(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】液体移送システム
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
(21)【出願番号】P 2017537029
(86)(22)【出願日】2015-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2015057563
(87)【国際公開番号】W WO2016051390
(87)【国際公開日】2016-04-07
【審査請求日】2018-09-28
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】517114333
【氏名又は名称】エクアシールド メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EQUASHIELD MEDICAL LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クリーエリ,マリノ
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】井上 哲男
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0006212(US,A1)
【文献】実開昭54-2786(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薬剤容器中で薬剤を再構成するためのシステムであって、当該複数の薬剤容器の各薬剤容器がアダプタを含み、当該システムが、
移送装置であって、
入口ポート、出口ポート、および取り付けポートを有するマルチポートマニホルドと、
前記取り付けポートに接続されたコネクタであって、前記複数の薬剤容器の1つの薬剤容器のアダプタに取り外し可能に取り付けられるように構成されたコネクタと、
前記マルチポートマニホルドの入口ポートから液体を前記コネクタを通して取り付けられた薬剤容器に移送するための第1の導管と、
前記コネクタおよび前記マルチポートマニホルドを通してガス状流体を取り付けられた前記薬剤容器の内部から前記マルチポートマニホルドの出口ポートに移送するための第2の導管と、を含む移送装置と、
液体を前記移送装置に輸送するための前記入口ポートに接続された液体輸送管と、
前記ガス状流体を前記移送装置から離れるように取り付けられた前記薬剤容器から輸送するための前記出口ポートに接続されたガス輸送管と、
取り付けられた前記薬剤容器から前記ガス状流体を収集するためのガス収集容器と、
第1のポートから第2のポートへ、および前記第2のポートから第3のポートへの一方向性の液体の流れを許容するように動作可能な3つのポートを有する弁であって、前記第3のポートが前記液体輸送管に接続されている弁と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記アダプタが薬剤バイアルアダプタ又は薬剤バッグアダプタであることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記マルチポートマニホルドが、前記ガス輸送管内への液体の流れを防止するために前記出口ポートに密封シールを含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項
1に記載のシステムにおいて、前記液体を前記第1のポートに輸送するために前記第1のポートに接続可能な液体供給管をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項
4に記載のシステムにおいて、前記液体を供給するために前記液体供給管に接続された液体容器をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項
1に記載のシステムにおいて、前記第2のポートが、手動操作可能なシリンジ、自動シリンジ装置、およびリピータポンプの何れか1つに接続可能であることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項
1に記載のシステムにおいて、前記第2のポートがルアーコネクタを含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ガス収集容器に向かう前記ガス状流体の一方向性の流れを許容するために前記ガス輸送管に接続された一方向弁をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記薬剤容器が薬剤バイアルまたは薬剤バッグの何れか一方であることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記液体が希釈剤であることを特徴とするシステム。
