(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】無人航空機システム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/28 20100101AFI20220801BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20220801BHJP
G01S 19/22 20100101ALI20220801BHJP
B64C 39/02 20060101ALN20220801BHJP
【FI】
G01S19/28
G01S19/14
G01S19/22
B64C39/02
(21)【出願番号】P 2018238304
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】大塚 智
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-182692(JP,A)
【文献】特開2017-122581(JP,A)
【文献】特開2005-321364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0188124(US,A1)
【文献】特表2018-510423(JP,A)
【文献】特開2004-012171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00 -19/55
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測位衛星を用いて現在位置を測位するGNSS受信器を搭載した無人航空機を備えた無人航空機システムであって、
前記GNSS受信器の現在位置の測位の各回において、各測位衛星の軌道情報と、地上物を含む地表の3次元形状を表す3次元形状データとを用いて、前記GNSS受信器が
今回測位した当該無人航空機の現在位置との間に障害物がある、少なくとも当該無人航空機の
今回測位した現在位置から見て地平線上にある測位衛星を算定し、使用不可衛星として前記GNSS受信器に設定する使用不可衛星設定手段を有し、
前記GNSS受信器は、現在位置の測位の各回において、前記GNSS受信器が行った前回の現在位置の測位の回において前記使用不可衛星として設定された測位衛星を測位に用いる測位衛星から除外して、今回の現在位置の測位を行うことを特徴とする無人航空機システム。
【請求項2】
請求項1記載の無人航空機システムであって、
前記使用不可衛星設定手段が、前記GNSS受信器が測位した当該無人航空機の現在位置との間に障害物がある、少なくとも当該無人航空機の
今回測位した現在位置から見て地平線上にある測位衛星を算定したときに、所定の警告をオペレータに提示する警告手段を有することを特徴とする無人航空機システム。
【請求項3】
請求項1記載の無人航空機システムであって、
前記使用不可衛星設定手段が、前記GNSS受信器が
今回測位した当該無人航空機の現在位置との間に障害物がある、少なくとも当該無人航空機の
今回測位した現在位置から見て地平線上にある測位衛星を算定したときに、障害物が当該無人航空機と測位衛星の間に位置しなくなる当該無人航空機の高度の変更量を算定してオペレータに提示する高度変更案提示手段を有することを特徴とする無人航空機システム。
【請求項4】
複数の測位衛星を用いて現在位置を測位するGNSS受信器を搭載した無人航空機を備えた無人航空機システムであって、
前記無人航空機を自動航行させる経路を規定する経路データを作成するデータ処理装置を備え、
前記データ処理装置は、各測位衛星の軌道情報と、地上物を含む地表の3次元形状を表す3次元形状データとを用いて、前記経路データが表す経路上の区間であって、当該区間内の位置との間に障害物が存在する、少なくとも当該区間内の位置から見て地平線上にある測位衛星が存在する区間である障害物遮蔽衛星存在区間に対応づけて、当該存在する測位衛星を使用不可衛星として登録した使用不可衛星データを作成する使用不可衛星データ作成手段を有し、
前記無人航空機システムは、
自動航行の実施時に、前記経路データが規定する経路に沿って航行するように当該無人航空機の飛行動作を制御する自動航行制御手段と、
前記GNSS受信器の現在位置の測位の各回において、自動航行の実施時に、前記GNSS受信器が
今回測位した当該無人航空機の現在位置が含まれる前記障害物遮蔽衛星存在区間に対応づけて前記使用不可衛星データに登録されている使用不可衛星を前記GNSS受信器に設定する使用不可衛星設定手段を有し、
前記GNSS受信器は、現在位置の測位の各回において、前記GNSS受信器が行った前回の現在位置の測位の回において前記使用不可衛星として設定された測位衛星を測位に用いる測位衛星から除外して、今回の現在位置の測位を行うことを特徴とする無人航空機システム。
