(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
A47C 1/024 20060101AFI20220801BHJP
B60N 2/235 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A47C1/024
B60N2/235
(21)【出願番号】P 2018063926
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 憲輝
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 秀彦
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第5635435(JP,B2)
【文献】特開2016-215999(JP,A)
【文献】特開2012-81825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0076094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/02-037
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒面に円周方向に沿って内歯が形成され、一方の面が開放面となった有底円筒状の第1部材と、
前記内歯と噛合可能な外歯を有したメインポールと、
前記内歯と噛合可能な外歯を有したサブポールと、
前記第1部材の開放面側に積層され、前記第1部材と前記円周方向に相対回転可能に設けられ、前記外歯が前記内歯に噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯から離れたアンロック位置の間で前記メインポール、前記サブポールを案内するポールガイドが形成された第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間で、回転可能に設けられ、ロック位置方向に前記メインポール、前記サブポールを押すカムと、
前記カムと前記メインポールとの間に設けられ、前記ロック位置では前記カムに押されて、前記メインポールと前記ポールガイドとに当接する第2カムと、
を有し、
前記メインポール、前記サブポールがロック位置にある場合には、
前記メインポールの外歯と前記第1部材の前記内歯とが完全噛み合い状態となり、前記サブポールの前記外歯と前記第1部材の前記内歯とは甘噛み状態となり、前記第1部材と第2部材との相対回転が禁止されるリクライニング装置であって、
前記メインポール、前記サブポール、前記カムは、
前記カムによって、前記アンロック位置から前記ロック位置へ前記メインポール、前記サブポールが移動する際に、
最初に、前記サブポールの前記外歯が前記第1部材の前記内歯に噛み合い始め、次に、前記メインポールの前記外歯が前記第1部材の前記内歯に噛み合い始め、
前記メインポールが完全噛み合い状態となる前に、前記サブポールの前記外歯が前記第1部材の前記内歯に噛み合い始めるように形成されている
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記カムの前記サブポールを押す面は、
前記カムの回転軸との距離が一定である
ことを特徴とする請求項1
に記載のリクライニング装置。
【請求項3】
前記カムの前記第2カムを押す面は、
前記ロック位置に向かうに従って、前期カムの回転軸との距離が漸次的に長くなる
ことを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内筒面に円周方向に沿って内歯が形成され、一方の面が開放面となった有底円筒状の第1部材と、前記内歯と噛合可能な外歯を有したメインポールと、前記内歯と噛合可能な外歯を有したサブポールと、前記第1部材の開放面側に積層され、前記第1部材と前記円周方向に相対回転可能に設けられ、前記外歯が前記内歯に噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯から離れたアンロック位置の間で前記メインポール、前記サブポールを案内するポールガイドが形成された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間で、回転可能に設けられ、ロック位置方向に前記メインポール、前記サブポールを押すカムと、前記カムと前記メインポールとの間に