(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】円筒水車を使った発電装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
F03B 3/04 20060101AFI20220801BHJP
F03B 7/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
F03B3/04
F03B7/00
(21)【出願番号】P 2022007717
(22)【出願日】2022-01-21
【審査請求日】2022-01-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522029350
【氏名又は名称】株式会社ノワール
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 隆明
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143535(JP,A)
【文献】特開2018-031374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/04
F03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向で回転可能な回転管と、前記回転管の回転を伝達するシャフトと、前記シャフトと接続する発電機とを備える発電装置であって、
前記回転管は、
軸方向で流水を挿通する中空部と、軸方向の流れを回転方向の作用に変換する水受け部を有し、
前記水受け部は、前記回転管の外周面及び内周面に設けられる発電装置。
【請求項2】
前記内周面に設けられる前記水受け部は、前記外周面に設けられる前記水受け部よりも面積が大きい請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記水受け部は、
内側に突出するらせん状の羽部材である請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記水受け部は、前記外周面及び前記内周面にそれぞれ複数設けられる請求項1~3の何れかに記載の発電装置。
【請求項5】
前記回転管は、軸方向で回転する回転管本体と、前記回転管本体の側面を覆う大回転管と、を有し、前記大回転管は前記回転管本体と協働して回転する請求項1~4の何れかに記載の発電装置。
【請求項6】
前記回転管の外径よりも大きい内径を有する大径管を備え、
前記大径管は前記回転管の側面を覆うように設けられる請求項1~5の何れかに記載の発電装置。
【請求項7】
軸方向で回転可能な回転管と、前記回転管の回転を伝達するシャフトと、前記シャフトと接続する発電機とを備える発電装置であって、
前記回転管は、軸方向に流水を挿通する中空部と、軸方向の流れを回転方向の作用に変換する水受け部を有し、
前記水受け部は、前記回転管の外周面及び内周面に設けられる発電装置の製造方法であって、
ワイヤーを回転管の内周面および外周面に取り付けるワイヤー取り付け工程と、軸方向の流れを回転方向の作用に変換する水受け部を前記ワイヤーに取り付ける水受け取り付け工程と、を含む発電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、川や水路の流れを電力に変換するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電装置は、流水を受けることで回転運動を発生させ、自然由来の位置エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であり、水の流れさえあれば小規模であっても発電をすることができる優位性を持つ。
そして、水路に設置する発電装置として、例えば特許文献1に示すような軸方向で回転する円筒型の水車が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円筒型水車の発電には、回転を持続させるためにある程度のトルクや回転数が必要である。そして、高いトルクを得るためには回転軸からなるべく離れた位置に水を多量に受けられる水受けを設置することが好ましい。
