(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】NO酸化用触媒材料
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20220801BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220801BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20220801BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220801BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 223
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/035 A
F01N3/035 E
F01N3/08 B
F01N3/10 A
(21)【出願番号】P 2016501211
(86)(22)【出願日】2014-03-11
(86)【国際出願番号】 US2014023353
(87)【国際公開番号】W WO2014164732
(87)【国際公開日】2014-10-09
【審査請求日】2017-03-10
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-06
(32)【優先日】2014-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ホーク,ジェフリー,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ガーラッハ,オルガ
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】三崎 仁
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-155204(JP,A)
【文献】特開2002-153733(JP,A)
【文献】特開2009-279577(JP,A)
【文献】特開昭49-53586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0305612(US,A1)
【文献】特表2013-528119(JP,A)
【文献】国際公開第2011/154913(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/172128(WO,A1)
【文献】特開2006-068722(JP,A)
【文献】特開2004-188388(JP,A)
【文献】V.Belliere-Baca et al.,Ceria Doped Ba-Alumina Oxides for Durable NOx-Storage Catalysts Efficient at Low Temperature,SAE Technical Papers ・ April 2007,2007年 4月19日,2007-01-1241
【文献】M.Kaneeda et al.,Improvement of thermal stability of NO oxidation Pt/Al2O3 catalyst by addition of Pd,Applied Catalysis B: Environmental,2009年 4月17日,Volume 90,Issues 3-4,p.564-569
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74, B01D53/86-53/90, B01D53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NO酸化用触媒材料であって、セリア-アルミナ支持体を、前記支持体上に白金及びパラジウムを分散させて含む触媒担体を含み、白金のパラジウムに対する重量比が少なくとも1:1であり、前記支持体中のセリアの量が2重量%~12重量%の範囲であり、
前記セリア-アルミナ支持体は、CeO
2-ZrO
2-Al
2O
3
又はCeO
2-MgO-Al
2O
3
からなる、
ことを特徴とする触媒材料。
【請求項2】
Ptの量が、1~6重量%の範囲である、請求項
1に記載の触媒材料。
【請求項3】
Pdの量が、0.1~6重量%の範囲である、請求項1
または2に記載の触媒材料。
【請求項4】
セリアの量が、
2~10重量%の範囲である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の触媒材料。
【請求項5】
白金のパラジウムに対する重量比が少なくとも2:1である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の触媒材料。
【請求項6】
請求項1に記載の触媒材料と、希薄燃焼エンジンと、前記希薄燃焼エンジンと流体連通する排気ガス導管と、を備える、希薄燃焼エンジン排気ガス処理システムであって、前記触媒材料が前記排気ガス導管中に存在する、システム。
【請求項7】
ディーゼル酸化触媒、及び/または触媒煤煙フィルタ(CSF)を更に備える、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の触媒材料の下流に配置される選択接触還元触媒を更に備える、請求項
6または
7に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1に記載の触媒材料が、前記ディーゼル酸化触媒上に配置される、請求項
7又は請求項
7を引用する請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
請求項1に記載の触媒材料が、前記ディーゼル酸化触媒及び前記CSFの、いずれかまたは両方の上に配置される、請求項
8~
10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
希薄燃焼エンジンからの排気ガスの処理方法であって、前記排気ガス流を、NO酸化用触媒材料と接触させることを含み、前記NO酸化用触媒材料が、セリア-アルミナ支持体を、前記支持体上に白金及びパラジウムを分散させて含む触媒担体を含み、白金のパラジウムに対する重量比が少なくとも1:1であり、前記支持体中のセリアの量が2重量%~12重量%の範囲であり、及び
前記セリア-アルミナ支持体は、CeO
2-ZrO
2-Al
2O
3
又はCeO
2-MgO-Al
2O
3
からなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
NO酸化用触媒材料であって、セリア-アルミナ支持体を、前記支持体上に白金及びパラジウムを分散させて含む触媒担体を含み、白金のパラジウムに対する重量比が2:1であり、前記支持体中のセリアの量が2重量%~6重量%の範囲であり、
前記セリア-アルミナ支持体は、CeO
2-ZrO
2-Al
2O
3
又はCeO
2-MgO-Al