設けられ、前記ロック位置では前記カムに押されて、前記メインポールと前記ポールガイドに当接する第2カムと、を有し、前記メインポール、前記サブポールがロック位置にある場合には、前記メインポールの外歯と前記第1部材の前記内歯とが完全噛み合い状態となり、前記サブポールの前記外歯と前記第1部材の前記内歯とは甘噛み状態となり、前記第1部材と第2部材との相対回転が禁止されるリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リクライニング装置の一例として、内筒面に円周方向に沿って内歯が形成され、一方の面が開放面となった有底円筒状の第1部材と、前記内歯と噛合可能な外歯を有したメインポールと、前記内歯と噛合可能な外歯を有したサブポールと、前記第1部材の開放面側に積層され、前記第1部材と前記円周方向に相対回転可能に設けられ、前記外歯が前記内歯に噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯から離れたアンロック位置の間で前記メインポール、前記サブポールを案内するポールガイドが形成された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間で、回転可能に設けられ、ロック位置方向に前記メインポール、前記サブポールを押すカムと、前記カムと前記メインポールとの間に設けられ、前記ロック位置では前記カムに押されて、前記メインポールと前記ポールガイドに当接する第2カムと、を有し、前記メインポール、前記サブポールがロック位置にある場合には、前記メインポールの外歯と前記第1部材の前記内歯とが完全噛み合い状態となり、前記サブポールの前記外歯と前記第1部材の前記内歯とは甘噛み状態となり、前記第1部材と第2部材との相対回転が禁止されるものがある。
【0003】
そして、カムによってメインポール、サブポールがロック位置に移動した際には、一対のメインポールの外歯と第2部材の内歯とは完全噛み合い状態(遊びがない噛合状態)となり、一対のサブポールの外歯と第2部材の内歯とは甘噛み状態(遊びがある噛合状態)となっている。
【0004】
通常のロック強度は、完全噛み合い状態にあるメインポールの外歯と第2部材の内歯との噛合により得られる。そして、大荷重がリクライニング装置に作用した場合、サブポールの外歯が第2部材の内歯に押接することにより、ロック強度が増大する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたリクライニング装置の構造では、カムによって、アンロック位置からロック位置へメインポール、サブポールが移動する際に、メインポール、サブポール、カム、第2カムの部品精度のバラツキにより、最初に、メインポールの外歯が第2部材の内歯に完全に噛み合った時に、サブポールの外歯が第2部材の内歯に噛み合っていない状態が発生する場合がある。この状態では、サブポールの外歯と第2部材の内歯との噛み合いが得られず、安定したロック強度が得られない問題点がある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて成されたもので、その課題は、安定したロック強度が得られるリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したリクライニング装置は、内筒面に円周方向に沿って内歯が形成され、一方の面が開放面となった有底円筒状の第1部材と、前記内歯と噛合可能な外歯を有したメインポールと、前記内歯と噛合可能な外歯を有したサブポールと、前記第1部材の開放面側に積層され、前記第1部材と前記円周方向に相対回転可能に設けられ、前記外歯が前記内歯に噛合するロック位置、前記外歯が前記内歯から離れたアンロック位置の間で前記メインポール、前記サブポールを案内するポールガイドが形成された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間で、回転可能に設けられ、ロック位置方向に前記メインポール、前記サブポールを押すカムと、前記カムと前記メインポールとの間に設けられ、前記ロック位置では前記カムに押されて、前記メインポールと前記ポールガイドとに当接する第2カムと、を有し、前記メインポール、前記サブポールがロック位置にある場合には、前記メインポールの外歯と前記第1部材の前記内歯とが完全噛み合い状態となり、前記サブポールの前記外歯と前記第1部材の前記内歯とは甘噛み状態となり、前記第1部材と第2部材との相対