(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】多層スロットダイ及び方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20220801BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20220801BHJP
B05D 1/34 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B05C5/02
B05D1/26 Z
B05D1/34
(21)【出願番号】P 2018036482
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391019120
【氏名又は名称】ノードソン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ジェイ キュンネ
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-517764(JP,A)
【文献】特開平09-085149(JP,A)
【文献】特開2003-275651(JP,A)
【文献】特開2003-236440(JP,A)
【文献】特開2008-272751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0090322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05C 5/00 - 21/00
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方中央面、下方中央面及び中央後方面を有する中央本体部材と、
上方面及び上方後方面を有する上方本体部材と、
下方面及び下方後方面を有する下方本体部材と、
を備えた多層スロットダイであって、
前記上方面は、前記上方中央面から間隔を空けていて、両者の間に第1チャネルを形成しており、
前記第1チャネルは、当該多層スロットダイのディスペンシング端において第1開口を含んでおり、
前記上方本体部材は、第1位置と第2位置との間で移動するように構成されており、
前記第1位置において、前記上方面は、前記上方中央面から第1距離だけ間隔を空けており、
前記第2位置において、前記上方面は、前記上方中央面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ間隔を空けていて、
前記第1開口は、前記上方本体部材の前記第1位置及び前記第2位置の両方において、前記中央後方面と前記上方後方面との両方に対して実質的に平行であり、
前記下方面は、前記下方中央面から間隔を空けていて、両者の間に第2チャネルを形成しており、
前記第2チャネルは、前記ディスペンシング端において第2開口を含んでおり、
前記第2開口は、前記上方本体部材の前記第1位置及び前記第2位置の両方において、前記第1開口と前記下方後方面とに対して実質的に平行であ
り、
当該多層スロットダイは、
前記中央後方面に結合され、前記上方後方面から間隔を空けている第1オフセットブロックと、
前記下方後方面に結合され、前記中央後方面から間隔を空けている第2オフセットブロックと、
を更に備えている
ことを特徴とする
多層スロットダイ。
【請求項2】
前記下方本体部材は、第1位置と第2位置との間で移動するように構成されており、
前記第1位置において、前記下方面は、前記下方中央面から第1下方距離だけ間隔を空けており、
前記第2位置において、前記下方面は、前記下方中央面から前記第1下方距離とは異なる第2下方距離だけ間隔を空けており、
前記第2開口は、前記下方本体部材の前記第1位置及び前記第2位置の両方において、前記中央後方面と前記上方後方面と前記下方後方面とに対して実質的に平行である
ことを特徴とする請求項1に記載の
多層スロットダイ。
【請求項3】
前記上方本体部材が前記第1位置にある時に、前記第1チャネル内に位置決めされる第1上方シムと、
前記上方本体部材が前記第2位置にある時に、前記第1チャネル内に位置決めされる第2上方シムと、
を更に備え、
前記第1上方シムは、第1上方厚さを有しており、
前記第2上方シムは、前記第1上方厚さとは異なる第2上方厚さを有している
ことを特徴とする請求項2に記載の
多層スロットダイ。
【請求項4】
前記下方本体部材が前記第1位置にある時に、前記第2チャネル内に位置決めされる第1下方シムと、
前記下方本体部材が前記第2位置にある時に、前記第2チャネル内に位置決めされる第2下方シムと、
を更に備え、
前記第1下方シムは、第1下方厚さを有しており、
前記第2下方シムは、前記第1下方厚さとは異なる第2下方厚さを有している
ことを特徴とする請求項3に記載の
