(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】テープロール積み重ね体の形成方法
(51)【国際特許分類】
B65H 19/10 20060101AFI20220801BHJP
B65H 39/16 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B65H19/10 Z
B65H39/16
(21)【出願番号】P 2018106269
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】500143243
【氏名又は名称】株式会社ホンダ
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】本多 脩身
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-083519(JP,A)
【文献】実開平05-030040(JP,U)
【文献】特開昭62-185659(JP,A)
【文献】特開昭53-086739(JP,A)
【文献】実公昭41-020282(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/00
B65H 20/00
B65H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻き回されたテープロールが軸方向を上下にして多段に積み重ねられてなるテープロール積み重ね体
の形成方法において、
前記テープロール積み重ね体は、
全ての段において、内周側先行送り出しタイプでは、下段側に当たるテープロールの内周側テープ端が継ぎ相手の上段側に当たるテープロールとの間から外方に引き出され、外周側先行送り出しタイプでは、上段側に当たるテープロールの内周側テープ端が継ぎ相手の下段側に当たるテープロールとの間から外方に引き出されており、
その引き出された内周側テープ端に両面テープの一面が貼着され、前記両面テープの他面は剥離紙で覆われた状態になっており、
前記剥離紙を剥がして前記両面テープの他面が前記継ぎ相手の外周側テープ端に貼着されて継がれる
継ぎ構造を備え、
軸方向に分割されたスリーブ状の2つの芯にテープを巻き付けてテープロールにした後に、一方の芯を抜き取り、他方の残された芯が上側にくるように積み重ね、前記他方の芯を抜き取った後に、内周側先行送り出しタイプでは、内周側のテープ端を上側から外方に向かって引き出し、外周側先行送り出しタイプでは、内周側のテープ端を下側から外方に向かって引き出して、前記テープロールの積み重ね作業を完了し、
上記した積み重ね作業の繰り返しにより、テープロールが多段に積み重ねられてなるテープロール積み重ね体を形成することを特徴とする形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載した
テープロール積み重ね体の形成方法において、
2つの芯を軸方向に間隔をあけた状態で配置し、前記間隔を跨いで2つの芯にテープを巻き付けることを特徴とする形成方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載したテープロール積み重ね体の形成方法において、
他方の芯の高さ寸法は、一方の芯の高さ寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のテープロールのテープを継いで連続的使用を可能とするテープの継ぎ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているケーブルは複数の電線の周囲に紙テープが巻き付けられ、その紙テープの外周が外皮によって被覆されたものとなっている。このようなケーブルを製造する際には、紙テープがテープロールから送り出されて、複数の電線の周囲に螺旋状に巻き付けられていくようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のケーブル製造工程においてテープロールの巻きが無くなると、新しいテープロールに交換する必要があり、テープロールの交換の間はケーブルの製造を中断せざるを得ず、製造効率が悪くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、テープロールをいちいち交換することなく、新しいテープロールに自動的に順次移行することを可能とするテープの継ぎ構造と、この継ぎ構造を備えたテープロール積み重ね体の形成方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、
ロール状に巻き回されたテープロールが軸方向を上下にして多段に積み重ねられてなるテープロール積み重ね体の形成方法において、前記テープロール積み重ね体は、全ての段において、内周側先行送り出しタイプでは、下段側に当たるテープロールの内周側テープ端が継ぎ相手の上段側に当たるテープロールとの間から外方に引き出され、外周側先行送り出しタイプでは、上段側に当たるテープロールの内周側テープ端が継ぎ相手の下段側に当たるテープロールとの間から外方に引き出されており、その引き出された内周側テープ端に両面テープの一面が貼着され、前記両面テープの他面は剥離紙で覆われた状態になっており、前記剥離紙を剥がして前記両面テープの他面が前記継ぎ相手の外周側テープ端に貼着されて継がれる継ぎ構造を備え、軸方向に分割されたスリーブ状の2つの芯にテープを巻き付けてテープロールにした後に、一方の芯を抜き取り、他方の残された芯が上側にくるように積み重ね、前記他方の芯を抜き取った