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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20220801BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B23Q3/06 304Z
B23Q7/04 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021033882
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000150121
【氏名又は名称】タケダ機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】本屋 大吾
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064839(JP,A)
【文献】特開昭59-064250(JP,A)
【文献】特開2000-233338(JP,A)
【文献】実開平06-074248(JP,U)
【文献】特開平07-314278(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016220177(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
B23Q 7/04
B23B 13/00 - 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材を搬送する搬送路上に設けられ、前記被加工材の後端部を掴んで前記搬送路上を移動し、切削加工を行う切削加工位置及びその下流側の切断加工を行う切断加工位置に前記被加工材を搬送するグリッパーと、
前記切削加工位置に搬送された前記被加工材を挟持するバイスと、
前記切断加工位置に配置され、前記切断加工位置に搬送された前記被加工材を所定長さに切断する鋸刃と、を備えた工作機械であって、
前記被加工材の切削加工時に、
前記バイスは、前記被加工材を挟持した状態で、前記グリッパーの移動方向に移動可能であるとともに、前記グリッパーは、前記バイスによる当該移動に同期して、前記被加工材を掴んだまま前記搬送路上を移動可能であり、
前記グリッパーは、前記切削加工後に、前記被加工材を掴み続けながら前記搬送路上を移動することにより前記切断加工位置へ前記被加工材を搬送するとともに、前記切断加工中も前記被加工材を掴み続けることが可能であることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記グリッパーは、前記搬送路上を移動可能なグリッパー装置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、形鋼等の被加工材を切削加工する工作機械として、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1の工作機械は、加工位置に被加工材を搬送する搬送用バイスと、加工位置に搬送されてきた被加工材を挟持固定する主バイスと、を備えている。この工作機械では、搬送用バイスにより加工位置に被加工材を搬送し、搬送されてきた被加工材を主バイスで挟持固定し、回転駆動されたドリル刃を被加工材の所定位置に押し付けることで、被加工材の穴開け加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-196910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の工作機械の主バイスは、被加工材の搬送方向に直交する方向に作動して被加工材を挟持する機能のみ有していた。このため、穴開け加工時に、被加工材の搬送方向に主バイスを動かすことができず、搬送方向に延在する長穴等を加工することができなかった。