ここにおいて、特許文献1に記載の発明のように、内周面に水受けを設ける円筒水車においては、仮に水受けを大きく構成しても、流れを受ける部分が回転中心に近くなるため大きな回転トルクを得がたくある。また、水受け部分に異物が引っ掛かり回転が阻害される恐れもある。特許文献1の発明は、これらの点において改良点がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、内部に異物が引っ掛かることを防ぐとともに、水力発電に十分な回転トルクや回転数を得ることができる円筒型水車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本願発明は、軸方向で回転可能な回転管と、前記回転管の回転を伝達するシャフトと、前記シャフトと接続する発電装置とを備える発電装置であって、前記回転管は、流水を挿通する中空部と、方向の流れを回転方向の作用に変換する水受け部を有し、前記水受け部は、前記回転管の外周面及び内周面に設けられる発電装置である。
このように、前記中空部を設けることによって異物の排出を促進し、また、内周面及び外周面に前記水受け部を設けることによって大きな回転力を得ることができる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記内周面に設けられる前記水受け部は、前記外周面に設けられる前記水受け部よりも面積が大きい。
このような構成によって。水受け部内周面に設けられる水受け部と外周面に設けられる水受け部のトルクの差によって生じる不具合を軽減するとともに、回転管に係る遠心力を軽減して耐久性を高められる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記水受け部は、らせん状の羽部材である。
このような構成によって、前記回転管内部にある沈降又は浮遊する異物が、回転に伴って次第に流路の下流に移動し、内部に異物が留まることを防ぐことができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記水受け部は、外周面及び内周面にそれぞれ複数設けられる。
このような構成によって、それぞれの周面において流水を効率的に受け止め回転力をさらに高めることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記回転管は、軸方向で回転する回転管本体と、前記回転管本体の側面を覆う大回転管と、を有し、前記大回転管は前記回転管本体と協働して回転する。
このような構成によって、流水を受ける面積を増やし、回転のトルクを増やすことができるようになる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記回転管の外径よりも大きい内径を有する大径管を備え、前記大径管は前記回転管を覆うように設けられる。
このような構成によって、流水が整流され、回転管周りの流れを水受けが受けやすくなることで、回転の効率が上昇する。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記大径管は、流路から流水を取り入れる取水口と、流水を排出する排出口と、を有し、前記取水口は前記排出口よりも高い位置に設けられる。
このような構成によって、流水を大径管内に発生させることが容易になる。
【0013】
また、本発明は、ワイヤーを回転管の内周面および外周面に取り付ける取り付け工程と、軸方向の流れを回転方向の作用に変換する流れ受け部を前記ワイヤーに取り付ける取り付け工程と、を含む発電装置の製造方法である。
このような構成によって、内部に異物が引っ掛かることを防ぐとともに、水力発電に十分な回転トルクや回転数を得ることができる円筒型水車を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記課題を解決する本発明は、内部に異物が引っ掛かることを防ぐとともに、水力発電に十分な回転トルクや回転数を得ることができる。また、そのような円筒水車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施形態における、発電装置Xの概略図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態における、発電装置Xの分解斜視図であって、大径管の記載を除いたものである。
【
図3】本発明の第一の実施形態における、回転管のA-A’断面における断面図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態における、回転管側面の概略図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態における、実施時における発電装置Xの模式図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態における、発電装置Xの製造方法を示す説明図である。
【
図7】本発明の第二の実施形態における、回転管の断面図である。
【
図8】本発明の回転管を三重管にしたときを表す断面の参考図である。
【