【請求項11】
複数の薬剤容器中で乾燥薬剤を再構成するか、または液体薬剤を希釈する方法であって、前記複数の薬剤容器の各薬剤容器がアダプタを含み、前記方法が、
移送装置を使用するステップを含み、当該移送装置が、
入口ポート、出口ポート、および取り付けポートを有するマルチポートマニホルドと、
前記取り付けポートに接続されたコネクタであって、前記複数の薬剤容器の1つの薬剤容器のアダプタに取り外し可能に取り付けられるように構成されたコネクタと、前記マルチポートマニホルドの入口ポートから液体を前記コネクタを通して取り付けられた薬剤容器に移送するための第1の導管と、前記コネクタおよび前記マルチポートマニホルドを通して取り付けられた前記薬剤容器の内部から前記マルチポートマニホルドの出口ポートにガス状流体を移送するための第2の導管と、を含み、前記移送装置を使用するステップが、
(a)前記コネクタに第1の薬剤容器のアダプタを取り付ける工程と、
(b)計量された量の希釈剤を、前記マルチポートマニホルドの入口ポートに接続された液体輸送管および前記第1の導管を通して、前記第1の薬剤容器に送り込む工程と、
(c)前記第1の薬剤容器から排出されたガス状流体を、前記出口ポートに接続されたガス輸送管を通してガス収集容器内に収集する工程と、
(d)前記移送装置から、前記第1の薬剤容器のアダプタを取り外す工程と、
(e)前記複数の薬剤容器の各薬剤容器について、(a)-(d)の工程を繰り返す工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の方法において、
前記計量された量の希釈剤を前記第1の薬剤容器に送り込む工程において、シリンジ、自動シリンジ装置、およびリピータポンプの何れか1つを使用して、前記計量された量の希釈剤を
送り込むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項
11に記載の方法において、
前記計量された量の希釈剤を前記第1の薬剤容器に送り込む工程において、希釈剤容器から前記希釈剤を
供給することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる、2014年10月2日に出願された米国仮特許出願第62/058,667号明細書の利益を主張する。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、医療および薬理学的用途で使用する流体移送装置に関し、より詳細には、しかし非排他的に、容器間で液体を汚染なしに移送するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
薬剤を扱うための閉鎖システムおよび閉鎖式薬剤移送装置は、当該技術分野において周知である。これらは、通常、特にある容器から別の容器に危険な薬剤を移す際に、人間の薬剤への潜在的な曝露を減らすために使用される。これらのタイプのシステムおよび装置は、一般に、米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)によって提供される定義に準拠するように設計されている。その定義とは以下の通りである。
「閉鎖式薬剤移送装置(CSTD)は、システム内に環境汚染物質が移動することおよび有害な薬剤または蒸気濃縮物がシステム外に逃げることを機械的に禁止する薬剤移送装置である。」
【0004】
有害な薬剤への曝露は、特に曝露が時間をかけて行われる場合、それらに曝露されている人々に重篤な健康合併症を引き起こす可能性がある。これらの合併症は、皮膚炎から、先天性欠損症、さらには様々な形態の癌の発生にまで及ぶ可能性がある。例えば、有害な抗悪性腫瘍薬を含む化学療法薬を調製および投与するために、それらの薬剤を元のバイアルからシリンジに、かつシリンジからIV注入バッグに移す必要がある。移送のたびに有害な薬剤への曝露の可能性が生じる。
【0005】
各研究によれば、CSTDを使用しない場合、カウンターおよびドアノブを含む作業場内の表面に、さらには秘書卓のような可能性が低い場所の表面にさえも有害薬剤の残留物の存在が示された。これは、薬剤の接着特性によるものである。CSTDを使用すると、残留物の割合および薬剤からの有害な蒸気への曝露がかなり低減される可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態によれば、マルチポートマニホルドと、薬剤容器に取り付けられるのに適したコネクタとを含む移送装置を含む閉鎖型液体移送システムが提供される。移送装置は、マニホルドの入口ポートに入る液体をコネクタを通してかつ薬剤容器に移送するための第1の導管と、ガス状流体をコネクタおよびマニホルドを通してマニホルドの出口ポートに移送するための第2の導管とを含む。システムは、液体を移送装置に輸送するための入口ポートに接続可能な管と、ガス状流体を移送装置から離れるように輸送するための出口ポートに接続可能な管とをさらに含む。
