(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ノズル、それを用いた飛ばし装置及び除電装置
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20220801BHJP
H01T 23/00 20060101ALI20220801BHJP
H01T 19/04 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
H05F3/04 A
H01T23/00
H01T19/04
H05F3/04 D
(21)【出願番号】P 2019132738
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】511254284
【氏名又は名称】ヒューグル開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】立山 寛
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-229549(JP,A)
【文献】特開2016-048062(JP,A)
【文献】特開平06-190308(JP,A)
【文献】特開2000-306693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
H05F 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流路が形成され、該気体流路を流れる気体を噴出させるノズルであって、
前記気体流路は、気体の流れる方向に樋状に延びる樋形状を有し、
前記気体流路の先端がそのまま開口して前記気体を噴出する噴出口が形成された、ノズル。
【請求項2】
前記樋形状の気体流路の気体の流れる方向の各位置における前記気体の流れる方向に直交する断面の輪郭線は横長形状であって、該輪郭線の上下に対向する一対の線分のうち少なくとも上側の線分が湾曲凹状線分である、請求項1記載のノズル。
【請求項3】
前記輪郭線の上下に対向する一対の線分の双方が湾曲凹状線分である、請求項2記載のノズル。
【請求項4】
気体によって微細物を飛ばす飛ばし装置であって、
請求項1乃至3のいずれかに記載のノズルと、
前記ノズルの上方から前記噴出口の前方の空間に向けて微細物を供給する微細物供給機構と、を有する飛ばし装置。
【請求項5】
前記微細物供給機構は、荷電粒子を発生して、その荷電粒子を前記微細物として前記ノズルの前記噴出口の前方の空間に向けて供給する荷電粒子発生器を含む、請求項4記載の飛ばし装置。
【請求項6】
前記微細物供給装置は、微細固体を前記微細物として前記ノズルの噴出口の前方の空間に向けて供給する微細固体供給機構を含む、請求項4記載の飛ばし装置。
【請求項7】
前記微細供給装置は、微細液滴を前記微細物として前記ノズルの前記噴出口の前方の空間に供給する、微細液滴供給機構を含む、請求項4記載の飛ばし装置。
【請求項8】
物体の表面にイオンを吹き付けて該物体表面を除電する除電装置であって、
請求項1乃至3のいずれかに記載のノズルと、
イオンを発生して、前記ノズルの上方から前記ノズルの噴出口の前方の空間に前記イオンを供給するイオン発生器と、を備えた、除電装置。
【請求項9】
前記イオン発生器は、前記ノズルにおける前記噴出口より前方に配置され、イオンを発生させる放電針を有する、請求項8記載の除電装置。
【請求項10】
導入口から導入される高圧気体を前記ノズルの気体流路まで導く装置内気体流路と、
前記装置内流路を流れる気体によって発電する発電部と、
前記発電部にて発生する電気を用いて高電圧を発生し、該高電圧をイオン発生のために前記イオン発生器に供給する高電圧発生器と、を有する請求項8または9記載の除電装置。
【請求項11】
前記装置内気体流路、前記発電部、前記高電圧発生器、イオン発生器及び前記ノズルを収容する筐体を備え、
前記筐体は、短銃の握り部分に対応する下部筐体と、銃身に相当する部分を含んで前記下部筐体と所定の角度をもって結合する上部筐体とを有し、全体として短銃型の形状に形成されており、
前記ノズル、前記イオン発生器、前記高電圧発生器及び発電部は上部筐体に収容されており、
前記装置内気体流路は、前記下部筐体に設けられた前記導入口から下部筐体内を通り、更に、前記上部筐体内の前記発電部を通って前記ノズルの前記気体流路に至るように形成され、
前記ノズルは前記上部筐体の銃身に相当する部分に配置されるとともに、前記イオン発生器は、前記上部筐体の銃身に相当する部分において前記ノズルの上方に配置される、請求項10記載の除電装置。
【請求項12】
前記発電部は、駆動室と、該駆動室内に回転自在に収容された回転ファンと、前記回転ファンの回転を電気エネルギーに変換する発電機とを有し、
前記装置内気体流路は、前記駆動室を通って前記ノズルの前記気体流路に至るように形成された、請求項11記載の除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体流路を流れる気体を噴出させるノズル、そのノズルを用いて微細物を飛ばす飛ばし装置、及び前記ノズルを用いた除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された除電装置(ガン式除電装置)が知られている。この除電装置では、ノズルが設けられ、放電によって生成されるイオンが、気体(エアー)とともに前記ノズルの先端の噴射口から噴射される。このようにノズルの先端から気体とともに噴射される(飛ばされる)イオンが帯電した物体表面に到達することにより、その物体表面が除電される。
【0003】
前記ノズルでは、気体が流れる気体流路が形成されている。この空間としての気体流路は、気体が流れる方向において段階的に小径となっていく円柱形状を有しており、ノズル先端で最小径となって開口する噴射口に至っている。そして、ノズルの前記噴射口と逆側の端部に前記気体流路内に臨むように放電針が配置され、その放電針からの放電により生成されるイオンが気体とともに気体流路を流れて、噴射口から噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような除電装置に用いられる従来のノズルでは、気体流路によって円柱形状に整流された気体が円形状の噴射口から噴射されると、その噴射口から気体が一気に放射状に拡散されてしまう。このため、ある限られた領域により多くのイオン(微細物)を飛ばすことが難しい。その限られた領域に多くのイオンを飛ばすためには、ノズルを除電の対象物に近づけなければならず、その除電が必要な対象物の設置環境の自由度が制限されてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、より多くのイオン等の微細物をより遠くのある限られた領域まで飛ばすことのできる気流を生じさせることが可能なノズルを提供するものである。
