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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】コンテンツ受信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/433 20110101AFI20220801BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
H04N21/433
G06F13/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019023100
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020136704
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 大輔
【審査官】大西 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-014289(JP,A)
【文献】特開2004-363659(JP,A)
【文献】特開2005-217586(JP,A)
【文献】特開2005-286761(JP,A)
【文献】特開2006-033120(JP,A)
【文献】特開2011-023992(JP,A)
【文献】特開2013-066088(JP,A)
【文献】特開2014-131113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/10
H04N 7/14 - 7/173
H04N 7/20 - 7/56
H04N 21/00 -21/858
G06F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信されるコンテンツ情報を受信し、このコンテンツ情報を一時的に蓄積することにより、第1の遅延時間経過後に再生出力する第1の受信手段と、
前記コンテンツ情報を受信し、このコンテンツ情報を一時的に蓄積することにより、第2の遅延時間経過後に再生出力する第2の受信手段と、
前記第1の受信手段による再生出力を停止してから前記第2の受信手段による再生出力を再開するまでの時間差を計測する時間差計測手段を有する遅延制御サーバと、
を備え、前記第2の受信手段は、前記第2の遅延時間を前記第1の遅延時間と前記時間差に基づいて設定する遅延時間設定手段を備えることを特徴とするコンテンツ受信システム。
【請求項2】
前記遅延時間設定手段は、前記第1の遅延時間をtb1、前記時間差をtc1としたときに、前記第2の遅延時間tb2をtb1+tc1に設定することを特徴とする請求項に記載のコンテンツ受信システム。
【請求項3】
前記第1および第2の受信手段は、同一タイミングで配信される前記コンテンツ情報を並行して受信することを特徴とする請求項1または2に記載のコンテンツ受信システム。
【請求項4】
前記遅延制御サーバは、前記第1および第2の受信手段とネットワークを介して接続されていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のコンテンツ受信システム。
【請求項5】
前記遅延制御サーバは、前記第1の受信手段との間で生じる第1のネットワーク遅延と、前記第2の受信手段との間で生じる第2のネットワーク遅延とを取得するネットワーク遅延取得手段をさらに備え、
前記第2の遅延時間を設定する際に前記第1および第2のネットワーク遅延に基づく調整を行うことを特徴とする請求項に記載のコンテンツ受信システム。
【請求項6】
前記第1の遅延時間をtb1、前記時間差をtc1、前記第1のネットワーク遅延をtn1、前記第2のネットワーク遅延をtn2としたときに、前記第2の遅延時間tb2をtb1+tc1+(tn1-tn2)に設定することを特徴とする請求項に記載のコンテンツ受信システム。
【請求項7】
前記コンテンツ情報は、ネットワーク経由でコンテンツ配信サーバから配信されることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のコンテンツ受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジオ番組等のコンテンツを受信するコンテンツ受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、視聴した特定のコンテンツの識別情報と再生位置とを携帯端末で保持し、ユーザから継続再生要求を受けた場合、携帯端末は、コンテンツサーバにおける特定のコンテンツの蓄積場所を求め、この蓄積場所の情報と継続再生指示をコンテンツ再生装置に対して行うことにより、コンテンツ再生装置がコンテンツサーバの蓄積場所から特定のコンテンツを読み出して継続再生を行うようにしたコンテンツ継続視聴システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-74529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示されたコンテンツ継続視聴システムでは、コンテンツの蓄積場所と再生位置を指定することで、任意の位置から再生できることが前提となっており、インターネットラジオのような放送形式のコンテンツを対象に継続再生を行うことができないという問題があった。