(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】粉体含有水系組成物及び皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20220801BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20220801BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220801BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220801BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q1/02
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/25
(21)【出願番号】P 2017152391
(22)【出願日】2017-08-07
【審査請求日】2020-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】寺田 智明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 希佳
(72)【発明者】
【氏名】間中 勇太
(72)【発明者】
【氏名】木村 元春
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003885(JP,A)
【文献】米国特許第05419848(US,A)
【文献】特開2013-116870(JP,A)
【文献】特開2014-037404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)連続相となる水相と、
(B)10質量%~45質量%の粉体と、
(C)0.7質量%以上の増粘剤と、を含有し、
前記増粘剤は、2-アクリルアミド-2-メチル
プロパンスルホン酸又はその塩を構成成分として有するポリマーであり、
前記粉体が組成物中で分散しており、
油性成分が組成物の質量に対して15質量%以下である、粉体含有水系非乳化組成物。
【請求項2】
前記増粘剤は、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、及び(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマーから選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記増粘剤の含有率は、組成物の質量に対して3質量%以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物作製から2週間後の粘度が20,000mPa・s以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の質量に対して50質量%以下の水溶性アルコールをさらに含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記油性成分の含有率は、前記組成物の質量に対して5質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記油性成分を含有する場合、前記油性成分を乳化するための界面活性剤の含有率は、前記組成物の質量に対して1質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記水相の含有率は、前記組成物の質量に対して40質量%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
揮発性油性成分をさらに含有し、
前記粉体は多孔質であり、
前記油性成分の少なくとも一部は前記粉体に含浸されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を含有する皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水系溶媒中に粒子を含有する粉体含有水系組成物に関する。特に、本発明は、水系溶媒中に粉体が分散した組成物に関する。また、本開示は、当該組成物を有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、インク、セラミックス等の製品においては、溶媒中に粒子を含有させた組成物が使用されることがある。例えば、粉体を含有する化粧料が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、化粧品として許容される媒体中に、a)少なくとも1つの水相、及びb)0.1から30μmの間の平均粒径を有し、少なくとも1種の粒子状UV遮蔽剤、並びに少なくとも1種の無機材料及び/又は少なくとも1種の有機材料で構成されるコアを含む、球形形態の複合粒子A、及びc)0.07μm超の平均基本粒径を有する無機UV遮蔽剤の単体粒子Bを少なくとも含有する組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、(A)2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、並びにN,N-ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマー、(B)無機塩及び有機塩の一種又は二種以上を水相成分の0.2~3質量%、及び(C)約14質量%の粉体を含有する水中油型メイクアップ化粧料が開示されている。この水中油型メイクアップ化粧料は、界面活性剤によって乳化された約20質量%の油相を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-522046号公報
【文献】特開2012-241003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような油中水系エマルションタイプの化粧品組成物においては、粉体の含有率を高くしても、粉体の高い分散安定性を得ることができる。しかしながら、油系組成物は、使用者がべたつきを感じやすい。例えば、油系組成物は、使用後のさっぱり感が要求される洗顔用の組成物への適用には適していない。
【0007】