図9】本発明の水受け部の迎え角を位置によって変更する回転管の製造方法の参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る発電装置について説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施形態の順に詳述する。また、図面中の符号Xは発電装置を表す。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0017】
本発明における発電装置Xは、
図1に示すように、流体の流れを回転に変換する回転管1と、回転を増速する増速機2と、回転を電力に変換する発電機3と、流体を供給排出する大径管4と、によって構成されている。また、回転管1は、大径管4によって周囲が覆われるように設けられる。
【0018】
回転管1は、
図2に示すように、筒状の回転管本体11と、回転管本体11の回転軸上に設けられ、回転管本体11の回転を伝達するシャフト12と、流水を挿通する中空部13と、水受け部14と、によって構成されている。
【0019】
回転管本体11は、長さ約1m、外径約20cm、肉厚約5mm程度の環状の円筒部材であって、好ましくはステンレス製または塩化ビニール製の配管パイプによって構成されている。
【0020】
シャフト12は、回転管1の回転に伴って回転するシャフト本体121と、シャフト本体121へ回転管本体11の回転を伝達するシャフトブラケット122と、により構成されている。
【0021】
シャフト本体121は、金属製の丸棒部材であって、回転管本体11よりも長くなるように構成されている。
また、シャフト本体121は、回転管1の回転軸上に設けられており、一端は、増速機2ないしは発電機3と接続しており、他端は大径管4の底面に軸受けを介して回転可能に貫入されている。これによって、回転管本体11の回転を発電機3等に伝達する。
さらに、シャフト12は中空部13に位置するため、その体積によって回転管1の外部に対して内部の水圧が上昇する。これにより、後述する内側水受け部142に与える流体力を上昇させ、回転の効率を高めることができる。この効果は、シャフト本体121を流水の流れる方向に向かって徐々に太径になるように構成することによってさらに高めることができる。
【0022】
シャフトブラケット122は、回転管本体11の両端から中心方向へ5cm程度(管全体の長さと比して5~10%)入り込んだ位置において、内周面に篏合して固定される部材である。
また、シャフトブラケット122は、シャフト本体121を貫入し、キー溝等によってシャフト本体121の円周方向に回転を固定する筒状の貫入部Vと、貫入部Vから径方向へ伸びる固定羽Wを有し、固定羽Wの端部は回転管本体11の内周面でキー溝等によって固定されている。なお、固定羽Wは、回転管本体11を貫通することによって固定されていてもよい。
【0023】
固定羽Wは、厚み方向の面が回転管本体11の開口端面に向く略平板状の部材であり、貫入部Vから等角度に3枚伸びるように設けられる構成によって、回転管本体11と強固かつ安定的な接続をする。
このように、固定羽Wが占める割合を減らし、流水が通過する面を幅広にとる構成によって、中空部13を流れる流水を効率よく挿通させるとともに、浮遊物等によって回転管内部を詰まりにくくすることができる。
なお、固定羽Wは、先端が回転管本体11の開口端面に向く流線形状の部材としてもよく、このようにすることで、流水をさらに効率的に通すことができる。
【0024】
水受け部14は、回転管本体11の外周面に設けられ、該外周面付近において流れる水を受ける外側水受け部141と、回転管本体11の内周面に設けられ、中空部13の該内周面付近において流れる水を受ける内側水受け部142と、を含む。
また、各々の水受け部14は、実際に流れを受ける受け部本体143と、受け部本体143を所定の角度となるように支える支え部144と、外周面又は内周面に取り付けられる取付板145と、後述するワイヤーYを嵌め込む、嵌め込み部146によって構成される。
なお、図面中においては、各々の水受け部14は中実に構成されているが、嵌め込み部146を設けず、受け部本体143や支え部144を板として他部品と張り合わせることによって中空にしてもよい。これにより、各々の水受け部14の軽量化を図り、さらに内側においても水を受けることで回転トルクの上昇を見込める。
【0025】
外側水受け部141は、
図3及び
図4に記載のように、受け部本体143及び支え部144によって断面を略三角形状とした線状の部材である。回転管本体11の外周面に直角に立設する受け部本体143が流水を受けることができるように、約45°の迎え角αをもって巻き付けられている。
なお、迎え角αは、回転管本体11の長さ方向全体においてらせんが一周するように設けられていても良い。このように構成することによって、流れを効率的に回転に生かすことができる。