多層スロットダイ。
【請求項5】
前記上方本体部材の前記上方面は、前記上方本体部材の前記上方後方面に隣接しており、
前記下方本体部材の前記下方面は、前記下方本体部材の前記下方後方面に隣接している
ことを特徴とする請求項1に記載の
多層スロットダイ。
【請求項6】
前記上方後方面、前記下方後方面及び前記中央後方面は、当該多層スロットダイの背面端を規定しており、
前記背面端は、第1方向において、前記ディスペンシング端から間隔を空けている
ことを特徴とする請求項1に記載の
多層スロットダイ。
【請求項7】
前記上方後方面は、前記第1方向において前記中央後方面と前記ディスペンシング端との間に位置決めされており、
前記中央後方面は、前記第1方向において前記下方後方面及び前記ディスペンシング端との間に位置決めされている
ことを特徴とする請求項6に記載の
多層スロットダイ。
【請求項8】
上方面及び上方後方面を有する上方本体部材と、
下方面及び下方後方面を有する下方本体部材と、
前記上方本体部材と前記下方本体部材との間に少なくとも部分的に位置決めされた中央本体部材と、
を備えた多層スロットダイであって、
前記中央本体部材は、上方中央面、下方中央面及び中央後方面を有しており、
前記上方中央面は、前記上方本体部材の前記上方面から間隔を空けていて、両者の間に第1チャネルを形成しており、
前記下方中央面は、前記下方本体部材の前記下方面から間隔を空けていて、両者の間に第2チャネルを形成しており、
前記第1チャネルは、当該多層スロットダイのディスペンシング端において第1開口を含んでおり、
前記第2チャネルは、当該多層スロットダイの前記ディスペンシング端において第2開口を含んでおり、
前記第1開口及び前記第2開口は、前記上方後方面、前記下方後方面及び前記中央後方面に実質的に平行であ
り、
当該多層スロットダイは、
前記中央後方面に結合され、前記上方後方面から間隔を空けている第1オフセットブロックと、
前記下方後方面に結合され、前記中央後方面から間隔を空けている第2オフセットブロックと、
を更に備えている
ことを特徴とする
多層スロットダイ。
【請求項9】
前記上方本体部材の前記上方面は、前記上方本体部材の前記上方後方面に隣接しており、
前記下方本体部材の前記下方面は、前記下方本体部材の前記下方後方面に隣接している
ことを特徴とする請求項8に記載の
多層スロットダイ。
【請求項10】
前記中央後方面は、前記上方中央面と前記下方中央面との間に位置決めされ、両者に隣接している
ことを特徴とする請求項8に記載の
多層スロットダイ。
【請求項11】
前記上方後方面、前記下方後方面及び前記中央後方面は、当該多層スロットダイの背面端を規定しており、
前記背面端は、第1方向において、前記ディスペンシング端から間隔を空けている
ことを特徴とする請求項8に記載の
多層スロットダイ。
【請求項12】
前記上方後方面は、前記第1方向において前記中央後方面と前記ディスペンシング端との間に位置決めされており、
前記中央後方面は、前記第1方向において前記下方後方面及び前記ディスペンシング端との間に位置決めされている
ことを特徴とする請求項11に記載の
多層スロットダイ。
【請求項13】
前記第1オフセットブロックは、前記第1方向において前記上方後方面から間隔を空けており、
前記第2オフセットブロックは、前記第1方向において前記中央後方面から間隔を空けている
を更に備えたことを特徴とする請求項12に記載の
多層スロットダイ。
【請求項14】
前記上方中央面は、前記上方本体部材の前記上方面に実質的に平行であり、
前記下方中央面は、前記下方本体部材の前記下方面に実質的に平行である
ことを特徴とする請求項8に記載の
多層スロットダイ。
【請求項15】
前記第1チャネルは、前記第2チャネルから角度方向にオフセットされている
ことを特徴とする請求項8に記載の
多層スロットダイ。
【請求項16】
前記中央本体部材は、2または3以上の中央本体部材要素を有している
ことを特徴とする請求項8に記載の
多層スロットダイ。
【請求項17】
多層スロットダイから第1流体及び第2流体をディスペンシングするための方法であって、
前記多層スロットダイのディスペンシング端において第1チャネルの第1開口を介して前記第1流体をディスペンシングする工程と、
前記多層スロットダイの前記ディスペンシング端において第2チャネルの第2開口を介して前記第2流体をディスペンシングする工程と、
を備え、
前記第1チャネルは、中央本体部材の上方中央面から間隔を空けている上方本体部材の上方面によって規定されており、
前記第2チャネルは、中央本体部材の下方中央面から間隔を空けている下方本体部材の下方面によって規定されており、
前記上方本体部材は、上方後方面を有しており、
前記下方本体部材は、下方後方面を有しており、
前記中央本体部材は、中央後方面を有しており、
