IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘルプ・ステム・セル・イノベイションズ・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特許7114134分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法
<>
  • 特許-分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法 図1
  • 特許-分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法 図2
  • 特許-分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法 図3A
  • 特許-分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法 図3B
  • 特許-分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法 図3C
  • 特許-分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法 図4
  • 特許-分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法 図5
  • 特許-分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】分化用培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0797 20100101AFI20220801BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALI20220801BHJP
【FI】
C12N5/0797
C12N5/0793
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021517093
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 CN2019089625
(87)【国際公開番号】W WO2019228518
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】201810553985.9
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520467198
【氏名又は名称】ヘルプ・ステム・セル・イノベイションズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HELP STEM CELL INNOVATIONS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ツイ・ヤット・ピン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ジアシエン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・イン・シン
(72)【発明者】
【氏名】シュム・クォック・ヤン・デイジー
(72)【発明者】
【氏名】ウー・ラップ・ケイ・ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ラム・ガイ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-263824(JP,A)
【文献】特開2015-047140(JP,A)
【文献】特開2011-121949(JP,A)
【文献】特開2014-076048(JP,A)
【文献】特開2013-017434(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104450618(CN,A)
【文献】特表2016-521124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0271584(US,A1)
【文献】国際公開第2017/187680(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0114130(KR,A)
【文献】特開2016-146831(JP,A)
【文献】特表2011-521639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0190729(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0304647(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104073468(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101245336(CN,A)
【文献】特開2011-219432(JP,A)
【文献】特開2016-202183(JP,A)
【文献】特表2016-507568(JP,A)
【文献】特表2014-506583(JP,A)
【文献】特表2017-524340(JP,A)
【文献】特表2014-503219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経幹細胞をオリゴデンドロサイト前駆細胞に分化させるための培地であって、前記培地は、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを混合した基礎培地、0.5~2.5%のGlutaMAX、1~5%のB27、0.5~2.5%のN2、2~25ng/mlのbFGF、2~25ng/mlのPDGF-AA、25~250ng/mlのβ-HRG1、1~10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含むことを特徴とする培地。
【請求項2】