2O
3
からなる、
ことを特徴とする触媒材料。
【請求項13】
白金のパラジウムに対する重量比が少なくとも4:1である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の触媒材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気流中のNOの酸化にとって有用である触媒材料に関する。具体的には、本触媒材料は、セリア-アルミナ支持体を、希薄燃焼エンジンの排気ガス中のNOを酸化するために有効である、白金及び任意にパラジウムを該支持体上に分散させて含む触媒担体を含む。
【背景技術】
【0002】
希薄燃焼エンジン、例えば、ディーゼルエンジン及び希薄燃焼ガソリンエンジンの運転は、燃料希薄条件下における高い空気/燃料比でのそれらの運転によって、優れた燃費をユーザに提供し、気相炭化水素及び一酸化炭素の比較的少ない排出物質を有する。ディーゼルエンジンはまた、特に、それらの耐久性、及び低速で高トルクを発生させるそれらの性能に関して、ガソリンエンジンを越える大きな利点を提供する。
【0003】
しかしながら、排出物質の観点からは、ディーゼルエンジンは、火花点火エンジンよりも、より深刻な問題を呈する。排出問題は、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、未燃炭化水素(HC)、及び一酸化炭素(CO)に関連する。NOxは、窒素酸化物の様々な化学種を説明するために使用される用語であり、中でも、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)が挙げられる。NO及びNO2は、日光及び炭化水素の存在下での一連の反応を通して、光化学スモッグの形成に関与すると考えられるため、懸念される。更に、NO2は、酸性雨の大きな原因物質であり、酸化剤としての高い潜在性を有し、強い肺刺激物である。粒子状物質(PM)はまた、呼吸器疾患と関連する。しかしながら、ディーゼルエンジンからの粒子状物質及び未燃炭化水素を低減するためにエンジン運転の修正が行われると、NO及びNO2の排出物質は増加する傾向にある。
【0004】
希薄燃焼エンジンからのNOxの効果的な低減は、高いNOx変換率が、燃料濃厚(すなわち、高還元剤)条件を典型的に必要とするため、達成が難しい。排気流のNOx成分の、無害な成分への変換は、燃料希薄条件下での運転のための特殊なNOx低減方策を、一般的に要する。
【0005】
耐火性金属酸化物支持体上に分散された貴金属を含む酸化触媒が、炭化水素及び一酸化炭素の両方のガス状汚染物質を、二酸化炭素及び水に変換するために、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理する際に使用される。典型的には、ディーゼル酸化触媒(DOC)は、セラミックまたは金属基材担体(例えば、フロースルーモノリス担体等)上に形成され、この上には1つ以上の触媒コーティング組成物が堆積される。ガス状のHC、CO、及び粒子状物質の可溶性有機成分(SOF)の、二酸化炭素及び水への変換に加えて、白金族金属を含有する酸化触媒(典型的には、白金族金属は耐火性酸化物支持体上に分散される)は、NOのNO2への酸化を促進する。
【0006】
高表面積耐火性金属酸化物は、多くの場合、触媒成分の多くのための支持体として採用される。例えば、酸化触媒と共に使用される、「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも呼ばれる高表面積アルミナ材料は、60m2/gを超える、及び多くの場合最大約200m2/g以上のBET表面積を、典型的に提示する。このような活性アルミナは通常、アルミナのガンマ及びデルタ相の混合物であるが、相当量のエータ、カッパ、及びシータアルミナ相もまた含んでよい。活性アルミナ以外の耐火性金属酸化物は、所与の触媒中の触媒成分の少なくとも一部のための支持体として活用され得る。例えば、バルクセリア、ジルコニア、アルファアルミナ、及び他の材料が、このような使用に関して公知である。これらの材料の多くは、活性アルミナよりも低いBET表面積を有するものの、この欠点は、結果として得られる触媒のより大きな耐久性、または支持体上に堆積される貴金属との有益な相互作用により相殺される傾向にある。
【0007】
内燃エンジンの排気ガスを処理するために使用される触媒は、エンジン運転の冷間始動の始めの期間等、比較的低い温度での運転期間中は、エンジン排気ガスの温度が、排気ガス中の有害成分の効率的な触媒変換にとって十分に高くないため、効率性が落ちる。
【0008】
耐火性金属酸化物支持体上に分散された白金族金属(PGM)を含む酸化触媒は、ディーゼルエンジンからの排気ガス排出物質を処理する際に使用されることで公知である。白金(Pt)は、希薄条件下、及び燃料硫黄の存在下における、高温エージング後のDOC中のCO及びHCの酸化にとって、効果的な金属である。一方で、パラジウム(Pd)またはPd濃厚ディーゼル酸化触媒は、特に高レベルの硫黄を含有する排気ガス(高硫黄分含有燃料からの)を処理するために使用される場合、CO及びHCの酸化のためのより高い点火温度を典型的に示す。特定の成分のための「点火」温度とは、その成分の50%が反応する温度である。大きなパーセンテージのPdを含むDOCは、CO及びHCを変換するというPtの活性を毒化する場合があり、また、触媒を硫黄被毒に対してより影響されやすくし得る。これらの特性は、特にエンジン温度が大部分の運転条件において250℃未満に留まる軽量ディーゼル用途における、希薄燃焼運転中のPd濃厚酸化触媒の使用を妨げてきた。
【0009】
上述のように、ディーゼル車用途におけるディーゼル酸化触媒の主な機能は、一酸化炭素及び炭化水素を、二酸化炭素及び水に酸化することであった。しかしながら、NOx排出規制を満たすための、ディーゼル車の排気システムにおける選択接触還元触媒(SCR)の最近の実装は、DOCが効率的なNO酸化触媒としても機能することを要求してきた。排気ガス中のNO2のNOに対する比がおよそ50%であるとき、SCR触媒系はNOx還元性能を最大化することが示されてきたが、排気ガス中の典型的なNO2濃度はこれより遥かに低い。高い燃焼温度のため、エンジンから出る主要なNOx成分は、NOである。
【0010】
更に、Pt/Pdに基づくDOC触媒は、NOのNO2への酸化にとって非常に貧弱である。これは特に、Pdを相当量含有するDOC(例えば、PtのPdに対する重量比が2:1または1:1)に関して当てはまる。DOC用途に関して、Pt及びPdは、ディーゼルエンジン排気ガス中に存在するCO及びHCの酸化にとって好ましい貴金属であり、これらの活性金属の選択は、性能(すなわち、Pt及びPdの混合物は、Pt及びPd単独と比較した際、向上された性能を有する)、ならびに費用(すなわち、Pdの価格は、Ptの価格より著しく低い)の組み合わせによるものである。しかしながら、より多くのPdがDOCに添加されるにつれ、NO酸化性能は低下し、DOCの下流に配置されるSCR触媒は、最適なレベルよりも低いNO2に曝される。DOCのNO酸化性能は、Ptの量を増加させることによって(ならびにPdの量を対応して減らすことによって)増加され得るが、これは、白金の価格がパラジウムと比較すると高いため、費用対効果の高い解決策ではない。加えて、Pt/Pd比が大きくなり過ぎた場合、CO及びHC酸化活性が、実際には低下する場合がある。