前記第1開口及び前記第2開口は、前記上方後方面、前記下方後方面及び前記中央後方面に対して実質的に平行であ
り、
前記多層スロットダイは、第1オフセットブロックと、第2オフセットブロックと、を含んでおり、
前記第1オフセットブロックは、前記中央後方面に結合され、前記上方後方面から間隔を空けており、
前記第2オフセットブロックは、前記下方後方面に結合され、前記中央後方面から間隔を空けている
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記上方本体部材を第1位置に位置決めする工程と、
前記上方本体部材を第2位置に位置決めする工程と、
を更に備え、
前記第1位置において、前記上方面は、前記上方中央面から第1距離だけ間隔を空けており、
前記第2位置において、前記上方面は、前記上方中央面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ間隔を空けており、
前記第1開口及び前記第2開口は、前記上方本体部材の前記第1位置及び前記第2位置の両方において、前記上方後方面、前記中央後方面及び前記下方後方面に対して実質的に平行である
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットダイに関しており、特には、改良された多層スロットダイ及び当該多層スロットダイを用いる方法に関している。
【背景技術】
【0002】
スロットダイは、基材の広い範囲に亘って薄い流体コーティングを適用するために利用されており、単層ダイまたは多層ダイを含み得る。単層スロットダイは、基材上に流体の単一層を適用し、多層スロットダイは、基材上に流体の少なくとも2層を適用する。流体は、圧力下で、リザーバから出てスロットを通過してリップ面まで強制的に送られ、移動する基材に転移される。一般に、スロットは、リザーバよりも断面において顕著に小さく、基材移動の方向に垂直に方向付けられている。
【0003】
基材に適用される流体の量を変更するために、スロットのサイズが調整され得る。2つの本体部間に載置されるシムの異なる厚さ、あるいは、機械的なスロット調整が、スロットのサイズを増減するために利用される。厚いシムは、スロットのサイズを増大するために用いられ、薄いシムは、スロットのサイズを低減するために用いられ得る。従来の多層スロットダイにおいては、スロットの1または複数のサイズがシムによって調整される場合、流体が押し出されるリップ面は、オフセットが生じる。オペレータは、リップ面のオフセットを除去ないし補償するために、チャート(図表)や計算を用いなければならない。また、オフセット面の平面は本体部の係合面に垂直であってリップ面に平行でないため、オペレータは、所望のリップオフセットを達成するために、オフセットされたシム厚さを計算しなければならない。このプロセスは、スロットダイが所望のリップオフセットを維持することを保証するために、時間を要し得るし、付加的な装備を要求し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、スロットダイ内でのコーティングギャップとリップオフセットとを調整するための改善されたスロットダイ及び方法のニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示されるのは、2または3以上の流体をディスペンス(投与)するための多層スロットダイ及び多層スロットダイを用いる方法である。従来のダイと異なり、本明細書に開示される多層スロットダイは、スロットの開口が実質的に垂直で平行である時にスロットの幅が調整された後、当該多層スロットダイを整列、調整または方向付けするためのオペレータ時間を最小化する。
【0006】
1つの特徴において、多層スロットダイは、中央本体部材と、上方本体部材と、下方本体部材と、を備えている。中央本体部材は、上方中央面、下方中央面及び中央後方面を有している。上方本体部材は、上方面及び上方後方面を有している。上方面は、上方中央面から間隔を空けていて、両者の間に第1チャネルを形成している。第1チャネルは、当該多層スロットダイのディスペンシング端において第1開口を含んでいる。上方本体部材は、第1位置と第2位置との間で移動するように構成されている。前記第1位置において、上方面は、上方中央面から第1距離だけ間隔を空けており、前記第2位置において、上方面は、上方中央面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ間隔を空けている。第1開口は、上方本体部材の前記第1位置及び前記第2位置の両方において、中央後方面と上方後方面との両方に対して実質的に平行である。下方本体部材は、下方面及び下方後方面を有している。下方面は、下方中央面から間隔を空けていて、両者の間に第2チャネルを形成している。第2チャネルは、前記ディスペンシング端において第2開口を含んでいる。第2開口は、上方本体部材の前記第1位置及び前記第2位置の両方において、第1開口と下方後方面とに対して実質的に平行である。