前記培地が、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを体積比1:1で混合した基礎培地、1%のGlutaMAX、2%のB27、1%のN2、10ng/mlのbFGF、10ng/mlのPDGF-AA、100ng/mlのβ-HRG1、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の培地。
【請求項3】
前記培地が、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを混合した基礎培地、0.5~2.5%のGlutaMAX、1~5%のB27、0.5~2.5%のN2、2~25ng/mlのbFGF、2~25ng/mlのPDGF-AA、2~25ng/mlのIGF-1、1~10ng/mlのWnt3A、25~250ng/mlのβ-HRG1、1~20μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/S含む、ことを特徴とする請求項1に記載の培地。
【請求項4】
前記培地が、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを体積比1:1で混合した基礎培地、1%のGlutaMAX、2%のB27、1%のN2、10ng/mlのbFGF、10ng/mlのPDGF-AA、10ng/mlのIGF-1、5ng/mlのWnt3A、100ng/mlのβ-HRG1、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の培地。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の培地によりオリゴデンドロサイト前駆細胞を製造する方法において、
前記培地を調製するステップ、
濃度が2.5~25μg/mlのPLO及び2.5~25μg/mlのラミニンで細胞培養容器にコーティングした後、前記培地を加え、1×10~5×10cells/cmの密度で神経幹細胞を前記細胞培養容器に播種するステップ、および
オリゴデンドロサイト前駆細胞が前記培地に現れるまで培地を定期的に交換するステップ、
を含むことを特徴とするオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法。
【請求項6】
前記細胞培養容器が6ウェルプレートである、ことを特徴とする請求項5に記載のオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法。
【請求項7】
神経幹細胞を前記細胞培養容器に4×10cells/cmの密度で播種する、ことを特徴とする請求項5に記載のオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法。
【請求項8】
前記神経幹細胞が、
神経幹細胞用培地として、0.5%~2.5%のGlutaMAX、1%~5%のB27、10~60ng/mlのbFGF、10~60ng/mlのEGF、5~40ng/mlのIGF-1及び1%のP/Sを含有するAdvanced DMEM/F12を含む培地を調製するステップ、
前記神経幹細胞用培地により骨髄間葉系幹細胞の非接着性培養を行い、7500~20000cells/cmの密度で細胞非接着性培養容器に播種するステップ、および
前記神経幹細胞用培地を定期的に交換し、前記神経幹細胞はニューロスフェアとして前記神経幹細胞用培地に存在するステップ
によって製造される、ことを特徴とする請求項5に記載のオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法。
【請求項9】
前記神経幹細胞が、
神経幹細胞用培地として、1%のGlutaMAX、2%のB27、40ng/mlのbFGF、40ng/mlのEGF、20ng/mlのIGF-1及び1%のP/Sを含有するAdvanced DMEM/F12を含む培地を調製するステップ、および
前記神経幹細胞用培地により骨髄間葉系幹細胞の非接着性培養を行い、10000cells/cmの密度で細胞非接着性培養容器に播種して培養するステップ、
によって製造される、ことを特徴とする請求項8に記載のオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法。
【請求項10】
前記ニューロスフェアを、100g~300gで5min遠心分離して前記神経幹細胞用培地から分離する、ことを特徴とする請求項8に記載のオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法。
【請求項11】
前記骨髄間葉系幹細胞は、骨髄から以下の手順で調製されてなり、前記手順は、
Stem Pro培地で前記骨髄を培養し、48時間後に培地及び非接着細胞を取り除いて培養を続け;
培地に骨髄間葉系幹細胞のクローンが現れると、培地にCD45陽性細胞の含有量が1%未満になるまで40000cells/cmの播種密度でStem Pro培地に播種して継代培養を行う、ことを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法。
【請求項12】
神経幹細胞を調製するための骨髄間葉系幹細胞STRO-1、CD90及びCD73陽性発現量が90%より大きく、Nestin陽性発現量が5%より大きく、且つCD45陽性発現量が1%未満である、ことを特徴とする請求項11に記載のオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分化の技術分野に関し、特に、培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
髄鞘は、神経系の重要な構造であり、脱髄疾患は、認知、記憶、運動などの機能障害を引き起こし、患者の生活の質に深刻な影響を与える恐れがある。
髄鞘は、脊椎動物の中枢神経系(central nervous system、 CNS)でオリゴデンドロサイト(oligodendrocytes、 OLs)がニューロンの軸索に巻き付いてなるものであり、神経発達の初期段階では、神経前駆細胞が最初にニューロンを生じた後、オリゴデンドロサイト前駆細胞(oligodendrocyte precursors、 OPs)の生成を開始し、オリゴデンドロサイト前駆細胞は、神経系の他の部分に遊走し、増殖し、最終的に成熟したオリゴデンドロサイト(OLs)に分化して髄鞘を形成する。
【0003】
