IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIシバウラの特許一覧

<>
  • 特許-農作業機及び制御装置並びに制御方法 図1
  • 特許-農作業機及び制御装置並びに制御方法 図2
  • 特許-農作業機及び制御装置並びに制御方法 図3
  • 特許-農作業機及び制御装置並びに制御方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】農作業機及び制御装置並びに制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 71/02 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
A01B71/02 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018082514
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019187272
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 素広
(72)【発明者】
【氏名】宮田 慎太郎
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-289422(JP,A)
【文献】実公昭64-006642(JP,Y2)
【文献】実開平05-091208(JP,U)
【文献】特開2016-049029(JP,A)
【文献】特開2005-192529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0196919(US,A1)
【文献】特開2014-065323(JP,A)
【文献】特開2013-068177(JP,A)
【文献】特開2012-232724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0018727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 51/00 - 61/04
A01B 63/14 - 67/00
A01B 71/00 - 79/02
A01D 34/00 - 34/01
A01D 34/412- 34/90
A01D 42/00 - 42/08
A01D 43/06 - 43/077
B60K 17/00 - 17/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部の駆動力が動力として伝達されて動作する作業部を備えた農作業機であって、走行車の運転席に設けられて前記運転席の作業者の存在を検出する検出部と、
前記農作業機に配置されていると共に、前記駆動部と前記作業部とにわたるように接続され、前記駆動部の動力を前記作業部に対して動力伝達状態と動力切断状態とに切り換えるように動作する切換部と、
前記切換部に備えられ、制御信号を送受信する農作業機側通信部とを備え、
前記切換部は、前記検出部が作業者の存在を検出できない制御信号を受信した場合に動力切断状態に切り替え動作し、前記検出部が作業者の存在を検出した制御信号を受信した場合に動力伝達状態に切り換え動作するように制御されていることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機を制御する制御装置であって、
走行車の運転席に設けられて前記運転席の作業者の存在を検出する検出部と、
前記農作業機側通信部に対して接続された走行車側通信部と、
前記検出部に検出動作させると共に、前記検出部が前記運転席での前記作業者の存在を検出できない場合に、前記切換部を動力切断状態に動作させる制御信号を前記走行車側通信部から送信させ、前記検出部が前記運転席での前記作業者の存在を検出した場合に、前記切換部を動力伝達状態に動作させる制御信号を前記走行車側通信部から送信させるように制御する制御部と、
を備えていることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の農作業機を制御する制御方法であって、