【0007】
別の1つの特徴において、多層スロットダイは、上方本体部材と、下方本体部材と、中央本体部材と、を備えている。上方本体部材は、上方面及び上方後方面を有している。下方本体部材は、下方面及び下方後方面を有している。中央本体部材は、上方本体部材と下方本体部材との間に少なくとも部分的に位置決めされている。中央本体部材は、上方中央面、下方中央面及び中央後方面を有している。上方中央面は、上方本体部材の上方面から間隔を空けていて、両者の間に第1チャネルを形成している。下方中央面は、下方本体部材の下方面から間隔を空けていて、両者の間に第2チャネルを形成している。第1チャネルは、当該多層スロットダイのディスペンシング端において第1開口を含んでいる。第2チャネルは、当該多層スロットダイの前記ディスペンシング端において第2開口を含んでいる。第1開口及び第2開口は、上方後方面、下方後方面及び中央後方面に実質的に平行である。
【0008】
本発明の別の1つの特徴は、多層スロットダイから第1流体及び第2流体をディスペンシングするための方法を提供する。当該方法は、前記多層スロットダイのディスペンシング端において第1チャネルの第1開口を介して前記第1流体をディスペンシングする工程と、前記多層スロットダイの前記ディスペンシング端において第2チャネルの第2開口を介して前記第2流体をディスペンシングする工程と、を備え、前記第1チャネルは、中央本体部材の上方中央面から間隔を空けている上方本体部材の上方面によって規定されており、前記第2チャネルは、中央本体部材の下方中央面から間隔を空けている下方本体部材の下方面によって規定されている。前記上方本体部材は、上方後方面を有しており、前記下方本体部材は、下方後方面を有しており、前記中央本体部材は、中央後方面を有している。前記第1開口及び前記第2開口は、前記上方後方面、前記下方後方面及び前記中央後方面に対して実質的に平行である。
【0009】
当該概要は、簡略化された形態で本発明の概念の抜粋を導入(紹介)するために提供されている。本発明の概念は、明細書の以下の部分において更に詳述される。当該概要は、特許権としての保護が請求される(クレームされる)主題の主要な特徴ないし本質的な特徴を特定することを意図してはいないし、当該主題の範囲を限定するために用いられることを意図してもいない。更に、当該主題は、本明細書の一部において言及された何らかの欠点を解消するものに制限されるということもない。
【0010】
より詳細な理解が、添付の図面との関連で例示的に与えられる以下の説明から提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の1つの特徴による、多層スロットダイの前方斜視図である。
【0012】
【
図1B】
図1に図示された多層スロットダイの後方斜視図である。
【0013】
【
図2】
図1に図示されたスロットダイの上方本体部材の斜視図である。
【0014】
【
図3A】
図1に図示されたスロットダイの中央本体部材の斜視図である。
【
図3B】
図1に図示されたスロットダイの中央本体部材の斜視図である。
【0015】
【
図4】
図1に図示されたスロットダイの下方本体部材の斜視図である。
【0016】
【
図5】本発明の1つの特徴による、シム部材の斜視図である。
【0017】
【
図6A】多層スロットダイの複数の特徴部の複数の側面図である。
【
図6B】多層スロットダイの複数の特徴部の複数の側面図である。
【
図6C】多層スロットダイの複数の特徴部の複数の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
移動する基材(不図示)をコーティングするための多層スロットダイが開示される。移動する基材とは、例えば、プラスチックフィルム、剥離用ライナ、紙、他のタイプの基材等である。従来のダイと異なり、本明細書に開示される多層スロットダイは、スロットの開口が実質的に垂直で平行である時にスロットの幅が調整された後、当該多層スロットダイを整列、調整または方向付けするためのオペレータ時間を最小化する。
【0019】
特に、
図1A及び