回転が禁止されるリクライニング装置であって、前記メインポール、前記サブポール、前記カムは、前記カムによって、前記アンロック位置から前記ロック位置へ前記メインポール、前記サブポールが移動する際に、最初に、前記サブポールの前記外歯が前記第1部材の前記内歯に噛み合い始め、次に、前記メインポールの前記外歯が前記第1部材の前記内歯に噛み合い始め、前記メインポールが完全噛み合い状態となる前に、前記サブポールの前記外歯が前記第1部材の前記内歯に噛み合い始めるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリクライニング装置によれば、前記メインポール、前記サブポール、前記カムは、前記カムによって、前記アンロック位置から前記ロック位置へ前記メインポール、前記サブポールが移動する際に、前記メインポールが完全噛み合い状態となる前に、前記サブポールの前記外歯が前記第1部材の前記内歯に噛み合い始めるように形成されていることにより、メインポールだけが第1部材の内歯と噛み合って、サブポールが第1部材の内歯に噛み合っていない状態がなくなるので、安定したロック強度が得られる。
【0011】
本発明の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のリクライニング装置の分解斜視図である。
【
図2】
図1の分解斜視図を逆方向から見た分解斜視図である
【
図3】
図2のリクライニング装置から第1部材の一部、ばね、レリーズプレートを除いた状態で、矢印III方向から見た平面図でアンロック状態を説明する図である。
【
図4】
図3の状態からサブポールの外歯がラチェットの内歯に噛み合い始めた状態を説明する図である。
【
図5】
図4の状態からメインポールの外歯がラチェットの内歯に噛み合い始めた状態を説明する図である。
【
図6】
図5の状態からメインポールの外歯が完全にラチェットの内歯に噛み合った状態を説明する図である。
【
図10】本実施形態のリクライニング装置が設けられたシートの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を用いて実施形態を説明する。
最初に、
図10を用いて、本実施形態のリクライニング装置が設けられたシートの説明を行う。シート1は、着座者の臀部を支持するシートクッション2と、シートクッション2に対して前後方向に傾動可能に設けられ、着座者の背部を支持するシートバック3とからなっている。4はシートバック3の傾動の回転軸(O)上に設けられ、シートバック3の傾動を許可/禁止するリクライニング装置である。
【0014】
また、このリクライニング装置4は、前倒れ状態から後ろ倒れ状態で傾動可能である。そして、初段ロック状態から後ろ倒れ状態までの間及び前倒れ状態では、シートバック3の傾動を許可/禁止可能となっているが、初段ロック状態から前倒れ状態までの間では、ロック解除保持機構により、ロック解除保持状態となり、操作レバーを操作しなくても、シートクッションの傾動が可能となっている。
【0015】
本実施形態のリクライニング装置は、シートの左右に設けられ、構造は同じであるので、以下、一方の側のリクライニング装置4を説明する。
図1-
図9を用いて、リクライニング装置4の説明を行う。
図1は本実施形態のリクライニング装置の分解斜視図、
図2は
図1の分解斜視図を逆方向から見た分解斜視図、
図3は
図2のリクライニング装置から第1部材の一部、ばね、レリーズプレートを除いた状態で、矢印III方向から見た平面図でアンロック状態を説明する図、
図4は
図3の状態からサブポールの外歯がラチェットの内歯に噛み合い始めた状態を説明する図、
図5は
図4の状態からメインポールの外歯がラチェットの内歯に噛み合い始めた状態を説明する図、
図6は
図5の状態からメインポールの外歯が完全にラチェットの内歯に噛み合った状態を説明する図、
図7は
図1のカムの平面図、
図8は
図1のメインポールの平面図、
図9は
図1のサブポールを説明する図である。
【0016】
図1、
図2に示すように、シートバック3側に設けられるラチェット(第1部材)21は、円板状の板材をプレスにより半抜加工した有底円筒状で、円形凹部21aが形成されている。この円形凹部21aの内周面には、内歯23が円周方向全域に形成されている。また、円形凹部21aの中心には、シートバック3の傾動の回転軸(
図1、
