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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】防水改修示唆システム
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/00 20060101AFI20220801BHJP
   E04D 5/10 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
E04D5/00 Z
E04D5/10 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018119528
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020002532
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 智史
(72)【発明者】
【氏名】丸子 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山根 慶典
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073848(JP,A)
【文献】特開2002-257810(JP,A)
【文献】特開2010-168762(JP,A)
【文献】特開2011-149259(JP,A)
【文献】特開2002-356981(JP,A)
【文献】特開2003-090790(JP,A)
【文献】実開昭63-125532(JP,U)
【文献】特開2003-149227(JP,A)
【文献】特開2014-125873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00
E04D 5/10
E04F 15/12
G01N 31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物が有する防水層の改修を示唆する防水改修示唆システムにおいて、
縁部が水密状に接合された樹脂製シートと、
前記樹脂製シートの裏側に設けられ、水との接触によって変化する変化部とを備え、
前記樹脂製シートに含まれる紫外線吸収剤の量は、前記防水層を構成する材料に含まれる紫外線吸収剤の量よりも少なく設定され、
前記変化部の変化を前記樹脂製シートの外部に現すように構成されていることを特徴とする防水改修示唆システム。
【請求項2】
請求項1に記載の防水改修示唆システムにおいて、
前記変化部は、水膨潤性樹脂を含むことを特徴とする防水改修示唆システム。
【請求項3】
請求項1に記載の防水改修示唆システムにおいて、
前記変化部は、吸水性材料を含むことを特徴とする防水改修示唆システム。
【請求項4】
請求項1に記載の防水改修示唆システムにおいて、
前記樹脂製シートは透光性を有しており、
前記変化部は、水と接触することによって色が変化する変色剤を含むことを特徴とする防水改修示唆システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の防水改修示唆システムにおいて、
前記樹脂製シートには、紫外線吸収剤が含まれていないことを特徴とする防水改修示唆システム。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1つに記載の防水改修示唆システムにおいて、
前記樹脂製シートには、耐候顔料が含まれていないことを特徴とする防水改修示唆システム。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1つに記載の防水改修示唆システムにおいて、
塩化ビニルからなる樹脂層で被覆されるとともに、前記防水層に固定された樹脂被覆鋼板を備え、
前記樹脂製シートの周縁部は、塩化ビニルで構成されるとともに、前記樹脂被覆鋼板の前記樹脂層に接合されていることを特徴とする防水改修示唆システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水層の改修が必要である場合にそのことの示唆が可能な防水改修示唆システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種建築物や土木工事等では雨水の浸入を防止するための防水シート等からなる防水層が設けられる。防水層は最外面に位置することになるので、例えば太陽光に含まれる紫外線による劣化が進行して亀裂が発生し、やがて漏水に至るおそれがあるので、必要に応じた改修が必要である。
【0003】
