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  • 特許-プリーツ製品の加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】プリーツ製品の加工方法
(51)【国際特許分類】
   D06C 7/02 20060101AFI20220801BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20220801BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
D06C7/02
B23K26/364
D06M10/00 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018048413
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2018172839
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2017071533
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391018341
【氏名又は名称】株式会社NBCメッシュテック
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】川端下 栄治
(72)【発明者】
【氏名】小山 伸治
(72)【発明者】
【氏名】金澤 絵理
(72)【発明者】
【氏名】石原 佳代子
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-223935(JP,A)
【文献】特開平10-088470(JP,A)
【文献】特開2001-210355(JP,A)
【文献】特開2006-241605(JP,A)
【文献】特開平08-284070(JP,A)
【文献】特表2004-502041(JP,A)
【文献】特開2012-117164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K26/00-26/70
B29C53/00-53/84
57/00-59/18
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
D06M10/00-11/84
16/00
19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリーツ製品を展開したときの折り曲げ線に沿って、レーザー加工により熱可塑性樹脂製の基材に折り曲げ溝を形成する工程と、
前記折り曲げ溝に沿って前記基材を折り曲げる工程と、
を含み、
該折り曲げ溝の深さが、前記基材を構成する糸径の20%以上、80%以下であることを特徴とするプリーツ製品の加工方法。
【請求項2】
前記折り曲げ溝を形成する前の前記基材について、KES風合い測定による風合い測定値が、0.5gf・cm/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載のプリーツ製品の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリーツ製品の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリーツ加工とは、樹脂の熱可塑性を利用し、ヒートセットを施すことで布地にヒダをつける加工方法であり、婦人服、スカート、装飾品などに広く応用されている。この加工方法には、人がアイロンなどでヒダをつけたり、カルトンと呼ばれる厚紙の間に生地を挟み、ヒートセットを行ったりするハンドプリーツ法と、生地をプリーツ機械にかけて、加熱しながらヒダ付けをし、巻き取った後、スチームボックスなどに入れ、ヒダを固定させるマシンプリーツ法とがある。
【0003】
しかし、ハンドプリーツ法の場合、手作業のため、複雑なプリーツ加工ができるというメリットがあるものの、作業工程が煩雑で時間がかかったり、技術を習得するのに時間がかかったりするデメリットがあった。また、生地をカルトンに挟んでヒートセットを行うため、糸径が大きく剛性を有するような生地ではカルトンに挟むことができず、プリーツ加工ができなかった。また、マシンプリーツ法の場合、生産性に優れている半面、アコーディオンプリーツのように平行なプリーツあるいはそれらの組合せしか対応できなかった。
【0004】