運転席での作業者の存在を検出すると共に、検出結果に基づく制御信号を前記農作業機側通信部に送信し、前記農作業機側通信部が受信する前記制御信号が、前記運転席での前記作業者の存在を検出できないという信号である場合に、前記切換部を動力切断状態に切り替え、前記運転席での前記作業者の存在を検出したという信号である場合に、前記切換部を動力伝達状態に切り替えることを特徴とする制御方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部の駆動力が伝達されて作動する農作業機及び農作業機を制御する制御装置並びに農作業機を制御する制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業機の動力伝達手段として、例えば、走行車に駆動力を付与する駆動部の駆動力の一部を利用して回転するPTO(Power Take Off)軸を介して伝達するようにしたもの(特許文献1、2参照)が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された農作業機は、ピックアップされて搬送される収穫物が搬送通路で詰まった場合に、PTO軸に設けられたトルクリミッタが作動して一時的に搬送ロータ(作業部)の回転を停止させると共に、各種報知手段により収穫物が詰まったことを作業者に対して知らせるようになっている。
【0004】
そして、収穫物が詰まったことを知らされた作業者が、走行車側に設けられたコントロールボックスの操作により、アクチュエータを作動させて搬送通路底板の後端側を下降させることで搬送通路が拡開し、この搬送通路の拡開によって、搬送ロータに対する詰まった収穫物による抵抗が軽減されるため、トルクリミッタが解除され、この解除に伴って搬送ロータの回転が復活して、詰まっていた収穫物を搬送することで、収穫物の詰まりを安全に解消することができるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3939125号公報
【文献】2017-226325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の従来技術では、搬送通路が拡開されてもトルクリミッタが解除されない程度に詰まりが生じた場合には、作業者が手作業によって詰まりを取り除く作業を行うが、詰まりが取り除かれたときに搬送ロータが回転してしまうため、走行車の駆動部を停止させる必要がある。
【0007】
しかしながら、走行車の駆動部の停止を忘れたり、慣れによって走行車の駆動部を停止させたりしないで、詰まりを取り除く作業を行うこともあった。
【0008】
一方、特許文献2の従来技術では、農作業中において走行車に設けられた運転席の作業者の存在を検出しており、農作業中に走行車の走行を停止して農作業機の作業部の点検を行う場合、運転席から作業者が離れたことを検出したときに、この検出結果に基づいて、駆動部を自動的に停止させるように制御する、或いは,PTO軸に対する駆動部の駆動力の伝達を自動的に切断させるように制御することで、農作業機の作業部のみを停止させて、作業部の点検を安全に行えるようにされている。
【0009】
しかしながら、農作業機の作業部のみを停止させて、作業部の点検を安全に行えるようにするには、走行車の駆動部を前述の制御によって停止させるための構造、或いはPTO軸に対する駆動部の駆動力の伝達を前述の制御によって切断するための構造、制御装置等が全て備えられた仕様の走行車が必要であり、各種構造を通常の走行車に対して取り付ける改造作業も困難であった。
【0010】
現在、前述の仕様の走行車以外でも、必要最低限の改造で、農作業機の作業部のみを停止させることができ、これにより、作業部の点検を安全に行えるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため、本発明は下記の手段を採用した。
【0012】
駆動部の駆動力が動力として伝達されて動作する作業部を備えた農作業機であって、走行車の運転席に設けられて前記運転席の作業者の存在を検出する検出部と、前記農作業機に配置されていると共に、前記駆動部と前記作業部とにわたるように接続され、前記駆動部の動力を前記作業部に対して動力伝達状態と動力切断状態とに切り換えるように動作する切換部と、前記切換部に備えられ、制御信号を送受信する農作業機側通信部とを備え、前記切換部は、前記検出部が作業者の存在を検出できない制御信号を受信した場合に動力切断状態に切り替え動作し、前記検出部が作業者の存在を検出した制御信号を受信した場合に動力伝達状態に切り換え動作するように制御されていることを特徴とする農作業機にしたことである。
【0013】