図2において軸O)に沿って配置されるシャフト(図示せず)が遊挿される貫通した穴21bが形成されている。尚、本実施形態の図示しないシャフトの断面形状は、円形でない形状(本実施形態では断面形状が小判形)とした。
【0017】
シートクッション2側に設けられるベースプレート(第2部材)25も、ラチェット21と同様に円板状の板材をプレスにより半抜加工して形成され、円形凹部25aが形成されている。この円形凹部25aの径は、ラチェット21の外径より若干大きく設定されている。そして、円形凹部25aに、ラチェット21が嵌め込まれ、ベースプレート25とラチェット21とは相対回転可能となっている。また、ベースプレート25の中心には、図示しないシャフトが遊挿される貫通した穴25bが形成されている。
【0018】
ラチェット21の外周部と、ベースプレート25の外周部とは、リング状の外周リング27により挟持され、ラチェット21とベースプレート25とは、相対回転の軸O方向に分離されることなく、相対回転可能に保持されている。
ラチェット21の円形凹部21aとベースプレート25の円形凹部25aとが形成する空間には、カム31が配置される。カム31の中心には、図示しないシャフトが嵌合する穴(本実施形態では小判形)31aが形成されている。そして、図示しないシャフトとカム31とは一体となって回転する。このため、この図示しないシャフトは、シートの両側部に設けられたリクライニング装置のうちの一方のリクライニング装置のカム31の動きを他方のリクライニング装置のカムへ伝達する伝達部材となっている。又、カム31には、ラチェット21方向に突出する2つの突部31cが形成されている。更に、
図7にも示すように、カム31の外周部には、
図7において時計回り方向に、同一形状の2つの第1突部31d、第2突部31e、第3突部31g、同一形状の2つの第1突部31d、第2突部31e、第3突部31gの順で形成されている。更に、カム31の穴31aに繋がるように、後述する2つの線細工ばね51が係合する2つの穴31fが形成されている。
【0019】
カム31とラチェット21の円形凹部21aとの間には、レリーズプレート33が配置される。このレリーズプレート33には、カム31の2つの突部31cが係合する穴33aが形成されている。この突部31cと穴33aの係合により、カム31とレリーズプレート33とは一体となって回転する。又、レリーズプレート33の中心部には、穴33eが形成されている。
【0020】
レリーズプレート33とベースプレート25の円形凹部25aとの間には、軸Oを中心とする円周方向に沿って、4つのポール、即ち、2つの第1ポール(サブポール)41と2つの第2ポール(メインポール)42とが交互に配置されている。尚、本実施形態では、第1ポール41、第2ポール42は、軸Oを中心とする円周方向において略90°ピッチで配置されている。即ち、第1ポール41は前後方向に、第2ポール42は上下方向に、それぞれ対角配置されている。
【0021】
第1ポール41、第2ポール42の内歯23と対向する面には、内歯23に噛合可能な外歯41a、外歯42aが形成されている。
さらに、第2ポール42とカム31との間には、第2カム44が配置されている。
図9に示すように、第1ポール41の外歯41aが設けられた面と反対側の面には、カム31の2つの第1突部31dが当接可能で、同一形状の2つの第1被当接部41bが形成されている。
【0022】
また、
図8に示すように、第2ポール42の外歯42aが設けられた面と反対側の面には、第2カム44が当接可能な第1被当接部42bと、カム31の第3突部31gが当接可能な第2被当接部42cとが形成されている。
図3-
図6に示すように、第2カム44には、カム31の第2突部31eが当接可能な第1被当接部44dと、後述するポールガイド突部(ポールガイド)37に当接可能なガイド当接部44aと、第2ポール42の第1被当接部42bに当接可能な第1当接部44bとが形成されている。
【0023】
ベースプレート25の円形凹部25aには、相対回転の軸Oを中心とする円の周方向に沿って、90°ピッチで4つのポールガイド突部37が形成されている。
本実施形態では、
図7に示すように、カム31の第1突部31dの周面(第1ポール(サブポール)41を押す面)は、カム31の回転中心を中心とした円の円周面となっている。即ち、カム31の第1ポール(サブポール)41を押す面である第1突部31dは、カム31の回転軸との距離が一定となっている。
【0024】
