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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】除電装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/04 20060101AFI20220801BHJP
   H01T 23/00 20060101ALI20220801BHJP
   H01T 19/04 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
H05F3/04 E
H05F3/04 J
H01T23/00
H01T19/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019132707
(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公開番号】P2020027795
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018151058
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511254284
【氏名又は名称】ヒューグル開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】立山 寛
(72)【発明者】
【氏名】入江 史崇
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-048062(JP,A)
【文献】実開平06-044098(JP,U)
【文献】特開2000-306693(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0019823(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
H05F 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吐出する吐出口まで、導入口から導入される高圧気体を導く気体流路と、
前記気体流路を流れる気体によって発電する発電部と、
前記発電部にて発生する電気を用いて高電圧を発生する高電圧発生器と、
前記気体流路の外部に設けられ、前記高電圧発生器からの高電圧によってイオンを発生させて、そのイオンを前記吐出口の前方の空間に向けて供給するイオン発生器と、を有する除電装置。
【請求項2】
前記気体流路、前記発電部、前記高電圧発生器及びイオン発生器は、筐体内に収容されており、
前記筐体は、一方向に延びる第1ユニット部を含み、
前記気体流路は、前記筐体に設けられた前記導入口から前記第1ユニット部を通って前記吐出口に至り、
前記イオン発生器は、前記第1ユニット部に、前記吐出口の前方の空間に向けて前記イオンを供給するように収容された、請求項1記載の除電装置。
【請求項3】
前記第1ユニット部の先端に開口が形成されるとともに、前記吐出口は、前記開口から露出しており、
前記イオン発生器は、前記第1ユニット部に、前記開口を通してイオンを前記吐出口の前方の空間に向けて供給するように収容された、請求項2記載の除電装置。
【請求項4】
前記筐体は、更に、
前記第1ユニット部の所定の部位から、前記第1ユニット部の延びる方向と異なる方向に突出するように形成された第2ユニット部と、
前記第2ユニット部の前記第1ユニット部に続く端部と反対側の端部に続いて形成された第3ユニット部とを有し、
前記発電部は、前記第3ユニット部に収容され、
前記高電圧発生器は、前記第1ユニット部に収容され、
前記気体流路は、前記第3ユニット部に設けられた前記導入口から、前記発電部を通り、前記第2ユニット部及び前記第1ユニット部を通って前記吐出口に至る、請求項2または3記載の除電装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記第2ユニット部を握り部分とする短銃型の形状に形成され、
前記第2ユニット部に収容され、前記気体流路を開閉させる開閉バルブ装置と、
前記開閉バルブ装置を前記第2ユニット部の外部から操作するトリガーレバーと、を有する、請求項4記載の除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材を除電する除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、イオンを吹き付けて帯電部材を除電するイオナイザーと呼ばれる除電装置が知られている。除電装置は、帯電部材の電荷の極性と逆極性のイオンを発生させ、これによって帯電部材の電荷を中和することで、帯電部材を除電するようにしている。逆極性のイオンとは、一般的には空気を電離してつくつた空気イオンのことである。つまり、除電装置は、高電圧を用いて空気を電離して、プラス及びマイナスの両方の空気イオンをつくり、帯電部材に帯電した電荷がプラスの場合はマイナスの空気イオンによって、帯電部材に帯電した電荷がマイナスの場合はプラスの空気イオンによって、帯電部材の電荷を中和する。