図1Bは、それぞれ、多層スロットダイ100の前方斜視図及び後方斜視図を提供している。多層スロットダイ100は、ディスペンシング端102、第1方向Aにディスペンシング端102から間隔を空けている背面端104、左側面103、及び、第2方向Bに左側面103から間隔を空けている右側面105、を備えている。第1方向Aは、「軸方向」と言及され得る。第2方向Bは、「横断方向」と言及され得る。ディスペンシング端102は、基材に流体コーティングを適用するように構成されている。流体コーティングは、有機溶剤または無期溶剤を含み得て、また、水ベースのコーティング、ダイ、スラリ、塗料、ハードコーティング、紫外線硬化剤、接着剤、または、更に他の流体、を含み得る。あるいは、コーティングは、溶剤無しで用いられ得る(例えば100%固体であり得る)。多層スロットダイ100は、当該スロットダイ100を基材と整列させるべく、ベース、フロア取り付け部、テーブルトップ、または、他の支持構造(不図示)によって支持され得る。1つの特徴において、基材は、当該基材上へのコーティングの適用(塗布)中にディスペンシング端102に隣接して位置決めされたコーティングロール50(
図6A乃至
図6C参照)の上方を通過し得る。
【0020】
所定の用語は、説明の都合上用いられているに過ぎず、限定を意図していない。用語「近位」及び「遠位」は、一般に、カートリッジアセンブリを作動する個体に対して向かう及び離れる位置または方向に言及するものである。用語「軸方向」、「鉛直方向」、「横断方向」、「左」、「右」、「上」及び「下」は、参照されている図面内における方向を示す。用語「実質的」は、相当程度ないし大いに、を意味することが意図されており、必ずしも特定されたもの全体を必須とはしない。専門的用語は、先に挙げた用語と、その派生形と、同趣旨の用語と、を含む。
【0021】
多層スロットダイ100は、上方本体部材106、中央本体部材108、下方本体部材110、第1オフセットブロック112、第2オフセットブロック113、及び、少なくとも1つのシム115a、115b(
図5参照)を備えている。幾つかの実施形態では、オフセットブロック112、113は、スロットダイ100にボルト結合されていないオフセット面であり得る。スロットダイ100は、係止ヒンジ、アダプタ流体入口部、または、スロットダイ内で一般的に用いられる他の構成要素、をも含み得得る。上方本体部材106、中央本体部材108及び下方本体部材110は、好適には、ステンレススチールから製造され得る。あるいは、上方本体部材106、中央本体部材108及び下方本体部材110は、チタン、アルミニウム、特殊な合金、または、高い寸法安定性を有する他の材料から製造され得る。スロットダイ100は、更なる本体部材を含み得ることが理解される。例えば、複数の中央本体部材(例えば3層ダイ)が、コーティングに3または4以上の層を提供するように構成され得る。
【0022】
図2は、上方本体部106の斜視図である。上方本体部106は、中央本体部材108の上方に位置決めされている。上方本体部材106は、上方面114、当該上方面114に対向する頂部面116、上方後方面118、及び、当該上方後方面に対向する上方前方面120、を含んでいる。上方後方面118は、スロットダイ100の背端面104の一部を規定している。上方前方面120の底部縁122が、ディスペンシング端102の一部を規定している。当該底部縁122は、上方面114に隣接している。上方面114は、上方前方面120の底部縁122から上方後方面118まで延在して、実質的な平坦面を形成している。
【0023】
図3A及び
図3Bは、それぞれ、中央本体部材108の上方斜視図及び下方斜視図である。中央本体部材108は、上方本体部材106の下方において、少なくとも部分的に上方本体部材106と下方本体部材110との間に位置決めされている。中央本体部材108は、上方中央面126、下方中央面128、中央後方面130、及び、当該中央後方面130に対向する中央前方面132、を有している。中央後方面130は、スロットダイ100の背面端104の一部を規定している。中央前方面132は、ディスペンシング端102の一部を規定している。上方中央面126は、中央後方面130から中央前方面132の上方中央縁134まで延在して、実質的な平坦面を形成している。下方中央面128は、中央後方面130から中央前方面132の下方中央縁136まで延在して、実質的な平坦面を形成している。
【0024】
上方中央面126は、第1端141から第2端143まで横断方向B’に延びる中央キャビティ140を規定している。第1端141は、中央本体部材108の左側端142に向かって位置決めされており、第2端143は、中央本体部材108の右側端144に向かって位置決めされている。1つの特徴において、中央キャビティ140の第1端141及び第2端143は、中央本体部材108の左右端142、142から実質的に等しい距離だけ間隔を空けており、その結果、中央キャビティ140は横断方向B’において中央本体部材108の中央に位置決めされている。中央キャビティ140は、中央本体部材108内に形成されており、中央前方面132の上方中央縁134と中央後方面130との間に空間を形成している。中央キャビティ140は、「分配チャンバ」とも言及され得る。
【0025】