搬送方向に延在する長穴等の加工を行うために、搬送用バイスを利用することが考えられるが、搬送用バイスの挟持位置が加工位置から離間しているため、加工時に振動等が生じやすいという問題が生じる。加工時の振動等が生じないように、搬送用バイスと主バイスとで被加工材を頻繁に持ち替えながら位置をずらしつつ長穴等を加工することも考えられるが、そうすると、加工サイクルタイムが増大するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、被加工材の搬送方向に延在する長穴等を加工できるとともに、加工サイクルタイムを短くできる工作機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明の工作機械は、被加工材を搬送する搬送路上に設けられ、前記被加工材の後端部を掴んで前記搬送路上を移動し、切削加工を行う切削加工位置及びその下流側の切断加工を行う切断加工位置に前記被加工材を搬送するグリッパーと、前記切削加工位置に搬送された前記被加工材を挟持するバイスと、前記切断加工位置に配置され、前記切断加工位置に搬送された前記被加工材を所定長さに切断する鋸刃と、を備えている。前記バイスは、前記被加工材の切削加工時に、前記被加工材を挟持した状態で、前記グリッパーの移動方向に移動可能であるとともに、前記グリッパーは、前記バイスによる当該移動に同期して、前記被加工材を掴んだまま前記搬送路上を移動可能である。前記グリッパーは、前記切削加工後に、前記被加工材を掴み続けながら前記搬送路上を移動することにより前記切断加工位置へ前記被加工材を搬送するとともに、前記切断加工中も前記被加工材を掴み続けることが可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明の工作機械では、被加工材の切削加工時に、バイスが被加工材を挟持した状態でグリッパーの移動方向(被加工材の搬送方向、以下同じ)に移動できるので、被加工材の搬送方向に延在する長穴等を加工できる。そして、被加工材の切削加工が終了したら、バイスによる被加工材の挟持を開放する作業に連続して、グリッパーにより被加工材を搬送方向に移動できるので、グリッパーで被加工材を掴みなおす作業が不要となり、加工サイクルタイムを短くできる。このことは、加工コストの低減に寄与する。
【0008】
また、前記グリッパーは、前記搬送路上を移動可能なグリッパー装置に設けられていることが好ましい。このように構成することによって、バイスの移動とグリッパーの移動との同期を簡単な構成によって実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る工作機械によれば、被加工材の搬送方向に延在する長穴等を加工できるとともに、加工サイクルタイムを短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る工作機械の正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る工作機械のバイス軸に沿って移動するテーブルを示した平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る工作機械の一部省略左側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る工作機械の左右バイスを示す拡大斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る工作機械の切削加工の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、説明の便宜上左右方向をX軸方向とし、前後方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向として説明する。X軸方向及びY軸方向は、工作機械が設置される工場等の床面に平行な水平方向であり、Z軸方向は工場等の床面に直交する鉛直方向である。
【0013】
図1に示すように、工作機械1は、工作機械本体10と、工作機械本体10と別体に設けられたグリッパー装置20(図3参照)とを備えている。工作機械本体10には、バイスとしての左右バイス30,30が備わる。左右バイス30,30は、加工位置P(図3参照)に搬送されてきた被加工材としての形鋼W(鋼材)を左右方向から挟持するものである。グリッパー装置20には、形鋼Wの後端部を掴んで加工位置Pに形鋼Wを搬送するグリッパー21が備わる。
【0014】
工作機械本体10は、基台11と、基台11の背面に固定され鉛直方向に立ち上がる支持板12とを備える。基台11上には、左右バイス30,30が設けられている。また、基台11の左部には制御盤7が備わる。支持板12には、形鋼Wを切削加工するための上側加工装置40、左側加工装置50及び右側加工装置60が支持されている。また、支持板12の背面側には、鋸刃ユニット80(図3参照)が備わる。
以下では、形鋼Wとして、H形鋼を例にとって説明する。H形鋼は、H形の断面形状を有し、X軸方向に延在するウエブ2aと、ウエブ2aの左右両端に接続されZ軸方向に延在するフランジ部2b,2bとを備えている(図5参照)。H形鋼は、長尺であり、Y軸方向(図1の紙面垂直方向)に延在する搬送路3(図3参照)上を工作機械本体10に向けて搬送される。H形鋼の搬送には、グリッパー装置20が使用される。グリッパー装置20は、搬送路3上をY軸方向に移動可能に設けられている。