前述の農作業機を制御する制御装置であって、走行車の運転席に設けられて前記運転席
の作業者の存在を検出する検出部と、前記農作業機側通信部に対して接続された走行車側
通信部と、前記検出部に検出動作させると共に、前記検出部が前記運転席での前記作業者
の存在を検出できない場合に、前記切換部を動力切断状態に動作させる制御信号を前記走行車側通信部から送信させ、前記検出部が前記運転席での前記作業者の存在を検出した場合に、前記切換部を動力伝達状態に動作させる制御信号を前記走行車側通信部から送信させるように制御する制御部とを備えていることを特徴とする制御装置にしたことである。
【0014】
前述の農作業機を制御する制御方法であって、運転席での作業者の存在を検出すると共
に、検出結果に基づく制御信号を前記農作業機側通信部に送信し、前記農作業機側通信部
が受信する前記制御信号が、前記運転席での前記作業者の存在を検出できないという信号
である場合に、前記切換部を動力切断状態に切り替え、前記運転席での前記作業者の存在を検出したという信号である場合に、前記切換部を動力伝達状態に切り替えることを特徴とする制御方法にしたことである。
ある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る第1実施形態の農作業機の概略図である。
図2】本発明に係る第2実施形態の農作業機の概略図である。
図3】本発明に係る実施形態の制御装置の構成図であり、図1の農作業機を制御する制御装置の構成図である。
図4】本発明に係る実施形態の一例を示す制御方法のフローチャートであり、図2に示す制御装置の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る第1実施形態の一例を示す農作業機Aを図1にも基づいて説明する。
【0017】
本明細書でいう農作業機Aは、ロールベーラ、各種収穫機、施肥装置、田植機等、農作業に用いられるものであって、特に限定するものではない。
【0018】
第1実施形態の農作業機Aは、トラクタ等の走行車Bにけん引されて農作業を行うと共に、走行車Bの駆動部B1の駆動力がPTO軸C1及び油圧部C2並びに電磁クラッチ(切換部)C10、電磁バルブ(切換部)C20を介して農作業機Aの作業部A1、A2の動力として伝達されるものである。
【0019】
ここで、作業部A1、A2は、農作業機Aにおける各種農作業を行うものであり、PTO軸C1の回転が動力として伝達されて動作する各部位、油圧部C2の作動油による油圧が動力として伝達されて動作する各部位であって、農作業機Aの種類によって異なる作業を行うものである。
【0020】
PTO軸C1は、駆動部B1から分岐する駆動力の一部を利用して回転するものであり、このPTO軸C1と、農作業機A側に配置された電磁クラッチ(切換部)C10の一方側とにわたり、PTOシャフトC11が接続されている。
【0021】
PTO軸C1は、状況に応じた走行車B側での操作によって動作する電磁クラッチ(図示せず)の変速機(図示せず)を備えた動力取出し部C12に接続されており、この動力取出し部C12を介して回転、回転停止、変速等ができるようにされている。
【0022】
PTO軸C1の回転は、PTOシャフトC11及び電磁クラッチC10を経て、電磁クラッチC10の他方側に接続された作業部A1に動力として伝達されると共に、電磁クラッチC10が切断されることによって、作業部A1への動力伝達が切断される。
【0023】
油圧部C2は、駆動部B1から分岐する駆動力の一部を利用して作動油を作業部A2に送るものであり、油圧部C2と農作業機A側に配置された電磁バルブ(切換部)C20の一方側にわたり、油圧ホースC21が接続されている。
【0024】
油圧部C2は、状況に応じた走行車B側での操作によって作動するポンプ(図示せず)や電磁バルブ(図示せず)を備えており、これらのポンプ及びバルブを介して作動油による圧力伝達及び圧力伝達停止ができるようにされている。
【0025】
油圧部C2からの作動油は、油圧ホースC21及び電磁バルブC20を経て、電磁バルブC20の他方側に接続された作業部A2に動力として送られると共に、電磁バルブC20を閉じることによって、作業部A2への動力伝達が切断される。
【0026】
電磁クラッチC10及び電磁バルブC20には、走行車Bの運転席B2に配置されたコントロールボックスB3に設けられた制御装置Dからの制御信号を送受信する作業機側通信部C30が接続されている。
【0027】