一方、水系組成物においては、高含有率の粉体を安定に分散させることは一般的に困難であった。特許文献2に記載の水中油型メイクアップ化粧料は約14質量%の粉体を含有しているが、油相の含有率が高く、油系組成物と同様にして使用者がべたつきを感じてしまう。べたつきをなくすために油相を取り除くと粉体の安定性及び分散性が失われてしまう。また、特許文献2に記載の水中油型メイクアップ化粧料においては粉体の含有率をさらに高くすると粉体の安定性及び分散性が失われてしまう。
【0008】
そこで、粉体含有率が高くても、粉体の分散性及び安定性が高く、かつべたつき感の低い水系粉体含有組成物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1視点によれば、(A)連続相となる水相と、(B)10質量%~45質量%の粉体と、(C)0.7質量%以上の増粘剤と、を含有する粉体含有水系非乳化組成物が提供される。増粘剤は、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を構成成分として有するポリマーである。粉体が組成物中で分散している。油性成分が組成物の質量に対して15質量%以下である。
【0010】
本開示の第2視点によれば、第1視点に係る粉体含有水系非乳化組成物を含有する皮膚外用剤が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粉体の含有率が高いにもかかわらず、粉体の安定性及び分散性が高い水系組成物を提供することができる。
【0012】
本開示の組成物においては、粉体の含有率が高くても、油性成分の含有率を低くすることができる。これにより、肌への適用時にべたつき感を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。
【0014】
上記第1視点の好ましい形態によれば、増粘剤は、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、及び(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマーから選択される少なくとも1つを含む。
【0015】
上記第1視点の好ましい形態によれば、増粘剤の含有率は、組成物の質量に対して3質量%以下である。
【0016】
上記第1視点の好ましい形態によれば、組成物作製から2週間後の組成物の粘度が20,000mPa・s以上である。
【0017】
上記第1視点の好ましい形態によれば、組成物は、組成物の質量に対して50質量%以下の水溶性アルコールをさらに含有する。
【0018】
上記第1視点の好ましい形態によれば、油性成分の含有率は、組成物の質量に対して5質量%以下である。
【0019】
上記第1視点の好ましい形態によれば、油性成分を含有する場合、油性成分を乳化するための界面活性剤の含有率は、組成物の質量に対して1質量%以下である。
【0020】
上記第1視点の好ましい形態によれば、水相の含有率は、組成物の質量に対して40質量%以上である。
【0021】
上記第1視点の好ましい形態によれば、組成物は、揮発性油性成分をさらに含有する。粉体は多孔質である。油性成分の少なくとも一部は粉体に含浸されている。
【0022】
以下の説明において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレンの略記である。POE又はPOPの後ろのカッコ内の数字は当該化合物中におけるPOE基又はPOP基の平均付加モル数を表す。
【0023】
本開示の粉体含有水系組成物は、(A)連続相となる水相と、(B)粉体と、(C)増粘剤と、を含有する。「水系」とは主たる相が水相であることを指し、油性成分(油相)を含まないことを意味するものではない。
【0024】
[(A)水相]
水相は、粉体の分散媒として作用することができる。水相は、例えば、水、水溶性アルコール、又はこれらの混合物を含有することができる。水相は、特に水を含有すると好ましい。
【0025】
水の含有率は、組成物の質量に対して、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上又は70質量%以上とすることができる。水の含有率は、粉体含有水系組成物の目的及び用途に応じて適宜決定すると好ましい。
【0026】
水としては、化粧料、医薬部外品等に使用される水を使用することができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
【0027】
水溶性アルコールとしては、例えば、低級アルコール、多価アルコール、多価アルコール重合体、2価のアルコールアルキルエーテル類、2価アルコールアルキルエーテル類、2価アルコールエーテルエステル、グリセリンモノアルキルエーテル、糖アルコール、単糖、オリゴ糖、多糖およびそれらの誘導体等から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0028】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0029】
多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価のアルコール(例えば、ジグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価のアルコール(例えば、キシリトール、トリグリセリン等);6価のアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等);2価のアルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等);2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等);2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等);グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解糖還元アルコール等);グリソリッド;テトラハイドロフルフリルアルコール;POE-テトラハイドロフルフリルアルコール;POP-ブチルエーテル;POP・POE-ブチルエーテル;トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテルリン酸;POP・POE-ペンタンエリスリトールエーテル、ポリグリセリン等から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0030】