【0003】
たとえば、コロナ放電によりイオンを発生する除電装置は、放電針に高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、このコロナ放電により空気をイオン化することでイオンを発生する。このような除電装置は、交流高電圧電源と接続されて高圧を発生させる電源部、イオンを発生させるイオン放電部、及び、電源部とイオン放電部を接続する高圧ケーブルを有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-362951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような除電装置では、使用する高圧ケーブルは、一般に、厚く固い絶縁体で覆われている。そのため、高圧ケーブルによって除電装置の取り扱いが制限されてしまう。つまり、高圧ケーブルが変形しにくく、除電装置の動きを規制してしまい、作業者による手動であっても取り扱いにくい。
【0006】
また、高圧ケーブルのケーブル長にも仕様上制限がある。つまり、高圧ケーブルが届く範囲(たとえば作業台などの近く)に、電源部を設置するスペースを設けなければならない。そのため、セル生産ステーションなど機材や部品が密集した作業台では、そのスペースの確保が難しい場合がある。この点からも、高圧ケーブルを有している除電装置においては、作業者負担が増加してしまうことになる。そのため、作業性が悪く、ユーザーフレンドリーとはいえない。
【0007】
さらに、無理な負荷をかけて除電装置を移動させようとすると、高圧ケーブルが断線するおそれがある。例えば、作業者がガンタイプやバータイプの除電装置を手に持って使用する場合、除電作業とともに高圧ケーブルが種々の方向に移動し得る。このような場合、高圧ケーブルの断線に注意しなければならない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、高電圧ケーブルを要することなく、除電に利用されるイオンを発生させることができる除電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る除電装置は、気体を吐出する吐出口まで、導入口から導入される高圧気体を導く気体流路と、前記気体流路を流れる気体によって発電する発電部と、前記発電部にて発生する電気を用いて高電圧を発生する高電圧発生器と、前記気体流路の外部に設けられ、前記高電圧発生器からの高電圧によってイオンを発生させて、そのイオンを前記吐出口の前方の空間に向けて供給するイオン発生器と、を有する構成となる。
【0010】
このような構成により、導入口から導入される高圧気体が気体流路を流れ、その気体が吐出口から吐出される。その状態において、前記気体流路を流れる気体によって発電部が発電し、その発電により得られる電気を用いて高電圧発生器が高電圧を発生させる。そして、高電圧発生器からの高電圧によってイオン発生器が、イオンを発生させて、そのイオンを、気体を吐出する前記吐出口の前方の空間に向けて供給する。これにより、イオン発生器から発生するイオンは、吐出口から吐出される気体によって飛ばされ、その飛ばされるイオンを帯電部材の除電に利用することができる。
【0011】
本発明に係る除電装置において、前記気体流路、前記発電部、前記高電圧発生器及びイオン発生器は、筐体内に収容されており、前記筐体は、一方向に延びる第1ユニット部を含み、前記気体流路は、前記筐体に設けられた前記導入口から前記第1ユニット部を通って前記吐出口に至り、前記イオン発生器は、前記第1ユニット部に、前記吐出口の前方の空間に向けて前記イオンを供給するように収容された、構成とすることができる。
【0012】
このような構成により、筐体において、一方向に延びる第1ユニット部を通る気体流路を流れる気体が吐出部から吐出され、その第1ユニット部に収容されたイオン発生器から発生するイオンが前記吐出口の前方の空間に向けて供給される。
【0013】
本発明に係る除電装置において、前記第1ユニット部の先端に開口が形成されるとともに、前記吐出口は、前記開口から露出しており、前記イオン発生器は、前記第1ユニット部に、前記開口を通してイオンを前記吐出口の前方の空間に向けて供給するように収容された、構成とすることができる。
【0014】
