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特許7114198ジヒドロカルコン類からなるアルコール感付与剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ジヒドロカルコン類からなるアルコール感付与剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/56 20060101AFI20220801BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220801BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20220801BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20220801BHJP
【FI】
A23L2/56
A23L2/00 B
A23L27/20 F
C12G3/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019195144
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021065196
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小山 彩香
(72)【発明者】
【氏名】吉本 忠司
(72)【発明者】
【氏名】澤村 隆治
(72)【発明者】
【氏名】力武 茉莉花
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-519244(JP,A)
【文献】特表2019-514346(JP,A)
【文献】特表2019-502390(JP,A)
【文献】特開2014-103919(JP,A)
【文献】特開2017-212932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0030721(US,A1)
【文献】特開2013-172717(JP,A)
【文献】特開2003-321351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C12G
C12H
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オヘスペリジンジヒドロカルコンおよび/またはナリンジンジヒドロカルコンからなるアルコール感付与剤。
【請求項2】
オヘスペリジンジヒドロカルコンおよび/またはナリンジンジヒドロカルコンを含有するアルコール感付与組成物。
【請求項3】
オヘスペリジンジヒドロカルコンおよび/またはナリンジンジヒドロカルコンを飲料に添加する飲料のアルコール感付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール感付与剤およびこれを飲料に添加するアルコール感付与方法に関し、詳しくは、ジヒドロカルコン類からなるアルコール感付与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料は代表的な嗜好品として多くの人に愛飲されている。しかしながら、自動車運転などアルコール摂取ができない場面も多く、道路交通法の規定により、ドライバーおよびその同乗者も外出時の飲酒、特に郊外型飲食店での飲酒を控えるようになっている。また、車の運転との関係だけではなく、近年の健康志向の中、アルコールの摂取量を能動的に自己管理する人も増え、ノンアルコールビール、ノンアルコールワイン、ノンアルコールスパークリングワイン、ノンアルコールカクテルおよびノンアルコールチュウハイ等が注目を集めている。
【0003】
このような状況により、低アルコール飲料またはアルコールが添加されていない清涼飲料でありながら、アルコール感のある飲料への需要が一段と高まっており、こうしたアルコール感が付与された飲料の市場は年々と増大し、ひとつの大きなマーケットを形成している。
【0004】
上記の低アルコール飲料またはノンアルコール飲料は、主にアルコールの生成を抑制する方法で製造するため、アルコール飲料独特のアルコール感が失われている。よって、エタノール以外の素材によりアルコール感を付与する技術の開発が強く求められている。
【0005】
このような方法としては、例えば、0.01質量%以上10質量%以下のアルコールと、有機酸を含む果汁および/または炭水化物とを含む飲食品中に、ポリ-γ-グルタミン酸またはその塩を0.001質量%以上0.3質量%以下となるように添加するアルコール感増強剤(特許文献1)、アルコキシ化フラボンの使用によりアルコール印象感覚を増強する方法(特許文献2)、非アルコール飲料中の酸味付与物質濃度が100~5000ppmであり、飲料中の苦味付与物質濃度が0.1~3.5ppmである、アルコール感が付与された飲料(特許文献3)、アセトアルデヒド濃度が1~100ppmであり、かつ、炭酸ガス圧が0.1~0.35MPaである、アルコール飲料の飲用感が付与された炭酸ガス含有非アルコール飲料(特許文献4)、飲料中のカプサイシン類濃度が0.002~0.056ppmであり、かつ、飲料中の炭素数3~5の脂肪族1価アルコール濃度が12.5~400ppmである、アルコール感が付与された非アルコール飲料(特許文献5)、飲料中の炭素数4または5の脂肪族アルコール濃度が1~100mg/lである炭素数4または5の脂肪族アルコールと収斂味付与物質とを含んでなるアルコール感が付与された非アルコール飲料(特許文献6)、飲料中のシトロネロール濃度が0.2ppm以上10ppm未満である、アルコール感が付与されたエタノール濃度が1.0v/v%未満である非アルコール飲料(特許文献7)、辛味付与成分と苦味付与成分とを含んでなる、アルコール感が付与された非アルコール飲料(特許文献8)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、特にノンアルコール飲料は、アルコールを含有していないため、アルコール飲料に比べてアルコール感は物足りない傾向にあり、上記の方法ではこれらの課題に対して満足する結果が得られなかった。また、エタノールを除く低級脂肪族アルコールを添加することによりこれらの課題を解決している方法もあるが、アルコール類以外の物質を添加することにより、非アルコール飲料にアルコール感を付与する方法の開発が望まれている。
