(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】匍匐害虫捕獲器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/14 20060101AFI20220801BHJP
A01M 1/02 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A01M1/14 E
A01M1/02 A
(21)【出願番号】P 2018054071
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 良成
(72)【発明者】
【氏名】定森 耕平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智基
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-104086(JP,U)
【文献】特許第4392698(JP,B2)
【文献】実開昭51-030783(JP,U)
【文献】実開昭49-042070(JP,U)
【文献】特開2002-000155(JP,A)
【文献】実開昭58-021277(JP,U)
【文献】特開2006-136296(JP,A)
【文献】実開平01-024982(JP,U)
【文献】米国特許第04709503(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
匍匐害虫を導入する容器と、
上記容器の内部に設けられる粘着剤と、
上記容器の内部に収容され、匍匐害虫を誘引する誘引剤を含む誘引部材とを備え、
上記容器に導入した匍匐害虫を上記粘着剤によって捕獲する匍匐害虫捕獲器において、
上記容器には、匍匐害虫を該容器の内部に導入するための第1導入口と第2導入口とが形成され、
上記容器の内部には、上記第1導入口に連通して匍匐害虫を導入する第1導入空間と、該第1導入空間の上方に位置し、上記第2導入口に連通して匍匐害虫を導入する第2導入空間とが区画形成されるとともに、上記第1導入空間と上記第2導入空間とを連通させる連通部が設けられ、
上記第1導入空間と上記第2導入空間との一方の空間にのみ上記誘引部材が収容され
、
上記第1導入空間を形成する上壁部と上記第2導入空間を形成する底壁部とは共通化され、
上記第1導入空間を形成する上壁部に上記連通部が設けられ、
上記連通部は、上記第1導入空間を形成する上壁部に形成された孔部または切り欠き部であることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項2】
請求項
1に記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記第1導入空間を形成する上壁部は板材で構成されており、
上記連通部は、上記板材に形成された切り欠き部であることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記第1導入空間を形成する上壁部の内面には上記粘着剤が設けられ、
上記誘引部材は、上記第1導入空間を形成する上壁部の内面に対し、該内面に設けられた上記粘着剤により取り付けられることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項4】
請求項
3に記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記第1導入空間を形成する底壁部には、上記誘引部材を上記第1導入空間の外部から該第1導入空間に挿入するための挿入口が形成されていることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項5】
請求項
4に記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記挿入口を開閉する蓋部が、上記第1導入空間を形成する底壁部に一体成形されていることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項6】
請求項
1から
5のいずれか1つに記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記連通部は、上記第2導入空間の奥側に位置付けられていることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項7】
請求項
1から
6のいずれか1つに記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記誘引部材は、上記第1導入空間の奥側に位置付けられていることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばゴキブリ等の匍匐害虫を捕獲する匍匐害虫捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般家庭等ではゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器が使用されている。ゴキブリ捕獲器は例えば床面等に設置しておき、床面を歩行するゴキブリをゴキブリ捕獲器に形成されている導入口から内部に導入し、内部に設けられている粘着剤によりゴキブリを捕獲することができるように構成されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【0003】