【請求項5】
請求項4記載の無人航空機システムであって、
前記データ処理装置は、使用不可衛星データが表す前記障害物遮蔽衛星存在区間を、地図もしくは航空写真上に前記経路データが表す経路を表した経路図上でオペレータに提示する障害物遮蔽衛星存在区間提示手段を有することを特徴とする無人航空機システム。
【請求項6】
請求項4記載の無人航空機システムであって、
前記データ処理装置は、使用不可衛星データが表す前記障害物遮蔽衛星存在区間について、障害物が当該障害物遮蔽衛星存在区間内の位置と測位衛星との間に位置しなくなる当該障害物遮蔽衛星存在区間の高度の変更量を算定してオペレータに提示する高度変更案提示手段を有することを特徴とする無人航空機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機において現在位置を測位する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人航空機システムとしては、複数の測位衛星から受信した電波に基づいて現在位置を測位するGPS受信器を無人航空機(ドローン)に搭載し、GPS受信器で無人航空機の現在位置を測位しながら、予め設定した経路に沿って無人航空機を自動航行させる無人航空機システムが知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPS受信器等のGNSS受信器で現在位置を測位する場合、GNSS受信器と測位衛星の間に障害物があると、測位衛星の電波が反射等により複数の伝搬経路でGNSS受信器に到達するマルチパス等によって、測位衛星の電波の受信品質が劣化し、現在位置を正しく測位できなくなってしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、無人航空機に搭載されたGNSS受信器において、より現在位置正しく測位することを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、
複数の測位衛星を用いて現在位置を測位するGNSS受信器を搭載した無人航空機を備えた無人航空機システムに、各測位衛星の軌道情報と、地上物を含む地表の3次元形状を表す3次元形状データとを用いて、前記GNSS受信器が測位した当該無人航空機の現在位置との間に障害物がある、少なくとも当該無人航空機の現在位置から見て地平線上にある測位衛星を算定し、使用不可衛星として前記GNSS受信器に設定する使用不可衛星設定手段を設け、前記GNSS受信器において、前記使用不可衛星として設定された測位衛星を、現在位置の測位に用いる測位衛星から除外するようにしたものである。
【0007】
ここで、このような無人航空機システムには、さらに、前記使用不可衛星設定手段が、前記GNSS受信器が測位した当該無人航空機の現在位置との間に障害物がある、少なくとも当該無人航空機の現在位置から見て地平線上にある測位衛星を算定したときに、所定の警告をオペレータに提示する警告手段を設けるようにしてよい。
【0008】
または、このような無人航空機システムには、さらに、前記使用不可衛星設定手段が、前記GNSS受信器が測位した当該無人航空機の現在位置との間に障害物がある、少なくとも当該無人航空機の現在位置から見て地平線上にある測位衛星を算定したときに、障害物が当該無人航空機と測位衛星の間に位置しなくなる当該無人航空機の高度の変更量を算定してオペレータに提示する高度変更案提示手段を設けるようにしてもよい。
【0009】
また、前記課題達成のために、本発明は、測位衛星を用いて現在位置を測位するGNSS受信器を搭載した無人航空機を備えた無人航空機システムに、前記無人航空機を自動航行させる経路を規定する経路データを作成するデータ処理装置を備えたものである。ここで、前記データ処理装置は、各測位衛星の軌道情報と、地上物を含む地表の3次元形状を表す3次元形状データとを用いて、前記経路データが表す経路上の区間であって、当該区間内の位置との間に障害物が存在する、少なくとも当該区間内の位置から見て地平線上にある測位衛星が存在する区間である障害物遮蔽衛星存在区間に対応づけて、当該存在する測位衛星を使用不可衛星として登録した使用不可衛星データを作成する使用不可衛星データ作成手段を備えている。また、前記無人航空機システムは、自動航行の実施時に、前記経路データが規定する経路に沿って航行するように当該無人航空機の飛行動作を制御する自動航行制御手段と、自動航行の実施時に、前記GNSS受信器が測位した当該無人航空機の現在位置が含まれる前記障害物遮蔽衛星存在区間に対応づけて前記使用不可衛星データに登録されている使用不可衛星を前記GNSS受信器に設定する使用不可衛星設定手段を備えている。そして、前記GNSS受信器は、前記使用不可衛星として設定された測位衛星を、現在位置の測位に用いる測位衛星から除外する。
