(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】耕耘爪、畦塗り機及び農作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 33/10 20060101AFI20220801BHJP
A01B 35/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A01B33/10 Z
A01B35/00 C
(21)【出願番号】P 2021071920
(22)【出願日】2021-04-21
(62)【分割の表示】P 2020025218の分割
【原出願日】2013-10-18
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】頭司 宏明
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】藤元 隆史
(72)【発明者】
【氏名】有村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】西上 智大
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-085907(JP,A)
【文献】特開2013-078278(JP,A)
【文献】特開2010-161958(JP,A)
【文献】特開2012-029613(JP,A)
【文献】特開2006-345828(JP,A)
【文献】特開昭51-028274(JP,A)
【文献】特開昭52-061501(JP,A)
【文献】特開2003-125603(JP,A)
【文献】特開2002-235162(JP,A)
【文献】特開2000-037101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/10
A01B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘軸に取り付けられる取付基部及び前記取付基部から連続して延びる刃部を有する耕耘爪であって、
前記刃部の刃縁側には、他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、
前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記刃部の刃付け端部の一方と略同じ位置に位置する、耕耘爪。
【請求項2】
前記硬質合金部の前記取付基部とは反対側の端部は、前記刃部の刃付け端部の他方と前記刃部の切っ先との間に位置している、請求項1に記載の耕耘爪。
【請求項3】
前記刃部は、前記耕耘軸の軸方向の一方に湾曲しており、
前記硬質合金部は、前記刃部が湾曲する方向と逆側の面に設けられている、請求項1又は2に記載の耕耘爪。
【請求項4】
前記硬質合金部は、前記刃部の刃付け側の面と逆側の面に設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の耕耘爪。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の耕耘爪を、旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理部に備えた、畦塗り機。
【請求項6】
前記前処理部のカバー体の後板部に隣接する位置に、前記刃部が前記後板部とは反対方向に湾曲する前記耕耘爪が設けられた、請求項5に記載の畦塗り機。
【請求項7】
前記耕耘軸には、複数の耕耘爪が配置され、
前記複数の耕耘爪の回転半径のうち、前記後板部に隣接する前記耕耘爪の回転半径が最も大きい、請求項6に記載の畦塗り機。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の耕耘爪を備えたロータリ耕耘装置を含む、農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、耕耘作業に用いられるロータリ耕耘装置を有する畦塗り機の耕耘軸に取り付けられる耕耘爪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の耕耘爪として、耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記耕耘爪では、耕土に接触する横刃部の刃縁部に他の部分よりも硬度が高い硬質合金部を設け、耕耘作業時に耕土に硬質合金部を接触させることで摩耗しにくくし、土と最も接触するすくい面部分の耐久性を向上させるようにしている。
【0004】
