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特許7114229多層シースを有するケーブルを剥離するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】多層シースを有するケーブルを剥離するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20220801BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20220801BHJP
【FI】
H02G1/12 053
H02G1/12 080
B23K26/38 Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017149696
(22)【出願日】2017-08-02
(65)【公開番号】P2018068099
(43)【公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】16194464.0
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503231561
【氏名又は名称】コマツクス・ホールデイング・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・カイサー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・シュトッカー
【審査官】須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-107317(JP,A)
【文献】特開平02-213074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B23K 26/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層シース(5)を有するケーブル(3)を剥離するための方法であって、前記ケーブル(3)の前記シース(5)の少なくとも1つの層、機械的に少なくとも部分的に分離され、前記ケーブル(3)の前記シース(5)の少なくとも1つの別の層、熱分離プロセスで少なくとも部分的に分離される、方法であって、
a)レーザ切断装置(8)のレーザ光線を用いて、前記ケーブル(3)の前記シース(5)の第1の層(10)を切断する工程と、
b)少なくとも1つの剥離刃(4,4’)を使用して、前記第1の層の反対側に位置する、前記シース(5)の内層(11)を剥離方向(6)に切断する工程と、
c)前記剥離刃(4,4’)および前記レーザ光線(7)を用いて切断された前記シース(5)を除去する工程と、
を特徴とし、
前記シース(5)が3つ以上の層を有し、前記工程c)による前記シース(5)の除去の前に、前記工程a)および前記工程b)の組合せが繰り返されて、第3の層以降が切断されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
多層シース(5)を有するケーブル(3)を剥離するための方法であって、前記ケーブル(3)の前記シース(5)の少なくとも1つの層、機械的に少なくとも部分的に分離され、前記ケーブル(3)の前記シース(5)の少なくとも1つの別の層、熱分離プロセスで少なくとも部分的に分離される、方法であって、
a)少なくとも1つの剥離刃(4,4’)を使用して、前記ケーブル(3)の前記シース(5)の第1の層(10)を剥離方向(6)に切断する工程と、
b)レーザ切断装置(8)のレーザ光線を用いて、前記第1の層の反対側に位置するシース(5)の内層(11)を切断する工程と、
c)前記剥離刃(4,4’)および前記レーザ光線(7)を用いて切断された前記シース(5)を除去する工程と、
を特徴とし、
前記シース(5)が3つ以上の層を有し、前記工程c)による前記シース(5)の除去の前に、前記工程a)および前記工程b)の組合せが繰り返されて、第3の層以降が切断されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記工程a)の後、前記レーザ光線を用いて切断される層(11)を露出するために裂け目が生じるように、切断された前記第1の層(10)が動かされることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)と前記工程b)との間に、移送装置(9)を用いて、前記ケーブル(3)が剥離装置(6)から前記レーザ切断装置(8)に移送されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