電磁クラッチC10の入切動作及び電磁バルブC20の開閉動作は、作業機側通信部C30が受信する制御装置Dからの制御信号に基づいて行われる。
【0028】
また、電磁クラッチC10の入切動作及び電磁バルブC20の開閉動作は、農作業機Aに配置された操作部C4の操作によっても行うことができるようにされている。
【0029】
電磁クラッチC10の入切動作及び電磁バルブC20の開閉動作は、制御装置Dの制御信号によるものが優先され、制御装置Dの動作中においては、操作部C4の操作は無効にされる。
【0030】
このような農作業機Aは、電磁クラッチC10及び電磁バルブC20を農作業機A側に配置しているので、走行車B側に制御装置Dを設け、この制御装置Dと電磁クラッチC10及び電磁バルブC20の作業機側通信部C30とを、無線又は有線で電気的に接続するという簡単な作業で、走行車Bの仕様に係わらず、制御装置Dの制御信号に基づいて作業部A1、A2を停止させることができる。
【0031】
図2は、本発明に係る第2実施形態の農作業機Eである。尚、第2実施形態の農作業機Aと重複する部位についての説明は、同符号を付すことにより省略する。
【0032】
農作業機Eは、走行車Fにけん引されるものであるが、作業部A1、A2の動力となる駆動力を発生させるための駆動部E1を備えている。
【0033】
また、農作業機Eには、駆動部E1の他、駆動部E1に接続され、この駆動部E1の駆動力の一部を利用して回転する回転軸C5、駆動部E1に接続され、この駆動部E1の駆動力の一部を利用して作動油を作業部A2の動力として送る油圧部C6、回転軸C5に接続された電磁クラッチC10、油圧部C6に接続された電磁バルブC20、作業機側通信部C30を備えており、走行車F側の制御装置Dからの制御信号に基づいて、電磁クラッチC10の入切動作、電磁バルブC20の開閉動作が行われるようにされている。
【0034】
すなわち、農作業機Eは、農作業機Aと同じ効果を奏すると共に、走行車F側の駆動部B1の駆動力に依存することなく、作業部A1、A2を動作させることができ、PTO軸C1を備えない走行車Fによってけん引されて農作業を行うことができる。
【0035】
農作業機A、Eにおける電磁クラッチC10の入切動作、電磁バルブC20の開閉動作の制御は、走行車Bの運転席B2での作業者の存在を検出し、この検出結果に基づいて行うようにすることが好ましい。
【0036】
具体的には、農作業中において、運転席B2での作業者の存在が検出されている状態においては、電磁クラッチC10の入状態を保持すると共に、電磁バルブC20の開状態を保持する制御である。
【0037】
一方、走行車Bが駆動部B1の駆動中において停車した状態において、運転席B2での作業者の存在が検出されない場合に、電磁クラッチC10を切断状態とすると共に、電磁バルブC20を閉状態とする制御である。
【0038】
また、コントロールボックスB3での手動操作によって制御信号を送信して、電磁クラッチC10の入切動作をさせる制御、電磁バルブC20の開閉動作をさせる制御である。
【0039】
以下、農作業機Aにおける電磁クラッチC10の入切動作及び電磁バルブC20の開閉動作を制御する制御装置Dの構成を図1及び図3に基づいて説明する。
【0040】
制御装置Dは、検出部D1、制御部D2、走行車側通信部D3を備えており、コントロールボックスB3内に内蔵されている。
【0041】
検出部D1は、運転席B2の作業者の存在を制御部D2の制御によって検出動作するものであり、走行車Bの駆動部B1が駆動状態であるときに、検出動作が行われるように制御されている。
【0042】
検出部D1は、赤外線、可視光、超音波、等を用いた人感センサが例示でき、コントロールボックスB3の表面の、運転席B2において着座、或いは立っている状態の作業者を検出できる位置に配置されている。
【0043】
検出部D1の他の例として、運転席B2において作業者が着座する椅子B20、或いは作業者が立つ床に配置する接触センサや重量センサとしてもよい。
【0044】
このような検出部D1により、作業者が椅子B20に着座しているとき、或いは作業者が床に立っているときに作業者の存在を検出できる。
【0045】
制御部D2は、CPU、CPUが実行する各種プログラムや各種アプリケーションプログラム及び各種データ等を記憶したROM、入力される各種データ及び演算結果等を一時的に記憶するRAM等を備えている。
【0046】
