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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】水準器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/24 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
G01C9/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020180677
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071615
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591006634
【氏名又は名称】株式会社エビス
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】丸山 清
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-162013(JP,U)
【文献】国際公開第2015/049884(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/016880(WO,A1)
【文献】特開2014-095632(JP,A)
【文献】特開2015-121532(JP,A)
【文献】特開平07-019864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/00- 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡管を備え、この気泡管により水平度若しくは垂直度を測定する水準器の製造方法であって、基材を押出成形する押出成形工程と、前記基材を所定の長さに切断して水準器半体部材を形成する切断工程と、前記水準器半体部材を二体用意し、一体を水準器の基体の正面側を構成する正面側基体半体に加工し、もう一体を前記基体の背面側を構成する背面側基体半体に加工する加工工程と、前記正面側基体半体若しくは前記背面側基体半体に前記気泡管を配設し該正面側基体半体と該背面側基体半体とを接合する接合工程とを有することを特徴とする水準器の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の水準器の製造方法において、前記押出成形工程は、前記基体に設けられる基準面となる一側面を有する板状の前記基材を押出成形することを特徴とする水準器の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の水準器の製造方法において、前記基材の一側面は、前記基準面に設けられるV溝を形成するための斜面に形成されていることを特徴とする水準器の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の水準器の製造方法において、前記加工工程は、前記正面側基体半体及び前記背面側基体半体の接合面となる内面側に前記気泡管を配設する気泡管配設部と、磁石を備える吸着部材を配設する吸着部材配設部とを形成する工程を含むものであることを特徴とする水準器の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の水準器の製造方法において、前記押出成形工程は、成形素材にアルミニウム若しくはアルミニウム合金を用いることを特徴とする水準器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水準器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水準器には、図9,10に図示したような、水準器基準面25を有する正面側基体半体23aと、水準器基準面25を有しない背面側基体半体23bとを接合することにより基体23が形成されるように構成されているものがある(図中符号24は気泡管、26はV溝、28は吸着部材である。)。
【0003】
このような水準器を製造する場合、例えばロストワックス法やダイカスト法などの鋳造加工でおおよその形状の基材を成形し、この基材を切削加工して所定形状の基体半体23a,23bを作製し、これらを接合して基体を形成する方法が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の場合、水準器基準面の有無により基体半体の外形状が大きく異なるため、正面側基体半体用と背面側基体半体用の二種類の金型が必要となる。
【0005】
また、これらの金型は上記正面側基体半体、背面側基体半体の夫々の専用金型となるため、デザインや大きさが異なるものを作製する場合は、別の金型を新たに用意しなければならず、その金型の作製にコストがかかってしまうことから、デザインの自由度が制限されてしまう。
【0006】
近年の水準器は携帯し易いようにコンパクトな形状に構成され、それに伴い基体の厚さ(幅寸法)も薄くなり、このような厚さが薄い基体を構成する基体半体を鋳造加工により成形する場合、内部に鬆ができ易くなり、切削加工においてこの鬆が表面化して品質が損なわれてしまうことがあった。