本実施形態において、外側水受け部141は、15個の柱状の部材が敷き詰められるように設けられており、それらのすべての面が水受け部14として作用するため、強力なトルクを得ることができる。
【0026】
内側水受け部142は、
図3に記載のように、断面を略三角形状とした線状の部材である。回転管本体11の内周面に直角に立設している受け部本体143が流水を受けることができるように、約45°の迎え角αをもって取り付けられている。
本実施形態において、内側水受け部142は、シャフトブラケット122が設けられる部位を除いて、12個の柱状の部材が敷き詰められるように設けられており、それらのすべての面が水受け部14として作用するため、強力なトルクを得ることができる。
【0027】
受け部本体143は、実際に流れを受ける部分であって、周面に対して2~3cm程度立設して設けられているとともに、回転管本体11の軸方向となす角度(迎え角α)が約45°となるようにらせんを描く。
このように構成することによって、迎え角αをもって軸方向の水の流れを受け、円周方向への回転作用を発生させて回転管本体11を回転させることができる。
好ましくは、内側水受け部142における受け部本体143の高さは外側水受け部141における受け部本体143の高さよりも高く(面積を大きく)して、流れによる流体力を調整することが好ましい。すなわち、所定の流速下において、外周面に係る流体力によるトルクと内周面に係る流体力によるトルクの大きさを略同一となるように設計し、一方の回転トルクが他方の回転トルクを阻害しないようにする。
【0028】
図面中で受け部本体143は、回転管本体11の断面円の接線に対して直角となるように設けられているが、角度、形状はこれに限られない。水を受けた際の抗力に対する揚力の比が大きくなるように、外側水受け部141の断面円の接線となす角を65°~75°の角度としてもよい。さらに、流水を受けやすくするように、水を受ける方向へ向く凹状の曲面を形成してもよい。
【0029】
また、迎え角αの角度を調整することによって、回転管1の回転速度を低速から高速、あるいは高速から低速へと変更することが可能である。これにより、発電装置Xを流速の異なる様々な流路に合わせて適切な回転数を得られるように設計することが可能である。
【0030】
支え部144は、受け部本体143の頂端と連接して設けられる部材であって、回転管本体11の断面円周方向に対して角度をつけて設けられている。ここにおいて、受け部本体143と支え部144とがなす角は45°以上であることが好ましく、より好ましくは60°以上とする。上記なす角を大きくすることによって支え部144の軸方向後方に位置する他の受け部本体143の水受けの効率を上昇させるとともに、支え部144上で剥離が生じて渦が発生することを防ぐことができる。
また、表面の流水を流しやすくするように、周面から離れる方向へ向かう凸状の曲面を形成してもよい。
【0031】
取付板145は、受け部本体143及び支え部144の下端と連接して設けられる平板上の部材であって、一面が回転管本体11の外周面あるいは内周面に沿った形状となるように構成され、当該面が外周面あるいは内周面と接続する。
本実施形態において、回転管本体11にすべての水受け部14が取り付けられた状態にあっては、回転管本体11の外周面と取付板145及び隣接する取付板145の側面同士が略密着するように構成されており、内周面及び外周面の全体が取付板145に覆われる状態となる。一方、取付板145同士は離間してもよい。
【0032】
嵌め込み部146は、
図5(b)に示すように、内径を後述するワイヤーYの外径と略同一としたらせん状の切り取り部分であって、ここにおいてワイヤーYをはめ込んで水受け部14を回転管本体11に固定する。
【0033】
増速機2は、高トルク・低速の回転を、低トルク・高速に変換するための装置であって、内側に複数の歯車が組み込まれている。これにより、回転管1の回転を、発電機3が電力に変換しやすい回転数に変更する。なお、増速機2は発電機3の内部に組み込まれていてもよい。
【0034】
発電機3は、磁石やコイルを回転運動させ、回転運動を電力に変換する装置である。発電機3によって発生した電力を充電池に蓄えるための機構が設けられていてもよい。
【0035】
大径管4は、
図5に示すように、回転管1に流水を供給・排出するとともに、回転管1の周囲を取り囲むように設けられる管である。本実施形態においては、水を供給する供給管41と、回転管1を包囲するとともに所定の位置に固定する包囲管42と、回転管1を通った水を排出する排出管43と、によって構成されており、上述の部品は一体となって構成されている。
【0036】
供給管41は、水を供給する管であって、川や水路等の流路Rから水を取り込む部品である。供給管41の一端は、流路Rに沈められており、また、他端は包囲管42の側面に接続されている。
また、