特許文献1~3には漏水の有無を検出可能な防水構造が開示されている。特許文献1では、屋根の床面に桟体を固定し、この桟体に防水シートの裏面を接着により固定しておき、防水シートと屋根の床面との間に電極を配置している。電極には走査型抵抗測定装置を接続し、漏水時の抵抗変化を走査型抵抗測定装置により測定して警報を発することができるように構成されている。
【0004】
特許文献2では、防水施工面に複数の導電線路を間隔を置いて敷設し、この導電線路を覆うように防水層を設け、水が防水層を透過して導電線路を短絡したときにランプ等によって表示することができるように構成されている。
【0005】
特許文献3では、コンクリートスラブ上に金属膜を介して防水性シートを敷設するとともに、アース部を取っておき、所定の電圧を印加した測定電極を防水性シートの表面の各部に順次接触させながら、通電の有無を検出し、通電した箇所を防水性シートの破損箇所であるとして検出可能に構成されている。
【0006】
特許文献4、5には、漏水検出機能や損傷部位の検出機能を持った防水シートが開示されている。特許文献4の防水シートは、第1次防水シートと第2次防水シートとの間に不織布を介在した構成となっている。第1次防水シートが破れた場合には、第1次防水シートと第2次防水シートとの間に浸入した水が庇部から天端部に向かって流れ、第1次防水シートと第2次防水シートとの間から流出する。これに基づいて漏水を検出することができる。
【0007】
特許文献5の防水シートは、表面層、安全層及び危険層の3層の色分けされた熱可塑性樹脂層を備えており、損傷した場合に、損傷部位の面積や深度の判定を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平7-217103号公報
【文献】特開平8-178790号公報
【文献】特開2003-56132号公報
【文献】特開2000-257047号公報
【文献】特開2016-61074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1~3では電気回路を用いているので、漏水の検出にあたっては電力の供給が必要になり、大掛かりなものになるという問題がある。
【0010】
また、特許文献4では、第1次防水シートを通過した水を庇部から天端部に向かって流すためには、第1次防水シート、第2次防水シート及び不織布を防水層の全体に亘って設けなければならず、このものも大掛かりなものになるという問題がある。
【0011】
また、特許文献5では、表面層、安全層及び危険層の3層の色分けされた熱可塑性樹脂層を防水シートの全体に形成しなければならないので、防水シートの構造が複雑になるという問題がある。
【0012】
さらに、特許文献1~5のいずれのものも、水が浸入する程度に表面の防水層が損傷したり、防水層に亀裂が入らなければ漏水を検出することができないものである。このため、実際の使用場面を想定すると、防水下地への漏水後に漏水が起こったことを検出することになり、漏水前に防水層の改修を示唆することはできない。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大掛かりな設備を用いることなく、防水層が漏水を起こす前に改修が必要であることを示唆できるようにして漏水を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明では、防水層を構成する材料よりも耐候性の低い樹脂製シートの裏側に、水との接触によって変化する変化部を設けておき、この変化部の変化が樹脂製シートの外部に現れるようにした。
【0015】
第1の発明は、建築物が有する防水層の改修を示唆する防水改修示唆システムにおいて、周縁部が水密状に接合された樹脂製シートと、前記樹脂製シートの裏側に設けられ、水との接触によって変化する変化部とを備え、前記樹脂製シートに含まれる紫外線吸収剤の量は、前記防水層を構成する材料に含まれる紫外線吸収剤の量よりも少なく設定され、前記変化部の変化を前記樹脂製シートの外部に現すように構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、樹脂製シートの耐候性が防水層を構成する材料よりも低いので、劣化による亀裂が防水層にできる前に、樹脂製シートにできることになる。樹脂製シートに亀裂ができると、雨水等が亀裂を通って樹脂製シートの裏側に達して変化部に接触する。水が接触した変化部は変化し、その変化が樹脂製シートの外部に現れる。これにより、従来例のような電気回路等を設けることなく、防水層が漏水を起こす前に、外部から視認可能な形態で漏水のおそれを知らせることが可能になる。また、樹脂製シートは防水層の全体に設ける必要はなく、一部にのみ設ければよいので、従来例のように全体が多層構造の防水シートは不要になり、防水層の構造が簡素になる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、前記変化部は、水膨潤性樹脂を含むことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、樹脂製シートの裏側に達した水が変化部に接触すると、水膨潤性樹脂が水を吸収することによって膨潤する。これにより、変化部の体積が増加することになるので、樹脂製シートが膨らむ。よって、外部からの視認が容易になる。