【0010】
ここで、このような無人航空機システムは、前記データ処理装置に、さらに、前記データ処理装置に、使用不可衛星データが表す前記障害物遮蔽衛星存在区間を、地図もしくは航空写真上に前記経路データが表す経路を表した経路図上でオペレータに提示する障害物遮蔽衛星存在区間提示手段を設けるようにしてもよい。
【0011】
または、このような無人航空機システムは、前記データ処理装置に、さらに、使用不可衛星データが表す前記障害物遮蔽衛星存在区間について、障害物が当該障害物遮蔽衛星存在区間内の位置と測位衛星との間に位置しなくなる当該障害物遮蔽衛星存在区間の高度の変更量を算定してオペレータに提示する高度変更案提示手段を設けるようにしてもよい。
【0012】
以上のような無人航空機システムによれば、航行時に、無人航空機との間に障害物のある測位衛星を用いずに無人航空機の現在位置の測位を行うことができるので、より現在位置正しく測位することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、無人航空機に搭載されたGNSS受信器において、より現在位置正しく測位することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る無人航空機システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るデータ処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るデータ処理装置の表示画面を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る自動航行データを示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る使用不可衛星の設定法を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る無人航空機の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る無人航空機の他の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るGNSS設定制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係る無人航空機システムの構成を示す。
図示するように、無人航空機システムは、無人航空機(ドローン)1、無人航空機1と無線通信を行うコントローラ2、コントローラ2に選択的に着脱することのできるデータ処理装置3を備えている。
【0016】
このような構成において、無人航空機1は、航行モードとして手動航行モードと自動航行モードとを有する。そして、無人航空機1に手動航行モードが設定されているときには、オペレータは、コントローラ2の操作することにより無人航空機1を無線通信を介して遠隔操作することができる。また、データ処理装置3はコントローラ2に装着された状態において、コントローラ2が行う無線通信を介して無人航空機1と通信を行うことができる。
【0017】
無人航空機1は、たとえば、4回転翼のマルチコプタであり、下部に連結されたジンバル11と、ジンバル11に支持されたカメラ12を備えている。また、無人航空機1は、GPS受信器等の、複数の測位衛星から受信した電波を用いて現在位置の測位を行うGNSS受信器を搭載している。
【0018】
次に、
図2に、データ処理装置3の機能構成を示す。
図示するように、データ処理装置3は、自動航行データ編集部31と、自動航行制御部32を備えている。
また、データ処理装置3には、衛星軌道情報33と数値標高モデルデータ34と地図/航空写真データ35と自動航行データ36とが記憶される。
衛星軌道情報33は、GPS衛星などの各測位衛星の軌道の情報、すなわち、各測位衛星の将来を含む各時点における位置を表す情報であり、外部の機関より予め取得してデータ処理装置3に記憶しておく。また、数値標高モデルデータ34は、樹木や建築物などの地上物を含む地表の3次元形状を表すデータであり、外部の機関より予め取得してデータ処理装置3に記憶しておく。また、地図/航空写真データ35は各地の地図や航空写真のデータである。また、自動航行データ36は、自動航行データ編集部31によって作成される、無人航空機1に行わせる自動航行の内容を規定するデータである。
【0019】
なお、データ処理装置3は、ハードウエアとしては、モバイルコンピュータやモバイル端末であり、
図2に示す構成は、データ処理装置3が所定のソフトウエアを実行することにより実現される。