後に、内周側先行送り出しタイプでは、内周側のテープ端を上側から外方に向かって引き出し、外周側先行送り出しタイプでは、内周側のテープ端を下側から外方に向かって引き出して、前記テープロールの積み重ね作業を完了し、上記した積み重ね作業の繰り返しにより、テープロールが多段に積み重ねられてなるテープロール積み重ね体を形成することを特徴とする形成方法である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載したテープロール積み重ね体の形成方法において、2つの芯を軸方向に間隔をあけた状態で配置し、前記間隔を跨いで2つの芯にテープを巻き付けることを特徴とする形成方法である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載したテープロール積み重ね体の形成方法において、他方の芯の高さ寸法は、一方の芯の高さ寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のテープの継ぎ構造は、軸芯周りにロール状に巻き回されたテープロールが軸芯方向を上下にして多段に積み重ねられてなるテープロール積み重ね体に適用されており、上段のテープロールからのテープの送り出しにより巻きが無くなると、その直ぐ下段のテープロールからのテープの送り出しが自動的に開始される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係るテープロールの形成方法の説明図である。
【
図2】
図1で形成したテープロールの斜視図である。
【
図4】
図2のテープロールの積み重ね作業の説明図である。
【
図5】
図4の作業により形成されたテープロール積み重ね体の側面図である。
【
図6】
図5の引き出されたテープ端の加工作業の説明図である。
【
図7】
図6で加工されたテープロール積み重ね体の現場での継ぎ作業の説明図である。
【
図8】
図7のテープロール積み重ね体からのテープの送り出しによるテープロール間を跨ぐテープの送り出しのイメージ図である。
【
図9】
図6のテープロール積み重ね体を複数並べたときの継ぎ作業の説明図である。
【
図10】
図4とは別のタイプの積み重ね作業の説明図である。
【
図11】
図10の作業により形成されたテープロール積み重ね体からのテープの送り出しによるテープロール間を跨ぐテープの送り出しのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係るテープロール積み重ね体の形成方法を、図面にしたがって説明する。
図1に示すように、巻き取り装置の回転軸1にはスリーブ状の2つの芯、すなわち紙管3、5が間隔Cをあけて外嵌され固定されている。紙管3、5の外径は同じになっているが、紙管3の高さ寸法T1は、紙管5の高さ寸法T2の1/2に設定されている。また、その間の間隔Cを含んで、(T1+C+T2)の合計長さ寸法は、巻き取る紙テープ7の幅寸法Wとほぼ同じに設定されている。
【0014】
原反(図示省略)を一定の幅寸法にスリットした上で、巻き取り装置にかけると、回転軸1が軸周りに回転し、間隔Cを跨いで、保護紙(図示省略)を介して、紙管3、5に、紙テープ7が巻き付けられてテープロール9が作製される。
図2、
図3は、このテープロール9を示しており、紙テープ7の外周側のテープ端11は、接着剤(図示省略)により仮留めされている。内周側のテープ端13は紙管3、5に押圧された状態になっており、内周側のテープ端13の大部分が隠れている。
紙テープ7は紙管3、5に比較的柔らかく巻き付けられており、テープロール9から紙管3、5を手作業で抜き取ることができる。
【0015】
このテープロール9を多段に積み重ねたテープロール積み重ね体15を出荷先の装置にセットされる専用のパレット17(
図5参照)の上に形成する。パレット17上に形成したのは、搬送の容易化のためである。
説明の便宜のために、既に下段が積まれた状態でその直ぐ上段に積み重ねる場合について、
図4にしたがってその積み重ね作業を説明する。
【0016】
先ず、テープロール9(U)の紙管5を抜き取り、既に先行して積まれた下段のテープロール9(L)の上に、紙管3が上にくるように積み重ねる。下段のテープロール9(L)の内周側テープ端13(L)は上側から外方に既に引き出されており、上記のようにテープロール9(U)が積み重ねられることで、その内周側テープ端13(L)が下段のテープロール9(L)と上段のテープロール9(U)との間から外方に引き出された状態となる。
【0017】
なお、上段のテープロール9(U)については、紙管5と紙管3との間には間隔Cがあいており、紙管5は縁部が表出しているのでその縁部を掴んで引っ張ることで、容易に引き抜くことができる。また、紙管5を抜き取っても、未だ紙管3が存在しているので、テープロール9(U)を持ち上げてテープロール9(L)のところまで運んでもロール形状は安定的に維持される。
【0018】
その後、テープロール9(U)の紙管3を紙管5と同様にして上方に抜き取る。そして、保護紙(図示省略)を取り除いた後、テープロール9(U)の露出した内周側テープ端13(U)を摘んで上側から外方に向かって、下段のテープロール9(L)の内周側テープ端13(L)と同じように引き出す。
【0019】
次は、この積み重ねたテープロール9(U)を下段とし、その直ぐ上段に後続のテープロール9を上記と同様にして積み重ねていく。
この作業の繰り返しにより、テープロール9、9、……が多段に積み重ねられていき、
図5に示すテープロール積み重ね体15になる。
【0020】