図6に示すように、実際に流路Rに沈められ、流水を供給する入り口である供給口411を大径管4の径より大きく構成することによれば、大径管4内部の水圧を高くすることができるため、回転管1の回転トルク上昇が見込める。
さらに、流路Rにおいて供給管41に向かうように流れを誘導する誘導部R1を設けることによれば、大径管4内部の水圧をさらに高めることができる。
【0037】
包囲管42は、その内部に回転管1を包囲した状態で保持する大径の直線円管部材である。回転管1が保持される部位の上流側の側面において供給管41と接続しており、また、回転管1が保持される部位の下流側の側面において排出管43と接続されている。
また、包囲管42は、両端に蓋421が水密に設けられている。蓋421の中心では、シャフト本体121が軸受けを介して軸方向で回転可能に貫入支持されており、これによって回転管1の回転を発電機3まで伝達できるようにしてある。
さらに、包囲管42を流路の中に沈めず、流路Rの縁に沿って設けることによって、日常的な点検・確認や簡易的な修理を簡単にできるようにすることができる。
なお、包囲管42と回転管1との間には、流水を挿通可能な隙間を有する。これにより、境界層による流速の低下を軽減するとともに、浮遊物等によって包囲管42の内部が詰まることを抑止することができる。
【0038】
排出管43は、包囲管42を通過した水を排出する管であって、一端が包囲管42の側面に接続されており、他端は排出口431として流路Rに向けて設けられている。
なお、排出管43が実際に水を排出する排出口431は、供給口411よりも低い位置に設けることが好ましく、排出先は流路Rに限られず田等に向けられていてもよい。その場合は供給口411や排出口431に流水を遮断する蓋を設けることが好ましい。
【0039】
以下、
図6を用いて、回転管1の製造方法について詳述を行う。本発明は、回転管1を製造する製造者によって製造される。取り付けの工程には、ワイヤーYを回転管1に取り付けるワイヤー取り付け工程と、水受け部14をワイヤーYに取り付ける水受け取り付け工程を含むが、順番は前後してもよく、また、製造者が考え得る範囲で変更してもよい。また、
図6は製造方法を理解するための概略図であって、簡略化している。
なお、
図6(a)はワイヤーYを金網Y2に貼り付けた状態、
図6(b)は回転管の内周面にワイヤーY、および金網Y2を貼り付け、さらに取り付け管Y1を挿入した状態を表す概略図であり、
図6(c)は水受け取り付け工程を表す回転管の断面説明図である。
【0040】
まず、製造者は、回転管本体11に内側水受け部142を取り付ける。取り付けにあたっては、ワイヤーYと、取り付け管Y1と、金網Y2と、接着剤Pと、を利用する。
ワイヤーYは、径が1~10mm程度の可撓性を有する線形部材である。
また、取り付け管Y1は、外径が回転管本体11の内径よりも小さい管であって、ワイヤーY及び金網Y2を取り付けた状態において回転管本体11に篏合できるように構成される。
金網Y2は目の細かい金属製の網部材であり、網目の内部において接着剤Pを保持する。また、回転管本体11に巻き付けられる程度の可撓性を有する。接着剤Pを保持できて、可撓性を有すれば板状の部材であってもよい。
接着剤Pは、回転管本体11等に利用される材を接着可能な剤であり、例えば金属パテが挙げられる。
【0041】
内側水受け部142の取り付けにおいて、製造者は、接着剤Pを用いて、金網Y2に所定の間隔・角度でワイヤーYを
図6(a)のように貼り付ける。次に、当該金網Y2をワイヤーが取り付け管Y1の外周面に巻き付ける。そして、金網Y2に接着剤Pを塗布し、当該取り付け管Y1を回転管本体11の内部に挿入することで
図6(b)に示す状態とする。
【0042】
次に製造者は、ワイヤーYと回転管本体11が接着されるまで待機する。この際、取り付け管Y1に接着剤Pがつかないように、回転管本体11を適度に回転させることが好ましい。接着を確認後、製造者は回転管本体11から取り付け管Y1を抜きとる。これにより回転管本体11の内周面にワイヤーYが取り付けられる。
【0043】
次に、製造者は、回転管本体11を軸方向で切断する。切断は、半円筒となるように二分割にすることが好ましい。この状態において、
図6(c)に示すようにワイヤーYと嵌め込み部146とを嵌め合わせることによって、水受け部14を固定する。なお、水受け部14を中空にする場合は、受け部本体143の内側とワイヤーYを沿わせ、接着剤Pにより接着固定する。さらに、製造者は取付板145と回転管本体11を接着剤Pによって接着固定する。
その後、製造者は切断した回転管本体11をもとの円筒形状になるように接着剤Pで貼り合わせる。
【0044】
続いて、製造者は外側水受け部141を製造する。
まず、製造者は、内側水受け部142と同様に、金網Y2に所定の間隔においてワイヤーYを貼り付け、
