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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】整髪料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20220801BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220801BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/92
A61Q5/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018016367
(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公開番号】P2019131522
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】関根 光
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-015935(JP,A)
【文献】特開2009-209103(JP,A)
【文献】特開2009-196924(JP,A)
【文献】特開2010-235499(JP,A)
【文献】特開2009-173602(JP,A)
【文献】特開2013-040107(JP,A)
【文献】特開2017-218418(JP,A)
【文献】特開2009-040686(JP,A)
【文献】特開2008-024610(JP,A)
【文献】特開2007-308393(JP,A)
【文献】特開2014-227357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/31
A61K 8/37
A61K 8/81
A61K 8/92
A61Q 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)を15質量%と、
固形油(B)を1525質量%と、
不揮発性液状油(C)を1~30質量%と、
乳化剤である乳化増粘剤を0.01~2質量%とを含み、
前記揮発性炭化水素(A)がテトラデカンであり、
前記固形油(B)がキャンデリラロウであり、
前記乳化増粘剤が(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーである、整髪料。
【請求項2】
乳化剤を0.01~21質量%含む、請求項1に記載の整髪料。
【請求項3】
乳化剤であるノニオン界面活性剤を0.1~15質量%含む、請求項1または2に記載の整髪料。
【請求項4】
乳化剤である脂肪酸を0.1~4質量%含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の整髪料。
【請求項5】
25℃での粘度が3,000~50,000cpsである、請求項1~4のいずれか一項に記載の整髪料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整髪料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘアスタイルの複雑化が進み、ヘアスタイルの作成にかかる時間が長くなっていることから、従来の整髪料よりも長い整髪時間を確保できる整髪料が望まれている。特に、サロン(美容室)などのプロフェッショナルの現場では、複雑なヘアスタイルを実現するために、整髪がしやすく、セット力があり、整髪時間が長く、再整髪も可能な整髪料が求められている。
【0003】
これまで、高い整髪力を与える整髪料として、主にヘアワックスが用いられており、その主成分は、キャンデリラロウやミツロウなどのロウ・ワックス類、および、パラフィンやポリエチレンなどの室温で半固形状~固形状の炭化水素であった。これらの成分は整髪力を与える反面、べたつきがあり、伸びが悪く、すぐに固まってバリバリとした不快な質感となる欠点があった。さらに、従来のヘアワックスでは、短い整髪時間で即座にヘアスタイルを整える必要があり、複雑なヘアスタイルの作りこみはできなかった。
【0004】
整髪料についての先行技術としては、例えば、特許文献1には、整髪のしやすさを向上させるために、キャンデリラロウとともに融点が30~40℃の植物油脂を配合した整髪剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、整髪のしやすさを向上させるために、ロウとともに揮発性の液状油である、揮発性シリコーンやイソパラフィン系炭化水素を配合した整髪料組成物が開示されている。特許文献3には、室温で固形のロウ類とともに、室温で液状の分岐型液状油を配合した整髪用乳化化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-197401号公報
【文献】特開2003-113054号公報
【文献】特開2008-7438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された整髪剤組成物は、整髪のしやすさは優れているが、セット後の毛髪の質感が重たくなることや、セット力が低く、毛髪を立ち上げて保持できるようなキープ力は無いという問題があった。
【0007】
特許文献2に開示された整髪料組成物は、整髪のしやすさを向上しながら高いセット力を与えているものの、揮発性の液状油がすぐに揮発して整髪料が固まってしまうため、現在求められている整髪時間を叶えられるものではなかった。本発明者は、整髪時間の短さを解決する手段を検討する段階で、揮発性の液状油の代わりに低揮発性の液状油を用いてみたが、低揮発性の液状油を用いた整髪料組成物が分離しやすく、安定性が低下したことから、整髪時間の改善と整髪料組成物の安定性を両立できなかった。
【0008】
特許文献3に開示された整髪用乳化化粧料は、分岐型液状油を配合することにより操作性が向上し、現在求められている整髪時間が叶えられるが、セット力が低く、複雑なヘアスタイルを実現することはできなかった。
【0009】
このようなことから、本発明は、整髪する際に伸びがよく、毛髪を立ち上げて保持することができる高いセット力と再整髪力がありながら、充分な整髪時間を有する整髪料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する整髪料は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[6]である。
