(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】釣り機
(51)【国際特許分類】
A01K 79/00 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
A01K79/00 C
(21)【出願番号】P 2018193204
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000151944
【氏名又は名称】株式会社東和電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【氏名又は名称】吉田 芳春
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】浜出 雄一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大剛
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/216994(WO,A1)
【文献】特開平8-47357(JP,A)
【文献】実開昭51-133696(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 79/00
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸に脱着可能に装着されており釣り糸を巻設可能な回転ドラムと、前記回転軸を介して前記回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータとを備え、
前記回転軸はその各端部に軸方向に沿って形成されかつ離軸方向に突出した少なくとも1つの凸条を備えており、
前記回転ドラムは、回転中心部に設けられかつ前記回転軸が挿嵌される貫通孔と、前記貫通孔内に軸方向に沿って形成されかつ前記回転軸の前記少なくとも1つの凸条が嵌合する少なくとも1つの第1の凹溝とを備えていることを特徴とする釣り機。
【請求項2】
前記少なくとも1つの凸条の軸方向の両端部には突出量が徐々に減少する傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の釣り機。
【請求項3】
前記少なくとも1つの凸条は前記回転軸の各端部に軸方向に沿って形成されかつ離軸方向に突出すると共に回転方向に互いに180度離隔して形成された1対の凸条であることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣り機。
【請求項4】
前記回転軸の両端部における前記1対の凸条は回転方向に互いに90度離隔して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の釣り機。
【請求項5】
前記回転軸の端部に脱着可能に装着されており前記回転ドラムの軸端方向への移動を規制する抜け止め部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣り機。
【請求項6】
前記回転軸は軸方向に沿って形成された少なくとも1つの第2の凹溝を備えており、前記少なくとも1つの凸条は前記少なくとも1つの第2の凹溝に嵌合して固着されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の釣り機。
【請求項7】
前記回転ドラムは、樹脂材料で一体成形された1対の半ドラム部材が互いに同軸に連結されて構成されており、
前記1対の半ドラム部材の各々が、中心に前記回転軸が挿嵌される本体部と、前記本体部の外周部に設けられた糸巻き胴部と、前記糸巻き胴部の軸方向の一端の外周部に設けられた鍔部とを備えており、
前記本体部の軸方向の他端が互いに固着されることにより前記1対の半ドラム部材が互いに連結されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の釣り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船上に搭載され、釣り糸を巻き下げ及び巻き上げする回転ドラムを有する釣り機に関する。
【背景技術】
【0002】
巻下げ方向又は巻上げ方向に回転する回転ドラムと、この回転ドラムを駆動せしめる駆動モータと、この駆動モータの回転速度を制御する制御機構とを備えるイカ等魚類を漁獲するための釣り機は公知である(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来、釣り機の回転ドラムは、回転軸の両端に互いに平行に設けられた2枚の側板の間に複数本の橋げたを渡した格子構造体からなり、この回転ドラムの複数の橋げたの外周に釣り糸が巻き付けるように構成されている。従来の釣り機において回転ドラムは、その側板に設けられた軸受け部をボルト締めすることによって回転軸に固定されていた。即ち、各軸受け部に設けられた2本のボルトを軸中心方向に締め付けることによって、軸受け部を回転軸に固定していた。