このような構成により、気体流路を流れて吐出口から吐出される気体は、一方向に延びる第1ユニット部の先端の開口を通して前方に進むとともに、その第1ユニット部に収容されたイオン発生器から発生するイオンが吐出口の前方の空間に向けて供給される。その結果、吐出口から吐出される気体によって、イオン発生器から発生したイオンは、第1ユニット部の先端の開口を通して前方に飛ばされる。
【0015】
本発明に係る除電装置において、前記筐体は、更に、前記第1ユニット部の所定の部位から、前記第1ユニット部の延びる方向と異なる方向に突出するように形成された第2ユニット部と、前記第2ユニット部の前記第1ユニット部に続く端部と反対側の端部に続いて形成された第3ユニット部とを有し、前記発電部は、前記第3ユニット部に収容され、前記高電圧発生器は、前記第1ユニット部に収容され、前記気体流路は、前記第3ユニット部に設けられた前記導入口から、前記発電部を通り、前記第2ユニット部及び前記第1ユニット部を通って前記吐出口に至る、構成とすることができる。
【0016】
このような構成により、第3ユニット部に設けられた導入口から導入される高圧気体が、発電部を通り、第2ユニット及び第1ユニット部を通る気体流路を流れ、その気体が吐出口から吐出される。その状況において、前記気体流路の発電部の部分を流れる気体によって当該発電部が発電し、その発電により得られる電気を用いて第1ユニット部に収容された高電圧発生器が高電圧を発生させる。そして、高電圧発生器からの高電圧によって、イオン発生器が、イオンを発生し、気体を噴出する前記吐出口の前方の空間に向けてイオンを供給する。
【0017】
本発明に係る除電装置において、前記筐体は、前記第2ユニット部を握り部分とする短銃型の形状に形成され、前記第2ユニット部に収容され、前記気体流路を開閉させる開閉バルブ装置と、前記開閉バルブ装置を前記第2ユニット部の外部から操作するトリガーレバーとを有する、構成とすることができる。
【0018】
このような構成により、操作者が第2ユニット部を握りながら、トリガーレバーを操作することにより、開閉バルブ装置が気体流路の開閉を行う。気体流路が開状態では、その気体流路を通る気体が吐出口から吐出するとともに、その気体の流れに基づいて発生(発電)する電気によってイオン発生器からイオンが発生し、気体が吐出する前記吐出口の前方の空間に向けてそのイオンが供給される。一方、気体流路が閉状態では、吐出口から気体は吐出されず、発電部の発電がなされずにイオン発生器からもイオンの発生はない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、気体流路を流れる気体を吐出口から吐出させた状態で、その気体流路を流れる気体を用いた発電により得られる電気によってイオンを発生させて、そのイオンを気体が吐出される前記吐出口の前方の空間に向けて供給するようにしているので、イオン発生に必要な高電圧を供給するための高電圧ケーブルを要することなく、除電に利用されるイオンを発生させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る除電装置の内部構造を概略的に示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る除電装置の外観構成を概略的に示す正面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る除電装置の外観構成を概略的に示す側面図である。
図4図4は、発電部における駆動部の構成例を示す概略図である。
図5図5は、高電圧発生器の回路構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
本発明の実施の一形態に係る除電装置は、図1図2及び図3に示すように構成されている。図1は、除電装置の内部構造を概略的に示す図であり、図2は、除電装置の外観構成を概略的に示す正面図であり、図3は、除電装置の外観構成を概略的に示す側面図である。
【0023】
<除電装置100の構成>
図1図3において、除電装置100は、樹脂製の筐体10内に各種部品が収容された構造となっている。筐体10は、第1ユニット部11、第2ユニット部12及び第3ユニット部13の3つの部分を有している。第1ユニット部11は、一方向(図1に示す直線A1の延びる方向)に延びており、第2ユニット部12は、第1ユニット部11の、所定の部位、例えば、その延びる方向の一方の端部から第1ユニット部11の延びる方向と異なる方向(図1に示す直線A2の延びる方向)に突出している。第3ユニット部13は、第2ユニット部12の第1ユニット部11に続く端部と反対側の端部に続いて形成されている。この第3ユニット部13は、第1ユニット部11の延びる方向(直線A1参照)と平行な方向(図1に示す直線A3の延びる方向)に長い箱型形状に形成されている。第1ユニット部11(直線A1)と第2ユニット部12(直線A2)とは鈍角の所定角度をもって交差し、筐体10は、全体として、第1ユニット部11が銃身で、第2ユニット部12が握り部分とする短銃型(ガンタイプ)の形状に形成されている。第2ユニット部12は、除電作業を行う作業者が実際に握る部分の厚みが比較的薄く形成されるなど(図2参照)、握り易い形状になっている。