【0015】
基台11上には、形鋼Wを支持する部材として、第1テーブル13と、第1テーブル13上に配置された左右一対の第2テーブル14,14とが設けられている。第1テーブル13は、基台11上を、形鋼Wの搬送方向であるY軸方向に移動可能である。第2テーブル14,14は、第1テーブル13上を、形鋼Wの搬送方向に直交するX軸方向に移動可能である。第2テーブル13,13上には、左右バイス30,30が設けられている。
【0016】
第1テーブル13は、図2に示すように、平面視で横長四角形状を呈している。第1テーブル13は、第2テーブル14,14の左右方向の移動を許容する大きさ、つまり、形鋼Wを挟持または開放するための左右バイス30,30の移動を許容する大きさを有している。第1テーブル13は、基台11の上面に設けられた左右一対のリニアガイドレールR1,R1に沿ってY軸方向に移動可能である。リニアガイドレールR1,R1は、基台11の上面の左部及び右部に配置されており、Y軸方向に延在している。
【0017】
第1テーブル13は、電動モータ13aと、電動モータ13aにより回転駆動されるボールネジ13bとを備えた移動機構によりY軸方向に移動される。電動モータ13aは、基台11の右側前部に図示しないブラケットを介して固定されている。ボールネジ13bには、第1テーブル13に固定されたナット部13cが複数のボールを介して螺合している。
第1テーブル13は、ボールネジ13bの回転により、形鋼Wの切削開始位置と切削終了位置との間で移動される。なお、電動モータ13aの出力が減速機を介してボールネジ13bに伝達されるように構成してもよい。
【0018】
各第2テーブル14は、平面視で一部が切り欠かれた四角形状を呈している(図4参照)。第2テーブル14は、バイス30を載置可能な大きさを有している。各第2テーブル14は、第1テーブル13の上面に設けられた前後一対のリニアガイドレールR2,R2に沿ってX軸方向に移動可能である。リニアガイドレールR2,R2は、第1テーブル13の上面の前部及び後部に配置されており、X軸方向に延在している。
【0019】
各第2テーブル14は、第1テーブル13の左右に配置された各シリンダ装置14aによりX軸方向に移動される。各シリンダ装置14aは、例えば油圧シリンダである。
【0020】
左右バイス30,30は、左右対称の構造であるため、ここでは左側のバイス30についてのみ説明し、右側のバイス30の説明は省略する。左側のバイス30は、図2図4に示すように、前後の支持腕30a,30bを備えている。
前側の支持腕30aは、形鋼Wのフランジ部2bを挟持する挟持部31aと、フランジ部2bの下端部を支持するローラ部32とを有している。挟持部31aは、加工位置Pよりも搬送方向の前側においてフランジ部2bの上部側面に当接するように構成されている。ローラ部32は、形鋼Wの加工位置Pへの搬送を補助するとともに、加工位置Pに搬送された形鋼Wを支持する。
【0021】
後側の支持腕30bは、形鋼Wのフランジ部2bを挟持する挟持部31bと、フランジ部2bの下端部を支持する支持部33と、挟持部31bに沿ってZ軸方向に移動し支持部33との間でフランジ部2bの上端部を挟持する挟持レバー34と、を備えている。挟持部31bは、加工位置Pよりも搬送方向の後側においてフランジ部2bの上部側面に当接するように構成されている。挟持レバー34は、支持部33の下方に設けられた油圧シリンダ35により作動する。
【0022】
以上のような左右バイス30,30は、加工位置Pに搬送されてきた形鋼Wを挟持した状態で第1テーブル13によりY軸方向に所定量移動可能である。これにより、Y軸方向に形鋼Wを移動しながら切削加工を行うことができ、形鋼Wに対してY軸方向に延在する長穴等を加工することができる。
【0023】
上側加工装置40、左側加工装置50及び右側加工装置60は、図3において、加工位置Pを示す基準面(支持板12と平行な面)に沿って、X軸方向及びZ軸方向に移動可能に構成されている。
【0024】
上側加工装置40は、図1に示すように、上側台座41と、移動台42と、上側加工モータ43と、左右移動機構44と、上下移動機構45とを備えている。上側台座41は、支持板12の前面に設けられたリニアガイドレールR3,R4に沿ってX軸方向に移動可能である。リニアガイドレールR3は、支持板12の上部の中央部に配置されており、X軸方向に延在している。リニアガイドレールR4は、支持板12の上下方向の中央部に配置されており、支持板12の略全体に亘ってX軸方向に延在している。