【0007】
ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびナリンジンジヒドロカルコンは、甘味を付与する機能があることが知られ、また、我が国では、着香の用途としての食品添加物として認められている。しかしながら、低アルコール飲料またはノンアルコール飲料におけるアルコール感の不足を補い、アルコール飲料と遜色のないアルコール感をもたらすことは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-268400号公報
【文献】特開2009-148268号公報
【文献】特開2011-254731号公報
【文献】特開2012-16307号公報
【文献】特開2012-16308号公報
【文献】特開2012-60975号公報
【文献】特開2012-249560号公報
【文献】特開2013-128451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、低アルコール飲料またはノンアルコール飲料におけるアルコール感の不足を補い、アルコール飲料と遜色のないアルコール感をもたらす、アルコール感付与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ジヒドロカルコン類を低アルコール飲料またはノンアルコール飲料に添加することにより、好適なアルコール感を付与することを見いだし、本研究を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明は以下のものを提供する。
(1)ジヒドロカルコン類から選択される1種または2種以上からなるアルコール感付与剤。
(2)ジヒドロカルコン類が、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよび/またはナリンジンジヒドロカルコンである(1)に記載のアルコール感付与剤。
(3)ジヒドロカルコン類から選択される1種または2種以上を含有するアルコール感付与組成物。
(4)ジヒドロカルコン類が、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよび/またはナリンジンジヒドロカルコンである(3)に記載のアルコール感付与組成物。
(5)ジヒドロカルコン類から選択される1種または2種以上を飲料に添加する飲料のアルコール感付与方法。
(6)ジヒドロカルコン類が、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよび/またはナリンジンジヒドロカルコンである(5)に記載のアルコール感付与方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低アルコール飲料またはノンアルコール飲料にアルコール感を付与する付与剤、アルコール感を付与する組成物およびアルコール感付与方法が提供される。本発明でアルコール感を付与した飲料は、好適なアルコール感を付与する効果が得られ、アルコール感のある飲料への需要に応えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用される、ジヒドロカルコン類は、フラボノイド配糖体の一種であり、飲料にアルコール感を付与するものであれば特に限定されない。具体例としては、プルニンジヒドロカルコン、ヘスペレチン-7-グルコシド-ジヒドロカルコン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ナリンジンジヒドロカルコン、ヘスペレチンジヒドロカルコングルコシド、ヘスペレチンジヒドロカルコンキシロシド、ヘスペレチンジヒドロカルコンガラクトシド、ナリンゲニンジヒドロカルコンラムノシルガラクトシドなどがある。特にネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびナリンジンジヒドロカルコンが好適である。
【0015】
本発明で使用される、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびナリンジンジヒドロカルコンは、甘味増強剤として既知の化合物であるが、アルコール感付与剤としてはこれまで報告がなかった。
【0016】
本発明で使用される、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびナリンジンジヒドロカルコンは、通常はオフホワイトのパウダー様で市場に流通されており、市販のものを購入することにより、アルコール感付与剤として使用することができる。
【0017】
本発明で使用される、ジヒドロカルコン類は、低アルコール飲料またはノンアルコール飲料にアルコール感を付与するとともに、ボディ感やのどごし感を増強し、後切れを改善する効果を有する。
【0018】