例えば、インターネットラジオの例としてradiko(登録商標)を考えた場合に、配信されるコンテンツ(ラジオ放送)の受信を中断し、次にこの中断箇所を指定して継続再生することはできない。なお、radikoの場合には、コンテンツの配信が終了した後、配信済みの過去のコンテンツの再生を行うことはできるが、配信中のコンテンツについて再生位置を指定して希望の場所から継続再生を行うことはできない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、放送形式で配信されるコンテンツを継続再生することができるコンテンツ受信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明のコンテンツ受信システムは、配信されるコンテンツ情報を受信し、このコンテンツ情報を一時的に蓄積することにより、第1の遅延時間経過後に再生出力する第1の受信手段と、コンテンツ情報を受信し、このコンテンツ情報を一時的に蓄積することにより、第2の遅延時間経過後に再生出力する第2の受信手段と、第1の受信手段による再生出力を停止してから第2の受信手段による再生出力を再開するまでの時間差を計測する時間差計測手段を有する遅延制御サーバとを備え、第2の遅延時間を第1の遅延時間と時間差に基づいて設定している。特に、上述した第2の受信手段は、第2の遅延時間を設定する遅延時間設定手段を備える。具体的には、上述した遅延時間設定手段は、第1の遅延時間をtb1、時間差をtc1としたときに、第2の遅延時間tb2をtb1+tc1に設定することが望ましい。
【0007】
2つの受信手段における再生タイミングのずれに対応させてコンテンツ情報のバッファリング時間を調整することにより、一方の受信手段による再生出力を停止した箇所から他方の受信手段による再生出力を再開することができ、コンテンツを継続再生することが可能となる。
【0008】
また、上述した第1および第2の受信手段は、同一タイミングで配信されるコンテンツ情報を並行して受信することが望ましい。コンテンツが同一タイミングで配信されているため、再生を中断して再開するまでの時間だけ再開時の遅延時間を加算することで、同一箇所から再生を継続することが可能となる。
【0009】
また、上述した遅延制御サーバは、第1および第2の受信手段とネットワークを介して接続されていることが望ましい。これにより、第1および第2の受信手段と連係してコンテンツ再生・中断の時間差を計測したり、コンテンツ再生時に遅延時間を設定することが可能となる。
【0010】
また、上述した遅延制御サーバは、第1の受信手段との間で生じる第1のネットワーク遅延と、第2の受信手段との間で生じる第2のネットワーク遅延とを取得するネットワーク遅延取得手段をさらに備え、第2の遅延時間を設定する際に第1および第2のネットワーク遅延に基づく調整を行うことが望ましい。具体的には、上述した第1の遅延時間をtb1、時間差をtc1、第1のネットワーク遅延をtn1、第2のネットワーク遅延をtn2としたときに、第2の遅延時間tb2をtb1+tc1+(tn1-tn2)に設定することが望ましい。これにより、第1および第2の受信手段のそれぞれにおいてネットワークを介した通信時間に差異がある場合に、この差異による影響を排除することができ、正確な継続再生を行うことが可能となる。
【0011】
また、上述したコンテンツ情報は、ネットワーク経由でコンテンツ配信サーバから配信されることが望ましい。コンテンツ配信サーバから配信されるコンテンツ情報は、一時的にバッファに蓄積されるため、このバッファの容量を可変することで再生出力までの遅延時間を変更することができ、容易に継続再生を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態のコンテンツ受信システムの全体構成を示す図である。
図2】車載機器の構成を示す図である。
図3】携帯端末装置の構成を示す図である。
図4】家庭用機器の構成を示す図である。
図5】遅延制御サーバの構成を示す図である。
図6】車載機器を用いたコンテンツの再生を停止した後に携帯端末装置で停止した箇所から続きのコンテンツ再生を行う動作の説明図である。
図7】携帯端末装置を用いたコンテンツの再生を停止した後に家庭用機器で停止した箇所から続きのコンテンツ再生を行う動作の説明図である。
図8】ネットワーク遅延を考慮する遅延制御サーバの変形例を示す図である。