【0007】
また、他の本願発明は、そのようなノズルを用いて、より多くの微細物をより遠くのある限られた領域まで飛ばすことのできる飛ばし装置を提供する者である。
【0008】
更に他の本願発明は、より遠くのある限られた領域を効率良く除電することができる除電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るノズルは、気体流路が形成され、該気体流路を流れる気体を噴出させるノズルであって、前記気体流路は、気体の流れる方向に樋状に延びる樋形状を有し、前記気体流路の先端がそのまま開口して前記気体を噴出する噴出口が形成された、構成となる。
【0010】
このような構成によれば、樋形状の空間としての気体流路を通る気体は、当該樋形状に整流された状態で噴出口から噴射する。このため、噴出口から噴出される気体による気流は、一気に放射状に拡散することなく、比較的長い距離の間樋形状を維持し得る。
【0011】
本発明に係るノズルにおいて、前記樋形状の気体流路の気体の流れる方向の各位置における前記気体の流れる方向に直交する断面の輪郭線は横長形状であって、該輪郭線の上下に対向する一対の線分のうち少なくとも上側の線分が湾曲凹状線分である、構成とすることができる。
【0012】
このような構成によれば、噴出口から噴出される気体による気流は、一気に放射状に拡散することなく、横長形状で続く上側面が湾曲凹状になる樋形状を比較的長い距離の間維持し得る。
【0013】
本発明に係るノズルにおいて、前記輪郭線の上下に対向する一対の線分の双方が湾曲凹状線分である、構成とすることができる。
【0014】
このような構成によれば、噴出口から噴出される気体よる気流は、一気に放射状に拡散することなく、横長形状で続く上側面及び下側面のそれぞれが湾曲凹状になる樋形状を比較的長い距離の間維持し得る。
【0015】
本発明に係る飛ばし装置は、気体によって微細物を飛ばす飛ばし装置であって、前述したいずれかのノズルと、前記ノズルの上方から前記噴出口の前方の空間に向けて微細物を供給する微細物供給機構と、を有する構成となる。
【0016】
このような構成によれば、ノズルの噴出口から噴出する気体による気流が、一気に放射状に拡散することなく、比較的長い距離の間樋形状を維持し得るので、ノズルの上方から噴出口の前方の空間に向けて供給される微細物は、一気に放射状に飛散することなく、その樋形状の気流につられて比較的長い距離飛ばされ得る。
【0017】
本発明に係る飛ばし装置において、前記微細物供給機構は、荷電粒子を発生して、その荷電粒子を前記微細物として前記ノズルの前記噴出口の前方の空間に向けて供給する荷電粒子発生器を含む、構成とすることができる。
【0018】
このような構成によれば、ノズルの上方から噴出口の前方の空間に向けて供給される荷電粒子(例えば、イオン)は、一気に放射状に飛散することなく、樋形状の気流につられて比較的長い距離飛ばされ得る。
【0019】
本発明に係る飛ばし装置において、前記微細物供給装置は、微細固体を前記微細物として前記ノズルの噴出口の前方の空間に向けて供給する微細固体供給機構を含む、構成とすることができる。
【0020】
このような構成によれば、ノズルの上方から噴出口の前方の空間に向けて供給される微細固体(例えば、粒体、粉体)は、一気に放射状に飛散することなく、樋形状の気流につられて比較的長い距離飛ばされ得る。
【0021】
本発明に係る飛ばし装置において、前記微細供給装置は、微細液滴を前記微細物として前記ノズルの前記噴出口の前方の空間に供給する、微細液滴供給機構を含む、構成とすることができる。
【0022】
このような構成によれば、ノズルの上方から噴出口の前方の空間に向けて供給される微小液滴(霧状の液を含む)は、一気に放射状に飛散することなく、樋形状の気流につられて比較的長い距離飛ばされ得る。
【0023】
本発明に係る除電装置は、物体の表面にイオンを吹き付けて該物体表面を除電する除電装置であって、前述したいずれかのノズルと、イオンを発生して、前記ノズルの上方から前記ノズルの噴出口の前方の空間に前記イオンを供給するイオン発生器と、を備えた、構成となる。
【0024】
このような構成によれば、ノズルの噴出口から噴出する気体による気流が、一気に放射状に拡散することなく、比較的長い距離の間樋形状を維持し得る。このため、ノズルの上方から噴出口の前方の空間に向けて供給されるイオンは、一気に放射状に飛散することなく、その樋形状の気流につられて比較的長い距離飛ばされ得る。そして、そのイオンが帯電した状態の除電対象の物体に到達すると、その物体が除電される。
【0025】
本発明に係る除電装置において、前記イオン発生器は、前記ノズルにおける前記噴出口より前方に配置され、イオンを発生させる放電針を有する、構成とすることができる。
【0026】
このような構成によれば、イオン発生器における放電針の放電作用により発生するイオンを、ノズルの噴出口から噴出する樋形状の気流に上方から確実に乗せることができる。このため、より多くのイオンが樋形状の気流につられて比較的長い距離飛ばされ得る。
【0027】
本発明に係る除電装置において、導入口から導入される高圧気体を前記ノズルの気体流路まで導く装置内気体流路と、前記装置内流路を流れる気体によって発電する発電部と、前記発電部にて発生する電気を用いて高電圧を発生し、該高電圧をイオン発生のために前記イオン発生器に供給する高電圧発生器と、を有する構成とすることができる。
【0028】
このような構成によれば、導入される高圧気体を利用して発電を行い、その発電で得られた電気から生成される高電圧を利用して除電に用いられるイオンを発生させているので、外部から高電圧を取り入れるための高圧ケーブルが必要なくなる。その結果、より使い勝手のよい除電装置を実現することができる。