【0011】
排出物質規制の厳格化に伴い、例えば向上されたNO酸化能力等、向上された性能を提供するディーゼル酸化触媒系を開発する継続的な必要性が存在する。また、DOCの成分、例えばPt及びPdを可能な限り有効に活用する必要性も存在する。
【0012】
したがって、向上された性能を提示する、白金及びパラジウムのための担体を含む、改善された触媒材料を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様の実施形態は、NO酸化用触媒材料を対象とする。1つ以上の実施形態において、本触媒材料は、セリア-アルミナ支持体を、支持体上に白金及び任意にパラジウムを分散させて含む触媒担体を含む。1つ以上の実施形態において、パラジウムが存在する場合、白金のパラジウムに対する重量比は少なくとも1:1であり、支持体中のセリアの量は1重量%~12重量%の範囲である。
【0014】
1つ以上の実施形態において、セリア-アルミナ支持体は、シリカ、ジルコニア、バリア、またはマグネシアを更に含む。
【0015】
特定の実施形態において、Ptの量は1~6重量%の範囲であり、Pdの量は0~6重量%の範囲である。1つ以上の実施形態において、セリアの量は1~10重量%の範囲である。特定の実施形態において、セリアの量は1~6重量%の範囲である。
【0016】
1つ以上の実施形態において、白金のパラジウムに対する重量比は、少なくとも2:1である。
【0017】
本発明の第2の態様は、希薄燃焼エンジン排気ガス処理システムを対象とする。希薄燃焼エンジン排気ガスシステムは、1つ以上の実施形態の触媒材料と、希薄燃焼エンジンと、希薄燃焼エンジンと流体連通する排気ガス導管と、を備え得る。1つ以上の実施形態において、触媒材料は、排気ガス導管中に存在する。
【0018】
1つ以上の実施形態において、本システムは、ディーゼル酸化触媒、及び/または触媒煤煙フィルタ(CSF)を更に備える。1つ以上の実施形態において、触媒材料は、ディーゼル酸化触媒及び/またはCSFの上に配置され得る。
【0019】
1つ以上の実施形態において、本システムは、触媒材料の下流に配置される選択接触還元触媒を更に備える。1つ以上の実施形態に従う触媒材料は、ディーゼル酸化触媒上に配置され得る。特定の実施形態において、触媒材料は、ディーゼル酸化触媒及びCSFのいずれか、または両方の上に配置される。
【0020】
本発明の第3の態様は、希薄燃焼エンジンからの排気ガスの処理方法を対象とする。1つ以上の実施形態において、本方法は、排気ガス流を触媒材料と接触させることを含み、触媒材料は、セリア-アルミナ支持体を、支持体上に白金及び任意にパラジウムを分散させて含む触媒担体を含む。1つ以上の実施形態において、パラジウムが存在する場合、白金のパラジウムに対する重量比は少なくとも1:1であり、支持体中のセリアの量は1重量%~12重量%の範囲である。
【0021】
1つ以上の実施形態において、セリア-アルミナ支持体は、シリカ、ジルコニア、バリア、またはマグネシアを更に含む。
【0022】
1つ以上の実施形態において、排気ガスはNOxを含む。特定の実施形態において、排気ガスは、アンモニア及び/またはウレアを更に含む。
【0023】
本発明の更なる態様は、NO酸化用触媒材料を対象とする。1つ以上の実施形態において、本触媒材料は、セリア-アルミナ支持体を、支持体上に白金及びパラジウムを分散させて含む触媒担体を含む。1つ以上の実施形態において、白金のパラジウムに対する重量比は約2:1であり、支持体中のセリアの量は1重量%~5重量%の範囲である。特定の実施形態において、セリア-アルミナ支持体は、シリカ、ジルコニア、バリア、またはマグネシアを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例に従う触媒に関する、NO
2形成の結果を示すグラフである。
【
図2】実施例に従う触媒に関する、CO及びHC点火の結果を示すグラフである。
【
図3】実施例に従う触媒に関する、NO
2形成の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示であることが理解されるべきである。故に、開示される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多数の修正が例示的な実施形態に対してなされ得、他の構成が考案され得ることが理解されるべきである。
【0026】
ディーゼル酸化触媒用途に関して、Pt及びPdは、ディーゼルエンジン排気ガス中に存在するCO及びHCの酸化のための、好ましい貴金属である。これらの活性金属の選択は、性能(Pt及びPdの混合物は、Pt及びPd単独と比較した際、向上された性能を有する)、ならびに費用(Pdの価格は、Ptの価格より著しく低い)の組み合わせによるものである。しかしながら、より多くのPdがディーゼル酸化触媒に添加されるにつれ、NO酸化性能は低下し、DOCの下流に配置されるSCR触媒は、最適なレベルよりも低いNO2に曝される。DOCのNO酸化性能は、Ptの量を増加させることによって(ならびにPdの量を対応して減らすことによって)増加され得るが、これは、白金の価格がパラジウムと比較すると高いため、費用対効果の高い解決策ではない。したがって、Pt/Pdディーゼル酸化触媒のNO酸化能力を向上する必要性が存在する。
【0027】
それ故に、本発明の実施形態によれば、触媒支持体への修正が、Pt/PdによるNOの酸化を著しく向上させ得ることが発見された。具体的には、セリアを少量含む、アルミナPt/Pd支持体の使用が、ディーゼル酸化触媒の性能を向上することが確認された。
【0028】
第1の態様において、1つ以上の実施形態は、NO酸化用触媒材料を対象とする。本触媒材料は、セリア-アルミナ支持体を、支持体上に白金及び任意にパラジウムを分散させて含む触媒担体を含む。1つ以上の実施形態において、パラジウムが存在する場合、白金のパラジウムに対する重量比は少なくとも1:1であり、支持体中のセリアの量は1重量%~12重量%の範囲である。
【0029】
本開示で使用される用語に関して、以下の定義が提供される。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「活性アルミナ」は、これに限定されるものではないが、ガンマアルミナ等の、アルミナの高表面積相を指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「触媒担体」は、特定の組成物、及び/または白金族金属もしくは卑金属酸化物触媒等の触媒種を担持する複合支持体を指す。本明細書において、用語「支持体」は、基礎的な高表面積材料(例えば、アルミナ、セリア-アルミナ)を指し、この上に追加の化学化合物または元素が担持される。したがって、支持体は、セリア-アルミナ粒子を含み得、触媒担体は、セリア-アルミナの支持体粒子を、支持体上に白金及び任意にパラジウムを分散させて含み得る。