【0024】
筐体10の第3ユニット部13には、エアー接続継手21が設けられる(図1図3参照)とともに、発電部22が収容されている(図1参照)。エアー接続継手21には、高圧気体(例えば、高圧エアー)を供給する気体供給装置(図示略:コンプレッサ、エアポンプ等)から延びるホース(図示略)が接続される。エアー接続継手21(導入口)を通して導入される高圧エアーは、発電部22に供給され、発電部22は、その高圧エアーを用いて発電を行う。
【0025】
発電部22は、駆動部22aと発電本体部22bとを有している。駆動部22aは、例えば、図4に示すように、駆動室221内に、複数のブレードで構成されるファン体222が回転軸223を中心に回転自在となるように収容された構造となっている。駆動室221は、エアー接続継手21からの高圧エアーを取り込むエアー入力ポート221aと、高圧エアーを排出するエアー出力ポート221bとを有している。そして、駆動室221内において、エアー入力ポート221aからエアー出力ポート221bに抜ける高圧エアーによってファン体222が回転する。発電本体部22bは、発電機(発電モータ)と、前述した駆動部22aにおけるファン体222の回転軸223の回転を前記発電機の回転軸に伝達する動力伝達機構とを備えている。このような構造により、エアー接続継手21を通して導入される高圧エアーによって駆動部22aのファン体222が回転すると、その回転によって、発電本体部22bの発電機(発電モータ)が発電するようになる。
【0026】
筐体10の第2ユニット部12には、開閉バルブ23(開閉バルブ装置)が収容されている。開閉バルブ23は、通常閉状態であって、自動復帰型のスイッチの操作ロッド23aが押し込まれることにより開状態に切り換わり、スイッチの操作ロッド23aが元に戻ることにより閉状態に復帰する。そして、開閉バルブ23の一部及びスイッチの操作ロッド23aが第2ユニット部12から突出している。第2ユニット部12の外側には、操作ロッド23aに対向するようにトリガーレバー28が設けられている。トリガーレバー28は、ピボット動作が可能なように、その先端部が第1ユニット部11の所定部位に回動自在に支持されている。トリガーレバー28による操作ロッド23aの押し込み及び押し込み解除により、開閉バルブ23は、閉状態から開状態に、あるいは、開状態から閉状態に切り換えられる。
【0027】
第3ユニット部13に収容された発電部22における駆動部22aのエアー出力ポート221bから延びる配管27aが第2ユニット部12まで延びて開閉バルブ23の一方のポートに接続されている。また、開閉バルブ23の他方のポートからは配管27bが筐体10の第1ブロック11内に延びている。
【0028】
第1ユニット部11には、通過する気体から微細粒子(パーティクル)を除去するフィルター器24が収容されるとともに、高電圧発生器25及びイオン発生器26が収容されている。フィルター器24の入力側端部には第2ブロック部12に収容された開閉バルブ23から延びる配管27bが接続されている。フィルター器24の出力側端部には吐出口29(図1図2参照)が形成されている。筐体10内には、前述した第3ユニット部13のエアー接続継手21(導入口)から、発電部23(駆動部23a)の駆動室21(図4参照)を通り、更に、配管27a、開閉バルブ23、配管27b及びフィルター器24を通って吐出口29に至る気体流路FPが形成されることになる。そして、エアー接続継手21から導入される高圧エアーは、前記気体流路FPを通ることによりフィルター器24に導かれて、そのフィルター器24の吐出口29から吐出する。
【0029】
第1ユニット部11内において、フィルター器24に重ねて(気体流路FPの外部に)イオン発生器26が配置されている。第1ユニット部11の先端には開口111が形成されている。フィルター器24に形成された吐出口19は開口111から露出しており(図2参照)、吐出口29から吐出するエアーは、開口111を通して前方(第1ユニット部11が延びる方向(図1に示す直線A1の延びる方向))に進む。イオン発生器26は、高電圧の印加によるコロナ放電等の放電作用によって、イオンを発生させる放電針261を備えている。この放電針261の放電作用によって発生するイオンは第1ユニット部11の開口111を通して吐出口29の前方の空間に供給される。