【0004】
このような釣り機においては、操業時に釣り糸が回転ドラムから外れて回転軸に巻き付いたり、隣接する他の釣り機と釣り糸が絡んだり、釣り糸が切れて釣り針を失ったりした場合に、復旧作業を行ってそのトラブルを解決する必要があるが、復旧作業中は釣り操業が止まってしまう。したがって、操業の停止時間を極力短くするため、予め釣り糸、釣り針、錘が装備された予備の回転ドラムを用意し、トラブルが発生した釣り機の回転ドラムごと交換することで復旧までの時間を短縮する工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の釣り機の場合、回転ドラムを交換する作業は、回転ドラムを固定する各2本、計4本のボルトを緩め、回転ドラム交換後に再びこの4本のボルトを締めなおす必要があるので、どうしても時間がかかってしまうことと、ボルトが回転ドラムの内側(回転軸側)にある(糸がらみ防止のため突起物を減らす目的)ことから長い専用工具が必要なうえ、その工具で釣り糸のすき間をこじ開けながらボルトを緩める必要があるので、釣り糸に傷を付けやすい等の懸念があった。
【0007】
従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、その目的は、回転ドラムを容易かつ短時間で脱着可能な釣り機を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、回転ドラムを取り外す際に、回転軸に巻き付いた釣り糸が引っ掛かることを防ぐことができる釣り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、釣り機は、回転軸と、この回転軸に脱着可能に装着されており釣り糸を巻設可能な回転ドラムと、回転軸を介して回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータとを備えている。回転軸はその各端部に軸方向に沿って形成されかつ離軸方向に突出した少なくとも1つの凸条を備えている。回転ドラムは、回転中心部に設けられかつ回転軸が挿嵌される貫通孔と、貫通孔内に軸方向に沿って形成されかつ回転軸の少なくとも1つの凸条が嵌合する少なくとも1つの第1の凹溝とを備えている。
【0010】
回転軸はその各端部に離軸方向に突出した少なくとも1つの凸条を備えており、回転ドラムは回転軸が挿嵌される貫通孔と、貫通孔内に回転軸の少なくとも1つの凸条が嵌合する少なくとも1つの第1の凹溝を備えている。これにより、回転ドラムを脱着する際に、従来のような長い専用工具が不要となり、回転ドラムの取り付け及び取り外し作業が容易になり、便利性が向上する。
【0011】
少なくとも1つの凸条の軸方向の両端部には突出量が徐々に減少する傾斜面が設けられていることが好ましい。
【0012】
少なくとも1つの凸条は回転軸の各端部に軸方向に沿って形成されかつ離軸方向に突出すると共に回転方向に互いに180度離隔して形成された1対の凸条であることが好ましく、この場合、回転軸の両端部における1対の凸条は回転方向に互いに90度離隔して形成されていることがより好ましい。これにより、回転ドラムを、釣り糸の巻設方向を変えることなく回転軸の左右両端部のどちらにでも取り付けることができる。
【0013】
回転軸の端部に脱着可能に装着されており回転ドラムの軸端方向への移動を規制する抜け止め部材をさらに備えていることも好ましい。
【0014】
回転軸は軸方向に沿って形成された少なくとも1つの第2の凹溝を備えており、少なくとも1つの凸条は少なくとも1つの第2の凹溝に嵌合して固着されていることもの好ましい。
【0015】
回転ドラムは樹脂材料で一体成形された1対の半ドラム部材が互いに同軸に連結されて構成されており、1対の半ドラム部材の各々が、中心に回転軸が挿嵌される本体部と、本体部の外周部に設けられた糸巻き胴部と、糸巻き胴部の軸方向の一端の外周部に設けられた鍔部とを備えており、本体部の軸方向の他端が互いに固着されることにより1対の半ドラム部材が互いに連結されていることも好ましい。これにより、回転ドラムの軽量化及び高強度化を図ることができると共に、回転ドラムの中央の1か所で回転軸の端部に固定するため、従来のような長い専用工具が不要となり、回転ドラムの取り付け作業及び取り外し作業がより容易になり、便利性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