【0032】
より具体的には、触媒担体中の「支持体」は、結合、分散、含浸、または他の好適な方法を通じて、貴金属、安定剤、促進剤、結合剤等を受容する材料である。有用な高表面積支持体は、1つ以上の耐火性酸化物を含む。これらの酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、バリア、マグネシア、及びジルコニア、ならびにそれらの混合酸化物形態、例えばシリカ-アルミナ、アルミノシリケート(非晶質または結晶質であり得る)、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア、チタン-アルミナ、及びジルコニウム-シリケート等が挙げられる。一実施形態において、支持体は、セリア-アルミナ、セリアでドープされたアルミナ、及びセリアでドープされたシリカ-アルミナから選択される。アルミナは、ガンマ、デルタ、シータ、または例えばガンマ及びベータアルミナ等の遷移アルミナの要素を含み、ならびに、存在する場合、少量の他の耐火性酸化物を例えば最大20重量パーセントまで含む。例えば、他の実施形態において、支持体は、CeO2-ZrO2-Al2O3、CeO2-BaO-Al2O3、及びCeO2-MgO-Al2O3を含む、セリア含有混合酸化物アルミナ支持体から選択される。高表面積耐火性金属酸化物支持体は、高い外表面積、20Å超の細孔、及び広い細孔分布を有する支持体粒子を指す。高表面積耐火性金属酸化物支持体、例えば、セリア-アルミナ支持体材料は、典型的には、グラム当たり60平方メートル(「m2/g」)を超える、多くの場合最大約200m2/g以上のBET表面積を提示する。「BET表面積」は、N2吸着による表面積の決定のための、Brunauer、Emmett、Teller法を指す。望ましくは、活性セリア-アルミナは、60~350m2/g、及び典型的には60~250m2/gの、比表面積を有する。特定の実施形態において、モノリス基材上のセリア-アルミナ支持体の充填は、約0.5~約6g/in3、より具体的には約2~約5g/in3、及び最も具体的には約3~約4g/in3である(全ての計算はコーティングされたモノリスの容量に基づく)。
【0033】
用語「基材」は、モノリス材料を指し、触媒担体が、その上に触媒種を有する複数の担体を含有するウォッシュコートの形態で、モノリス材料上に典型的に配置される。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中に支持体の指定された固形物量(例えば、20~50重量%)を含有するスラリーを調製し、次いでこれを基材上にコーティングし、乾燥してウォッシュコート層を提供することによって、形成される。
【0034】
本明細書で使用する場合、「触媒物品」は、複数の触媒担体をその上に有する基材を指し、触媒担体は、触媒種をその上に有する。触媒物品は、基材上に1つ以上のウォッシュコートを含むことができる。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「白金族金属」または「PGM」は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、及びルテニウム(Ru)、ならびにそれらの混合物を含む、元素周期表において定義される、1つ以上の第VIII族化学元素を指す。
【0036】
1つ以上の実施形態において、触媒担体は、セリア-アルミナ支持体を、支持体上に白金及びパラジウムの混合物を分散させて含む。1つ以上の実施形態において、白金のパラジウムに対する重量比は、少なくとも1:1である。1つ以上の実施形態において、触媒材料は、少なくとも2:1のPt/Pd比を有する。1つ以上の実施形態において、触媒材料は、少なくとも4:1のPt/Pd比を有する。特定の実施形態において、触媒材料は、少なくとも16:1のPt/Pd比を有する。1つ以上の実施形態において、触媒材料は白金のみを含み、パラジウムは存在しない。
【0037】
典型的には、触媒材料は、基材上に堆積させて、所望の量の触媒種を提供することができる。例えば、触媒担体は、約20~300g/ft3、例えば20~150g/ft3の、PGM触媒種を含み得る。基材上に堆積される触媒担体は、一般的に、接触する基材の表面の、全てではないにせよ大部分の、コーティング層として形成される。白金成分は、約20g/ft3~約300g/ft3(20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、及び300g/ft3を含む)の範囲の量で存在し得る。白金及びパラジウムの両方が存在する場合、一部の態様におけるパラジウム及び白金の総充填は、約20g/ft3~約300g/ft3(20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、及び300g/ft3を含む)の範囲である。Pdが存在する場合、Pd成分は、約1g/ft3~約150g/ft3(5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、及び150g/ft3を含む)の範囲の量で存在し得る。1つ以上の実施形態において、パラジウムは全く存在しない。
【0038】
一般的には、パラジウムは、耐火性酸化物支持体上に、約0.1~約6重量%の充填で存在するであろう。1つ以上の実施形態において、パラジウムは全く存在しない。
【0039】
一般的には、白金は、耐火性酸化物支持体上に、約1~約6重量%の充填で存在するであろう。
【0040】
特定の実施形態において、NO酸化用触媒材料は、セリア-アルミナ支持体を、支持体上に白金及びパラジウムの混合物を分散させて含む触媒担体を含む。白金のパラジウムに対する重量比は約2:1であり、支持体中のセリアの量は1重量%~5重量%の範囲である。1つ以上の実施形態において、セリア-アルミナ支持体は、シリカ、ジルコニア、バリア、またはマグネシアを更に含む。
【0041】
熱的に安定した、高表面積アルミナは、貴金属の微細分散粒子のための担体として長く使用されてきた。本発明において、酸化セリウムが、支持体として、アルミナ粒子に組み込まれ、またはアルミナ粒子と混合された。1つ以上の実施形態において、支持体は、アルミナとセリアとの混合物を含む。支持体中のセリアの量は、1重量%~12重量%の範囲である。支持体は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、または12重量%のセリアを含み得る。Ce/Al/Si(5/89/6)、及びCe/Al(9/91)等の支持体は、商業的供給業者から得ることができ、重量百分率は酸化物に基づいて計算される(セリア/アルミナ/シリカ=CeO2/Al2O3/SiO2、及びセリア/アルミナ=CeO2/Al2O3)。追加的に、商業的供給業者からの旧来のアルミナ及びシリカ-アルミナ支持体は、1重量%~12重量%の量のセリアでドープして、1つ以上の実施形態に従うセリア-アルミナ及びセリア-アルミナ-シリカ支持体を提供することができる。重量百分率は酸化物に基づいて計算される(セリア/アルミナ=CeO2/Al2O3、及びセリア/アルミナ/シリカ=CeO2/Al2O3/SiO2)。