図6(a)に示すような状態にする。
次に、製造者は、金網Y2に接着剤Pを塗布し、ワイヤーYが外側を向くようにして回転管本体11の外周面に巻き付ける。この際、内側水受け部142におけるワイヤーの位置と、ワイヤーYの位置が略一致するように設けることが好ましい。なお、ワイヤーYを回転管に直接巻き付けても良い。
【0045】
次に、製造者は、水受け部14を上述と同様の方法で取り付けることによって、周面が水受け部14で覆われた回転管本体11を完成させる。
【0046】
なお、回転管1の全部あるいは一部を3Dプリンターによって造形しても良い。この場合、積層の方向は回転管1の長さ方向とすることが好ましい。また、迎え角αを一定以上小さくすることによれば、サポート材を形成せずに回転管1を一体成型することが可能となり、好適である。
【0047】
以下、図面を用いて本実施形態に係る発電装置Xの実施の方法について詳述する、本発明は、流路Rに設置して発電を行う使用者によって実施される。
【0048】
まず、使用者は、発電装置Xを流路Rに沿うように設置し、供給管41を流路Rの上流側に、排出管43を流路Rの下流側に設ける。この際、供給管41を排出管43よりも高い位置に設け、供給口411と排出口431は完全に水に沈めることが好ましい。大径管4内部の水位を確保するためである。
【0049】
次に、使用者は排出管43の開口端部をせき止めることで大径管4の内部に水を溜め、水が充満した後に排出管43の開口端を開放する。注入管及び排出管の端部が水没していれば、水位を保った状態で水が流入する。
【0050】
なお、使用者が発電装置Xを設置するにあたっては水路や川に沿って複数の発電装置Xが連続して設けられる構成にすることが好ましく、これにより流路Rにおける発電を「点」ではなくて、「線」でできるようになり、発電量、効率を大きく上昇させることができる。また、回転管1を流路R内に沈める構成であってもよい。
【0051】
《第二の実施形態》
以下に、図面を用いて、本発明の第二の実施形態について詳述する。第一の実施形態と同一の構成については、同一の符号を用いて説明を省略する。
第二の実施形態は、第一の実施形態の構成に加えて、さらに大回転管15を設け、その周囲を包囲管42によって包囲した構成である。このような構成によって、二重回転管として構成することができるため、回転管1に占める水受け部の割合を増やし、回転トルクを上昇させる。
【0052】
回転管1は、
図7に示すように、筒状の回転管本体11と、回転管本体11の回転軸上に設けられ、回転管本体11の回転を伝達するシャフト12と、流水を挿通する中空部13と、水受け部14と、回転管本体11を取り囲んで設けられる大回転管15と、によって構成されている。
また、回転管本体11は、所定の位置に固定羽Wを貫通可能な孔を有している
【0053】
シャフト12は、回転管1の回転に伴って回転するシャフト本体121と、回転管本体11及び大回転管15からシャフト本体121へ回転を伝達するシャフトブラケット122と、により構成されている。
【0054】
シャフト本体121は、金属製の丸棒部材であって、回転管本体11よりも長くなるように構成されている。
また、回転管本体11及び大回転管15は、同一の回転軸を中心に回転するように設けられており、シャフト本体121は、前述の回転軸上に重なるように設けられており、一端は、増速機2ないしは発電機3と接続しており、他端は大径管4の蓋に軸受けを介して回転可能に貫入されている。これによって、回転管本体11の回転を発電機3に伝達する。
【0055】
シャフトブラケット122は、回転管本体11の両端から5cm程度(管全体の長さと比して5~10%)入れ込んだ位置において篏合して固定される部材である。
また、シャフトブラケット122は、シャフト本体121を貫入し、キー溝等によって回転方向に固定する筒状の貫入部Vと、貫入部Vから径方向へ伸びる固定羽Wを有する。
【0056】
固定羽Wは、
図7に示すように、回転管本体11を貫通することで、回転管本体11を回転方向に保持する。貫通した固定羽Wの端部は大回転管15の内周面に達し、そこにおいてキー溝等によって回転方向に固定されるか、あるいは、貫通して保持される。
一方、固定羽Wは、貫入部Vと回転管本体11との位置関係を保持する内側固定羽と、回転管本体11と大回転管15と位置関係を保持する外側固定羽とによって構成されていてもよい。
【0057】
大回転管15は、長さを回転管本体11と略同一とし、また、外径を回転管本体11の1.5~2倍程度とした管状の部品であって、回転管本体11を完全に覆い隠すように設ける。
また、回転管本体11と同様に外側水受け部141、内側水受け部142に相当する部分を大外側水受け部51、大内側水受け部152を有している。さらにそれぞれの水受け部14は、受け部本体143に相当する大受け部本体153、支え部144に対応する大支え部154、取付板145に対応する大取付板155、嵌め込み部146に対応する大篏合部156を有している。
