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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】母乳殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 9/00 20060101AFI20220801BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A61J9/00 V
A47J27/00 106
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020212357
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098773
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000176604
【氏名又は名称】三田理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】塩田 眞也
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-164483(JP,A)
【文献】実開昭54-033291(JP,U)
【文献】実開昭60-076889(JP,U)
【文献】登録実用新案第3045490(JP,U)
【文献】実開昭51-160582(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 9/00
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母乳を入れる横断面六角形状の哺乳瓶(1)と、
上記哺乳瓶(1)を上方から挿入可能な横断面六角形状の収納空間(3)を形成する金属製ホルダ筒体(2)と、
上記ホルダ筒体(2)の外周面を360°にわたって包囲状に貼着した面状加熱ヒータ(10)と、
を具備し、
上記ホルダ筒体(2)には、下面(2B)から所定深さ寸法(H)の測温用孔部(8)が設けられ、上記哺乳瓶(1)内の母乳温度を間接的に測定するための母乳温度センサ(S 1 )の線状検知部(25)を上記孔部(8)へ挿入したことを特徴とする母乳殺菌装置。
【請求項2】
上記温度センサ(S 1 )の線状検知部(25)の、ホルダ筒体(2)への挿入深さ寸法(H)は、上記ホルダ筒体(2)の高さ寸法を(H 0 )とすると、次の数式1が成立する請求項1記載の母乳殺菌装置。
0.10・H 0 ≦H≦0.40・H 0 …(数式1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母乳殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、哺乳瓶は、煮沸消毒や、蒸気殺菌装置(例えば、特許文献1参照)によって、殺菌していたが、母乳自体が、病原菌やウイルスに侵されている場合もあり、母乳の入った哺乳瓶を湯に浸し、温度計を母乳内に入れて、所定の殺菌加熱温度になるまで湯煎していた。
【0003】
しかし、湯煎は、母乳の温度管理が難しいという問題があった。つまり、母乳の温度を高くし過ぎると、タンパク質の変質(免疫グロブリンの変性)やビタミンの喪失が起こり、母乳温度が低いままで終了すると、コロナウイルスやサイトメガロウイルス(CMV)やHIVウイルスや細菌等を、完全に殺菌できていないといった問題があった。また、手間と時間がかかるといった問題や、母乳に、直接、温度計を入れるのは不衛生なため、哺乳瓶とは別に、温度計の殺菌や洗浄も必要であった。
【0004】
そこで、本特許出願人は、母乳を容易かつ確実に殺菌可能で、しかも、衛生的な新規な母乳殺菌装置について、かつて、図12図13に示すような構造のものを、提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公昭48-32068号公報
【文献】特許第5940574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の発明にあっては、次のような問題が残されている。
即ち、(i)図12図13に示すように、哺乳瓶51は横断面形状が6角形であり、これを挿入して加熱するホルダ筒体52は円筒状であったので、加熱ヒータ線53からの熱が、哺乳瓶51の6個の角部51eのみを介して、伝達される。(ii)従って、効率的かつ迅速な母乳の加熱が難しいという問題、(iii)図12に示すように、ホルダ筒体52に加熱ヒータ線53を何回も巻付ける作業が容易ではなく、製作が非能率であるという問題、(iv)母乳温度センサ55は哺乳瓶51の底壁54に当接するように配設していたが計測誤差が大きくなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、母乳の温度を、例えば、62.5℃~65℃の温度(低温)まで加熱して、母乳を容易かつ迅速に殺菌可能であり、かつ、衛生的に殺菌でき、しかも、製作が容易である母乳殺菌装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係る母乳殺菌装置は、母乳を入れる横断面六角形状の哺乳瓶と;上記哺乳瓶を上方から挿入可能な横断面六角形状の収納空間を形成する金属製ホルダ筒体と;上記ホルダ筒体の外周面を360°にわたって包囲状に貼着した面状加熱ヒータと;を具備し、上記ホルダ筒体には、下面から所定深さ寸法の測温用孔部が設けられ、上記哺乳瓶内の母乳温度を間接的に測定するための母乳温度センサの線状検知部を上記孔部へ挿入した。