図9】車載機器を用いたコンテンツの再生を停止した後に携帯端末装置で停止した箇所から続きのコンテンツ再生を行う動作であってネットワーク遅延を考慮した変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態のコンテンツ受信システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一実施形態のコンテンツ受信システムの全体構成を示す図である。本実施形態のコンテンツ受信システムは、ネットワーク4に接続可能な車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3、コンテンツ配信サーバ100、遅延制御サーバ200を含んで構成されている。車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3のそれぞれが第1および第2の受信手段に対応する。
【0015】
コンテンツ配信サーバ100は、ネットワーク4を介してコンテンツ情報を放送形式で同一タイミングで配信する。例えば、インターネットラジオを配信するためのコンテンツ情報が送信される。車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3のそれぞれは、この配信されたコンテンツ情報を受信すると、それぞれに備わったバッファに一時的に蓄積し、バッファ容量に応じた遅延時間の後に再生内容が出力される。
【0016】
遅延制御サーバ200は、車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3のそれぞれを用いてコンテンツ情報の継続再生(シームレス再生)に必要な時間差測定等を行う。遅延制御サーバ200の具体的な動作については後述する。
【0017】
図2は、車載機器1の構成を示す図である。図2に示すように、車載機器1は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機10、電話処理部11、無線LAN処理部12、デジタルチューナ13、アナログチューナ14、表示部15、オーディオ入出力部16、マイクロホン16A、スピーカ16B、操作部17、制御部19を含んで構成されている。走行中の車両においてコンテンツ情報を受信して再生するために、電話処理部11によってネットワーク4に接続される。なお、車内にアクセスポイントとして動作するモバイルルータや携帯端末装置がある場合には、無線LAN処理部12によってネットワーク4への接続を行うようにしてもよい。
【0018】
制御部19は、車載機器1の全体を制御するためのものであり、ROMやRAMなどに格納された所定のプログラムをCPUで実行することにより実現される。この制御部19は、再生停止通知部19A、再生要求部19B、遅延時間設定部19C、ネットワーク遅延測定部19D、バッファ19E、コンテンツ再生部19Fを含んで構成されている。
【0019】
バッファ19Eは、受信したコンテンツ情報を一時的に格納する。この格納されたコンテンツ情報は先入先出方式で読み出される。このバッファ19Eは、設定される遅延時間に対応する容量が確保されるものとする。
【0020】
コンテンツ再生部19Fは、バッファ19Eに一時的に格納されたコンテンツ情報を読み出して再生に必要な処理を行い、インターネットラジオに対応するオーディオデータを出力する。
【0021】
再生停止通知部19Aは、車載機器1におけるコンテンツ再生を停止(中断)する際にその旨を示す再生停止通知を遅延制御サーバ200に向けて送信する。
【0022】
再生要求部19Bは、他の機器(携帯端末装置2等)においてコンテンツ再生が停止された後に車載機器1においてコンテンツ再生を再開する場合に再生要求を遅延制御サーバ200に向けて送信する。
【0023】
遅延時間設定部19Cは、他の機器においてコンテンツ再生が停止された後に車載機器1においてコンテンツ再生を再開する場合であって、コンテンツ再生をシームレスで継続するために必要な遅延時間の設定(バッファ19Eの容量設定)を行う。遅延時間設定部19Cおよび後述する遅延時間設定部29C、39Cが遅延時間設定手段に対応する。
【0024】
ネットワーク遅延測定部19Dは、車載機器1と遅延制御サーバ200との間で生じるネットワーク遅延を測定する。例えば、pingコマンドを発行してから応答を受信するまでの時間を遅延時間として測定する場合などが考えられる。
【0025】
図3は、携帯端末装置2の構成を示す図である。図3に示すように、携帯端末装置2は、GNSS受信機20、電話処理部21、無線LAN処理部22、表示部25、オーディオ入出力部26、マイクロホン26A、スピーカ26B、操作部27、制御部29を含んで構成されている。移動中にコンテンツ情報を受信して再生するために、電話処理部21によってネットワーク4に接続される。なお、無線LAN環境下で使用する場合には、無線LAN処理部22によってネットワーク4への接続を行うようにしてもよい。
【0026】