【0020】
さて、自動航行データ編集部31は、自動航行データ36の作成を、たとえば、
図3aに示すような編集画面をオペレータの操作に応じて表示し、編集画面上の操作に応じて自動航行の内容を編集し、編集完了の後の自動航行の内容を規定するデータを自動航行データ36とすることにより行う。
【0021】
図示するように編集画面には、地図/航空写真データ35を用いて生成した無人航空機1を自動航行させる地域の地図または航空写真を航行地域
図301として表示する。そして、航行地域
図301上において、オペレータから、自動航行を開始させる地点であるスタートポイントSPと、自動航行において無人航空機1を経由させる位置であるウエイポイントWPの設定を受け付ける。
【0022】
また、ミッション設定ウインドウ302で、自動航行を開始する年月日時分秒であるミッション開始時刻や、自動航行における無人航空機1の速度の設定を受けつける。また、ミッション設定ウインドウ302に設けた「詳細」ボタンの操作に応答して、所定のミッション詳細設定ウインドウを表示し、ミッションに関する、その他の詳細の設定を受け付ける。
【0023】
また、オペレータのウエイポイントの選択に応じて、そのウエイポイントのウエイポイント設定ウインドウ303を表示し、ウエイポイントの高度の設定を受け付ける。また、ウエイポイント設定ウインドウ303に設けた「詳細」ボタンの操作に応答して、所定のウエイポイント詳細設定ウインドウを表示し、そのウエイポイントに関する、ウエイポイントにおけるホバリングの有無等の、その他の詳細の設定を受け付ける。また、ウエイポイント設定ウインドウ303に設けた「アクション」ボタンの操作に応答して、所定のアクション設定ウインドウを表示し、そのウエイポイントで行う撮影動作などのアクションの設定を受け付ける。
【0024】
そして、自動航行データ編集部31は、編集画面に設けた「編集終了」ボタンが操作されたならば、編集画面で編集された自動航路の内容に従った航行を規定する自動航行データ36を作成する。
【0025】
ここで、
図4に示すように、自動航行データ36は、飛行制御データとアクション制御データとGNSS設定データとを含む。
飛行制御データは、自動航行開始時刻と自動航行する経路と自動航行で移動する際の移動速度を規定するデータである。自動航行開始時刻は、ミッションに対して設定されたミッション開始時刻となる。また、自動航行する経路は、設定されたスタートポイントの座標を離陸して、設定された各ウエイポイントの座標を経由してスタートポイントの座標に着陸する経路となる。スタートポイントの経緯度座標は、そのスタートポイントが設定された航行地域
図301上の経緯度座標となり、スタートポイントの標高は、数値標高モデルデータ34が表す、スタートポイントの経緯度座標の標高、すなわち、地表の標高となる。また、各ウエイポイントの経緯度座標は、そのウエイポイントが設定された航行地域
図301上の経緯度座標となり、各ウエイポイントの標高は、そのウエイポイントに対して設定された高度が表す標高となる。また、移動速度は、ミッションに対して設定された速度となる。
【0026】
次に、アクション制御データは、各ウエイポイントに対して設定された、カメラ12を用いた撮影などのアクションを規定するデータである。
そして、GNSS設定データは、自動航行する経路上の区間毎に、当該区間において無人航空機1のGNSS受信器における使用を不可とする測位衛星を規定するものである。
ここで、無人航空機1のGNSS受信器は、水平線に対する仰角が0°以上の所定の仰角(たとえば15°)以上の範囲内に位置する測位衛星のみを許容仰角範囲内測位衛星として、許容仰角範囲内測位衛星からの電波を用いて衛星測位を行う。
【0027】
そして、GNSS設定データは、許容仰角範囲内測位衛星であっても、各区間においてGNSS受信器における使用を不可とする測位衛星を使用不可衛星として規定するデータである。
【0028】
ここで、使用不可衛星は、衛星軌道情報33と数値標高モデルデータ34を用いて算定する。すなわち、たとえば、まず、自動航行する経路上に所定間隔で設定した調査ポイントの各々について、飛行制御データを参照して、自動航行データ36に従った自動航行の実施時に無人航空機1が調査ポイントに位置する時刻を滞在時刻として算定する。
【0029】
そして、衛星軌道情報33を用いて、各調査ポイントについて、当該調査ポイントの滞在時刻に調査ポイントから見た各測位衛星の方向を求める。そして、求めた方向が表す仰角が所定の仰角以上の範囲内に位置する測位衛星を、当該調査ポイントにおける許容仰角範囲内測位衛星として識別する。次に、識別した各調査ポイントにおける各許容仰角範囲内測位衛星について、数値標高モデルデータ34を参照して、当該調査ポイントの滞在時刻に当該調査ポイントから見た当該許容仰角範囲内測位衛星の方向に障害物が存在するかどうか、すなわち、当該調査ポイントの滞在時刻に当該調査ポイントと当該許容仰角範囲内測位衛星の間に障害物が存在するかどうかを調べる。そして、障害物が存在する許容仰角範囲内測位衛星を、当該調査ポイントの使用不可衛星として設定する。
