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  • 特許-野縁取付金具、および野縁の取付け方法 図1
  • 特許-野縁取付金具、および野縁の取付け方法 図2
  • 特許-野縁取付金具、および野縁の取付け方法 図3
  • 特許-野縁取付金具、および野縁の取付け方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】野縁取付金具、および野縁の取付け方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/16 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
E04B9/16 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018147892
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020023796
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591020685
【氏名又は名称】株式会社能重製作所
(72)【発明者】
【氏名】能重 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】八百板 潤
(72)【発明者】
【氏名】前川 伸哉
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203281(JP,A)
【文献】特開2017-226989(JP,A)
【文献】特開2009-179439(JP,A)
【文献】実開昭52-078309(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/16,9/18
F16B 7/00 - 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体天井部に開口側を側方に向けて配設される複数のC字状又はコ字状の野縁受け用下地材の下面域に、その開口側となる両野縁側面の上端が、内方に逆L字状又はU字状に折曲された野縁折曲片を有した複数の野縁を交差状に配設させて、野縁取付金具を介して交差状に取り付けられる天井下地において、
前記野縁取付金具は、前記野縁受け用下地材の側面又は開口側に取着される下地材固定部と、該下地材固定部からL字状に折曲形成されて、野縁の開口側を被嵌する野縁被嵌部と、該野縁被嵌部に挿通される締結ボルトを介して、その下面域に回転及び上下移動可能に組付けられ、前記両野縁折曲片に跨ってその下面側を支持受けする野縁支持受け部とを備え、
前記野縁被嵌部は、野縁の開口側を覆う上面被嵌片と、該上面被嵌片の両側から両野縁側面に面接されるよう下方に折曲された側面被嵌片と有して下向きコ字状に形成せしめる一方、
前記野縁支持受け部は、下向きコ字状に折曲され、その両垂下折曲片の中央に、締結ボルトを廻り止めセット可能なボルト保持部と、両垂下折曲片の両端部に、縦姿勢から横姿勢へ回転操作した際に、前記側面被嵌片に対向し、両野縁側面の内面に対面当接して廻り止め規制可能な廻り止め当接片とを備えて形成されると共に、
前記下地材固定部を前記野縁受け用下地材に配設させた状態で、前記野縁支持受け部を、その縦姿勢で、野縁内部への配置と前記野縁被嵌部の野縁への被嵌セットを許容せしめることで、
当該野縁支持受け部を、前記締結ボルトの回転操作で前記廻り止め当接片を両野縁側面に対面当接させた状態から、締結ボルトの締め付け操作でその上面両端部を前記野縁折曲片に上動圧接せしめて、前記上面被嵌片との間で挟持固定すべく構成してあることを特徴とする野縁取付金具。
【請求項2】
請求項1において、前記側面被嵌片と廻り止め当接片とは、前記野縁側面を挟んでビス固定されることを特徴とする野縁取付金具。
【請求項3】