前記耕耘軸には、周方向及び軸方向に複数の耕耘爪が取り付けられる。また、複数の耕耘爪が取り付けられた耕耘軸の上方や軸方向端部は、カバー体によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記耕耘軸の軸方向端部を覆うカバー体に隣接する耕耘爪は、カバー体の内面に付着した土に対して縦刃部が接触する状態が生じ得る。前記耕耘爪は、主に横刃部(すくい面部分)に硬質合金部が設けられているため、カバー体の内面に付着した土に縦刃部が接触し続けると、横刃部よりも縦刃部が大きく摩耗する偏摩耗が生じる。これにより、耕耘軸の軸方向端部を覆うカバー体に隣接する耕耘爪は、偏摩耗の発生による破損や耕耘性能の低下を防止するため、早期に取り換えが必要となる。
【0007】
本発明の目的とするところは、偏摩耗を生じにくくすることで、長寿命化を図ると共に耕耘性能の低下を防止することのできる耕耘爪を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、耕耘軸に取り付けられる取付基部と、前記取付基部から連続して延びる縦刃部と、前記縦刃部から連続して延びる横刃部と、を有し、前記縦刃部から前記横刃部に渡って前記耕耘軸の回転方向と逆方向に湾曲させ、前記縦刃部に対して前記横刃部が前記耕耘軸の回転軸方向の一方に湾曲させた耕耘爪であって、前記縦刃部及び横刃部の刃縁側には、前記縦刃部から前記横刃部に渡って他の部分よりも硬度が高い硬質合金部が設けられ、前記硬質合金部の前記取付基部側の端部は、前記取付基部の延びる方向の延長線上の近傍に位置している。
これにより、縦刃部から横刃部に渡る刃縁部に硬質合金部が位置することから、耕耘軸の軸方向端部を覆うカバー体に隣接する耕耘爪として用いた場合に、カバー体の内面に付着した土に対して硬質合金部が接触する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耕耘軸の軸方向端部を覆うカバー体に隣接する耕耘爪として用いた場合に、カバー体の内面に付着した土に対して硬質合金部を接触させることが可能となるので、横刃部に対して縦刃部が大きく摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができ、長寿命化を図ると共にロータリ耕耘装置の耕耘性能の低下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態を示す畦塗り機の平面図である。
【
図4】(a)はカバー体の一部を取り外した状態の前処理部の側面図であり、(b)はカバー体の一部を取り外した状態の前処理部の正面図である。
【
図8】(a)は土除去部材のその他の例を示すカバー体の一部を取り外した状態の前処理部の側面図であり、(b)は土除去部材のその他の例を示すカバー体の一部を取り外した状態の前処理部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図7は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0012】
本実施形態では、本発明の耕耘爪が取り付けられるロータリ耕耘装置を有する畦塗り機1について説明する。
【0013】
この畦塗り機1は、トラクタ等の走行機体Tに装着される装着部10と、一端部が装着部10に連結され、他端部が装着部10に対して幅方向に移動可能なオフセット機構部20と、オフセット機構部20の他端部に連結された作業部30と、を有している。
【0014】
装着部10は、走行機体Tの幅方向に延びるヒッチフレーム11を有している。ヒッチフレーム11は、走行機体Tに設けられた三点リンク連結機構に、図示しない連結フレームを介して連結される。ヒッチフレーム11の前側には、走行機体Tからの動力が入力される入力軸12が設けられている。
【0015】
オフセット機構部20は、
図1に示すように、前端部がヒッチフレーム11の幅方向中央部に水平方向に回転自在に設けられたオフセットフレーム21と、前端部がヒッチフレーム11の幅方向一端側に水平方向に回転自在に設けられたリンク部材22と、オフセットフレーム21の後端部とリンク部材22の後端部とを連結する連結部材23と、を有している。オフセット機構部20は、ヒッチフレーム11、オフセットフレーム21、リンク部材22及び連結部材23によって平行リンク機構が構成される。オフセット機構部20は、ヒッチフレーム11の幅方向他端側とオフセットフレーム21の後端側との間に設けられた油圧式のオフセットシリンダ24を駆動させることによって後端側が幅方向に移動する。
【0016】
オフセットフレーム21内には、入力軸12に伝達された動力を作業部30側に伝達するためのチェーン及びスプロケット等からなる動力伝達機構が設けられている。
【0017】