制御部29は、携帯端末装置2の全体を制御するためのものであり、ROMやRAMなどに格納された所定のプログラムをCPUで実行することにより実現される。この制御部29は、再生停止通知部29A、再生要求部29B、遅延時間設定部29C、ネットワーク遅延測定部29D、バッファ29E、コンテンツ再生部29Fを含んで構成されている。これらの基本動作は、車載機器1の制御部19に含まれる対応構成(対応する構成には同じ名称が用いられている)と同じであって、詳細な説明は省略する。
【0027】
図4は、家庭用機器3の構成を示す図である。図4に示すように、家庭用機器3は、無線LAN処理部32、表示部35、オーディオ入出力部36、マイクロホン36A、スピーカ36B、操作部37、制御部39を含んで構成されている。自宅等でコンテンツ情報を受信して再生するために無線LAN処理部32が備わっているが、有線LAN等の他の通信手段によってネットワーク4への接続を行うようにしてもよい。
【0028】
制御部39は、家庭用機器3の全体を制御するためのものであり、ROMやRAMなどに格納された所定のプログラムをCPUで実行することにより実現される。この制御部39は、再生停止通知部39A、再生要求部39B、遅延時間設定部39C、ネットワーク遅延測定部39D、バッファ39E、コンテンツ再生部39Fを含んで構成されている。これらの基本動作は、車載機器1の制御部19や携帯端末装置2の制御部29に含まれる対応構成(対応する構成には同じ名称が用いられている)と同じであって、詳細な説明は省略する。
【0029】
図5は、遅延制御サーバ200の構成を示す図である。図5に示すように、遅延制御サーバ200は、通信装置210、制御部220を備えている。
【0030】
通信装置210は、ネットワーク4との間で通信回線に適した信号への変調処理やこの信号に対する復調処理を行って、ネットワーク4を介して車載機器1や携帯端末装置2等との間で各種情報を送受信する。
【0031】
制御部220は、遅延制御サーバ200の全体を制御するためのものであり、RAMやROMに格納されたプログラムやその他のメモリに格納されたプログラムをCPUによって実行することにより、各機器間でコンテンツのシームレス再生を行うために必要な処理を行う。このために、制御部220は、時間差計測部222と時間差通知部224を有している。時間差計測部222が時間差計測手段に対応する。
【0032】
時間差計測部222は、コンテンツ再生を停止した機器から再生停止通知が送られてきてから別の機器から再生要求が送られてくるまでの時間差を計測する。時間差通知部224は、この計測した時間差を再生要求の送信元の機器に向けて送信する。
【0033】
本実施形態のコンテンツ受信システムはこのような構成を有しており、次に、このシステムに含まれる複数の機器間でコンテンツのシームレス再生を行う動作について説明する。
【0034】
図6は、車載機器1を用いたコンテンツの再生を停止した後に携帯端末装置2で停止した箇所から続きのコンテンツ再生を行う動作の説明図である。例えば、利用者は、自宅に戻るまでの車中では車載機器1を用いてコンテンツ再生を行い、車両を降りてから自宅に入るまでは携帯端末装置2を用いてコンテンツ再生を行い、自宅に帰った後は家庭用機器3を用いてコンテンツ再生を行うものとする。
【0035】
車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3のそれぞれは、コンテンツ配信サーバ100から配信されるコンテンツ情報を並行して受信しており、車載機器1を用いてコンテンツ再生を行っている時点では、遅延時間がtb1に設定されている。
【0036】
車載機器1を用いてコンテンツの再生中に、利用者によって操作部17が操作されてコンテンツ再生の停止が指示されると、再生停止通知部19Aは、遅延制御サーバ200に向けて再生停止通知を送信する。
【0037】
遅延制御サーバ200の時間差計測部222は、再生停止通知を受信すると、次に再生要求が送られてくるまでの時間差を計測する。この再生要求の送信元は、車載装置1、携帯端末装置2、家庭用機器3のいずれであってもよいが、図6に示す例では、携帯端末装置2から再生要求が送られてきて、それまでの時間差tc1が計測される。
【0038】
次に、時間差通知部224は、計測された時間差tc1を再生要求の送信元である携帯端末装置2に通知する。この通知を受け取ると、携帯端末装置2の遅延時間設定部29Cは、それまで設定されていた遅延時間tb1に時間差tc1を足したtb2(=tb1+tc1)を新たな遅延時間に設定する。それ以後、コンテンツ再生部29Fによるコンテンツ再生が行われる。
【0039】
このように、車載機器1によるコンテンツ再生を停止してから携帯端末装置2によるコンテンツ再生を再開するまでの時間差tc1に対応して遅延時間が長くなるため、携帯端末装置2においてコンテンツ再生が開始されるタイミングが車載装置1のコンテンツ再生よりも時間差tc1分だけ遅くなる。このため、携帯端末装置2では、時間差tc1分だけ時間をさかのぼってコンテンツ再生を行うことができ、コンテンツのシームレス再生が可能となる。