請求項1または2において、前記廻り止め当接片は、その上端部が前記野縁折曲片を支持受けする支持受け片に兼用されていることを特徴とする野縁取付金具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、前記野縁支持受け部の上面両端部には、前記野縁折曲片が逆U字状溝である場合に、該逆U字状溝内に挿入して野縁を支持受けするよう切欠きされた野縁支持受け溝が形成されていることを特徴とする野縁取付金具。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、前記野縁受け用下地材がリップ溝型材である場合において、前記下地材固定部は、上面視コ字状に形成されて、その両側折曲部に、前記野縁受け用下地材のリップ片に対して挿入掛止される掛止溝を設けて、前記野縁受け用下地材に仮組付け可能に構成されていることを特徴とする野縁取付金具。
【請求項6】
躯体天井部に開口側を側方に向けて配設される複数のC字状又はコ字状の野縁受け用下地材の下面域に、その開口側となる両野縁側面の上端が、内方に逆L字状又はU字状に折曲された野縁折曲片を有した複数の野縁を交差状に配設させて、野縁取付金具を介して取り付けする野縁の取付方法であって、
前記野縁取付金具を、前記野縁受け用下地材の側面又は開口側に取着される下地材固定部と、該下地材固定部からL字状に折曲形成されて、野縁の開口側を被嵌する野縁被嵌部と、該野縁被嵌部に挿通される締結ボルトを介して、その下面域に回転及び上下移動可能に組付けられ、前記両野縁折曲片に跨ってその下面側を支持受けする野縁支持受け部とを備えて形成せしめると共に、
前記野縁被嵌部は、野縁の開口側を覆う上面被嵌片と、該上面被嵌片の両側から両野縁側面に面接されるよう下方に折曲された側面被嵌片と有して下向きコ字状に形成せしめる一方、
前記野縁支持受け部は、下向きコ字状に折曲され、その両垂下折曲片の中央に、締結ボルトを廻り止めセット可能なボルト保持部と、両垂下折曲片の両端部に、縦姿勢から横姿勢へ回転操作した際に、前記側面被嵌片に対向し、両野縁側面の内面に対面当接して廻り止め規制可能な廻り止め当接片とが備えられ、
前記下地材固定部を前記野縁受け用下地材に仮組付け取着した状態で、前記締結ボルトの回転操作により前記野縁支持受け部を縦姿勢にセットしておき、
野縁を、その開口側から前記野縁支持受け部を内装した状態で、前記野縁被嵌部に被嵌セットした後、前記締結ボルトの回転操作で前記廻り止め当接片を両野縁側面に対面当接させて、その自重により前記野縁折曲片を前記野縁支持受け部の上面両端部に支持受けさせ、
しかる後、締結ボルトの締め付け操作で、野縁支持受け部を上動させて、その前記野縁折曲片を前記上面両端部と前記上面被嵌片との間で圧接挟持させて固定することを特徴とする野縁の取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井下地において、C字状又はコ字状の野縁受け用下地材に対して、野縁の開口側において、野縁折曲片を野縁被嵌部と野縁支持受け部とによって内外両側から挟持することで、野縁を取り付けすることのできる野縁取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、野縁は、その野縁取付金具を用いて、吊りボルトを介さずに直接的に躯体天井部を構成する垂木用や母屋用のC型鋼(C字状のリップ溝型材)を野縁受け用下地材に対して、或いは、吊りボルトの下端部に取り付けられたC字状又はコ字状の野縁受け(野縁受け用下地材)に対して、直交して取り付けられる。つまり、野縁はこれら野縁受け用下地材の下面に対して、その開口側を当接させた状態で配設施工される。
【0003】
従来の天井下地に用いられる野縁取付金具のうち、野縁受けの側面又は開口側に取着される下地材固定部と、野縁の開口側を被嵌する野縁被嵌部と、野縁の開口側上端に折曲形成された逆U字状溝内に挿入されて野縁を支持受けする野縁支持受け部とを備えた、所謂、被嵌型タイプのものが知られている(特許文献1の図10、特許文献2の図2参照)。
【0004】