このテープロール積み重ね体15を構成するテープロール9、9、……は芯無しで、ロール状に巻き回されている。また、テープロール9、9、……は、軸方向を上下にして同軸状に積み重ねられており、それぞれの内周側テープ端13、13、……は外方に引き出されている。
【0021】
この内周側テープ端13は、巻き取り装置にかけて所定の回数まで巻き取られた後にカッターによる切断により形成されたものであるが、これに加工を施す。
図6に示すように、内周側テープ端13は、紙テープ7の幅方向に沿って切断されているが、これを貼着用内周側テープ端19にする。
両面テープ21の一方の粘着面を内周側テープ端13の近傍で斜めに貼着する。そして、この両面テープ21の縁に沿って、内周側テープ端13を切断して揃えれば、貼着用内周側テープ端19になる。
この貼着用内周側テープ端19は内周側テープ端13より長くなっており、その部分だけ継ぎ構造を強固にすることができる。
なお、両面テープ21の他方の粘着面は剥離紙23に未だ覆われた状態になっている。
【0022】
一方、継ぎ相手の外周側テープ端11は、接着剤(図示省略)により仮留めされているが、これを剥がして遊端状態にし、貼着用内周側テープ端19に貼着された両面テープ21に端縁部分が重なり合うように斜めに切断されて、外周側テープ端11’にする。
上記のように、加工を施した上で出荷する。パレット17に載せられているので、このまま積み重ね形態を崩さずに、メーカー、例えば上記のようなケーブルを製造する電線メーカーに搬送することができる。
【0023】
メーカーでは、製造装置にかける前に、現場で、テープロール積み重ね体15の継ぎ作業を行う。
継ぎ作業は、
図7に示すように、上下で隣り合うテープロール9(U)、9(L)の間で行う。具体的には、テープロール9(L)側については、外方に引き出された貼着用内周側テープ端19(L)の両面テープ21から剥離紙23を剥がして粘着面を露出させる。そして、その粘着面にテープロール9(U)の外周側テープ端11’(U)を貼着させて継がせる。
テープロール9、9、……は多段に積み重ねられており、上下で隣り合うテープロール9、9の間で上記の継ぎ作業を行う。最上段と最下段のテープロール9、9以外は、1本のテープロール9に着目すると、上段のテープロール9との関係では下段になり、下段のテープロール9との関係では上段になる。
メーカー側で継ぎ作業を行うことで、現場での状況に応じてテープロール9、9……を必要な分だけ容易に継ぐことができる。
【0024】
上記の継ぎ作業により、多段のテープロール9、9、……で下段のテープロール9(L)の紙テープ7を、継ぎ部25を介して、上段のテープロール9(U)の紙テープ7に継がせて、連続した長尺の紙テープ7にする。
図8は、継ぎ作業が完了したテープロール積み重ね体15を、ケーブル製造装置にかけて、紙テープ7が送り出されていく状態のイメージ図であり、上段のテープロール9(U)の巻きが内周側から無くなっていき、外周側に至ると継ぎ部25を越えて、下段のテープロール9(L)から紙テープ7が送り出されていく。
このようにして、多段のテープロール9、9、……から紙テープ7が連続的に送り出される。
上記のタイプは、テープロール9について常に内周側から先行して送り出されており、これを「内周側先行送り出しタイプ」と表現する。
【0025】
図9は、テープロール積み重ね体15、15が二つ並列されており、一方のテープロール積み重ね体15の最下段のテープロール9の外周側テープ端11’と、他方のテープロール積み重ね体15の最上段のテープロール9の貼着用内周側テープ端19との間で継ぎ作業が行われている。
複数のパレット17を用意し、そこにそれぞれテープロール積み重ね体15を載せ、上記したように継がせておくことで、巻きの無くなったパレット17を取り外し、紙テープ7が連なったテープロール積み重ね体15が載ったパレット17を新たにセットすることで、長時間にわたる送り出し作業を実施する際にも、その中断時間をカセットの交換時間だけにすることができる。
【0026】
上記では、「内周側先行送り出しタイプ」が記載されているが、これとは対照的に、継ぎ構造を「外周側先行送り出しタイプ」に適用することも可能である。
この「外周側先行送り出しタイプ」でも、
図4の「内周側先行送り出しタイプ」と同様にテープロール9を積み重ねており、
図10に示すように、テープロール9(U)の片側を少し持ち上げて隙間Gを作り出すと共に、露出した内周側テープ端13(U)を摘んで引き出し、その隙間Gから外方に向かって引き出す。そして、テープロール9(U)を下ろして、テープロール9(L)に重ね合せれば、このテープロール9(U)についての作業は完了する。
【0027】
次は、この積み重ねたテープロール9(U)を下段とし、その直ぐ上段に後続のテープロール9を上記と同様にして積み重ねていく。この作業の繰り返しにより、テープロール9、9、……が多段に積み重ねられていく。
図11に示すように、このタイプでは、上段に当たるテープロール9の貼着用内周側テープ端19が下段に当たるテープロール9の外周側テープ端11’に継がれて継ぎ部25になっており、上段のテープロール9(U)の巻きが外周側から無くなっていき、内周側に至ると継ぎ部25を超えて、下段のテープロール9(L)から紙テープ7が送り出される。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1…回転軸 3…紙管 5…紙管 7…紙テープ 9…テープロール
11、11’…外周側テープ端 13…内周側テープ端
15…テープロール積み重ね体(内周側先行送り出しタイプ) 17…パレット
19…貼着用内周側テープ端 21…両面テープ 23…剥離紙 25…継ぎ部
C…間隔 G…隙間