現在、in vitro及びin vivo実験の両方では、オリゴデンドロサイト前駆細胞が増殖、遊走及び分化後の髄鞘形成能を有することを証明しているため、オリゴデンドロサイト前駆細胞の移植は、髄鞘障害性疾患を治療するための有効な手段であり、最近の研究は、オリゴデンドロサイト前駆細胞移植の研究のホットスポットは髄鞘障害に関連する脊髄損傷の修復にあることを示す。
多能性幹細胞研究の推進に伴い、オリゴデンドロサイト前駆細胞の供給源の問題も解決されている。現在、多能性幹細胞のオリゴデンドロサイト前駆細胞への分化は、主にオリゴデンドロサイトのin vivoでの自然発生過程を参照してシミュレートし、まず、多能性幹細胞を神経上皮細胞に分化誘導し、さらに、オリゴデンドロサイト前駆細胞に分化する。しかしながら、現在、多能性幹細胞のオリゴデンドロサイト前駆細胞への分化の手順は、複雑で手間がかかり、培養プロセス全体には約4か月程度かかり、長いものには6か月かかり、細胞療法又は疾患モデルの構築におけるOPsの適用を大幅に制限している。今まで、神経上皮細胞からOPsへの培養方法では、培地にウシ胎児血清、非ヒトアルブミン又は非ヒト由来成長因子などの異物を多く添加し、臨床応用におけるOPsのリスクが増加している。現在、多くの学者は、分化時間を短縮し、分化の効率を向上させることができる培地及び培養方法にの研究に専念している。
【発明の概要】
【0004】
外因子なしの条件下でオリゴデンドロサイト前駆細胞を調製する効率を向上させるために、一方、本発明の実施形態の一態様は、神経幹細胞をオリゴデンドロサイト前駆細胞に分化させるための培地を提供し、前記培地は、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを混合した基礎培地を含み、さらに、最終濃度が0.5~2.5%のGlutaMAX、1~5%のB27、0.5~2.5%のN2、2~25ng/mlのbFGF、2~25ng/mlのPDGF-AA、25~250ng/mlのβ-HRG1、1~20μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
本発明で提供される神経幹細胞をオリゴデンドロサイト前駆細胞に分化させるための培地は、神経幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞に分化する時間を短縮し、神経幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞への分化効率を向上させ、ここで、前記培地に2-メルカプトエタノールを添加することにより、細胞の抗酸化能力を向上し、細胞生存率を高めるだけでなく、前記2-メルカプトエタノールと培地でのPDGF-AA及びβ-HRG1との組み合わせ作用にり、オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化効率を大幅に高めることができる。
【0005】
オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化効率及び最終製品の純度をさらに向上させるために、好ましくは、前記神経幹細胞をオリゴデンドロサイト前駆細胞に分化させるための培地において、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを体積比1:1で混合した基礎培地を含み、さらに、最終濃度が1%のGlutaMAX、2%のB27、1%N2、10ng/mlのbFGF、10ng/mlのPDGF-AA、100ng/mlのβ-HRG1、10μMの2-メルカプトエタノール、1%のP/Sを含む。
さらに好ましくは、前記培地は、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを混合した基礎培地を含み、さらに、最終濃度が0.5~2.5%のGlutaMAX、1~5%のB27、0.5~2.5%のN2、2~25ng/mlのbFGF、2~25ng/mlのPDGF-AA、2~25ng/mlのIGF-1、2~25ng/mlのWnt3A、25~250ng/mlのβ-HRG1、1~20μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
【0006】
前記培地にIGF-1及びWnt3Aを添加することにより、細胞生存率をさらに向上させ、オリゴデンドロサイト前駆細胞の生産量を増加させ、神経幹細胞からグリア細胞への分化を促進し、分化効率をさらに向上させることができ、ここで、培地中のIGF-1及びWnt3Aの濃度は、それぞれ2~25ng/ml及び1~10ng/mlであることが好ましい。
さらにオリゴデンドロサイト前駆細胞の分化効率を向上させ、その生産量を増加させるために、前記神経幹細胞をオリゴデンドロサイト前駆細胞に分化させるための培地において、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを体積比1:1で混合した基礎培地を含み、さらに、最終濃度が1%のGlutaMAX、2%のB27、1%のN2、10ng/mlのbFGF、10ng/mlのPDGF-AA、10ng/mlのIGF-1、5ng/mlのWnt3A、100ng/mlのβ-HRG1、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
【0007】
他方、本発明の実施形態の別の一態様は、オリゴデンドロサイト前駆細胞を製造する方法において、
Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを混合した基礎培地を含み、さらに最終濃度が0.5~2.5%のGlutaMAX、1~5%のB27、0.5~2.5%のN2、2~25ng/mlのbFGF、2~25ng/mlのPDGF-AA、25~250ng/mlのβ-HRG1、1~20μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む培地を調製するステップと、
濃度が2.5~25μg/mlのPLO及び2.5~25μg/mlのラミニンで細胞培養容器にコーティングした後、上記ステップに記載の培地を加え、1×10~5×10cells/cmの密度で神経幹細胞を前記細胞培養容器に播種するステップと、