また、上記温度センサの線状検知部の、ホルダ筒体への挿入深さ寸法Hは、上記ホルダ筒体の高さ寸法をH0 とすると、0.10・H0 ≦H≦0.40・H0 の関係が成立する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、哺乳瓶への熱伝導効率が高く、所定の温度(例えば62.5℃~65℃)まで短時間にて上昇される。また、加熱ヒータの取着作業が容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の一形態を示す全体斜視図である。
図2】要部断面説明図である。
図3】ホルダ筒体に、哺乳瓶を挿入(セット)した状態を示す要部断面図である。
図4】要部正面図である。
図5】要部平面図である。
図6】要部底面図である。
図7】ホルダ筒体の一例を示した斜視図である。
図8】ホルダ筒体の平面図である。
図9】ホルダ筒体と、その外周面に貼付けた両面粘着テープを示す正面図である。
図10図9の底面図である。
図11】面状加熱ヒータの一例を示す展開図である。
図12】従来例を示す断面正面図である。
図13】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
図1に示すように、全体がやや角張った筐体9を有し、その上壁面9Aには、4個の孔(図示省略)が貫設され、その孔に各々哺乳瓶が挿入保持される(図2参照)。また、筐体9の外面には、母乳温度や設定内容を表示可能なLED表示パネルや液晶モニター等の表示手段4や、各種設定や電源のON-OFF、加熱殺菌開始・終了等を操作可能なスイッチやタッチパネル等の操作手段6が、付設されている。なお、図1に示すように、4個のキャップ11,11,11,11が設けられているが、後述する哺乳瓶1の上端部(蓋1A)を被覆状に隠すためのものである(図2参照)。
【0012】
図2図11に示す本発明の実施の一形態では、哺乳瓶1は(上部位を除いて)その横断面形状が六角形であって、材質は合成樹脂から成る。この哺乳瓶1内に母乳を入れ、蓋1Aにて密封される。
【0013】
2は,Al(アルミニウム)等の伝熱性に優れた金属製のホルダ筒体であって、横断面六角形状の上記哺乳瓶1を、上方から挿入可能な横断面六角形状の収納空間3を有する。
また、ホルダ筒体2の円形の外周面2Aを、360°にわたって包囲状として、面状加熱ヒータ10が貼着されている。
【0014】
この面状加熱ヒータ10を貼着する一つの方法について説明すると、図8に示すホルダ筒体2の外周面2Aに、両面粘着テープ5を図9に示すように貼る。その上から、図11に示すような面状加熱ヒータ10を巻付状に押圧する。これによって、迅速に、かつ、簡単に、面状加熱ヒータ10をホルダ筒体2の外周面2Aに、貼着可能である。なお、図示省略したが、電気的絶縁性の高い絶縁フィルムを、上記外周面2Aに貼って、その上に両面粘着テープ5を貼る構成とするのが好ましい。
【0015】
ここで、面状加熱ヒータ10について説明すると、ニクロム線又はニクロム箔等の抵抗加熱線12を多数の弯曲部を有する蛇行線状として、かつ、面状に形成し(図11参照)、その両面からサンドウィッチ状として、シリコーンゴム層にて被覆一体化した構造であり、あくまでも、抵抗加熱の一種である。しかも、シリコーンゴム層によって、蛇行線状かつ全体平面状の抵抗加熱線12は確実に絶縁被覆されている。
【0016】
なお、図11に示すように、面状加熱ヒータ10には、2本のリード線13,13、ヒューズ14、中継リード線15、押さえシート片16、その他の電気部品等が、予め付設された一体構造としておいて、前述の両面粘着テープ5(又は、図示省略した接着剤や貼着剤等)によって、軽々と、ホルダ筒体2の外面に、巻付(巻設)状に、貼着できる。
【0017】
図2図9図10に於て、前記収納空間3の底面を形成するAl等の金属プレート7がホルダ筒体2の下端面に、溶接や接着等にて、一体状に付設され、収納空間3の内周囲及び底面の継ぎ目から、液体が外部漏洩しない密封状とすることが、望ましい。
【0018】
また、この金属プレート7の下面を受ける断熱底壁部材17が設けられている。しかも、この断熱底壁部材17は、外鍔部17Aを、ラジアル外方へ突出状として、有している。
また、ホルダ筒体2の外周面2Aに貼着された面状加熱ヒータ10を、さらに、その外側から包囲する断熱円筒壁部材18が付設される。
【0019】
図2図3に示すように、哺乳瓶1の横断面六角壁部20は、ホルダ筒体2の横断面六角形状の収納空間3の内周面に対し、密接して、保持されている。従って、面状加熱ヒータ10にて加熱されたホルダ筒体2からの熱を、横断面の略360°にわたって均等に、哺乳瓶1に、伝達する。
【0020】
また、図2図3図10に示すように、ホルダ筒体2には、下面2Bから所定深さ寸法Hの測温用孔部8が穿設されている。なお、金属プレート7が下面2Bに固設されているので、この金属プレート7にも、連続状に孔部8が貫設される。