【0030】
高電圧発生器25は、筐体10の第1ユニット部11において、イオン発生器26に並んで配置されている。高電圧発生器25は、発電部22(発電本体部22b(発電機))にて生成される電気を用いて高電圧を発生させるもので、例えば、図5に示すように構成される。
【0031】
図5において、高電圧発生器25は、発電部22(発電本体部22b(発電機))から供給される電圧を平滑するコンデンサ252と、平滑された電圧を昇圧して高電圧を出力するトランス253と、トランス253の2次側に接続された高圧発生回路251と、トランス253の1次側をON/OFFするスイッチング素子254と、スイッチング素子254を制御するコントローラ255と、を有している。コントローラ255は、発電部22から供給される電圧で動作する。
【0032】
この除電装置100では、発電部22(発電本体部22b)で発電される電圧は、例えば、3V~50Vである。コンデンサ252の種類を特に限定するものではないが、電解コンデンサやセラミックコンデンサやフィルムコンデンサなどを用いることができる。さらに、トランス253の種類を特に限定するものではないが、圧電トランスを用いることができる。スイッチング素子254としては、例えば、MOS-FET、バイポーラトランジスタ、IGBTなどを用いることができる。
【0033】
高圧発生回路251は、複数のダイオードとコンデンサで構成された整流回路を有し、高圧発生回路251で発生した高電圧(例えば、DC5000V)は、イオン発生器26の放電針261に印加される。そして、高圧発生回路251から供給される高電圧がイオン発生器26の放電針261によるイオンの発生に用いられる。なお、高圧発生回路251を経由せずにトランス253で昇圧された高電圧(例えば、AC2000V)をイオン発生器26の放電針251に印加してもよい。
【0034】
<除電装置100の動作>
作業者により、除電装置100のエアー接続継手21に気体供給装置(図示略)から延びるホース(図示略)が接続される。そして、除電装置100に前記ホースを通して高圧エアーが供給される。この状態で、作業者は、第2ユニット部12(握り部分)を握り、第1ユニット部11(銃身部分)の先端(開口111)を除電の対象となる帯電部材(例えば、携帯電話、テレビ、コンピュータなど)に向けて、第1ユニット部11の先端を帯電部材にある距離まで近づけて、操作ロッド23aを押し込むようにトリガーレバー28を操作する。
【0035】
すると、開閉バルブ23が閉状態から開状態に切り換わり、エアー接続継手21を通して導入される高圧エアーが、気体流路FP、即ち、発電部22の駆動部22a(駆動室221:図4参照)、配管27a、開閉バルブ23、配管27b及びフィルター器24を流れ、そのエアーがフィルター器24の先端の吐出口29から、第1ユニット部11(筐体10)の開口111を通して前記帯電部材に向けて吐出する。この状態において、発電部22(駆動部22a)の駆動室221を流れるエアーによってファン体222が回転し、その回転が伝達される発電本体部22bの発電機が発電する。その発電により得られる電気を用いて高電圧発生器25(図5参照)が高電圧を発生し、その高電圧がイオン発生器26の放電針261に印加される。イオン発生器26では、高電圧発生器25からの高電圧が印加される放電針261の放電作用(例えば、コロナ放電)によって、空気が電離してイオンが発生し、そのイオンが第1ユニット部11(筐体10)の開口111を通して吐出口29の前方の空間に供給される。これにより、イオン発生器26から発生するイオンは、吐出口29から吐出するエアーによって飛ばされて、帯電部材に吹きかけられる。その結果、帯電部材の電荷が吹きかけられた逆極性のイオンにより中和され、その帯電部材が除電される。
【0036】
帯電部材の除電が完了したと判断した作業者が、トリガーレバー28による操作ロッドの押し込みを解除すると、開閉バルブ23が開状態から閉状態に復帰する。これにより、気体流路FP(発電部22(駆動部22a)、配管27a、開閉バルブ23、配管27b、フィルター器24)におけるエアーの流れが遮断される。その結果、吐出口29からの気体の吐出が停止するとともに、発電部22での発電が停止し、それに伴ってイオン発生器26における放電針261の放電が停止してイオンの発生も停止する。これにより、除電装置100による除電動作が終了する。
【0037】