次に、カム31の第2突部31eの周面と、第3突部31gの周面とは、カム31の回転中心を中心とした円の円周横切るような面であり、更に、カム31が矢印T方向に回転すると、カム31の回転中心からの距離が長くなるような面に設定されている。即ち、カム31の第2カム44を押す面と、第2ポール(メインポール)42を押す面は、ロック位置に向かうに従って、カム31の回転軸との距離が漸次的に長くなるようになっている。
【0025】
そして、カム31、第1ポール(サブポール)41、第2ポール(メインポール)42は、以下のような作動を行うように形成されている。
カム31が矢印T方向に回転した時、最初に、第1ポール41の外歯41aがラチェット(第1部材)21の内歯23に噛み合い始め、次に第2ポール42の外歯42aがラチェット31の内歯23に噛み合い始める。その後、第2ポール42はカム31によって引き続き内歯23方向に押されるが、第1ポール41は内歯23方向に押されず、その位置で留まる。そして、ロック位置では、カム31が第2ポール42を押すと共に、第2カム44が第2ポール42を押すことで、第2ポール42の外歯42とラチェット21の内歯23とが完全噛み合い状態(遊びがない噛合状態)となり、第1ポール41の外歯41aとラチェット21の内歯23とは甘噛み状態(遊びがある噛合状態)となる。
【0026】
言い換えれば、カム31によって、アンロック位置からロック位置へ第2ポール42、第1ポール41が移動する際に、第2ポール42が完全噛み合い状態となる前に、第1ポール41の外歯41aがラチェット21の内歯23に噛み合い始める。
尚、本明細書では、第2ポール(メインポール)42、第1ポール(サブポール)41の外歯42a、41aがラチェット(第1部材)21の内歯23に噛み合っている状態で、ロック方向・アンロック方向に移動できない遊び(隙間)がない噛合状態を完全噛み合い状態といい、ロック方向・アンロック方向に若干移動できる遊び(隙間)がある噛合状態を甘噛み状態という。
【0027】
隣接する2つのポールガイド突部37により、第1ポール41、第2ポール42は相対回転の軸Oを中心とする円の径方向にのみ移動可能となっている。即ち、ポールガイド突部37は、外歯41a、外歯42aがラチェット21の内歯23と噛合するロック位置,外歯41a、外歯42aがラチェット21の内歯23から離れたアンロック位置の間で、第1ポール41、第2ポール42を案内する。
【0028】
第1ポール41、第2ポール42のレリーズプレート33と対向する面には、レリーズプレート33方向に突出する突部41d、突部42dが形成されている。レリーズプレート33には、第1ポール41の突部41d、第2ポール42の突部42dが係合するカム穴33bが形成されている。このカム穴33bには、第1ポール41の突部41d、第2ポール42の突部42dが当接する傾斜面が形成され、ロック状態でレリーズプレート33が
図1、
図2において矢印T方向と逆方向に回転すると、ポールガイド突部37に沿って、第1ポール41の外歯41a、第2ポール42の外歯42aがラチェット21の内歯23より離れる方向(アンロック位置方向)に第1ポール41、第2ポール42を移動させる形状に設定されている。
【0029】
レリーズプレート33とラチェット21の円形凹部21aとの間には、略C状に湾曲された2つの線細工ばね51が配置される。
第1ポール41、第2ポール42の側部を挟むように設けられた隣接する2つのポールガイド突部(ポールガイド)37には、それぞれ、第1ポール41、第2ポール42の一方の側部と対向する第1ポールガイド37aと、第1ポール41、第2ポール42の他方の側部と対向する第2ポールガイド37bとが形成されている。
【0030】
また、本実施形態では、ポールガイド突部37の強度は、第1ポール41の強度より低く設定されている。
そして、第1ポール41の第1ポールガイド37a、第2ポールガイド37bと対向する面に、シートバック3に入った大荷重により、ラチェット21が回転し、第1ポール41がポールガイド突部37に押しつけられた際に、ポールガイド突部37の肉が侵入可能な凹部41hが形成されている。
【0031】
図9に示すように、凹部41hは、カム31側より、外歯41a側が深くなっている。そして、凹部41hの外歯41a側には、大荷重作用時に、凹部41hに侵入したポールガイド突部37の肉が当接して、第1ポール41のアンロック方向への移動を阻止する押さえ部41iが形成されている。
【0032】
第2ポール42の一方の側部と対向する第1ポールガイド37aには、第2ポール42の一方の側部との間に空間を形成する凹部37fが形成されている。尚、本実施形態では、