【0025】
上側台座41は、左右移動機構44によりX軸方向に移動される。左右移動機構44は、電動モータ44aと、電動モータ44aにより回転駆動されるボールネジ44bとを備えている。移動台42は、上側台座41の前面に設けられたリニアガイドレールR41,R41に沿ってZ軸方向に移動可能である。リニアガイドレールR41,R41は、上側台座41の左部及び右部に配置され、Z軸方向に延在している。
【0026】
移動台42は、上下移動機構45によりZ軸方向に移動される。上下移動機構45は、電動モータ45aと、電動モータ45aにより回転駆動されるボールネジ45bとを備えている。電動モータ45aは、ブレーキ付きのモータである。上側加工モータ43は、移動台42の前面に設置されている。上側加工モータ43に取り付けられた切削工具はZ軸方向の下側を向いている。
【0027】
左側加工装置50は、左側台座51と、移動台52と、左側加工モータ53と、左右移動機構54と上下移動機構55とを備えている。左側台座51は、リニアガイドレールR4,R5に沿ってX軸方向に移動可能である。リニアガイドレールR5は、支持板12の下部の左部に配置されており、X軸方向に延在している。
【0028】
左側台座51は、左右移動機構54によりX軸方向に移動される。左右移動機構54は、電動モータ54aと、電動モータ54aにより回転駆動されるボールネジ54bとを備えている。移動台52は、左側台座51の前面に設けられたリニアガイドレールR51,R51に沿ってZ軸方向に移動可能である。リニアガイドレールR51,R51は、左側台座51の左部及び右部に配置され、Z軸方向に延在している。
【0029】
移動台52は、上下移動機構55によりZ軸方向に移動される。上下移動機構55は、電動モータ55aと、電動モータ55aにより回転駆動されるボールネジ55bとを備えている。電動モータ55aは、ブレーキ付きのモータである。左側加工モータ53は、移動台42の前面に設置されている。左側加工モータ43に取り付けられた切削工具はX軸方向の右側を向いている。
【0030】
右側加工装置60は、右側台座61と、移動台62と、右側加工モータ63と、左右移動機構64と、上下移動機構65とを備えている。右側台座61は、リニアガイドレールR4,R6に沿ってX軸方向に移動可能である。リニアガイドレールR6は、支持板12の下部の右部に配置されており、X軸方向に延在している。
【0031】
右側台座61は、左右移動機構64によりX軸方向に移動される。左右移動機構64は、電動モータ64aと、電動モータ64aにより回転駆動されるボールネジ64bとを備えている。移動台62は、右側台座61の前面に設けられたリニアガイドレールR61,R61に沿ってZ軸方向に移動可能である。リニアガイドレールR61,R61は、右側台座61の左部及び右部に配置され、Z軸方向に延在している。
【0032】
移動台62は、上下移動機構65によりZ軸方向に移動される。上下移動機構65は、電動モータ65aと、電動モータ65aにより回転駆動されるボールネジ65bとを備えている。電動モータ65aは、ブレーキ付きのモータである。右側加工モータ63は、移動台62の前面に設置されている。右側加工モータ63に取り付けられた切削工具はX軸方向の左側を向いている。
【0033】
図3に示すように、工作機械1には、適宜の位置に工具交換装置47,57が設けられている。各工具交換装置47,57には、複数の切削工具が交換可能に保持されている。
【0034】
グリッパー装置20は、図3に示すように、グリッパー21と、グリッパー21のZ軸方向の位置を調整する調整機構23とを備えている。グリッパー21は、基部22aに支持されてY軸方向に延在する支持ロッド22の先端部に設けられている。グリッパー21は、形鋼Wの後端部、例えば、ウエブ2bの後端部を把持可能である。グリッパー21による形鋼Wの把持は、切削加工中はもちろんのこと、加工位置Pへの形鋼Wの搬送時も継続して行われる。
【0035】