図面においては、各部の大きさはその径に比例して大きくなっているが、その大きさや数、位置、角度は任意に変更可能である。好ましくは、回転管本体11に取り付けられた水受け部14と対応する位置に設けられていることが好ましい。
【0058】
大回転管15そのものの製造方法については、回転管1の製造方法と略同一である。製造者が回転管1に大回転管15を取り付ける方法については以下による。
まず、製造者は、回転管本体11に設けられている孔に固定羽Wを貫入して、貫入部Vの外周面に取り付ける。
次に、固定羽Wが装着された回転管本体11を大回転管15に挿入し、固定羽Wの径方向端部と大回転管15の内周面をキー溝等によって固定する。これによって、内側の回転管本体11と大回転管15が協働して回転する発電装置を設けることができる。
【0059】
他の変更例として、大回転管15の側面をさらに径が大きな巨大回転管16が取り囲むような構成にしても良い。これにより、回転管1は三重回転管となり、断面に占める水受け部14の割合をより増やすことができるため、回転トルクを高めることができる。
使用者は、大径管4の径の大きさに対応して、内部に設けられる回転管1を、単一回転管、二重回転管、三重回転管、あるいはそれ以上の多重回転管を任意に選択することができる。
【0060】
また、迎え角αを種々変更することによって、回転管1の回転や、排出される水の流速を調整することができる。例えば迎え角αを大きくすることによれば、流体が受け部本体143を押圧する面積が大きくなるため、トルクを大きくすることができると思われる。また、迎え角αを小さくすることによれば、排出される水の流速を速くして、浮遊物などを詰まりにくくすることができる。
【0061】
また、回転管1の位置によって水受け部14の迎え角αを変更する構成であってもよい。すなわち、回転管1の前端部において迎え角αの角度を小さくし、後端に向かうにつれ迎え角αを大きくすることで、水流を効率的に受けられるようになり、また、回転管1の後方にある水受け部14についても回転に寄与させることができる。これにより、適切な回転数及びトルクの調整が容易になる。
上記は、回転管1の前端部において迎え角αの角度を小さくすることで水流を回転管1内部に容易に誘導し、後端に向かうにつれその角度を大きくする構成とすることで、水流を設計上の迎え角αに速やかに誘導させることができるという考え方による。これに従うと、設計上の迎え角αを高速回転の70°とする場合は、回転管1の前端における迎え角を30°として水流を回転管1内部に容易に誘導し、後方に向かうにつれて緩やかに角度を上昇させて水流を迎え角αが70°の水受け部14に誘導することで、目的の回転速度を取得してトルクを大きくできるという考え方ができる。
図9は、上記の実施形態に係る回転管の製造に係る説明図である。本図は、回転管本体11の外周面にワイヤーY及び巻き付けられている工程での側面図を表しており、ここから水受け部14をワイヤーYに沿って設けることによって上記の構成とすることができる。なお、上記の構成は内側水受け部142にあってもよい。
【0062】
なお、上述の実施形態は本発明の一例に過ぎず、例えば回転管1の大きさ、長さは自由に変更することができる。また、水受け部14の数や形状、周面に対する角度、流れに対する投影面積等は自由に変更できる。これにより、適切な回転数を得られるように回転管1の設計を調整する。
【符号の説明】
【0063】
1 回転管
11 回転管本体
12 シャフト
121 シャフト本体
122 シャフトブラケット
13 中空部
14 水受け部
141 外側水受け部
142 内側水受け部
143 受け部本体
144 支え部
145 取付板
146 嵌め込み部
15 大回転管
16 巨大回転管
2 増速機
3 発電機
4 大径管
41 供給管
411 供給口
42 包囲管
43 排出管
431 排出口
W 固定羽
V 貫入部
Y ワイヤー
Y1 取り付け管
Y2 金網
α 迎え角
R 流路
R1 誘導部
X 発電装置
【要約】
【課題】内部に異物が引っ掛かることを防ぐとともに、水力発電に十分な回転トルクや回転数を得ることができる円筒型水車の提供を目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、軸方向で回転可能な回転管1と、回転管1の回転を伝達するシャフト12と、シャフト12と接続する発電機3とを備える発電装置Xであって、
回転管1は、流水を挿通する中空部13と、軸方向の流れを回転方向の作用に変換する水受け部14を有し、水受け部14は、回転管1の外周面及び内周面に設けられる発電装置。
【選択図】
図1