本発明においてアルコ-ル感とは、エタノールを想起させる感覚であって、主としてアルコ-ル飲料を飲んだ時に強く感じる口から鼻に抜ける揮発感が得られることにより、アルコ-ル飲料を飲んだように感じられる状態をいう。
【0019】
本発明においてボディ感とは、コク味、濃厚さ、インパクトの強さなどを感じさせるような状況をいう。
【0020】
本発明においてのどごし感とは、嚥下された飲料が喉を通過する際に感じられる香味のボリューム感を意味しており、喉で感じられる筋肉の動きや飲み込みの抵抗感等を含む複合的な感覚をいう。
【0021】
本発明において後切れの改善とは、飲料を飲んだ後に口に残る後味について改善されることをいい、特に飲料を飲んだ後の後残りが少なく、すっきりとした後味となったことをいう。
【0022】
ノンアルコール飲料をはじめとする飲料にジヒドロカルコン類を添加する場合、ジヒドロカルコン類は単独で使用しても良く、また、複数のジヒドロカルコン類を組み合わせで使用しても良い。飲料にジヒドロカルコン類を添加する濃度は、飲料に要求されるアルコール感の強度によって異なり特に限定されないが、一般的には、最終製品である飲料に対して、好ましい濃度範囲の例として、香料組成物の全体質量に対して、下限値としては、10ppb、20ppb、50ppb、100ppb、200ppbが例示でき、上限値としては、100ppm、50ppm、20ppm、10ppm、5ppmが例示でき、これら下限及び上限値の任意の組み合わせを挙げることができる。特に、10ppb~100ppm、(本明細書においては「~」は上限値および下限値を含む範囲を意味する)、好ましくは20ppb~50ppm、さらに好ましくは50ppb~20ppmの濃度を添加することにより、アルコール感が付与される。
【0023】
該ジヒドロカルコン類に、さらに飲料にウンデカトリエン類、ウンデカテトラエン類、温感物質および冷感物質から選択される1種または2種以上の化合物を添加することにより、アルコール感がさらに増強される。飲食品に該化合物を添加する濃度は、各化合物群によって異なり、具体的にはウンデカトリエン類またはウンデカテトラエン類は、0.01ppt~1ppb、好ましくは0.1ppt~100ppt、温感物質は10ppb~100ppm、好ましくは50ppb~50ppm、冷感物質は10ppb~50ppm、好ましくは50ppb~20ppmの濃度を提示することができる。
【0024】
前記のウンデカトリエン類、ウンデカテトラエン類とは、具体的に6,8,10-ウンデカトリエン-2-オン、6,8,10-ウンデカトリエン-3-オン、6,8,10-ウンデカトリエン-4-オン、6,8,10-ウンデカトリエン-3-オール、6,8,10-ウンデカトリエン-4-オール、1,3,5-ウンデカトリエンおよび1,3,5,7-ウンデカテトラエンを挙げることができる。
【0025】
前記の温感物質とは、例えば、カプシカム抽出物、ペッパー抽出物、ジンジャー抽出物、サンショウ抽出物、ジャンブーオレオレジン、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリルブチルエーテル、ノナン酸バニリルアミド、ピペリン、サンショオール、ヒドロキシサンショオール、サンショアミド、スピラントール、ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロンなどを挙げることができる。
【0026】
前記の冷感物質とは、例えば、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ハッカオイル、ユーカリプタスオイル、メントール、メンチルアセテート、メンチルラクテート、メントン、イソメントン、メンチル 3-ヒドロキシブチレート、モノメンチルサクシネート、プレゴール、イソプレゴール、カルボン、シネオール、カンファー、オイゲノール、ボルネオール、エチル 3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート、N-(4-メトキシフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド、3-(l-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール、パラメンタン-3,8-ジオール、1-メンチル-3-ヒドロキシブチレートなどを挙げることができる。
【0027】
本発明において、ノンアルコール飲料とは、酒税法上アルコール飲料とはみなされない、アルコール分が1%未満の飲料を指す。特にこの中でアルコール含量が0.00v/v%である飲料を完全ノンアルコール飲料と表現することができる。また、ノンアルコール飲料のアルコール含量とは、エタノールの含量を意味する。
【0028】
本発明において、低アルコール飲料とは、アルコール分が10%未満のものを挙げることができ、特にアルコール分が2~5%の範囲のものを指す。
【0029】
本発明による飲料は、ジヒドロカルコン類を添加することによりアルコール感が付与されるような飲料であればよく、例えば、ノンアルコール飲料としては、炭酸飲料、果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、果汁含有飲料、茶飲料、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、コーヒー、ココア、栄養ドリンク、スポーツ飲料、ミネラルウォーター、麦芽飲料等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。さらに具体的には、原料として、麦芽、麦芽エキス、コーン等の穀類、エンドウ豆および/または大豆等の豆類と、ホップのうち少なくとも1種以上を含む態様にて製造するビールテイスト飲料、果汁および/または果汁フレーバー含有ノンアルコール飲料などが好ましい例として挙げられる。