【0007】
本発明の実施形態によれば、システムは、ガス輸送管内のガス状流体を収集するためのガス収集容器をさらに含む。
【0008】
本発明の実施形態によれば、マニホルドは、ガス輸送管内への液体の流れを防止するために出口ポートに密封シールを含む。
【0009】
本発明の実施形態によれば、システムは、第1のポートから第2のポートへ、および第2のポートから第3のポートへの一方向性の液体の流れを可能にするように動作可能な3つのポートを有する弁をさらに含む。
【0010】
本発明の実施形態によれば、システムは、液体を第1のポートに輸送するために第1のポートに接続可能な液体供給管をさらに含む。
【0011】
本発明の実施形態によれば、液体輸送管は弁の第3のポートに接続可能である。
【0012】
本発明の実施形態によれば、システムは、液体を供給するために液体供給管に接続可能な液体容器をさらに含む。
【0013】
本発明の実施形態によれば、第2のポートは、手動操作可能なシリンジ、自動シリンジ装置、およびリピータポンプの何れか1つに接続可能である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、第2のポートはルアーコネクタを含む。
【0015】
本発明の実施形態によれば、システムは、ガス収集容器に向かうガス状流体の一方向性の流れを許容するためにガス状流体輸送管に接続された一方向弁をさらに含む。
【0016】
本発明の実施形態によれば、薬剤容器は薬剤バイアルまたは薬剤バッグの何れか一方である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、液体は希釈剤である。
【0018】
本発明の実施形態によれば、複数の薬剤容器中で乾燥薬剤を再構成するか、または液体薬剤を希釈する方法が提供される。この方法は、(1)マルチポートマニホルドと、薬剤容器に取り付けられるのに適したコネクタとを含む移送装置を薬剤容器に取り付けるステップであって、移送装置が、マニホルドの入口ポートに入る液体をコネクタを通してかつ薬剤容器に移送するための第1の導管と、コネクタおよびマニホルドを通してマニホルドの出口ポートにガス状流体を移送するための第2の導管とを含む、ステップと、(2)計量された量の希釈剤を、マニホルドの入口ポートに接続された管に送り込むステップと、(3)薬剤容器から排出されたガス状流体を、出口ポートに接続された管を通してガス収集容器内に収集するステップと、(4)複数の薬剤容器について上記ステップを繰り返すステップとを含む。
【0019】
本発明の実施形態によれば、本方法は、シリンジ、自動シリンジ装置、およびリピータポンプの何れか1つを使用して、計量された量の希釈剤を送り込むステップをさらに含む。
【0020】
本発明の実施形態によれば、本方法は、希釈剤容器から希釈剤を供給するステップをさらに含む。
【0021】
本発明の実施形態によれば、薬剤容器中で乾燥薬剤を再構成する際に使用するための、および液体薬剤を希釈するための移送装置が提供され、移送装置は、マルチポートマニホルド、および薬剤容器に取り付けられるのに適したコネクタと、マニホルドの入口ポートに入る液体をコネクタを通してかつ薬剤容器に移送するための第1の導管と、ガス状流体をコネクタを通してマニホルドの出口ポートに移送するための第2の導管とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例としてここに記載される。示された詳細は例示を目的とし、本発明の実施形態の考察を提供する役割を果たす。説明および図面は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにするであろう。