[1]沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)を1~30質量%と、固形油(B)を1~40質量%と、不揮発性液状油(C)を1~30質量%とを含む、整髪料。
[2]乳化剤を0.01~21質量%含む、[1]に記載の整髪料。
[3]乳化剤であるノニオン界面活性剤を0.1~15質量%含む、[1]または[2]に記載の整髪料。
[4]乳化剤である脂肪酸を0.1~4質量%含む、[1]~[3]のいずれかに記載の整髪料。
[5]乳化剤である乳化増粘剤を0.01~2質量%含む、[1]~[4]のいずれかに記載の整髪料。
[6]25℃での粘度が3,000~50,000cpsである、[1]~[5]のいずれかに記載の整髪料。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、整髪する際に伸びがよく、毛髪を立ち上げて保持することができる高いセット力と再整髪力がありながら、充分な整髪時間を有する整髪料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の整髪料について具体的に説明する。
<整髪料>
本発明の整髪料は、沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)を1~30質量%と、固形油(B)を1~40質量%と、不揮発性液状油(C)を1~30質量%とを含む。前記整髪料は、さらに、乳化剤を0.01~21質量%含むことが好ましい。また、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。なお、上記の各成分の含有量は、整髪料を100質量%とした場合の含有量を示している。
【0013】
本発明の整髪料は、25℃での粘度が3,000~50,000cpsであることが好ましい。本発明の整髪料の25℃での粘度は、温度25℃の環境下でB型粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて測定した粘度である。
【0014】
<沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)>
本発明の整髪料は、沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)を1~30質量%含み、2~25質量%含むことが好ましく、3~15質量%含むことがより好ましい。
本発明の整髪料は、炭化水素の中でも揮発性があり、沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)を上記の量含むことによって、べたつきが低減し、伸びがよく整髪がしやすくなり、さらに充分な整髪時間がありながら、セット力と再整髪力を付与することができる。
【0015】
沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)として、具体的には、ドデカン(沸点:約216℃)、テトラデカン(沸点:約253℃)、水添ポリイソブテン(パールリーム4;日油株式会社製;沸点:220~252℃)等が挙げられる。沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)としては、整髪のしやすさが向上し、べたつきが低減することから、ドデカン、テトラデカン等の直鎖炭化水素が好ましい。沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
<固形油(B)>
本発明の整髪料は、固形油(B)を1~40質量%含み、10~30質量%含むことが好ましく、15~25質量%含むことがより好ましい。
本発明の整髪料は、固形油(B)を上記の量含むことによって、高いセット力と充分な整髪時間を得ることができる。前記下限量より少ないと、セット力が低く、前記上限量より多いと、整髪時間の減少やべたつきにつながる。
【0017】
本発明の整髪料は、固形油(B)として、具体的には、キャンデリラロウ、カルナバロウ、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、還元ラノリン等のロウ・ワックス類、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類などが挙げられる。これらの中でも、高いセット力を付与できることから、キャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックス、カルナバロウが好ましく、キャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックスがより好ましく、高いセット力とキープ力を付与できることから、キャンデリラロウがさらに好ましい。固形油(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
<不揮発性液状油(C)>
本発明の整髪料は、不揮発性液状油(C)を1~30質量%含み、2~20質量%含むことが好ましく、3~15質量%含むことがより好ましい。
本発明の整髪料は、不揮発性液状油(C)を上記の量含むことによって、べたつきを抑制し、整髪のしやすさを付与できる。
【0019】
本発明の整髪料は、不揮発性液状油(C)として、具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、スクワランなどの炭化水素類、リンゴ酸ジイソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、(イソステアリン酸/ミリスチン酸)グリセリズ、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、オクタン酸セチル、コハク酸ジオクチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールなどのエステル類、ヒマシ油、マカデミアナッツオイル、ホホバ油、アボカド油、アーモンド油、アルガニアスピノサ核油、オリーブ油、ククイナッツ油、コメヌカ油、ダマスクバラ花油、ヤシ油、ローズヒップ油、月見草油などの植物油類、不揮発性ジメチコン(粘度が25℃下で5mm2/s~5,000mm2/sのもの)、ジフェニルジメチコン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、固形油(B)の可塑化、洗い落ちに優れ、セット後の髪の質感が軽いという観点から、炭化水素類、エステル類、植物油類が好ましく、流動パラフィン、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソノナン酸エチルヘキシル、ホホバ油がより好ましく、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルがさらに好ましい。不揮発性液状油(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