【0021】
図2に於て、S1 は母乳温度センサであり、この温度センサS1 の線状検知部25が、下方から測温用孔部8に挿入される。なお、伝熱性に優れたハンダや接着剤等にて固着するのが好ましい。
そして、図2に於て、温度センサS1 の線状検知部25の、ホルダ筒体2への挿入深さ寸法Hは、ホルダ筒体2の高さ寸法をH0 とすると、
0.10・H0 ≦H≦0.40・H0 とする。
より望ましくは、
0.20・H0 ≦H≦0.35・H0 とする。
下限値未満であると、母乳の温度を正確に検出しにくくなる。上限値を越すと、孔部8の穿孔加工が急に困難となる。
【0022】
次に、図4図6、及び、図2に於て、追加説明すると、哺乳瓶1が円滑に上方から挿入できるように、六角形状のガイド孔21を有する誘導ガイド上蓋22が配設され、また、下方位置には、断熱底壁部材17を受けるベース板23が配設され、上蓋22とベース板23は、六角連結杆56,56,56にて、上下を連結して締付けられる。つまり、図例では、各連結杆56は、上端・下端に、右ネジと左ネジを形成すると共に、上蓋22には右ネジ孔を、ベース板23には左ネジを形成し、もって、六角連結杆56を作業工具にて一方向に回転させると、上下同時に螺進して、上蓋22とベース板23は接近させ、ホルダ筒体2等を上下から挾圧保持する構造である。
なお、上蓋22とベース板23は、プラスチック製とすることも望ましい。
また、ベース板23の下面には、クリップ26を取着し、このクリップ26の弾発付勢力にて、母乳温度センサS1 を取着している(図2図4図6参照)。
【0023】
ところで、図2に示すように、温度制御部Cは、母乳温度センサS1 と、面状加熱ヒータ10とを、接続する配線に介設されるが、この温度制御部Cは、図12に於ける母乳温度制御部57等の従来技術(前記特許文献1)で十分である。
また、母乳温度制御回路(制御方法)は、従来公知技術(特許文献1)と同様の構成で済む。
【0024】
本発明は、以上詳述したように、母乳を入れる横断面六角形状の哺乳瓶1と;上記哺乳瓶1を上方から挿入可能な横断面六角形状の収納空間3を形成する金属製ホルダ筒体2と;上記ホルダ筒体2の外周面を360°にわたって包囲状に貼着した面状加熱ヒータ10と;を具備する構成であるので、図3に示したように、哺乳瓶1の横断面六角形の外周面に対して、(ヒータ10にて加熱された)ホルダ筒体2の内面が接近し、熱伝導効率が高く、短時間で、かつ高精度の温度管理にて、母乳を加熱殺菌できる。横断面を六角形としたので哺乳瓶1の剛性がアップし、手で押しても簡単に変形せずに済み、内容物(母乳)が吹き出ないので、装置への出し入れの際に、安心して楽に作業できる。また、面状加熱ヒータ10をホルダ筒体2の外周面に(両面粘着テープ等にて)簡単かつ迅速に貼着でき、製作が従来よりも著しく容易で、作業能率も向上する。
【0025】
また、上記収納空間3の底面を形成する断熱底壁部材17が付設され、さらに、上記ホルダ筒体2を包囲する上記面状加熱ヒータ10を、さらに包囲する断熱円筒壁部材18を付設したので、面状加熱ヒータ10の熱は、ラジアル内方向に在る哺乳瓶1に有効に伝達され、かつ、母乳の熱がアキシャル下方向に逃げず、短い時間をもって、無駄なく母乳を加熱殺菌することが可能となる。
【0026】
また、上記哺乳瓶1の横断面六角壁部20は、ホルダ筒体2の横断面六角形状の収納空間3の内周面に対して、密接して、上記面状加熱ヒータ10にて加熱された上記ホルダ筒体2からの熱を、略360°にわたって均等に上記哺乳瓶1に伝達するよう構成したので、熱伝導効率が一層、確実にアップする。これによって、短い時間で、高精度の温度管理をもって、母乳の加熱殺菌を行うことが可能となる。
【0027】
また、上記ホルダ筒体2には、下面2Bから所定深さ寸法Hの測温用孔部8が設けられ、上記哺乳瓶1内の母乳温度を間接的に測定するための母乳温度センサS1 の線状検知部25を上記孔部8へ挿入したので、面状加熱ヒータ10から母乳に到達する途中において、高精度に温度を検知できる。さらに、従来の図12に示したような(哺乳瓶51の)底壁54に対して温度センサ55にて受持当接する構造に比較して、温度測定のバラツキ(誤差)が減少する。即ち、従来(図12)では、哺乳瓶51の底壁54と温度センサ55との間に、ゴミや塵等の不純物が介在し易い場合もあったが、本発明では、不純物の介在の虞れが無く、安定して常に高精度の温度測定が可能となる。
【0028】
また、上記温度センサS1 の線状検知部25の、ホルダ筒体2への挿入深さ寸法Hは、上記ホルダ筒体2の高さ寸法をH0 とすると、0.10・H0 ≦H≦0.40・H0 としたので、測温用孔部8の穿孔を容易に行い得ると共に、十分に深く、線状検知部25が挿入されて、母乳温度を高精度に検知(演算)可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 哺乳瓶
2 ホルダ筒体
2B 下面
3 収納空間
5 両面粘着テープ
7 金属プレート
8 測温用孔部
10 面状加熱ヒータ
12 抵抗加熱線
17 断熱底壁部材
18 断熱円筒壁部材
20 六角壁部
25 線状検知部
H 深さ寸法
0 高さ寸法
1 母乳温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13