【0007】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、加工自由度が高く、且つ、低コストであり、しかも、厚さの薄い基体を作製する場合でも基体に鬆が生じず品質が損なわれない水準器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
気泡管4を備え、この気泡管4により水平度若しくは垂直度を測定する水準器の製造方法であって、基材1を押出成形する押出成形工程と、前記基材1を所定の長さに切断して水準器半体部材2を形成する切断工程と、前記水準器半体部材2を二体用意し、一体を水準器の基体3の正面側を構成する正面側基体半体3aに加工し、もう一体を前記基体3の背面側を構成する背面側基体半体3bに加工する加工工程と、前記正面側基体半体3a若しくは前記背面側基体半体3bに前記気泡管4を配設し該正面側基体半体3aと該背面側基体半体3bとを接合する接合工程とを有することを特徴とする水準器の製造方法に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の水準器の製造方法において、前記押出成形工程は、前記基体3に設けられる基準面5となる一側面を有する板状の前記基材1を押出成形することを特徴とする水準器の製造方法に係るものである。
【0011】
また、請求項2記載の水準器の製造方法において、前記基材1の一側面は、前記基準面5に設けられるV溝6を形成するための斜面6aに形成されていることを特徴とする水準器の製造方法に係るものである。
【0012】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の水準器の製造方法において、前記加工工程は、前記正面側基体半体3a及び前記背面側基体半体3bの接合面となる内面側に前記気泡管4を配設する気泡管配設部7と、磁石8aを備える吸着部材8を配設する吸着部材配設部9とを形成する工程を含むものであることを特徴とする水準器の製造方法に係るものである。
【0013】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の水準器の製造方法において、前記押出成形工程は、成形素材にアルミニウム若しくはアルミニウム合金を用いることを特徴とする水準器の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のようにしたから、加工自由度が高く、且つ、低コストであり、しかも、厚さの薄い基体を作製する場合でも基体に鬆が生じず品質が損なわれない水準器の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例の水準器を示す斜視図である。
図2】本実施例の水準器を示す概略側断面図である。
図3】本実施例の押出成形工程を示す説明図である。
図4】本実施例の切断工程を示す説明図である。
図5】本実施例の加工工程を示す説明図であり、(a)は加工前の水準器半体部材、(b)は加工後の正面側基体半体の内面側、(c)は加工後の正面側基体半体の外面側を夫々示す図である。
図6】本実施例の加工工程を示す説明図であり、(a)は加工前の水準器半体部材、(b)は加工後の背面側基体半体の内面側、(c)は加工後の背面側基体半体の外面側を夫々示す図である。
図7】本実施例の接合工程を示す説明図である。
図8】本実施例の接合工程における水準器の接合前状態を示す説明斜視図である。
図9】従来の製造方法の接合工程を示す説明図である。
図10】従来の製造方法の接合工程における水準器の接合前状態を示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
本発明は、例えば、押出成形により基材1を成形し、続いて、この基材1を所定の長さに切断して水準器半体部材2を複数形成し、続いて、二つの水準器半体部材2を用意し、一つを水準器の基体3の正面側を構成する正面側基体半体3aに加工し、もう一つを基体3の背面側を構成する背面側基体半体3bに加工し、続いて、気泡管4を正面側基体半体3a、背面側基体半体3bのいずれか一方に配設した後、正面側基体半体3aと背面側基体半体3bとを適宜な手段により接合する。これにより、水準器の基体3が得られる。
【0018】
本発明は、上述のように、基材1を押出成形で成形するから、鋳造加工のように多くの金型を必要とせず、金型に掛かるコストを削減することができ、さらに、例えば、基材1を板状に押出成形し、この板状基材1から得られる水準器半体部材2を加工することで、金型を用いた鋳造加工に比べて、加工の自由度が向上し、一種類の水準器半体部材2からデザインや大きさが異なるものを作成することが可能となる。
【0019】
しかも、本発明は、水準器の基体3を構成する正面側基体半体3a、背面側基体半体3bが夫々、押出成形により成形した基材1を所定長さに切断して作製された水準器半体部材2を加工したものであるから、正面側基体半体3a、背面側基体半体3bの厚さを薄くしても内部に鬆が生じることはなく、従来の製造方法のように鬆の表面化によって品質が損なわれることがない水準器の製造方法となる。
【実施例
【0020】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施例は、気泡管4を備え、この気泡管4により水平度若しくは垂直度を測定する水準器の製造方法であって、具体的には、図1,2に示すような、正面側基体半体3aと背面側基体半体3bとが接合されてなる基体3に気泡管4と吸着部材8が備えられ、基準面5にV溝6が形成されている水準器の製造方法である。