特許文献1のゴキブリ捕獲器は、小箱状の容器を複数段積み重ねて構成されており、各容器の内部の底面は水平方向に延びており、その底面に粘着剤が設けられている。
【0004】
特許文献2のゴキブリ捕獲器は、底板部が水平方向に延びる一方、上板部は容器の奥側へ行くほど下に位置するように傾斜している。上板部の内面に粘着剤が設けられている。
【0005】
特許文献3のゴキブリ捕獲器は、底板部が水平方向に延びる一方、上板部はその長手方向一方側の端部から中央部に近づくほど下に位置するように傾斜し、また長手方向他方側の端部から中央部に近づくほど下に位置するように傾斜している。上板部の内面における長手方向一方側と他方側にそれぞれ粘着剤が設けられている。
【0006】
特許文献4のゴキブリ捕獲器は、底板部が水平方向に延びる一方、上板部は底板部と略平行に延びる部分と、底板部に対して傾斜する部分とを有している。上板部の内面に粘着剤が設けられている。
【0007】
特許文献5のゴキブリ捕獲器は、底板部が水平方向に延びており、この底板部と上板部との間に山型に形成された中間板を設けている。底板部の上面と、中間板の上面に粘着剤が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4392698号公報
【文献】特開2006-136296号公報
【文献】実開昭49-112768号公報
【文献】特許第2694338号公報
【文献】特開平6-327389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2、4のように、ゴキブリが導入される空間が1つの場合があり、この場合は、ゴキブリの捕獲可能な数を増やすためには特許文献4のように水平方向に長く形成する必要がある。しかしながら、そのようにすると、ゴキブリ捕獲器の設置に要する面積、即ち平面視における投影面積が広くなり、設置し易さが損なわれてしまう。
【0010】
また、特許文献3では、ゴキブリが導入される空間を2つ設けているので、ゴキブリの捕獲可能な数を増やすことはできると考えられるが、2つの空間が水平方向に並ぶように配置されているので、ゴキブリ捕獲器の設置に要する面積が広くなってしまう。
【0011】
そこで、例えば特許文献1、5のように、容器の内部において複数の空間を上下に区画形成することが考えられる。このようにすれば、ゴキブリの捕獲可能な数を増やしながら、ゴキブリ捕獲器の設置に要する面積を狭くすることが可能になる。
【0012】
ところが、特許文献1では小箱状の容器を複数段積み重ねて構成されているので、匍匐害虫の捕獲能力を高めるためには、捕獲害虫を誘引するための誘引剤を含む誘引部材を容器毎に設けなければならず、部材の点数が増えてコスト高を招く。また、特許文献5の場合も同様に空間毎に粘着部材を設けなければならないので、コスト高になる。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、匍匐害虫捕獲器の設置に要する面積が拡大しないようにしながら匍匐害虫の捕獲可能な数を増やし、しかも、匍匐害虫の捕獲能力が低減しないように誘引部材の数を少なくして低コスト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の発明は、匍匐害虫を導入する容器と、上記容器の内部に設けられる粘着剤と、上記容器の内部に収容され、匍匐害虫を誘引する誘引剤を含む誘引部材とを備え、上記容器に導入した匍匐害虫を上記粘着剤によって捕獲する匍匐害虫捕獲器において、上記容器には、匍匐害虫を該容器の内部に導入するための第1導入口と第2導入口とが形成され、上記容器の内部には、上記第1導入口に連通して匍匐害虫を導入する第1導入空間と、該第1導入空間の上方に位置し、上記第2導入口に連通して匍匐害虫を導入する第2導入空間とが区画形成されるとともに、上記第1導入空間と上記第2導入空間とを連通させる連通部が設けられ、上記第1導入空間と上記第2導入空間との一方の空間にのみ上記誘引部材が収容されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1導入口から第1導入空間に導入された匍匐害虫が第1導入空間で粘着剤によって捕獲され、また、第2導入口から第2導入空間に導入された匍匐害虫が第2導入空間で粘着剤によって捕獲されるので、匍匐害虫の捕獲可能な数を増やすことができる。この場合に、第1導入空間の上方に第2導入空間が形成されるので、容器の平面視における投影面積が小さくなる。
【0016】
また、誘引部材が第1導入空間と第2導入空間との一方の空間にのみ収容されているので、誘引部材の数が少なくて済む。この場合に、第1導入空間と第2導入空間とが連通しているので、誘引部材から放散される誘引成分が一方の空間から他方の空間に入り易くなり、匍匐害虫を両方の空間に誘引することができる。
【0017】
また、上記第1導入空間を形成する上壁部と上記第2導入空間を形成する底壁部とは共通化され、上記第1導入空間を形成する上壁部に上記連通部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第1導入空間を形成する上壁部と第2導入空間を形成する底壁部とを共通化することで、容器をコンパクト化することができる。そして、第1導入空間を形成する上壁部に連通部を設けることで、シンプルな連通構造とすることができる。
【0019】