特許文献1のものは、野縁の逆U字状溝内に挿入される左右両側に折曲形成されたV字部(10i)を有し平板状の下板(10b)と、野縁受け(3)の下側フランジ(3a)に係止される平板状の上板(10a)と、野縁の開口側を被嵌する下向きコ字状の接合金具用補強金具(11)とによる3部材を組として備え、各部材の中央にそれぞれ穿設されたボルト(10c)の貫通孔(10f)、(10e)、(11c)に、ボルト(10c)を挿入してナット(10d)により締め付け固定することで、野縁受けの下面に野縁を直接当接させた状態で、上板(10a)との先端部と下板(10b)との間で下側フランジ(3a)を挟み込んで取付けすることにより、V字部(10i)と上板(10a)との間で逆U字状溝を挟持して野縁を固定するようになっている。
【0005】
一方、特許文献2のものは、野縁受けの開口側を覆い被せる被嵌した状態で固定する側面視コ字状の受部材取付部(16)と、この受部材取付部(16)からL字状に折曲されて野縁の開口側を覆い被す板状の保持具本体(11)と、保持具本体(11)の略中央にプレス成型された、野縁の逆U字状溝内に挿入される野縁取付部(13、15)とを有して形成され、野縁受けから延出する挟持部(21)と保持具本体(11)とに穿設された貫通部(27、28)にボルト(29)の締め付け操作で野縁受けを挟み込んで、保持具本体(11)と野縁取付部(13、15)との間で逆U字状溝を挟持することにより野縁を固定するようになっている。
【0006】
しかしながら、これらのものは何れも野縁の逆U字状溝内に挿入されるV字部(10i)と野縁取付部(13、15)が平板状に形成されており、かつ、ボルト(10c)と(29)により固定化された状態となっているが故に、地震等により上下方向等の振動負荷を受けた際に、貫通孔(10f)や貫通部(28)のボルト締結部位に天井板を含む重量負荷やねじれが加わって、ボルト部を中心に両サイドが下方に湾曲変形してガタツキを生じてしまい、甚だしくは野縁の支持受け機能が消失し落下を誘発してしまう危惧がある。
【0007】
また、特許文献1のものは、野縁受けに対する組付け強度が劣り耐震性が期待できないことから、接合金具用補強金具(11)の側面板(11b)を野縁の両側面に直接ネジ止めする構成を、特許文献2の保持具本体(11)に適用して、その両側面部を、野縁の両側面に直接ネジ止めする構成とすることで、その組付け挟持強度を向上させることも提案されるが、逆U字状溝を有する野縁にあっては、板厚が約0.5mmの薄板材によって成形されているため、野縁が一定以上の振動を受けると、野縁取付部(13)の上記の湾曲変形に供応して、ビス止め部分に振動負荷が集中的に加わり、ビスとの水平方向等への衝突作用を受けて変形や亀裂を生じてしまい、ネジ止め機能が損なわれるだけでなく、甚だしくは野縁自体がビス止め部分で折れ曲がったり、割裂を招来する危惧がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-050784号公報
【文献】特開2011-256696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、野縁折曲片を野縁被嵌部と野縁支持受け部とによって内外両側から挟持して野縁を固定するものでありながら、野縁支持受け部のねじれや湾曲変形に対する組付け剛性強度を高め、地震等により上下方向等の振動負荷を受けた際に、野縁支持受け部の湾曲変形を確実に防止できるようにし、野縁被嵌部と野縁支持受け部とによる野縁折曲片に対する挟持機能だけでなく、側面被嵌片と廻り止め当接片との間で野縁の両側面をビス止めにより挟み込み固定できる挟持機能を併せ持つことができるようにして、殊に、薄板材にて形成された野縁であっても、ビス止め部分に亀裂等の損傷を生じることが無く、耐震組付け強度を向上することのできる野縁取付金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の野縁取付金具は、躯体天井部に開口側を側方に向けて配設される複数のC字状又はコ字状の野縁受け用下地材の下面域に、その開口側となる両野縁側面の上端が、内方に逆L字状又はU字状に折曲された野縁折曲片