【0029】
本発明に係る除電装置において、前記装置内気体流路、前記発電部、前記高電圧発生器、イオン発生器及び前記ノズルを収容する筐体を備え、前記筐体は、短銃の握り部分に対応する下部筐体と、銃身に相当する部分を含んで前記下部筐体と所定の角度をもって結合する上部筐体とを有し、全体として短銃型の形状に形成されており、前記ノズル、前記イオン発生器、前記高電圧発生器及び発電部は上部筐体に収容されており、前記装置内気体流路は、前記下部筐体に設けられた前記導入口から下部筐体内を通り、更に、前記上部筐体内の前記発電部を通って前記ノズルの前記気体流路に至るように形成され、前記ノズルは前記上部筐体の銃身に相当する部分に配置されるとともに、前記イオン発生器は、前記上部筐体の銃身に相当する部分において前記ノズルの上方に配置される、構成とすることができる。
【0030】
このような構成により、操作者が短銃の握り部分に対応する下部筐体を握って、上部筐体の銃身に相当する部分を除電対象の物体に向けた状態で、導入口から導入されて装置内流路を通る高圧気体が、更に上部筐体の銃身に相当する部分に収容されたノズルの気体流路を通って噴出口から、樋形状に整流された気流となって、前記物体に向けて噴出する。このとき、前記装置内流路を流れる高圧気体を利用して発電部が発電を行い、その発電で得られた電気から高電圧発生器にて発生される高電圧により、上部筐体の銃身に相当する部分に収容されたイオン発生器からイオンが発生される。そして、そのイオンが前記ノズルの噴出口の前方の空間に向けて供給される。噴出口から噴出される樋形状に整流された気流は、一気に放射状に拡散することなく、除電対象の物体に向けて進み、イオン発生器からのイオンが、その樋形状に整流された気流につられて除電の対象となるその物体に向けて飛ばされる。そして、そのイオンが帯電した状態の物体に到達すると、その物体が除電される。
【0031】
本発明に係る除電装置において、前記発電部は、駆動室と、該駆動室内に回転自在に収容された回転ファンと、前記回転ファンの回転を電気エネルギーに変換する発電機とを有し、前記装置内気体流路は、前記駆動室を通って前記ノズルの前記気体流路に至るように形成された、構成とすることができる。
【0032】
このような構成により、装置内気体流路を流れる高圧気体が駆動室内を流れる際に回転ファンが回転し、その回転が発電機により電気エネルギーに変換される。そして、その電気エネルギーによる電圧から高電圧が発生され、その高電圧によりイオン発生器が除電に利用されるイオンを発生させる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るノズルによれば、一気に放射状に拡散することなく、より多くのイオン等の微細物をより遠くのある限られた領域まで飛ばすことができる気流を形成することができる。
【0034】
本発明に係る飛ばし装置によれば、ノズルの上方から噴出口の前方の空間に向けて供給される微細物は、一気に放射状に飛散することなく、その樋形状の気流につられて比較的長い距離飛ばされ得るので、より多くの微小物をより遠くのある限られた範囲まで飛ばすことができる。
【0035】
本発明に係る除電装置によれば、ノズルの上方から噴出口の前方の空間に向けて供給されるイオンは、一気に放射状に飛散することなく、その樋形状の気流につられて比較的長い距離飛ばされ得るので、より遠くのある限られた領域を効率良く除電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るノズルを含む気体噴出装置を示す図である。
【
図2】
図2は、前記気体噴出装置におけるノズルを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、前記ノズルに形成された気体流路を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係るノズルの噴出口から噴出される気体により形成されるものとして想定される気流の形状(樋形状)を示す図である。
【
図5】
図5は、前記ノズルの噴出口から噴出される気体により形成されるものとして想定される気流を更に詳細に示す正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る飛ばし装置を示す図である。
【
図7】
図7は、前記飛ばし装置から微細物が飛ばされる様子を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る除電装置(ガンタイプの除電装置)の筐体を示す側面図である。
【
図9】
図9は、前記除電装置の内部構造を示す側面図である。
【
図10】
図10は、前記除電装置によりイオンが飛ばされる様子を示す図である。
【
図11】
図11は、前記除電装置の除電対象について説明する図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態に係る飛ばし装置としての塗装装置の利用例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態に係る飛ばし装置としての除電装置の利用例を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態に係る飛ばし装置としての塗装装置の利用例を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施の形態に係る飛ばし装置としての除電・除塵装置の利用例を示す図である。
【
図16】ノズルに空間として形成される気体流路の他の形状例を示す斜視図である。
【
図17】ノズルに空間として形成される気体流路の更に他の形状例を示す斜視図である。
【
図18B】
図18Bは、前記ノズルを噴出口側の面を示す当該ノズルの正面図である。
【
図19A】
図19Aは、本発明の更に他の実施の形態に係るノズルを示す斜視図である。
【
図19B】
図19Bは、前記ノズルを噴出口側の面を示す当該ノズルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0038】
本発明の実施の一形態に係るノズルを含む気体噴出装置は、
図1に示すように構成される。