また、上記連通部は、上記第1導入空間を形成する上壁部に形成された孔部または切り欠き部であることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、連通部を簡単に得ることができる。
【0021】
第2の発明は、上記第1導入空間を形成する上壁部は板材で構成されており、上記連通部は、上記板材に形成された切り欠き部であることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第1導入空間の上壁部を構成する板材に切り欠き部を形成するだけで連通部を得ることができる。
【0023】
第3の発明は、上記第1導入空間を形成する上壁部の内面には上記粘着剤が設けられ、上記誘引部材は、上記第1導入空間を形成する上壁部の内面に対し、該内面に設けられた上記粘着剤により取り付けられることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、第1導入空間を形成する上壁部に設けた粘着剤を利用して誘引部材を取り付けることができる。
【0025】
第4の発明は、上記第1導入空間を形成する底壁部には、上記誘引部材を上記第1導入空間の外部から該第1導入空間に挿入するための挿入口が形成されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、板材を折り曲げて容器を形作った後に、誘引部材を第1導入空間の底壁部の挿入口から第1導入空間の内部に挿入して第1導入空間を形成する上壁部に設けた粘着剤に付着させることができる。
【0027】
第5の発明は、上記挿入口を開閉する蓋部が、上記第1導入空間を形成する底壁部に一体成形されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、挿入口を不要時に蓋部によって閉じておくことができる。この蓋部を第1導入空間の底壁部に一体成形することで部材の点数の増加を抑制できる。
【0029】
第6の発明は、上記連通部は、上記第2導入空間の奥側に位置付けられていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、誘引成分が第2導入空間の奥側に確実に存在することになるので、匍匐害虫を第2導入空間の奥側まで誘き寄せることが可能になる。
【0031】
第7の発明は、上記誘引部材は、上記第1導入空間の奥側に位置付けられていることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、誘引成分が第1導入空間の奥側に確実に存在することになるので、匍匐害虫を第1導入空間の奥側まで誘き寄せることが可能になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、第1導入空間の上方に第2導入空間を形成し、第1導入空間と第2導入空間とを連通させ、一方の空間にのみ誘引部材を収容したので、匍匐害虫捕獲器の設置に要する面積が拡大しないようにしながら匍匐害虫の捕獲可能な数を増やすことができ、しかも、匍匐害虫の捕獲能力を低減させることなく、誘引部材の数を少なくして低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施形態に係る匍匐害虫捕獲器を前方から見た斜視図である。
【
図2】匍匐害虫捕獲器を後方から見た斜視図である。
【
図8】
図3におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図9】匍匐害虫捕獲器を底面側から見ており、誘引部材を取り付ける要領を説明する図である。
【
図10】匍匐害虫捕獲器を上下反転させた状態で誘引部材を取り付ける要領を説明する
図8相当図である。
【
図11】匍匐害虫捕獲器でゴキブリを捕獲した状態を示す
図8相当図である。
【
図12】匍匐害虫捕獲器の容器となる板材の展開図である。
【
図13】板材に粘着剤を設けた状態を示す斜視図である。
【
図14】内方側板部を折り曲げた状態を示す板材の斜視図である。
【
図15】区画壁部を折り曲げた状態を示す板材の斜視図である。
【
図16】後側壁部及び上壁部を折り曲げる途中の状態を示す板材の斜視図である。
【
図17】挿入片を差し込む要領を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る匍匐害虫捕獲器1を前方から見た斜視図であり、
図2は、匍匐害虫捕獲器1を後方から見た斜視図である。この匍匐害虫捕獲器1は、匍匐害虫を捕獲するための器具である。匍匐害虫捕獲器1で捕獲する対象となる匍匐害虫としては、例えばゴキブリを挙げることができるが、ゴキブリに限られるものではなく、床や地面を歩行する様々な害虫であってもよい。ゴキブリには、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ等が含まれるとともに、各々、オス、メス、卵鞘を持ったメス、幼虫等が含まれる。匍匐害虫捕獲器1は、匍匐害虫を導入する容器1Aと、
図8等に示す第1粘着剤2及び第2粘着剤3と、誘引部材4とを少なくとも備えており、該容器1Aに導入した匍匐害虫を捕獲することができるように構成されている。第1粘着剤2及び第2粘着剤3は、容器1Aの内部に設けられている。また、誘引部材4は容器1Aの内部に収容されている。誘引部材4によって容器1Aの内部に誘引された匍匐害虫を第1粘着剤2や第2粘着剤3によって捕獲することができる他、誘引されなくても容器1Aの内部に導入された匍匐害虫を第1粘着剤2や第2粘着剤3によって捕獲することができる。
【0037】
