーム)を発報するとともに、クレーン5を停止するようクレーン制御装置30に制御信号を送信する(ステップS18)。
【0094】
ステップS18において、指示部11fは、転落者の上に廃棄物が投入されて救助が困難になることを防止するために、ごみピット3とプラットホーム21との間を仕切る投入扉24を閉じるよう投入扉制御装置20に制御信号を送信してもよい。また、指示部11fは、クレーン5を停止するようクレーン制御装置30に制御信号を送信する代わりに、クレーン5を動作させて転落者の救出を行うようクレーン制御装置30に制御信号を送信してもよい。また、指示部11fは、ごみピット3に設けられた救出用機材(不図示)を動作させて転落者の救出を行うよう救出用機材制御装置(不図示)に制御信号を送信してもよい。これにより、クレーン5の自動運転中(すなわち、クレーン運転士の不在時)に転落者が発生した場合であっても、転落者の迅速な救助が可能となる。
【0095】
(転落者検出方法の第2例)
次に、転落者検出システム10による転落者検出方法の第2例について説明する。
図5は、転落者検出方法の第2例を示すフローチャートである。
【0096】
図5に示すように、まず、第1画像データ取得部11a1が、ごみピット3内を撮像する第1カメラ6から第1画像データを取得する(ステップS20)。取得された第1画像データ12b1は、記憶部12に記憶される。
【0097】
次いで、第2画像データ取得部11a2が、プラットホーム21内を撮像する第2カメラ23から第2画像データを取得する(ステップS21)。取得された第1画像データ12b2は、記憶部12に記憶される。なお、ステップS20とステップS21の順番はどちらが先でもよく、同時であってもよい。
【0098】
次に、第1画像解析部11d1が、第1画像データ取得部11a1により取得された第1画像データを画像解析してごみピット3内の人物を検出する(ステップS22)。
【0099】
転落者判定部11eは、第1画像解析部11d1による第1画像データの解析結果を確認する(ステップS23)。
【0100】
第1時刻においてごみピット3内に人物が検出されなかった場合(すなわち第1画像データの解析結果において転落者が仮検出されなかった場合)には(ステップS23:NO)、転落者判定部11eは、転落者なしと判定する(ステップS29)。
【0101】
他方、
図6Aに示すように、第1時刻においてごみピット3内に人物が検出された場合(すなわち第1画像データの解析結果において転落者が仮検出された場合)には(ステップS23:YES)、第2画像解析部11d2は、第2画像データ取得部11a2により取得された第2画像データのうち、第1時刻に対して予め定められた時間前(たとえば5分前)までの第2画像データを画像解析してプラットホーム21内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡する(ステップS24)。
【0102】
そして、転落者判定部11eは、第2画像解析部11d2による第2画像データの解析結果において、投入扉24の近傍の予め定められた領域内への人物の進入が検出されたか否かを確認する(ステップS25)。ここで、転落者判定部11eは、
図6Aに示すように、第1時刻においてごみピット3内に人物が検出された場合に、
図6Bに示すように、第1時刻に対して予め定められた時間前(たとえば5分前)までの第2画像データのうちごみピット3内で人物が検出された領域(
図6Aにおいて符号B2を付した一点鎖線で囲まれた領域)に対応する位置の投入扉(図示された例では投入扉B)を撮像した画像の解析結果を確認してもよい。
【0103】
投入扉24の近傍の予め定められた領域内への人物の進入が検出されなかった場合(すなわち第2画像データの解析結果において転落者が仮検出されなかった場合)には(ステップS25:NO)、転落者判定部11eは、転落者なしと判定する(ステップS29)。
【0104】
他方、
図6Aに示すように、第2画像データの解析結果において投入扉24の近傍の予め定められた領域内への人物の進入が検出された場合には(ステップS25:YES)、転落者判定部11eは、第2画像データの解析結果において、投入扉24の近傍の予め定められた領域内で人物が映像からフレームアウトしていたか否かを確認する(ステップS26)。
【0105】
投入扉24の近傍の予め定められた領域内で人物が映像からフレームアウトしていた場合(すなわち第2画像データの解析結果においても転落者が仮検出された場合)には(ステップS26:YES)、転落者判定部11eは、転落者ありと判定する(ステップS27)。
【0106】
他方、投入扉24の近傍の予め定められた領域内で人物が映像からフレームアウトしていなかった場合には(ステップS26:NO)、転落者判定部11eは、転落者なしと判定する(ステップS29)。
【0107】
そして、転落者判定部11eが転落者ありと判定した場合には(ステップS27の後)、指示部11fは、他の作業員へ周知するために警報(アラーム)を発報するとともに、クレーン5を停止するようクレーン制御装置30に制御信号を送信する(ステップS28)。
【0108】
ステップS28において、指示部11fは、転落者の上に廃棄物が投入されて救助が困難になることを防止するために、ごみピット3とプラットホーム21との間を仕切る投入扉24を閉じるよう投入扉制御装置20に制御信号を送信してもよい。また、指示部11fは、クレーン5を停止するようクレーン制御装置30に制御信号を送信する代わりに、クレーン5を動作させて転落者の救出を行うようクレーン制御装置30に制御信号を送信してもよい。また、指示部11fは、ごみピット3に設けられた救出用機材(不図示)を動作させて転落者の救出を行うよう救出用機材制御装置(不図示)に制御信号を送信してもよい。これにより、クレーン5の自動運転中(すなわち、クレーン運転士の不在時)に転落者が発生した場合であっても、転落者の迅速な救助が可能となる。