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による例示的な液体移送システムを概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による、マルチポートマニホルド(Tコネクタ)と、マニホルドのポートに取り付けられるCSTDコネクタとを含む移送装置の詳細図を概略的に示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による、閉鎖式再構成もしくは膨張プロセス、または他の液体移送プロセスにおいて手動操作式シリンジと共に使用される液体移送システムを示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による、閉鎖式再構成もしくは膨張プロセス、または他の液体移送プロセスにおいて自動シリンジ装置と共に使用される液体移送システムを示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による、閉鎖式再構成もしくは膨張プロセス、または他の液体移送プロセスにおいてリピータポンプと共に使用される液体移送システムを示す。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態による、複数の薬剤容器における薬剤再構成または薬剤希釈のための閉鎖式液体移送システムを使用する例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されおよび/または図面に示される構造の詳細ならびに構成要素および/または方法の構成に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるか、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0025】
既知のCSTDを使用する薬剤再構成または希釈プロセスは、しばしば多くのステップを伴う。典型的なCSTD再構成または希釈プロセスは、(a)希釈剤(例えば、生理食塩水、デキストロース、蒸留水)を保持する容器にアダプタを接続するステップと(例えば、生理食塩水バッグに接続されるスパイクアダプタ)、(b)シリンジをアダプタに接続するステップと、(c)ある量の希釈剤をシリンジに引き込むステップと、(d)シリンジを希釈剤容器から取り外し、それを薬剤容器上のアダプタ(例えば、バイアル上のバイアルアダプタ、またはバッグ上のスパイクアダプタ)に接続するステップと、(e)再構成される乾燥薬剤または希釈される流体薬剤を保持する薬剤容器に希釈剤を注入するステップと、(f)希釈剤の注入後、CSTDに応じて、シリンジを取り外し得、新しい薬剤容器についてステップb~eを繰り返すステップであって、同じシリンジを使用するか、またはシリンジは廃棄され、新しいシリンジが使用される、ステップとを含み得る。シリンジには、薬剤容器上の特別のアダプタに適合し得る特別のコネクタが取り付けられてもよく、この際、コネクタおよびアダプタの両方は、ガスが薬剤容器(および取付けられたシリンジ)から周囲へ漏れないように、および汚染された空気が周囲から薬剤容器(および取り付けられたシリンジ)に流入しないように設計される。
【0026】
本出願人は、上記の記載から認識され得るように、既知のCSTDを用いた薬剤の再構成および薬剤の希釈が、特に多くの薬剤容器を調製しなければならない場合に面倒で時間がかかり、潜在的に高価なプロセスであり得ることを認識してきた。既知のCSTDは、小規模の医療施設で必要とされ得るような少量の薬剤容器、例えば1日当たり数個の容器の調製には実用的であり得るが、毎日の調製必要量が数十、数百、またはそれを超えて上回り得る中規模および大規模施設にとって実用的でないことが明らかとなり得る。
【0027】
本出願人は、典型的なCSTD再構成または希釈プロセスにおけるステップ数を減らすことは、これらの欠点の全てではないにしても一部を克服する可能性があること、および新しい薬剤容器が使用されるたびに希釈剤容器と薬剤容器との間でシリンジを物理的に接続および切断する必要なく、希釈剤容器から複数の薬剤容器への希釈剤の移送を許容し得る閉鎖式液体移送システムにより、可能な解決策が提供され得ることをさらに認識してきた。
【0028】
その全てが本発明の譲受人により一般に所有されており、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8,196,614号明細書、米国特許第8,267,127号明細書、イスラエル特許出願IL224630号明細書、およびイスラエル特許出願第226281号明細書には、有害な薬剤の汚染のない移送を実現するのに適した閉鎖式液体移送装置の実施形態が開示されている。本出願人は、これらの液体移送装置のいくつかが、汚染のない再構成または希釈された薬剤の計量された量を複数の容器中で経済的に調製することを比較的容易に可能にする本発明の密閉システム液体移送システム(以下、便宜上、「液体移送システム」と呼ぶ)と共に使用できるコネクタおよびアダプタ(例えば、スパイクアダプタおよびバイアルアダプタ)を含むことを認識してきた。