【0042】
1つ以上の実施形態において、NO酸化用触媒材料は、セリア-アルミナ支持体を、支持体上に白金及びパラジウムの混合物を分散させて含む触媒担体を含む。1つ以上の特定の実施形態において、白金のパラジウムに対する重量比は、約2:1である。支持体中のセリアの量は、1重量%~6重量%の範囲(1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、5.5重量%、または6重量%を含む)である。
【0043】
1つ以上の実施形態において、支持体は、0重量%~10重量%(0重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、または10重量%を含む)の量のシリカ、ジルコニア、バリア、またはマグネシアを更に含む。
【0044】
1つ以上の実施形態において、基材は、ハニカム構造を有する、セラミックまたは金属である。任意の好適な基材、例えば、基材の入口から出口面まで貫通して延在する、微細かつ平行なガス流路を有する形式のモノリス基材等が採用されてよく、それにより通路がそこを通る液体流に対して開かれている。その流体入口から流体出口まで本質的に真っ直ぐな経路である通路は、触媒材料がウォッシュコートとしてコーティングされる壁によって画定され、それによりガスが通路を流れ、触媒材料に接触する。モノリス基材の流路は薄肉チャネルであり、例えば台形、長方形、正方形、正弦曲線、六角形、楕円形、円形等の任意の好適な断面形状及びサイズであり得る。このようなモノリス構造は、断面の1平方インチ当たり最大で約700以上の流路(または「セル」)を含有してもよいが、より遥かに少ない流路を使用してもよい。例えば、モノリスは、約7~600の、より通常には約100~400の、平方インチ当たりのセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形の断面を有し得、あるいは他の多角形である。セラミック基材は、例えばコージェライト、コージェライト-α-アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケート等の任意の好適な耐火性物質から作製され得る。
【0045】
本発明の実施形態の触媒担体のために有用な基材はまた、本来は金属性であり得、1つ以上の金属または金属合金から構成され得る。金属基材は、例えばペレット、波形シート、またはモノリス形等、様々な形状で採用され得る。金属基材の具体例としては、耐熱性卑金属合金、特に鉄が実質的な、または主要な成分であるものが挙げられる。
【0046】
本発明の実施形態に従う触媒材料は、当分野において公知の任意の手段によって基材へ適用され得る。例えば、触媒材料はウォッシュコートへ形成することができ、これは溶射被覆、粉体被覆、または刷毛塗りもしくは触媒材料中への表面の浸漬によって適用され得る。
【0047】
1つ以上の実施形態において、触媒材料は、ハニカム基材上に配置される。
【0048】
セリア-アルミナ粒子を含む支持体を提供するために、市販の支持体を使用することができる。あるいは、市販のアルミナ及びシリカ-アルミナ支持体に、初期湿潤技術を用いて、セリアを含浸させることができる。例えば、市販のシリカ-アルミナ支持体に、硝酸Ce溶液を100%の初期湿潤まで含浸させて、その後乾燥、及び850℃で2時間焼成して、SiO2/Al2O3/CeO2を含む支持体を提供することができる。次いで、支持体は、1つ以上の実施形態に従う触媒担体を調製するために使用され得る。
【0049】
その上に分散された白金及び任意にパラジウムを有する触媒担体を提供するために、まず、セリア-アルミナ支持体に、パラジウムの酢酸塩、硝酸塩、水酸化物、または炭酸塩のうち少なくとも1つを含む、金属塩溶液の水性混合物を含浸させる。含浸した支持体は、次いで、乾燥/焼成に供されて、パラジウムを含浸された触媒担体を提供する。これらのステップはまた、熱固定としても公知である。一般的に、熱固定は、水溶液中の所望の貴金属の前駆体塩を、所望の支持体上に充填して、支持体を例えば400℃以上の高温で焼成することを意味する。乾燥/焼成は、遊離水分を除去し、また塩を分解して、金属、酸化物、水酸化物、及び炭酸塩を形成する。
【0050】
パラジウムを含浸させた後、支持体を水と混合してスラリーを形成する。次いで、白金塩の水溶液を添加する。白金塩としては、白金A、硝酸白金、酢酸白金テトラアミン、硝酸白金テトラアミン、及び水酸化白金テトラアミンが挙げられるが、これに限定されない。次いで、モノリスコーティングのために典型的に必要とされる粒径(例えば、d90<20μm)を達成するよう、スラリーを粉砕する。スラリーを攪拌によって乾燥させ、次いで、粉末を空気中450℃で焼成して、触媒材料を提供する。
【0051】
セリア含有酸化物材料は、Pt系触媒のための有効な支持体であるとは知られていない。理論に束縛されることを意図するものではないが、Ptに近接したセリアは、Ptを酸化型、したがって触媒活性の低い形態に保持する傾向があると考えられる。しかしながら、1つ以上の実施形態において、セリア含有アルミナ支持体は、良好な一酸化炭素及び炭化水素性能を維持しながら、NO酸化を向上する。1つ以上の実施形態に従うセリア-アルミナ支持体触媒によって250℃で形成されたNO2の量は、基準アルミナ及びシリカ-アルミナ系触媒によって形成されたもののほぼ2倍である。セリア-アルミナ支持体で調製された触媒のCO及びHC点火性能のいずれもが、基準触媒のものと比べて有意には影響を受けない。
【0052】
貴金属による含浸の前の、商業的に供給されるシリカ-アルミナ支持体へのセリアの組み込みは、NO2形成能力における著しい向上を提供する。1つ以上の実施形態によれば、800℃でのエージング後のセリア含有シリカ-アルミナ支持体触媒によって250℃で形成されたNO2の量は、基準シリカ-アルミナ系触媒によって形成されたものの2倍である。追加的に、1つ以上の実施形態において、より多い量のセリア(約6%対約4%)が有益であることが確認された。
【0053】
上に説明された原理に従って調製される触媒担体は、排気処理または制御システムにおいて有用な、適切な排気ガス浄化触媒物品を調製する際に有用であろうことが期待される。例えば、これらの排気ガス浄化触媒担体は、内燃エンジンから排出されるガス状生成物を処理及び/または浄化するために、1つ以上の適切な基材上にコーティングすることができる。
【0054】
希薄燃焼エンジンのための排出物質処理システムは、希薄燃焼エンジンと、希薄燃焼エンジンと流体連通する排気ガス導管と、1つ以上の実施形態に従う触媒材料とを備え得る。触媒材料は、排気ガス導管中に存在し得る。
【0055】