工程b)の終了後、移送装置(9)を用いて、前記ケーブル(3)が剥離装置(6)に戻され、前記剥離装置(6)の少なくとも1つの前記剥離刃(4,4’)の移動を用いて、切断された前記シース(5)が部分的または完全に除去されることを特徴とする、請求項から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
切断された前記シース(5)の部分的な除去によってスリットが作られ、前記スリットには、さらなる層(12)を切断するために、前記レーザ切断装置(8)の前記レーザ光線が導入されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
特に請求項1から6のいずれか1項に記載の方法を実施するための、少なくとも1つの剥離刃(4,4’)を備える剥離装置(6)を有する、多層シース(5)を有するケーブル(3)を剥離するための装置(1)であって、前記装置(1)がレーザ切断装置(8)を有し、前記シース(5)の1つまたは複数の層(10,11,12)が、前記剥離装置(6)または前記レーザ切断装置(8)において選択的に切断されることができることを特徴とする、装置(1)。
【請求項8】
前記装置(1)が制御装置(17)を有し、前記制御装置(17)が、前記制御装置(17)を使用して、前記剥離装置(6)を用いて前記ケーブル(3)の前記シース(5)の少なくとも1つの層(10,12)を切断するための切断プロセス、および前記レーザ切断装置(8)によって前記ケーブル(3)の前記シース(5)の少なくとも異なるまたはさらなる層(11)を切断するための切断プロセスが、制御可能であるように、設計され、前記剥離装置(6)および前記レーザ切断装置(8)に接続されることを特徴とする、請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記装置(1)が、前記剥離装置(6)と前記レーザ切断装置(8)との間で前記ケーブル(3)を移送するための移送装置(9)を有することを特徴とする、請求項7または8に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記制御装置(17)が前記移送装置(9)に接続され、前記制御装置(17)が、前記剥離装置(6)もしくは前記レーザ切断装置(8)における切断手順の終了後に、前記ケーブル(3)を前記剥離装置(6)から前記レーザ切断装置(8)に、または前記レーザ切断装置(8)から前記剥離装置(6)に、自動的に供給するように設計されることを特徴とする、請求項8に従属する請求項9に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層シースを有するケーブルを剥離するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
単純な電気ケーブルは、たとえば電線または1つもしくは複数の撚り線など、少なくとも1つの導体、およびたとえばPVCなどの絶縁被覆を含む。この種のケーブルは、一般に、剥離刃を含む機械的に動作する剥離装置において剥離される。
【0003】
そのシースが多層で構成されるより複雑なケーブルが、ある種の用途のために使用される。多層シースを有するこのタイプのケーブルが、一例として図2に示される。ケーブル3は、複数の撚り線から構成される電気導体2を有する。電線は、たとえば、プラスチックフィルム12で覆われている。フィルム12は、信号ケーブルを作成するための遮蔽膜として設計されることができる。このような遮蔽膜は、銅、アルミニウム、または他の金属で被覆されたプラスチックフィルムから形成されることができる。一般的な遮蔽膜は、約0.03mmの厚みを有する。さらなる層11は、たとえばガラス繊維布を備える。PVCまたは別の電気絶縁弾性原材料の外殻10が、ケーブル3を保護するために設けられる。実施によれば、多層シースを有するケーブルは、機械的処理を用いて剥離するのが難しいことが分かった。剥離刃を使用してガラス繊維布をきれいに切断することは、ほとんど不可能である。剥離刃を用いた分離の間に、撚り線への望ましくない損傷が生じるおそれがあるため、特にフィルム12は問題を引き起こす。
【0004】