を有した複数の野縁を交差状に配設させて、野縁取付金具を介して交差状に取り付けられる天井下地において、前記野縁取付金具は、前記野縁受け用下地材の側面又は開口側に取着される下地材固定部と、該下地材固定部からL字状に折曲形成されて、野縁の開口側を被嵌する野縁被嵌部と、該野縁被嵌部に挿通される締結ボルトを介して、その下面域に回転及び上下移動可能に組付けられ、前記両野縁折曲片に跨ってその下面側を支持受けする野縁支持受け部とを備え、前記野縁被嵌部は、野縁の開口側を覆う上面被嵌片と、該上面被嵌片の両側から両野縁側面に面接されるよう下方に折曲された側面被嵌片と有して下向きコ字状に形成せしめる一方、前記野縁支持受け部は、下向きコ字状に折曲され、その両垂下折曲片の中央に、締結ボルトを廻り止めセット可能なボルト保持部と、両垂下折曲片の両端部に、縦姿勢から横姿勢へ回転操作した際に、前記側面被嵌片に対向し、両野縁側面の内面に対面当接して廻り止め規制可能な廻り止め当接片とを備えて形成されると共に、前記下地材固定部を前記野縁受け用下地材に配設させた状態で、前記野縁支持受け部を、その縦姿勢で、野縁内部への配置と前記野縁被嵌部の野縁への被嵌セットを許容せしめることで、当該野縁支持受け部を、前記締結ボルトの回転操作で前記廻り止め当接片を両野縁側面に対面当接させた状態から、締結ボルトの締め付け操作でその上面両端部を前記野縁折曲片に上動圧接せしめて、前記上面被嵌片との間で挟持固定すべく構成してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記のように構成したことにより、野縁折曲片を野縁被嵌部と野縁支持受け部とによって内外両側から挟持して野縁を固定するものでありながら、野縁支持受け部は、野縁被嵌部との間に隙間を保持したままの状態で、締結ボルトを締め付け操作しても、何ら変形を生じることなくスナップを効かせた状態で野縁折曲片を強固に圧接挟持固定することができるだけでなく、側面被嵌片と廻り止め当接片との間で両野縁側面をビス止めにより挟み込み固定できる挟持機能や、廻り止め当接片に野縁折曲片への支持受け機能を併せ持たせることができ、野縁自体の外周が補強された状態で組付け剛性強度を高めることができる。その結果、地震等により上下方向やねじれ方向等の振動負荷を受けた際に、野縁支持受け部に天井自重による負荷が加わっても湾曲変形を生じることなく、両野縁折曲片と両野縁側面との4面を確りと挟み込み挟持して一体化された状態が維持され、野縁とのガタツキや位置ズレを防止することができ、殊に、薄板材にて形成された野縁であっても、その両野縁側面におけるビス止め部分に亀裂等の損傷を生じることが無く、耐震組付け強度を向上することができ、野縁の4面における締め付け挟持状態を長期に渡って保持することができる。しかも、野縁を取付けする際に、下向きコ字状に形成された野縁支持受け部であっても、縦姿勢から横姿勢に回転操作することで、廻り止め当接片を野縁の両野縁側面の内面に対面当接させた状態を保持したまま、野縁折曲片を挟持固定することができ、両野縁側面を挟み込みするビス固定作業も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る野縁取付金具を用いて、野縁受け用下地材に野縁を取付けした状態を示す説明図であって、(A)は正面図、(B)は平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る野縁取付金具を示し、(A)はその正面図、(B)は側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る野縁取付金具であって、(A)は下地材固定部と野縁被嵌部とからなる上側部材を示す斜視図、(B)は野縁支持受け部よりなる下側部材を示す上面側と底面側の斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る野縁取付金具を野縁受け用下地材に組付けした状態で、野縁を取付けする手順を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示する野縁取付金具を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る野縁受け用下地材に野縁を取付けした状態を示す説明図である。