(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ガス検出装置及びガス検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/48 20060101AFI20220801BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
G01N25/48
G01N27/04 E
(21)【出願番号】P 2020555070
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004073
(87)【国際公開番号】W WO2020166429
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-10-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2019023341
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390024729
【氏名又は名称】SEMITEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101834
【氏名又は名称】和泉 順一
(72)【発明者】
【氏名】野尻 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】程 徳志
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】▲高▼見 重雄
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148525(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145889(WO,A1)
【文献】特開2005-283558(JP,A)
【文献】特開2016-31335(JP,A)
【文献】特開2016-195042(JP,A)
【文献】特開2003-166894(JP,A)
【文献】実開平3-57652(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象物からリークする検知対象ガスを検知する感熱抵抗素子を有するガスセンサと、前記ガスセンサ及び
前記検知対象物を同一空間内に収容し、強制的に前記検知対象ガスを導入する手段を用いることなく、前記検知対象ガスを前記空間内に前記検知対象ガス
の拡散現象を利用して拡散させる密閉空間形成部と、を具備し、前記密閉空間形成部は、前記検知対象物が収容される少なくとも一つの密閉収容体と、
前記ガスセンサが設置される設置部材と、前記密閉収容体と
前記設置部材とを密閉的に連通状態に繋ぐパイプ部とを有し、前記パイプ部の連通路には、連通路を開閉可能な少なくとも一つの開閉部が設けられていることを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記
密閉収容体には、
前記検知対象物を収容するための開閉可能な少なくとも一つの蓋部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記密閉空間形成部の密閉が真空度1000Pa以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記ガスセンサは、感熱抵抗素子と、前記感熱抵抗素子と熱的に結合されるとともに、加熱、冷却により特定のガス分子が吸着、脱離される多孔性のガス分子吸着材料とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記感熱抵抗素子は、基板に薄膜素子層が成膜されて形成されており、前記基板の厚さ寸法は10μm~100μmであるとともに、前記感熱抵抗素子にはリード部が溶接された状態で接続されていることを特徴とする請求項4に記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記ガスセンサを一定の温度に保持する加熱及び/又は冷却装置を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項7】
感熱抵抗素子と熱的に結合されるとともに、加熱により特定のガス分子が脱離される多孔性のガス分子吸着材料を有するガスセンサと、前記ガスセンサ及び検知対象物が収容され
、強制的に前記
検知対象物からリークする検知対象ガスを導入する手段を用いることなく、
前記検知対象ガス
の拡散現象を利用して拡散させる密閉空間形成部とを備え、前記密閉空間形成部は、前記検知対象物が収容される少なくとも一つの密閉収容体と、
前記ガスセンサが設置される設置部材と、前記密閉収容体と
前記設置部材とを密閉的に連通状態に繋ぐパイプ部とを有し、前記パイプ部の連通路には、連通路を開閉可能な少なくとも一つの開閉部が設けられているガス検出装置におけるガス検出方法であって、前記ガスセンサを一定の温度に保持するステップと、前記多孔性のガス分子吸着材料を加熱状態とする加熱ステップと、前記加熱による前記感熱抵抗素子の出力の変化によって特定のガスを検出する検出ステップと、を具備することを特徴とするガス検出方法。
【請求項8】