多層ケーブルを剥離するための方法は、レーザを使用してケーブルが剥離される米国特許出願公開第2015/162729号明細書から知られている。レーザ光線は、分離切断を行うために、固定ケーブルの周りを回転する。しかしながら、1回の切断で、シースの全ての層を完全かつきれいに切断するようにレーザを調整するのは困難である。交互に、部分的なレーザ切断を行って、このようにして切断されたシースを後で引き抜くことができる。しかしながら、この場合、許容できない汚れが撚り線に残り、これを、たとえばブラシを使用して、費用のかかる後の工程で除去しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2015/162729号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、既知の多層シースを有するケーブルを剥離するためのプロセスの欠点を回避し、これを最適化および改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法により、本発明によって達成される。
【0008】
剥離されるケーブルは、導体(銅もしくは別の導電性金属で作られた、電線または1つもしくは複数の撚り線など)、および多層シースを含むことができる。しかしながら、ケーブルは、ケーブル導体が多層シースに囲まれた複合ケーブルとすることもできる。以下の手順は、特に丸形ケーブルに好適である。複合丸形ケーブルは、たとえば、円環を形成するシースおよび環状に配置された撚り合わせたケーブルコアを含むその断面が丸いケーブルである。
【0009】
本発明による多層シースを有するケーブルを剥離するための方法は、ケーブルシースの少なくとも1つの層が、機械的に少なくとも部分的に分離または切り離され、ケーブルシースの少なくとも1つの別の層が、熱分離プロセスで少なくとも部分的に分離または切り離されることを特徴とする。刃または切断刃を使用する切断プロセスは、層の機械的な分離または切り離しに使用されることができるのが好ましい。たとえば、切断のためにケーブルに対して半径方向に並進移動しかしない剥離刃が、機械的な分離に使用される場合、一般に、剥離のためにシースのそれぞれの層を完全に切断することは、ほとんど不可能である。一般に使用される剥離刃は、ケーブルに適合された切断形状(たとえば、V刃、成形刃)を有するが、ほとんどの場合、分離プロセス後に、層の分離されない領域が残り、これは、最終的には、除去プロセス中に引き裂くことによってようやく除去される。周囲に均一に行き渡る理想的な分離切断は、ここではほとんど不可能である。対照的に、ケーブルの周りを回転する1つまたは複数の剥離刃を使用することにより、部分的にだけでなく、周囲全体にわたって、それぞれの層が分離されることができる。たとえばレーザ切断を用いて、先に述べた熱分離が行われることができる。ケーブルに向けられたレーザ光線は、ケーブル軸を基準にしてケーブルの周りを移動することができ、ケーブルの周りの360°未満の1回転の後は、それぞれの層が部分的に分離されるだけであろう。
【0010】
本方法は、以下の工程、すなわち、レーザ切断装置のレーザ光線を用いて、ケーブルのシースの第1の層を切断する工程と、少なくとも1つの剥離刃を有する剥離装置において、第1の層の反対側のシースの内層を切断する工程と、剥離刃およびレーザ光線を用いて切断されたシースを除去する工程と、を含むことができる。
【0011】
好ましい変形形態では、本発明による剥離方法は、以下の工程を特徴とする。
【0012】
工程a)において、少なくとも1つの剥離刃を使用して、ケーブルシースの第1の層が剥離方向に切断される。工程a)において、シースは完全にではなく部分的に切断されるだけである。上述の第1の層は、通常、PVCまたは別のプラスチック材料の外側被覆などの、絶縁し、ケーブルを天候から保護するためのシースの最外層である。少なくとも1つの剥離刃は、切り込みを作るために、ケーブルに対して並進移動によって動かされることができる。ケーブルに対して半径方向の移動が、切断プロセスに好ましい。切断プロセス後、少なくとも1つの剥離刃は初期位置に戻されることができる。切断は、シースの第2の層に到達するまで行われるのが好ましく、それぞれの剥離刃の切り込み深さは、示された第1の層の厚さにほぼ対応する。上述の第2の層は、必ずしもシースの最外層(既に述べた外側被覆など)の次の層である必要はない。少なくとも1つの剥離刃を使用して、工程a)において同時にまたは連続的に、複数の層が切断されることができる。
【0013】
工程b)において、レーザ切断装置のレーザ光線を用いて、シースの第1の層の反対側に位置する内層が切断される。レーザ光線を用いて切断される層は、たとえば布地層(図2による布地層11など)である。この第1の層の反対側に位置する内層は、簡略化のために、「第2の層」と呼ばれる。少なくとも1つの剥離刃を使用して、工程a)において同時にまたは連続的に、複数の層が切断される場合、「第2の層」は、示された複数の「第1の層」の次の層であろう。
【0014】