【0039】
図1において、気体噴出装置20は、気体を噴出するノズル10を有している。ノズル10は、ブロック体15の前端面から突出している。ノズル10内には、
図1とともに
図2に示すように、気体が流れる気体流路11が形成されている。ノズル10の前端面には、気体流路11の先端がそのまま開口して気体を噴出する噴出口12が形成されている。ノズル10の前端面で噴出口12として開口する気体流路11は、ブロック体15を貫通してブロック体15の後端面まで延びている。ブロック体15の後端面には、気体流路11と加圧気体(例えば、高圧エアー)の供給源である気体供給装置(図示略)から延びる気体供給管17とを接続する接続器16が設けられている。このような構造により、気体供給装置から気体供給管17を通して供給される加圧気体がブロック体15及びノズル10内の気体流路11を通り、ノズル10の先端の噴出口12から噴出する。
【0040】
ノズル10及びブロック体15内に空間として形成される気体流路11は、
図2とともに
図3に示すように、気体の流れる方向Dに樋状に延びる樋形状を有している。具体的には、この空間としての気体流路11において、気体の流れる方向Dの各位置におけるその方向Dに直交する断面14の輪郭線は横長形状であって、その輪郭線の上下に対向する一対の線分14a、14bの双方が湾曲凹状線分である。このような各位置での横長形状の輪郭線を有する断面14が、気体の流れる方向Dに、同様の湾曲凹状線分12a、12bで挟まれる噴出口12まで連続することにより構成される気体流路11は、上側湾曲凹面11aと下側湾曲凹面11bとによって挟まれた樋形状の空間として形成される。
【0041】
上述したような構造のノズル10を有する気体噴出装置20では、気体供給装置(図示略)から気体供給管17を通して加圧気体が供給されると、その加圧気体は、樋形状の空間としての気体流路11を通る際に樋形状に整流され、その樋形状に整流された状態の加圧気体が噴出口12から噴出する。このため、
図4に示すように、噴出口12から噴出される気体による気流AFは、一気に放射状に拡散することなく、比較的長い距離の間その樋形状を維持し得る。
【0042】
詳細には、ノズル10の噴出口12から噴出する気体により形成される樋形状の気流AFは、
図5に示すように、当該樋形状の湾曲凹面に沿って巻き込むような気流成分によりその樋形状が維持されつつ進んでいくものと考えられる。そして、その樋形状が維持されることにより、巻き込む気流成分が急激に減少することなく、更にその樋形状が維持されつつ気流AFが進むものと考えらえる。これにより、その気流AFは、一気に放射状に拡散することなく、比較的長い距離の間その樋形状を維持し得るものとなる。
【0043】
このような樋形状の気流AFに乗ったイオン等の微細物は、
図5に示すように、巻き込むような気流成分により樋形状の湾曲凹面の内側領域Obに閉じ込められつつ、自重によりその気流AFから離れずにその気流AFに乗って飛ばされ得る。即ち、このようなノズル10によれば、一気に放射状に拡散することなく、より多くのイオン(荷電粒子)等の微細物をより遠くのある限られた領域まで飛ばすことができる気流AFを形成することができる。
【0044】
なお、樋形状の空間としての気体流路11の長さは、噴出口12から噴出される気体により形成される気流AFが目的とする長さの間樋形状に維持できるように、流れる気体を樋形状に整流できる長さであればよい。
【0045】
次に、前述したようなノズル10を備えた気体噴出装置20を利用した飛ばし装置について説明する。
【0046】
本発明の実施の形態に係る飛ばし装置は、
図6に示すように構成される。
【0047】
図6において、この飛ばし装置100は、前述したようなノズル10を備えた気体噴出装置20と、飛ばしの対象となる微細物Pを供給する微細物供給機構30とを有している。ノズル10に形成された気体流路11には気体供給管17を通して圧力気体(例えば、高圧エアー)が気体供給装置25から供給される。微細物供給機構30は、気体噴出装置20におけるノズル11の上側から、そのノズル11の噴出口12前方の空間に向けて微細物Pを供給するように配置されている。
【0048】
このような飛ばし装置100では、
図7に示すように、ノズル10の噴出口12から噴出する気体により樋形状の気流AFが形成される(
図4も併せて参照)。微細物供給機構30によってノズル10の上方から噴出口12前方の空間に向けて微細物Pが供給されると、その微細物Pは、一気に放射状に飛散することなく、その樋形状の気流AFにつられて飛ばされる。
【0049】
更に、詳細に説明すると、前述したように、樋形状の気流AFでは、当該樋形状の湾曲凹面に沿って巻き込むような気流成分が発生している(
図5参照)。このように巻き込むような気流成分を有する気流AFに乗った微細物供給機構30からの微細物Pは、その巻き込む気流成分により樋形状の湾曲凹面の内側領域Ob(
図5参照)に閉じ込められつつ、自重によりその気流AFから離れずにその気流AFに乗って飛ばされる。このため、微細物供給機構30から供給される微細物Pは、一気に放射状に飛散することなく、その樋形状の気流AFにつられて比較的長い距離の間飛ばされることになる。
【0050】
このような飛ばし装置100によれば、上述したようにノズル10の上方から噴出口12前方の空間に向けて供給される微細物Pは、一気に放射状に飛散することなく、その樋形状の気流につられて比較的長い距離飛ばされるようになるので、より多くの微細物Pをより遠くのある限られた領域まで飛ばすことができるようになる。
【0051】
なお、微細物供給機構30が飛ばす微細物Pは、微細固体(粒体、粉体等)、微細液滴(霧状を含む)、及びイオン等の荷電粒子のいずれであってもよい。即ち、微細物供給機構30は、微細固体を飛ばす微細固体供給機構、微細液滴を飛ばす微細液滴供給機構、及び荷電粒子を飛ばす荷電粒子発生器(例えば、イオン発生器)のいずれであってもよい。
【0052】
次に、前述したようなノズル10を用いた除電装置について説明する。この除電装置は、各部品が、
図8及び
図9に示すように、短銃型の筐体(ハウジング)内に収容された構造となる(ガンタイプの除電装置)。
【0053】