請求項7に記載のガス検出方法において、検知対象ガスを検出するために、予め基準となるガスの出力の測定が行われることを特徴とするガス検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分子を検出できるガス検出装置及びガス検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、家電機器やOA機器、食品貯蔵機器、医療機器、自動車等の輸送機器等において、湿度や特定ガスを検出するため、ガス検出装置として湿度センサやガスセンサが用いられている。
このようなガス検出装置にあっては、ガス検出感度や検出対象とするガスを選択するというガス選択性の向上が必要である。
【0003】
ところで、金属抵抗導線をA型ゼオライト、例えば、モレキュラーシーブ5Aで包囲した感湿抵抗素子を備えた湿度センサが知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
また、センサチップを備えたセンサ素子が用いられた湿度センサやモノマーを重合して形成された感湿薄膜が用いられた湿度センサが提案されている(特許文献3及び特許文献4参照)。さらにまた、水素吸収材としてパラジウムを用い、このパラジウムの固体に水素化反応なる化学反応によって水素を吸蔵させて水素ガスを検出する水素ガスセンサが提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-85753号公報
【文献】特開平3-220448号公報
【文献】実用新案登録第3173006号公報
【文献】特開2003-262600号公報
【文献】国際公開2014/189119号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら特許文献には、微量のガスを検出する具体的な検出方法が示されていない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、微量のガスを検出可能なガス検出装置及びガス検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス検出装置は、検知対象物からリークする検知対象ガスを検知する感熱抵抗素子を有するガスセンサと、前記ガスセンサ及び前記検知対象物を同一空間内に収容し、強制的に前記検知対象ガスを導入する手段を用いることなく、前記検知対象ガスを前記空間内に前記検知対象ガスの拡散現象を利用して拡散させる密閉空間形成部と、を具備し、前記密閉空間形成部は、前記検知対象物が収容される少なくとも一つの密閉収容体と、前記ガスセンサが設置される設置部材と、前記密閉収容体と前記設置部材とを密閉的に連通状態に繋ぐパイプ部とを有し、前記パイプ部の連通路には、連通路を開閉可能な少なくとも一つの開閉部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のガス検出方法は、感熱抵抗素子と熱的に結合されるとともに、加熱により特定のガス分子が脱離される多孔性のガス分子吸着材料を有するガスセンサと、前記ガスセンサ及び検知対象物が収容され、強制的に前記検知対象物からリークする検知対象ガスを導入する手段を用いることなく、前記検知対象ガスの拡散現象を利用して拡散させる密閉空間形成部とを備え、前記密閉空間形成部は、前記検知対象物が収容される少なくとも一つの密閉収容体と、前記ガスセンサが設置される設置部材と、前記密閉収容体と前記設置部材とを密閉的に連通状態に繋ぐパイプ部とを有し、前記パイプ部の連通路には、連通路を開閉可能な少なくとも一つの開閉部が設けられているガス検出装置におけるガス検出方法であって、前記ガスセンサを一定の温度に保持するステップと、前記多孔性のガス分子吸着材料を加熱状態とする加熱ステップと、前記加熱による前記感熱抵抗素子の出力の変化によって特定のガスを検出する検出ステップと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微量のガスを検出可能なガス検出装置及びガス検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るガスセンサを示す断面図である。
【
図3】同ガス検出装置の特性検出用の結線図である。
【
図4】同ガス検出装置を示すブロック構成図である。
【
図6】同ガス検出装置を示すブロック系統図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るガス検出装置を示す構成例の図である。
【
図8】同ガス検出装置を示すブロック系統図である。
【
図9】同ガスセンサのセンサ出力を示すグラフである(実験例1)。
【
図10】同ガスセンサのセンサ出力を示すグラフである(実験例2)。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係るガス検出装置を示す構成例の図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係るガス検出装置を示す構成例の図である。
【
図13】同ガスセンサのセンサ出力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1の実施形態に係るガス検出装置及びガス検出方法について
図1乃至
図6を参照して説明する。
図1及び
図2は、ガスセンサを示す断面図であり、
図3は、ガス検出装置の特性検出用の結線図であり、
図4は、ガス検出装置を示すブロック構成図であり、
図5は、ガス検出装置を示す構成例である。また、
図6は、ガス検出装置を示すブロック系統図である。
【0012】
図1及び