これらの課題を解決するために、第1の粗目布帛と第2の粗目布帛の間に熱融着性合成樹脂シートを挟んで熱融着することにより、熱融着性合成樹脂シートの接着剤を粗目布帛の繊維に浸透させた後、接着剤を浸透させた積層粗目布帛を1枚の型紙とともに折り込んでプリーツ加工を行う方法や(特許文献1)、生地に加工液中の樹脂を浸透させておき、生乾きの状態の生地にプリーツ加工を施すことで、プリーツがつきやすくし、生地に付着している加工液を乾燥させることにより、プリーツを固定する方法(特許文献2)などが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-19080号公報
【文献】特開2008-88596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では、プリーツ加工後のプリーツ製品の形状を維持させるために、布帛や生地に樹脂を浸透させなければならないため、プリーツ加工後に洗浄するなどの工程が必要となるほか、布帛や生地の風合いも損なわれるという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、カルトンなどの型紙を用いなくても、基材を容易に折り曲げて複雑なプリーツ加工ができるとともに、基材自体を折り曲げるだけで、プリーツ加工後の形状を維持することができるプリーツ製品の加工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち第1の発明は、
プリーツ製品を展開したときの折り曲げ線に沿って、レーザー加工により熱可塑性樹脂製の基材に折り曲げ溝を形成する工程と、
前記折り曲げ溝に沿って前記基材を折り曲げる工程と、
を含み、
該折り曲げ溝の深さが、前記基材を構成する糸径の20%以上、80%以下であることを特徴とするプリーツ製品の加工方法である。
【0010】
さらに第の発明は、第1の発明において、前記折り曲げ溝を形成する前の前記基材について、KES風合い測定による風合い測定値が、0.5(gf・cm/cm)以上であることを特徴とするプリーツ製品の加工方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材に折り曲げ溝を形成することにより、カルトンなどの型を用いなくても、基材を容易に折り曲げて複雑なプリーツ加工を行うことができる。また、基材自体を折り曲げるだけで、プリーツ加工後の形状を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の加工方法にて加工したプリーツ製品の写真である。
図2】実施例1の糸断面のSEM画像である。
図3】比較例4の糸断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態である、プリーツ製品の加工方法について説明する。
【0014】
本実施形態の加工方法は、プリーツ製品を展開したときの折り曲げ線を示すデータに基づき、基材に折り曲げ溝を形成した後、折り曲げ溝に沿って基材を折り曲げる工程からなるプリーツ製品の加工方法である。
【0015】
本実施形態の基材としては、織物(平織、綾織、杉綾織、畳織、朱子織など)、編物、不織布、フィルムなどが用いられる。織物や編物は、モノフィラメント又はマルチフィラメントで構成することができる。基材は、パンチング加工などによって所定の形状(プリーツ製品を展開したときの形状)に形成することができる。基材は、プリーツ製品の使用目的に合った種々の開口を有していてもよく、例えば、開口形状としては、メッシュ状や、ハニカム状などがあり、開口サイズも適宜決めることができる。基材の開口は、上述したフィラメントによって形成したり、樹脂成型などによって形成したりすることができる。
【0016】
本実施形態の基材の材質は、熱可塑性樹脂であればよく、具体的な樹脂材料は特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0017】