尚、この実施形態の説明では、各図に示すように匍匐害虫捕獲器1の前側及び後側を定義し、前側から見たときに右となる側を右側、左となる側を左側と定義するが、これは説明の便宜を図るためだけであり、実際の使用時の姿勢や運搬時の姿勢、製造時の姿勢を限定するものではない。例えば、匍匐害虫捕獲器1の前側が、使用者から向かって右や左、後に位置するように匍匐害虫捕獲器1を設置したり、匍匐害虫捕獲器1の前側が上や下に位置するように匍匐害虫捕獲器1を設置することもできる。
【0038】
また、匍匐害虫捕獲器1は、一般家庭や事務所、各種工場等の床面に載置して使用することができる他、地面に直接載置して使用することもできる。また、例えば、家具と壁の隙間や電化製品と壁の隙間等、匍匐害虫が歩行しそうな場所に設置することもできる。また、壁に沿わせて設置することや、家具や電化製品の上に設置して使用することもできる。
【0039】
(容器1Aの構成)
容器1Aは、例えばボール紙等の厚紙からなる1枚の板材100(
図12に示す)で構成されている。板材100は、厚紙や、厚紙に印刷層が設けられた部材以外にも例えば樹脂材等で構成されていてもよいが、組み立てた状態で長期間(短くても数週間から数ヶ月)に亘って形状を維持することができる形状維持性を備えた部材で構成するのが好ましい。
【0040】
容器1Aは、
図1、
図2、
図8等に示すように、底壁部10と、上壁部11と、右側壁部12と、左側壁部13と、後側壁部14と、区画壁部(区画部)15とを備えている。容器1Aの内部には、匍匐害虫を導入する第1導入空間R1及び第2導入空間R2が区画壁部15によって区画形成されている。第2導入空間R2は第1導入空間R1の上方に位置しており、2階建て構造となっている。第2導入空間R2の容積を第1導入空間R1の容積よりも大きくすることができる。尚、第2導入空間R2の容積と第1導入空間R1の容積とを同じにしてもよいし、第2導入空間R2の容積を第1導入空間R1の容積よりも小さくしてもよい。
【0041】
容器1Aの底壁部10は、下側に位置する第1導入空間R1を形成する底壁部となっており、また、容器1Aの上壁部11は、上側に位置する第2導入空間R2を形成する上壁部となっている。容器1Aの上壁部11の前端部は、容器1Aの底壁部10の前端部よりも後に位置している。容器1Aの上壁部11の後端部は、容器1Aの底壁部10の後端部よりも前に位置している。よって、容器1Aの上壁部11の前後方向の寸法は、容器1Aの底壁部10の前後方向の寸法よりも短くなっている。
【0042】
容器1Aの右側壁部12は、第1導入空間R1及び第2導入空間R2を形成する右側壁部となっている。容器1Aの左側壁部13は、第1導入空間R1及び第2導入空間R2を形成する左側壁部となっている。容器1Aの後側壁部14は、第1導入空間R1を形成する後側壁部となっている。区画壁部15は、容器1Aの内部において右側壁部12の内面から左側壁部13の内面まで左右方向に延びるとともに、容器1Aの前端部から後端部近傍まで延びている。また、この区画壁部15の前端部は、底壁部10の前端部と連なる一方、区画壁部15の後端部は、上壁部11の後端部近傍に位置している。区画壁部15は全体として容器1Aの前側へ向かって下降傾斜して延びている。
【0043】
この区画壁部15の下面よりも下側の空間が第1導入空間R1とされ、区画壁部15の上面よりも上側の空間が第2導入空間R2とされている。よって、第2導入空間R2を形成する底壁部は区画壁部15であり、また、第1導入空間R1を形成する上壁部は区画壁部15であり、第1導入空間R1を形成する上壁部と、第2導入空間R2を形成する底壁部とは共通の区画壁部15で構成されている。
【0044】
第1導入空間R1を形成する底壁部10は、設置面G(
図8にのみ仮想線で示す)と略平行、即ち、設置面Gに沿って延びている。設置面Gは、例えば床面等であり、
図8に示すような平坦面であってもよいし、凹凸がある面であってもよい。第2導入空間R2を形成する底壁部である区画壁部15は、上述したように前側へ向かって下降傾斜しているので設置面Gに対して傾斜することになる。つまり、第1導入空間R1を形成する底壁部10と、第2導入空間R2を形成する底壁部(区画壁部15)とは、水平面(例えば設置面G)に対する角度が互いに異なっている。
【0045】
また、第2導入空間R2を形成する上壁部11は、後側へ向かって下降傾斜するように形成することができるが、設置面Gに対して略平行に形成してもよいし、前側へ向かって下降傾斜するように形成してもよい。
【0046】
容器1Aの後側壁部14は、上端部が下端部よりも前に位置するように傾斜している。後側壁部14の下端部は、底壁部10の後端部に連なっている。また、後側壁部14の上端部は、上壁部11の後端部に連なっている。従って、底壁部10と、上壁部11とは後側壁部14によって連結されることになる。この後側壁部14の傾斜角度は、上壁部11の傾斜角度よりも急に設定されている。
【0047】