図2に示すようにガスセンサ1は、感熱抵抗素子2、ガス分子吸着材料3、ベース部材4及び外装ケース5を備えている。ガスセンサ1は、雰囲気中の水蒸気ガス(水分子)や水素ガス等を検知するセンサである。なお、各図では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
感熱抵抗素子2は、薄膜サーミスタであり、検知用感熱抵抗素子である。基板21と、この基板21上に形成された導電層22と、薄膜素子層23と、保護絶縁層24とを備えている。
【0014】
基板21は、略長方形状をなしていて、絶縁性のアルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア等のセラミックス又は半導体のシリコン、ゲルマニウム等の材料を用いて形成されている。この基板21の一面上には、絶縁性薄膜がスパッタリング法によって成膜して形成されている。具体的には、基板21はアルミナ材料を用いて作られていて、極薄で厚さ寸法が10μm~100μmに形成されている。
このような極薄の基板21を感熱抵抗素子2に用いることで、熱容量が小さくなり高感度で、かつ熱応答性の優れたガスセンサ1が実現可能となる。
【0015】
導電層22は、配線パターンを構成するものであり、基板21上に形成されている。導電層22は、金属薄膜をスパッタリング法によって成膜して形成されものであり、その金属材料には、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等の貴金属やこれらの合金、例えば、Ag-Pd合金等が適用される。また、基板21の両端部には、導電層22と一体的に、導電層22と電気的に接続された電極部22aが形成されている。
【0016】
薄膜素子層23は、サーミスタ組成物であり、負の温度係数を有する酸化物半導体から構成されている。薄膜素子層23は、前記導電層22の上に、スパッタリング法等によって成膜して導電層22と電気的に接続されている。
【0017】
前記薄膜素子層23は、例えば、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等の遷移金属元素の中から選ばれる2種又はそれ以上の元素から構成されている。保護絶縁層24は、薄膜素子層23及び導電層22を被覆するように形成されている。保護絶縁層24は、ホウケイ酸ガラスによって形成された保護ガラス層である。
【0018】
また、前記電極部22aには、金属製のリード部22bが溶接よって接合されて電気的に接続されている。具体的には、リード部22bは、例えば、コンスタンタンやハステロイ(登録商標)のような熱伝導度率が低い材料から形成されていて、その熱伝導率は5W/m・K~25W/m・Kが好ましい。これらはレーザー溶接によって溶接された状態で接続されている。したがって、電極部22aとリード部22bとの相互の金属が溶けて接合されている。このため、電極部22aとリード部22bとの間には、半田付け等の場合に用いられる溶加材(ろう材)等の付加材料がなく、つまり、介在物がないので熱容量を小さくすることができ、熱時定数を小さくして感熱抵抗素子2の熱応答性を速くすることができる。なお、リード部22bには、断面円形の線状体やフレーム状の細幅板状体を用いることができる。リード部22bの形態が格別限定されるものではない。リード部22bが線状体の場合は、φ30μm~φ100μm、細幅板状体の箔状であって、リードフレーム形状の場合は、幅寸法が80~200μm、厚さ寸法が10μm~60μmであることが好ましい。また、リード部22の断面積は0.001mm2~0.03mm2であることが望ましい。
【0019】
このように、リード部22bの材料の熱伝導率を5W/m・K~25W/m・Kで、かつ溶接が可能な材料を選定して、リード部22bの断面積を0.001mm2~0.03mm2にすることで、感熱抵抗素子2の熱容量及び熱放散量を小さくし、高感度で、かつ熱応答性の優れたガスセンサ1が実現可能となる。特に、リード部に箔状のものを用いるとその効果がより改善される。
【0020】
また、感熱抵抗素子は、薄膜サーミスタに限らず、薄膜白金抵抗素子で構成されていてもよい。さらに、白金線及びその合金線等の金属線や金属酸化物、ケイ化物、窒化物等の半導体で構成されたサーミスタ素子であってもよい。熱電対や複数の熱電対を直列に接続したサーモパイル等の熱電対素子で構成されていてもよく、感熱抵抗素子は、格別特定のものに限定されるものではない。
【0021】
以上のように構成された感熱抵抗素子2には、ガス分子吸着材料3が熱的に結合されて設けられている。具体的には、ガス分子吸着材料3は、感熱抵抗素子2の表面に膜状に成膜されて形成されている。より詳しくは、ガス分子吸着材料3は、保護絶縁層24の表面及び基板21の他面側(裏面側)の表面に成膜された状態で保持されている。
【0022】
したがって、感熱抵抗素子2とガス分子吸着材料3とは、保護絶縁層24及び基板21を介して薄膜素子層23と熱的に結合されている。つまり、感熱抵抗素子2とガス分子吸着材料3との間は、相互に熱が伝導されるようになっている。
【0023】
ガス分子吸着材料3は、多孔性の吸着材料であり、例えば、A型ゼオライトのモレキュラーシーブ3A(細孔の直径0.3nm)が感熱抵抗素子2の表面に膜状に成膜されて形成されている。この形成にあたっては、Si 源として水、ケイ酸ナトリウムを加え、Al 源として水、水酸化アルミニウム、水酸化ナトリウムを加え、それぞれ溶液を作り、これらを混合撹拌させてゲルを作製した。そして事前に種処理を行った支持体(感熱抵抗素子)とゲルを共にオイルバスに仕込み、100℃で4 時間、水熱合成を行い膜を作製した。