第2の層の切断のため、ケーブルの方向に向けられたレーザ光線は、ケーブルが静止している間、ケーブルの周りを半径方向に動かすことができる。レーザの回転運動の代わりに、固定レーザ光線を発生するレーザ光源を保持し、ケーブル軸を中心にケーブルを回転させることも考えられる。
【0015】
工程c)において、剥離刃およびレーザ光線を用いて切断されたシースは、最終的に引き抜かれ、これにより剥離プロセスが終了する。工程c)による除去は、少なくとも1つの剥離刃を、長手方向にケーブルに対して動かすことにより、上述の剥離装置を使用して行われることができる。シースを引き抜くためのこの相対運動には、たとえば、固定ケーブルの場合の1つもしくは複数の剥離刃の移動、または1つもしくは複数の固定剥離刃の場合のケーブルの移動が含まれる。いずれの場合でも、上述の運動モデルの混合型も可能である。
【0016】
シースの除去後、導体が露出され、または、マルチコアケーブルの場合には、ケーブルコアが露出されて、さらに処理されることができる。たとえば、露出された導体を有する剥離されたケーブル端部は、圧着されることができる。機械的剥離方法およびレーザ剥離方法が有利に組み合わされた、2段階または場合によっては多段階の剥離プロセスのおかげで、多層ケーブルは良質の結果を伴って容易かつ効率的に剥離されることができる。このようにして、良好な剥離結果が達成され、たとえば不完全な切断から生じるおそれがある、ケーブル端部の費用のかかる後処理が不要である。
【0017】
ケーブルシースが3つ以上の層を有する場合、工程c)によるシースの除去の前に、工程a)または工程b)のうち少なくとも1つが繰り返されると有利であり得る。たとえば、少なくとも1つの剥離刃を用いて第1の層が切断された後、およびレーザ光線を用いて第2の層が切断された後、剥離ナイフを用いて第3の層が切断されることができる。交互に、レーザ切断装置のレーザ光線を用いて、第3の層が切断されることもできる。
【0018】
第3の層は、たとえばフィルム層とすることができる。このフィルムは、1mm未満の厚みを有することができる。ケーブルが信号ケーブルとして使用される場合、高速データ伝送品質を確保するために、ケーブルは十分に電磁的に遮蔽されなければならず、その結果、たとえば車載電子機器において、ケーブルから放出される電磁波が望ましくない干渉を引き起こすことはできない。ケーブルを遮蔽するために、遮蔽膜が使用されることができる。このタイプの遮蔽膜は、アルミニウム層が塗布された、たとえばPETなどのプラスチックフィルムを備えることが多い。一般的な遮蔽箔の厚さは約0.3mmである。しかしながら、銅またはアルミニウムなどの金属で全て作られた遮蔽箔も知られている。こうした遮蔽箔は、全金属箔として知られている。
【0019】
工程a)の後、レーザ光線によって切断される第2の層を露出するためにスリットが作られるように、有利には少なくとも1つの剥離刃を用いて切断された第1の層が、ケーブル軸を基準にして長手方向に動かされると有利である。これにより、レーザ切断が精密かつ正確に実施されることができるようになる。
【0020】
先に述べた工程a)および工程b)の間に、ケーブルまたは剥離されるケーブルのケーブル端部は、移送装置を用いて、剥離装置からレーザ切断装置に移送されることができる。ケーブル移送は、たとえば、移動、旋回、および/またはケーブルの長手方向移動によって行われることができる。
【0021】
特に好ましくは、工程b)の終了後、ケーブルは、移送装置によって剥離装置に戻されることができ、剥離装置の少なくとも1つの剥離刃の長手方向への移動により、層を完全にまたは部分的にのみ切断された切断シースは、完全にまたは部分的に引き抜かれることができる。切断されたシースの部分的な除去によってスリットが作られ、スリットには、さらなる層を切断するために、レーザ切断装置のレーザ光線が導入される。
【0022】
本発明の別の態様は、特に先に述べた手順を実施するための、多層被覆を有するケーブルを剥離するための装置に関する。本発明による装置は、少なくとも1つの剥離刃を有する剥離装置、およびレーザ切断装置を含む。少なくとも1つの剥離刃を有する上述の剥離装置は、以下において簡略化のために単に「剥離装置」と呼ばれる、機械的に動作する剥離装置である。したがって、シースの1つまたは複数の層が、剥離装置またはレーザ切断装置において選択的に切断されることができる。
【0023】
剥離装置およびレーザ切断装置は、互いに物理的に分離されることができる。この物理的分離は、たとえば、剥離装置およびレーザ切断装置が、互いに接続されていない別々のケーブル処理機に割り当てられる場合に、あるいは、剥離装置およびレーザ切断装置が、(共通の機械テーブル上の構成などにより、)共通のケーブル処理装置に割り当てられるが、剥離装置およびレーザ切断装置が互いに隣接して配置されるか、または互いに離間している場合に、達成されることができる。