中央本体部材108は、第1ポート開口148から第2ポート開口150まで当該中央本体部材108を貫通して延びる中央ポートチャネル146を規定している。第1ポート開口148は、中央後方面130に開口しており、第2ポート開口150は、中央キャビティ140に開口している。中央ポートチャネル146は、その長さに沿って、曲線形状を有し得る。1つの特徴において、第1ポート開口148の直径は、第2ポート開口150の直径に実質的に等しい。別の1つの代替的な特徴において、中央ポートチャネル146を規定する内側ポート面(参照符号は付されていない)が、当該内側ポート面の長さに沿って、中央ポートチャネル146の中央を第1ポート開口146から第2ポート開口15まで貫く中央ポートライン(参照符号は付されていない)から等距離だけ間隔をあけるように、中央ポートチャネル146は実質的に均一の直径を有し得る。
【0026】
第2ポート開口150は、中央本体部材108の左側端142及び右側端144の間の中央キャビティ140の中央で開口している。代替的な特徴においては、第2ポート開口150は、中央キャビティ140の中央とは別の位置で開口し得る。更に別の代替的な特徴においては、複数のポートチャネルが中央後方面130から中央キャビティ140まで延在するように、中央本体部材108は、1よい多い中央ポートチャネル146を規定し得る。
【0027】
図4は、下方本体部110の斜視図である。下方本体部110は、中央本体部材108の下方に位置決めされている。下方本体部材110は、下方面156、当該下方面156に対向する底部面158、下方後方面160、及び、当該下方後方面に対向する下方前方面162、を含んでいる。下方後方面160は、スロットダイ100の背端面104の一部を規定している。下方前方面162の頂部縁164が、ディスペンシング端102の一部を規定している。当該頂部縁164は、下方面156に隣接している。下方面156は、下方前方面162の頂部縁164から下方後方面160まで延在して、実質的な平坦面を形成している。
【0028】
下方本体部材110は、第1端171から第2端173まで横断方向B”に延びる下方キャビティ170を規定している。下方キャビティ170の第1端171は、下方本体部材110の左側端172に向かって位置決めされており、下方キャビティ170の第2端173は、下方本体部材110の右側端174に向かって位置決めされている。1つの特徴において、下方キャビティ170の第1端171及び第2端173は、下方本体部材110の左右端172、174から実質的に等しい距離だけ間隔を空けており、その結果、下方キャビティ170は横断方向B”において下方本体部材119の中央に位置決めされている。下方キャビティ170は、下方本体部材110内に形成されており、下方前方面162の頂部縁164と下方後方面160との間に空間を形成している。下方キャビティ170は、「分配チャンバ」とも言及され得る。
【0029】
下方本体部材110は、第1下方ポート開口178から第2下方ポート開口(図面内では視認できない)まで当該下方本体部材110を貫通して延びる下方ポートチャネル176を規定している。第1下方ポート開口178は、下方後方面160に開口しており、第2下方ポート開口は、下方キャビティ170に開口している。下方ポートチャネル176は、中央ポートチャネル140に関して前述された形態のいずれをも含み得る。それは、チャネルの位置、チャネルの形状、チャネルの数を含む。
【0030】
図1A及び
図1Bを参照して、第1オフセットブロック112は、軸方向Aに上方本体部材106と中央本体部材108とに隣接して位置決めされている。第1オフセットブロック112の接触面は、中央本体部材108の中央後方面130に結合されており、当該第1オフセットブロック112の接触面は、上方オフセット距離だけ、上方本体部材106の上方後方面118から間隔を空けている。第2オフセットブロック113は、軸方向Aに中央本体部材108と下方本体部材110とに隣接して位置決めされている。第2オフセットブロック113の接触面は、下方本体部材110の下方後方面118に結合されており、当該第2オフセットブロック113の接触面は、下方オフセット距離だけ、中央本体部材108の中央後方面130から間隔を空けている。第1オフセットブロック112及び第2オフセットブロック113の接触面は、上方後方面118、中央後方面130及び下方後方面160に対して実質的に平行である。1つの特徴において、上方オフセット距離は、下方オフセット距離と実質的に等しくてよい。
【0031】