【0024】
このガス分子吸着材料3の厚さ寸法は1μm~5μmとなっている。このように極めて薄い機能膜を感熱抵抗素子2に成膜が可能となることで、熱容量が小さくなり高感度で、かつ熱応答性の優れたガスセンサ1が実現可能となる。なお、ガス分子吸着材料3の成膜方法は格別特定の方法に限定されるものではない。
【0025】
また、ガス分子吸着材料3には、検出対象ガスに応じてモレキュラーシーブ4A、5A、13X、ハイシリカタイプのゼオライト、金属イオンを置換した銀ゼオライト等や多孔性金属錯体を用いることができる。
【0026】
ベース部材4は、略円盤状に形成された金属製の部材であり、絶縁部材41を介して導電端子部42が挿通されている。この導電端子部42には、感熱抵抗素子2から導出されたリード線22bが溶接、半田付け等で電気的に接続されている。絶縁部材41は、ガラスや樹脂等の絶縁材料で形成されている。
【0027】
なお、ベース部材4を絶縁材料で形成する場合には、絶縁部材41を不要とすることができる。また、導電端子部42は、プリント配線基板等で構成してもよい。
【0028】
外装ケース5は、略円筒状に形成された熱伝導性が良好な金属製の部材であり、一端側が開口するとともに、他端側には通気部51が設けられる円形状の開口部52が形成されている。この外装ケース5は、その一端側が前記ベース部材4に取り付けられて、感熱抵抗素子2を覆って保護する機能を有している。
【0029】
通気部51は、外風の影響を少なくし、ガスの流出入が可能な通気性を有する部材で形成されており、金網、不織布及び多孔性のスポンジ等の材料で構成するのが望ましい。通気部51は、外装ケース5の内周側に圧入したり、接着したりして設けられる。また、通気部51は、外装ケース5に設ける場合に限らない。ベース部材4に設けてもよいし、外装ケース5とベース部材4との間に隙間を形成して、この部分に設けるようにしてもよい。
【0030】
なお、外装ケース5は、セラミック又は樹脂材料等で形成することができる。この場合、金属めっき等を施し、外装ケース5の内壁面に赤外線を反射する機能をもたせるようにしてもよい。
【0031】
図3に示すように、ガス検出装置10は、ガスセンサ1に電源(電圧源)Eが接続されて構成されている。具体的には、電源Eに直列に抵抗器11とガスセンサ1(感熱抵抗素子2)とが接続され、抵抗器11と感熱抵抗素子2との中間に出力端子が接続されていて、感熱抵抗素子2の両端の電圧をセンサにかかる電圧として出力電圧Voutを検出するようになっている。抵抗器11は、精密抵抗器であり過電流保護のための抵抗器である。
【0032】
上記のような本実施形態のガスセンサ1は、感熱抵抗素子2における電極部22aには金属製のリード部22bが溶接よって接合されているが、電極部に金属製のリード部を半田付けによって接合したものを比較例のガスセンサとして、本実施形態のガスセンサ1と比較例のガスセンサとの両者の出力特性を比較測定してみた。
【0033】
その結果、本実施形態のガスセンサ1に対し、比較例のガスセンサは個々のガスセンサの出力特性のばらつきが大きいことが判明した。これは、比較例のガスセンサの場合、電極部とリード部との間には、溶加材(ろう材)としての介在物が存在し、この介在物の量的なばらつきが生じやすく、これが出力特性のばらつきに影響しているものと考えられる。
【0034】
したがって、本実施形態のガスセンサ1では、比較例のガスセンサのような介在物がないので、個々のガスセンサ1の出力特性のばらつきを抑制することができ信頼性を高めることが可能となる。
【0035】
次に、
図4に示すように、ガス検出装置10は、測定装置10aを備えている。測定装置10aは、制御手段であるマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という)12と、マイコン12に接続された
図3に示す回路を備えている。本実施形態では、全体の制御をマイコン12が実行するようになっている。マイコン12は、概略的には、演算部及び制御部を有するCPU13と、記憶手段であるROM14及びRAM15と、入出力制御手段16とから構成されている。そして、入出力制御手段16には、電源回路17が接続されている。また、電源回路17には、
図3に示す回路が接続されている。
【0036】
電源回路17は、前記電源Eを含んでいて、電源Eの電圧を感熱抵抗素子2に印加して感熱抵抗素子2に電力を供給制御する機能を有している。具体的には、マイコン12の記憶手段に格納されたプログラムによって電源回路17における電源Eからの供給電力が制御される。また、出力電圧Voutは、マイコン12に入力され、演算処理されて検出出力として出力される。
【0037】
なお、本実施形態では、電源Eからの供給電力は、例えば、マイコン12や電源回路17によって構成される手段、すなわち、電力供給部によって実行されるようになっている。この電力供給部は、ガスセンサ1へ電力を供給する機能、具体的には電源Eから感熱抵抗素子2へ電力を供給する機能を有していればよく、格別特定の部材や部分に限定されるものではない。
【0038】
次に、
図5及び
図6を参照してガス検出装置10の構成例を説明する。ガス検出装置10は、ガスセンサ1、温度コントロールユニット18、測定装置10a、データ処理部19、密閉空間形成部20を備えている。なお、測定装置10a及びデータ処理部19は、温度コントロールユニット18内に設けられている。
【0039】
