(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/16 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
A01K85/16
(21)【出願番号】P 2020024800
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】396015035
【氏名又は名称】株式会社タックルハウス
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100206139
【氏名又は名称】大塚 匡
(72)【発明者】
【氏名】二宮 正樹
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-274798(JP,A)
【文献】特開2004-222522(JP,A)
【文献】特開2005-261385(JP,A)
【文献】特開平9-163898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルアー本体内部に錘を前後方向へ移動自在に収容する錘移動空間を備え、前記錘移動空間の長さ方向概ね中央位置に前記錘移動空間を仕切るように磁石が設けられ、前記錘移動空間内には、前記磁石の後側に磁性体で形成された前記錘となる1個の作用錘が移動自在に配置され、前記磁石の前側に磁性体で形成された前記錘となる1個以上の受動錘が移動自在に配置され、前記錘移動空間の前側端部には、前側に移動してきた前記受動錘を収容し、前記受動錘を概ね水平方向に回動させる回動室が設けられていることを特徴とするルアー。
【請求項2】
前記回転室は水平方向略円形に形成されており、前記錘移動空間の前側端部は前記回転室に、前記回転室の中心を外した個所で接続されていることを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項3】
前記回動室は、前記錘移動空間より下側に向かって前記受動錘の高さの深さを有し、前記受動錘を回動自在に収容する収容部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚型の疑似餌いわゆるルアーに関し、ルアー本体内部に移動可能に錘を収容したルアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ルアーフィッシングが盛んになり、ミノープラグ、バイブレーションプラグ等、数多くの種類のルアーが開発され使用されている。ルアーフィッシングでは、キャスティング時にルアーを安定した状態で遠くまで投げられること、そして、着水後は、リーリング操作でルアーに小魚が泳いでいるかの如き動作をさせて、対象魚の興味を誘うことができるようにすることが要求され、そのために種々工夫がなされている。
【0003】
従来、ルアーを安定した状態で遠くまで投げられるようにするために、ルアー本体内部に錘を前後方向へ移動自在に収容する錘移動空間を備えたルアーが広く知られている(例えば、(特許文献1参照。)。
【0004】
また、着水後は、リーリング操作でルアーに小魚が泳いでいるかの如き動作をさせて、対象魚の興味を誘うことができるようにするものとして、ルアー本体内部に錘を前後左右方向へ移動自在に収容する錘移動空間を備え、錘移動空間内でリーリング操作により錘を移動させ、錘の移動によるルアーの重心移動によりルアーを揺動させるようにしたものが提案されている(特許文献2参照。)。
【0005】
ルアーとして、キャスティング時にルアーを安定した状態で遠くまで投げられ、且つ着水後にルアーを揺動させることができるルアーが好ましい。しかし、特許文献1、2に記載されたルアーは、いずれも錘の移動を利用したルアーであるが、特許文献1に記載されたルアーはルアーを安定した状態で遠くまで投げられるが、着水したルアーを揺動させることはできず、また、特許文献2に記載されたルアーは着水したルアーを揺動させることはできるが、ルアーを安定した状態で遠くまで投げられるものとはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-346601号公報
【文献】特開2012-4496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
安定した状態で遠くまで投げられ、且つ着水後に揺動させることができるルアーとして、特許文献1に記載されたルアーと特許文献2に記載されたルアーを組み合わせたルアーが考えられるが、大型化してしまい採用できないといった問題がある。
【0008】