【0030】
また、アルコール飲料としては、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる第3のビールを例示することができる。
【0031】
本発明のアルコール感付与剤は飲料だけでなく、食品に添加することにより、食品にアルコール感を付与することができる。本発明のアルコール感付与剤を添加することのできる飲食品は、食品であれば特に限定はなく、例えば、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓、キャンディー、ゼリー、ムース、グミ、錠菓、チュイーンガム、チョコレートなどを例示することができる。
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0033】
実施例1(ビールテイスト飲料によるアルコール感の付与)
市販されているビールテイスト飲料(アルコール含量が0.00v/v%)そのもの(無添加品)および、前記ビールテイスト飲料にネオヘスペリジンジヒドロカルコンまたはナリンジンジヒドロカルコンを、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppmおよび500ppm添加したものを調製した。無添加品のビールテイスト飲料を比較品1とし、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンを添加したビールテイスト飲料を本発明品1~7、ナリンジンジヒドロカルコンを添加したビールテイスト飲料を本発明品8~14とした。
【0034】
これらの飲料のアルコール感について、熟練したパネリスト20名により官能評価を行った。評価の基準は、アルコール感の強度について行い、比較品1を変化なし(4点)とする7段階評価を行った。評価点の平均について表1および表2に示した。
(採点基準)
かなり強く感じる :7点
強く感じる :6点
やや強く感じる :5点
変化なし :4点
やや弱く感じる :3点
弱く感じる :2点
かなり弱く感じる :1点
また、表1および表2に示した風味とは、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンまたはナリンジンジヒドロカルコン由来の風味を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示したとおり、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンをビールテイスト飲料に1ppb以上添加することにより、ビールテイスト飲料のアルコール感を付与する効果があることが明らかとなった。また、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンを500ppm添加する場合は、アルコール感付与効果は顕著に見られるが、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン由来の味が付与されてしまう。
【0037】
【表2】
【0038】
表1に示したとおり、ナリンジンジヒドロカルコンをビールテイスト飲料に1ppb以上添加することにより、ビールテイスト飲料のアルコール感を付与する効果があることが明らかとなった。また、ナリンジンジヒドロカルコンを500ppm添加する場合は、アルコール感付与効果は顕著に見られるが、ナリンジンジヒドロカルコン由来の味が付与されてしまう。
【0039】
参考例1(カプシカム抽出物の調製)
市販のタカノツメ乾燥物100gをミキサーにて粉砕し、60%(v/v)エタノール水溶液1000gを加え、65℃にて3時間攪拌した後、20℃に冷却し、遠心分離した後、ケイソウ土を濾過助剤として吸引濾過し、カプシカム抽出物865gを得た。
【0040】
実施例2(ナリンジンジヒドロカルコンと温感物質または冷感物質を添加したときのアルコール感の付与効果)
実施例1と同様の市販のビールテイスト飲料に、無添加品(比較品1)、ナリンジンジヒドロカルコン5ppm添加品(本発明品15)、ナリンジンジヒドロカルコンおよびカプシカム抽出物の当量の混合物をビールテイスト飲料中に10ppmとなるように添加した添加品(本発明品16)、メントール1質量部に対してナリンジンジヒドロカルコン25質量部の混合物をビールテイスト飲料中に5ppmとなるように添加した添加品(本発明品17)を調製した。
【0041】
これらの飲料のアルコール感について、熟練したパネリスト20名により官能評価を行った。評価の基準は、アルコール感の強度について行い、前記比較品1を変化なし(4点)とする7段階評価を行い、採点基準は実施例1と同様とした。評価点の平均について表3に示した。
【0042】
【表3】
【0043】
表3の結果より、ナリンジンジヒドロカルコン単品よりも、さらに温感物質としてカプシカム抽出物または冷感物質としてメントールの混合物を添加することにより、アルコール感が増強されることが示された。
【0044】
実施例3(ナリンジンジヒドロカルコンとウンデカトリエン類を添加したときのアルコール感の付与効果)
実施例1と同様の市販のビールテイスト飲料に、無添加品(比較品1)、ナリンジンジヒドロカルコン5ppm添加品(本発明品15)、6,8,10-ウンデカトリエン-3-オン1質量部に対して、ナリンジンジヒドロカルコン1000質量部の混合物をビールテイスト飲料中に5ppmとなるように添加した添加品(本発明品18)、1,3,5-ウンデカトリエン1質量部に対してナリンジンジヒドロカルコン100質量部の混合物をビールテイスト飲料中に5ppmとなるように添加した添加品(本発明品19)を調製した。