温度コントロールユニット18は、ガスセンサ1を一定の温度に保持するものであり、加熱及び/又は冷却装置として、温度調節素子である熱電素子Teが内蔵されている。温度コントロールユニット18は、冷却、加熱制御が可能な温度調節器であり、熱電素子Teとしてペルチェ素子が内蔵されており、-20℃~+80℃の範囲で温度設定が可能となっている。なお、加熱素子としてはヒータ等が適用できる。また、一定の温度は±0.1℃の精度であることが望ましい。
【0040】
さらに、温度コントロールユニット18の上面の図示しないプレート上には、銅等の熱伝導が良好な材料から形成されたガスセンサ1の設置部が設けられており、この設置部からの熱がガスセンサ1に伝導されるようになっている。
【0041】
測定装置10aは、回路部品を有して電線によってガスセンサ1が接続されている。また、測定装置10aには、測定装置10aからの検出出力データを処理するためにデータ処理部19が接続されている。
【0042】
密閉空間形成部20は、箱型容器状の金属製又は樹脂製の密閉収容体20aで形成されており、本実施形態では、温度コントロールユニット18の上面に設けられている。この密閉収容体20aは、内部空間を密閉的に確保できるものであり、内部にガスセンサ1及び検知対象物Gが収容され配置されるようになっている。
【0043】
また、密閉収容体20aの一側面側は、蓋部21cとなっていて、ヒンジ機構21bにより開閉可能であり、クランプ機構21dで閉塞状態を保持できるようになっている。つまり、蓋部21cの開閉により密閉収容体20aは開閉でき、検知対象物Gを密閉状態で収容したり、取り出したりすることが可能となっている。なお、蓋部21cは複数箇所に設けるようにしてもよい。
【0044】
さらに、密閉収容体20aの前面側には、ガスセンサ1が密閉収容体20aの内部空間に配置されるように取付けられている。したがって、密閉空間形成部20である密閉収容体20aにガスセンサ1及び検知対象物Gが収容された状態においては、ガスセンサ1及び検知対象物Gは密閉された同一空間に配置され、検知対象物Gからリークする微量のガス(検知対象ガス)は、密閉収容体20aによって区画された内部に拡散し、ガスセンサ1によって検出される。なお、密閉空間形成部20の密閉が真空度1000Pa以下であることが望ましい。ガスの検出には密閉度を一定のレベルにすることが必要である。
【0045】
次に、ガス検出装置10の基本的な動作について
図1乃至
図6を参照して説明する。本実施形態では、密閉空間形成部20に収容された検知対象物Gからリークする特定の微量のガスの濃度を検出する場合について説明する。
【0046】
まず、前記多孔性のガス分子吸着材料3は、細孔を有しこの細孔より直径の小さい分子を吸着するものである。ガス分子吸着材料3は、A型ゼオライトのモレキュラーシーブ3A(細孔の直径0.3nm)である。このガス分子吸着材料3は、分子ふるい効果を生じ、分子の直径が細孔の直径より小さい分子しか吸着しない。したがって、雰囲気中の水素(H2)、ヘリウム(He)、水蒸気(水分子)(H2O)及びアンモニア(NH3)を吸着するが、窒素(N2)、酸素(O2)は吸着しない。したがって、分子の大きさによって選択的にガスを検出することができ、検出対象ガスの選択性を高めることが可能となる。
【0047】
また、ガス分子吸着材料3は、一般的に分子を吸着、脱離することにより温度が変化する。したがって、例えば、特定のガス分子が水素(H2)の場合、ガス分子吸着材料3を加熱して水素(H2)を脱離させると、この脱離により反応熱が生じ温度が変化する現象が生じる。また、ガス分子吸着材料3を冷却して水素(H2)を吸着させると、この吸着により反応熱が生じ温度が変化する現象が生じる。本実施形態は、当該反応熱を検知して、特定のガスを検出するガス検出装置10を提供する。
【0048】
ガスセンサ1による特定のガス(検知対象ガス)の検出結果は、センサ出力として出力する。センサ出力は、特定のガスを0%とした雰囲気の場合にセンサにかかる電圧(出力電圧Vout)を基準として、特定のガスが含まれる雰囲気の場合にセンサにかかる電圧(出力電圧Vout)との電圧差を示すものである。したがって、特定のガスを検出するために、予め基準となるガス(特定のガス0%)の出力の測定が行われている。
【0049】
ガスの検出測定にあたっては、ガスセンサ1を温度コントロールユニット18によって一定の温度に保持する。次いで、密閉空間形成部20である密閉収容体20aに検知対象物Gを収容し配置する。検知対象物Gからリークする特定のガスは、密閉収容体20aの内部に拡散し、ガスセンサ1のガス分子吸着材料3に吸着する。
【0050】
ガスセンサ1の温度を一定とした状態で、ガス検出装置10の駆動により、マイコン12からの出力信号に従って、電源回路17の電源Eを一定電圧として感熱抵抗素子2に印加する。この状態は、感熱抵抗素子2が加熱されるように電力が供給される状態である。
【0051】
感熱抵抗素子2に電圧が印加され電力が供給されると、感熱抵抗素子2に通電されて電力が供給され、感熱抵抗素子2は自己加熱し、感熱抵抗素子2と熱的に結合されたガス分子吸着材料3は加熱状態となる。ガス分子吸着材料3が加熱状態となると、ガス分子吸着材料3に吸着していた特定のガスは脱離して、その反応熱によってガス分子吸着材料3の温度が濃度に応じて変化する。このため、特定のガスの濃度に従って感熱抵抗素子2の温度(センサの温度)が変化し、特定のガスの濃度に従ってセンサにかかる電圧が変化する。このように特定のガスの濃度に従って、センサの温度、センサにかかる電圧、センサ出力が変化するため、特定のガスの濃度を検出することが可能となる。
【0052】