この図に示す野縁受け用下地材1には、吊りボルトを介さずに直接的に躯体天井部を構成する垂木用や母屋用のC型鋼(C字状のリップ溝型材)、或いは、吊りボルトの下端部に取り付けられたコ字状の野縁受けを含むものであり、かかる野縁受け用下地材1に野縁取付金具3を介して取り付けられる野縁2に、天井パネルがネジ固定されて天井下地を構成している。
【0014】
本実施形態に示す野縁受け用下地材1は、垂木用や母屋用のC型鋼(C字状のリップ溝型材)であり、体育館などの躯体天井部(天井スラブなど)と天井パネルとの間に形成される天井スペース(ふところ)の狭い天井下地構造に野縁2を取り付けた場合に採用される施工例を示し、野縁取付金具3を野縁受け用下地材1のリップ片1aを介して取付けした状態を例示している。
【0015】
野縁2としては、その板厚規格が約1.2mmまたは1.6mmの厚板材によって、開口側を上方に向けてその両野縁側面22、22の上端が内方に折曲形成された逆L字状の野縁折曲片21、21を有するもの、又は、約0.5mmの薄板材によって、開口側両側部の上端が内方に折曲形成された逆U字溝状の野縁折曲片21を有するものがあり、本実施形態においては、この逆U字溝状の野縁折曲片21を有するものを例示している。野縁2は、野縁受け用下地材1と直交するように、天井部に所定の間隔を存して並列状に割り付けされ、幅寸法が異なるダブル野縁やシングル野縁があり、それぞれに適合した形状の野縁取付金具3を介して野縁受け用下地材1で支持される。そして、天井部に割り付けられた野縁2間に天井パネルを渡し、これをネジ止めすることにより、天井下地が構成される。
【0016】
次に、本発明の実施態様に係る野縁取付金具について、図2図3を参照して図1の取付け状態と共に説明する。図2の(A)は野縁取付金具の正面図、(B)は側面図である。図3は、野縁取付金具の部材構成を示し、(A)は下地材固定部と野縁被嵌部とからなる上側部材を示す斜視図、(B)は野縁支持受け部としての下側部材を示す上面側と底面側の斜視図である。
これらの図に示すように、野縁取付金具3は、野縁受け用下地材1の開口側となるリップ片1aに取着される下地材固定部31と、該下地材固定部31からL字状に折曲形成されて、野縁2の開口側を被嵌する野縁被嵌部32と、該野縁被嵌部32に挿通される締結ボルト34(ボルト34aとナット34b)を介して、その下面域に回転及び上下移動可能に組付けられ、両野縁折曲片21、21に跨ってその下面側を支持受けする野縁支持受け部33とを備えて構成される。つまり、野縁取付金具3は、下地材固定部31と野縁被嵌部32とから構成される上側部材3aと、野縁支持受け部33を構成する下側部材3bとを、締結ボルト34によって連結組付けした状態で工場出荷される。
【0017】
下地材固定部31は、リップ片1aに面当てされてビス固定される正面固定片311と、正面固定片311の両側がL字状に折曲されて、そのコーナー部にリップ片1aへの掛止溝313が切欠き形成された側面係止片312とを備えており、野縁被嵌部32は、その中央に締結ボルト34の挿通孔32aが穿設されて野縁2の開口側を覆う上面被嵌片321と、該上面被嵌片321の両側から両野縁側面22、22に面接されるよう下方に折曲された側面被嵌片322、322と有して下向きコ字状に形成される。
下地材固定部31と野縁被嵌部32とからなる上側部材3aは、板厚が2.3mmの厚板材によって、全体をプレスにより一体成型される。なお、正面固定片311の所定個所にビス孔31a、31aが、側面被嵌片322の廻り止め当接片333と対向する個所にビス孔32bがそれぞれ穿設されている。
【0018】