回転軸がその各端部に離軸方向に突出した少なくとも1つの凸条を備えており、回転ドラムが回転軸が挿嵌される貫通孔と、貫通孔内に回転軸の少なくとも1つの凸条が嵌合する少なくとも1つの第1の凹溝を備えている。これにより、回転ドラムを脱着する際に、従来のような長い専用工具が不要となり、回転ドラムの取り付け及び取り外し作業が容易になり、便利性が向上する。
【0017】
また、少なくとも1つの凸条の軸方向の両端部には突出量が徐々に減少する傾斜面が設けられているので、回転ドラムを取り外す際に、回転軸に巻き付いた釣り糸がこの凸条に引っ掛かることを防止できる。
【0018】
さらに、少なくとも1つの凸条は回転軸の各端部に軸方向に沿って形成されかつ離軸方向に突出すると共に回転方向に互いに180度離隔して形成された1対の凸条であり、回転軸の両端部における1対の凸条は回転方向に互いに90度離隔して形成されていることにより、回転ドラムを、釣り糸の巻設方向を変えることなく回転軸の左右両端部のどちらにでも取り付けることができる。
【0019】
またさらに、回転ドラムは、樹脂材料で一体成形された1対の半ドラム部材が互いに同軸に連結されて構成されており、1対の半ドラム部材の各々が、中心に回転軸が挿嵌される本体部と、本体部の外周部に設けられた糸巻き胴部と、糸巻き胴部の軸方向の一端の外周部に設けられた鍔部とを備えていることにより、回転ドラムの軽量化及び高強度化を図ることができると共に、回転ドラムの中央の1か所で回転軸の端部に固定するため、従来のような長い専用工具が不要となり、回転ドラムの取り付け作業及び取り外し作業がより容易になり、便利性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態における釣り機の構成を概略的に示す(a)正面図及び(b)側面図である。
【
図2】
図1の釣り機の内部構造を概略的に示す正面図である。
【
図3】
図1の釣り機の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図4】
図1の釣り機の回転ドラムの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図1の釣り機の回転ドラムと回転軸の連結要部を概略的に示す水平面及び鉛直面における断面図である。
【
図6】
図1の釣り機における抜け止め部材の全体構成、この抜け止め部材のロックプレート、及びこの抜け止め部材が装着される回転軸の端部の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図7】
図1の釣り機における抜け止め部材の機能を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る釣り機の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態における釣り機100の全体の構成を示しており、同図(a)は釣り機100の正面図であり、(b)は釣り機100の側面図である。
図2は釣り機本体10の構成を示しており、
図3はこの釣り機100の電気的構成を示している。
図4はこの釣り機100の回転ドラム30の構成を示している。
図5は回転ドラム30と回転軸20の連結要部の構成及び装着状態を示しており、同図(a)は
図4中の水平面Hでの断面を示しており、(b)は
図4中の鉛直面Vでの断面を示している。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る釣り機100は、釣り機本体10と、釣り機本体10に回転自在に装着された回転軸20と、釣り機本体10の両側において回転軸20に脱着可能に取付けられた1対の回転ドラム30と、回転軸20の端部に脱着可能に設けられており回転ドラム30の軸端方向への移動を規制する抜け止め部材40とを備えている。1対の回転ドラム30には、1対の釣り糸50がそれぞれ巻回されており、1対の釣り糸50には1対の錘60がそれぞれ設けられている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、釣り機本体10は、ハウシング11と、ハウシング11の内部に配置され、回転軸20を回転駆動する駆動モータ12と、駆動モータ12の回転を回転軸20に伝達する電磁クラッチ13と、回転軸20の従って回転ドラム30の回転速度及び回転方向を検出する回転検出器14と、回転検出器14の検出結果に基づいて駆動モータ12及び電磁クラッチ13を制御する制御部15と、回転軸20を従って回転ドラム30を軸方向に往復移動させる移動駆動機構(アヤ振り機構)16とを備えている。
【0025】
ハウジング11の前面には、
図1(a)に示すように、制御部15の操作パネルが取付けられており、この操作パネルには、制御部15の入力部15a、表示部15b及び電源スイッチ等が設けられている。
【0026】
駆動モータ12は、