【0030】
すなわち、たとえば、
図5に示すように調査ポイントPにおいて、衛星軌道情報33が、調査ポイントPの滞在時刻の許容仰角範囲内測位衛星として衛星Aと衛星Bが存在することを表している場合において、数値標高モデルデータ34が調査ポイントPと衛星Aの間に障害物が存在していることを表しており、調査ポイントPと衛星Bの間に障害物が存在していないことを表している場合には、衛星Aを調査ポイントPの使用不可衛星として設定し、衛星Bは調査ポイントPの使用不可衛星として設定しない。
【0031】
そして、使用不可衛星が共通となる連続した調査ポイントを含む区間を設定し、設定した区間に対して、当該区間内の調査ポイントについて共通の使用不可衛星を当該区間の使用不可衛星としてGNSS設定データによって規定する。
【0032】
ここで、
図4に示すように、GNSS設定データは、経路上の使用不可衛星を設定した区間毎に対応して設けた区間毎設定データを有し、各区間毎データには、対応する区間を規定する座標データと、対応する区間の使用不可衛星が登録される。
【0033】
さて、自動航行データ編集部31は、このような自動航行データ36を作成しデータ処理装置3に記憶したならば、次に、
図3bに示すような確認画面を表示する。
確認画面では、航空地域図上に記憶した自動航行データ36の飛行制御データが表す自動航行する経路を表した経路
図350上で、自動航行データ36のGNSS設定データが表す使用不可衛星が設定されている区間C01、C02を強調して提示する。また、使用不可衛星が設定されている区間C01、C02の各々に対応して設けたメッセージウインドウ351に、対応する区間について、マルチパスが発生する可能性のある測位衛星が存在する旨のメッセージを表示する。
【0034】
また、対応する区間について、衛星軌道情報33と数値標高モデルデータ34を用いて、当該区間内の各調査ポイントの全てについて、調査ポイントの滞在時刻に調査ポイントと当該区間の使用不可衛星との間に障害物が無くなることとなる当該区間の飛行高度と、飛行制御データが表す当該区間の飛行高度の差を障害物回避高度として算定し、無人航空機1の飛行高度を障害物回避高度分上昇すれば、マルチパスが発生しなくなる旨を通知する。
【0035】
そして、確認画面に設けた「戻る」ボタンが操作されたならば、
図3aの編集画面に戻り、上述のようにオペレータ操作を受け付けて自動航行の内容を編集し自動航行データ36を更新する。また、確認画面に設けた「終了」ボタンが操作されたならば、確認画面を消去し、自動航行データ編集部31の処理を終了する。また、確認画面に設けた「実行」ボタンが操作されたならば、自動航行制御部32に、確認画面を表示している自動航行データ36による自動航行の実行を要求し、確認画面を消去し、自動航行データ編集部31の処理を終了する。
【0036】
次に、データ処理装置3の、自動航行制御部32は、自動航行データ編集部31から自動航行の実行を要求された場合や、オペレータ操作によって記憶されている自動航行データ36による自動航行の実行を要求された場合には、自動航行データ36の飛行制御データが表すスタートポイントの座標に無人航空機1が配置されているかどうかを問い合わせる画面を表示し、スタートポイントの座標に無人航空機1が配置されていることを確認する入力があったならば、自動航行データ36をコントローラ2を介して無人航空機1に転送し、自動航行の実行を無人航空機1に指示する。
【0037】
次に、
図6に、無人航空機1の機能構成を示す。
図示するように、無人航空機1は、コントローラ2と無線通信を行う無線通信部101、制御部102、飛行制御部103、ジャイロセンサ104、各回転翼を回転するプロペラモータ105、撮影制御部106、上述したジンバル11とカメラ12、上述したGNSS受信器107を備えている。また、無人航空機1は、データ処理装置3からコントローラ2を介して転送された自動航行データ108を記憶する。
【0038】
このような構成において、手動航行モードが設定されているときには、制御部102は、無線通信部101がコントローラ2から受信した飛行命令に沿った飛行動作を飛行制御部103に指令し、飛行制御部103はジャイロセンサ104で検出したマルチコプタの姿勢を考慮しながら、各回転翼を回転するプロペラモータ105を制御し、指令された飛行動作を実現する。また、手動航行モードが設定されているときには、制御部102は、無線通信部101がコントローラ2から受信した命令に従った撮影動作を行うよう撮影制御部106に指令し、撮影制御部106は、ジンバル11の姿勢の制御やカメラ12のズームや撮影を制御し、指令された撮影動作を実現する。