図5は、少なくとも1つのシム115a、115bの斜視図である。当該少なくとも1つのシム115a、115bは、横断方向B”’に左側端182から右側端184まで延在している。複数のシム115a、115bが、スロットダイ10内に含まれ得て、中央本体部材108の上方中央面126と上方本体部材106の上方面114との間、及び、下方本体部材110の下方面156と中央本体部材108の下方中央面128との間、に位置決めされ得る。説明の目的で、シム115aが、上方本体部材106と中央本体部材108との間に位置決めされたシムに対応しており、シム115bが、中央本体部材108と下方本体部材110との間に位置決めされたシムに対応している。
【0032】
各シム115a、115bの左側端182は、スロットダイ100の左側端103と整列するべく位置決めされており、右側端184は、スロットダイ100の右側端105と整列するべく位置決めされている。シム115a、115bの各々は、各シム115a、115bの上面が当該各シムの下面と実質的に平行となるように、均一な厚さTを有し得る。シム115aの上面及び下面は、それぞれ、上方面114及び下方中央面126と接触するように位置決めされている。シム115aは、上方面114と上方中央面126との間に第1間隙を規定する。同様に、シム115bの上面及び下面は、それぞれ、下方中央面128及び下方面156と接触するように位置決めされている。シム115bは、下方中央面128と下方面156との間に第2間隙を規定する。シム115a、115bの各々は、異なる均一の厚さTを有し得る。この場合、第1間隙のサイズは、第2間隙のサイズとは異なる。例えば、上方面114と上方中央面126との間に位置決めされたシム115aは、0.20インチの厚さを有し得て、下方面156と下方中央面128との間に位置決めされたシム115bは、0.10インチの厚さTを有し得る。シム115aの厚さTは、0.20インチの第1間隙のサイズを規定する。シム115bの厚さTは、0.10インチの第2間隙のサイズを規定する。
【0033】
各シム115a、115bは、当該各シム115a、115bを上面から下面まで貫くシム切欠部186を規定している。シム切欠部186は、シム開口188に開口している。シム開口188は、ディスペンシング端102の一部を規定している。シム115aのシム切欠部186は、中央キャビティ140に少なくとも部分的に整列するように構成されており、シム115bのシム切欠部186は、下方キャビティ170に少なくとも部分的に整列するように構成されている。シム115aのシム切欠部186の整列は、中央キャビティ140からディスペンシング端102まで延びる第1チャネルを介しての中央キャビティ140とディスペンシング端102との間の流体連通を可能にする。シム115bのシム切欠部186の整列は、下方キャビティ170からディスペンシング端102まで延びる第2チャネルを介しての下方キャビティ170とディスペンシング端102との間の流体連通を可能にする。第1チャネル及び第2チャネルは、それぞれ、第1スロットギャップ及び第2スロットギャップと言及され得る。代替的な特徴においては、スロットダイ100は、シム115a、115bを1つも含まないで、当該スロットダイ100の部材間の空隙によって前記ギャップが規定され得る。
【0034】
図6Aは、スロットダイ100の側面図である。上方本体部材106は、第3方向Cにおいて中央本体部材108の上方に位置決めされており、上方後方面118が中央後方面130に実質的に平行となるように中央本体部材108と整列されている。第3方向Cは、鉛直方向と言及され得る。上方本体部材106の中央本体部材108との整列は、上方本体部材106の底部縁122と中央本体部材108の上方中央縁134との間に第1ディスペンス開口190を形成する。第1ディスペンス開口190は、鉛直方向Cに実質的に平行な平面に沿って延在している。
【0035】
中央本体部材108は、鉛直方向Cにおいて下方本体部材110の上方に位置決めされており、中央後方面130が下方後方面160に実質的に平行となるように下方本体部材110と整列されている。中央本体部材108の下方本体部材110との整列は、中央本体部材108の下方中央縁136と下方本体部材110の頂部縁164との間に第2ディスペンス開口192を形成する。第2ディスペンス開口192は、鉛直方向Cに実質的に平行な平面に沿って延在している。
【0036】
第1ディスペンス開口190及び第2ディスペンス開口192は、ディスペンシング端102の一部を規定しており、リップ面と称される。第1ディスペンス開口190は、中央ポートチャネル146、中央キャビティ140及び第1スロットギャップを介して、中央本体部材108の第1ポート開口148と流体連通している。第2ディスペンス開口192は、下方ポートチャネル176、下方キャビティ170及び第2スロットギャップを介して、下方本体部材110の第1下方ポート開口178と流体連通している。
【0037】