制御部D2は、前述の各種プログラムや各種アプリケーションプログラムに基づいて、各種データ入出力操作、検出部D1の検出動作、走行車側通信部D3と作業機側通信部C30との制御信号送受信、走行車Bの駆動部B1をコントロールするECU(engine control unit)B4の動作、PTO軸C1の回転数の切替え、電磁クラッチC10の入切及び電磁バルブC20の開閉、作業部A1、A2が行う各種作業、等の走行車B及び作業部A1、A2に必要な動作を制御するようにされている。
【0047】
走行車側通信部D3と作業機側通信部C30とは、検出部D1の検出に基づく制御信号及び電磁クラッチC10の入切及び電磁バルブC20の現在状況信号を、走行車側通信部D3と作業機側通信部C30との間で送受信できるように、無線又は有線によって電気的に接続されている。
【0048】
制御部D2の制御による、検出部D1による検出制御、電磁クラッチC10の入切動作制御、電磁バルブC20の開閉動作制御は、農作業実施中に行われる制御である。
【0049】
農作業実施中は、あらかじめ、コントロールボックスB3からの入力操作で農作業実施中であることを設定し、これから行う作業は、「農作業実施」であると規定することで、農作業以外での、走行車Bの駆動部B1の駆動、農作業機A、Eの移動、停止等での誤操作を防止できる。
【0050】
「農作業実施」であるとの規定は、走行車Bの駆動部B1の駆動停止、或いは、コントロールボックスB3からの入力操作で「農作業実施終了」を設定することで、「農作業実施」をキャンセルする。
【0051】
すなわち、走行車Bの駆動部B1を始動させたときに、検出部D1が検出を開始するが、このとき、作業者が「農作業実施」であることを手動操作によって設定したときに、農作業実施中において、検出部D1による運転席B2での作業者の存在の検出による電磁クラッチC10の入切制御及び電磁バルブC20の開閉制御が行われる。
【0052】
送受信される制御信号が、「農作業実施」状態であると共に、動力伝達状態であり、作業者が運転席B2に存在しているとの信号であるとき、農作業が継続しているものとして判断し、電磁クラッチC10の入状態及び電磁バルブC20の開状態を保持して、作業部A1、A2に対する動力伝達状態を保持する。
【0053】
一方、送受信される制御信号が、「農作業実施」状態であると共に、動力伝達状態であり、作業者の存在が検出できないとの信号であるとき、農作業が停止しているものとして判断し、電磁クラッチC10を切断状態及び電磁バルブC20を閉状態に切り替えて、作業部A1、A2に対する動力伝達状態を切断する(動力切断状態)。
【0054】
動力切断状態では、駆動部B1の駆動力が作業部A1、A2に伝達されてないため、駆動部B1が駆動状態であっても作業部A1、A2は停止しており、作業者による農作業機Aの点検を安全に行うことができる。
【0055】
また、検出部D1の検出は、駆動部B1の駆動中に継続しているため、農作業機Aの点検終了後、作業者が運転席B2に戻った際に作業者の存在を検出すると、この検出結果を制御信号として走行車側通信部D3と作業機側通信部C30との間で送受信する。
【0056】
送受信される制御信号が、「農作業実施」状態であると共に、作業者が運転席B2に存在しているとの信号であるとき、電磁クラッチC10を入状態及び電磁バルブC20を開状態に自動的に切り替えて動力伝達状態にする。
【0057】
手動操作による動力伝達状態及び動力切断状態にする制御は、「農作業実施」をキャンセルしたときに可能となり、例えば、農作業が行われない状況での農作業機A、Eの移動時において作業機A1、A2を動作させないようにする場合に行われる。
【0058】
動力切断状態から動力伝達状態に切り替える制御については、前述のように自動的に行うものに限らず、検出部D1が作業者の存在を検出したときに、動力伝達状態に切替え可能状態として判定すると共に、この判定結果を作業者に対して視覚的及び/又は聴覚的に報知する制御とし、この報知に基づいて作業者がコントールパネルに設けられたスイッチ等を操作することで動力切断状態から動力伝達状態に切り替えるようにしてもよい。
【0059】
尚、農作業機Eの制御に関しては、農作業機Aの制御と同じであるため、図3において作業機(E)として示し、農作業機E内に配置された駆動部E1の駆動力を利用して、電磁クラッチC10及び電磁バルブC20に伝達される動力を二点鎖線の矢印として示した。
【0060】
以下、制御装置Dによる検出部D1の検出制御方法、検出結果に基づく電磁クラッチC10の入切制御方法及び電磁バルブC20の開閉制御方法を、図4に基づいて説明する。