【0019】
第3の発明は、第1の発明において、前記変化部は、吸水性材料を含むことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、樹脂製シートの裏側に達した水が変化部に接触すると、吸水性材料に吸収され、吸水性材料が膨らむ。これにより、変化部の体積が増加することになるので、樹脂製シートが膨らむ。よって、外部からの視認が容易になる。
【0021】
第4の発明は、第1の発明において、前記樹脂製シートは透光性を有しており、前記変化部は、水と接触することによって色が変化する変色剤を含むことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、樹脂製シートの裏側に達した水が変化部に接触すると、変色剤の色が変化する。樹脂製シートが透光性を有しているので、変色剤の色の変化が外部から容易に視認可能になる
【0023】
の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、前記樹脂製シートには、紫外線吸収剤が含まれていないことを特徴とする
【0024】
の発明は、第1からのいずれか1つの発明において、前記樹脂製シートには、耐候顔料が含まれていないことを特徴とする。
【0025】
の発明は、第1からのいずれか1つの発明において、塩化ビニルからなる樹脂層で被覆されるとともに、前記防水層に固定された樹脂被覆鋼板を備え、前記樹脂製シートの周縁部は、塩化ビニルで構成されるとともに、前記樹脂被覆鋼板の前記樹脂層に接合されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、樹脂製シートの周縁部が樹脂被覆鋼板の樹脂層に接合されているので、樹脂製シートに亀裂ができて水が樹脂製シートの裏側に達した際、樹脂被覆鋼板の樹脂層によって裏側への水の浸入が抑制される。
【発明の効果】
【0027】
第1の発明によれば、防水層を構成する材料よりも耐候性が低い樹脂製シートの裏側に、水との接触によって変化する変化部を設けておき、この変化部の変化が樹脂製シートの外部に現れるようにしたので、大掛かりな設備を用いることなく、防水層が漏水を起こす前に改修が必要であることを示唆することができる。
【0028】
第2の発明によれば、変化部が水膨潤性樹脂を含んでいるので、変化部の変化を外部から容易に視認することができる。
【0029】
第3の発明によれば、変化部が吸水性材料を含んでいるので、変化部の変化を外部から容易に視認することができる。
【0030】
第4の発明によれば、変化部が変色剤を含んでいるので、変化部の変化を外部から容易に視認することができる
【0031】
5、6の発明によれば、樹脂製シートと防水層との耐候性の差を確実に得ることができる。
【0032】
の発明によれば、樹脂被覆鋼板の樹脂層に樹脂製シートの周縁部を接合するようにしたので、水が樹脂製シートの裏側に達したとしても、樹脂被覆鋼板の裏側への水の浸入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態1に係る防水改修示唆システムを有する防水層の平面図である。
図2】実施形態1に係り、施工直後の防水改修示唆システムの斜視図である。
図3】樹脂製シートに亀裂ができた場合の図2相当図である。
図4】実施形態2に係る図2相当図である。
図5】実施形態2に係る図3相当図である。
図6】実施形態3に係る施工直後の防水改修示唆システムの平面図である。
図7図7のVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る防水改修示唆システム1を有する防水層10の平面図である。防水層10は、各種建築物の屋根上、屋上に設けられた層であり、水を通さない樹脂製の防水シート等で構成することができる。防水層10を構成する材料としては、例えば塩化ビニル樹脂に、オイル、紫外線吸収剤を含む各種添加剤等を加えたものを用いることができる。防水層10の耐候性は、従来から周知のように、ポリマーの種類、オイル及び紫外線吸収剤等の種類や添加量、防水層10の厚み、防水層10の色等によって変えることができる。防水層10は、例えば、施工後、20年以上経過しても亀裂ができないような耐候性を有している。
【0036】