細胞に十分な成長因子及び栄養素があることを保証する条件下でオリゴデンドロサイト前駆細胞が前記培地に現れるまで前記培地を定期的に交換し、前記培地を48hおきに定期的に交換してもよいステップと、を含む、オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法を提供する。
【0008】
オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化過程中では、細胞間相互作用が分化効率に影響を与え、1×10~5×10cells/cmの播種密度でオリゴデンドロサイト前駆細胞の数を確保した上で分化効率を向上させており、播種密度が5×10cells/cmより高く又は1×10cells/cmより低い場合には、同じ数のオリゴデンドロサイト前駆細胞の調製には、より長い分化時間がかかる。
ここで、分化したオリゴデンドロサイト前駆細胞を臨床適用基準に近づけるか、又は満たすために、細胞培養容器にコーティングされるラミニン(laminin)は、ヒト由来ラミニンであることが好ましい。
【0009】
さらに好ましくは、前記オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法において、神経幹細胞を4×10cells/cmの密度で前記細胞培養容器に播種し、その条件下で、播種日から5日間程度かけてオリゴデンドロサイト前駆細胞が観察され、第8日目まで培養し、当業者に周知の方法により純度が90%より高いオリゴデンドロサイト前駆細胞を得ることができ、さらに臨床研究に適用するか、又は細胞製剤の活性成分として髄鞘障害に関連する疾患に適用することができる。
好ましくは、前記オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法において、前記細胞培養容器は6ウェルプレートである。細胞密度を確保することを前提として、他の細胞培養プレート又は培養皿、例えば、12ウェルプレート、24ウェルプレートが除外されなく、又は実際に分化する必要があるオリゴデンドロサイトの量に従って細胞培養皿を選択して分化する。
【0010】
本発明に係る実施例で提供されるオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法で用いれる神経幹細胞は、当業者に周知の様々な方法により調製された神経幹細胞であってもよく、好ましくは、前記神経幹細胞は、骨髄間葉系幹細胞に由来し、骨髄間葉系幹細胞から本発明で提供される方法で調製されるオリゴデンドロサイト前駆細胞は、明らかな拒絶反応なしに種を越えて髄鞘障害治療又は他の研究に適用することができる。
本発明に係る実施例の別の目的は、骨髄間葉系幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞を調製するプロセスを安定的に制御しながらオリゴデンドロサイト前駆細胞品質を向上させる方法を提供する。
【0011】
好ましくは、前記オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法において、前記神経幹細胞の製造方法は、
神経幹細胞用培地として最終濃度が0.5%~2.5%のGlutaMAX、1%~5%のB27、10~60ng/mlのbFGF、10~60ng/mlのEGF、5~40ng/mlのGMP IGF-1及び1%のP/Sを含有するAdvanced DMEM/F12を含む培地を調製するステップと、
前記神経幹細胞用培地により骨髄間葉系幹細胞の非接着性培養を行い、7500~20000cells/cmの密度で細胞非接着性培養容器に播種するステップと、
細胞の成長に応じて前記細胞非接着性培養容器内の神経幹細胞用培地を定期的に交換し、前記神経幹細胞は、ニューロスフェアとして前記神経幹細胞用培地に存在するステップと、を含む。
【0012】
さらに好ましくは、前記オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法において、神経幹細胞用培地として最終濃度が1%のGlutaMAX、2%のB27、40ng/mlのbFGF、40ng/mlのEGF、20ng/mlのIGF-1及び1%のP/Sを含有するAdvanced DMEM/F12を含む培地を調製し、前記神経幹細胞用培地により骨髄間葉系幹細胞の非接着性培養を行い、10000cells/cmの密度で細胞非接着性培養容器に播種し、ここで、高濃度のbFGF及びEGFをIGF-1と配合すると、ニューロスフェアの生産量を効果的に向上させることができる。
前記ニューロスフェアは、培養容器内で非接着培養により培養する必要があり、非接着培養は、ニューロスフェアの自律的分化を抑制でき、分化御製に役立ち、非接着性培養を使用して前記ニューロスフェアを収集する場合には細胞を消化する必要がなく、培養液を直接遠心分離することができ、消化ステップでの細胞への損傷を減らすため、非接着培養で骨髄間葉系幹細胞を培養することにより骨髄間葉系細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞を調製する収率を向上させることができる。
【0013】
好ましくは、前記オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法において、前記神経幹細胞はニューロスフェアとして前記神経幹細胞用培地に存在し、前記ニューロスフェアは、100g~300gで約5min遠心分離する条件下で前記神経幹細胞用培地から分離する。
好ましくは、前記オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法において、前記骨髄間葉系幹細胞は、骨髄から以下の手順で調製される。前記手順は、
前記骨髄をStem Pro培地で培養し、48時間後に培地及び非接着細胞を取り除き、新しい培地を追加して培養を続けること;
培地に骨髄間葉系幹細胞のクローンが現れると、培地にCD45陽性細胞の含有量が1%未満になるまで40000cells/cmの播種密度でStem Pro培地に播種して継代培養を行うことを含む。
骨髄には、骨髄間葉系幹細胞以外の多くの異種細胞が含まれ、骨髄を48h接着培養した後、培地を除去すると、非接着性の異種細胞を大幅に低減させ、骨髄間葉系幹細胞の純度を向上させることができる。
【0014】
発明者は、実験を通じて、骨髄内の造血幹細胞が骨髄間葉系幹細胞から神経幹細胞を調製する効率に影響を与えることを見出し、骨髄を48h培養した後、接着性細胞を継代培養すると、骨髄内の造血幹細胞を大幅に減少させることができ、通常に、3~4回継代培養することで、発現するCD45陽性細胞の含有量を1%未満にすることができる。