単糖としては、例えば、三炭糖(例えば、D-グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等)、四炭糖(例えば、D-エリトロ-ス、D-エリトルロ-ス、Dートレオ-ス、エリスリトール等)、五炭糖(例えば、L-アラビノ-ス、D-キシロ-ス、L-リキソ-ス、D-アラビノ-ス、D-リボ-ス、D-リブロ-ス、D-キシルロ-ス、L-キシルロ-ス等)、六炭糖(例えば、D-グルコ-ス、D-タロ-ス、D-ブシコ-ス、D-ガラクト-ス、D-フルクト-ス、L-ガラクト-ス、L-マンノ-ス、D-タガト-ス等)、七炭糖(例えば、アルドヘプト-ス、ヘプロ-ス等)、八炭糖(例えば、オクツロ-ス等)、デオキシ糖(例えば、2-デオキシ-D-リボ-ス、6-デオキシ-L-ガラクト-ス、6-デオキシ-L-マンノ-ス等)、アミノ糖(例えば、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等)、ウロン酸(例えば、D-グルクロン酸、D-マンヌロン酸、L-グルロン酸、D-ガラクツロン酸、L-イズロン酸等)等から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0031】
オリゴ糖としては、例えば、ショ糖、グンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトース、プランテオース、イソリクノース類、α,α-トレハロース、ラフィノース、リクノース類、ウンビリシン、スタキオースベルバスコース類等から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0032】
多糖としては、例えば、セルロース、クインスシード、コンドロイチン硫酸、デンプン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、アラビアガム、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、ジェランガム、シロキクラゲ多糖体等から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0033】
その他のポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンメチルグルコシド(グルカムE-10)、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(グルカムP-10)等から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0034】
本開示の組成物を皮膚外用剤に適用する場合には、水溶性アルコールとしては、例えば、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等を好適に使用することができる。
【0035】
水溶性アルコールの含有率は、組成物の質量に対して、例えば、50質量%以下であると好ましく、30質量%以下であるとより好ましく、20質量%以下であるとさらに好ましい。水溶性アルコールの含有率が50質量%を超えると、アルコール臭が強くなってしまう。また、本開示の組成物を皮膚外用剤に適用する場合には、肌への刺激が強くなりすぎてしまう。
【0036】
水相の含有率は、組成物の質量に対して、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上又は70質量%以上とすることができる。水相の含有率は、粉体含有水系組成物の目的及び用途、並びに他の成分の含有率に応じて適宜決定すると好ましい。
【0037】
[(B)粉体]
本開示の組成物は、1種以上の粉体を含有する。本明細書において使用する用語「粉体」は「粉末」と同義である。粉体は、化粧料用途等、一般に用い得るものであれば特に限定されるものではない。粉体としては、例えば、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、合成フッ素金雲母、合成フッ素金雲母鉄、紅雲母、黒雲母、焼成タルク、焼成セリサイト、焼成白雲母、焼成金雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素、フォトクロミック性酸化チタン(酸化鉄を焼結した二酸化チタン、)、還元亜鉛華;有機粉末(例えば、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、シリコーンレジン被覆シリコーンエラストマー粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ-酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母チタン、フォトクロミック性を有する雲母チタン、基板として雲母の代わりタルク、ガラス、合成フッ素金雲母、シリカ、オキシ塩化ビスマスなどを使用したもの、被覆物として酸化チタン以外に、低次性酸化チタン、着色酸化チタン、酸化鉄、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化コバルト、アルミなどを被覆したもの、機能性パール顔料(パール顔料表面に樹脂粒子、水酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、硫酸バリウム粒子等を被覆したもの)等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が挙げられる。
【0038】
粉体の平均粒径、比表面積、比重、粒子形状、多孔質又は非多孔質、表面処理の有無等は、目的に応じて適宜選択することができる。粉体は、異なる種類の混合物であってもよい。
【0039】
粉体の含有率は、組成物の質量に対して、10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとより好ましい。粉体の含有率は、組成物の質量に対して、25質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上とすることができる。粉体の含有率が10質量%未満であると、粉末の凝集が多くなり、安定な状態を保持できなくなる。粉体の含有率は、組成物の質量に対して、45質量%以下であると好ましく、40質量%以下であるとより好ましい。粉体の含有率が45質量%を超えると粘度が高くなりすぎ、混合することが困難となってしまう。粉体の含有率は、例えば、組成物の質量に対して、例えば、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下とすることができる。