作業部30は、圃場の周辺に沿って形成された旧畦Kの上部を切り崩すための天場処理部40と、旧畦Kの下部を切り崩すとともに、切り崩した土の土盛りを行うための前処理部50と、盛られた土を切り崩された旧畦K上に塗りつけるための整畦部60と、を有し、オフセット機構部20の後端側に水平方向に回転自在に支持されている。作業部30は、連結部材23側の部材と作業部30側の部材との間に設けられた油圧式の回転シリンダ34を駆動させることによってオフセット機構部20の後端側に対して回転する。
【0018】
天場処理部40は、
図3に示すように、入力軸12に伝達された動力によって回転する回転軸41と、回転軸41の外周側に互いに周方向に間隔をおいて取り付けられた複数の耕耘爪42と、を有している。回転軸41は、整畦作業時において、後端側に対して前端側が圃場の外側に向かって斜め前方に延びるように配置されている。
【0019】
前処理部50は、
図3に示すように、入力軸12に伝達された動力によって回転する耕耘軸51と、耕耘軸51の外周側に互いに周方向に間隔をおいて取り付けられるとともに、耕耘軸51の軸方向に配置されたそれぞれ複数の第1耕耘爪52、第2耕耘爪53及び第3耕耘爪54と、第1~第3耕耘爪52,53,54の所定の部分を外側から覆うカバー体55と、第3耕耘爪54に設けられ、カバー体55内の後側の面に付着した土を除去するための土除去部材56と、を有している。
【0020】
耕耘軸51は、
図1に示すように、整畦作業時において、後端側に対して前端側が圃場の外側に向かって斜め前方に延びるように配置されている。耕耘軸51の外周部には、
図4に示すように、第1~第3耕耘爪52,53,54をそれぞれ取り付けるための三枚の取付板51aが、互いに軸方向に間隔をおいて設けられている。
【0021】
各取付板51aは、一方向の寸法がその他の方向の寸法よりも大きく形成された多角形状の板状部材であり、長手方向の中央部が耕耘軸51に固定されている。各取付板51aの長手方向両側には、後述する第1~第3耕耘爪52,53,54の取付基部を保持するための取付部としてのホルダ51bがそれぞれ設けられている。
【0022】
ホルダ51bは、板状部材の幅方向両側を屈曲することで断面コ字状に形成した部材を取付板51aに固定することによって形成される。ホルダ51bには、第1耕耘爪52、第2耕耘爪53及び第3耕耘爪54の取付基部を挿入するための挿入孔と、ボルト57の軸部を挿入するための取付孔が設けられている。
【0023】
耕耘軸51の前側に位置する取付板51aには、第1耕耘爪52が取り付けられる。また、耕耘軸51の前側から二番目に位置する取付板51aには、第2耕耘爪53が取り付けられる。さらに、耕耘軸51の前側から三番目に位置する取付板51aには、第3耕耘爪54が取り付けられる。
【0024】
第1~第3耕耘爪52,53,54は、ホルダ51bに取り付けられる取付基部52a,53a,54aと、取付基部52a,53a,54aから連続して延びる縦刃部52b,53b,54bと、縦刃部52b,53b,54bから連続して延びる横刃部52c,53c,54cと、を有している。
【0025】
取付基部52a,53a,54aは、所定の幅寸法を有し、縦刃部52b,53b,54b側に直線状に延びるように形成されている。第1~第3耕耘爪52,53,54は、耕耘軸51に取り付けられた状態において、取付基部52a,53a,54aが耕耘軸51の径方向の外側に向いている。取付基部52a,53a,54aの幅方向中央部には、ボルト57の軸部を挿入するための挿入孔52d,53d,54dが設けられている。第1~第3耕耘爪52,53,54は、取付基部52a,53a,54aをホルダ51bの挿入孔に挿入してボルト57及びナット58によって締結することによって、ホルダ51bに取り付けられる。
【0026】
第1~第3耕耘爪52,53,54は、耕耘軸51に取り付けられた状態において、縦刃部52b,53b,54bから横刃部52c,53c,54cに向かって、耕耘軸51の回転方向と逆方向に湾曲する形状を有している。また、第1~第3耕耘爪52,53,54は、耕耘軸51に取り付けられた状態において、縦刃部52b,53b,54bに対して横刃部52c,53c,54cが耕耘軸51の軸方向に湾曲している。
【0027】
具体的には、第1及び第2耕耘爪52,53は、耕耘軸51に取り付けられた状態において、縦刃部52b,53bに対して横刃部52c,53cが耕耘軸51の後端側に湾曲している。また、第3耕耘爪54は、耕耘軸51に取り付けられた状態において、縦刃部54bに対して横刃部54cが耕耘軸51の前端側に湾曲している。
【0028】
第1~第3耕耘爪52,53,54は、耕耘軸51に取り付けられた状態において、縦刃部52b,53b,54b及び横刃部52c,53c,54cの耕耘軸51の回転方向側が刃縁となり、回転方向の逆側が峰となる。