1つ以上の実施形態に従う触媒材料の排気処理システム内の位置は、特定の触媒モジュール(例えば、ディーゼル酸化触媒または触媒煤煙フィルタ(CSF))に限定されない。しかしながら、1つ以上の実施形態に従う触媒材料は、存在するならば、SCR触媒の上流の位置に配置されるべきである。1つ以上の実施形態において、本発明の触媒材料は、DOC及び/またはCSF上に配置され得る。1つ以上の実施形態において、選択接触還元触媒(SCR)は、触媒材料の下流に配置され得る。特定の実施形態において、システムは、順に、ディーゼル酸化触媒、壁流フィルタの形態の煤煙フィルタを含み、煤煙フィルタはCSF及びSCR触媒を提供するように触媒され、SCR触媒のすぐ上流に還元剤注入装置を伴う。本発明に従う触媒材料は、特定の実施形態のディーゼル酸化触媒またはCSFにおいて活用され得る。
【0056】
DOC/SCRシステムの場合、1つ以上の実施形態に従う改善された触媒材料は、DOC上に配置されるであろう。DOC/SCRF(SCR触媒が壁流フィルタ等のフィルタ上にある)システムの場合、改善された触媒材料は、フィルタ上に追加的に配置され得る。DOC/CSF/SCRシステムの場合、1つ以上の実施形態に従う改善された触媒材料は、DOCまたはCSFのいずれかまたは両方の上に配置され得るが、好ましくは、最小限で、最大限のNO2形成のためにCSF上に配置され得る。
【0057】
SCR成分は、煤煙フィルタ構成要素の下流に配置され得る。排気処理システムでの使用のために好適なSCR触媒成分は、600℃未満の温度でのNOx成分の還元を効果的に触媒でき、それにより十分なNOxレベルが、より低い排気温度と典型的に関連する低負荷条件下でも処理され得る。好ましくは、SCR触媒物品は、システムに添加される還元剤の量に依存して、NOx成分の少なくとも50%をN2に変換可能である。SCR組成物に関する別の望ましい属性は、SCR組成物が、NH3が大気中に放出されないように、O2と任意の過剰NH3との、N2及びH2Oへの反応を触媒する性能を持つことである。排気処理システムにおいて使用される有用なSCR触媒組成物はまた、650℃超の温度への熱抵抗を有するべきである。そのような高温は、上流の触媒煤煙フィルタの再生中に直面し得る。
【0058】
好適なSCR触媒組成物は、例えば米国特許第4,961,917号(’917特許)及び同第5,516,497号において説明され、これら両方がその全体において参照により本明細書に組み込まれる。’917特許において開示される組成物は、促進剤とゼオライトとの総重量の約0.1~30重量パーセント、好ましくは約1~5重量パーセントの量でゼオライト中に存在する、鉄及び銅促進剤のうちの1つまたは両方を含む。NOxのNH3によるN2への還元を触媒するそれらの性能に加えて、開示される組成物はまた、特により高い促進剤の濃度を有する組成物に関して、過剰なNH3のO2による酸化を促進し得る。本発明の1つ以上の実施形態に従って使用され得る他の特定のSCR組成物は、8環細孔分子篩、例えばAEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SAT、及びSAVからなる群より選択される構造型を有するものを含む。特定の実施形態において、8環細孔分子篩は、CHA構造を有し、ゼオライトである。CHAゼオライトは銅を含有してもよい。例示的なCHAゼオライトは、約15超のシリカ対アルミナ比(SAR)、及び約0.2重量%を超える銅含有量を有する。より特定の実施形態において、シリカ対アルミナのモル比は、約15~約256であり、銅含有量は約0.2重量%~約5重量%である。SCRのための他の有用な組成物としては、CHA結晶構造を有する非ゼオライト系分子篩が挙げられる。例えば、SAPO-34、SAPO-44、及びSAPO-18等のシリコアルミノリン酸塩を、1つ以上の実施形態に従って使用してもよい。他の有用なSCR触媒は、V2O5、WO3、及びTiO2のうち1つ以上を含む混合酸化物を含み得る。
【0059】
本発明の更なる態様の実施形態は、排気ガスの処理方法を対象とする。排気ガスは、NOx、アンモニア、及び/またはウレアを含み得る。本方法は、排気ガスを触媒材料と接触させることを含み、触媒材料は、セリア-アルミナ支持体を、支持体上に白金及び任意にパラジウムを分散させて含む触媒担体を含む。支持体中のセリアの量は、1重量%~12重量%の範囲である。パラジウムが存在する場合、白金のパラジウムに対する重量比は、少なくとも1:1である。
【0060】
本明細書で考察される材料及び方法を説明する文脈中(特に以下の請求項の文脈中)における、用語「a」、及び「an」、及び「the」の使用、ならびに同様の言及は、本明細書において別段示されない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段示されない限り、範囲内に入るそれぞれ別個の値を個別に言及する簡潔な方法として機能することを単に意図しており、それぞれ別個の値は、あたかもそれが個別に本明細書において列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書において説明される全ての方法は、本明細書において別途示されない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、任意の好適な順序で実行され得る。いずれか及び全ての例の使用、または本明細書において提供される例示的な言語(例えば、「等」)は、材料及び方法をより良好に解明することを単に意図しており、別途特許請求されない限り、本発明の範囲に対する限定を提示するものではない。本明細書におけるいずれの言語も、開示された材料及び方法の実施に必須であるとしてあらゆる特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0061】
本発明はこれから、以下の実施例への参照によって説明される。本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は以下の説明において明示される構成または工程段階の細部に限定されるものではないことが、理解されるべきである。本発明は、他の実施形態であることができ、様々な方法で実施または実行することができる。
【0062】
実施例
実施例1
9重量%のセリア(CeO2)を名目上含み、100m2/gのBET表面積、及び0.81cc/gの内部細孔容積を有する、商業的供給業者からのセリア-アルミナ支持体に、標準的な初期湿潤技術を用いて、硝酸Pd溶液を含浸させた。Pdを含浸させた粉末を脱イオン水中に配置し、PtA溶液を添加した。酸の添加によってpHを4に低減した後、スラリーを、粒径の90%が15μm未満になるように粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌によって乾燥させ、空気中で2時間、450℃で焼成した。セリア-アルミナ支持体上の総Pt充填は2.6%であり、総Pd充填は1.3%であった(Pt/Pd重量比=2:1)。
【0063】
実施例2