【0040】
[(C)増粘剤]
本開示の組成物は、増粘剤を含有する。増粘剤としては、例えば、タウレート系合成高分子及び/又はアクリレート系合成高分子を使用することができる。
【0041】
例えば、タウレート系高分子系増粘剤としては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(アクリロイルジメチルタウリン酸)又はその塩(AMPS構造)を構成単位として有する重合体及び/又は共重合体(架橋重合体含む)を使用することができる。このような増粘剤としては、例えば、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー(Aristoflex(登録商標) HMB、クラリアントジャパン社)、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー(Aristoflex(登録商標) AVC、クラリアントジャパン社)、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/アクリル酸カルボキシルエチル)クロスポリマー(Aristoflex(登録商標) TAC、クラリアントジャパン社)、ポリアクリレートクロスポリマー-11(Aristoflex(登録商標) Velvet、クラリアントジャパン社)、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマー(SU-GEL、東邦化学社)、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー(SEPINOV EMT10、SEPPIC社)、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー(SEPINOV P88、SEPPIC社)、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー(SIMULGEL EG、SEPPIC社)、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー(SIMULGEL NS、SEPPIC社)、(アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/メタクリルアミドラウリン酸)コポリマー(AMO-51、大東化成工業社)、及び(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸)コポリマー(アキュダイン(登録商標)SCP、ダウケミカル社)から選択される少なくとも1つを使用することができる。
【0042】
上記増粘剤のうち、粉体の分散性及び安定性の観点から、増粘剤は、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、及び(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマーから選択される少なくとも1つを含むと好ましい。
【0043】
本発明の効果を阻害しない範囲において、別の増粘剤を添加することもできる。別の増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、PVP(ポリビニルピロリドン)、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸、ジェランガム、シロキクラゲ多糖体等が挙げられる。
【0044】
増粘剤は、組成物の質量に対して、0.7質量%以上であると好ましく、0.8質量%以上であるとより好ましい。増粘剤が0.7質量%未満であると、粉体の安定性が低下してしまう。増粘剤は、組成物の質量に対して3質量%以下であると好ましく、2質量%以下であるとより好ましく、1.5質量%以下であるとさらに好ましい。増粘剤が3質量%を超えると、肌への適用時にべたつき性が高くなってしまう。
【0045】
[油性成分]
本開示の組成物は、油性成分を含有することができる。本開示の組成物は、水中油型組成物とすることもできる。本発明に用いられる油性成分としては、皮膚外用剤や化粧品に一般に用いられ得るものであれば特に限定されるものではない。具体的には、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、香料等が挙げられる。なお、本書では、油分及び油分に可溶な成分も含めて「油性成分」と称している。
【0046】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0047】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0048】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0049】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、イソドデカン、イソヘキサデカン等が挙げられる。
【0050】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0051】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0052】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0053】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、未末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等のシリコーン化合物等が挙げられる。
【0054】
油性成分の含有率は、例えば、組成物の質量に対して、15質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下とすることができる。組成物は、油性成分を実質的に含有しないこと(0質量%)も可能である。肌への適用時にべたつき感を抑えるためには油性成分、特に不揮発性油性成分、は少ない方がよい。