さらに、40000cells/cmの播種密度で継代すると、骨髄間葉系幹細胞の幹細胞性が維持され、骨髄間葉系幹細胞のランダムな分化が抑制されるため、骨髄からオリゴデンドロサイト前駆細胞を調製する収率を向上させる。
さらに好ましくは、前記オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法において、神経幹細胞を調製するための骨髄間葉系幹細胞STRO-1、CD90及びCD73陽性発現量が90%より大きく、Nestin陽性発現量が5%より大きく、且つCD45陽性発現量が1%未満である。培地中の細胞マーカーの陽性発現量は、骨髄間葉系幹細胞の継代培養の回数により制御され、培地中のCD45陽性発現量が1%未満である場合には、造血幹細胞が骨髄間葉系幹細胞による神経幹細胞の調製に与える影響は無視できる。
【0015】
本発明は、オリゴデンドロサイト前駆細胞を効率よく分化させることができる培地、及び該培地によりオリゴデンドロサイト前駆細胞を製造する方法を提供し、前記方法は、骨髄によりオリゴデンドロサイト前駆細胞を製造する方法を含む。本発明で提供される培地及びオリゴデンドロサイト前駆細胞の調製プロセスでは、外因子を使用せず、外因子の汚染を回避し、臨床研究の可能性を与える。また、本発明で提供される製造方法は、さらに調製されるオリゴデンドロサイト前駆細胞の高収率、高い分化効率、制御可能な分化プロセスという有益な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、フローサイトメトリー法による実施例1での骨髄間葉系幹細胞マーカーCD90、CD73、STRO-1、CD45及びNestinの検出を示す。
図2図2は、実施例2での神経幹細胞用培地に播種する前の骨髄間葉系幹細胞におけるNestin及びGFAP陽性発現量を対照とし、ニューロスフェアにおけるNestin及びGFAP陽性細胞がニューロスフェアの細胞の総数に占める割合のヒストグラムを示す。
図3図3は、実施例4に従って調製されるオリゴデンドロサイト前駆細胞Olig2、PDGFRα、NG2及びSox10の免疫蛍光染色画像を示す。
図4図4は、フローサイトメトリー法による実施例4でのオリゴデンドロサイト前駆細胞マーカータンパク質Olig2、PDGFRα、NG2及びSox10の検出を示す。
図5図5は、オリゴデンドロサイト前駆細胞を含まないCIBを対照とし(図A)、shivererモデルマウスへのOPsの注射(図B)12週間後のミエリン塩基性タンパク質(MBP)の発現を示す。
図6図6は、それぞれヒト由来OPs及びマウス由来OPsを含む注射後のshivererモデルマウスの寿命延長の状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図面及び具体的実施例によりさらに説明するが、実施例に係る実験方法は、特に断りがない限り、いずれも常法であり、実験で用いられる機器及び試薬はすべて市販として入手できる。
本発明に係る実施例で用いられる培地は、主成分の来源情報は、以下の通りである。
CTS Stem Pro培地:Thermo Fisher、Cat.No.: A1033201
Advanced DMEM/F12:Thermo Fisher、Cat. No.: 12634028
Neurobasal medium:Thermo Fisher、Cat. No.: 21103049
【0018】
本発明に係る実施例では、臨床的標準の成長因子、例えば、CTS N2(Thermo Fisher、Cat. No.: 1370701)、CTS B27(Thermo Fisher、Cat. No.: 1486701)GMP bFGF(Peprotech、 Cat. No.:GMP100-18B)及びGMP PDGF-AA(Peprotech、 Cat. No.:GMP100-13A)を使用した。オリゴデンドロサイト前駆細胞の調製するために本発明に係る実施例において非臨床的標準の化学試薬を使用することが排除されない。
【0019】
実施例1:骨髄間葉系幹細胞(BMSC)の予備処理
1、原料由来:
骨髄は、30日齢のSprague-Dawleyラット又は年齢が18~40歳の成人に由来するが、これらに限定されない。
2、CTS Stem Pro培地9mlでSprague-Dawleyラット又は成人骨髄1mlを希釈し、細胞接着培養に適するように変性処理された10cmの細胞培養皿に希釈後の骨髄を加えて培養し、骨髄の接着培養を行う日をオリゴデンドロサイト前駆細胞分化過程の初日(D0)を定義した。
【0020】
3、48時間後に培地を細胞培養皿から取り出し、DPBSで非接着性細胞を洗浄した後、CTS Stem Pro培地10mlを加え、その後、CTS Stem Pro培地を72時間おきに1回交換して培養を継続した。
4、D6~D7まで培養する際に、培養皿で骨髄間葉系幹細胞(BMSC)クローンを観察でき、D8~D10まで培養する際に、培地を吸引し、培養皿中の非接着性細胞をDPBS 3mlで洗浄し、上記DPBSを取り除き、培養皿にCTS Tryple Select 1mlを加え、37℃で5minインキュベートし、消化された細胞溶液を収集し、室温の条件下、200gで5min遠心してペレットを得、CTS Stem Pro培地で上記遠心ペレットを再懸濁した。
5、上記細胞を4×10 cells/cmの密度で6cm又は10cmの細胞培養皿に播種した。
6、培養皿中のBMSCは80%~90%のコンフルエントに達する時に、継代培養を行い、ここで、BMSCが10世代を超えて継代培養することはできない。
【0021】
7、BMSCの同定
フローサイトメーターによるそのマーカーの検出:
BMSCがP3に継代されると、細胞を収集し、通常に消化し、DPBSで細胞を再懸濁した後に、4%のPFAを加えて10min固定した後、遠心分離し、細胞ペレットをDPBSで2~3回洗浄してPFAを除去し、それぞれCD90、CD73、CD45、Nestin及びSTRO-1を含む一次抗体のブロッキング溶液で細胞を2hインキュベートし、遠心分離した後、さらに蛍光色素(Alexa488)で標識された二次抗体を含むブロッキング溶液で細胞を30minインキュベートし、遠心分離して細胞をDPBSで再懸濁した後、フローサイトメーターで細胞表面抗原を検出した。陰性対照は、一次抗体の由来、Igタイプ及びラベルに一致する非特異的抗体をアイソタイプコントロールとして使用された。図1に示されるフローサイトメトリー解析結果は、本発明に係る実施例で調製されたBMSCはCD73、CD90及びSTRO-1を安定して発現し、且つBMSCには造血幹細胞がほとんどないことを示している。