図2に示すように、ハウシング11内の下部に設置され、この駆動モータ12の駆動力が噛合された歯車から構成される第1の伝達機構17a、電磁クラッチ13及び噛合された歯車から構成される第2の伝達機構17bを介して回転軸20に伝達される。また、回転検出器14はチェーン及びスプロケットから構成される第3の伝達機構17cを介して駆動軸19に連結される。
【0027】
電磁クラッチ13は、コイルへの通電により生じる電磁力によって動力の伝達のオン・オフを行うクラッチであり、公知の種々の構成のものが適用可能である。
【0028】
回転検出器14は、回転軸20の従って回転ドラム30の回転速度及び回転方向を検出するロータリエンコーダである。
【0029】
図3に示すように、制御部15は、キーボード又は液晶タッチパネル等からなる入力部15aと、液晶ディスプレイ又は液晶タッチパネル等からなる表示部15bと、CPU15cと、ROM15dと、RAM15eと、回転検出器14の出力信号から回転ドラム30の回転速度を算出する回転速度算出手段15fと、回転検出器14の出力信号から回転軸20の従って回転ドラム30が巻上げ方向の回転(正回転)であるか巻下げ方向の回転(逆回転)であるかという、回転ドラム30の回転方向を判別する回転方向判別手段15gと、回転方向判別手段15gにより回転ドラム30が巻下げ方向の回転になったと判別された場合、回転速度算出手段15fから得られた回転速度に基づいて、回転速度を所定の回転速度に保つために必要とされる電磁クラッチ13への印加電圧の変更分を算出する印加電圧変更分算出手段15hと、予め設定された印加電圧に対して印加電圧変更分算出手段15hにより算出された印加電圧の変更分を増加又は減少させて印加電圧を調整する印加電圧調整手段15iと、釣り糸の単位時間当たりに繰り出された距離を算出する繰り出し距離算出手段15jとを備えている。
【0030】
CPU15cは、ROM15dに格納された制御プログラムに従って、RAM15eをワークエリアとして使用しながら、釣り機100の全体の動作を制御する。
【0031】
印加電圧変更分算出手段15hは、回転ドラム30が逆回転になったと判断される場合、得られた回転速度に基づいて、釣り糸の巻下げ速度を所定値に保つために必要とされる電磁クラッチ13への印加電圧の変更分を算出するように構成されている。例えば、印加電圧変更分算出手段15hは、回転速度算出手段15fから得られた回転速度とこの回転速度に対応する所定の定数との積を電磁クラッチ13への印加電圧の変更分として算出するようになされる。
【0032】
印加電圧調整手段15iは、電磁クラッチ13を駆動するための所定の電圧設定値(又は巻上力設定値)に、印加電圧変更分算出手段15hが算出した印加電圧の変更分を加算又は減算して得られる印加電圧を電磁クラッチ13に印加する。
【0033】
繰り出し距離算出手段15jは、回転検出器14の検出結果に基づいて、回転ドラム30が巻下げ方向に回転する場合、釣り糸50の単位時間当たりに繰り出された距離を算出するようになされる。
【0034】
制御部15は、回転方向判別手段15gにより回転ドラム30が巻下げ方向に回転していると判別された場合であって、回転速度算出手段15fから得られた回転速度が所定の回転速度未満の場合は、駆動モータ12により回転ドラム30を巻下げ方向に駆動し、回転ドラム30の回転速度が所定の回転速度以上となった場合は、駆動モータ12を停止するように制御する。また、制御部15は、回転ドラム30が巻下げ方向に回転していると判別された場合であって、回転ドラム30の回転速度が所定の回転速度未満の場合は、電磁クラッチ13を連結し、回転ドラム30の回転速度が所定の回転速度以上となった場合は、電磁クラッチ13の連結を解除するように制御する。
【0035】
また、制御部15は、電磁クラッチ13の連結トルクをクラッチ補助動作モードの連結トルクに自動で設定可能である。クラッチ補助動作モードの連結トルクの設定は、後述するように制御部15が自動的に行っても良いし、操作者が手動で行っても良い。手動で行う場合、回転ドラム30が巻き下げ方向に回転するように駆動モータ12を回転させた状態で、電磁クラッチ13の連結トルクをゼロから徐々に上げ、回転ドラム30が回転し始めた際のトルク値をクラッチ補助動作モード用連結トルクとして電磁クラッチ13に設定する。
【0036】
移動駆動機構16は、アヤ振り機構として回転軸20を軸方向に往復移動させながら回転するように構成されている。この移動駆動機構16は、駆動モータ12により第1の伝達機構17a及び第2の伝達機構17bを介して回転駆動され、回転軸20と平行に設けられた駆動軸19と、駆動軸19の表面に設けられこの駆動軸19の軸方向に対して往復する螺旋状溝18aと、回転ドラム30の回転軸20に装着され、回転軸20の軸方向に移動不能にこの回転軸20に装着され、螺旋状溝18aに嵌入されて駆動軸19が回転する際に螺旋状溝18aに沿って案内されるツメ部材18bとを有する。このような移動駆動機構16を採用することで、釣り糸50が一箇所に片寄ること(巻き太り)を回避することができ、釣り針同士が絡み合うことを防止することができる。また、巻き取る部分の直径が変化することにより巻き上げる長さの計算が不正確になることを防ぐことができる。