容器1Aの後側壁部14には、匍匐害虫を該容器1Aの内部に導入するための後側導入口(第1導入口)14aが形成されている。後側導入口14aは、容器1Aの左右方向に長い形状とされており、後側導入口14aの下縁部は、容器1Aの下端部に位置する一方、後側導入口14aの上縁部は、後側壁部14の上下方向中間部に位置している。また、後側導入口14aの左右方向の寸法は、容器1Aの左右方向の寸法よりも短くなるように設定されていて、後側導入口14aの右縁部は後側壁部14の右縁部から左側へ離れ、後側導入口14aの左縁部は後側壁部14の左縁部から右側へ離れている。このように後側導入口14aの左右方向の寸法を後側壁部14の左右方向の寸法よりも短くして、後側壁部14の左右両側に開口が形成されない領域を設けておくことで、後側壁部14によって底壁部10と上壁部11との連結が可能になる。後側壁部14によって底壁部10と上壁部11とを連結する必要が無い場合、即ち、複数の板材を組み合わせて容器1Aを構成する場合には、後側導入口14aの左右方向の寸法を後側壁部14の左右方向の寸法と同一にすることができる。また、図示しないが、後側壁部14に複数の後側導入口を形成してもよい。この場合、複数の後側導入口が後側壁部14の上下に並ぶように形成することや、左右に並ぶように形成することもできる。
【0048】
後側導入口14aは、
図5等に示すように左右に長い長方形とすることができるが、後側導入口14aの形状は特に限定されるものではない。例えば、後側導入口14aの左右両縁部を円弧状に湾曲させ、長円形の後側導入口14aとすることができる。後側導入口14aの左右両縁部を曲線で構成しておけば、後側導入口14aの左右両縁部近傍を起点とした板材100の破断、及び折れが抑制される。
【0049】
容器1Aの前側壁部の全体に、匍匐害虫を該容器1Aの内部に導入するための前側導入口(第2導入口)16が形成されている。容器1Aの上壁部11の前端部が底壁部10の前端部よりも後に位置しているので、前側導入口16は、斜め上方に向いて開口することになる。前側導入口16の上縁部は、容器1Aの上壁部11の前端部に位置しており、左右方向に直線状に延びている。また、前側導入口16の下縁部は、容器1Aの底壁部10の前端部に位置しており、左右方向に直線状に延びている。また、前側導入口16の右縁部及び左縁部は、それぞれ右側壁部12の前縁部及び左側壁部13の前縁部に位置しており、上下方向に直線状に延びている。従って、容器1Aを正面から見たとき、前側導入口16は左右方向に長い長方形となる。前側導入口16の上縁部は、後側導入口14aの上縁部よりも高いところに位置付けられている。
【0050】
尚、前側導入口16の形状は長方形に限られるものではなく、例えば、長円形、台形等であってもよい。また、この実施形態では、容器1Aの前壁部の全体に前側導入口16を形成しているので、容器1Aの前側壁部を図示していないが、前側壁部の一部にのみ前側導入口16を形成してもよい。図示しないが、前側壁部に複数の前側導入口を形成してもよい。この場合、複数の前側導入口が前側壁部の上下に並ぶように形成することや、左右に並ぶように形成することもできる。
【0051】
第1導入空間R1の後端部に後側導入口14aが連通している。第1導入空間R1における匍匐害虫が導入される側は容器1Aの後側である。第1導入空間R1の手前側は容器1Aの後側であり、第1導入空間R1の奥側は容器1Aの前側である。第1導入空間R1を形成する底壁部10が設置面Gに沿う一方、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部15)が前側へ向かって下降傾斜しているので、第1導入空間R1の上下方向の寸法H1(
図8に示す)は、後側導入口14aから遠ざかるにつれて短くなるように設定される。つまり、第1導入空間R1の断面は容器1Aの前側に頂点を有する三角形に近い形状になる。
【0052】
一方、第2導入空間R2の前端部に前側導入口16が連通している。第2導入空間R2における匍匐害虫が導入される側は容器1Aの前側であり、第1導入空間R1における匍匐害虫が導入される側とは反対側になる。第2導入空間R2の手前側は容器1Aの前側であり、第2導入空間R2の奥側は容器1Aの後側である。第2導入空間R2を形成する底壁部(区画壁部15)が前側へ向けて下降傾斜する一方、第2導入空間R2を形成する上壁部11が後側へ向かって下降傾斜しているので、第2導入空間R2の上下方向の寸法H2(
図8に示す)は、前側導入口16から遠ざかるにつれて短くなるように設定される。つまり、第2導入空間R2の断面は容器1Aの後側に頂点を有する三角形に近い形状になる。
【0053】
図8に示すように、第1導入空間R1を形成する底壁部10が設置面Gに沿う方向に延び、区画壁部15が前側へ向けて下降傾斜し、第2導入空間R2を形成する上壁部11が後側へ向かって下降傾斜しているので、断面を見ると、底壁部10、区画壁部15及び上壁部11がZ字状をなすことになる。このように、断面三角形状の第1および第2導入空間R1、R2を、前後互い違いで上下に重ねて断面Z字状としているので、第1および第2導入空間R1、R2をスペース効率良く配置することができる。これにより、容器1Aをコンパクトに構成できる。
【0054】
容器1Aの前端部には、返し部17が設けられている。返し部17は、上壁部11の前端部に連なるとともに、前側導入口16の上縁部から後側へ向かって斜め下方へ延びる上側返し部17aと、右壁部12の前端部に連なるとともに、前側導入口16の右縁部から後側へ向かって延びる右側返し部17bと、左壁部13の前端部に連なるとともに、前側導入口16の左縁部から後側へ向かって延びる左側返し部17cとで構成されている。返し部17は必須のものではないが、例えば、容器1Aの上に登った匍匐害虫が、前側導入口16に対して上方から侵入しようとした際に脚が粘着剤3に触れることを阻止できるので、警戒心を抱かせることを抑制する効果を期待できる。また、第2導入空間R2内に異物が侵入することを抑制する効果や、ユーザーの指が誤って粘着剤3に触れてしまうことを抑制する効果も期待できる。また、図示しないが、返し部17の代わり、または返し部17と共に容器1Aの前端部に庇部を設けてもよい。