【0055】
本開示の組成物中の油性成分は乳化していなくてもよい。本開示の組成物においては、乳化された油性成分がなくとも粉体の安定性及び分散性を確保することができる。油性成分の含有率を低くすることにより、及び/又は、乳化作用を利用しないことにより、油相を乳化するための界面活性剤の含有率を低くすることができる。これにより、べたつきの発生を抑制することができる。
【0056】
油性成分は、多孔質粉体に含浸させて添加することもできる。例えば、香料等の揮発性油性成分を多孔質粉体に吸収させることによって、肌への塗布後に粉体から油性成分を揮発させることができる。油性成分を粉体に含浸させれば、べたつきも抑制することができる。本開示において「揮発性」とは、肌に塗布したときに、室温、外気温及び/又は体温で容易に揮発可能であることをいう。
【0057】
[その他の成分]
本開示の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の成分、例えば、エステル、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜含有することができる。
【0058】
以下に、配合可能な他の成分の例を列挙する。下記成分は、少なくとも1つを本開示の組成物に添加することができる。
【0059】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム等);N-アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等);リン酸エステル塩(POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE-ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N-アシルグルタミン酸塩(例えば、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE-アルキルエーテルカルボン酸;POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α-オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0060】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POE-アルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0061】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。
【0062】
親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α'-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0063】
親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE-ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンテトラオレエート等);POE-ソルビット脂肪酸エステル(例えば、POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレート等);POE-グリセリン脂肪酸エステル(例えば、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-モノオレエート等);POE-脂肪酸エステル(例えば、POE-ジステアレート、POE-モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE-アルキルエーテル(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテル等);プルロニック型(例えば、プルロニック等);POE・POP-アルキルエーテル(例えば、POE・POP-セチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP-水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテル等);テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物(例えば、テトロニック等);POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE-硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE-ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE-ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE-アルキルアミン;POE-脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0064】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、アルキレンオキシド誘導体、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0065】
天然の水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸);微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等)等が挙げられる。
【0066】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
【0067】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,0000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー等が挙げられる。
【0068】