図8において、この除電装置200は、例えば合成樹脂で形成された短銃型の筐体250を有している。この筐体250は、短銃の握りに対応した下部筐体260と、銃身に相当する部分270aを含む上部筐体270とを備えている。下部筐体260(短銃の握り)の延びる方向の軸Ax1と、上部筐体270の銃身に相当する部分270aが延びる方向の軸Ax2とが所定の角度で交差するように、下部筐体260と上部筐体270とが結合することにより、全体として短銃型の筐体250が構成される。
【0054】
筐体250内部には、
図9に示すように各部品が収容されている。
【0055】
図9において、下部筐体260には、開閉バルブ262が収容されている。開閉バルブ262は、通常閉状態であって、自動復帰型のスイッチ263の操作ロッドが押し込まれることにより開状態に切り換わり、スイッチ263の操作ロッドが元に戻ることにより閉状態に復帰する。そして、スイッチ263の操作ロッド先端が下部ハウジング260から突出している。下部筐体260の外側には、スイッチ263の操作ロッド先端に対向するようにトリガーレバー264が設けられている。トリガーレバー264はピボット動作が可能なように、その先端部が上部筐体270の所定部位に回動自在に支持されている。トリガーレバー264によるスイッチ263の操作ロッドの押し込み及びその押し込み解除により、開閉バルブ262は、閉状態から開状態に、あるいは、開状態から閉状態に切り換えられる。
【0056】
下部筐体260の、上部筐体270が続く端部とは逆側の下端部には、下部筐体260を貫通するように配管接続器265が設けられている。配管接続器265の下部筐体260内側のポートと開閉バルブ262の一方のポートとが上流側配管261aによって接続されている。また、開閉バルブ262の他方のポートから延びる下流側配管261bが上部筐体270側に延びている。一方、配管接続器265の下部筐体260外側のポートには、加圧気体(例えば、高圧エアー)を供給する気体供給装置(図示略)から延びるホース(図示略)が接続される。これにより、気体供給装置からの加圧気体が、そのホースから配管接続器265(導入口)を通して、上流側配管261a、開閉バルブ262、及び下流側配管261bで構成される流路261に導入される。
【0057】
上部筐体270の下部筐体260に隣接した部分には、発電機構271(発電部)が収容されている。また、上部筐体270の銃身に相当する部分270aには、ノズル10と、高電圧発生器273と、イオン発生器274とが収容されている。
【0058】
発電機構271は、駆動室271aと発電モータ271c(発電機)とを備えている。駆動室271a内には、発電モータ271cの回転シャフトに結合する回転ファン271bが回転自在に収容されている。駆動室271aには気体導入口と気体導出口とが形成されている。駆動室271aの気体導入口には、下部筐体260の開閉バルブ262から延びる下流側配管261bが接続されている。また、駆動室271aの気体導出口は、ノズル10内に形成される気体流路11の噴出口12と逆側の端部開口に結合している。これにより、下部筐体260の配管接続器265(導入口)から、流路261(上流側配管261a、開閉バルブ262、下流側配管261b)を通り、発電機構271の駆動室271a内を通ってノズル10の気体流路11に至る装置内気体流路が形成される。そして、配管接続器265(導入口)から導入される加圧気体は、前記装置内気体流路を通してノズル10の気体流路11に導入される。前記装置内気体流路を加圧気体が流れる状況において、駆動室271a内をその気体導入口から気体導出口に向けて流れる加圧気体により回転ファン271bが回転し、その回転ファン271bの回転にともなう回転シャフトの回転(運動エネルギー)が発電モータ271c(発電機)により電気(電気エネルギー)に変換される。ノズル10は前述したもの(
図1、
図2、
図3参照)と同様の構造であって、その内部に空間として形成された気体流路11は、気体が流れる方向に樋状に延びる樋形状を有している。
【0059】
高電圧発生器273は、昇圧トランス273aと回路基板273b上に形成された電子回路(平滑用コンデンサ、スイッチング回路、整流回路、入出力回路、制御回路等を含む)とで構成され、発電モータ271cから出力される電圧を昇圧して所定の高電圧をイオン発生器274に供給する。イオン発生器274は放電針274aを有しており、放電針274aに高電圧発生器273からの高電圧が印加される。この高電圧が印加される放電針274aの放電作用(例えば、コロナ放電)によって、空気が電離してイオンが発生する。イオン発生器274は、上部ハウジング270の銃身に相当する部分270aの先端部においてノズル10の上方に配置されている。そして、イオン発生器274の放電針274aは、ノズル10の噴出口12より前方に位置する。
【0060】
このようなガンタイプの除電装置200では、操作者がトリガーレバー264を下部ハウジング260(短銃の握りに相当)とともに握ると、トリガーレバー265がスイッチ263の操作ロッドを押し込む。これにより、閉状態にあった開閉バルブ262が開状態になる。開閉バルブ262が開状態になると、上流側配管261a、開閉バルブ262及び下流側配管261bで構成される流路261が開通し、配管接続器265を通して導入される気体供給装置(図示略)からの加圧気体(例えば、高圧エアー)が、前記装置内気体流路を通ってノズル10の気体流路11に導入される。具体的には、配管接続器265からの加圧気体は、流路261を通って発電機構271の駆動室271aに導入され、更に、回転ファン271bを回転させつつ、駆動室271aからノズル10の気体流路11に導入される。駆動室271aを通してノズル10の気体流路11に導入された加圧気体は、その気体流路11を流れて樋形状に整形された状態で噴出口12から噴出される。そして、
図10に示すように、ノズル10の噴出口12から噴出する気体により樋形状の気流AFが形成される。
【0061】
一方、駆動室271aに導入される前記加圧気体により回転ファン271bが高速に回転することにより、発電モータ271cからその発電作用により出力される電圧が、高電圧発生器273により昇圧されて、所定の高電圧となってイオン発生器274に供給される。そして、イオン発生器274において前記高電圧が印加される放電針274aの放電作用によってイオンIが発生し、そのイオンIがノズル10の噴出口12前方の空間に向けて供給される。ノズル10の噴出口12前方の空間にイオン発生器274からのイオンIが供給されると、そのイオンIは、