上述したような除電装置100によれば、気体流路FP(エアー接続継手21、発電部22(駆動部22a)、配管27a、開閉バルブ23、配管27b及びフィルター器24)を流れるエアーを吐出口29から吐出させた状態で、その気体流路FPを流れるエアーを用いた発電部22での発電により得られる電気によってイオンを発生させ、そのイオンをエアーが吐出される吐出口29の前方の空間に向けて供給するようにしているので、イオン発生に必要な高電圧を供給するための高電圧ケーブルを要することなく、除電に利用されるイオンを発生させることが可能になる。その結果、厚く固い絶縁体で被覆されて変形し難い高圧ケーブルが邪魔になることなく、除電作業を楽に行うことができる。また、そのような高圧ケーブルを接続する必要が無い分、作業スペースや作業の動きの制約も少なく、利用し易いものとなる。
【0038】
更に、放電針261(イオン発生器23)は、気体流路FP内に設けられるのではなく、その気体流路FPの外部に設けられ、イオン発生器23から発生するイオンが気体流路FPの端部である吐出口29の前方の空間に供給される。このため、放電針261の先端に発生する汚れや摩耗クズ等が吐出口29から吐出するエアーに混入して除電対象の物体に降りかかることを防止することができる。
【0039】
前述した除電装置100では、フィルター器24の先端には、単一の吐出口29が形成されるものであったが、これに限定されない。フィルター器24の先端には、気体流路FPの終端としての複数の吐出口を形成することもできる。
【0040】
また、気体流路FPの終端である吐出口29は、フィルター器24の先端に形成されるものであったが、これに限定されない。フィルター器24に代えて、その気体流路FPの一部を構成し得る他のもの、例えば、先端が吐出口として開口するノズルを設けることができる。この場合、ノズルの先端に形成される吐出口(開口)から気体流路FPを流れる気体が前方に向けて吐出される。そして、イオン発生器26で発生されるイオンは、前記ノズルの吐出口の前方の空間に向けて供給される。
【0041】
前述した除電装置100において、発電部22が第3ユニット部13に収容されるものであったが、これに限定されず、駆動部22a(駆動室221)が気体流路FP内に設けられていれば、発電部22は、筐体10のどの部分にあってもよい。また、高電圧発生器25も、発電部22とイオン発生器26との電気的な接続が確保できるのであれば、筐体10のどの部分に配置してもよい。
【0042】
筐体10が前述した第1ユニット部11、第2ユニット部12及び第3ユニット部13により、全体として短銃型(ガンタイプ)の形状に形成される場合、第1ユニット部11と第3ユニット部13に収容される部品の重さを調整することにより、その短銃型の形状の除電装置100を、第2ユニット部12にて安定的に持つことができるようにすることができる。上述した除電装置100では、最下部の第3ユニット部13に比較的重量が大きい発電部22が収容されるので、作業者が安定的に持ちやすく、安定した除電作業を実現することができる。
【0043】
また、前述した除電装置100は、筐体10が短銃型(ガンタイプ)の形状で、手持ち可能なものであったが、これに限定されない。例えば、除電の対象となる回路基板(帯電部材)の組み立てライン内に固定的に設置されるもの(設置型)であってもよい。この場合、開閉バルブ23を電動式開閉器(電磁弁)で構成し、作業台のスイッチのオン・オフ操作によって、気体流路FP内に設けられる電動式開閉器の開状態と閉状態とを切り換えることができる。また、筐体10の形状も、その組み立てラインに適した形状にすることができる。開閉バルブ23は、更に、空圧式開閉器に置き換えることもできる。
【0044】
導入口(エアー接続継手21)から導入されて気体流路FPを流れる気体は、エアー(空気)であったが、これに限定されない。この気体流路FPを流れて吐出口29から吐出されてイオンの飛ばしに利用され、また、イオン生成のための電気を得るための発電に利用される気体は、例えば、窒素や二酸化炭素ガス等の他の種類の気体であってもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る除電装置は、高電圧ケーブルを要することなく、除電に利用されるイオンを発生させることができるという効果を有し、帯電部材を除去する除電装置として有用である。
【符号の説明】
【0047】
10 :筐体
11 :第1ユニット部
111 開口
12 :第2ユニット部
13 :第3ユニット部
21 エアー接続継手
22 発電部
22a 駆動部
221 駆動室
221a エアー入力ポート
221b エアー出力ポート
222 ファン体
223 回転軸
22b 発電保体部
23 開閉バルブ
24 フィルター器
25 高電圧発生器
251 高圧発生回路
252 コンデンサ
253 トランス
254 スイッチング素子
255 コントローラ
26 イオン発生器
261 放電針
27a、27b 配管
28 トリガーレバー
29 吐出口
100:除電装置
図1
図2
図3
図4
図5