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルメトキシシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、ジモルホリノピリダジノ;2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート;2,4-ビス-{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン等が挙げられる。
【0069】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等が挙げられる。
【0070】
アミノ酸としては、例えば、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム)、アシルグルタミン酸塩、アシルβ-アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
【0071】
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。
【0072】
高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸エチルエマルジョン、アクリルレジン液、ポリアクリルアルキルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックス等が挙げられる。
【0073】
pH調整剤としては、例えば、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。
【0074】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、B1、B2、B6、C、E及びその誘導体、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン等が挙げられる。
【0075】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
【0076】
酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0077】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン、クロルフェネシン、フェノキシエタノール等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。
【0078】
さらに、本開示の組成物は、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸及びその誘導体、甘草、カリン、イチヤクソウ等の各種生薬抽出物、酢酸トコフェロール、グリチルレジン酸、グリチルリチン酸及びその誘導体又はその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の美白剤、アルギニン、リジン等のアミノ酸及びその誘導体、も適宜含有することができる。
【0079】
界面活性剤の含有率は、例えば、組成物の質量に対して、5質量%以下であると好ましく、3質量%以下であるとより好ましく、1質量%以下であるとより好ましく、0.5質量%以下であるとさらに好ましい。組成物は界面活性剤を実質的に含有しないことも可能である。組成物は、油性成分を乳化するための界面活性剤を実質的には含有していないと好ましい。界面活性剤の含有率を低くすることにより、肌に組成物を塗布したときに発生するべたつきを抑制することができる。
【0080】
本開示の組成物は、粉体の安定性及び分散性を高めるための塩化ナトリウム等の無機塩やクエン酸ナトリウム等の有機塩(増粘剤除く)を含有しなくとも粉体の安定性及び分散性を確保することができる。このような塩(増粘剤除く)の含有率は、組成物の質量に対して、0.5質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、又は0質量%とすることができる。
【0081】
本開示の組成物における作製から2週間後の粘度は、8,000mPa・s以上であると好ましく、12,000mPa・s以上であるとより好ましく、15,000mPa・s以上であるとより好ましい。粘度が8,000mPa・s未満であると使用性が低下してしまう。組成物の粘度は、300,000mPa・s以下であると好ましく、200,000mPa・s以下であるとより好ましい。粘度が300,000mPa・sを超えると、本開示の組成物を肌に均一塗布することが困難になってしまう。組成物の粘度は、150,000mPa・s以下、100,000mPa・s以下、80,000mPa・s以下、又は50,000mPa・s以下とすることができる。粘度はJISZ8803に準じて測定すると好ましい。
【0082】
本開示の皮膚外用剤について説明する。本開示の皮膚外用剤は、本開示の粉体含有水系組成物を含有する。皮膚外用剤は、上述に挙げたような所望の添加剤を含有することができる。皮膚外用剤としては、例えば、洗顔剤、スキンケア用品、日焼け止め用品、化粧料、フレグランス等を挙げることができる。
【0083】
本開示の粉体含有水系組成物及び皮膚外用剤によれば、水系であっても、粉体の安定性及び分散性を高く維持しながら、粉体の含有率を高めることができる。粉体の安定性及び分散性には持続性がある。本開示の組成物は、油相及び界面活性剤の含有率を低くすることができるので、肌への適用時にべたつき感を抑えることができる。粉体の含有率を高くすることによって肌に塗布した組成物をふき取ったとしても粉体を肌に残存させることができる。種々の粉体を本開示の組成物及び皮膚外用剤に適用することができるので、目的に応じて粉体の種類を選択することができる。
【0084】
本開示の粉体含有水系組成物及び皮膚外用剤の製造方法について説明する。本開示の粉体含有水系組成物及び皮膚外用剤は、水相、粉体及び増粘剤を混合することにより製造することができる。例えば、まず、水相に増粘剤を溶解させる。次に、水相に粉体を添加して混合することによって、本開示の粉体含有水系組成物及び皮膚外用剤を製造することができる。
【0085】
多孔質粉体に油性成分を含浸させる場合には、粉体に油性成分を含浸させた後に、油性成分を含む粉体を溶媒(水相)に添加すると好ましい。
【実施例】
【0086】
[試験例1]