【0029】
第1~第3耕耘爪52,53,54は、耕耘軸51に取り付けられた状態において、第1耕耘爪52の回転半径R1よりも第2耕耘爪53の回転半径R2が大きくなる。また、第1~第3耕耘爪52,53,54は、耕耘軸51に取り付けられた状態において、第2耕耘爪53の回転半径R2よりも第3耕耘爪54の回転半径R3が大きくなる。
【0030】
第3耕耘爪54の縦刃部54b及び横刃部54cの刃縁部には、縦刃部54bから横刃部54cに渡って他の部分よりも硬度が高い合金からなる硬質合金部54eが設けられている。硬質合金部54eは、縦刃部54bに対して横刃部54cが湾曲している方向と逆側の面に硬質の合金を溶着させることによって形成されている。硬質合金部54eは、縦刃部54bに対して横刃部54cが湾曲している方向と逆側の面から張り出している。
【0031】
硬質合金部54eの取付基部54a側の端部は、取付基部54aの延びる方向の延長線上の近傍に位置している。また、硬質合金部54eの切っ先側の端部は、横刃部54cの端部の近傍に位置している。ここで、硬質合金部54eの取付基部54a側の端部は、耕耘軸51に第3耕耘爪54が取り付けられた状態において、耕耘軸51の回転中心と取付基部54aの挿入孔54dの幅方向中央部の延長線上に硬質合金部54eの端部が位置することが望ましいが、取付基部54aの幅寸法の範囲内で取付基部54aの延びる方向の延長線上に硬質合金部54eの端部が交わる程度でもよい。
【0032】
また、硬質合金部54eの峰側の端部は、縦刃部54b及び横刃部54cの峰から刃縁側に所定の距離をおいて峰に沿って延びている。
【0033】
縦刃部54bと横刃部54cとの境界となるとともに、縦刃部54bに対して横刃部54cの湾曲が開始される折り曲げ開始線LSと刃縁との交点である折り曲げ開始点P1は、取付基部54aの延びる方向に取付基部54aの基端部から最も離れた距離Dとなる。
【0034】
カバー体55は、第1~第3耕耘爪52,53,54の旧畦K側の側部及び下部を除く外周部を覆う外周板部55aと、外周板部55aの前端部から耕耘軸51の径方向内側に向かって延びる前板部55bと、外周板部55aの後端部から耕耘軸51の径方向内側に向かって延びる後板部55cと、を有している。前板部55bは、外周板部55aの前端部に沿って第1~第3耕耘爪52,53,54の外周側のみを覆っている。また、後板部55cは、第1~第3耕耘爪52,53,54の旧畦Kと反対側の耕耘軸51を含む部分を覆っている。後板部55cは、第3耕耘爪54の縦刃部54bに設けられた硬質合金部54eから、例えば10mmの間隔をおいて配置されている。
【0035】
土除去部材56は、板状部材を屈曲することによって形成されるものである。土除去部材56は、第3耕耘爪54の取付基部54aを保持するホルダ51bの回転方向側を覆うとともに、ホルダ51bから耕耘軸51の径方向外側に延びることで、ホルダ51bに保持された第3耕耘爪54の取付基部54aの周辺の回転方向側を覆っている。土除去部材56は、幅方向寸法が取付板51aとホルダ51bとを合わせた寸法や第3耕耘爪54の縦刃部54bの厚さ寸法よりも大きく形成されている。土除去部材56は、ボルト57及びナット58によって第3耕耘爪54と共にホルダ51bに取り付けられる。
【0036】
整畦部60は、
図1に示すように、幅方向に延びるように設けられ、入力軸12に伝達された動力によって回転する回転軸61と、回転軸61に設けられた多面体ドラム62と、多面体ドラム62の端部から幅方向に延びるように設けられ円筒部63と、を有している。
【0037】
以上のように構成された畦塗り機1は、走行機体Tに装着され、走行機体Tの走行位置に対して側方にずれた位置を走行機体Tと共に移動して畦塗り作業を行う。畦塗り機1は、天場処理部40によって旧畦Kの上部を切り崩すとともに、前処理部50によって旧畦Kの下部及び側面を切り崩す。畦塗り機1は、天場処理部40及び前処理部50によって切り崩した旧畦Kの土を、前処理部50によって旧畦K側に供給する。畦塗り機1は、前処理部50によって旧畦K側に供給された土を、整畦部60によって旧畦Kの表面に塗り付けることによって、新しい畦を形成する。
【0038】
畦塗り作業時の前処理部50では、第1~第3耕耘爪52,53,54によって切り崩されると共に跳ね上げられた旧畦Kの土が、カバー体55に案内されて、旧畦K側に供給される。カバー体55に案内される土は、カバー体55の内面に接触しながら旧畦K側に向かって移動する。このため、カバー体55に案内される土の一部がカバー体55の内面に付着しやすく、特に、カバー体55の後板部55cに多く付着する場合がある。
【0039】