【0024】
特に後者の場合、装置が、剥離装置とレーザ切断装置との間でケーブルを移送することができる移送装置を有すると、有利であり得る。個々の剥離工程の間にケーブルが移送される必要がないように、剥離装置およびレーザ切断装置を有する特別な剥離ステーションを設けることも考えられるであろう。
【0025】
たとえば、ケーブルを把持するための把持手段を有する旋回ユニットも、移送装置として使用されることができる。ベルトまたはローラコンベヤなどの長手方向のコンベヤも、移送装置として使用されることができる。
【0026】
第1の層としての外側被覆、その下に位置する第2の層としての布地層、および第3の層としての可能な布地層または別の補強層を含むケーブルでは、外側被覆は、剥離装置において少なくとも1つの剥離刃を使用して切断され、その後、レーザ切断装置のレーザ光線を用いて切断される。ケーブルシースに応じて、最初にレーザ光線を用いてシースの第1の層を切断し、その後にのみ、少なくとも1つの剥離刃を有する機械的剥離装置を使用して、シースの第2の層を切断することも必要であり得る。本発明による装置を、工程a)および工程b)に関して逆の順序で使用して、最初に説明された本発明による方法を実施することも可能であろう。
【0027】
本装置は、制御装置を有することができ、この制御装置は、制御装置を使用して、剥離装置を用いてケーブルシースの少なくとも1つの層を切断するための切断プロセス、およびレーザ切断装置を用いてケーブルのシースの少なくとも異なるまたはさらなる層を切断するための切断プロセスが制御されることができるように、設計され、剥離装置およびレーザ切断装置に接続される。この構成は、効率のさらなる向上を引き起こす。多層被覆を有するケーブルの剥離は、制御ユニットを用いて簡単に自動化されることができる。
【0028】
制御装置は、移送装置に接続されることができ、制御装置は、剥離装置もしくはレーザ切断装置における切断手順の終了後に、ケーブルを剥離装置からレーザ切断装置に、またはレーザ切断装置から剥離装置に、自動的に供給するように設計されるのが好ましい。
【0029】
本発明のさらなる個々の特徴および利点は、以下の例示的な実施形態の説明および各図面から導き出される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による多層シースを有するケーブルを剥離するための装置の上面図である。
図2】剥離されたケーブル端部を持つ三層シースを有するケーブルの拡大側面図である。
図3】剥離刃を用いて切断されて、裂け目を形成するために動かされた第1の層を備える、二層シースを有するケーブルである。
図4】レーザ光線を用いて第2の層を切断中の図3のケーブルである。
図5】剥離刃が後退させられた状態の、第2の層のレーザ切断後のケーブルである。
図6】完全に剥離されたケーブルおよび剥離刃を用いて分離された二層シースである。
図7】剥離刃を用いて切断されて、第2の層を露出するための裂け目を形成するために動かされた第1の層を備える、三層シースを有するケーブルである。
図8】レーザ光線を用いて第2の層を切断中の図7によるケーブルである。
図9】剥離刃が後退させられた状態の、第2の層のレーザ切断後のケーブルである。
図10】第3の層を露出するための裂け目を形成するために第2の層が動かされた後のケーブルである。
図11】レーザ光線を用いて第3の層を切断中の図10によるケーブルである。
図12】剥離刃が後退させられた状態の、第3の層のレーザ切断後のケーブルである。
図13】完全に剥離されたケーブルおよび剥離刃を用いて分離された三層シースである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、全体として1として示される、多層ケーブル3を剥離するための装置を示す。装置1は、ベルトコンベヤとして設計された供給ユニット13を有し、これを用いて、ケーブル3は、基本的に装置1の機械長手方向軸に対応する15として示された長手方向に沿って、旋回ユニット9に運ばれる。旋回ユニット9は、ケーブル3を把持するための把持手段を有し、この把持手段を使用して、ケーブルを長手方向15に、6として示された剥離装置まで運ぶことが可能である。
【0032】