具体的には、感熱抵抗素子2に電力が供給されると、ガス分子吸着材料3に吸着していた特定のガスは脱離してガス分子吸着材料3の温度が変化し、特定のガスの濃度に応じた出力がマイコン12によって演算されて、センサ出力のパターンとして得ることができる。マイコン12の記憶手段には、特定のガスの濃度に応じたセンサ出力の変化のパターンが予め記憶され格納されていて、マイコン12は、得られたセンサ出力のパターンと予め記憶され格納されているパターンとを比較演算する動作を行い、検出出力として特定のガスの濃度を算出し出力する。このように特定のガスの濃度を検出することができる。
【0053】
また、測定装置10aのマイコン12からの検出出力データは、データ処理部19に送られる。データ処理部19では、格納されたソフトウェアで検出出力データを処理し、例えば、データを時系列で整理したり、複数データの比較や検知対象物Gの良否分析を実行したりし、その結果を表示する。
【0054】
このガス検出方法は、ガスセンサ1を一定の温度に保持するステップと、多孔性のガス分子吸着材料3を加熱状態とする加熱ステップと、加熱による感熱抵抗素子2の出力の変化によって特定のガスを検出する検出ステップとを備えている。また、特定のガスを検出するために、予め基準となるガスの出力の測定が行われる。さらに、検出ステップでは、予め基準となるガスの出力の測定結果と特定のガスの出力の測定結果との比較により、特定のガスの濃度を検出することが行われる。
さらに、このガス検出方法は、検知対象物Gからリークする特定のガスが密閉空間形成部20内を拡散し、ガスセンサ1に検知されるステップを含んでいる。
【0055】
なお、感熱抵抗素子2に過電力を供給して、熱暴走状態にすることにより、微量の特定のガスの濃度であっても、センサ出力の変化を大きくとることができ、特定のガスの濃度検出の向上が期待できる。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、密閉空間形成部20の同一空間内にガスセンサ1及び検知対象ガスを収容する構成である。したがって、密閉空間形成部20に検知対象物Gを収容し、検知対象物Gからリークする特定のガスを密閉空間形成部20内に拡散させて、特定のガスを検出する。よって、格別に強制的に特定のガスを導入する手段を用いることなく、特定のガスの拡散現象を利用して、微量の特定のガスについて濃度の検出を行うことができる。
【0057】
また、感熱抵抗素子2にはリード部22bが溶接よって接続されているので、熱容量が小さく熱応答性を速くすることができるとともに、個々のガスセンサ1の出力特性のばらつきを抑制することができ信頼性を高めることが可能となる。
【0058】
さらに、ガス分子吸着材料3は、感熱抵抗素子2の表面に成膜して形成されているので、熱容量を小さくすることができる。加えて、基板21の厚さ寸法が10μm~100μmに形成されており、リード部22bの直径や厚さ寸法が小さいので熱容量を小さくすることに寄与でき、高速応答性を促進することができる。
さらにまた、感熱抵抗素子2の熱暴走現象を利用することにより、微量の特定のガスの濃度検出の向上を図ることが可能となる。
【0059】
次に、第2の実施形態について
図7乃至
図10を参照して説明する。
図7は、ガス検出装置を示す構成例であり、
図8は、ガス検出装置を示すブロック系統図である。また、
図9及び
図10は、ガスセンサのセンサ出力を示すグラフである。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0060】
本実施形態と第1の実施形態のガス検出装置10とは、密閉空間形成部20の構成が異なっている。本実施形態の密閉空間形成部20は、検知対象物Gが配置される密閉収容体20aと、密閉収容体20aとガスセンサ1側とを密閉的に連通状態に繋ぐパイプ部20bとを有して形成されている。
【0061】
さらに、温度コントロールユニット18の上面の図示しないプレート上には、銅等の熱伝導が良好な材料から形成されたガスセンサ1の設置部として設置部材18aが配置されている。この設置部材18aには、ガスセンサ1の挿入孔18b及び雰囲気のガスが流通可能な流通孔18cが形成されている。
【0062】
前記挿入孔18bには、ガスセンサ1が挿入され、挿入された状態では流通孔18cによって、ガスセンサ1の通気部51からガスが流出入し、ガスを検出できるようになっている。
【0063】
具体的には、密閉空間形成部20は、ガスセンサ1が設置される設置部として設置部材18aと、検知対象物Gが収容され配置される密閉収容体20aと、ガスセンサ1側である設置部材18aと密閉収容体20aとを密閉的に連通するパイプ部20bと、から構成されている。
【0064】
詳しくは、設置部材18aの流通孔18cと、密閉収容体20aの内部空間と、パイプ部20bの内側連通路が連通されて密閉空間が形成される。密閉収容体20aは、金属又は樹脂材料で作られた箱型容器であり、内部空間を密閉的に確保できるものである。内部に検知対象物G(例えば、サーモパイル型赤外線センサTpやリチウムイオンポリマー電池Bt等)が収容され配置されるようになっている。また、密閉収容体20aの上面は、蓋部21cとなっていて、ねじ等の取り外し可能な固定手段21aによって蓋部21cは着脱できるようになっている。つまり、蓋部21cの着脱により密閉収容体20aは開閉でき、検知対象物Gを密閉状態で収容したり、取り出したりすることが可能となっている。
【0065】