本発明者は、錘の移動を利用して、ルアーを安定した状態で遠くまで投げられ且つ着水後にルアーを積極的に揺動させることができるコンパクトなルアーの開発を続けた結果、ガウス加速器の原理に着目し、これを錘の移動に応用することにより本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の目的は、錘の移動を利用して、安定した状態で遠くまで投げられ且つ着水後に積極的に揺動させることができるコンパクトなルアーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ルアー本体内部に錘を前後方向へ移動自在に収容する錘移動空間を備え、前記錘移動空間の長さ方向概ね中央位置に前記錘移動空間を仕切るように磁石が設けられ、前記錘移動空間内には、前記磁石の後側に磁性体で形成された前記錘となる1個の作用錘が移動自在に配置され、前記磁石の前側に磁性体で形成された前記錘となる1個以上の受動錘が移動自在に配置され、前記錘移動空間の前側端部には、前側に移動してきた前記受動錘を収容し、前記受動錘を概ね水平方向に回動させる回動室が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、前記錘移動空間の長さ方向概ね中央位置に前記錘移動空間を仕切るように磁石が設けられ、前記錘移動空間内には、前記磁石の後側に磁性体で形成された1個の作用錘が移動自在に配置され、前記磁石の前側に磁性体で形成された1個以上の受動錘が移動自在に配置されているので、キャスティング時に、前記錘移動空間内で、前記磁石の後側に前記作用錘を磁着させ、前側に受動錘を磁着させた状態で前記ルアー本体の後側を前方に向けて投げ出すと、前記磁石に磁着していた前記作用錘が投げ出しによる慣性と遠心力により前記磁石より離れ前記ルアー本体の後側に移動する。これにより、前記ルアー本体の重心が前記ルアー本体の後側に移動するので、ルアーを安定した状態で遠くまで投げることができ、また、前記受動錘は前記磁石に磁着し前記錘移動空間の長さ方向概ね中央位置に仮固定された状態にあるのでルアーの飛行中に暴れることがなく、ルアーは安定した姿勢で飛行することができる。
そして、着水後に前記ルアー本体の後側に移動していた前記作用錘が前記磁石に磁着した際に、その衝撃により前記磁石の前側に磁着していた受動錘が弾かれ前記磁石から離れて前記ルアー本体の前側に移動する。
前記錘移動空間の前側端部には、前側に移動してきた前記受動錘を収容し、前記受動錘を概ね水平方向に回動させる回動室が設けられているので、前側に移動した前記受動錘は前記回動室に飛び込み収容され前記回動室内を概ね水平方向に回動する。これにより、前記ルアー本体の重心が前記ルアー本体の前後左右に移動するので、リーリング操作をすることなく、ルアーを強制的に揺動させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記回転室は水平方向略円形に形成されており、前記錘移動空間の前側端部は前記回転室に、前記回転室の中心を外した個所で接続されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記回転室は水平方向略円形に形成されており、前記錘移動空間の前側端部は前記回転室に、前記回転室の中心を外した個所で接続されているので、前記錘移動空間を移動して前側端部から前記回動室に飛び込んだ前記受動錘は、前記回動室の円形に湾曲する内面に斜め方向から打ち当たる。これにより、前記受動錘を前記回動室の内面により回動する方向に誘導し、前記回動室で確実に回動させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の、前記回動室は、前記錘移動空間より下側に向かって前記受動錘の高さの深さを有し、前記受動錘を回動自在に収容する収容部を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、前記回動室は、前記錘移動空間より下側に向かって前記受動錘の高さの深さを有し、前記受動錘を回動自在に収容する収容部を備えているので、前記錘移動空間を移動して前側端部から前記回動室に飛び込んだ前記受動錘は、前記回動室に備えられた前記収容部に入り回動する。これにより、前記収容部内で回動する前記受動錘は前記収容部の内壁面により前記回動室から飛び出すことが阻止され、回動の途中で前記錘移動空間に移動することがなく、前記回動室で確実に回動を続けることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係るルアーによれば、錘の移動を利用して、安定した状態で遠くまで投げられ且つ着水後に積極的に揺動させることができ、しかも構成が簡単なのでコンパクトなルアーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るルアーの実施の形態の一例を示す縦断面図である。
【
図3】ルアーを投げ出したときの作用錘の移動状態を示す縦断面説明図である。
【
図4】ルアーの後側に移動していた作用錘が戻り磁石に磁着したときの受動錘の移動状態を示す縦断面説明図である。
【
図5】受動錘が回動室に収容され回動している状態を示す縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るルアーにおける実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至
図6は本発明に係るルアーにおける実施の形態の一例を示すものであり、
図1は本例のルアーの縦断面図、
図2は
図1の横断面図、
図3はルアーを投げ出したときの作用錘の移動状態を示す縦断面説明図、
図4はルアーの後側に移動していた作用錘が戻り磁石に磁着したときの受動錘の移動状態を示す縦断面説明図、
図5は受動錘が回動室に収容され回動している状態を示す縦断面説明図、
図6は
図5の横断面説明図である。
【0019】
本例のルアーは、外形が対象魚の餌、例えば小魚に似るように成形されたルアー本体1を備えている。ルアー本体1は、左右に縦割りされてなる一対のピースを合成樹脂等により成形し、この一対のピースを接着又は溶着等により両者を一体にして形成される。