【0037】
回転軸20は、
図1及び
図2に示すように、釣り機本体10のハウシング11を挿通するように設けられている。回転軸20の両端部には、それぞれ回転ドラム30が脱着自在に装着されている。
【0038】
図5(a)に示すように、回転軸20は、その一方の端部20aに、軸方向に沿って形成され回転方向に互いに180度離隔して形成された1対の軸側キー溝(本発明の1対の第2の凹溝に対応する)21を備えており、これら1対の軸側キー溝21には1対のキー(本発明の1対の凸条に対応する)22がそれぞれ嵌合して固着されている。また、
図5(b)に示すように、回転軸20は、その他方の端部20bに、軸方向に沿って形成され回転方向に互いに180度離隔して形成された1対の軸側キー溝(本発明の1対の第2の凹溝に対応する)23を備えており、これら1対の軸側キー溝23には1対のキー(本発明の1対の凸条に対応する)24がそれぞれ嵌合して固着されている。これら1対の軸側キー溝21(1対のキー22)と、1対の軸側キー溝23(1対のキー24)とは、回転方向に互いに90度離隔して形成されている。このように、回転軸20には、その一方の端部に2つの軸側キー溝21及び2つのキー22が他方の端部に2つの軸側キー溝23及び2つのキー24が設けられ、合計で4つの軸側キー溝21及び23と4つのキー22及び24とが回転軸20に設けられている。
【0039】
回転ドラム30は、本実施形態では、釣り糸50が巻回されている巻き取り部31の軸断面形状が菱形に形成されたドラムである。これら回転ドラム30が釣り機本体10によって、適宜の方向に回転駆動されることにより、釣り糸50が巻上げ又は巻下げされる。釣り糸50には、枝針や連結針のような疑似餌付の釣り針が取り付けられている。また、釣り糸50の先端に錘60が取付けられている。このような菱形の回転ドラム30を用いた場合、その巻下げ時に、回転ドラム30自体が定速で回転していても、釣り糸50の落下速度に変動が与えられてこれがシャクリ動作となることから、イカの誘因効果を自動的に得ることができる。また、軽量化及び高強度化を図ることができる。
【0040】
図4に示すように、回転ドラム30は、樹脂材料で一体成形された1対の半ドラム部材30a及び30bが互いに同軸に連結されて構成されている。1対の半ドラム部材30a及び30bの各々は、中心に回転軸20が挿嵌される貫通孔35を有する本体部31と、本体部31の外周部に位置する糸巻き胴部32と、この糸巻き胴部32の軸方向の一端の外周部に設けられた鍔部33とを備えている。本体部31の軸方向の他端が互いに固着されることにより1対の半ドラム部材30a及び30bが互いに連結されている。1対の半ドラム部材30a及び30bの本体部31の中央部において、軸受けを介してネジ34で連結されている。樹脂材料として、塩化ビニルやカーボン繊維強化樹脂等を用いることができる。
【0041】
また、
図5(a)に示すように、回転ドラム30は、その軸受けの軸孔である貫通孔35を備えており、この貫通孔35内には、軸方向に沿って形成されかつ回転軸20の上述した1対のキー22がそれぞれ嵌合するように回転方向に互いに180度離隔して形成された1対の軸受け側キー溝36(本発明の1対の第1の凹溝に対応する)が設けられている。また、
図5(b)に示すように、回転ドラム30の貫通孔35内には、軸方向に沿って形成されかつ回転軸20の上述した1対のキー24がそれぞれ嵌合するように回転方向に互いに180度離隔して形成された1対の軸受け側キー溝37(本発明の1対の第1の凹溝に対応する)が設けられている。これら1対の軸受け側キー溝36と、1対の軸受け側キー溝37とは、回転方向に互いに90度離隔して形成されている。このように、回転ドラム30には、その片側に2つの軸受け側キー溝36が他側に2つの軸受け側キー溝37が設けられ、合計で4つの軸受け側キー溝36及び37が回転ドラム30に設けられている。
【0042】
回転軸20の1対のキー22が回転ドラム30の1対の軸受け側キー溝36にそれぞれ嵌合し、回転軸20の1対のキー24が回転ドラム30の1対の軸受け側キー溝37にそれぞれ嵌合することにより、回転軸20の回転駆動力が回転ドラム30に伝達される。なお、
図5(a)及び(b)に示されているように、回転軸20の1対のキー22及び1対のキー24の各々の1対の軸側キー溝21及び1対の軸側キー溝23から突出した部分の軸方向の両端部にはその突出量が徐々に減少する傾斜面が設けられている。
【0043】