野縁支持受け部33は、上面片331を介して下向きコ字状に折曲された垂下折曲片332、332を有し、その中央部位となる上面片331に締結ボルト34の挿通孔33aが穿設され、両垂下折曲片332、332に、締結ボルト34のボルト34a頭またはナット34bを廻り止めセット可能な溝状のボルト保持部33bとを有して、下側部材3b全体が板厚が1.6mmの上側部材3aよりも薄板材にてプレス一体成型され、締結ボルト34を介して上面被嵌片321の下面域(野縁被嵌部32のコ字状内面域)に回転及び上下移動可能に連結された状態で仮組付けされている。
ボルト保持部33bはコ字状に切欠きされた溝状に形成され、その溝幅は、締結ボルト34のボルト34a頭またはナット34bの一辺の寸法幅よりも広幅でかつ回り止め保持できる溝幅を有しており、その切欠き溝の開口側から締結ボルト34を配設セットできるようになっている。
【0019】
上面片331の両端部には、野縁折曲片21、21の逆U字状溝内に挿入して野縁2を支持受けするよう略V字状に切欠きして、それぞれの垂下折曲片332…の4個所に形成された野縁支持受け溝33c…と、両垂下折曲片332、332の両端部に、野縁支持受け部33を縦姿勢から横姿勢へ姿勢変姿して回転操作した際に、側面被嵌片322に対向し、両野縁側面22、22の内面に対面当接して廻り止め規制可能な廻り止め当接片333、333とが形成される。
【0020】
つまり、この廻り止め当接片333、333は、縦姿勢から横姿勢へ時計回りに一方向回転操作によって姿勢変姿が行えるように、両垂下折曲片332、332の対角側となる両端部の同方向に折曲形成されており、その上端面が野縁支持受け溝33cの上端面と面一となるように延出折曲され、野縁折曲片21、21の逆U字状溝内に野縁支持受け溝33cと共に挿入されて野縁2を支持受けする機能と、側面被嵌片322との間で両野縁側面22、22をドリルビスにてビス固定することで圧接挟持する機能を兼ね備えている。なお、ナット34bをボルト保持部33bにセットさせた状態でもボルト34aを回転操作すれば、野縁支持受け部33を縦姿勢から横姿勢へ回動できるが、スムーズに回動されない場合は指押し操作すれば良い。
【0021】
次に、本発明の実施態様に係る野縁取付金具3の取付手順について、図4の(A)~(E)を参照して説明する。これらの図に示すように、先ず、下地材固定部31の掛止溝313を、野縁受け用下地材1の開口側からリップ片1aに挿入して掛止セットし、搬入時に横姿勢にある野縁支持受け部33(図2参照)を、締結ボルト34を回転操作して縦姿勢にセットする(図(A)参照)。このセット状態から、野縁2を開口側から野縁支持受け部33を飲み込む形でその底面に当接させ(図(B)参照)、締結ボルト34を回転操作することにより、野縁支持受け部33を、廻り止め当接片333を野縁側面22の内面に対面当接させた状態で横姿勢にセットした後、野縁2をその自重により降下させることで、野縁折曲片21の逆U字状溝が野縁支持受け溝33cの傾斜に沿った挿入がなされた吊持状態でセットされる(図(C)参照)。
【0022】
次いで、締結ボルト34のナット34bを締め付け操作することで、野縁支持受け部33と共に野縁2を上動させて野縁折曲片21を、上面被嵌片321と野縁支持受け部33の両端部(野縁支持受け溝33cと廻り止め当接片333の上端面)との間で強固に圧接した状態で挟み込み挟持する(図(D)参照)。この操作時において、野縁支持受け部33は、縦姿勢から横姿勢への回転を許容するため、廻り止め当接片333と両野縁側面22、22との間に所定の隙間を有して、回転操作範囲が図(E)に示す90度+1、2度程度の許容範囲をもって設定されて組み付けられており、ナット34bの締め付け操作に追随して、廻り止め当接片333の先端が傾斜した状態で野縁側面22の内面に当接され、その当接状態が維持されたまま、野縁被嵌部32の上面被嵌片321と野縁支持受け部33の上面片331との間に隙間を保持した、所謂スナップを効かせた状態で、野縁折曲片21を強固に圧接させて挟持固定することができ、締め付け過ぎや振動により野縁支持受け部33に挫屈等の変形を生じることが無く、この挟持状態を維持したまま側面被嵌片322と廻り止め当接片333との間で、両野縁側面22、22がビス止めにより確りと挟み込み固定され、野縁2自体の外周が補強された状態で組付け剛性強度を強固なものとするることができる。