【0039】
次に、制御部102は、データ処理装置3から無線通信部101を介して転送された自動航行データ108を無人航空機1内に記憶する。また、制御部102は、データ処理装置3から無線通信部101を介して自動航行の実行を指示されたならば自動航行モードを設定する。
【0040】
そして、自動航行モードが設定されているときには、制御部102は、自動航行データ108の飛行制御データが示す自動航行開始時刻に飛行制御部103に飛行開始動作を指令し、その後、飛行制御データが示す経路に沿って飛行制御データが示す移動速度で飛行するように、各時点における飛行動作を飛行制御部103に指令する。そして、飛行制御部103が、ジャイロセンサ104で検出したマルチコプタの姿勢を考慮しながら、各回転翼を回転するプロペラモータ105を制御して、指令された飛行動作を実現することにより、無人航空機1の自動航行を実現する。
【0041】
また、制御部102は、撮影制御部106は自動航行データ108のアクション制御データが示す撮影動作を行うよう撮影制御部106に指令し、撮影制御部106は、ジンバル11の姿勢の制御やカメラ12のズームや撮影を制御し、指令された撮影動作を実現する。
【0042】
そして、GNSS受信器107は、各測位衛星が送信している軌道情報が示す測位衛星の位置に基づいて、水平線に対する仰角が所定の仰角(たとえば15°)以上の範囲内に位置する測位衛星のうちの、制御部102から使用不可衛星として設定されていない測位衛星のうちから所定のルールに従って選択した測位衛星から受信した電波を用いて現在位置の測位を行う。
【0043】
また、制御部102は、自動航行モードを設定したならば、まず、自動航行データ108のGNSS設定データに基づいて、自動航行する経路のスタートポイントが含まれる区間に対して設定されている使用不可衛星をGNSS受信器107に設定する。
【0044】
そして、以降、制御部102は、GNSS受信器107に設定されている使用不可衛星が、GNSS設定データの、GNSS受信器107が測定した現在位置の座標が含まれる区間の区間毎設定データに登録されている使用不可衛星となるように、GNSS受信器107の使用不可衛星の設定を更新する処理を、自動航行が完了するまで繰り返し行う。
【0045】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
以上のように本第1実施形態によれば、航行時に、無人航空機1との間に障害物のある測位衛星を用いずに無人航空機1の現在位置の測位を行うことができるので、より現在位置正しく測位することができる。
【0046】
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
本第2実施形態は、前記第1の実施形態において、自動航行データ36を無人航空機1に転送せず、データ処理装置3において、コントローラ2、無線通信、無人航空機1の制御部102を介して、自動航行データ36に従って飛行制御部103や撮影制御部106の制御や、GNSS受信器107の使用不可衛星の設定を、無人航空機1のGNSS受信器107が測位した無人航空機1の現在位置の座標を無線通信、コントローラ2を介して取得しつつ遠隔で行うようにしたものである。
【0047】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。
本第3実施形態は、第1の実施形態において、データ処理装置3において、GNSS設定データを作成せず、GNSS設定データを含まず、飛行制御データとアクション制御データよりなる自動航行データ36を生成して、無人航空機1にコントローラ2を介して転送して、
図7に示すように、自動航行データ108として無人航空機1に記憶すると共に、数値標高モデルデータ34を無人航空機1にコントローラ2を介して転送して、無人航空機1に転送して数値標高モデルデータ701を記憶するようにしたものである。
【0048】
本第3実施形態における無人航空機1の制御部102の飛行制御部103や撮影制御部106の制御の動作は第1実施形態と同様である。また、本第3実施形態では、GNSS受信器107への使用不可衛星の設定を、無人航空機1の制御部102がGNSS設定制御処理を行うことにより行う。
【0049】
図8に、このGNSS設定制御処理の手順を示す。
GNSS設定制御処理は、データ処理装置3から自動航行の実行の指示に応答して開始される処理であり、制御部102はGNSS設定制御処理において、まず、自動航行する経路のスタートポイントの座標を自動航行データ108の飛行制御データから取得する(ステップ802)。