図5(a)に示すように、回転ドラム30の1対の軸受け側キー溝36は、貫通孔35の一方の開口側(同図にて左側)の位置で溝が浅くなるか無くなるように段差部36aが設けられており、これによって回転ドラム30の貫通孔35内に回転軸20を挿入した際に、回転軸20の1対のキー22が位置Pにおいて1対の軸受け側キー溝36段差部36aに当接しそれ以上挿入されることなく位置決めされる。同図中、Pは軸受け側キー溝36の段差部36aと、キー22との当接位置を示している。また、
図5(b)に示すように、回転ドラム30の1対の軸受け側キー溝37は、貫通孔35の他方の開口側(同図にて右側)の位置で溝が浅くなるか無くなるように段差部37aが設けられており、これによって回転ドラム30の貫通孔35内に回転軸20を挿入した際に、回転軸20の1対のキー24が位置Pにおいて1対の軸受け側キー溝37の段差部37aに当接しそれ以上挿入されることなく位置決めされる。同図中、Pは軸受け側キー溝37の段差部37aと、キー24との当接位置を示している。このように、回転ドラム30の1対の軸受け側キー溝36及び1対の軸受け側キー溝37は、逆方向から回転軸20を挿入することができない構成であるため、回転方向に互いに90度離隔して形成されているのである。
【0044】
抜け止め部材40は、回転軸20の端部に脱着可能に装着されており回転ドラム30の軸端方向への移動を規制してこの回転ドラム30を固定するためのものである。以下、この抜け止め部材40についてその構成及び作用を説明する。
【0045】
図6(a)はこの抜け止め部材40の全体構成を示しており、
図6(b)はこの抜け止め部材40のロックプレートを示しており、
図6(c)この抜け止め部材40が装着される回転軸20の端部の構成を概略的に示している。
【0046】
図6(a)に示すように、抜け止め部材40は、回転軸20の端部に同軸に嵌め込まれる部材本体41と、部材本体41内に図にて上下方向に摺動可能に装着されたロックプレート42とから主に構成されている。ロックプレート42は、
図6(b)に示すように、回転軸20の端部が挿通可能な貫通孔42aを備えている。貫通孔42aの下方周縁には山型凸条42bが形成されており、後述するようにこの山型凸条42bが回転軸20の端部に形成された
図6(c)に示すV型溝(V型凹条)25に嵌合するように構成されている。ロックプレート42は貫通する長孔42cをさらに備えており、この長孔42cには支軸部材43が挿通するように構成されている。この長孔42c及び支軸部材43によって、ロックプレート42の摺動が規制される。なお、部材本体41内には、ロックプレート42を図にて下方から上方へ押圧するコイルバネ44(
図7参照)が設けられている。
【0047】
図7は抜け止め部材40の機能を説明しており、同図(a)は抜け止め部材40が回転軸20の端部に装着され回転ドラム30をロックしている状態を示しており、同図(b)は抜け止め部材40のロックを解除する状態を示している。
【0048】
図7(a)に示すように、ロック状態においては、ロックプレート42がコイルバネ44によって上方へ押し上げられ、このロックプレート42の貫通孔42aの山型凸条42bが回転軸20の端部に形成されたV型溝25に係合するため、回転ドラム30の軸端方向への移動が規制される。コイルバネ44が押圧しているので、このロック状態は、ロック解除時を除いて常時維持される。
【0049】
ロック解除時は、
図7(a)の矢印Aに示すように、手で握るなどしてロックプレート42を下方に押し下げると、
図7(b)に示すように、ロックプレート42の貫通孔42aの山型凸条42bが回転軸20のV型溝25から離れ、これにより、抜け止め部材40を
図7(b)の矢印Bに示すように軸に沿って右方向に取り外すことができ、回転ドラム30を回転軸20から取り外すことができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の釣り機100において、回転軸20はその一方の端部に離軸方向に突出した1対のキー22を、他方の端部に離軸方向に突出した1対のキー24をそれぞれ備えており、回転ドラム30は回転軸20が挿嵌される貫通孔35と、貫通孔35内に回転軸20の1対のキー22並びに1対のキー24が嵌合する1対の軸受け側キー溝36及び1対の軸受け側キー溝37を備えている。回転軸20の1対のキー22が回転ドラム30の1対の軸受け側キー溝36にそれぞれ嵌合し、回転軸20の1対のキー24が回転ドラム30の1対の軸受け側キー溝37にそれぞれ嵌合することにより、回転軸20の回転駆動力が回転ドラム30に伝達される。回転軸20の1対のキー22及び1対のキー24の各々の1対の軸側キー溝21及び1対の軸側キー溝23から突出した部分の軸方向の両端部にはその突出量が徐々に減少する傾斜面が設けられている。このように回転軸20のキー22及び24と回転ドラム30の軸受け側キー溝36及び37との嵌合により、回転軸20の回転駆動力が回転ドラム30に伝達されるように構成されているため、回転ドラム30の取り付け及び取り外し作業が容易になり、便利性が向上し、ワンタッチ着脱化が可能になる。そのため、回転ドラム30の交換作業の時間が短縮することができる。また、ボルトによる締結がないので、回転軸20へのダメージ(圧痕)がなくなる。さらに、突出した部分の軸方向の両端部にはその突出量が徐々に減少する傾斜面が設けられているため、従来のような長い専用工具が不要となり、釣り糸50へのダメージがなくなる。さらに、回転ドラム30を取り外す際に、回転軸20に巻き付いた釣り糸がキーに引っ掛かることを防ぐことができる。