【0022】
具体的には、本実施例は、基材1を押出成形する押出成形工程と、基材1を所定の長さに切断して水準器半体部材2を形成する切断工程と、水準器半体部材2を二体用意し、一体を水準器の基体3の正面側を構成する正面側基体半体3aに加工し、もう一体を基体3の背面側を構成する背面側基体半体3bに加工する加工工程と、正面側基体半体3a若しくは背面側基体半体3bに気泡管4を配設し、正面側基体半体3aと背面側基体半体3bとを接合する接合工程とを有し、この押出成形工程、切断工程、加工工程、接合工程の順に作業が行われる。
【0023】
以下、本実施例に係る各工程について、上記作業順に沿って詳述する。
【0024】
押出成形工程は、押出成形機により長尺の基材1を連続的に押出成形する工程である。
【0025】
本実施例においては、成形素材にアルミニウム若しくはアルミニウム合金を用い、図3に示すように、この成形素材を押出成形機により板状に押出成形して基材1を得ている。
【0026】
具体的には、この押出成形工程では、一側面が無加工で水準器の基体3に設けられる5基準面(基準面5の半分側)になる状態に成形される基材1を押出成形しており、詳細には、本実施例では、この一側面が基準面5に設けられるV溝6を形成するための斜面6aに形成された状態の基材1を押出成形している。
【0027】
切断工程は、上記押出成形工程の次の工程であり、図4に示すように、押出成形された長尺の基材1を所定の長さ毎に切断し(一定の間隔で切断し)、一定の長さ(同一形状)の水準器半体部材2を複数体形成する工程である。
【0028】
この切断工程において、基材1の切断間隔を変更することにより、大きさの異なる(長さの異なる)水準器の製造にも容易に対応可能となる。
【0029】
加工工程は、上記切断工程の次の工程であり、図5,6に示すように、切断工程で形成した水準器半体部材2を二体用意し、一体を水準器の基体3の正面側を構成する正面側基体半体3aに加工し、もう一体を前記基体3の背面側を構成する背面側基体半体3bに加工する工程である。
【0030】
本実施例は、押出成形工程で押出成形される基材1の段階で、既に水準器の基体3の基準面5の半分側と、基準面5に設けられるV溝6を形成する斜面6aが形成されており、この加工工程では、基準面5及びV溝6を形成するための加工は基本的に行われず、主に外形状の加工と、気泡管4を配設する気泡管配設部7及び磁石8aを備える吸着部材8を配設する吸着部材配設部9を形成する加工が行われる。
【0031】
接合工程は、上記加工工程の次の工程であり、加工工程で得た正面側基体半体3aと背面側基体半体3bとを接合し基体3を形成する工程である。
【0032】
具体的には、正面側基体半体3a若しくは背面側基体半体3bのいずれか一方の気泡管配設部7に気泡管4を配設すると共に吸着部材配設部9に吸着部材8を配設した後、正面側基体半体3aと背面側基体半体3bとを接合し、基体3を形成する作業が行われる。
【0033】
本実施例では、図7,8に示すように、正面側基体半体3aに気泡管4及び吸着部材配設部9を配設し、背面側基体半体3bを上方から重ね合わせた後、固定ネジを用いて正面側基体半体3aと背面側基体半体3bとを接合固定し基体3を形成している。
【0034】
また、本実施例は、この正面側基体半体3aと背面側基体半体3bとを接合により、正面側基体半体3aに設けられた斜面6aと、背面側基体半体3bに設けられた斜面6aとが係合してV溝6が形成され、基準面5にV溝6を有する基体3が形成される。
【0035】
上述のように、本実施例の水準器の製造方法は、基材1を押出成形で成形するから、従来法で用いられる鋳造加工のような多くの金型を必要とすることがなくなり、金型に掛かるコストを削減することができる。
【0036】
また、本実施例の水準器の製造方法は、基材1を板状に押出成形し、この板状基材1から得られる水準器半体部材2を加工するから、金型を用いた鋳造加工に比べて、加工の自由度が向上し、一種類の水準器半体部材2からデザインや大きさが異なるものを作成することが可能となる。
【0037】
さらに、本実施例の水準器の製造方法は、押出成形の基材1から形成した水準器半体部材2は内部に鬆が生じていないから、この水準器半体部材2を正面側基体半体3a及び背面側基体半体3bに加工する際、従来の製造方法のような鬆の表面化の不具合が生じず、よって、正面側基体半体3a、背面側基体半体3bの薄厚化が容易に可能となる。
【0038】
しかも、本実施例の水準器の製造方法は、押出成形で基準面5及びV溝6を形成する斜面6aを形成するから、切削加工よりも寸法精度の高い基準面5及びV溝6を容易に形成することができ、測定精度に優れた水準器を容易に作製することができる。
【0039】
このように、本実施例は、加工自由度が高く、且つ、低コストであり、しかも、厚さの薄い基体3を作製する場合でも基体3に鬆が生じず品質が損なわれない画期的な水準器の製造方法となる。
【0040】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0041】
1 基材
2 水準器半体部材
3 基体
3a 正面側基体半体
3b 背面側基体半体
4 気泡管
5 基準面
6 V溝
6a 斜面
7 気泡管配設部
8 吸着部材
8a 磁石
9 吸着部材配設部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10