【0029】
本出願人は、液体移送システムを使用することにより、有害な薬剤の再構成および希釈に関連する安全性の問題および潜在的な危険性を改善できることをさらに認識してきた。例えば、シクロホスファミドなど、化学療法のために広く使用されている有害な薬剤をその粉末形態から注射可能な液体形態に再構成するために、塩化ナトリウム(生理食塩水)の溶液などの希釈剤をガラスバイアルに注入することができる。生理食塩水は、典型的には輸液バッグで入手可能であり、一般にバッグからシリンジに引き込む必要がある。2gのシクロホスファミドバイアルは、典型的には、100mlの溶液の注入を必要とする。シクロホスファミド粉末が実際に溶解するまでに長い時間がかかる場合があるため、多くの薬局では、長い調製時間を避けるために一度に多数のこのようなバイアルを再構成し、それらを一週間を通して使用し得る。バイアルへの100mlの液体の添加は、ガラスバイアル内の圧力が(希釈剤の添加のために)増加し、場合によっては再構成された薬剤が、使用のために保管される間に加圧バイアルから漏れ出ることがあるため、安全性の問題および潜在的な安全上の危険をもたらす可能性がある。液体移送システムは、バイアル内部のそのような過圧状態を排除するための解決策を提供し、閉鎖システムにおける流体の漏れのない移送を実現し得る。
【0030】
以下の図は、本発明の液体移送システムの例示的な実施形態、ならびに薬剤再構成および薬剤希釈のためのシステムを使用する例示的な方法を示す。これらの図およびそれらに関連する説明は、包括的であること、または開示された実施形態に本発明を限定することを意図するものではない。
【0031】
当業者は、本明細書に開示されていないが、本発明の教示の制約内にある修正形態、置換形態、変更形態、および等価物で本発明が実施され得ることを容易に理解するであろう。さらに、当業者であれば、本発明を、本明細書に開示されているような薬剤再構成および希釈以外の他の用途、例えば計量された量の液体を第1の容器から第2の容器へ汚染なしに移送するために使用できることを容易に理解するであろう。ある場合には、液体は、第1の容器から第2の容器に移送される薬剤または薬剤の組み合わせを含み得るが、シリンジによって移送可能であり得る任意の液体が適切であり得る。
【0032】
ここで、本発明の実施形態による例示的な液体移送システム100を概略的に示す
図1を参照する。液体移送システム100は、液体供給管102と、二重逆止弁104または機能的に類似する装置と、液体輸送管112と、マルチポートマニホルド114およびCSTDコネクタ116を含む移送装置101と、ガス輸送管118と、逆止弁120または機能的に類似する装置とを含む。さらに、液体移送システム100は、ガス収集容器122を含み得る。以下、便宜上、二重逆止弁104および逆止弁120に機能的に類似する装置を、それぞれ「二重逆止弁104」および「逆止弁120」と呼ぶこともある。
【0033】
本発明の実施形態では、液体移送システム100は、希釈剤容器126から、CSTDコネクタ116に接続され得る薬剤容器131への流体、例えば希釈剤128の汚染のない移送に、および閉鎖システムにおいて薬剤容器からガス収集容器122へガス124(薬剤放出蒸気と混合された空気を含み得る)を導くために使用され得る。薬剤容器131は、乾燥形態(再構成用)または液体形態(希釈用)であり得る薬剤134を含む、バイアル130またはバッグ状薬剤容器132を含み得る。これらのガスは、希釈剤が薬剤容器内のガス124によって先に占められていた空間を占有し、両方に余地がないため、薬剤134に希釈剤128を添加するプロセス中に薬剤容器131から自然に押し出され得る。
【0034】
液体供給管102は、遠位端で希釈剤容器126に接続し得る。希釈剤容器126は、例えば、生理食塩水、デキストロース、蒸留水、または乾燥薬剤を再構成するためにおよび/または流体薬剤を希釈するために使用される他のタイプの流体であり得る希釈剤128を含有する、1つまたは複数の希釈剤バッグを含み得る。近位端において、液体供給管102は、二重逆止弁104に接続し得る。
【0035】
二重逆止弁104は、3つのポート、すなわち、液体供給管102に接続し、希釈剤128が希釈剤容器126から弁に流入する第1のポート106と、手動操作式シリンジ、自動作動シリンジ、もしくは例えばリピータポンプなどのポンプ、または計量された量の流体をシステムに注入することができる何れかの他の源に接続され得る第2のポート108と、液体輸送管112の近位端が接続され得、および二重逆止弁から希釈剤128が流入し得る第3のポート110とを含み得る。二重逆止弁104は、