折り曲げ溝を形成する前の基材の剛性としては、KES(KAWABATA EVALUATION SYSTEM)風合い測定による風合い測定値が0.5(gf・cm/cm)以上であることが好ましい。KES風合い測定とは、布、フィルム、紙などの平らな素材の手触り、着心地感覚などと密接に関係する素材の基本力学量を客観的数値として測定する方法であり、繊維業界では広く一般的に用いられている測定法である。KES風合い測定の詳細は、「風合い評価の標準化と解析」第2版(社団法人日本繊維機械学会 風合い計量と規格化研究委員会 昭和55年7月10日発行)に記載されている。風合い測定値が大きいほど素材の剛性が高くなり、風合い測定値が小さいほど素材の剛性が低く(やわらかく)なる。風合い測定値が0.5(gf・cm/cm)未満である素材については、本実施形態の加工方法でも従来の加工方法でもプリーツ加工ができる。一方、風合い測定値が0.5(gf・cm/cm)以上の場合には、上述の課題の通り、従来の加工方法(ハンドプリーツ方法)ではプリーツ加工ができないため、本発明を好適に用いることができる。なお、風合い測定値がKES風合い測定の測定限界値を超えてしまい、具体的な風合い測定値を測定できない基材であっても、本発明の加工方法によってプリーツ製品を加工することができるため、風合い測定値の上限値は規定していない。
【0018】
折り曲げ溝の深さ(最大深さ)は、基材を構成する糸径の20%以上、80%以下であることが好ましい。折り曲げ溝の深さが、糸径の20%よりも小さいと、折り曲げ溝に沿って基材を折り曲げにくくなる。また、折り曲げ溝の深さが、糸径の80%よりも大きいと、基材が破断しやすくなる。ここで、糸径が大きくなるほど、折り曲げ溝の深さの影響を受けやすくなるため、例えば、糸径が100μm以上であるとき、折り曲げ溝の深さを糸径の20%以上、80%以下とすることが好ましい。また、折り曲げ溝の深さは、基材を構成する糸径の40%以上、80%以下であることがより好ましい。
【0019】
さらに、基材に折り曲げ溝を形成する方法は、基材の材質、形状、厚みなどに応じて適宜、選択できる。基材に折り曲げ溝を形成する方法としては、具体的には、トムソン刃を用いた方法、ヒートスリット加工、レーザー加工など公知の方法が用いられるが、レーザーの出力を調整可能であることや、細線にも対応でき、加工する基材の材質が限定されないという点から、レーザー加工が好ましい。
【0020】
レーザー加工では、基材に向けてヘッドからレーザーを照射しながら、プリーツ製品を展開したときの折り曲げ線に沿ってヘッドを移動させることにより、折り曲げ線に沿った折り曲げ溝を基材に形成することができる。ヘッドから基材に向けてレーザーを照射するときには、基材を予め位置決めしておけばよい。また、プリーツ製品を展開したときの折り曲げ線を示すデータを予め用意しておけば、このデータに基づいて、ヘッド(すなわち、レーザー)を移動させることができる。レーザーとしては、COレーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ディスクレーザー、エキシマレーザー、極短パルスレーザーなど、公知のレーザーが用いられるが、熱可塑性樹脂で形成された基材の加工に適しているという観点から、COレーザーが好ましい。
【0021】
上記レーザー加工は、レーザーによって基材に折り曲げ溝を形成して剛性のある基材でも折り曲げやすくするために用いられる。そのため、レーザーの出力は、基材の厚み(糸径等)や材質によって適宜選定されるが、1W以上、25W以下であることが望ましい。これは、レーザーの出力が25Wよりも高いと、基材に形成される折り曲げ溝の深さが深くなりすぎてしまうことがあり、基材の破れの原因になるためである。また、レーザーの出力が1Wよりも低いと、基材に形成される折り曲げ溝の深さが浅くなりすぎてしまうことがあり、基材を折り曲げにくくなるためである。
【0022】
折り曲げ溝を形成するときのヘッドの移動スピード(以下、ヘッドスピードという)は、一定であって、1000mm/sec以上、1500mm/sec以下であることが望ましい。これは、ヘッドスピードを一定とすることにより、折り曲げ溝の深さにバラツキが生じてしまうことを抑制できるからである。また、ヘッドスピードが1000mm/secよりも低いと、レーザーの照射スポットに対するレーザーの照射量が多くなり、折り曲げ溝の深さが深くなりすぎてしまうことがあり、基材の破れの原因となるからである。一方、ヘッドスピードが1500mm/secよりも高いと、レーザーの照射スポットに対するレーザーの照射量が不足し、折り曲げ溝の深さが浅くなりすぎてしまうことがあり、基材を折り曲げにくくなってしまうからである。なお、レーザーの出力が1W以上、25W以下であるとき、ヘッドスピードを1000mm/sec以上、1500mm/sec以下とすることが望ましい。
【0023】
上述の方法にて折り曲げ溝が形成された基材を、手などで折り曲げ溝に沿って折り曲げることで、基材にプリーツ加工を施すことができる。ここで、基材の風合い測定値が小さい(やわらかい)場合などは、折り曲げた状態がより維持されるように糸などで基材の一部を固定し、この基材をヒートセットしてもよい。ヒートセットとしては、例えば、乾熱(温風)を利用した方法(アニール処理など)や、湿熱(蒸気)を利用した方法がある。ヒートセットを行った後に、基材の一部を固定していた糸などを取り除くことで、本実施形態のプリーツ製品が完成する。