図10に示すように、一気に放射状に飛散することなく、その樋形状の気流AFにつられて飛ばされる。
【0062】
更に、詳細に説明すると、前記樋形状の気流AFの湾曲凹面に沿って巻き込むような気流成分により、イオン発生器274からのイオンIは、その湾曲凹面の内側領域Ob(
図5参照)に閉じ込められつつ、自重によりその気流AFから離れずに気流AFに乗って飛ばされる。このため、イオン発生器274(放電針274a)から発生するイオンIは、一気に放射状に飛散することなく、その樋形状の気流AFにつられて比較的長い距離の間飛ばされる。そして、そのイオンIが帯電した状態の除電対象の物体に到達すると、その物体が除電される。
【0063】
このような除電装置200によれば、ノズル10の上方からその噴出口12前方の空間に向けて供給されるイオンIは、一気に放射状に飛散することなく、樋形状の気流AFにつられて比較的長い距離飛ばされるので、
図11に示すように、比較的遠く(距離L)のある限られた領域Eにより多くのイオンIを到達させることができる。その結果、そうような遠くの、ある限られた領域Eを効率よく除電することができる。
【0064】
特に、イオン発生器274の放電針274aが、ノズル10の噴出口12の前方に位置しているので、イオン発生器274(放電針274a)から発生するイオンIを、ノズル10の噴出口12から噴出する気体による樋形状の気流AFに上方から確実に乗せることができる。このため、より多くのイオンIを樋形状の気流AFに乗せて比較的長い距離飛ばすことが可能になる。このような構造は、より遠くの、ある限られた領域Eを効率よく除電することに大きく寄与する。
【0065】
なお、操作者が下部ハウジング260とトリガーレバー265の握りを緩めると、トリガーレバー265によるスイッチ263の操作ロッドの押し込みが解除される。すると、開閉バルブ262は、開状態から閉状態に切り換わり、発電機構271の駆動室271aへの加圧気体の供給が遮断される。その結果、ノズル10の噴出口12からの気体の噴出が止まるとともに、回転ファン271bの回転が止まって発電機構271での発電が停止し、イオン発生器274からイオンIが発生しなくなる。従って、トリガーレバー265を握ったりその握りを緩めたりすることにより、除電対象の物体の除電を行ったり、その除電を止めたりすることができる。例えば、作業者は、送られてくる物体に除電装置200の銃身に相当する部分270aの先端を向けてトリガーレバー265を握ることにより、その物体の除電ができ、その除電の終了後、トリガーレバー265の握りを緩めることにより、次の物体が送られてくるまでフリーな状態で待機することができる。
【0066】
次に、微細物Pを前述したような樋形状の気流AFに乗せて飛ばす飛ばし装置(
図6及び
図7参照)のいくつかの利用例について説明する。
【0067】
第1に、
図12は、飛ばし装置としての塗装装置の利用例を示す。
【0068】
図12において、飛ばし装置としての塗装装置110は、前述したノズル10を備えた気体噴出装置20と、微細物Pとしての塗料(粉体塗料、液滴状の塗料、及び霧状の塗料のいずれでもよい)を供給する塗料供給機構31とを有している。このような塗装装置110において、気体供給装置(図示略)からノズル10に形成された気体流路11に加圧気体(例えば、高圧エアー)が供給される。
【0069】
搬送路300上を塗装対象のワークWが順次移動している。搬送路300上の作業位置PにあるワークWに対向するように塗装装置110が設置されている。塗装装置110(塗料供給機構31の先端)と作業位置Pとの間は所定の距離Lに設定されている。
【0070】
ワークWが作業位置Pで停止すると、ノズル10の噴出口12から気体が噴出するとともに、塗料供給機構31からノズル10の噴出口12前方の空間に液滴状(霧状、または粉体状)の塗料が供給される。このとき、ノズル10の噴出口12から噴出する気体によりワークWに向けて樋形状の気流AWが形成され、塗料供給機構31から供給される塗料(液滴状、霧状または粉体状)が、前述した飛ばし装置の場合と同様に、飛散することなく、その樋形状の気流AFにつられて、ワークWに向けて飛ばされる。そして、その塗料によって搬送路300の作業位置PにあるワークWが塗装される。
【0071】
このような塗装装置110によれば、当該塗装装置110から作業位置Pまでの距離Lを比較的大きく設定しても、飛散させることなく、限られた領域であるワークWまで、より多くの量(より多くの液滴)の塗料を飛ばすことができる。その結果、作業位置PのワークWを効率よく塗装することができる。また、塗装装置110と作業位置Pまでの距離Lを比較的大きく設定できるので、搬送路300上の作業位置Pに対して、高い自由度をもって塗装装置110を配置することができる。
【0072】
第2に、
図13は、飛ばし装置としての除電装置の利用例を示す。
【0073】
図13において、飛ばし装置としての除電装置120は、前述したノズル10を備えた気体噴出装置20と、微細物Pとしてのイオン(荷電粒子)を供給するイオン発生器32とを有している。このような除電装置120において、気体供給装置(図示略)からノズル10に形成された気体流路11に加圧気体(例えば、高圧エアー)が供給される。
【0074】
2つの機器122、124の間に形成された比較的狭い距離Lの隙間Gが形成されている。この隙間Gを挟んで、除電装置120と帯電された物体Eとが対向して配置されている。このような状況において、ノズル10の噴出口12から気体が隙間Gを通して物体Eに向けて噴出するとともに、イオン発生器32にて発生するイオンがノズル10の噴出口12前方の空間に供給される。このとき、ノズル10の噴出口12から噴出する気体により隙間Gを通り物体Eに向かう樋形状の気流AFが形成され、イオン発生器32から供給されるイオンが、前述した飛ばし装置の場合と同様に、飛散することなく、その樋形状の気流AFにつられて、物体Eに向けて飛ばされる。そして、そのイオンが帯電された物体Eに到達して、その物体Eが除電される。
【0075】