【0109】
ところで、廃棄物焼却施設では、転落起因側であるプラットホーム21と転落結果側であるごみピット3との間がごみ投入扉24で仕切られているため、鉄道業界で用いられている転落者検出システムのように、転落起因側と転落結果側を同時に撮影できる場所にカメラなどの撮像装置を設置することが困難である。
【0110】
これに対し、本実施の形態によれば、転落起因側と転落結果側を同時に撮影できる場所にカメラを設置しなくても、転落結果側であるごみピット3内を撮像する第1カメラ6から第1画像データを取得するとともに、転落起因側であるプラットホーム21内を撮像する第2カメラ23から第2画像データを取得し、ごみピット3内を撮像した第1画像データの解析結果と、プラットホーム21内を撮像した第2画像データの解析結果とを組み合わせることにより、プラットホーム21からごみピット3へと転落する転落者を自動で検出できる。
【0111】
一般に、機械学習モデルを利用して画像データから転落者を検出する場合には、機械学習モデルの検出精度は様々であり、100%の精度で転落者を検出することは不可能であるが、本実施の形態によれば、ごみピット3内を撮像した第1画像データの解析結果と、プラットホーム21内を撮像した第2画像データの解析結果とを組み合わせることで、転落者の検出精度を上げることができる。
【0112】
また、本実施の形態によれば、既存施設であっても、ごみピット3内を撮像する第1カメラ6とプラットホーム21内を撮像する第2カメラ23とを追加で設置するだけで、本件システムの動作が可能となるため、本件システムの導入にあたって既存施設の大幅な改造は不要であり、安価に既存施設の安全性を高めることが可能となる。
【0113】
なお、上述した実施の形態において、転落者検出システム10が設けられている廃棄物処理施設100は、ごみ識別システム40が設けられている施設であり、ごみ識別システム40の識別結果に基いてクレーン5の自動運転が行われるように構成されていたが、これに限定されるものではなく、転落者検出システム10が設けられている廃棄物処理施設100は、ごみ識別システム40が設けられていない施設であってもよい。
【0114】
また、上述した実施の形態では、転落者検出システム10は、ごみピット3内を撮像した第1画像データの解析結果と、プラットホーム21内を撮像した第2画像データの解析結果との組み合わせに基づいて、転落者の有無を判定するように構成されていたが、第1画像データの解析結果のみで十分な検出精度が得られる場合には、第1画像データの解析結果のみに基づいて転落者の有無を判定してもよいし、第2画像データの解析結果のみで十分な検出精度が得られる場合には、第2画像データの解析結果のみに基づいて転落者の有無を判定してもよい。
【0115】
以上、本発明の実施の形態および変形例を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。また、各実施の形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0116】
また、本実施の形態に係る転落者検出システム10は1つまたは複数のコンピュータによって構成され得るが、1つまたは複数のコンピュータに転落者検出システム10を実現させるためのプログラム及び当該プログラムを非一時的に記録した記録媒体も、本件の保護対象である。
【符号の説明】
【0117】
1 焼却炉
2 燃焼装置
3 ごみピット
4 ホッパ
5 クレーン
6 第1カメラ
10 転落者検出システム
11 制御部
11a1 第1画像データ取得部
11a2 第2画像データ取得部
11b1 第1教師データ生成部
11b2 第2教師データ生成部
11c1 第1モデル構築部
11c2 第2モデル構築部
11d1 第1画像解析部
11d2 第2画像解析部
11e 転落者判定部
11f 指示部
12 記憶部
12a1 第1検出アルゴリズム
12a2 第2検出アルゴリズム
12b1 第1画像データ
12b2 第2画像データ
12c1 第1教師データ
12c2 第2教師データ
13 通信部
20 投入扉制御装置
21 プラットホーム
22 搬送車両
23 第2カメラ
24 投入扉
30 クレーン制御装置
40 ごみ識別システム
100 廃棄物処理施設
【要約】 (修正有)
【課題】被処理物を貯留する設備へ転落した人を自動的に検出する転落者検出システム、転落者検出方法及び転落者検出プログラムを提供する。
【解決手段】廃棄物処理施設において、転落者検出システム10は、被処理物が貯留される貯留設備内を撮像する第1カメラから第1画像データを取得する第1画像データ取得部と、貯留設備に隣接するプラットホーム内を撮像する第2カメラから第2画像データを取得する第2画像データ取得部と、第1画像データを画像解析して貯留設備内の人物を検出する第1画像解析部と、第2画像データを画像解析してプラットホーム内の人物を検出し、検出された人物の動線を追跡する第2画像解析部と、第1画像データの解析結果と第2画像データの解析結果との組み合わせに基づいて、プラットホームから貯留設備へと転落する転落者の有無を判定する転落者判定部と、を備える。
【選択図】
図2