【0024】
以上、本実施形態のプリーツ製品の加工方法によれば、基材を折り曲げ溝に沿って容易に折り曲げることができるため、従来のカルトンなどの型を使用する必要が無くなり、型を用いる方法よりも工程数を削減でき、加工時間も大幅に短縮できる。特に、剛性を有する基材(風合い測定値が0.5gf・cm/cm以上の基材)では、基材を折り曲げるために、カルトンなどの型にセットするのに非常に時間がかかるが、基材に折り曲げ溝を形成しておくことにより、基材を容易に折り曲げてプリーツ製品を加工することができる。また、基材自体を折り曲げた後にヒートセットすれば、プリーツ加工後の形状をより維持することができる。本実施形態のプリーツ製品の加工方法は、衣料用プリーツ製品や、装飾用プリーツ製品だけでなく、産業用フィルター、ブラインド、バッグ、シェード、自動車用フィルター、照明カバーなど、幅広い分野に応用できる加工方法である。
【実施例
【0025】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
基材としてポリエステル製のメッシュ(平織り)を用いた((株)NBCメッシュテック製;T-NO.100T)。この基材を構成する繊維の糸径は71μm、KES風合い測定値は0.48gf・cm/cmであった。なお、すべての実施例および比較例において、KES風合い測定はカトーテック(株)製KES-FB-M2を用いて行った。この基材を30cm×30cmにカットし、レーザー加工機にセットし、出力1.8W、ヘッドスピード1067mm/secにて折り曲げ線(折り曲げ溝)を形成した。その後、折り曲げ線に沿って手で基材を折り(所要時間約15分)、麻ひもで固定後、100℃にて30分、アニール処理をした。できあがったプリーツ製品を図1に示す。この時の折り曲げ溝の深さは糸径の68%であった。折り曲げ溝の深さは基材断面のSEM(Scanning Electron Microscope)写真(図2)より求めた。
【0027】
(実施例2)
基材としてポリエステル製のメッシュ(綾織り,四つ綾(3/1))を用いた((株)NBCメッシュテック製;T-NO.225SHD)。この基材を構成する繊維の糸径は71μm、KES風合い測定値は0.63gf・cm/cmであった。その後は実施例1と同様の方法にてプリーツ製品を製造した。基材に形成された折り曲げ溝の深さは糸径の68%であった。
【0028】
(実施例3)
基材としてナイロン製のメッシュ(平織り)を用いた((株)NBCメッシュテック製;NB80)。この基材を構成する繊維の糸径は130μm、KES風合い測定値は1.67gf・cm/cmであった。この基材を30cm×30cmにカットし、レーザー加工機にセットし、出力12.3W、ヘッドスピード1372mm/secにて折り曲げ線(折り曲げ溝)を形成した。その後、折り曲げ線に沿って手で基材を折り、麻ひもで固定後、100℃にて30分、アニール処理をした。この時の折り曲げ溝の深さは糸径の42%であった。
【0029】
(実施例4)
基材としてポリエステル製のメッシュ(平織り)を用いた((株)NBCメッシュテック製;TB30)。この基材を構成する繊維の糸径は250μm、KES風合い測定値は16.3gf・cm/cmであった。この基材を30cm×30cmにカットし、レーザー加工機にセットし、出力7.7W、ヘッドスピード1372mm/secにて折り曲げ線(折り曲げ溝)を形成した。その後、折り曲げ線に沿って手で基材を折り、麻ひもで一晩固定した。この時の折り曲げ溝の深さは糸径の75%であった。
【0030】
(実施例5)
基材としてポリエステル製のメッシュ(平織り)を用いた((株)NBCメッシュテック製;TB20)。この基材を構成する繊維の糸径は320μm、KES風合い測定値は26gf・cm/cmであった。この基材を30cm×30cmにカットし、レーザー加工機にセットし、出力24.5W、ヘッドスピード1372mm/secにて折り曲げ線(折り曲げ溝)を形成した。その後、折り曲げ線に沿って手で基材を折ったところ、アニール処理をせずとも、糸と織物の剛性により形状を保持することができた。この時の折り曲げ溝の深さは糸径の77%であった。
【0031】
(実施例6)