【0022】
ここで、ブロッキング溶液は、2%のBSA及び0.1%のTriton X-100を含むDPBSである。
フローサイトメトリー法により以下の3群のマーカーを検出した。即ち
A:BMSCマーカー:STRO-1、CD90及びCD73;
B:神経幹細胞マーカー:Nestin;
C:造血幹細胞マーカー:CD45。
培養皿内の細胞のA群マーカーに陽性が90%より大きく、B群マーカーに陽性率が5%より大きく、且つC群マーカーに陽性率が1%未満である場合には、培養皿中での細胞は、次の操作に用いれた。
【0023】
実施例2:BMSCの神経幹細胞への分化
1、神経幹細胞用培地の調製
最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、40ng/mlのGMP bFGF、40ng/mlのGMP EGF、20ng/mlのGMP IGF-1及び1%のP/Sを含むAdvanced DMEM/F12培地を調製した。
2、BMSCが第3世代から第10世代の間に継代した時に(好ましくはD15)、CTS Tryple SelectでBMSCを消化し、遠心分離した後、神経幹細胞用培地でBMSCを再懸濁し、1×10cells/cmの密度でUltra Low(登録商標)非接着性培養用6ウェルプレートに播種した。
3、神経幹細胞用培地を48時間おきに交換し、培養時間の延長に伴い、神経幹細胞はニューロスフェアを形成し、神経幹細胞用培地に懸濁し、非接着性培養の5~7日目に、培地を200gで5min遠心分離してニューロスフェアとして存在する神経幹細胞を得た。
【0024】
実施例3:神経幹細胞の同定
骨髄間葉系幹細胞を対照として、実施例2に係る非接着性培養の5日目のニューロスフェアを分散させた後に、免疫蛍光法にてニューロスフェアでのNestin及びGFAP陽性細胞の含有量を検出してカウントし、図2から、実施例2においてニューロスフェア中のNestin及びGFAP陽性細胞の含有量が85%を超えることが分かった。
実験により、実施例2にかかるニューロスフェアのNestin及びGFAP陽性細胞の含有量が75%を超える時に、そのニューロスフェアを使用してさらに分化したオリゴデンドロサイト前駆細胞の純度及び分化効率は高くなることが分かった。
【0025】
実施例4:神経幹細胞のオリゴデンドロサイト前駆細胞への分化
1、オリゴデンドロサイト前駆細胞分化用培地の調製
実施例2で調製された神経幹細胞を分化させるために、それぞれ以下の10群のオリゴデンドロサイト前駆細胞分化用培地を調製した。即ち
(1)第1群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とCTS Neurobasal mediumを体積比1:1で均一に混合した基礎培地、及び最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、1%のCTS N2、10ng/mlのGMP bFGF、10ng/mlのGMP PDGF-AA、100ng/mlのGMP β-HRG1、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
【0026】
(2)第2群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを体積比9:2で均一に混合した基礎培地、及びそれぞれ最終濃度が0.5%のGlutaMAX、1%のB27、0.5%のN2、2ng/mlのbFGF、2ng/mlのPDGF-AA、25ng/mlのβ-HRG1、1μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
(3)第3群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とNeurobasal mediumを体積比1.5:7.5で均一に混合した基礎培地、及びそれぞれ最終濃度が2.5%のGlutaMAX、5%のB27、2.5%のN2、25ng/mlのbFGF、25ng/mlのPDGF-AA、250ng/mlのβ-HRG1、20μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
【0027】
(4)第4群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とCTS Neurobasal mediumを体積比1:1で均一に混合した基礎培地、及び最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、1%のCTS N2、10ng/mlのGMP bFGF、10ng/mlのGMP PDGF-AA、2ng/mlのIGF-1、25ng/mlのWnt3A、100ng/mlのGMP β-HRG1、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
(5)第5群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とCTS Neurobasal mediumを体積比1:1で均一に混合した基礎培地、及び最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、1%のCTS N2、10ng/mlのGMP bFGF、10ng/mlのGMP PDGF-AA、25ng/mlのIGF-1、2ng/mlのWnt3A 100ng/mlのGMP β-HRG1、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
【0028】