また、軌道情報をGNSS受信器107から取得する(ステップ804)。ここで、GNSS受信器107から取得する軌道情報は、測位衛星が送信している軌道情報をGNSS受信器107で受信したものであり、軌道情報は、測位衛星の将来を含む各時点における位置を表す。
【0050】
そして、ステップ802で取得した座標における使用不可衛星を算定する(ステップ806)。
ここで、使用不可衛星の算定は、取得した座標から見て、水平線に対する仰角が所定の仰角以上の範囲内に位置する測位衛星を許容仰角範囲内測位衛星として、各許容仰角範囲内測位衛星について、取得した座標と、GNSS受信器107から取得した軌道情報が示す当該許容仰角範囲内測位衛星の位置との間に、障害物が存在するかどうかを数値標高モデルデータ701を参照して調べ、障害物が存在する許容仰角範囲内測位衛星を使用不可衛星として算定することにより行う。
【0051】
そして、算定した使用不可衛星をGNSS受信器107に設定する(ステップ808)。
そして、以降は、自動航行が完了するまで(ステップ810)、GNSS受信器107から、GNSS受信器107が測位している現在位置の座標を取得し(ステップ812)、軌道情報をGNSS受信器107から取得し(ステップ804)、ステップ812で取得した座標における使用不可衛星を算定し(ステップ806)、算定した使用不可衛星をGNSS受信器107に設定する(ステップ808)処理を繰り返す。ただし、GNSS受信器107が測位している現在位置の座標から見て、水平線に対する仰角が所定の仰角以上の範囲内に位置する全ての測位衛星の軌道情報を取得済である場合には、ステップ804の軌道情報のGNSS受信器107からの取得は省略する。
【0052】
以上、本発明の第3の実施形態について説明した。
このような本第3実施形態によっても、第1実施形態と同様に、航行時に、無人航空機1との間に障害物のある測位衛星を用いずに無人航空機1の現在位置の測位を行うことができるので、より現在位置正しく測位することができる。
【0053】
以下、本発明の第4の実施形態について説明する。
本第4実施形態は、前記第3の実施形態において、自動航行データ36と数値標高モデルデータ34を無人航空機1に転送せず、データ処理装置3において、コントローラ2、無線通信、無人航空機1の制御部102を介して、自動航行データ36に従った飛行制御部103や撮影制御部106の制御や、GNSS受信器107の使用不可衛星の設定を、無人航空機1のGNSS受信器107が測位した無人航空機1の現在位置の座標を制御部102、無線通信、コントローラ2を介して取得しつつ遠隔で行うようにしたものである。なお、この場合において、使用不可衛星の算定に必要となる軌道情報は、無人航空機1のGNSS受信器107が受信した軌道情報の転送を受けてデータ処理装置3において用いるようにしてもよいし、予め外部の機関から取得しデータ処理装置3に記憶しておいた軌道情報をデータ処理装置3において用いるようにしてもよい
以上、本発明の第4の実施形態について説明した。
【0054】
ところで、以上の第3実施形態は、制御部102において使用不可衛星が算定されたときに、その旨を無線通信、コントローラ2を介してデータ処理装置3に通知し、当該通知を受けたデータ処理装置3においてオペレータにアラームを出力したり、使用不可衛星が算定されなくなる上昇高度を無人航空機1の制御部において軌道情報や数値標高モデルデータ34を用いて算定して無線通信、コントローラ2を介してデータ処理装置3に通知し、データ処理装置3において通知された上昇高度をオペレータに提示するようにしてもよい。
【0055】
また、同様に、第4の実施形態において、データ処理装置3において、使用不可衛星が算定されたときに、オペレータにアラームを出力したり、使用不可衛星が算定されなくなる上昇高度を算定してオペレータに提示するようにしてもよい。
【0056】
また、以上の、第3、第4実施形態における無人航空機1との間に障害物のある測位衛星を使用不可衛星として、GNSS受信器107における使用を禁止する技術は、自動航行を行う場合に限らず、無人航空機1のGNSS受信器107を用いた現在位置の測位を行う場合に同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…無人航空機、2…コントローラ、3…データ処理装置、11…ジンバル、12…カメラ、31…自動航行データ編集部、32…自動航行制御部、33…衛星軌道情報、34、701…数値標高モデルデータ、35…航空写真データ、36、108…自動航行データ、101…無線通信部、102…制御部、103…飛行制御部、104…ジャイロセンサ、105…プロペラモータ、106…撮影制御部、107…GNSS受信器。