【0055】
区画壁部15には、第1導入空間R1と第2導入空間R2とを連通させる連通部を形成するための切り欠き部15aが設けられている。切り欠き部15aは、区画壁部15の後部における左右方向中間部を切り欠くことによって形成されており、この切り欠き部15aの形成によって第1導入空間R1の手前側上部と、第2導入空間R2の奥側下部とが切り欠き部15aの内部を介して連通する。区画壁部15は、第1導入空間R1を形成する上壁部であるので、第1導入空間R1を形成する上壁部に連通部が設けられることになり、また、区画壁部15は、第2導入空間R2を形成する底壁部であるので、第2導入空間R2を形成する底壁部に連通部が設けられることもなる。図示しないが、切り欠き部は区画壁部15に複数設けられていてもよい。切り欠き部は、区画壁部15の右縁部や左縁部に設けられていてもよい。
【0056】
第1粘着剤2は、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部15)の下面(第1導入空間R1の内面)に配置される。また、第2粘着剤3は、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面(第2導入空間R2の内面)に配置される。第1導入空間R1の上下方向の寸法H1及び第2導入空間R2の上下方向の寸法H2は、それぞれの空間R1、R2に匍匐害虫が導入されたときに、匍匐害虫の背が第1粘着剤2及び第2粘着剤3に接触するように設定することができ、例えば、第1導入空間R1及び第2導入空間R2の前後方向中央部におけるH1、H2は、5mm~20mm程度にすることができる。H1、H2は、対象とする匍匐害虫の種類に応じた寸法にすることができる。
【0057】
以上のように、第1および第2導入空間R1、R2は、奥に進むにつれて上下方向に狭くなるように形成されるとともに、それぞれの導入空間R1、R2の上壁部の下面に粘着剤2、3が設けられている。このように構成されているので、匍匐害虫は、後側導入口14aまたは前側導入口16の近傍では粘着剤の存在に気付かず、警戒することなく第1または第2導入空間R1、R2の内部へと侵入する。そして、無警戒のまま第1または第2導入空間R1、R2の奥側に進んでいくと、羽根または背部が粘着剤に付着して捕獲されるので、逃げ出すことができなくなる。
【0058】
第1粘着剤2及び第2粘着剤3は板材100に塗布されている。すなわち、
図13及び
図14に示すように、板材100の展開状態で、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部)の下面と、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面とが該板材100の同一面上に位置している。そして、区画壁部15の下面と、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面とに、それぞれ第1粘着剤2及び第2粘着剤3(
図12及び
図13に斜線で示す)が設けられている。
【0059】
第1粘着剤2及び第2粘着剤3を板材100の同一面に設けたことで、例えば図示しない塗工機を用いて粘着剤を塗布する際には、一工程で第1粘着剤2及び第2粘着剤3の両方の塗布を完了させることができる。尚、第1粘着剤2及び第2粘着剤3を板材100の別の面に設けるようにしてもよい。
【0060】
また、第1粘着剤2を区画壁部15に設ける際には、第1粘着剤2の周縁部が、区画壁部15の前縁部、後縁部、左右両縁部から離れるように、塗布範囲が設定されている。また、第2粘着剤3を上壁部11に設ける際には、第2粘着剤3の周縁部が、上壁部11の前縁部、後縁部、左右両縁部から離れるように、塗布範囲が設定されている。これにより、
図8等に示すように、板材100を折り曲げて容器1Aを形成した際に、第1粘着剤2が区画壁部15以外の部分に粘着しなくなるとともに、第2粘着剤3が上壁部11以外の部分に粘着しなくなる。
【0061】
誘引部材4は、誘引剤容器4aと、該誘引剤容器4aに収容される誘引剤4bとを備えている。誘引剤4bは、従来から周知の匍匐害虫を誘引するための薬剤等を挙げることができ、例えば液体であってもよいし、粉状または粒状の薬剤であってもよいし、餌等であってもよい。液体の場合は、誘引剤容器4aに収容された吸収材に誘引剤4bを染み込ませておけばよい。誘引剤容器4aは、例えば硬質樹脂製とすることができ、この実施形態では、誘引成分が揮散するように下方に向かって開放されている。誘引剤4bが粒剤の場合、誘引剤容器4aの代わりに、通気性を有する袋等を利用することができる。また、粒状や粉状の誘引剤を誘引部材とすることもできる。
【0062】
誘引部材4は、第1導入空間R1に収容されていて、第2導入空間R2には収容されていない。より具体的には、誘引部材4は、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部15)の内面(下面)に対し、該内面に設けられた第1粘着剤2により取り付けられる。誘引部材4は、第1導入空間R1の奥側に位置付けられている。この構成により、誘因部材4から放散された誘引成分は、第1導入空間R1の奥側から手前側に向けて流れる。当該誘因成分の一部は、後側導入口14aを介して外部に放散されることにより、匍匐害虫を第1導入空間R1の内部へと誘引する。
【0063】