【0023】
しかる後、正面固定片311をビス孔31aを介してリップ片1aにビス固定すれば取付け作業が完了する。つまり、側面被嵌片322と廻り止め当接片333との間で両野縁側面22、22をビス止めにより挟み込み固定するにあたり、下野縁支持受け部33よりなる下側部材3bは、下地材固定部31と野縁被嵌部32とからなる上側部材3aよりも薄板厚材にて、全体が下向きコ字状にて成型してあるので、締結ボルト34を締め付け操作は、両垂下折曲片332、332を介して行われ、強固に締め付け固定しても、両者間に挫屈等の変形を生じることが防止され、しかも、側面被嵌片322に穿設されたビス孔32bはドリルビスの外径と略同径に設定されているので、廻り止め当接片333が両野縁側面22、22に当接しない状態でビス固定しても、ドリルビスがビス孔32bを介して傾斜状に螺入されて廻り止め当接片333が引き寄せられて、両野縁側面22、22の内面に当接させた状態で挟み込み固定することができるようになっている。
【0024】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、いま、天井下地の施工において、野縁2を野縁取付金具3を介して野縁受け用下地材1の下面域に取り付けるのであるが、本発明にかかる野縁取付金具3は、野縁受け用下地材1の側面又は開口側に取着される下地材固定部31と、該下地材固定部31からL字状に折曲形成されて、野縁2の開口側を被嵌する野縁被嵌部32と、該野縁被嵌部32に挿通される締結ボルト34を介して、その下面域に回転及び上下移動可能に組付けられ、両野縁折曲片21、21に跨ってその下面側を支持受けする野縁支持受け部33とを備え、野縁被嵌部32は、野縁2の開口側を覆う上面被嵌片321と、該上面被嵌片321の両側から両野縁側面22、22に面接されるよう下方に折曲された側面被嵌片322、322と有して下向きコ字状に形成せしめる一方、野縁支持受け部33は、下向きコ字状に折曲され、その両垂下折曲片332、332の中央に、締結ボルト34を廻り止めセット可能なボルト保持部33bと、両垂下折曲片332、332の両端部に、縦姿勢から横姿勢へ回転操作した際に、側面被嵌片322に対向し、両野縁側面22、22の内面に対面当接して廻り止め規制可能な廻り止め当接片333、333とを備えて形成されると共に、下地材固定部31を野縁受け用下地材1に配設させた状態で、野縁支持受け部33を、その縦姿勢で、野縁2の内部への配置と野縁被嵌部32の野縁2への被嵌セットを許容せしめることで、当該野縁支持受け部33を、締結ボルト34(ボルト34a)の回転操作で廻り止め当接片333を両野縁側面22、22の内面に対面当接させた状態を保持して、締結ボルト34(ナット34b)の締め付け操作でその上面両端部(野縁支持受け溝33cと廻り止め当接片333)を野縁折曲片21、21に上動圧接せしめて、上面被嵌片321との間で挟持固定すべく構成されている。
【0025】
この様に構成すると、野縁折曲片21を野縁被嵌部32と野縁支持受け部33とによって内外両側から挟持して野縁2を固定するものでありながら、野縁支持受け部33は、野縁被嵌部32との間に隙間を保持したままの状態で、締結ボルト34(ナット34b)を締め付け操作しても、何ら変形を生じることなくスナップを効かせた状態で野縁折曲片21、21を強固に圧接させて挟持固定することができるだけでなく、側面被嵌片322と廻り止め当接片333との間で両野縁側面22、22をビス止めにより挟み込み固定できる圧接挟持機能や、廻り止め当接片333に野縁折曲片21への支持受け機能を併せ持たせることができ、野縁2自体の外周が補強された状態で組付け剛性強度を高めることができる。
【0026】