【0040】
図7は、携帯端末装置2を用いたコンテンツの再生を停止した後に家庭用機器3で停止した箇所から続きのコンテンツ再生を行う動作の説明図である。携帯端末装置2を用いてコンテンツ再生を行っている時点では、遅延時間がtb2に設定されている。
【0041】
携帯端末装置2を用いてコンテンツの再生中に、利用者によって操作部27が操作されてコンテンツ再生の停止が指示されると、再生停止通知部29Aは、遅延制御サーバ200に向けて再生停止通知を送信する。
【0042】
遅延制御サーバ200の時間差計測部222は、再生停止通知を受信すると、次に再生要求が送られてくるまでの時間差を計測する。この再生要求の送信元は、車載装置1、携帯端末装置2、家庭用機器3のいずれであってもよいが、図7に示す例では、家庭用機器3から再生要求が送られてきて、それまでの時間差tc2が計測される。
【0043】
次に、時間差通知部224は、計測された時間差tc2を再生要求の送信元である家庭用機器3に通知する。この通知を受け取ると、家庭用機器3の遅延時間設定部39Cは、それまで設定されていた遅延時間tb2に時間差tc2を足したtb3(=tb2+tc2)を新たな遅延時間に設定する。それ以後、コンテンツ再生部39Fによるコンテンツ再生が行われる。
【0044】
携帯端末装置2によるコンテンツ再生を停止してから家庭用機器3によるコンテンツ再生を再開するまでの時間差tc2に対応して遅延時間が長くなるため、家庭用機器3においてコンテンツ再生が開始されるタイミングが携帯端末装置2のコンテンツ再生よりも時間差tc2分だけ遅くなる。このため、家庭用機器3では、時間差tc2分だけ時間をさかのぼってコンテンツ再生を行うことができ、コンテンツのシームレス再生が可能となる。
【0045】
このように、本実施形態のコンテンツ受信システムでは、2つの機器における再生タイミングのずれに対応させてコンテンツ情報のバッファリング時間を調整することにより、一方の機器による再生出力を停止した箇所から他方の機器による再生出力を再開することができ、コンテンツを継続再生することが可能となる。
【0046】
また、複数の機器(車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3)は、同一タイミングで配信されるコンテンツ情報を並行して受信している。コンテンツが同一タイミングで配信されているため、再生を中断して再開するまでの時間だけ再開時の遅延時間を加算することで、同一箇所から再生を継続することが可能となる。
【0047】
また、遅延制御サーバ200は、車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3とネットワークを介して接続されている。これにより、車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3と連係してコンテンツ再生・中断の時間差を計測したり、コンテンツ再生時に遅延時間を設定することが可能となる。
【0048】
また、コンテンツ情報は、ネットワーク4経由でコンテンツ配信サーバ100から配信されている。コンテンツ配信サーバ100から配信されるコンテンツ情報は、一時的にバッファに蓄積されるため、このバッファの容量を可変することで再生出力までの遅延時間を変更することができ、容易に継続再生を行うことが可能となる。
【0049】
ところで、車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3と遅延制御サーバ200との間で各種情報を送受信しようとすると、実際にはネットワーク遅延が発生する。このネットワーク遅延を考慮することにより、コンテンツの再生を停止した箇所とコンテンツの再生を再開する箇所をさらに正確に合わせることが可能となる。
【0050】
図8は、ネットワーク遅延を考慮する遅延制御サーバの変形例を示す図である。図8に示すように、遅延制御サーバ200Aは、通信装置210、制御部220Aを備えている。この制御部220Aは、遅延制御サーバ200Aの全体を制御するためのものであり、RAMやROMに格納されたプログラムやその他のメモリに格納されたプログラムをCPUによって実行することにより、各機器間でコンテンツのシームレス再生を行うために必要な処理を行う。
【0051】
このために、制御部220Aは、時間差計測部222、ネットワーク遅延取得部223、時間差・ネットワーク遅延通知部224Aを有している。ネットワーク遅延取得部223がネットワーク遅延取得手段に対応する。
【0052】
時間差計測部222は、図5に示した時間差計測部222と同じであって、コンテンツ再生を停止した機器から再生停止通知が送られてきてから別の機器から再生要求が送られてくるまでの時間差tc1を計測する。ネットワーク遅延取得部223は、再生停止通知の送信元となる機器と遅延制御サーバ200との間のネットワーク遅延(ネットワーク遅延の計測自体は各機器に含まれるネットワーク遅延測定部19D等によって行われる)を取得する。時間差・ネットワーク遅延通知部224Aは、計測した時間差と取得したネットワーク遅延とを再生要求の送信元の機器に向けて送信する。