調整機構23は、基台22aのZ軸方向の移動を案内するリニアガイド23a,23aと、基台22aに接続された調整用シリンダ23bと、基台22aの位置を検出する磁気センサ23cとを備えている。調整用シリンダ23bは、例えば油圧シリンダである。調整用シリンダ23bが作動すると、その作動方向によりグリッパー装置20の図示しないベース部に対して基部22aの高さが変更される。調整用シリンダ23bの作動制御は、磁気センサ23cの検出値に基づき制御部24の制御により行われる。なお、ベース部には、搬送路3上を移動するための図示しない移動機構が備わる。移動機構による移動制御は、制御部24の制御により行われる。制御部24は、第1テーブル13がY軸方向に移動する場合に、制御盤7からの同期信号を受けて、移動機構によるベース部の移動を制御する。すなわち、制御部24は、ベース部(ひいてはグリッパー装置20)の移動方向と移動速度(移動量)が第1テーブル13の移動方向と同じ方向、かつ同じ速度(同じ移動量)となるように移動機構を制御する。これにより、第1テーブル13がY軸方向に移動する場合に、その移動に同期してグリッパー装置20がY軸方向に移動する。また、制御部24は、制御盤7からの搬送信号を受けて、形鋼Wが加工位置Pに搬送されるように、ベース部の移動を制御する。
【0036】
鋸刃ユニット80は、図3に示すように、基台11の背面側となる搬送方向の下流側に配置されている。鋸刃ユニット80は、形鋼Wを所定長さに切断する鋸刃83を備えている。鋸刃83は、鋸刃ユニット80に備わる移動体82の電動モータ(不図示)により回転駆動される。移動体82は、移動用モータ84の駆動によりX軸方向に移動されるように構成されており、X軸方向に移動することで切削加工後の形鋼Wを鋸刃83が所定長さに切断する。
【0037】
制御盤7には、プログラムの実行や各種周辺機器の制御を行うCPU、切削加工プログラムが書き込まれたROM、入力データ等を記憶しているRAM、切削加工長、穿孔パターン等のデータを入力するパネルやキースイッチ、外部機器と接続するための入出力インターフェースを備えている。入出力インターフェースには、第1テーブル13、第2テーブル14,14、グリッパー装置20、上側加工装置40、左側加工装置50、右側加工装置60に設けられた図示しないリミットスイッチやロータリーエンコーダ等の各種センサからの状態検出や位置検出の信号等が入力される。また、入出力インターフェースからは、第1テーブル13、第2テーブル14,14、グリッパー装置20、上側加工装置40、左側加工装置50、右側加工装置60への、移動、停止指令信号及び駆動制御信号等が出力される。
【0038】
次に、工作機械1を用いて長穴等を加工する際の作用を図5に示す形鋼Wを参照して説明する。なお、形鋼Wはグリッパー装置20により、搬送路3(図3参照)上を搬送され、加工位置P(図3参照)にて左右バイス30,30により挟持されている。図5では、右側の挟持部31b及び挟持レバー34のみ図示している。また、説明において、上側加工装置40、左側加工装置50及び右側加工装置60の各部については適宜図1を参照する。第1テーブル13は、搬送方向の上流側の所定位置を初期位置として配置されている。
【0039】
はじめに、図5に示すように、形鋼Wの左側のフランジ部2bに対して、側面視でL字形状の長穴71を形成する場合の作用について説明する。
まず、左側加工装置50の左側台座51を、形鋼Wに向けてX軸方向に移動させるとともに、移動台52をZ軸方向に移動させながら、Z軸方向に延びる縦長穴71aを切削工具58により切削加工する。なお、縦長穴71aの切削加工の間、第1テーブル13は、初期位置に停止している。
【0040】
その後、第1テーブル13をY軸方向に移動させてY軸方向に延びる横長穴71bを切削工具58により切削加工する。横長穴71bの切削加工の間、グリッパー装置20は、形鋼Wの後端部をグリッパー21が挟持した状態のまま第1テーブル13のY軸方向の移動に同期して移動する。
【0041】
その後、長穴71の切削加工が終了したら、左右バイス30,30が開放され、この開放に連続してグリッパー装置20が搬送方向の下流側の鋸刃ユニット80に向けて形鋼Wを送り出す。そして、形鋼Wが鋸刃83による切断位置まで送り出されたら、鋸刃83が駆動され、形鋼Wが所定の長さに切断される。形鋼Wが長尺である場合には、グリッパー装置20により形鋼Wが続けて加工位置Pに搬送され、上記の切削加工が繰り返される。
【0042】
次に、形鋼Wの左側のフランジ部2bに対して、側面視で丸形の大穴72を形成する場合の作用について説明する。
この場合には、左側加工装置50の左側台座51を、形鋼Wに向けてX軸方向に移動させるとともに、移動台52をZ軸方向に移動させつつ、第1テーブル13をY軸方向に移動させて、丸形の外縁72cに切削工具58が沿うように移動させて切削加工を行う。切削工具58の切削開始位置は、外縁72cの内側であればいずれの位置でもよく、例えば、中央位置72a、後側位置72b、前側位置72dを挙げることができる。
【0043】
大穴72の切削加工の間、グリッパー装置20は、形鋼Wの後端部をグリッパー21が挟持した状態のまま第1テーブル13のY軸方向の移動に同期して移動する。