<乳化剤>
本発明の整髪料は、乳化剤を0.01~21質量%含むことが好ましい。また、乳化剤であるノニオン界面活性剤を0.1~15質量%含むことも好ましく、乳化剤である脂肪酸を0.1~4質量%含むことも好ましく、乳化剤である乳化増粘剤を0.01~2質量%含むことも好ましい。乳化剤としては、前記ノニオン界面活性剤、脂肪酸および乳化増粘剤から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、2種以上を用いてもよい。
本発明の整髪料は、乳化剤を含むことによって分離しにくくなり、安定性が向上する。また、洗い落ちも向上させることができる。
【0021】
〔ノニオン界面活性剤〕
本発明の整髪料は、乳化剤として、ノニオン界面活性剤を0.1~15質量%含むことが好ましく、3~8質量%含むことがさらに好ましい。ノニオン界面活性剤としては、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン等が挙げられる。この中でも、HLB7~12のノニオン界面活性剤が、本発明で使用する油脂類を安定に乳化しやすいため好ましく、直鎖ポリエーテル型ノニオン界面活性剤がより好ましく、セチルエーテル、ステアリルエーテルがさらに好ましい。ノニオン界面活性剤は1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
〔脂肪酸〕
本発明の整髪料は、乳化剤として脂肪酸を0.1~4質量%含むことが好ましく、0.5~2質量%含むことがより好ましい。脂肪酸としては、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの炭素数14~22の直鎖型高級脂肪酸またはその塩が好ましく、ステアリン酸またはその塩がより好ましい。脂肪酸は1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
〔乳化増粘剤〕
本発明において、油分を乳化することができ、かつ添加した対象に粘度を付与できる剤を乳化増粘剤と記す。
【0024】
本発明の整髪料は、乳化剤として、乳化増粘剤を0.01~2質量%含むことが好ましく、0.1~0.5質量%含むことがより好ましい。乳化増粘剤として、具体的には、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウムメタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー等が挙げられる。この中でも、手に伸ばす際の伸びがよく、べたつきが生じにくいことから、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーが好ましい。乳化増粘剤は1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
<その他成分>
本発明の整髪料は、水を40~80質量%含むことが好ましく、50~70質量%がさらに好ましい。
本発明の整髪料は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、増粘剤、保湿剤、生薬類、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、および色素等の添加剤を含有することができる。
本発明の整髪料は、例えば、増粘剤としてカルボマー(カルボキシビニルポリマー)を用いることができ、pH調整剤としてトリエタノールアミンを用いることができる。
【0026】
<整髪料の製造等>
本発明の整髪料は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、乳化、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、好ましくは加熱条件下、例えば75~85℃ の加熱条件下で、本発明の整髪料を製造することが好ましい。
【0027】
〔粘度〕
本発明の整髪料は、B型粘度計を用いて25℃で測定した場合の粘度が、3,000~50,000cpsであることが好ましく、10,000~30,000cpsがより好ましい。粘度が上記の値であることによって、整髪料を手になじませる際に伸びがよくなり、整髪のしやすさが向上する。
【0028】
〔剤型〕
本発明の整髪料の状態としては、例えば、ミルク状、クリーム状、ジェル状、ローション状が挙げられ、具体的には、ミルク状が好ましく、白濁した均質の外観であることが好ましい。また、本発明の整髪料は、噴射剤とともに用いることによりスプレー用組成物として用いることもできる。
【0029】
<用途>
本発明の整髪料は、毛髪に塗布して使用することができる。
本発明の整髪料は、整髪する際に伸びがよく、毛髪を立ち上げて保持することができる高いセット力と再整髪力がありながら、充分な整髪時間を有する。
【実施例
【0030】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1~37、比較例1~7〕
表1~6に示す処方で各成分を混合することにより整髪料を製造し、試料として以下の方法で評価した。なお、表中の処方の数値は、整髪料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表している。結果を表1~6に示す。
【0031】
なお、表1~6に記載の各成分は以下の市販品を用いた。
テトラデカン:Parafol 14-97(SASOL社製)
ドデカン:Parafol 12-97(SASOL社製)
水添ポリイソブテン:パールリーム4(日油株式会社製)
イソドデカン:ISODODECANE(INEOS Oligomers社製)
キャンデリラロウ:製品名 TOWAX-4F3(東亜化成社製)