(6)第6群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とCTS Neurobasal mediumを体積比1:1で均一に混合した基礎培地、及び最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、1%のCTS N2、10ng/mlのGMP bFGF、10ng/mlのGMP PDGF-AA、15ng/mlのIGF-1、10ng/mlのWnt3A 、100ng/mlのGMP β-HRG1、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
(7)第7群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とCTS Neurobasal mediumを体積比1:1で均一に混合した基礎培地、及び最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、1%のCTS N2、10ng/mlのGMP bFGF、10ng/mlのGMP PDGF-AA、100ng/mlのGMP β-HRG1及び1%のP/Sを含む。
【0029】
(8)第8群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とCTS Neurobasal mediumを体積比1:1で均一に混合した基礎培地、及び最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、1%のCTS N2、10ng/mlのGMP bFGF、100ng/mlのGMP β-HRG1、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
(9)第9群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とCTS Neurobasal mediumを体積比1:1で均一に混合した基礎培地、及び最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、1%のCTS N2、10ng/mlのGMP bFGF、10ng/mlのGMP PDGF-AA、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
【0030】
(10)第10群の分化用培地は、Advanced DMEM/F12とCTS Neurobasal mediumを体積比1:1で均一に混合した基礎培地、及び最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、1%のCTS N2、10ng/mlのGMPレベルのbFGF、10ng/mlのGMPレベルのPDGF-AA、10ng/mlのNT-3(神経栄養因子3)、10μMの2-メルカプトエタノール及び1%のP/Sを含む。
2、濃度がいずれも10μg/mlであるポリ-L-オルニチン(PLO)及びヒト由来ラミニンで6ウェルプレートにコーティングし、その6ウェルプレートにオリゴデンドロサイト前駆細胞分化用培地を加えた後、実施例2で調製された神経幹細胞を播種し、ここで、播種密度は4×10cells/cmである。
【0031】
3、播種後、オリゴデンドロサイト前駆細胞分化用培地を48時間おきに交換し、神経幹細胞を第1群のオリゴデンドロサイト前駆細胞を含有する分化用培地に播種後の8日目から、CTS Tryple Selectで消化してオリゴデンドロサイト前駆細胞を収集し、実施例1での骨髄1mlから本発明で提供されるオリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法により2×10個のオリゴデンドロサイト前駆細胞を得るため、本発明で提供される分化用培地及び培養方法によるオリゴデンドロサイト前駆細胞の調製時間は従来技術よりも大幅に短縮され、オリゴデンドロサイト前駆細胞の調製効率を向上させ、しかも、細胞のカウント結果により、本発明でオリゴデンドロサイト前駆細胞を調製する収率は高くなることが分かった。
【0032】
4、フローサイトメトリー法により細胞のOlig2、PDGFRα、NG2及びSOX10の発現を検出し、ここで、Olig2は、オリゴデンドロサイト前駆細胞で特異的に発現されるマーカーである。図4には、第1群の分化用培地で10日目に調製されたオリゴデンドロサイト前駆細胞のOlig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10陽性細胞率を示し、ここで、Olig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10の陽性率は、それぞれ95.13%、97.22%、90.07%及び94.43%であり、神経幹細胞を第2群の分化用培地で培養開始後19日目に、Olig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10の陽性細胞率は、それぞれ72.5%、69.36%、75.91%及び74.75%であり、神経幹細胞を第3群の分化用培地で培養開始後17日目に、Olig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10の陽性細胞率は、それぞれ83.41%、79.67%、78.5%及び81.74%である。第3群の培地において物質の濃度が高くなるため、オリゴデンドロサイト前駆細胞をオリゴデンドロサイトへ変換し、Olig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10の陽性細胞率をある程度低減させた。
分化用培地にIGF-1及びWnt3Aを添加することにより、神経幹細胞のオリゴデンドロサイト前駆細胞への分化効率を向上させることができ、神経幹細胞を第4群の分化用培地で培養開始後6日目に調製された細胞のOlig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10陽性率は、それぞれ79.11%、84.75%、84.32%及び87.69%であり、神経幹細胞を第5群の分化用培地で培養開始後6日目に調製される細胞のOlig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10陽性率は、それぞれ81.51%、88.62%、83.73%及び80.34であり、神経幹細胞を第6群の分化用培地で培養開始後5日目に調製される細胞のOlig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10陽性率は、それぞれ95.35%、98.81%、95.33%及び94.17%である。