剥離装置6は、ケーブルを定寸切断し、剥離刃(ここでは図示せず)を使用してこれを剥離するための、既知の剥離装置である。このタイプの剥離ステーションは、たとえば、欧州特許出願公開第1515410号明細書において図示および説明されており、剥離装置6の機能および構造的なデザインについての詳細に関して、この文献を参照する。剥離刃は、V字形の切断刃を有するV刃として設計されることができる。このようなV刃は、欧州特許出願公開第1515410号明細書からも知られている。交互に、剥離刃は、欧州特許出願公開第389107号明細書から知られているようなV刃として設計されることができる。明らかに、異なる切断刃および切断形状を有する刃もまた考えられる。米国特許第6370759号明細書に開示されているもののような、対向した切断刃を有する剥離刃が、布材、特にガラス繊維強化プラスチックまたは織布の層を分離するために、試行およびテストされる。このタイプの剥離刃は、2つの刃がケーブル方向にあまり強くなく別々に押し付けられるという利点を有する。
【0033】
機械長手方向軸に配置された剥離装置6とは対照的に、8で示された第2の剥離ステーションは、機械長手方向軸に隣接して配置される。この剥離ステーション8は、レーザ切断装置として設計される。ケーブルのシースは、レーザ光線を用いて少なくとも部分的に切断されることができる。このようなレーザ切断装置8の1つの可能な実施形態の詳細は、たとえば米国特許出願公開第2015/162729号明細書から導かれることができる。
【0034】
旋回ユニット9は、垂直軸を中心に回転することができる。図1による図示において、旋回ユニット9は、レーザ切断装置8の前の傾斜位置にある。したがって、旋回ユニット9は明らかに、旋回運動でケーブル3を剥離装置6からレーザ切断装置8に移送する(そして当然ながら戻す)ことができる移送装置を形成する。以下の方法において詳細に説明するように、2つの剥離ステーション6および8を用いて、ケーブル3のケーブル前端部が剥離されることができる。ケーブル3のケーブル後端部を剥離するために、第2の旋回ユニット9’および第2のレーザ切断ユニット8’が設けられ、そこでは、既に述べた剥離装置6をケーブル後端部のためにも用いることができる。
【0035】
剥離ステーション6,8,8’は、図1による例示的な実施形態において、共通の機械テーブルまたはプラットフォーム16上に配置される。機械テーブルまたは機械プラットフォーム16は、1つまたは複数の部品として設計されることができる。装置1は、従来のケーブルを組み立てるためのケーブル処理装置(たとえば、欧州特許出願公開第1447888号明細書を参照)において既に知られ、使用されているような、振動機の方法で実施される。多層ケーブル3を剥離するための装置1は、たとえば、全ての剥離ステーション(6,8,8’)が1つの機械長手方向軸(15)に沿って配置される、線形移送機として設計されることができる。このタイプの線形移送機は、たとえば欧州特許出願公開第1073163号明細書から知られている。
【0036】
図1において、装置1は、示された剥離ステーション6、ならびに8および8’のみを有する。追加の処理ステーションを設けることも考えられるであろう。追加の処理ステーション(ここでは図示せず)は、たとえば、グロメットステーション、圧着ステーション、およびハウジング組立ステーションとすることができる。
【0037】
装置1は、剥離装置6、レーザ切断装置8、および移送装置としての旋回ユニット9に接続された、制御装置17を有する。制御装置17は、剥離装置6およびレーザ切断装置8におけるそれぞれの切断動作を制御する。制御装置17は、剥離装置とレーザ切断装置との間のケーブルの必要な移送のために、移送装置9をさらに制御する。
【0038】
図2は、一般に使用される典型的な多層ケーブル3を示す。1つの導体2を囲むケーブル3は、ここでは3つの層から構成される多層シース5を有する。外部から見える外層または層10は、外側被覆10である。この外側被覆10は、PVCまたは別の可撓性プラスチック材料から作られることができ、ケーブルを絶縁し、天候から保護する働きをする。第1の層10の反対側の内側に位置する層を意味する次の第2の層は、たとえばガラス繊維布とすることができる布地層11または別の補強層である。最後に、第3の層は、プラスチック材料からなることができる薄膜12で形成される。膜12は、遮蔽箔として設計されることができる。導体2は、ここでは、通常銅またはアルミニウムで作られる複数の撚り線を備える。
【0039】
本発明による二層シース5を有するケーブル3を剥離するための方法の個々の方法工程が、図3から図6に図示されている。ケーブル3のシース5は、基本的に図2のケーブルの被覆構造に対応するが、図2に示されたケーブルとは異なり、このケーブル3は膜(12)を欠いている。
【0040】