図3~
図5を参照して以下にさらに説明するように、ポート106からポート108への一方向性の希釈剤の流れを許容し得、およびさらにポート108からポート110への一方向の流れを許容し得る。第2のポート108は、標準的な雌ルアーロックポート109または何れかの他の適切な接続手段を含み得る。
【0036】
液体輸送管112は、二重逆止弁104の第3のポート110をマルチポートマニホルド114に流体接続して、二重逆止弁からマニホルドへの希釈剤の流れを許容し得る。マルチポートマニホルド114は、TコネクタまたはYコネクタを含み得、かつ液体輸送管112の遠位端に接続する第1のポート115と、CSTDコネクタ116に接続し得る第2のポート119と、ガス容器122に通じるガス輸送管118の近位端に接続し得る第3のポート117とを含み得る。
【0037】
ここで、
図2を同じく参照すると、本発明の実施形態による、マルチポートマニホルド114(Tコネクタ)と、第2のポート119に接続されたCSTDコネクタ116とを含む移送装置101の詳細図が概略的に示されている。マニホルド114の第3のポート117は、第1のポート115を通ってマニホルド内に流入する希釈剤128がガス輸送管118に流入するのを防止するシール121を含み得る。
【0038】
CSTDコネクタ116は、本発明の譲受人が一般に所有する前述の特許および特許出願に記載されたコネクタの1つを含み得る。そこに記載されているコネクタは、CSTDでの使用に適しており、薬剤容器131に接続可能なアダプタに取り付け可能である。アダプタは、また、本発明の譲受人が一般に所有する前述の特許および特許出願に記載されたアダプタの1つを含み得る。例えば、CSTDコネクタ116はシリンジコネクタであり得、アダプタは、バイアル(薬剤容器)130に取り付けるためのバイアルアダプタであり得、その両方は米国特許第8,196,614号明細書に記載されているようなものであり、シリンジコネクタは、マニホルド114の第2のポート119に接続するように適切に修正されている。代替的には、アダプタは、バッグ薬剤容器132に取り付けるためのバッグアダプタであり得、修正されたシリンジコネクタがそれに接続され得る。
【0039】
CSTDコネクタ116は希釈剤導管136を含み得、希釈剤導管136を通って、マニホルド114の第1のポート115に入る希釈剤128はマニホルドを通り、バイアルまたはバッグアダプタ(図示せず)を通って薬剤容器131に流れ込む。CSTDコネクタ116はガス導管138をさらに含み得、ガス導管138を通って、薬剤蒸気と混合され得る空気を含むガス124が薬剤容器131の内側からアダプタを通りかつコネクタを通ってガス輸送管118に向かい、ガス容器122に流れ得る。ガス導管138は、CSTDコネクタ116を通ってマニホルド114内に、および第3のポート117のシール121を通ってガス輸送管118の方向に延在し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、CSTDコネクタ116およびマルチポートマニホルド114は、単一の構成要素として形成されてもよく、または単一のアセンブリとして工場で予め組み立てられてもよい。あるいは、CSTDコネクタ116およびマルチポートマニホルド114は、液体移送システムの現場組立中に1つのアセンブリとして相互に接続され得る2つの別個の構成要素であってもよく、この際、シールを通るガス導管138の挿入を可能にするための手段がシール121内に形成される。
【0041】
ガス輸送管118は、近位端でマニホルド114の第3のポート117に接続され得、ガス導管138を通って流れるガス124を薬剤容器131からガス容器122に輸送し得る。ガス輸送管118の逆止弁120は、ガス収集バッグ122に入る一方向性のガスの流れを許容し得、かつガス収集バッグからマニホルド114に向かう方向にガスが流れるのを防止し得る。逆止弁120はさらに、例えば、洗い流す結果として、ガス収集バッグ122に集まる可能性のあるいかなる液体もマニホルド114に向かってガス収集バッグから流出するのを防止し得る。
【0042】
当業者であれば、本発明の液体移送システムが異なる構成要素または構成要素の組み合わせを使用して上記の説明に基づいて実施可能であること、および本発明の実施が、
図1を参照して示され記載されたものと同じ正確な1つまたは複数の構成要素を使用することに限定されないことを認識するであろう。以下の
図3~
図5は、本発明のいくつかの実施形態による、計量された量の膨張128(または他の流体)をシステムに注入するための異なる機構を有する液体移送システム100の例示的な使用を示す。
【0043】