基材としてポリエステル製のメッシュ(杉綾織り)を用いた((株)NBCメッシュテック製;ET9435(89/35))。この基材を構成する繊維の糸径は500μm、KES風合い測定値は22gf・cm/cmであった。この基材を30cm×30cmにカットし、レーザー加工機にセットし、出力15.8W、ヘッドスピード1219mm/secにて折り曲げ線(折り曲げ溝)を形成した。その後、折り曲げ線に沿って手で基材を折ったところ、アニール処理をせずとも、糸と織物の剛性により形状を保持することができた。この時の折り曲げ溝の深さは糸径の78%であった。
【0032】
(実施例7)
基材としてポリエステル製のメッシュ(平織り)を用いた((株)NBCメッシュテック製;TB50)。この基材を構成する繊維の糸径は200μm、KES風合い測定値は0.6gf・cm/cmであった。この基材を30cm×30cmにカットし、レーザー加工機にセットし、出力4.2W、ヘッドスピード1447.8mm/secにて折り曲げ線(折り曲げ溝)を形成し、折り曲げ線に沿って手で基材を折り、麻ひもで固定後、100℃にて30分、アニール処理をした。この時の折り曲げ溝の深さは糸径の29%であった。
【0033】
(実施例8)
基材としてポリエステル製のメッシュ(平織り)を用いた((株)NBCメッシュテック製;TB15)。この基材を構成する繊維の糸径は410μm、KES風合い測定値は75gf・cm/cmであった。この基材を30cm×30cmにカットし、レーザー加工機にセットし、出力31.5W、ヘッドスピード762mm/secにて折り曲げ線(折り曲げ溝)を形成した。その後、折り曲げ線に沿って手で基材を折ったところ、アニール処理をせずとも、糸と織物の剛性により形状を保持することができた。この時の折り曲げ溝の深さは糸径の48%であった。
【0034】
(比較例1)
実施例1のプリーツ製品の展開図に沿って、型紙となる厚紙にトムソン刃にて折り曲げ線をつけた後、折り曲げ線に沿って厚紙を折り曲げることで型紙(カルトン)を製造した(所要時間約2時間)。同じ型紙をもう1枚作り(所要時間約2時間)、折り曲げ溝が形成されていない実施例1で用いた基材((株)NBCメッシュテック製;T-NO.100T)を型紙にあわせて一対の型紙の間に挟み(所要時間約1時間)、麻ひもで固定後、150~180℃、30分、アニール処理をすることで比較例1のプリーツ製品を製造した。
【0035】
(比較例2)
比較例1で用いた一対の型紙の間に、折り曲げ溝が形成されていない実施例2で用いた基材((株)NBCメッシュテック製;T-NO.225SHD)を挟み、麻ひもで固定後、150~180℃、30分、アニール処理をすることで比較例2のプリーツ製品を製造した。
【0036】
(比較例3)
比較例1で用いた一対の型紙の間に、折り曲げ溝が形成されていない実施例3で用いた基材((株)NBCメッシュテック製;NB80)を挟むことを試みたが、基材が堅すぎて挟むことができなかった。
【0037】
(比較例4)
実施例3で用いた基材をレーザー加工機にセットし、出力3.5W、ヘッドスピード1448mm/secにて折り曲げ線(折り曲げ溝)を形成した以外は実施例3と同様の方法にて比較例4のプリーツ製品の製造を試みたが、折り曲げ線に沿って基材を折り曲げても、すぐに元に戻ってしまい、基材に折り目をつけることができなかった。ここで、基材に形成された折り曲げ溝の深さは糸径の14%であった。図3には、比較例4における基材断面のSEM写真を示す。
【0038】
(プリーツ製品の評価)
実施例1~8及び比較例1~4のそれぞれの方法で製造したプリーツ製品については、目視での3段階評価を行った。この評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果より、すべての実施例1~8において、図1に示すような複雑な形状でもプリーツ製品を製造することができた(製品評価○)。これに対し、比較例1では、基材のKES風合い測定値が0.48gf・cm/cmであって、基材がやわらかいため、プリーツ製品を製造することができたが、型紙の使用等によって製造工程が煩雑であったため、実施例1のプリーツ製品の製造時間(約2時間)の3倍の時間(約6時間)がかかってしまった。比較例2では、プリーツ製品を製造できたものの、基材のKES風合い測定値が0.63gf・cm/cmであって、基材が堅いため、折り曲げ溝に沿って基材を折る際に折り曲げ溝以外の部分にしわが入ってしまった(製品評価△)。比較例3、4については上述の通り、プリーツ製品を製造できなかった(製品評価×)。以上の結果より、本発明の加工方法によれば、風合い測定値が0.5gf・cm/cm以上である堅い基材でも、複雑な形状のプリーツ製品が短時間にて効率よく製造できることが確認できた。
図1
図2
図3