5重量%のセリア(CeO2)及び6重量%のシリカ(SiO2)を名目上含み、208m2/gのBET表面積、及び1.03cc/gの内部細孔容積を有する、商業的供給業者からのセリア-シリカ-アルミナ支持体に、標準的な初期湿潤技術を用いて、硝酸Pd溶液を含浸させた。Pdを含浸させた粉末を脱イオン水中に配置し、PtA溶液を添加した。酸の添加によってpHを4に低減した後、スラリーを、粒径の90%が15μm未満になるように粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌によって乾燥させ、空気中で2時間、450℃で焼成した。セリア-シリカ-アルミナ支持体上の総Pt充填は2.6%であり、総Pd充填は1.3%であった(Pt/Pd重量比=2:1)。
【0064】
実施例3
4重量%のセリア(CeO2)、5重量%のシリカ(SiO2)、及び91重量%のアルミナ(Al2O3)を名目上含む、セリア-シリカ-アルミナ支持体材料を、5重量%のシリカ(SiO2)を名目上含み、180m2/gのBET表面積、及び0.70cc/gの内部細孔容積を有する市販のシリカ-アルミナ支持体に、硝酸Ce溶液を100%の初期湿潤まで含浸させ、その後続いて乾燥、及び空気中で2時間、850℃で焼成することによって調製した。次いで、支持体材料に、標準的な初期湿潤技術を用いて、硝酸Pd溶液を含浸させた。Pdを含浸させた粉末を脱イオン水中に配置し、PtA溶液を添加した。酸の添加によってpHを4に低減した後、スラリーを、粒径の90%が15μm未満になるように粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌によって乾燥させ、空気中で2時間、450℃で焼成した。セリア-シリカ-アルミナ支持体上の総Pt充填は2.6%であり、総Pd充填は1.3%であった(Pt/Pd重量比=2:1)。
【0065】
実施例4
6重量%のセリア(CeO2)、5重量%のシリカ(SiO2)、及び89重量%のアルミナ(Al2O3)を名目上含む、セリア-シリカ-アルミナ支持体材料を、実施例3において使用された市販のシリカ-アルミナ支持体に、硝酸Ce溶液を100%の初期湿潤まで含浸させ、その後続いて乾燥、及び空気中で2時間、850℃で焼成することによって調製した。次いで、支持体材料に、標準的な初期湿潤技術を用いて、硝酸Pd溶液を含浸させた。Pdを含浸させた粉末を脱イオン水中に配置し、PtA溶液を添加した。酸の添加によってpHを4に低減した後、スラリーを、粒径の90%が15μm未満になるように粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌によって乾燥させ、空気中で2時間、450℃で焼成した。セリア-シリカ-アルミナ支持体上の総Pt充填は2.6%であり、総Pd充填は1.3%であった(Pt/Pd重量比=2:1)。
【0066】
実施例5-比較
実施例3において使用された市販のシリカ-アルミナ支持体に、標準的な初期湿潤技術を用いて、硝酸Pd溶液を含浸させた。Pdを含浸させた粉末を脱イオン水中に配置し、PtA溶液を添加した。酸の添加によってpHを4に低減した後、スラリーを、粒径の90%が15μm未満になるように粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌によって乾燥させ、空気中で2時間、450℃で焼成した。シリカ-アルミナ支持体上の総Pt充填は2.6%であり、総Pd充填は1.3%であった(Pt/Pd重量比=2:1)。
【0067】
実施例6-比較
150m2/gのBET表面積、及び0.85cc/gの内部細孔容積を有する、商業的供給業者からのアルミナ支持体に、標準的な初期湿潤技術を用いて、硝酸Pd溶液を含浸させた。Pdを含浸させた粉末を脱イオン水中に配置し、PtA溶液を添加した。酸の添加によってpHを4に低減した後、スラリーを、粒径の90%が15μm未満になるように粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌によって乾燥させ、空気中で2時間、450℃で焼成した。アルミナ支持体上の総Pt充填は2.6%であり、総Pd充填は1.3%であった(Pt/Pd重量比=2:1)。
【0068】
実施例7
1重量%のセリア(CeO2)、5重量%のシリカ(SiO2)、及び94重量%のアルミナ(Al2O3)を名目上含む、セリア-シリカ-アルミナ支持体材料を、実施例3において使用された市販のシリカ-アルミナ支持体に、硝酸Ce溶液を100%の初期湿潤まで含浸させ、その後続いて乾燥、及び空気中で2時間、850℃で焼成することによって調製した。次いで、支持体材料に、標準的な初期湿潤技術を用いて、硝酸Pd溶液を含浸させた。Pdを含浸させた粉末を脱イオン水中に配置し、PtA溶液を添加した。酸の添加によってpHを4に低減した後、スラリーを、粒径の90%が15μm未満になるように粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌によって乾燥させ、空気中で2時間、450℃で焼成した。セリア-シリカ-アルミナ支持体上の総Pt充填は2.6%であり、総Pd充填は1.3%であった(Pt/Pd重量比=2:1)。2つの追加的な試料を、それぞれ3%及び5%のセリア(CeO2)を含むセリア-シリカ-アルミナ支持体を用いて、同じPt/Pd重量比で、同様に調製した。
【0069】
実施例8
実施例7において説明された、3つのPt/Pd/セリア-シリカ-アルミナ試料の調製を、3.9%の同じ総貴金属充填を維持しながら、Pt及びPdの量が4:1のPt/Pd重量比を達成するように調節した点を除いて、実施例7と同一の手順を用いて繰り返した。
【0070】
実施例9-比較
シリカ-アルミナ支持体をセリア無しで使用する基準試料を、実施例5において説明された手順に従って、2:1及び4:1のPt/Pd重量比で調製した。
【0071】
実施例10
1重量%のセリア(CeO2)、及び99重量%のアルミナ(Al2O3)を名目上含む、セリア-アルミナ支持体材料を、250m2/gのBET表面積、及び0.5cc/gの細孔容積を550℃での活性化の後に有する市販のベーマイトアルミナ支持体に、硝酸Ce溶液を100%の初期湿潤まで含浸させ、その後続いて乾燥、及び空気中で2時間、850℃で焼成することによって調製した。次いで、支持体材料に、標準的な初期湿潤技術を用いて、硝酸Pd溶液を含浸させた。Pdを含浸させた粉末を脱イオン水中に配置し、PtA溶液を添加した。酸の添加によってpHを4に低減した後、スラリーを、粒径の90%が15μm未満になるように粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌によって乾燥させ、空気中で2時間、450℃で焼成した。セリア-アルミナ支持体上の総Pt充填は2.6%であり、総Pd充填は1.3%であった(Pt/Pd重量比=2:1)。2つの追加的な試料を、それぞれ3%及び5%のセリア(CeO2)を含むセリア-アルミナ支持体を用いて、同じPt/Pd重量比で、同様に調製した。
【0072】
実施例11
実施例10において説明された、3つのPt/Pd/セリア-アルミナ試料の調製を、3.9%の同じ総貴金属充填を維持しながら、Pt及びPdの量が4:1のPt/Pd重量比を達成するように調節した点を除いて、実施例10と同一の手順を用いて繰り返した。
【0073】
実施例12-比較