【0044】
大穴72の切削加工が終了したら、左右バイス30,30が開放され、鋸刃ユニット80に送り出された形鋼Wが鋸刃83により所定の長さに切断される。形鋼Wが長尺である場合には、グリッパー装置20により形鋼Wが続けて加工位置Pに搬送され、上記の切削加工が繰り返される。
【0045】
次に、形鋼Wのウエブ2aに対して、大穴72よりも小さい、平面視で丸形の中穴73を形成する場合の作用について説明する。
この場合には、上側加工装置40の上側台座41を、X軸方向に移動させるとともに、移動台42をZ軸方向に移動させつつ、第1テーブル13をY軸方向に移動させて、丸形の外縁73cに切削工具48が沿うように移動させて切削加工を行う。切削工具48の切削開始位置は、外縁73cの内側であればいずれの位置でもよく、例えば、中央位置73aや後側位置73bを挙げることができる。
【0046】
この場合にも、中穴73の切削加工の間、グリッパー装置20は、形鋼Wの後端部をグリッパー21が挟持した状態のまま第1テーブル13のY軸方向の移動に同期して移動する。
【0047】
中穴73の切削加工が終了したら、左右バイス30,30が開放され、鋸刃ユニット80に送り出された形鋼Wが鋸刃83により所定の長さに切断される。形鋼Wが長尺である場合には、グリッパー装置20により形鋼Wが続けて加工位置Pに搬送され、上記の切削加工が繰り返される。
【0048】
以上説明した本実施形態の工作機械1では、形鋼Wの切削加工時に、左右バイス30,30が形鋼Wを挟持した状態で形鋼Wの搬送方向に移動できるので、形鋼Wの搬送方向(Y軸方向)に延在する長穴等を加工できる。そして、形鋼Wの切削加工が終了したら、左右バイス30,30による形鋼Wの挟持を開放する作業に連続して、グリッパー21により形鋼Wを搬送方向に移動できるので、グリッパー21で形鋼Wを掴みなおす作業が不要となる。したがって、加工サイクルタイムを短くできる。このことは、加工コストの低減に寄与する。
【0049】
また、グリッパー21が形鋼Wの搬送方向に移動可能なグリッパー装置20に設けられているので、左右バイス30,30の移動とグリッパー21の移動との同期を簡単な構成によって実現できる。
【0050】
また、左右バイス30,30の移動とグリッパー21の移動とを同期しつつ、形鋼Wをグリッパー装置20により搬送路3に沿って搬送できるので、形鋼Wが長尺である場合にも連続して切削加工を行うことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、各第2テーブル14がシリンダ装置14aによりX軸方向に移動される構成としたが、これに限られることはなく、一方の第2テーブル14だけが移動して左右バイス30,30により形鋼Wを挟持するものであってもよい。
【0052】
また、シリンダ装置14aは、油圧で作動するものを示したが、これに限られることはなく、空圧シリンダ等の他のシリンダ機構や、その他のアクチュエーターを適宜用いてもよい。
【0053】
また、第1テーブル13は、電動モータ13aと、ボールネジ13bとを備えた移動機構によりY軸方向に移動する構成を示したが、これに限られることはなく、他のアクチュエーターを適宜用いてもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、形鋼WとしてH形鋼を例にして説明したが、これに限られることはなく、ウエブの左右両端部から上下の一方向にフランジ部が延在するC形鋼についても、本実施形態と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0055】
1 工作機械
3 H形鋼(鋼材)
3a ウエブ
10 鋸刃ユニット
11 鋸刃
20 クランプ装置
21 上側クランプ部
21b ピストンロッド(ロッド)
22 下側クランプ部
23 衝撃吸収部材
S1 切断予定線
【要約】
【課題】切削加工の加工サイクルを短くできる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械1は、被加工材Wを掴んで加工位置Pに搬送するグリッパー21と、加工位置Pに搬送された被加工材Wを挟持するバイス30,30と、を備えている。被加工材Wの切削加工時に、バイス30,30は、被加工材Wを挟持した状態で被加工材Wの搬送方向に移動可能であり、グリッパー21は、バイス30,30の搬送方向の移動に同期して、被加工材Wを掴んだまま搬送方向に移動可能である構成とした。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5