【0053】
図9は、車載機器1を用いたコンテンツの再生を停止した後に携帯端末装置2で停止した箇所から続きのコンテンツ再生を行う動作であってネットワーク遅延を考慮した変形例の説明図である。
【0054】
車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3のそれぞれは、コンテンツ配信サーバ100から配信されるコンテンツ情報を並行して受信しており、車載機器1を用いてコンテンツ再生を行っている時点では、遅延時間がtb1に設定されている。この点は、図6に示した例と同じである。
【0055】
車載機器1を用いてコンテンツの再生中に、利用者によって操作部17が操作されてコンテンツ再生の停止が指示されると、再生停止通知部19Aは、遅延制御サーバ200に向けて再生停止通知を送信する。
【0056】
遅延制御サーバ200の時間差計測部222は、再生停止通知を受信すると、次に再生要求が送られてくるまでの時間差を計測する。この再生要求の送信元は、車載装置1、携帯端末装置2、家庭用機器3のいずれであってもよいが、図9に示す例では、携帯端末装置2から再生要求が送られてきて、それまでの時間差tc1が計測される。
【0057】
この時間差の計測動作と並行して、車載機器1のネットワーク遅延測定部19Dは、遅延制御サーバ200との間のネットワーク遅延tn1を計測する。また、遅延制御サーバ200のネットワーク遅延取得部223は、この計測によって得られたネットワーク遅延tn1を取得する。
【0058】
また、再生要求の送信元としての携帯端末装置2のネットワーク遅延測定部29Dは、遅延制御サーバ200との間のネットワーク遅延tn2を計測する。
【0059】
次に、時間差・ネットワーク遅延通知部224Aは、時間差tc1とネットワーク遅延tn1を再生要求の送信元である携帯端末装置2に通知する。この通知を受け取ると、携帯端末装置2の遅延時間設定部29Cは、それまで設定されていた遅延時間tb1と、時間差tc1、ネットワーク遅延tn1、tn2に基づいて新たな遅延時間tb2を以下のように設定する。
【0060】
tb2=tb1+tc1+(tn1-tn2)
それ以後、コンテンツ再生部29Fによるコンテンツ再生が行われる。
【0061】
このように、車載機器1と携帯端末装置2のそれぞれにおいてネットワークを介した通信時間に差異がある場合に、この差異による影響を排除することができ、正確な継続再生を行うことが可能となる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、車載機器1、携帯端末装置2、家庭用機器3の間でコンテンツのシームレス再生を行う場合について説明したが、これらの機器の組み合わせは任意であり、例えば、2台の車載機器間でコンテンツのシームレス再生を行うようにしてもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、インターネットラジオのコンテンツ情報を配信する場合を例に挙げたが、オーディオのコンテンツだけでなく、ビデオのコンテンツについても本発明を適用することができる。
【0064】
また、上述した実施形態では、コンテンツ配信サーバ100によって配信されるコンテンツのシームレス再生について説明したが、バッファリングすることで遅延時間を可変設定することができるものであれば、どのような配信コンテンツについても本発明を適用することができる。例えば、アナログのラジオ放送を受信して所定時間バッファリングする場合には、このバッファリングによる遅延時間を調整してラジオ放送のシームレス受信を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
上述したように、本発明によれば、2つの受信手段における再生タイミングのずれに対応させてコンテンツ情報のバッファリング時間を調整することにより、一方の受信手段による再生出力を停止した箇所から他方の受信手段による再生出力を再開することができ、コンテンツを継続再生することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
4 ネットワーク
1 車載機器
2 携帯端末装置
3 家庭用機器
19A、29A、39A 再生停止通知部
19B、29B、39B 再生要求部
19C、29C、39C 遅延時間設定部
19D、29D、39D ネットワーク遅延測定部
19E、29E、39E バッファ
19F、29F、39F コンテンツ再生部
100 コンテンツ配信サーバ
200 遅延制御サーバ
222 時間差計測部
224 時間差通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9