油性成分及び界面活性剤を添加することなく、水系組成物中の高含有率の粉体の安定性を高めることができるかについて、複数の増粘剤について検討を行った。表1に、作製した試料の組成を示す。以下の試験例も含めて表に示す含有率の単位は質量%である。水相としてはイオン交換水を使用した。各試料において使用した増粘剤を表2に示す。以下においては、簡略表記のため各増粘剤を表2に示す「増粘剤A」のように表す。粉体は、複数の種類の混合物(以下「粉体群」と称する)を使用した。表3に粉体群Aにおける各粉末の含有率を示す。表4に、粉体群Bにおける各粉末の含有率を示す。
【0087】
試料作製直後及びその翌日における粉体の安定性の目視確認結果を表5に示す。表5における「離水」とは、上面又は粉体上部に水が浮いた状態になることをいう。また、「凝集」とは、粉体同士が集合して分散性が低下した状態をいう。
【0088】
試験例1-1~1-7においては、安定性の低下は確認されなかった。すなわち、増粘剤が、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(アクリロイルジメチルタウリン酸)もしくはその塩(AMPS構造)を構成単位として有する重合体及び/又は共重合体、並びに(アクリレート/メタクリル酸ステアレス-20)共重合体であるとき、40質量%という高い粉体含有率であっても粉体の安定性の低下は確認されなかった。一方、試験例1-8~1-17において使用した増粘剤では、高含有率の粉体を安定に分散させることができなかった。これより、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩を構成成分として有する増粘剤は、水系組成物における高含有率の粉体の安定性に有用であると考えられる。
【0089】
表3及び表4に示すように、粉体群A及び粉体群Bには複数の種類の粉体が含有されている。したがって、粉体の分散安定性は、粉体の種類に依存しないものと考えられる。後述の試験例4に粉体の種類毎の試験例を示す。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
[試験例2]
試験例1と同様にして、増粘剤の種類を変化させた組成物を作製し、各組成物について粉体の安定性及び分散性を観察すると共に、粘度を測定した。粉体としては合成マイカを使用した。試験例1とは、増粘剤の含有率を変えた。また、試験例2における水相はアルコールを含有する。安定性及び分散性の評価基準を以下に示す。粘度は、組成物作製直後及び作製から2週間後に、30℃にて、回転粘度計(ブルックフィールド社)、BH型粘度計、ローターナンバー6、回転数10rpmで測定した。表6~8に組成及び結果を示す。表6~8においては、表示の簡略化のため、表2に示した符号を用いて増粘剤を表記する。EDTA 3Na・2H2Oとは、エチレンジアミン四酢酸の三ナトリウム塩のことである。
[安定性(2週間後)]
○:粉末の沈降も離水も生じていない
△:粉末の沈降は生じていないが離水が生じている
×:粉末の沈降が生じると共に離水も生じている
[分散性]
○:ムラが見られない
△:ややムラが見られる
×:分散が不均一であり、色ムラの模様ができている
【0096】
試験例1において安定性に問題が生じなかった増粘剤(増粘剤Fを除く)は、試験例2においても粉体の安定性及び分散性ともに問題が生じなかった。試験例1において問題が生じた増粘剤は特に良好な粉体の分散性が得られなかった。増粘剤Fは、試験例1においては問題が生じなかったが、試験例2においては分散性に問題が生じた。これより、増粘剤としては、AMPS構造を有する増粘剤が高含有率の粉体の分散性に効果的であることが分かった。
【0097】
試験例2-18~2-21においては、試験例2-12及び2-13で使用した増粘剤と同じ増粘剤を用いて、増粘剤の含有率を試験例2-12及び2-13よりも高くした。しかしながら、粘度は高くなったが、分散性の改善は認められなかった。これより、粉体の分散性は、粘度よりも増粘剤の種類に依存するものと考えられる。
【0098】
試験例2においては、試験例1と異なり、水相はアルコールを含有しているが、粉体の安定性及び分散性に影響はなかった。
【0099】
試験例2の組成物は油性成分を含有しておらず、乳化作用を利用しなくとも、粉体の安定性を2週間持続させることができた。試験例2の組成物は油性成分及び界面活性剤を含有していないので、肌に塗布した際のべたつきの発生が抑制されていると考えられる。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
[試験例3]
試験例1及び2において好結果が得られた増粘剤を用いて、粉体及び増粘剤の添加率を変化させた組成物を作製し、その粘度を測定すると共に、粉体の分散状態を観察した。作製した組成物の組成を表9~11に示す。表9~11において、水相としてはイオン交換水を使用した。粉体としては、合成マイカを使用した。増粘剤としては、上述の増粘剤Aを使用した。
【0104】
組成物の粘度、pH及び分散安定性の結果も表9~11に示す。粘度は、組成物作製直後及び作製から2週間後に、30℃にて、回転粘度計(ブルックフィールド社)、BH型粘度計、ローターナンバー6、回転数10rpmで測定した。安定性及び分散性の評価基準は上記試験例と同じである。
【0105】
増粘剤の含有率が0.4質量%では粉体の安定性を得ることができなかった。増粘剤の含有率を0.6質量%にすると、粉体の含有率が40質量%では粉体の安定性を得ることができたが、粉体の含有率が10質量%~30質量%では粉体の安定性を得ることはできなかった。しかしながら、増粘剤の含有率を0.8質量%及び1質量%にすると、粉体の含有率が10質量%~40質量%でも安定性を得ることができた。これより、増粘剤は0.7質量%以上であれば、粉体の含有率にかかわらず粉体の安定性及び分散性を高めることができると考えられる。
【0106】
なお、本開示の組成物においては、粉体の含有率を高めることによってかえって粉体の安定性を高めることができることも考えられる。増粘剤が0.5質量%~0.7質量%であっても粉体の含有率が35質量%以上であれば粉体の安定性及び分散性を高めることができると考えられる。
【0107】
粉体の含有率を高くすることができるので、組成物を肌に適用した後にふき取っても、粉体を肌上に残存させることができる。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
[試験例4]