防水改修示唆システム1は、防水層10に改修が必要であることを示唆するためのものである。改修には、防水層10の全部を張り替える、既存の防水層10の表面に新たに防水層10を形成する、防水層10の一部のみ張り替える等、様々な方法があるが、防水改修示唆システム1による改修の示唆後、いずれの改修を行うようにしてもよい。防水改修示唆システム1は、防水層10の改修の要否を判定するシステムとしても利用することができる。
【0037】
図2に示すように、防水改修示唆システム1は、樹脂製シート2と、変化部としての水膨潤剤3とを備えている。図1に示すように、防水改修示唆システム1は、樹脂被覆鋼板11を更に備えていてもよい。樹脂被覆鋼板11は、塩化ビニルからなる樹脂層で被覆されており、この樹脂層が、防水層10の表面に固定されている。樹脂被覆鋼板11の樹脂層は、防水層10の表面に対して例えば溶着または融着により固定することができる。
【0038】
樹脂製シート2は、防水層10を構成する材料よりも耐候性が低く設定されている。例えば、樹脂製シート2に含まれる紫外線吸収剤の量を、防水層10を構成する材料に含まれる紫外線吸収剤の量よりも少なく設定することにより、樹脂製シート2の耐候性を防水層10よりも低くすることができる。このほかにも、ポリマーの種類、オイル及び紫外線吸収剤等の種類や添加量の設定、厚みの設定、色の調整等によっても、樹脂製シート2の耐候性を防水層10よりも低くすることができる。例えば、樹脂製シート2の厚みを防水層10の厚みよりも薄くすることによって樹脂製シート2の耐候性を防水層10よりも低くすることができ、また、オイル及び紫外線吸収剤等の種類や添加量の設定と、厚みの設定とを組み合わせることによって樹脂製シート2の耐候性を防水層10よりも低くすることができる。また、樹脂製シート2には、紫外線吸収剤が含まれていなくてもよい。
【0039】
また、樹脂製シート2に含まれる耐候顔料の量は、防水層10を構成する材料に含まれる耐候顔料の量よりも少なく設定されていてもよい。耐候顔料は、例えば酸化チタンやカーボン等を挙げることができる。また、樹脂製シート2には、耐候顔料が含まれていなくてもよい。さらに、樹脂製シート2に含まれる耐候顔料の量を、防水層10を構成する材料に含まれる耐候顔料の量よりも少なくし、かつ、樹脂製シート2に含まれる紫外線吸収剤の量を、防水層10を構成する材料に含まれる紫外線吸収剤の量よりも少なくしてもよい。また、樹脂製シート2には、耐候顔料と紫外線吸収剤の両方が含まれていなくてもよい。
【0040】
樹脂製シート2の周縁部2aは、樹脂被覆鋼板11の樹脂層に対して例えば溶着または融着により固定することができ、水密状に接合された部分である。樹脂製シート2の周縁部2aと、樹脂被覆鋼板11の樹脂層との間を水が流通しないようになっている。樹脂製シート2の裏面における周縁部2aよりも内側に水膨潤剤3が配置され、この水膨潤剤3が樹脂製シート2によって覆われる。
【0041】
防水層10及び樹脂製シート2の耐候性は、例えば施工後、亀裂等ができるまでの期間で表すことができる。防水層10の耐候性を20年間としたとき、樹脂製シート2の耐候性は10~15年間とすることができるが、これは一例であり、樹脂製シート2の耐用年数を防水層10の耐用年数よりも短く設定すればよい。施工後、亀裂等ができるまでの期間は、例えば劣化促進試験結果や、過去の施工例を参考にして得ることができる。
【0042】
水膨潤剤3は、水膨潤性樹脂を含んでおり、水との接触によって体積が変化するものである。水膨潤性樹脂は、従来から周知の吸水性材料とポリマーとを含んだものであり、水が接触すると、その水を吸水性材料が吸水して膨潤する。水膨潤剤3の膨潤力は、少なくとも樹脂製シート2を膨らませることができる力となっており、従って、防水改修示唆システム1は、水膨潤剤3の変化を樹脂製シート2の外部に現すように構成されることになる。
【0043】
図1における符号20は、本発明に必須な構成ではないが、サンプル採取用シートを示している。サンプル採取用シート20は、樹脂製シート2と同じ材料で構成することができ、樹脂製シート2と同様に樹脂被覆鋼板11に固定されている。施工後、一定期間を経過したら、サンプル採取用シート20を樹脂被覆鋼板11から剥がして劣化度の検査をすることができるようになっている。
【0044】
次に、防水改修示唆システム1の使用例について説明する。防水層1の施工時期と同時期に、樹脂被覆鋼板11を固定するとともに、その樹脂被覆鋼板11の上面に水膨潤剤3を置き、その上から樹脂製シート2を被せ、この樹脂製シート2の周縁部2aを樹脂被覆鋼板11の樹脂層に固定する。これにより、水膨潤剤3に雨水等が接触することはないので、しばらくの間は、水膨潤剤3が膨潤することはない。
【0045】