実施例10及び11のベーマイトアルミナ支持体をセリア無しで使用する基準試料を、実施例6において説明された手順に従って、2:1及び4:1のPt/Pd重量比で調製した。
【0074】
実施例13
2:1の重量比のPt/Pd触媒を、商業的供給業者から得られた以下のセリア含有混合酸化物アルミナ支持体(カッコ内は名目酸化物重量組成)、CeO2-ZrO2-Al2O3(10%-10%-80%)、CeO2-BaO-Al2O3(10%-10%-80%)、及びCeO2-MgO-Al2O3(8%-20%-72%)を用いて、実施例1の手順に従って調製した。
【0075】
結果
実施例1~6の触媒粉末を粉砕し、250~500μmの標的画分に篩い分けた。次いで、触媒を、10%のH2Oを含む気体中で20時間、800℃でエージングした。エージングされた触媒粉末(それぞれ100mg)を次いで、各個別の反応器に関して7mmの内径を有する、ステンレス鋼から作製された、48個の並列固定床反応器を有する完全に自動化された試験リグを使用して、CO、HC、及びNO酸化性能に関して試験した。触媒を、120、140、160、180、200、220、250、及び300℃での定常状態運転下で、それぞれの温度で4分間、45L/hの総流量で、ディーゼル排気ガスを模したガス混合物(N2中、1500ppmのCO、500ppmのC1 HC、100ppmのNO、13%のO2、10%のCO2、5%のH2O)を、それぞれの反応器に通すことによって、試験した。
【0076】
実施例1~6において調製された触媒に関するNO酸化の結果が、
図1において要約される。新規セリア含有アルミナ支持体触媒(実施例1及び2)によって250℃で形成されたNO
2の量は、基準アルミナ系触媒(実施例5及び6)によって形成されたもののほぼ2倍であった。貴金属による含浸の前の、シリカ-アルミナ支持体へのセリアの組み込み(実施例3及び4)は、NO
2形成能力における著しい向上を提供した。800℃でのエージング後の新規セリア含有シリカ-アルミナ支持体触媒(実施例3及び4)によって250℃で形成されたNO
2の量は、基準シリカ-アルミナ系触媒(実施例5)によって形成されたもののほぼ2倍であった。より多い量のセリア(6%対4%)がより有益であることもまた確認された。
【0077】
加えて、
図2に示されるように、新規支持体(実施例1~4)で調製された触媒のCO点火性能は、基準触媒のものと比べて僅かしか影響を受けず、HC点火性能は僅かに向上した。Ptに近接したセリアは、Ptを酸化型、したがって触媒活性の低い形態に保持する傾向があるため、セリア含有酸化物材料は、Pt系触媒のための有効な支持体であるとは知られておらず、それ故にこれらの結果は極めて予想外である。しかしながら、本発明の実施形態に従って調製された触媒は、良好なCO及びHC性能を維持しながらNO酸化を向上する。新規セリア含有支持体に関する優れたNO酸化の結果が、
図3において温度の関数として例証される。
【0078】
実施例7~13の触媒粉末を粉砕し、250~500μmの標的画分に篩い分けた。次いで、触媒を、10%のH2Oを含む気体中で20時間、800℃でエージングした。エージングされた触媒粉末(それぞれ100mg)を次いで、各個別の反応器に関して7mmの内径を有する、ステンレス鋼から作製された、48個の並列固定床反応器を有する完全に自動化された試験リグを使用して、CO、HC、及びNO酸化性能に関して試験した。触媒を、120、135、150、165、180、195、210、225、250、300、及び350℃での定常状態運転下で、それぞれの温度で4分間、45L/hの総流量で、ディーゼル排気ガスを模したガス混合物(N2中、700ppmのCO、440ppmのC1 HC、70ppmのNO、10%のO2、10%のCO2、5%のH2O)を、それぞれの反応器に通すことによって、試験した。反応ガス組成は、より低いCO、HC、及びNO濃度が用いられたという点で、実施例1~6において調製された粉末を試験するために使用されたものからは僅かに異なった。
【0079】
実施例7~12の触媒粉末をエージングし、実施例1~6のものと同様に試験した。市販のシリカ-アルミナ支持体を用いて調製された試料に関するNO酸化の結果が、表1において要約される。貴金属による含浸の前の、基準シリカ-アルミナ支持体へのセリアの組み込み(実施例7及び8)は、1%超のセリアのレベルでのNO2形成能力における著しい向上を提供した。3及び5%のセリアを含有する試料で、最高のNO酸化性能が得られた。2:1のPt/Pd重量比を有する試料に関して、800℃でのエージング後の、3または5%のセリアのいずれかを有する新規セリア含有シリカ-アルミナ支持体を用いて250℃で形成されたNO2の量は、基準シリカ-アルミナ系触媒(実施例9)によって形成されたもののほぼ2倍であった。4:1の試料で形成されたNO2の量は、0及び1%のセリア充填では、2:1の試料のものよりも僅かに高かったものの、3及び5%のセリア充填では、2:1及び4:1の試料の結果は同等であった。
【0080】
【0081】
市販のベーマイトアルミナ支持体を用いて調製された試料に関するNO酸化の結果が、表2において要約される。貴金属による含浸の前の、基準アルミナ支持体へのセリアの組み込み(実施例10及び11)は、NO2形成能力における多少の向上を提供した。2:1の試料に関して、800℃でのエージング後の、250℃で形成されたNO2の量は、基準アルミナ系触媒によって形成されたものの1.7倍であった。
【0082】
【0083】
市販のシリカ-アルミナ支持体を用いて調製された試料に関するCO酸化の結果が、表3において要約され、市販のベーマイトアルミナ支持体を用いて調製された試料に関するCO酸化の結果については、表4において要約される。基準アルミナ及びシリカ-アルミナ支持体へのセリアの組み込みは、試験システムの実験誤差内で、CO点火温度に全く影響を及ぼさなかった。セリア充填の効果は観察されず、4:1のPt/Pd重量比で調製された試料によって最高の性能が得られた。
【0084】
【0085】
【0086】
市販の混合酸化物セリア-アルミナ支持体を用いて実施例13において調製された試料に関するNO酸化の結果が、表5において要約される。実施例12においてセリア無しで調製されたアルミナ基準試料(表2)と比べると、4~5倍のNO2が250℃で形成された。実施例9においてセリア無しで調製されたシリカ-アルミナ基準試料(表1)と比べると、およそ3倍のNO2が250℃で形成された。
【0087】
【0088】
本発明は、本明細書において、特定の実施形態への参照によって説明されてきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示であることが理解されるべきである。故に、開示される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多数の修正が例示的な実施形態に対してなされ得、他の構成が考案され得ることが理解されるべきである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある修正及び変形を含むことが意図される。