その結果、地震等により上下方向やねじれ方向等の振動負荷を受けた際に、野縁支持受け部33に天井自重による負荷が加わっても湾曲変形を生じることなく、両野縁折曲片21、21と両野縁側面22、22との4面を確りと挟み込み挟持して一体化された状態が維持され、野縁2とのガタツキや位置ズレを防止することができ、殊に、薄板材にて形成された野縁2であっても、その両野縁側面22、22におけるビス止め部分にドリルビスとの衝突作用によって亀裂等の損傷を生じることが無く、耐震組付け強度を向上することができ、野縁2の4面における締め付け挟持状態を長期に渡って保持することができる。しかも、野縁2を取付けする際に、下向きコ字状に形成された野縁支持受け部33であっても、縦姿勢から横姿勢に回転操作することで、廻り止め当接片333、333を両野縁側面22、22に対面当接させた状態を保持したまま、野縁折曲片21、21を挟持固定することができ、両野縁側面22、22を挟み込みするビス固定作業も容易に行うことができる。
【0027】
また、側面被嵌片322、322と廻り止め当接片333、333とは、野縁側面22、22を挟んでビス固定されているので、両野縁折曲片21、21を含む4面が野縁被嵌部32と野縁支持受け部33とによって、確りと圧接挟持された状態で組付け固定することができ、野縁2自体の外周面が補強された組付け剛性強度をもって両者が一体化され、上下方向やねじれ方向等の振動負荷を受けても、野縁2とのガタツキや位置ズレが防止されて、その挟持状態を好適に維持することができ、野縁被嵌部32と野縁支持受け部33の変形が生じることもなく、耐震組付け強度向上を図ることができる。
【0028】
また、廻り止め当接片333、333は、その上端部が野縁折曲片21を支持受けする支持受け片に兼用されているので、野縁支持受け部33の上動操作に伴って、野縁折曲片21、21の逆U字状溝内に野縁支持受け溝33cと共に入り込み野縁2を支持受けすることができ、締結ボルト34の締め付け操作により広幅な面域をもって支持受けした状態で挟持固定することができ、野縁2の長手方向に対する振動を受けても、野縁被嵌部32とその縦幅と同幅域をもって共同に支持受け挟持することができ、締結ボルト34を中心としてその振動負荷を分散支持することができる。その結果、長手方向への振動負荷に対しても耐震性に対する組付け剛性強度を高める補強ができ、野縁2の長手方向や傾斜方向に対する耐震機能が高められ、野縁2への挟持機能が損なわれることなく両者間にガタツキや、位置ズレの発生の防止を図ることができる。
【0029】
また、野縁支持受け部33の上面両端部には、野縁折曲片21、21が逆U字状溝である場合に、該逆U字状溝内に挿入して野縁2を支持受けするよう略V字状に切欠きされた野縁支持受け溝33c…が形成されているので、野縁支持受け部33を横姿勢にセットした状態で、野縁2の自重により降下させることで、野縁支持受け溝33cの傾斜に沿って逆U字状溝内に挿入させることができ、当該挿入動作に追随して廻り止め当接片333を野縁側面22の内面に対面当接させた吊持状態でセットすることができる。
【0030】
また、野縁受け用下地材1がリップ溝型材である場合において、下地材固定部31は、上面視コ字状に形成されて、その両側折曲部(正面固定片311と側面係止片312のコーナー部)に、野縁受け用下地材1のリップ片1aに対して挿入掛止される掛止溝313、313を設けて、野縁受け用下地材1に仮組付け可能に構成されているので、正面固定片311をリップ片1aにビス固定する前工程で、野縁折曲片21、21を野縁被嵌部32と野縁支持受け部33の間で挟持固定した後に、リップ片1aに対してスライド操作して位置決め調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 野縁受け用下地材
1a リップ片
2 野縁
21 野縁折曲片
22 野縁側面
3 野縁取付金具
3a 上側部材
3b 下側部材
31 下地材固定部
311 正面固定片
312 側面係止片
313 掛止溝
31a ビス孔
32 野縁被嵌部
321 上面被嵌片
322 側面被嵌片
32a 挿通孔
32b ビス孔
33 野縁支持受け部
331 上面片
332 垂下折曲片
333 当接片
33a 挿通孔
33b ボルト保持部
33c 野縁支持受け溝
34 締結ボルト
34a ボルト
34b ナット
図1
図2
図3
図4