このような除電装置120によれば、当該除電装置120から物体Eまでの距離Lが比較的大きくても、即ち、狭い隙間Gが比較的長くても、その隙間Gを形成する2つの機器122、124の表面に多くのイオンを付着させることなく、より多くの数のイオンを限られた領域である物体Eまで飛ばすことができる。その結果、そのような遠くの、物体Eを効率よく除電することができる。即ち、手の届かない隙間Gの先の物体Eであっても、効率的に除電することができる。
【0076】
第3に、
図14は、飛ばし装置としての他の塗装装置の利用例を示す。
【0077】
図14において、飛ばし装置としての塗装装置130は、前述したノズル10を備えた気体噴出装置20と、微細物Pとしての塗料(液滴状の塗料または霧状の塗料)を供給する塗料供給機構33とを有している。このような塗料供給装置130において、気体供給装置(図示略)からノズル10に形成された気体流路11に加圧気体(例えば、高圧エアー)が供給される。
【0078】
乾燥室400の天井に熱気HAを吹き出すヒータ装置410が設けられている。ヒータ装置410から吹き出される熱気HAの中に塗装対象のワークWが配置される。乾燥室400の側壁には、ノズル10及び塗料供給機構33が乾燥室400内に配置されるように、塗装装置130が設置されている。ノズル10及び塗料供給機構33はワークWに向けて配置されており、塗装装置130(塗料供給機構33の先端)からワークWまでは距離L1であり、塗装装置13(塗料供給機構33の先端)から熱気HAの領域までは距離L2である。
【0079】
このような乾燥室400において、ノズル10の噴出口12から気体が噴出するとともに、塗料供給機構33からノズル10の噴出口12前方の空間に液滴状(又は霧状)の塗料が供給される。このとき、ノズル10の噴出口12から噴出する気体によるワークWに向けて樋形状の気流AWが形成され、塗料供給機構33から供給される塗料(液滴状または霧状)が、前述した飛ばし装置の場合と同様に、飛散することなく、その樋形状の気流AFにつられて、ワークWに向けて飛ばされる。そして、その塗料によって熱気HA中に配置されたワークWが塗装される。そして、その熱気HAにより、ワークWに付着した塗料が乾燥して短時間にて定着し得る。
【0080】
このような塗装装置130によれば、当該塗装装置120から塗装対象のワークWまでの距離L1及び熱気HA領域までの距離L2のそれぞれを比較的大きく設定しても、飛散させることなく、限られた領域であるワークWまで、より多くの量(より多くの液滴)の塗料を飛ばすことができる。その結果、塗料供給機構33の先端部が乾燥して目詰まりすることが防止する等、熱気HAによる悪影響を防止しつつ、熱気HA内のワークWを効率よく塗装することができる。
【0081】
第4に、
図15は、飛ばし装置としての除電・除塵装置の利用例を示す。
【0082】
図15において、飛ばし装置としての除電・除塵装置140は、前述したノズル10を備えた気体噴出装置20と、微細物Pとしてのイオン(荷電粒子)を供給するイオン発生器34とを有している。このような除電・除塵装置140において、気体供給装置(図示略)からノズル10に形成された気体流路11に加圧気体(例えば、高圧エアー)が供給される。
【0083】
加工室500内の所定位置にワークWが配置される。ワークWは、切削機械510により切削加工される。加工室500の側壁には、ノズル10及びイオン発生器34が加工室500内に配置されるように、除電・除塵装置140が設置されている。ノズル10及びイオン発生器34はワークWに向けて配置されており、除電・除塵装置140(イオン発生器34の先端)からワークWまでは距離Lである。
【0084】
加工室500内では、ワークWが切削機械510により切削加工されて、ワークWから削りくずが飛散している。このような状況において、ノズル10の噴出口12からワークWに向けて気体が噴出するとともに、イオン発生器34にて発生するイオンがノズル10の噴出口12前方の空間に供給される。このとき、ノズル10の噴出口12から噴出する気体によりワークWに向かう樋形状の気流AFが形成され、イオン発生器32から供給されるイオンが、前述した飛ばし装置の場合と同様に、飛散することなく、その樋形状の気流AFにつられて、ワークWに向けて飛ばされる。そして、イオンがワークWに到達して、そのワークWが除電される。ワークWが除電されることにより、切削加工によって発生する削りくずがワークWに付着(静電吸着))しにくい状態になり、除電装置120におけるノズル10からの樋形状の気流AFによって、削りくずがワークWから吹き飛ばされる(除電・除塵)。よって、削りくずの付着の無い切削加工完了のワークが得られる。
【0085】
また、除電・除塵装置140からのイオンがワークWと削りくずの双方に付着することにより、ワークWと削りくずが同極性になり、削りくずがワークに付着しにくい状態になる。このような作用によっても、削りくずの付着の無い切削加工完了のワークWが得られる。
【0086】
このような除電装置140によれば、ワークWの切削を行う切削加工室と、切削後のワークWから削りくずを除去するための室とを、共通化することができるので、工場内の省スペース化を図ることができる。また、加工室500において、除電・除塵装置140(イオン発生器34の先端)からワークWまでの距離Lを比較的大きくしても、より多くのイオンを限られた領域であるワークW(削りくず)まで飛ばすことができる。このため、切削加工中のワークWから効率よく削りくずを除去することができる。また、その距離Lを比較的大きくすることができるので、ワークWから発生する削りくずにより除電・除塵装置140のノズル10やイオン発生器34が傷つくなど、悪影響を受けることを防止することができる。
【0087】
前述した種々の装置に適用されるノズル10内に形成される気体流路11の形状は、前述したものに限定されない。
【0088】
例えば、
図16に示すノズル40のように、気体の流れる方向Dにおいて、その横長形状の断面が徐々に小さくなるように連続して形成される気体流路41であってもよい。この場合、気体流路41では、各位置での横長形状の輪郭線を有する断面が、気体の流れる方向Dに、その横幅が徐々に小さくなって最小幅の湾曲凹状線分42a、42bで挟まれる噴出口42まで連続する。このような気体流路41は、それぞれ徐々に横幅が狭くなる上側湾曲凹面41aと下側湾曲凹面41bとによって挟まれた樋形状の空間として形成されたものになる。