第1ディスペンス開口190を介して第1流体をディスペンシングするため、及び、第2ディスペンス開口192を介して第2流体をディスペンシングするためにスロットダイ100を用いる方法は、上方本体部材106、中央本体部材108及び下方本体部材110を整列することによって始まる。上方本体部材106は、鉛直方向Cにおいて中央本体部材108の上方に持ち上げられ、シム115aが、中央本体部材108の上方中央面126の上に載置される。上方本体部材106は、当該上方本体部材106の上方面114がシム115aの上方面と接触するまで、当該シム115a上に降下される。中央本体部材108は、鉛直方向Cにおいて下方本体部材110の上方に持ち上げられ、シム115bが、下方本体部材110の下方面156の上に載置される。中央本体部材108は、下方中央面128がシム115bの上方面と接触するまで、当該シム115b上に降下される。各シム115a、115bの厚さTは、ディスペンスされる第1流体及び第2流体の所望量に基づいて選択され得る。本体部材106、108、110の各々が整列された後、第1及び第2ディスペンス開口190、192は鉛直方向Cに実質的に平行な平面に沿って延在し、上方後方面118は中央後方面130に実質的に平行であり、中央後方面130は下方後方面130に実質的に平行である。1つの特徴において、上方後方面118、中央後方面130及び下方後方面160は、全てが実質的に平行である。更なる特徴において、後方面118、130、160の各々は、第1及び第2ディスペンス開口190、192に平行である。
【0038】
第1及び第2オフセットブロック112、113は、中央後方面130及び下方後方面160に結合されている。1または複数の均一な作動ポンプ(不図示)が、中央本体部材108の第1ポート開口148及び下方本体部材110の下方ポート開口178に結合され得る。均一な作動ポンプは、コーティングされる基材上に所望のウェットな膜厚を維持するべく、第1及び第2ディスペンス開口190、192にスロットダイ110を介して正確な量の流体を供給するように構成され得る。均一な作動ポンプは、様々な速度で作動して、様々に異なるコーティング厚さを適用(塗布)して、様々に異なるコーティング流体を用いるように、構成され得る。
【0039】
例えば、新しいか異なる基材をコーティングするために、第1流体または第2流体の厚さが新しい所望の厚さに調整される必要がある時、シム115a、115bが取り外され得て、当該新しい所望の厚さを規定する新しいシムに交換され得る。スロットダイ100の利点は、新しいシムがスロットダイ100内に位置決めされた後でも、第1及び第2ディスペンス開口190、102が鉛直方向Cに実質的に平行な平面に沿って延びた状態を維持することである。これは、スロットダイ100を基材に対して整列し、調整し、または、方向付けるためのオペレータ時間を最小化する。更に、上方後方面118は、中央後方面130に対して実質的に平行な状態を維持し、央後方面130は、下方後方面160に対して実質的に平行な状態を維持する。
【0040】
図6Bは、スロットダイ200の側面図である。スロットダイ200は、上方本体部材206、中央本体部材208及び下方本体部材210を含む。上方本体部材206、中央本体部材208及び下方本体部材210の対応する部分が、それぞれ、前述のスロットダイ100の上方本体部材106、中央本体部材108及び下方本体部材110と同様の特徴及び形態を含む。スロットダイ200は、上方本体部材206、中央本体部材208及び下方本体部材210のための代替的な断面を提示するが、そこでも、第1及び第2ディスペンス開口190、192は、新しいシムがスロットダイ200に載置される時に鉛直方向Cに実質的に平行な平面に沿って延びた状態を維持する。
【0041】
図6Cは、スロットダイ300の側面図である。スロットダイ300は、上方本体部材306、中央本体部材308及び下方本体部材310を含む。上方本体部材306、中央本体部材308及び下方本体部材310の対応する部分が、それぞれ、前述のスロットダイ100の上方本体部材106、中央本体部材108及び下方本体部材110と同様の特徴及び形態を含む。スロットダイ300は、上方本体部材306、中央本体部材308及び下方本体部材310のための更なる代替的な断面を提示するが、そこでも、第1及び第2ディスペンス開口190、192は、新しいシムがスロットダイ300に載置される時に鉛直方向Cに実質的に平行な平面に沿って延びた状態を維持する。
【0042】
スロットダイ100を用いるための前述された例においては、スロットダイ100が参照されているが、同様の方法はスロットダイ200、300によっても採用され得る。
【0043】
前述の具体的な実施形態は、例示的な目的で説明されており、本発明の範囲の限定を意図してはいない。前述の実施形態を超えるような修正や変更がなされ得る。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。