【0020】
ルアー本体1の頭部には、釣糸を取り付けるための釣糸止着部2が設けられ、ルアー本体1の尾部及び腹部には、釣針を取り付けるための釣針止着部3が設けられている。
【0021】
ルアー本体1の内部には、後述する作用錘と受動錘を前後方向に移動可能に収容する筒状の錘移動空間4を備えている。
錘移動空間4の長さ方向概ね中央位置には、錘移動空間4を仕切るように磁石5が設けられている。
【0022】
錘移動空間4内には、磁石5の後側に磁性体で形成された1個の作用錘6が移動自在に配置され、磁石5の前側に磁性体で形成された1個以上の受動錘7が移動自在に配置されている。受動錘7の数にあっては特に限定されないが、後述するように作用錘6が磁石5に引き寄せられて衝突したときに、磁石5にの反対側に磁着している複数の受動錘7のうちの最前側にある受動錘7を最も高速で移動させることのできる数であることが好ましい。本例では2個の受動錘7a、7bが配置されている。
【0023】
作用錘6および受動錘7の形状は、本例ではいずれも球体に形成されており、筒状の錘移動空間4は、内径が作用錘6および受動錘7の直径よりわずかに大きい寸法となっている。
【0024】
また、錘移動空間4の前側端部には、前側に移動してきた受動錘7を収容し、受動錘7を概ね水平方向に回動させる回動室8が設けられている。本例では、回転室8は水平方向略円形に形成されており、錘移動空間4の前側端部は回転室8に、回転室8の中心を外した個所で接続されている(
図2参照。)。
また、本例では、回動室8の中心には、垂直方向に伸びる棒9が設けられている。
また、本例では、回動室8は、錘移動空間4より下側に向かって受動錘7の高さ、すなわち直径と概ね同じ寸法の深さLを有し、受動錘7を回動自在に収容する収容部9を備えている。
【0025】
次ぎに、このように構成された本例のルアーの作用について説明する。
まず、竿先のガイドよりわずかに釣糸を出した状態でルアー本体1を垂下させる。このときの錘移動空間4内における作用錘6および受動錘7は、
図1に示すようにそれぞれ磁石5に磁着した状態とする。この状態は、ルアー本体1の後側を上に向けることにより作用錘6が錘移動空間4内を下方に移動して磁石5に磁着させ、そして、この状態からルアー本体1の後側を下に向けることにより受動錘7が錘移動空間4内を下方に移動して磁石5に磁着させるといった簡単な操作で成すことができる。
【0026】
この状態から、ルアー本体1を、ルアー本体1の後側を前方に向けて投げ出す。このとき、磁石5に磁着していた作用錘6が投げ出しによる慣性と遠心力により磁石5より離れルアー本体1の後側に移動し、これによりルアー本体1の重心がルアー本体1の後側に移動するので(
図3参照。)、ルアーは飛行方向に後側を向けた姿勢で安定した状態で遠くまで飛行する。また、受動錘7は磁石5に磁着し錘移動空間4の長さ方向概ね中央位置に仮固定された状態にあるのでルアーの飛行中に暴れることがなく、ルアーは安定した姿勢で飛行する。
【0027】
そして、ルアー本体1が着水した後、ルアー本体1の後側に移動していた作用錘6が磁石5に磁着した際に、その衝撃により磁石5の前側に磁着していた受動錘7がガウス加速器の原理により弾かれ、磁石5から離れてルアー本体1の前側に高速で移動する(
図4参照。)。
【0028】
本例では錘移動空間4内に2個の受動錘7a,7bが配置されているので、前側の受動錘7bが一層の高速となって移動する。そして、錘移動空間4内を前側に高速移動した受動錘7bは錘移動空間4の前側端部に設けられている回動室8内に飛び込み収容され回動室8内を概ね水平方向に回動する。
【0029】
本例では、回転室8は水平方向略円形に形成されており、錘移動空間4の前側端部は回転室8に、回転室8の中心を外した個所で接続されているので、錘移動空間4を移動して前側端部から回動室8に飛び込んだ受動錘7bは、回動室8の円形に湾曲する内面に斜め方向から打ち当たり、回動室8の内面により回動する方向に誘導されることになり、回動室8で確実に回動する(
図6参照)。
【0030】
仮に、回動室8に飛び込んだ受動錘7bが回転室8の中心に向かって飛び込んだとしても、本例では、回動室8の中心に垂直方向に伸びる棒9が設けられているので、受動錘7bは棒9に衝突して移動方向が変化し、その結果、回動室8の円形に湾曲する内面に斜め方向から打ち当たり、回動室8での回動を確実なものとしている。
【0031】
また、本例では、回動室8は、錘移動空間4より下側に向かって受動錘7bの高さ、すなわち直径と概ね同じ寸法の深さLを有し、受動錘7を回動自在に収容する収容部9を備えているので、錘移動空間4を移動して前側端部から回動室8に飛び込んだ受動錘7bは、回動室8に備えられた収容部9に入り回動し、収容部9内で回動する受動錘7bは収容部9の内壁面により回動室8から飛び出すことが阻止され、回動の途中で錘移動空間4に移動することはない(
図5参照)。
【0032】
このようにして、回動室8に飛び込んだ受動錘7bは、回動室8内を概ね水平方向に回動し、これにより、ルアー本体1の重心がルアー本体1の前後左右に移動するので、着水したルアーをリーリング操作をすることなく強制的に揺動させることができることになる。
【符号の説明】
【0033】
1 ルアー本体
2 釣糸止着部
3 釣針止着部
4 錘移動空間
5 磁石
6 作用錘
7 受動錘
7a 後側の受動錘
7b 前側の受動錘
8 回転室
9 収容部
10 棒