一方、区画壁部15に切り欠き部15aが設けられているので、上記誘引成分の一部は、切り欠き部15aの内部を通って第2導入空間R2の奥側に流入することになる。このようにして流入した誘因成分は、第2導入空間R2の奥側から手前側に向けて流れ、前側導入口16を介して外部に放散されることにより、匍匐害虫を第2導入空間R2の内部へと誘引する。このように、一箇所の誘引部材4により、第1および第2導入空間R1、R2の内部へと匍匐害虫を誘引することができる。
【0064】
尚、図示しないが、誘引部材4は、区画壁部15の上面にのみ取り付け、第2導入空間R2に収容して第1導入空間R1には収容しなくてもよい。つまり、第1導入空間R1と第2導入空間R2との一方の空間にのみ誘引部材4が収容されていればよい。
【0065】
誘引部材4は、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部15)の内面に対し、該内面に設けられた第1粘着剤2により取り付けられる。誘引部材4は、第1導入空間R1の奥側に位置付けられている。区画壁部15に切り欠き部15aが設けられているので、誘引部材4の誘引成分は、切り欠き部15aの内部を通って第2導入空間R2の奥側に流入することになる。
【0066】
図9及び
図10に示すように、第1導入空間R1を形成する底壁部10には、誘引部材4を第1導入空間R1の外部から該第1導入空間R1に挿入するための挿入口10aが形成されている。尚、
図9における斜線部は、挿入口10aを通して見える第1粘着剤2である。
【0067】
挿入口10aは、誘引部材4の外形状よりも大きく形成されている。底壁部10には、挿入口10aを開閉する蓋部10bが一体成形されている。蓋部10bは、挿入口10aと一致する形状であり、その前縁部10cが底壁部10と連なっている。蓋部10bを開けて容器1Aの内部を覗くと、第1粘着剤2を直接見ることができ、誘引剤容器4aを第1粘着剤2に容易に貼り付けることができる。
【0068】
また、
図12や
図13に示すように、区画壁部15の右側には、右内方側板部15bが設けられており、この右内方側板部15bは容器1Aの右側壁部12の内面に沿うように配置される。区画壁部15の左側には、左内方側板部15cが設けられており、この左内方側板部15cは容器1Aの左側壁部13の内面に沿うように配置される。
【0069】
底壁部10の右側には、右外方側板部20が設けられている。右外方側板部20の基端側は、容器1Aの右側壁部12の外面に沿うように配置される。右外方側板部20の先端側は、右側壁部12に形成された切れ込み部12aに差し込まれるようになっている。また、右側壁部12には、底壁部10の内面に沿って延びるように折り曲げられる折り曲げ部12bが設けられている。
【0070】
底壁部10の左側には、左外方側板部21が設けられている。左外方側板部21の基端側は、容器1Aの左側壁部13の外面に沿うように配置される。左外方側板部21の先端側は、左側壁部13に形成された切れ込み部13aに差し込まれるようになっている。また、左側壁部13には、底壁部10の内面に沿って延びるように折り曲げられる折り曲げ部13bが設けられている。
【0071】
(板材100の構成)
図12や
図13に示すように、板材100は、底壁部10に後側壁部14を介して上壁部11が連なるとともに、底壁部10に区画壁部15が連なって形成されている。さらに、上壁部11には右側壁部12及び左側壁部13が連なるとともに、返し部17も連なっている。また、底壁部10には右外方側板部20及び左外方側板部21が連なっている。つまり、容器1Aを構成する各部によって1枚の板材100が構成されている。尚、切り欠き部15は板材100の縁部に位置している。
【0072】
そして、区画壁部15と第2導入空間R2を形成する上壁部11とに、それぞれ第1粘着剤2及び第2粘着剤3が設けられている。誘引部材4は板材100には設けられていない。
【0073】
第1粘着剤2及び第2粘着剤3は板材100に塗布されている。すなわち、
図13及び
図14に示すように、板材100の展開状態で、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部)の下面と、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面とが該板材100の同一面上に位置している。そして、区画壁部15の下面と、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面とに、それぞれ第1粘着剤2及び第2粘着剤3(
図12及び
図13に斜線で示す)が設けられている。
【0074】
第1粘着剤2及び第2粘着剤3を板材100の同一面に設けたことで、例えば図示しない塗工機を用いて粘着剤を塗布する際には、一工程で第1粘着剤2及び第2粘着剤3の両方の塗布を完了させることができる。尚、第1粘着剤2及び第2粘着剤3を板材100の別の面に設けるようにしてもよい。
【0075】
なお、第1粘着剤2は、区画壁部15の下面の全面に塗布する必要はなく、その一部に塗布することもできる。同様に、第2粘着剤3は、上壁部11の下面の全面に塗布する必要はなく、その一部に塗布することもできる。例えば
図13では、第1粘着剤2の周縁部が、区画壁部15の前縁部、後縁部、左右両縁部から離れるように、塗布範囲が設定されている。同様に、第2粘着剤3の周縁部が、上壁部11の前縁部、後縁部、左右両縁部から離れるように、塗布範囲が設定されている。これにより、
図8等に示すように、板材100を折り曲げて容器1Aを形成した際に、第1粘着剤2が区画壁部15以外の部分に粘着しなくなるとともに、第2粘着剤3が上壁部11以外の部分に粘着しなくなる。