パイプ部20bは、金属製又は樹脂製の細長い管であり、一端側が設置部材18aの流通孔18cに接続され、他端側が密閉収容体20aに接続されるようになっている。したがって、流通孔18cと密閉収容体20aの内部空間とは、パイプ部20bによって連通し、つまり、密閉収容体20aに検知対象物Gが収容された状態においては、ガスセンサ1と密閉収容体20aの内部空間に収容された検知対象物Gとは、連通した同一空間の密閉空間形成部20に収容され配置されるようになる。また、パイプ部20bの連通路の途中には、連通路を開閉可能な開閉部20cが設けられている。この開閉部20cには開閉コック等が適用できる。なお、開閉部20cは、パイプ部20bの連通路の途中に複数箇所に設けるようにしてもよい。
【0066】
次に、本実施形態のガス検出装置10において、検知対象物Gとして、サーモパイル型赤外線センサTp及びリチウムイオンポリマー電池Btを例にとり、そのガス検出の測定動作について説明する。サーモパイル型赤外線センサTp及びリチウムイオンポリマー電池Btともに当該製品の検査に関係する測定である。なお、基本的な動作は、第1の実施形態と同様であり、重複する説明は省略する。
(実験例1)
【0067】
サーモパイル型赤外線センサTpに関する測定である。
図8に示すようにサーモパイル型赤外線センサTpは、サーモパイル素子がキャップ状の外装ケースTpcによって気密的に覆われ、外側に端子が導出されるセンサである。サーモパイル素子の保護のため外装ケースTpcによって気密性を確保する必要があり、外装ケースTpcの気密性を検査するための測定である。
【0068】
測定にあたっては、外装ケースTpc内に純ヘリウム(He)ガスを圧入し、圧入後のサーモパイル型赤外線センサTpを密閉収容体20a内に配置する。パイプ部20bを連通状態とし、ガスセンサ1とサーモパイル型赤外線センサTpとを連通した同一空間に配置されるようにする。
【0069】
サーモパイル型赤外線センサTpの外装ケースTpcからリークするヘリウム(He)ガスは、拡散して、パイプ部20bの連通路を通過して、設置部材18aの流通孔18cを経て、ガスセンサ1のガス分子吸着材料3に吸着される。その後、ガス分子吸着材料3が加熱状態となると、ガス分子吸着材料3に吸着していたヘリウム(He)ガスは脱離して、その反応熱によってガス分子吸着材料3の温度が濃度に応じて変化する。このように外装ケースTpcからリークするヘリウム(He)ガスを検出する。
本実験例では、本実施形態のガス検出装置10によるヘリウム(He)ガスのリーク検出出力の確認を行っており、その測定結果を
図9に示している。
【0070】
試料としてヘリウム(He)ガスのリーク量が判明しているリーク量が異なる4種のサーモパイル型赤外線センサTpを用意した。試料は、(0)合格品でありリーク量が10-9Pa・m3/s以下、(1)リーク量が3.8×10-9Pa・m3/s、(2)リーク量が1.4×10-8Pa・m3/s、(3)リーク量が1.8×10-7Pa・m3/s、の4種である。これら各4種の試料のヘリウム(He)ガスのリークを測定するにあたり、ガスセンサ1を25℃の一定の温度に保持し、電源Eの電圧6.5Vを感熱抵抗素子2に印加して加熱し、10分間隔で測定した。
【0071】
図9において、横軸は時間(分)を示し、縦軸はセンサ出力の電圧(mV)を示している。
図9に示す測定結果から、リーク量の増加に従ってセンサ出力が増加しており、本実施形態のガス検出装置10によってヘリウム(He)ガスのリーク量が良好な精度で検出できることを確認した。
(実験例2)
【0072】
リチウムイオンポリマー電池Btの水素(H
2)ガスのリークに関する測定である。前記実験例1と同様に、
図8に示すようにリチウムイオンポリマー電池Btを密閉収容体20a内に配置し、拡散する水素(H
2)ガスのリークを検出する。
本実験例では、環境温度が異なる場合のガス検出装置10による水素(H
2)ガスのリーク検出出力の確認を行っており、その測定結果を
図10に示している。
【0073】
試料はリチウムイオンポリマー電池Btであり、ガスセンサ1を25℃の一定の温度に保持し、電源Eの電圧6.5Vを感熱抵抗素子2に印加して加熱し、4分間隔で測定した。また、環境温度を25℃、21℃と変更した。
【0074】
図10において、横軸は時間(分)を示し、縦軸はセンサ出力の電圧(mV)を示している。
図10に示す測定結果から、環境温度を25℃から21℃に変更しても、本実施形態のガス検出装置10による水素(H
2)ガスのリーク検出出力にほぼ変化がないことを確認した。
【0075】
なお、以上のような本実施形態のガス検出装置10によれば、検出対象ガスの種類によって、そのガスの拡散速度が異なることから、拡散速度が異なることを利用して、パイプ部20bにおける開閉部20cの開閉のタイミングを調節し、特定のガスを検出することが可能となる。
【0076】
続いて、第3の実施形態について
図11を参照して説明する。
図11は、ガス検出装置を示す構成例である。なお、前述の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0077】
本実施形態は、第2の実施形態と同様な構成であるが、第2の実施形態における密閉収容体20aが呼気採取バッグ20bgに変更されたものである。呼気採取バッグ20bgに採取された呼気中の水素(H2)ガスを検出するものである。
【0078】
水素(H2)ガスの検出測定にあたっては、パイプ部20bの開閉部20cを閉めた状態で、呼気採取バッグ20bgをパイプ部20bの他端側に接続する。その後、開閉部20cを開け、既述のような測定動作により、センサ出力を測定し、呼気中に含まれる水素(H2)ガスの検出を行う。呼気中に含まれる水素(H2)ガスの量は、例えば、消化器系の診断情報として用いることができる。