【0089】
また、例えば、
図17に示すノズル50のように、気体の流れる方向Dにおいて、その横長形状の断面が徐々に大きくなるように連続して形成される気体流路51であってもよい。この場合、気体流路51では、各位置での横長形状の輪郭線を有する断面が、気体の流れる方向Dに、その横幅が徐々に大きくなって最大幅の湾曲凹状線分52a、52bで挟まれる噴出口52まで連続している。このような気体流路51は、それぞれ徐々に横幅が広がる上側湾曲凹面51aと下側湾曲凹面51bとによって挟まれた樋形状の空間として形成されたものになる。
【0090】
ノズル10の気体流路11は、更に、他の形状であってもよい。
【0091】
図18A及び
図18Bに示すような気体流路61が形成されたノズル60であってもよい。
【0092】
図18Aにおいて、ノズル60内に形成される気体流路61において、気体の流れる方向Dの各位置におけるその方向Dに直交する断面64の輪郭線は横長形状であって、その輪郭線の上下に対向する一対の線分64a、64bのうちの上側の線分64aが湾曲凹状線分であって、下側の線分64bが直線状線分である。このような各位置での横長形状の輪郭線を有する断面64が、気体の流れる方向Dに、同様の湾曲凹状線分62a、直線線分62bで挟まれる形状の噴出口62(
図18Bも参照)まで連続することにより形成される気体流路61は、上側湾曲凹面61aと下側平面61bとによって挟まれた樋形状の空間として形成される。
【0093】
このような形状の気体流路61が形成されたノズル61では、供給される加圧気体は、気体流路61を通る際に上面が凹んだ樋形状に整流され、その上面が凹んだ樋形状に整流された状態の加圧気体が噴出口62から噴出する。この噴出口62から噴出される気体による気流AFでは、前述した例(
図5参照)と同様に、その気流の凹んだ上面(湾曲凹面)に沿って巻き込むような気流成分が発生し、その気流AFは、その巻き込むような気流成分により樋形状が維持されつつ進んでいくものと考えられる(
図5参照)。従って、このようなノズル60によっても、一気に放射状に拡散することなく、より多くのイオン(荷電粒子)等の微小物をより遠くのある限られた領域まで飛ばすことができる気流AFを形成することができる。
【0094】
なお、前述したノズル60における気体流路61では、気体の流れる方向Dの各位置におけるその方向Dに直交する断面64の輪郭線は横長形状であって、その輪郭線の上下に対向する一対の線分64a、64bのうちの上側の線分64aが湾曲凹状線分であったが、その上側の線分64aは、直線的なV字形状であってもよい。この場合、各位置での横長形状の輪郭線を有する断面64が、気体の流れる方向Dに、同様のV字状線分62a、直線線分62bで挟まれる形状の噴出口62まで連続することにより形成される気体流路61は、上側V字状凹面61aと下側平面61bとによって挟まれた樋形状の空間として形成されることになる。
【0095】
また、
図19A及び
図19Bに示すような気体流路61が形成されたノズル70であってもよい。
【0096】
図19において、ノズル70に形成される気体流路71において、気体の流れる方向Dの各位置におけるその方向に直交する断面74の輪郭線は横長の三日月形状であって、その輪郭線(三日月形状)の上下に対向する一対の線分74a、74bの双方が湾曲凹状線分である。このような各位置での三日月形状の輪郭線を有する断面74が、気体の流れる方向Dに、同様の湾曲凹状線分72a、72bで挟まれる三日月形状の噴出口72(
図19Bも参照)まで連続することにより形成される気体流路71は、上側湾曲凹面71aと下側湾曲凹面71bとによって挟まれた樋形状の空間として形成される。
【0097】
このような形状の気体流路71が形成されたノズル70では、供給される加圧気体は、気体流路71を通る際に断面が三日月形の樋形状に整流され、そのように整流された状態の加圧気体が噴出口72から噴出する。この噴出口72から噴出される気体による気流AFでは、前述した例(
図5参照)と同様に、その気流の湾曲凹面に沿って巻き込むような気流成分が発生し、その気流AFは、その巻き込むような気流成分により樋形状が維持されつつ進んでいくものと考えられる(
図5参照)。従って、このようなノズル71によっても、一気に放射状に飛散することなく、より多くのイオン(荷電粒子)等の微小物をより遠くのある限られた領域まで飛ばすことができる気流AFを形成することができる。
【0098】
なお、前述したノズル70においける気体流路71では、、気体の流れる方向Dの各位置におけるその方向に直交する断面74の輪郭線は横長の三日月形状であって、その輪郭線(三日月形状)の上下に対向する一対の線分74a、74bの双方が湾曲凹状線分であったが、それら一対の線分74a、74bは、直線的なV字形状であってもよい。この場合、各位置での三日月形状の輪郭線を有する断面74が、気体の流れる方向Dに、同様のV字状線分72a、72bで挟まれる三日月形状の噴出口72(
図19Bも参照)まで連続することにより形成される気体流路71は、上側V字状凹面71aと下側V字状凹面71bとによって挟まれた樋形状の空間として形成される。
【0099】
以上、本発明の実施形態及びその変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
10 ノズル
11 気体流路
12 噴出口
14 断面
15 ブロック体
16 接続器
17 気体供給管
20 気体噴出装置
25 気体供給装置
30 微細物供給機構
31、33 塗料供給装置
32、34 イオン発生器
100 飛ばし装置
110 塗装装置
120、200 除電装置
130 塗装装置
140 除電・除塵装置
250 筐体(ハウジング)
260 下部筐体
261 流路
261a 上流側配管
261b 下流側配管
262 開閉バルブ
263 スイッチ
264 トリガーレバー
265 配管接続器
270 上部筐体
271 発電機構(発電部)
271a 駆動室
271b 回転ファン
271c 発電モータ(発電機)
273 高電圧発生器
273a 昇圧トランス
273b 回路基板
274 イオン発生器
274a 放電針
300 搬送路
400 乾燥室
410 ヒータ装置
500 加工室
510 切削機械