粉体の分散安定性が粉体の種類によって影響されるかを確認するために、粉体の種類が異なる組成物を作製し、粘度及び安定性を確認した。作製した試料の組成を表13に示す。用いた粉体の種類を表14及び15に示す。また、表14及び15には、組成物の試料作製直後の粘度及び試料作製から2週間後の粘度、試料作製から2週間後における粉体の安定性、並びに分散性を示す。安定性及び分散性の評価基準は上記試験例と同じである。粘度の測定方法も上記試験例と同じである。
【0113】
多孔質体、非多孔質体、球状粒子、天然物、合成物、表面処理された粉体、金属石鹸等、種々の粉体を用いたが、粉体の安定性及び分散性にも問題は生じなかった。また、いずれの粉体でも高粘度組成物を実現することができた。これより、粉体の安定性及び分散性は粉体の種類に依存しないものと考えられる。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
[試験例5]
特許文献2に記載の組成物をベースとする水中油型組成物を作製し、粉体の安定性及び分散性を比較した。試験例5-1及び5-3~5-5においては、粉体の含有率を変動させた。試験例5-2においては、試験例5-1の組成から油相を除いた組成とした。表16に、組成及び結果を示す。安定性及ぶ分散性の評価基準は上記試験例と同じである(試験例5-2~5-4の安定性除く)。
【0118】
試験例5-1においては、粉体の含有率が26質量%であっても粉体の安定性及び分散性を確保できている。しかしながら、試験例5-1から油相を取り除いた試験例5-2においては、粉体の安定性及び分散性を確保することができなかった。これより、試験例5-1においては油相が粉体の安定性及び分散性に寄与していると考えられる。したがって、試験例5-1の組成においては、油相の含有率が15質量%以下になると、粉体の安定性及び分散性は低下すると考えられる。すなわち、特許文献2に記載の組成物では油相の含有率を高くしなければ粉体の安定性及び分散性を確保することができないと考えられる。一方、本開示の組成物によれば、試験例1~4に示すように、油相の含有率が15質量%以下であっても、特に油相が存在しなくとも粉体の安定性及び分散性を確保することができた。
【0119】
粉体の含有率が30質量%を超える試験例5-3~5-5においては油性成分が浮いてしまい粉体の安定性を得ることができないと共に、粉体の分散性も得ることができなかった。したがって、特許文献2に記載の組成物では、粉体の含有率が30質量%未満でないと安定性及び分散性を維持することができないと考えられる。一方、本開示の組成物によれば、試験例3~4に示すように、粉体の含有率が30質量%~40質量%であっても粉体の安定性及び分散性を確保することができた。
【0120】
【0121】
本開示の粉体含有水系組成物の処方例を以下に挙げる。本開示の粉体含有水系組成物の適用例は、以下の処方例によって限定されるものではない。表に示す各成分の含有率の単位は質量%である。
【0122】
[処方例1 水系アイシャドウ(表17)]
本開示の粉体含有水系組成物を用いて水系アイシャドウを作製した。組成を表17に示す。該水系アイシャドウにおいては、粉体の安定性及び分散性が高かった。また、該水系アイシャドウによれば、みずみずしい使用感を得ることができた。
【0123】
【0124】
[処方例2 水系おしろい(表18)]
本開示の粉体含有水系組成物を用いて水系おしろいを作製した。組成を表18に示す。該水系おしろいにおいては、粉体の安定性及び分散性は高かった。また、該水系おしろいによれば、みずみずしい使用感を得ることができながらも、べたつきを感じることはなかった。
【0125】
【0126】
[処方例3 収れん化粧水(表19)]
本開示の粉体含有水系組成物を用いて収れん化粧水を作製した。組成を表19に示す。該収れん化粧水においては、粉体の安定性及び分散性は高かった。また、該収れん化粧水によれば、みずみずしい使用感を得ることができながらも、塗布後べたつきを感じることはなかった。
【0127】
【0128】
[処方例4 水系香水(表20)]
本開示の粉体含有水系組成物を用いて水系香水を作製した。組成を表20に示す。香料は、球状多孔質シリカを香料に含浸させて、球状多孔質シリカに予め吸収させてから溶媒に添加した。該水系香水においては、粉体の安定性及び分散性は高かった。また、該水系香水によれば、みずみずしい使用感を得ることができた。エタノール未配合であるため、香りの持続性の良い香水が得られた。
【0129】
【0130】
[処方例5 水系サンスクリーン(水系日焼け止め化粧料)(表21)]
本開示の粉体含有水系組成物を用いて水系サンスクリーンを作製した。組成を表21に示す。該水系サンスクリーンにおいては、粉体の安定性及び分散性は高かった。また、該水系サンスクリーンによれば、みずみずしい使用感を得ることができながらも、べたつきを感じることはなかった。
【0131】
【0132】
[処方例6 水系ペイント(表22)]
本開示の粉体含有水系組成物を用いて水系ペイントを作製した。組成を表22に示す。該水系ペイントにおいては、粉体の安定性及び分散性は高かった。また、該水系ペイントは、例えば紙に塗布することが可能なペイントとして利用することができた。
【0133】
【0134】
本発明の粉体含有水系組成物及び皮膚外用剤並びにこれらの製造方法は、上記実施形態及び実施例に基づいて説明されているが、上記実施形態及び実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、各開示要素(請求の範囲、明細書及び図面に記載の要素を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができる。また、本発明の請求の範囲の範囲内において、各開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0135】
本発明のさらなる課題、目的及び形態(変更形態含む)は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【0136】
本書に記載した数値範囲については、別段の記載のない場合であっても、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし範囲が本書に具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本開示の粉体含有水系組成物は、塗料、インク、食品等の粉体を含有する製品にも適用することができる。