図3は、本発明の実施形態による、閉鎖式の再構成もしくは膨張プロセス、または他の液体移送プロセスにおいて手動操作式シリンジ150と共に使用される液体移送システム100を概略的に示す。シリンジ150は、二重逆止弁104の第2のポート108のルアーコネクタ109に接続され得る。
【0044】
作動中、希釈剤128は、プランジャが引かれたときにシリンジ150が希釈剤を引くことに応答して、希釈容器126から液体供給管102を通って二重逆止弁104のポート106に流れ込み得る。ポート106からの希釈流はポート108への一方向性であり、希釈剤128はシリンジ150に引き込まれ得る。シリンジ150に引き込まれる希釈剤128の量は、(シリンジ上のマーキングに対するプランジャの位置によって視覚的に決定される)所望の位置までプランジャを引くことによって測定することができる。所望の量の希釈剤128が充填されると、シリンジ150内の計量された量の希釈剤128をポート108に流入させながらプランジャを押し込むことができる。ポート108からの流れは二重逆止弁104の第3のポート110まで一方向性であり得、その結果、プランジャを押すやと、計量された量の希釈剤128は、二重逆止弁104を通って液体輸送管112に流れ込む。液体輸送管112から、計量された量の希釈剤128がマニホルド114に流れ込み、CSTDコネクタ116を通り希釈剤導管136を通って薬剤容器131(バイアル容器130またはバッグ薬剤容器132)へ流れ込み、再構成された(または希釈された)薬剤135を作り得る。バイアル130から排出されたガス124は、CSTDコネクタ116およびマニホルド114内のガス導管138を通ってガス輸送管118に、およびガス収集バッグ122に流れ込み得る。
【0045】
図4は、本発明の実施形態による、閉鎖式再構成または膨張プロセス、または他の液体移送プロセスにおいて自動シリンジ装置152と共に使用される液体移送システム100を概略的に示す。シリンジ150は、自動シリンジ装置152(半自動式であってもよい)に取り付け可能であり、かつシリンジとの間で希釈剤128が流れ得る移送管154によって二重逆止弁104の第2のポート108に接続可能である。代替的に、シリンジ150は、第2のポート108のルアーコネクタ109に直接接続されてもよい。液体移送システム100の作動は、
図3に関して記載されたものにかなり類似しているが、シリンジの作動は(自動シリンジ装置152によって)自動的である。
【0046】
図5は、本発明の実施形態による、閉鎖式再構成もしくは膨張プロセス、または他の液体移送プロセスにおいてリピータポンプ160と共に使用される液体移送システム100を概略的に示す。リピータポンプ160または他の適切な自動または半自動流体注入装置は、それ自体の希釈剤容器162を含むことができ、または供給管166を介して外部希釈剤容器164に流体接続されてもよく、その結果、希釈剤容器126および液体供給管102は不要でもよい。液体移送管112は、前述した二重逆止弁104が同じく不要でもよいように、リピータポンプ160に直接接続されてもよい。液体移送システム100は、希釈剤128がリピータポンプ160からマニホルド114のポート115に直接注入される状態で作動し得る。リピータポンプ160を用いた液体移送システム100の作動は、
図3に記載したものとかなり類似し得るが、容器126、液体供給管102、および二重逆止弁104は不要である。
【0047】
ここで
図6を参照する。
図6は、本発明の実施形態による、複数の薬剤容器における薬剤再構成または薬剤希釈のために閉鎖式液体移送システムを使用する例示的な方法のフローチャートである。この方法は、液体移送システムのセットアップを含む第1段階と、システムセットアップ後の複数の薬剤容器への液体移送を含む第2段階とを含み得る。この方法の説明において、
図4および
図5の実施形態を参照することもできるが、分かりやすくするために、
図1および
図3に記載の液体移送システム100を参照する。
【0048】
当業者には、この方法がより多いまたは少ないステップを用いて、または異なるステップシーケンスを用いて実施されてもよく、ステップの追加および/または削除、ステップの省略、ならびにステップの順序の並べ替えを含んでもよいことが明らかであろう。
【0049】
第1段階:
600において、液体供給管102が希釈剤容器126に接続され得る。希釈剤容器126は、希釈剤バッグまたは希釈剤128を保持するための他の適切な容器であり得る。希釈剤容器126は、液体供給管102に接続可能なアダプタを予め備えられていてもよく、代替的には、アダプタは、このステップ中に容器に接続されてもよい。
【0050】