第2ポール42の他方の側部と対向する第2ポールガイド37bにも、第2ポール42の他方の側部との間に空間を形成する凹部37f’が形成されている。
【0033】
2つの線細工ばね51の一方の端部側には、ベースプレート25側に折曲された第1端部51aが形成され、他方の端部側には、ベースプレート25側に折曲された第2端部51bが形成されている。
そして、線細工ばね51は、弾性変形した状態で、その第1端部51aは、レリーズプレート33の穴33eを通り、カム31に形成された穴31fに係合し、第2端部51bは、第1ポールガイド37aの凹部37fに挿入されている。
【0034】
線細工ばね51の弾性反発力により、線細工ばね51の第1端部51aは、カム31の穴31fの内壁面を押圧し、カム31は、第1突部31d、第2突部31e、第3突部31gが、それぞれ第1ポール41の第1被当接部41b、第2ポール42の第2被当接部42c、第2カム44の第1被当接部44dに対向する方向(一方の方向)に付勢されている。
【0035】
第1ポールガイド37aの凹部37fに挿入された第2端部51bは、第2ポール42の一方の側部を押圧し、第2ポール42を第2ポール42の他方の側部と対向する第2ポールガイド37bの方向に押しつけている。尚、本実施形態においては、線細工ばね51はロック状態←→アンロック状態へのそれぞれの移動中も常に第2ポール42を第2ポール42の他方の側部と対向する第2ポールガイド37bに押しつけている。
【0036】
また、本実施形態では、線細工ばね51の第2端部51bと、ポールガイド突部37の凹部37fとの嵌合(挿入)は、線細工ばね51の第2端部51bが直接第2ポール42の一方の側部を押圧付勢している。線細工ばね51の第2端部51bの押圧面と反対側の面側には空間(隙間)が存在し、線細工ばね51の第2端部51bに付勢力と異なる方向に付勢力以上の力が作用すると、第2端部51bは第2ポール42の一方の側部から離脱(離間)する方向に移動可能となっている。
【0037】
そして、第1ポール41、第2ポール42がロック位置にある場合、
図6に示すようにカム31より力Fを受ける第2カム44は、力Fの分力F’で第2ポール42をロック位置方向に押すと共に、第2ポール42をポールガイド突部37の第2ポールガイド37bに押しつける。また、力Fの分力F”で,第2カムは、ポールガイド突部37の第1ポールガイド37aを押す。
【0038】
ここで、上記構成のリクライニング装置の作動を説明する。
(第1ポール、第2ポールをロック位置からアンロック位置へ移動させる場合)
通常、
図6に示すように、線細工ばね51の弾性反発力により、カム31を介して、ベースプレート25に設けられた第1ポール41、第2ポール42は、外歯41a、外歯42aが、ラチェット21の内歯23に噛合したロック位置にあり、ラチェット(第1部材)21とベースプレート(第2部材)25との相対回転は禁止され、シートバックはシートクッションに対して回転ができない状態(ロック状態)にある。
【0039】
線細工ばね51の付勢力に抗して、カム31を操作して、他方の方向(矢印Tと逆の方向)に回転させると、カム31の突部31cとレリーズプレート33の穴33aの係合関係から、レリーズプレート33も共に回転する。この時、カム31の第1突部31dによる第1ポール41の第1被当接部41bおよびカム31の第2突部31eによる第2カム44の第1被当接部44dへの押圧と、カム31の第3突部31gによる第2ポール42の第2被当接部42cへの押圧とが解除される。
【0040】
更に、レリーズプレート33が回転すると、ポール41の突部41dが係合するレリーズプレート33のカム穴33bの傾斜面により、第1ポール41、第2ポール42(および第2カム44)は、外歯41a、外歯42aとラチェット21の内歯23との噛合が解除されたアンロック位置に移動し、
図3に示すようにラチェット(第1部材)21とベースプレート(第2部材)25との相対回転が可能となり、シートバックはシートクッションに対して回転可能(アンロック状態)となる。この時、線細工ばね51の第2端部51bにより第2ポール42は第2ポールガイド37bに押しつけられている。
(第1ポール、第2ポールをアンロック位置からロック位置へ移動させる場合)
図3に示すアンロック状態において、カム31への操作力を解除すると、線細工ばね51の付勢力により、カム31、レリーズプレート33は矢印T方向に回転する。
【0041】
先ず、