【0079】
次に、第4の実施形態について
図12及び
図13を参照して説明する。
図12は、ガス検出装置を示す構成例であり、密閉収容体及びガスセンサを示している。
図13は、ガスセンサのセンサ出力を示すグラフである。
【0080】
本実施形態は、密閉空間形成部20としての密閉収容体20aの内部に、ガスセンサ1及び検知対象物Gが収容され配置される構成である。密閉収容体20aは、金属又は好ましくは樹脂材料で作られていて、箱型容器であり、内部空間を密閉的に確保できるものである。また、密閉収容体20aの前面側は、蓋部21cとなっていて、ヒンジ機構21bにより開閉可能であり、クランプ機構21dで閉塞状態を保持できるようになっている。
【0081】
さらに、密閉収容体20aの上面側には、ガスセンサ1が密閉収容体20aの内部空間に配置されるように取付けられている。したがって、ガスセンサ1及び検知対象物Gは、密閉収容体20aの密閉された同一空間に配置され、検知対象物Gからリークする微量のガスは、密閉収容体20aによって区画された内部に拡散し、ガスセンサ1によって検出されるようになる。なお、ガスセンサ1は、既述の測定装置10a側に電線によって接続されている。
【0082】
実験例として検知対象物G(アンモニア(NH3)水が封入された未開封の樹脂製容器)を用い微量のアンモニア(NH3)ガスを検出する場合について説明する。
アンモニア(NH3)ガスの検出測定にあたっては、密閉収容体20a内にアンモニア(NH3)水が封入された未開封の樹脂製容器Btを収容した。
【0083】
樹脂製容器Btからリークするアンモニア(NH3)ガスは、密閉収容体20a内に拡散して、ガスセンサ1のガス分子吸着材料3に吸着される。その後、ガス分子吸着材料3が加熱状態となると、ガス分子吸着材料3に吸着していたアンモニア(NH3)ガスは脱離して、ガス分子吸着材料3の温度が濃度に応じて変化する。このように樹脂製容器Btからリークするアンモニア(NH3)ガスを検出する。
【0084】
図13において、横軸は時間(秒)を示し、縦軸はセンサ出力の電圧(mV)を示している。10分、20分、30分、40分経過後のセンサ出力を検出している。
図13に示す測定結果から、時間の経過とともにアンモニア(NH
3)ガスのリーク量が増加するのが分る。なお、樹脂製容器Btからはアンモニア(NH
3)ガスのみならず、水蒸気(H
2O)がリークすることが考えられるが、水蒸気(H
2O)のリークは極めて微量であり、アンモニア(NH
3)ガスのリーク量の検出出力にほとんど影響しないことを確認している。
【0085】
このようなアンモニア(NH3)ガスの検出により、例えば、採尿バックに採尿された尿に含まれるアンモニア(NH3)の量を検出することが可能となる。尿に含まれるアンモニア(NH3)の量を検出することにより、疾病の診断情報として用いることができる。
【0086】
以上のように前述の各実施形態は、密閉空間形成部20の同一空間内にガスセンサ1及び検知対象ガスを収容する構成である。各実施形態によれば、密閉空間形成部20に検知対象物Gを配置し、検知対象物Gからリークする特定のガスを密閉空間形成部20内に拡散させて、特定のガスを検出するので、格別に強制的に特定のガスを導入する手段を用いることなく、特定のガスの拡散現象を利用して、微量の特定のガスについて濃度の検出を行うことができる。
【0087】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0088】
例えば、ガスセンサを一定の温度に保持する加熱及び/又は冷却装置を設けることが好ましいが必ずしも必要とするものではない。また、ガスセンサは、熱伝導式のものを用いてもよい。さらにまた、密閉収容体を複数設け、それぞれに対応してガスセンサを設けるようにしてもよい。このように構成することにより複数の検知対象ガスを同時に検出することが可能となる。加えて、検知対象物としては、電池等の部品のみならず、生体も含まれる。例えば、ラットや植物等の呼吸による特定のガスを検出することが可能である。
【0089】
多孔性のガス分子吸着材料には、多孔性金属錯体を用いることができる。多孔性金属錯体は、金属錯体の活用により,有機化合物と無機化合物の境界を超えた新概念の物質群である。「配位高分子(特に、使用可能なナノサイズの空間をもつ多孔性配位高分子,porous coordination polymer;PCP)又は有機-金属骨格体(Metal organic Framework; MOF)」は新しい材料として注目されている。
【符号の説明】
【0090】
1・・・・・ガスセンサ
2・・・・・感熱抵抗素子
3・・・・・ガス分子吸着部材
4・・・・・ベース部材
5・・・・・外装ケース
10・・・・ガス検出装置
10a・・・測定装置
12・・・・マイコン
17・・・・電源回路
18・・・・加熱及び/又は冷却装置(温度コントロールユニット)
18a・・・ガスセンのサ設置部(設置部材)
18c・・・流通孔
19・・・・データ処理部
20・・・・密閉空間形成部
20a・・・密閉収容体
20b・・・パイプ部
20c・・・開閉部
20bg・・呼気採取バッグ
21c・・・蓋部
21・・・・基板
22・・・・導電層
22b・・・リード部
23・・・・薄膜素子層
24・・・・保護絶縁層
42・・・・導電端子部
51・・・・通気部
G・・・・・検知対象物
Te・・・・熱電素子