施工後、所定期間(例えば10年間、15年間)経過すると、防水層1には亀裂等はできないが、樹脂製シート2の耐候性が低いので、樹脂製シート2には亀裂ができることがある。樹脂製シート2には亀裂ができると、雨水等が亀裂を通って樹脂製シート2の裏側に達して水膨潤剤3に接触する。水が接触した水膨潤剤3は水を吸収して体積が増加し、その体積変化によって樹脂製シート2が膨らむので、水膨潤剤3の変化が外部に現れることになる。これにより、防水層10が漏水を起こす前に、外部から視認可能な形態で漏水のおそれを知らせることが可能になる。また、樹脂製シート2は防水層10の全体に設ける必要はなく、一部にのみ設ければよいので、防水層10の構造が簡素になる。
【0046】
尚、樹脂製シート2が膨らんでいないときは改修が不要な時期であると判断できる。
【0047】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る防水改修示唆システム1によれば、防水層10を構成する材料よりも耐候性が低い樹脂製シート2の裏側に、水との接触によって体積変化する水膨潤剤3を設けておき、この水膨潤剤3の体積変化が樹脂製シート2の外部に現れるようにしたので、大掛かりな設備を用いることなく、防水層10が漏水を起こす前に改修が必要であることを示唆することができる。
【0048】
(実施形態2)
図4、5は、本発明の実施形態2に係る防水改修示唆システム1を示すものであり、この実施形態2では、樹脂製シート2が透光性を有している点と、水と接触することによって色が変化する変色剤を含んだ変化部4である点とで実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0049】
樹脂製シート2は、例えば無色透明、あるいは薄く着色されていて透光性を有する部材からなるものである。樹脂製シート2の透光性は、変化部4の色の変化を外部から視認可能な程度であればよく、例えば変化部4の変化後の色が外部から薄く透けて見える程度の透光性であってもよい。
【0050】
変化部4は、水と接触することによって色が変化する変色剤を少なくとも含んでいる。例えば、携帯電話等に使用されているアセイ工業社製の水没シール等を挙げることができる。また、水と反応して無色(白色)から青色(水色)に変色する無水硫酸銅や、水と反応して青色(水色)から紫色に変色する無水硝酸コバルト、水と反応して無色(白色)から青色(水色)に変色するシリカゲル等を使用できる。
【0051】
実施形態2の場合、樹脂製シート2に亀裂ができて雨水等が樹脂製シート2の裏側に達すると、変化部4に接触し、変化部4に含まれる変色剤の色が変化する。樹脂製シート2が透光性を有しているので、変化部4の色の変化が外部から容易に視認可能になる。
【0052】
したがって、実施形態2の場合も実施形態1と同様に、防水層10が漏水を起こす前に改修が必要であることを示唆することができる。
【0053】
(実施形態3)
図6、7は、本発明の実施形態3に係る防水改修示唆システム1を示すものであり、この実施形態3では、樹脂製シート2が中間シート5の上に接合されている点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0054】
樹脂被覆鋼板11の表面には、中間シート5が例えば溶着または融着により固定されている。中間シート5は、防水層10を構成する材料と同じ材料で構成することができる。中間シート5の中央部には貫通孔5aが形成されている。貫通孔5aの形状は特に限定さえるものではなく、例えば矩形や円形等であってもよい。また、中間シート5は枠状に形成することもできる。中間シート5の貫通孔5aの内部には、水膨潤剤3が収容されている。
【0055】
中間シート5の表面に樹脂製シート2が全周に亘って例えば溶着または融着により固定されている。これにより、中間シート5の貫通孔5aの内部に収容されている水膨潤剤3が樹脂製シート2によって覆われる。
【0056】
この実施形態3では、水膨潤剤3が中間シート5の貫通孔5aの内部に収容されているので、膨潤前の水膨潤剤3による樹脂製シート2の凹凸が生じ難くなる。したがって、水膨潤剤3が膨潤した際に、外部からより一層分かり易くなる。
【0057】
また、実施形態3において実施形態2のように、変色剤を含んだ変化部4を中間シート5の貫通孔5aの内部に収容してもよい。
【0058】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0059】
例えば、変化部は、実施形態1の水膨潤性樹脂と、実施形態2の変色剤との両方を含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明に係る防水改修示唆システムは、例えば屋上防水層等に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 防水改修示唆システム
2 樹脂製シート
2a 樹脂製シートの周縁部
3 水膨潤剤(変化部)
4 変化部
10 防水層
11 樹脂被覆鋼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7