図4に示すように、カム31の2つの第1突部31dの少なくとも一方が第1ポール41の2つの第1被当接部41bを押圧し、第1ポール(サブポール)41の外歯41aがラチェット21の内歯23に噛み合い始める。尚、ここでの噛み合い始めとは、外歯と内歯とが周方向で重なり始める状態をいう。
【0042】
更に、カム31が回転すると、
図5に示すように、カム31の第3突部31gが第2ポール42の第2被当接部42cを押圧し、第2ポール(メインポール)42の外歯42aがラチェット21の内歯23に噛み合い始める。尚、カム31の第2突部31eも第2カム44の第1被当接部44dを押圧し始めるが、第2カム44はその第1当接部44bが第2ポール42の第1被当接部42bを押圧していない。
【0043】
更に、カム31が回転すると、
図6に示すように、カム31の第3突部31gによる第2ポール42の第2被当接部42cへの押圧と、第2カム44の第1当接部44bによる第2ポール42の第1被当接部42bへの押圧とにより、第2ポール(メインポール)42の外歯42aとラチェット(第1部材)21の内歯23とが完全噛み合い状態となり、第1ポール(サブポール)41の外歯41aとラチェット(第1部材)21の内歯23とは甘噛み状態となる。
【0044】
更に詳しく説明すると、カム31の第1ポール(サブポール)41の2つの第1被当接部41bを押す面である2つの第1突部31dは、カム31の回転軸との距離が一定である。そして、
図6に示すロック状態では、カム31を矢印T方向にいくら回転しても、第1ポール(サブポール)41の外歯41aとラチェット(第1部材)21の内歯23とは甘噛み状態となるように、カム31、第1ポール41の形状が設定されている。尚、
図6では第1ポール41も内歯23と完全噛み合い状態の様に見えるが、実際には、少しだけロック、アンロック方向に移動できる様な遊び(隙間)が設けられている。
【0045】
また、カム31の第2カム44を押す面である第2突部31eと、第2ポール(メインポール)42を押す面である第3突部31gとは、ロック位置に向かうに従って、カム31の回転軸との距離が漸次的に長くなるようになっている。よって、カム31を矢印T方向に回転させることにより、第2ポール(メインポール)42の外歯42aとラチェット(第1部材)21の内歯23とが完全噛み合い状態となる。
【0046】
本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 第2ポール(メインポール)42、第1ポール(サブポール)41、カム31は、第2ポール42がラチェット21の内歯23と完全に噛み合う前に、第1ポール41はラチェット21の内歯23と噛み合い始めるように形成されていることにより、第2ポール42の外歯42aだけがラチェット21の内歯23と完全に噛み合って、第1ポール41の外歯41aがラチェット21の内歯23と全く噛み合っていない状態がなくなるので、安定したロック強度が得られる。
【0047】
(2) 第2ポール(メインポール)42、第1ポール(サブポール)41、カム31は、最初に、第1ポール(サブポール)41の外歯41aがラチェット(第1部材)21の内歯23に噛み合い始め、次に、第2ポール(メインポール)42の外歯42aがラチェット21の内歯23に噛み合い始めるように形成されていることにより、更に安定したロック強度が得られる。
【0048】
(3) ロック位置において、第1ポール41を甘噛み状態、第2ポール42を完全噛み合い状態にする構成を、カム31(第1突部31d、第2突部31e、第3突部31g)にて実現できるため、成形性が容易になる。
(4) 第2ポール42は上下方向に対角配置されているので、遊びがない噛合が上下方向となり、前後方向の振動によるガタが発生しない。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定するものではない。
例えば、上記実施形態は、4つのポールで説明を行ったが、3つのポールでも可能である。この場合、3つのポールのうち、2つは第2ポールで、第2ポール、第2カムは対角に設けることが好ましい。
【0050】
また、ポールが5つ以上ある場合でも可能である。この場合、第2カムは少なくとも2つあり、第2カムのうちの一組の第2カムは対角配置されることが好ましい。
【符号の説明】
【0051】
21 ラチェット(第1部材)
25 ベースプレート(第2部材)
31 カム
37 ポールガイド(ポールガイド)
41 第1ポール
42 第2ポール
51 線細工ばね