二層シース5を有するケーブル3を剥離するための対応する剥離方法は、以下のとおりである。最初に、ケーブル3は、互いに向かって移動することができる剥離装置の2つの剥離刃4および14によって切断される。それぞれの切り込み深さは、外側被覆10の厚さに対応するように調整される。切断は、布地層11により形成された第2の層に到達するまで行われる。切断プロセスのための移動方向は、それぞれ矢印eで示される。切断後、剥離刃4,14は、ケーブル3に対して長手方向15に動かされる。この移動運動は、矢印fで示される。この移動は、剥離刃4,14を動かすことにより、および/または(図1に示された旋回ユニット9の把持手段を用いて)ケーブル3を動かすことにより、実施されることができる。外側被覆10から部分的に引き抜かれた被覆部が、10’で示される。
【0041】
この移動によって、スリットが作られて、第2の層11がほぼスリット幅sだけ露出される。スリット幅sを有するスリットの作成により、第2の層11を切断するためにレーザ光線を照射することが可能になる。スリット幅sは、処理されるケーブルおよびその寸法に依存し、典型的には0.1mmから1mmである。
【0042】
剥離装置における外側被覆10の切断、およびこの切断層または被覆部10’の制限された移動後、ケーブル3は、移送装置(ここでは図示せず)を用いて、レーザ切断装置8に運ばれることができる。図1に関連して述べた制御装置(17)は、切断手順の終了後に、ケーブル3を剥離装置6からレーザ切断装置8に自動的に供給するように設計されるのが好ましい。
【0043】
レーザ切断プロセスは、図4に示される。レーザ切断装置8を用いて、レーザ光線7がケーブル3に対して半径方向に向けられる。ケーブルを回転させることにより、またはケーブル3の周囲にレーザ光線7を発生させるための光源の回転により、円周切断がもたらされ、これにより布地層11が完全に切り離される。
【0044】
レーザ光線を用いて第2の層11を切断した後、剥離刃4,14が再び使用される。剥離刃4,14は、距離sを置いて互いに離間した外側被覆10,10’間の裂け目の中に配置される。図5は、このように配置された剥離刃4,14を有する剥離装置6を示す。方向fへの剥離刃4,14の移動により、完全に切断されたシース10’は導体2から引き抜かれることができる。完全に剥離されたケーブル3の端部が、図6に示される。5’で示されたシースの分離されたスリーブ部は、剥離刃4,14を動かすことにより、ケーブル3から取り除かれる。スリーブ部5’は、分離された被覆部10’および第2の層の分離部11’を備える。
【0045】
図7から図13は、図2のケーブルと同じように構成された三層シース5を有するケーブル3を剥離するための方法を示す。図7から図9は、基本的に図3から図5に対応する。最初に、剥離刃4,14を用いてケーブル3が部分的に切断され、次いで、およそスリット幅sに部分的に引き抜かれ(図7)、次いで、レーザ光線7を用いて第2の層11が切断され(図8)、次いで、剥離刃4,14がスリットに再配置される(図9)。
【0046】
図3から図6による剥離プロセスとは異なり、剥離刃4,14は、ここでは長手方向15の方向(矢印f)にわずかな距離だけ動かされる。このようにして、第3の層12が周囲に露出されたスリットが作られる。図10は、この移動運動後のケーブル3を示す。第3の層12が周囲に露出されたスリット幅が、図11にsで示される。
【0047】
レーザ切断装置がここで再び使用されることができる。レーザ光線7は、ケーブル3の周りを回転運動で動かされ、したがって、膜12は完全に分離される(図11)。レーザ光線を用いて第3の層12を切断した後、剥離刃4,14は、剥離刃を用いて分離された被覆10’のショルダを横方向から把持するように配置される(図12)。f方向への剥離刃4,14の移動の結果として、シースは完全に引き抜かれることができる。13)。スリーブ部5’は、明らかに3つの層、すなわち、被覆部10’、第2の層の部分11’、および12’で示された分離された膜部を備える。
【符号の説明】
【0048】
1 装置
2 電気導体
3 ケーブル
4、14 剥離刃
5 多層シース
5’ スリーブ部
6 剥離装置
7 レーザ光線
8 レーザ切断装置
8’ 第2のレーザ切断装置
9 旋回ユニット
9’ 第2の旋回ユニット
10 外側被覆(第1の層)
10’ 被覆部
11 布地層(第2の層)
11’ 分離部
12 薄膜(第3の層)
13 供給ユニット
15 長手方向
16 機械テーブルまたはプラットフォーム
17 制御装置
、f、f、f 矢印
s、s、s スリット幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13