ミリスチン酸イソプロピル:製品名 SRクロダモルIPM-LQ-(JP)(クローダジャパン社製)
カルボマー:カーボポール934(ルーブリゾール社製)
トリエタノールアミン:トリエタノールアミン(三井化学社製)
マイクロクリスタリンワックス:マイクロクリスタリンワックスW-445(Witco社製)
カルナバロウ:精製カルナバワックスR-100(横関油脂工業社製)
流動パラフィン:ハイコールK-230(witco社製)
ホホバ油:ホホバ油S(日光ケミカルズ社製)
ステアレス-10(HLB:10) :EMALEX 610(日本エマルジョン社製)
セテス-7(HLB:10):EMALEX107(日本エマルジョン社製)
ステアリン酸:ルナックS-98(花王社製)
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー:SEPINOV EMT-10(成和化成社製)
【0032】
〔官能評価〕
室温(25℃)の条件下で、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ、試料1gを手に取った後、頭頂部10cm、後頭部6cmにカットした東京チャーム社製No.55デザインカットモデルの毛髪に万遍なく塗布し、直ちにヘアスタイルを作り、後述する(1)~(7)の各項目に記載した評価項目および評価基準に従って官能評価を行った。各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0033】
〔物性評価〕
後述する(8)~(9)の各項目に記載した評価項目および評価基準に従って、試料の物性評価を行った。
(1)整髪時間
ヘアスタイルを作りこむ際の整髪時間が充分(20秒程度)とれるかどうか評価した。
4点:非常に長く時間をとれる
3点:充分な時間をとれる
2点:やや時間が短く整髪しづらい
1点:時間が短すぎて整髪できない
(2)セット力(束感)
ヘアスタイルを作りこむ際の毛束感の作りやすさを評価した。
4点:非常に作りやすい。
3点:作りやすい。
2点:やや作りづらい。
1点:作れない。
(3)セット力(立ち上げ)
頭頂部の毛髪の立ち上げやすさを評価した。
4点:非常に立ち上げやすい。
3点:立ち上げやすい。
2点:やや立ち上げづらい。
1点:立ち上げられない。
(4)キープ力
ヘアスタイルの作成後、25℃、湿度65%の室内で8時間経過後にどれだけヘアスタイルがキープされているかを目視で評価した。
4点:ヘアスタイルが全く変わらず、非常によくキープされている。
3点:よくキープされている。
2点:あまりキープされていない。
1点:全くキープされておらず、ヘアスタイルが変わってしまっている。
(5)再整髪力
ヘアスタイルの作成から3時間経過後の再整髪のしやすさを評価した。
4点:容易に再整髪できる。
3点:再整髪できる。
2点:再整髪しづらい。
1点:再整髪できない。
(6)べたつき
試料を毛髪に万遍なく塗布した直後のべたつきを触感で評価した。
4点:べたつきがない。
3点:少しべたつきがある。
2点:べたつきがある。
1点:べたつきが強く、不快を感じる。
(7)洗い落ち
毛髪に塗布した試料が充分に乾いた後、水で毛髪を濡らし、シャンプーを1.0g使用して30秒間洗い、水温38℃付近の水で1分間水洗した。その際の洗い落ちを触感で評価した。シャンプーはシェルパ デザインサプリ シャンプー D-2(アリミノ社製)を使用した。
4点:非常に洗い落ちが良い。
3点:洗い落ちが良い。
2点:洗い落ちが悪い。
1点:非常に洗い落ちが悪く、べたつきやごわつきが残る。
(8)保存安定性
試料を100mL容量のPET容器に90g充填した後、50℃の恒温槽に30日間保存し、試料の乳化状態を目視で確認した。
◎:変化が見られない
○:僅かな分離や凝集物が見られる
△:明らかな分離や凝集物が見られる
×:製造直後に分離や凝集物が見られる
(9)粘度
試料の粘度を、B型粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて25℃で測定し、その数値にあわせて以下のように分類した。
◎:10,000 cps以上30,000 cps以下
○1:3,000 cps以上10,000 cps未満
○2:30,000 cpsを超え50,000 cps以下
×1:3,000 cps未満
×2:50,000 cpsを超える
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
実施例1~37で製造した整髪料は、いずれも(1)~(9)の全評価項目において良好な結果となった。また、実施例26、27、29、31、32、35および36は、特に良好な結果となった。
【0041】
本発明の整髪料は、整髪する際に伸びがよく、毛髪を立ち上げて保持することができる高いセット力と再整髪力がありながら、充分な整髪時間を有する。さらに、べたつきが無く、洗い落ちも優れていることがわかる。また、白濁した外観と物性を一定期間維持する安定性も有する。
【0042】
比較例1で製造した整髪料は、沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)の配合量が少ないため、充分な整髪時間を得られず、再整髪力も低かった。さらに、べたつきも生じた。
【0043】
比較例2で製造した整髪料は、沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)の配合量が多いため、セット力が低く、毛髪を立ち上げることは難しかった。また、保存安定性も悪かった。
【0044】
比較例3で製造した整髪料は、沸点が210℃以上の揮発性炭化水素(A)ではない炭化水素を配合したため、充分な整髪時間を得られず、再整髪力も低かった。
比較例4で製造した整髪料は、固形油(B)の配合量が少ないため、毛髪を立ち上げて保持することができず、セット力が低かった。さらに、再整髪力も低かった。
比較例5で製造した整髪料は、固形油(B)の配合量が多いため、充分な整髪時間を得られず、再整髪力が低く、べたつきも生じた。また、保存安定性も悪かった。
【0045】
比較例6で製造した整髪料は、不揮発性液状油(C)の配合量が少ないため、べたつきが生じ、洗い落ちも悪かった。また、充分な整髪時間を得られず、再整髪力も低かった。
比較例7で製造した整髪料は、不揮発性液状油(C)の配合量が多いため、毛髪を立ち上げて保持することができず、セット力が低かった。また、保存安定性も悪かった。