【0033】
神経幹細胞を第7群の分化用培地で培養開始後10日目に調製される細胞のOlig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10陽性率は、それぞれ67.73%、71.95%、69.25%及び66.09%であり、その純度は、第1群の分化用培地で10日目に調製された細胞のオリゴデンドロサイト前駆細胞の純度よりもはるかに低く、しかも、2-メルカプトエタノールが含まれていない分化用培地にてオリゴデンドロサイト前駆細胞を調製する効率は顕著に低下した。
神経幹細胞を第8群の分化用培地で培養開始後10日目に調製された細胞のOlig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10陽性率は、それぞれ76.62%、71.45%、79.81%及び77.69%であり、神経幹細胞を第9群の分化用培地で培養開始後10日目に調製された細胞のOlig2、PDGFRα、NG2、及びSOX10陽性率は、それぞれ71.37%、68.45%、72.69%及び71.11%であり、これらの2群の実験より、2-メルカプトエタノールとβ-HRG1の両方を含む培地は、2-メルカプトエタノールとPDGF-AAの両方を含む培地よりも神経幹細胞のオリゴデンドロサイト前駆細胞への分化を促進できることが分かった。
【0034】
神経幹細胞を第10群の分化用培地で培養開始後10日目に調製された細胞のOlig2、PDGFRα、NG2及びSOX10陽性率は、それぞれ72.44%、74.96%、75.31%及び71.33%であり、それにより、神経栄養因子3と2-メルカプトエタノールとPDGF-AAとの組み合わせも同様に神経幹細胞をオリゴデンドロサイト前駆細胞に分化させることができるが、分化効率がβ-HRG1、2-メルカプトエタノール及びPDGF-AAの組み合わせよりも低いことが分かった。
細胞の以上の4つのマーカーの陽性率がいずれも90%よりも高くなる場合には、該細胞のオリゴデンドロサイト前駆細胞の純度が高くなり、さらに細胞製剤の有効成分として使用されるか、又は臨床研究に適用されることができる。
【0035】
実施例5:オリゴデンドロサイト前駆細胞のin vitro実験
1、Myelin Forming Medium(MFM)の調製
最終濃度が1%のCTS GlutaMAX、2%のCTS B27、10μMの2-メルカプトエタノール、1%のP/S及び最終濃度が10μMのT3を含むCTS Neurobasal Mediumを調製した。
2、上記の方法でSprague-Dawleyラット又は成人骨髄により調製されるBMSCから分化したオリゴデンドロサイト前駆細胞及びニューロンをMFMで15間共培養した際にミエリン塩基性タンパク質の発現量の顕著な増加が認められた。
【0036】
実施例6:オリゴデンドロサイト前駆細胞のin vivo実験
1、細胞注射用バッファーの調製(Cell Injection Buffer、CIB)
最終濃度が20 mM的D-グルコース、1%のP/SをCa2+フリーのフェノール溶液又はMg2+フリーのハンクス平衡塩溶液(HBSS)溶液を調製した。
2、CTS Tryple Selectにて実施例4で調製されるオリゴデンドロサイト前駆細胞を消化し、CIBを追加して消化を停止し、200gで5min遠心した後にCIBでペレットを再懸濁させ、オリゴデンドロサイト前駆細胞注射液とした。
3、動物実験
それぞれshivererモデルマウスの中枢神経にヒト由来骨髄から分化したオリゴデンドロサイト前駆細胞注射液及びSprague-Dawleyラット骨髄から分化したオリゴデンドロサイト前駆細胞注射液を注射し、ここで、注射液濃度は、4×10cells/ulであり、且つ対照としてオリゴデンドロサイト前駆細胞が含まれていないCIBを使用した。
ここで、shivererモデルマウスは、中枢神経系の髄鞘が損傷し、寿命が約90日間のみである実験マウスであり、現在、髄鞘障害の研究に広く使用されている。
【0037】
図5より、Shivererモデルマウスにオリゴデンドロサイト前駆細胞注射液を注射してから12週間後に、該モデルマウスの脳組織で大量のミエリン塩基性タンパク質(MBP)陽性発現が検出されることが明らかになり、それにより、オリゴデンドロサイト前駆細胞が損傷した髄鞘の回復に寄与することを示した。ここで、オリゴデンドロサイト前駆細胞は、マウス由来骨髄の分化により調製された。
また、図6より、オリゴデンドロサイト前駆細胞がshivererモデルマウスの平均寿命を125日間(最長138日間)まで延長し、且つヒト由来骨髄から調製したオリゴデンドロサイト前駆細胞とマウス由来骨髄から調製したオリゴデンドロサイト前駆細胞とは、同様にモデルマウス寿命を延長させることができ、ヒト由来骨髄から調製したオリゴデンドロサイト前駆細胞をshivererモデルマウスに注射した後、明らかな拒絶反応が認められない。
以上の実験結果より、本発明に係る分化条件で骨髄間葉系幹細胞から分化するオリゴデンドロサイト前駆細胞は髄鞘障害又は他のオリゴデンドロサイトに関連する神経系疾患を治療する潜在能力を有し、本発明で提供される方法は、骨髄間葉系幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞への分化時間を顕著に短縮させ、しかも、本発明で用いれる培地がいずれも非動物由来成分処方であるため、さらにオリゴデンドロサイト前駆細胞の臨床応用を促進することが分かった。
【0038】
本発明に係る実施例での細胞の同定及び検出方法において用いれる免疫蛍光染色及びフローサイトメトリー法という実験方法及び使用される関連試薬は、いずれも当業者が対応する細胞の検出又は同定に用いれる常法である。
本発明の実施例に開示されている様々な実験パラメータは、発明者が複数回の実験により選別された、オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化効率を効果的に向上させる可能なものであるが、本発明の保護範囲を制限しない。本発明を基づいて培地の組成、含有量又は実験条件、例えば、培養時間、遠心力、遠心時間、培養温度などに加える明らかな変更、置換または修正は、すべて本発明の範囲内にある。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6