【0045】
これらの飲料のアルコール感について、熟練したパネリスト20名により官能評価を行った。評価の基準は、アルコール感の強度について行い、前記比較品1を変化なし(4点)とする7段階評価を行い、採点基準は実施例1と同様とした。評価点の平均について表4に示した。
【0046】
【表4】
【0047】
表4の結果より、ナリンジンジヒドロカルコン単品よりも、さらにウンデカトリエン類として6,8,10-ウンデカトリエン-3-オンまたは1,3,5-ウンデカトリエンの混合物を添加することにより、アルコール感が増強されることが示された。
【0048】
実施例4(ビールテイスト飲料のビール風味向上効果)
実施例1と同様の市販のビールテイスト飲料に、無添加品、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ナリンジンジヒドロカルコンをそれぞれ10ppm添加したものを調製した。無添加品のビールテイスト飲料を比較品1とし、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ナリンジンジヒドロカルコンを添加したビールテイスト飲料を本発明品5および本発明品12とした。
【0049】
これらの飲料のビール風味向上効果について、熟練したパネリスト20名により官能評価を行った。評価の基準は、ボディ感、のどごし感、後切れ改善効果について行い、比較品4を変化なし(4点)とする7段階評価を行った。ボディ感、のどごし感の7段階採点基準については、実施例1の採点基準に従った。また、後切れ改善効果については比較品4を変化なし(4点)とする以下の基準に従って実施した。それぞれの評価点の平均について表5に示した。
(採点基準:後切れ改善効果)
後切れ感がかなり強い :7点
後切れ感が強い :6点
後切れ感が改善する :5点
変化なし :4点
後切れ感がやや弱い :3点
後切れ感が弱い :2点
後切れ感がかなり弱い :1点
【0050】
【表5】
【0051】
表5の結果により、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびナリンジンジヒドロカルコンをビールテイスト飲料に添加することにより、無添加のビールテイスト飲料と比較して、ボディ感、のどごし感が増強され、ビールテイストの後切れ感が改善されたことが示された。
【0052】
参考例2(レモン風味炭酸飲料原液の調製)
果糖ぶどう糖液糖(Bx75°)13Kg、クエン酸(結晶)0.14Kg、クエン酸三ナトリウム0.04Kg、レモンフレーバー0.3Kgにイオン交換水を加えて溶解し全体を100Lとした(以下レモン風味炭酸飲料原液とする)。
【0053】
実施例5(レモン風味炭酸飲料のアルコール感付与)
レモン風味炭酸飲料原液そのもの(無添加品)および、レモン風味炭酸飲料原液にネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ナリンジンジヒドロカルコンをそれぞれ10ppm添加したものを調製した。さらに、それぞれの調製液に炭酸ガスを注入し、缶内ガス圧力を2.0kg/cmに設定し、缶シーマ(巻締め機)で密封し温水中で缶中心部温度が65℃に達した後に、10分間65℃で維持し殺菌後、冷水で冷却しレモン風味炭酸飲料を製造した。無添加品のレモン風味炭酸飲料を比較品2とし、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびナリンジンジヒドロカルコンを添加したレモン風味炭酸飲料を本発明品20~21とした。
【0054】
これらの飲料のアルコール感について、熟練したパネリスト20名により官能評価を行った。評価の基準は、アルコール感の強度について行い、比較品2を変化なし(4点)とする7段階評価を行い、採点基準は実施例1と同様とした。評価点の平均について表6に示した。
【0055】
【表6】
【0056】
表6の結果により、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびナリンジンジヒドロカルコンをレモン風味炭酸飲料に添加することにより、無添加のレモン風味炭酸飲料と比較して、レモン風味炭酸飲料のアルコール感が付与されることが示された。
【0057】
実施例6(低アルコールチューハイ飲料のアルコール感付与)
市販されている低アルコールチューハイ飲料(梅酒ソーダタイプ:アルコール含量が3.0v/v%)そのもの(無添加品)および、前記低アルコールチューハイ飲料にネオヘスペリジンジヒドロカルコンまたはナリンジンジヒドロカルコンを1ppm添加したものを調製した。無添加品の低アルコールチューハイ飲料を比較品3とし、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびナリンジンジヒドロカルコンを添加した低アルコールチューハイ飲料を本発明品22~23とした。
【0058】
これらの飲料のアルコール感について、熟練したパネリスト20名により官能評価を行った。評価の基準は、アルコール感の強度について行い、比較品3を変化なし(4点)とする7段階評価を行い、採点基準は実施例1と同様とした。評価点の平均について表7に示した。
【0059】
【表7】
【0060】
表7の結果により、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンおよびナリンジンジヒドロカルコンを低アルコールチューハイ飲料に添加することにより、無添加の低アルコールチューハイ飲料と比較して、低アルコールチューハイ飲料のアルコール感が増強することが示された。