【0061】
図4は、制御装置Dによる電磁クラッチC10の入切制御方法及び電磁バルブC20の開閉制御方法を示すフローチャートであり、走行車Bの駆動部B1を始動させたときに起動するプログラムである。
【0062】
駆動部B1を始動後、検出部D1による運転席B2での作業者の検出動作が開始(ステップS1)され、検出部D1の検出動作は駆動部B1が停止されるまで継続される。
【0063】
駆動部B1の始動後において「農作業実施」を設定(ステップS2)し、この設定によって、今後行われる農作業機Aの動作は、検出部D1の検出による電磁クラッチC10の入切制御及び電磁バルブC20の開閉制御(「農作業実施」制御)であることが設定(ステップS3)され、「農作業実施」制御が開始(ステップS4)される。
【0064】
ステップS2において「農作業実施」が設定されなかった場合、電磁クラッチC10の入切制御及び電磁バルブC20の開閉制御は、作業者の手動操作による制御で行われ(ステップS5)、ステップS2において「農作業実施」が設定されるまで継続する。
【0065】
ステップS4において「農作業実施」制御が開始されたとき、検出部D1によって走行車Bの運転席B2に作業者が存在していることが検出される(ステップS6)と、電磁クラッチC10が入状態になって作業部A1が作動(ステップS7)すると共に、電磁バルブC20が開状態となって作業部A2が作動(ステップS7)して、農作業機Aが農作業可能状態(ステップS8)となる。
【0066】
ステップS8において、農作業機Aの農作業可能状態で走行車Bが停止(ステップS9)し、降車によって作業者が走行車Bの運転席B2から離れて、検出部D1が運転席B2の作業者の存在を検出できない(ステップS10)場合、電磁クラッチC10が切断状態になって作業部A1が停止(ステップS11)すると共に、電磁バルブC20が閉状態となって作業部A2が停止(ステップS11)して、農作業機Aが農作業不可能状態(ステップS12)となる。
【0067】
ステップS11は、作業者が走行車Bの運転席B2に戻って、検出部D1が運転席B2での作業者の存在を検出(ステップS13)するまで継続される。
【0068】
ステップS13において、検出部D1が運転席B2での存在を検出した場合、電磁クラッチC10が入状態になって作業部A1が作動(ステップS14)すると共に、電磁バルブC20が開状態となって作業部A2が作動(ステップS14)して、農作業機Aが再び農作業可能状態(ステップS15)となる。
【0069】
「農作業実施」制御を終了するには、「農作業実施終了」を設定(ステップS16)することで行われ、このステップ16において「農作業実施終了」が設定されると、今後行われる農作業機Aの動作は、全て作業者による手動操作で制御される手動操作制御(ステップS5)となり、ステップS16の「農作業実施終了」設定後に駆動部B1を停止(ステップS17)させることで、全てのプログラムが終了する。
【0070】
「農作業実施」制御を終了するには、走行車Bの駆動部B1を停止させると「農作業実施」制御が終了するようにしてもよく、この場合、走行車Bの駆動部B1を停止させたとき、電磁クラッチC10が切断されると共に、電磁バルブC20が閉じるように制御するとよい。
【0071】
したがって、電磁クラッチC10の入切制御方法及び電磁バルブC20の開閉制御方法は、走行車Bの運転席B2において作業者の存在を検出することで、電磁クラッチC10を入状態にすることができると共に、電磁バルブC20を開状態にすることができる。
【0072】
また、走行車Bの運転席B2において作業者の存在を検出できなかったときに、電磁クラッチC10を切断状態にすることができると共に、電磁バルブC20を閉状態にすることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、本発明の具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0074】
また、前述の各実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
A:農作業機
E:農作業機
A1:作業部
A2:作業部
B:走行車
B1:駆動部
B2:運転席
C10:電磁クラッチ
C20:電磁バルブ
C30:作業機側通信部
D:制御装置
D1:検出部
D2:制御部
D3:走行車側通信部
図1
図2
図3
図4