601において、シリンジ150が二重逆止弁104の第2のポート108に接続される。シリンジ150は、手動操作式シリンジであってもよく、または自動シリンジ装置152に取り付けられてもよい。代替的には、シリンジ(手動または自動式)の代わりに、リピータポンプ160または他の適切な注入手段がポート108に(または液体輸送管112に直接)接続されてもよい。
【0051】
602において、希釈剤128は、プランジャを引っ張ることによってシリンジ150に引き込まれる。希釈剤の量は、空気を押し出して液体に置換し、またシステム構成要素の何れかに存在し得る薬剤残留物を洗い流すために、システムを洗い流してプライミングするのに十分なものでなければならない。あるいは、リピータポンプ160が使用される場合、リピータポンプは、全く必要ない可能性がある希釈剤容器126から希釈剤を引き出す必要はなく、リピータポンプは、任意選択のポンプ容器162からまたは外部希釈剤容器164から、洗い流しおよびプライミングに必要な量をポンプ送給し得る(604参照)。
【0052】
603において、希釈剤128が液体輸送管112に注入され、システムを洗い流す。洗い流しプロセスの一部として、希釈剤128は、マルチポートマニホルド114を通ってCSTDコネクタ116に、および希釈剤導管136に流入し得る。CSTDコネクタ116は、このステップでバイアルアダプタに接続されないため、希釈剤128は、希釈剤導管136からCSTDコネクタ内のチャンバを通ってガス導管138へ流入し得る(すなわち、CSTDコネクタは、米国特許第8,196,614号明細書のコネクタセクション25と機能的に類似し得る)。ガス導管138に流入する希釈剤128は、ガス輸送部118に、およびガス容器122に流入し得、そこに集められ収容される。
【0053】
第2段階:
604において、アダプタを取り付けられた薬剤容器131(例えば、バイアルアダプタが取り付けられたバイアル130またはスパイクアダプタが取り付けられたバッグ132)がCSTDコネクタ116に接続される。後続の606は、この605と交換可能である。
【0054】
605において、再構成または希釈に使用される必要量の希釈剤128が希釈剤容器126からシリンジ150に引き込まれる。その量は、(希釈剤をシリンジに引き込むために)プランジャを引っ張っている間にシリンジスケール上で使用者が計量することができ、または自動シリンジ装置150用の他のパラメータ(例えばプランジャ引張長さ)に基づくことができる。代替的に、シリンジ(手動または自動式)の代わりに、リピータポンプ160が使用されてもよく、希釈剤128の引込みは必要ない。リピータポンプ160は、予めプログラムされた必要量を注入し得る(607参照)。
【0055】
606において、希釈剤128は、プランジャを押すことによって液体輸送管112に注入されるか、またはポンプによって注入される。希釈剤は、液体輸送管112を通ってマルチポートマニホルド114に流入し得、かつマニホルドおよびCSTDコネクタ116内の希釈剤導管136を通りアダプタを通って薬剤容器131に流入し得る。薬剤容器131内のガス124は、ガス導管138を通ってガス輸送管118へ、およびガス容器124へ流出し得る。マルチポートマニホルド114内のシール121は、注入された希釈剤がマルチポートマニホルドからガス輸送管118に流出することを防止し得る。
【0056】
607において、希釈剤128が薬剤容器131に注入された後、(薬剤容器が取り付けられた状態で)アダプタをCSTDコネクタ116から取り外すことができる。
【0057】
608において、別の(「新しい」)薬剤容器131内の同じ薬剤134が再構成または希釈される場合、第5~第8のステップが繰り返されてもよい。同様に、希釈剤容器126が同じ希釈剤を含む希釈剤容器に交換される場合である。異なる薬剤を再構成または希釈する場合、または新しい種類の希釈剤を使用する場合、第1から第8のステップを繰り返すことができる。
【0058】
609において、全ての薬剤容器131が満たされると、プロセスは終了する。
【0059】
本発明の実施形態の前述の説明および図示は、例示のために提示された。網羅的であることを意図するものでも、本発明を上記の説明に限定するものでも決してない。
【0060】
上記に定義され、特許請求の範囲で使用されるあらゆる用語は、この定義に従って解釈されるべきである。
【0061】
特許請求の範囲に含まれる場合、参照番号は特許請求の範囲の一部ではなく、むしろその読解を容易にするために使用される。これらの参照番号は、決して特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。