このとき、カバー体55の後板部55cの前方では、第3耕耘爪54が後板部55cの前面に沿って移動している。したがって、カバー体55の後板部55cに付着した土Sは、第3耕耘爪54及び第3耕耘爪54を保持するホルダ51bに取り付けられた土除去部材56によって削り取られて除去される。
【0040】
本実施形態の耕耘爪によれば、第3耕耘爪54の硬質合金部54eの取付基部54a側の端部は、取付基部54aの延びる方向の延長線上の近傍に位置している。
これにより、カバー体55の後板部55cに隣接する第3耕耘爪54として用いた場合に、後板部55cに付着した土に対して硬質合金部54eを接触させることが可能となるので、横刃部54cに対して縦刃部54bが大きく摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができ、第3耕耘爪54の長寿命化を図ると共に畦塗り機1の耕耘性能の低下を防止すること可能となる。
【0041】
また、第3耕耘爪54の硬質合金部54eは、縦刃部54bに対して横刃部54cが湾曲している方向と逆側の面に設けられている。
これにより、カバー体55の後板部55cに付着した土に対して第3耕耘爪54の硬質合金部54eを接触させることが可能となるので、縦刃部54b及び横刃部54cの偏摩耗をより抑制することが可能となる。
【0042】
また、第3耕耘爪54の硬質合金部54eの峰側の端部は、縦刃部54b及び横刃部54cの峰から刃縁側に所定の距離をおいて峰に沿って延びている。
これにより、カバー体55の後板部55cに付着した土を除去することで生じる縦刃部54b及び横刃部54cの側面の摩耗が、縦刃部54b及び横刃部54cに渡って均一となるので、さらに第3耕耘爪54の長寿命化を図ると共に耕耘性能の低下を防止すること可能となる。
【0043】
また、刃縁の縦刃部54bと横刃部54cとの境目となる折り曲げ開始点P1は、取付基部54aから取付基部54aの延びる方向に最も離れた位置となる。
これにより、耕耘軸51を回転させて第3耕耘爪54によって旧畦Kを切り崩す際に、横刃部54cに均等に旧畦Kの土を接触させることが可能となり、横刃部54cを全体的に均等に摩耗させることが可能となり、さらに第3耕耘爪54の長寿命化を図ると共に耕耘性能の低下を防止すること可能となる。
【0044】
また、第3耕耘爪54を畦塗り機1の前処理部50に用いている。
これにより、長寿命化を図ると共に耕耘性能の低下を防止すること可能な第3耕耘爪54によって前処理部50のカバー体55の後板部55cに付着した土が除去されることから、畦塗り機1の維持管理に必要なコストを低減することが可能となる。
【0045】
また、第3耕耘爪54には、カバー体55内の後側の面に付着した土を除去するための土除去部材56が設けられている。
これにより、第3耕耘爪54が取り付けられるホルダ51bや第3耕耘爪の取付基部54a付近の摩耗を防止することができるので、一層畦塗り機1の維持管理に必要なコストを低減することが可能となる。
【0046】
なお、前記実施形態では、第3耕耘爪54を保持するホルダ51bに第3耕耘爪54と同時に土除去部材56を取り付けられたものを示したが、これに限られるものではない。土除去部材56を有さず、ホルダ51bに第3耕耘爪54のみが保持されている場合であっても、カバー体55の後板部55cに付着した土を、取付板51a及び第3耕耘爪54によって削り取ることが可能である。
【0047】
また、前記実施形態では、土除去部材56として、第3耕耘爪54の取付基部54aを保持するホルダ51bの回転方向側を覆うとともに、ホルダ51bから耕耘軸51の径方向外側に延びることで、ホルダ51bに保持された第3耕耘爪54の取付基部54aの周辺の回転方向側を覆うものを示したが、これに限られるものではない。例えば、
図8に示すように、土除去部材59として、第3耕耘爪54の取付基部54aを保持するホルダ51bの回転方向側を覆うとともに、ホルダ51bに保持された第3耕耘爪54の取付基部54a及び縦刃部54bの一部の周辺の回転方向側を覆うようにしてもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、土除去部材56によって第3耕耘爪54を保持するホルダ51bの回転方向側を覆うようにしたものを示したが、土除去部材によって回転方向と反対側を覆うようにしても前記実施形態と同様に後板部55cに付着した土Sを除去することが可能である。
【0049】
また、土除去部材56としてはこの他に、ホルダ51bのみを覆うものや第3耕耘爪54の全体を覆うもの等、様々な耕耘軸51の径方向の長さ寸法が考えられる。
【符号の説明】
【0050】
1 畦塗り機
50 前処理部
51 耕耘軸
51b ホルダ
54 第3耕耘爪
54a 取付基部
54b 縦刃部
54c 横刃部
54e 硬質合金部
55 カバー体
55c 後板部
56 土除去部材
59 土除去部材