【0051】
また、回転軸20の両端部に設けられる1対のキー条が回転方向に互いに90度離隔して形成されているため、回転ドラムを、釣り糸の巻設方向を変えることなく回転軸の左右両端部のどちらにでも取り付けることができる。
【0052】
また、回転ドラム30は、中心に回転軸20が挿嵌される貫通孔を有する本体部31と、この本体部31の外周部に位置する糸巻き胴部32と、糸巻き胴部32の一端側に設けられた鍔部33とが樹脂材料から一体に成形された1対の半ドラム部材30a及び30bの本体部同士を背中合わせ連結させて構成されていることで、回転ドラム30の軽量化及び高強度化を図ることができる。また、回転ドラム30の中央の位置で回転軸20に固定するため、回転軸20の長さが短くすることができ、漁船全体の軽量化にも貢献し、漁船の操縦安定性や燃費の向上が期待できる。また、回転ドラム30の中央の1か所で回転軸20に固定するため、取り付け及び取り外し作業が容易になり、便利性が向上する。この回転ドラム30を用いた釣り機については、2018年4月末より、試験船(第18隆輝丸)に搭載して種々の実験を行っている。
【0053】
なお、上述した実施形態の釣り機100において、回転ドラム30は、軸断面形状が菱形に形成されている例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、軸断面形状が円形に形成されているようにしても良い。
【0054】
また、上述した実施形態の釣り機100において、回転ドラム30は、本体部31と、糸巻き胴部32と、鍔部33とが樹脂材料から一体に成形された1対の半ドラム部材30a及び30bの本体部同士を背中合わせ連結させて構成されている例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、例えば、従来の2枚の側板の間に複数本の橋げたを渡した格子構造体からなる回転ドラムにも適用できる。
【0055】
さらに、上述した実施形態の釣り機100において、回転軸20の両端にそれぞれ1対のキー溝が設けられている例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、回転軸20の両端にそれぞれ1つのキー溝が設けられても良い。
【0056】
さらにまた、上述した実施形態の釣り機100において、駆動モータ12の回転を回転軸20に伝達する電磁クラッチ13を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電磁クラッチ13を用いずに、駆動モータ12の回転を回転軸20に直接に伝達するように構成しても良い。この場合、駆動モータ12の電流値を監視・制御することによってトルク管理することになる。
【0057】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、船上に搭載され、釣り糸を巻き下げ及び巻き上げする回転ドラムを有する釣り機に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10 釣り機本体
11 ハウシング
12 駆動モータ
13 電磁クラッチ
14 回転検出器
15 制御部
15a 入力部
15b 表示部
15c CPU
15d ROM
15e RAM
15f 回転速度算出手段
15g 回転方向判別手段
15h 印加電圧変更分算出手段
15i 印加電圧調整手段
15j 繰り出し距離算出手段
16 移動駆動機構
17a 第1の伝達機構
17b 第2の伝達機構
17c チェーン
18a 螺旋状溝
18b ツメ部材
19 駆動軸
20 回転軸
21、23 軸側キー溝
22、24 キー
25 V型溝
30、30A 回転ドラム
30a、30b 半ドラム部材
31 本体部
32 糸巻き胴部
33 鍔部
34 ネジ
35、42a 貫通孔
36、37 軸受け側キー溝
36a、37a 段差部
40 抜け止め部材
41 部材本体
42 ロックプレート
42b 山型凸条
42c 長孔
43 支軸部材
44 コイルバネ
50 釣り糸
60 錘
100 釣り機
A、B 矢印
H 水平面
K キー
P 当接位置
V 鉛直面