【0076】
(匍匐害虫捕獲器1の製造方法)
次に、上記のように構成された匍匐害虫捕獲器1の製造方法について説明する。まず、
図12に示すような板材100を得る。その後、
図13に示すように、粘着剤を塗布する塗工機(図示せず)を使用し、区画壁部15と上壁部11とに、それぞれ第1粘着剤2及び第2粘着剤3を塗布する。第1粘着剤2及び第2粘着剤3の塗布後、保護用の剥離紙を貼り付けておく。剥離紙は、匍匐害虫捕獲器1の使用開始時に剥離すればよい。第1粘着剤2及び第2粘着剤3を塗布する際には、区画壁部15と上壁部11との塗布面が板材100の同一面であるため、一工程で行うことができ、生産性を高めることができる。また、剥離紙を貼り付ける際にも同様に一工程で行うことができる。
【0077】
その後、
図14に示すように、区画壁部15の右内方側板部15b及び左内方側板部15cを折り曲げる。右内方側板部15b及び左内方側板部15cを折り曲げた後、区画壁部15が底壁部10の上方に位置するように折り曲げる。
【0078】
次いで、返し部17を折り曲げるとともに、右側壁部12及び左側壁部13を折り曲げ、さらに折り曲げ部12b、13bも折り曲げる。そして、上壁部11が区画壁部15の上方に位置するように折り曲げる。
【0079】
しかる後、
図17に示すように右外方側板部20及び左外方側板部21を切れ込み部12a、13aにそれぞれ挿入することで、右外方側板部20及び左外方側板部21を右側壁部12及び左側壁部13に係止させる。
【0080】
以上のようにして容器1Aが得られる。その後、
図9及び
図10に示すように、蓋部10bを、前縁部10cを折り曲げ起点として容器1Aの外側へ折り曲げて挿入口10aを開放する。挿入口10aを開放した状態にして誘引部材4を挿入口10aから第1導入空間R1に挿入して第2粘着剤2に貼り付ける。誘引部材4の貼り付け後に蓋部10bを閉じる。蓋部10bは、底壁部10に対して爪係合等の固定構造によって固定するようにしてもよい。
【0081】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、
図11に示すように、後側導入口14aから第1導入空間R1に導入された匍匐害虫が例えばゴキブリである場合には、第1導入空間R1の上部に第1粘着剤2が配置されているので、羽根または背部が第1粘着剤2に付着することになり、第1導入空間2から逃げ出しにくくなる。また、前側導入口16から第2導入空間R2に例えばゴキブリが導入されると、第2導入空間R2の上部に第2粘着剤3が配置されているので、羽根または背部が第2粘着剤3に付着することになり、第2導入空間R2から逃げ出しにくくなる。尚、
図11では誘引部材4を省略している。
【0082】
第1導入空間R1及び第2導入空間R2は容器1Aの内部において上下に形成されているので、容器1Aの平面視における投影面積を小さくしながら、その内部において広い粘着面積を確保することが可能になる。
【0083】
尚、捕獲対象となる匍匐害虫は、ゴキブリに限られるものではなく、床面等を歩行する害虫を全て対象とすることができる。羽根のない害虫であっても、背部が粘着剤2、3に付着することで粘着面積が広くなって逃げ出しにくくなるので、羽根の有無は問わない。
【0084】
また、後側導入口14aから第1導入空間R1に導入された匍匐害虫は、第1導入空間R1を形成する壁部の内面に設けられた第1粘着剤2によって捕獲され、また、前側導入口16から第2導入空間R2に導入された匍匐害虫は、第2導入空間R2を形成する壁部の内面に設けられた第2粘着剤3によって捕獲されるので、匍匐害虫の捕獲可能な数を増やすことができる。
【0085】
また、誘引部材4が第1導入空間R1にのみ収容されているので、誘引部材4の数が少なくて済む。この場合に、第1導入空間R1と第2導入空間R2とが連通しているので、誘引部材4から放散される誘引成分が第1導入空間R1から第2導入空間R2に入り易くなり、匍匐害虫を両方の空間R1、R2に誘引することができる。
【0086】
また、第1導入空間R1を形成する上壁部と第2導入空間R2を形成する底壁部とを共通化したので、容器1Aをコンパクト化することができる。そして、第1導入空間R1を形成する上壁部に連通部を設けることで、シンプルな連通構造とすることができる。
【0087】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0088】
図18に示す変形例のように、区画壁部15には切り欠き部の代わりに該区画壁部15を貫通する孔部15dを形成してもよい。孔部15dの数は1つに限られるものではなく、複数であってもよい。また、孔部15dはスリット形状であってもよい。
【0089】
また、右側壁部12や左側壁部13に、匍匐害虫を導入するための導入口を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明に係る匍匐害虫捕獲器は、例えば、ゴキブリ等の匍匐害虫を捕獲する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 匍匐害虫捕獲器
1A 容器
2 第1粘着剤
3 第2粘着剤
4 誘引部材
10 底壁部
10a 挿入口
10b 蓋部
11 上壁部
14a 後側導入口(第1導入口)
15 区画壁部(区画部)
15a 切り欠き部(連通部)
15d 孔部(連通部)
16 前側導入口(第2導入口)
100 板材
G 設置面
R1 第1導入空間
R2 第2導入空間