(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】シートベルト用アンカー装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/18 20060101AFI20220801BHJP
B60R 22/12 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B60R22/18
B60R22/12
(21)【出願番号】P 2018096968
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角中 智
(72)【発明者】
【氏名】藤原 絵里
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5215332(US,A)
【文献】米国特許第7540536(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトのウエビングの一端に形成したループを固定する第1開口が形成されるとともに、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記第1開口と反対向きに延び、前記拡大領域から前記スタッドの頭部が進入不能で軸部が進入可能なロック領域とを有する第2開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートに取り付けられるストッパーであって、前記スタッドの頭部が前記第2開口の拡大領域に挿入された状態で前記アンカープレートが前記第2開口から前記第1開口へ向かう方向に移動されたときに前記頭部の通過を許容するとともに、前記スタッドの軸部が前記ロック領域に進入したときに前記頭部が前記拡大領域へ戻るのを阻止する係止片と、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入するときに前記頭部を案内する案内片と、を含むストッパーと、を備え、
前記案内片は、
その一部が前記アンカープレートの厚さの範囲内に位置するとともに、前記拡大領域内に位置し、前記ロック領域から前記拡大領域へ向かって前記車体に近づくように傾斜する、シートベルト用アンカー装置。
【請求項2】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトのウエビングの一端に形成したループを固定する第1開口が形成されるとともに、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記第1開口と反対向きに延び、前記拡大領域から前記スタッドの頭部が進入不能で軸部が進入可能なロック領域とを有する第2開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートに取り付けられるストッパーであって、前記スタッドの頭部が前記第2開口の拡大領域に挿入された状態で前記アンカープレートが前記第2開口から前記第1開口へ向かう方向に移動されたときに前記頭部の通過を許容するとともに、前記スタッドの軸部が前記ロック領域に進入したときに前記頭部が前記拡大領域へ戻るのを阻止する係止片と、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入するときに前記頭部を案内する案内片と、を含むストッパーと、を備え、
前記案内片は、
前記拡大領域内に位置し、前記ロック領域から前記拡大領域へ向かって前記車体に近づくように傾斜するとともに、前記アンカープレートの厚さ方向において前記係止片と対向する位置に設けられており、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入するときに、前記頭部が前記係止片を前記アンカープレートから離れる方向へ押し上げるように前記頭部を案内する
、シートベルト用アンカー装置。
【請求項3】
車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、
シートベルトのウエビングの一端に形成したループを固定する第1開口が形成されるとともに、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記第1開口と反対向きに延び、前記拡大領域から前記スタッドの頭部が進入不能で軸部が進入可能なロック領域とを有する第2開口が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートに取り付けられるストッパーであって、前記スタッドの頭部が前記第2開口の拡大領域に挿入された状態で前記アンカープレートが前記第2開口から前記第1開口へ向かう方向に移動されたときに前記頭部の通過を許容するとともに、前記スタッドの軸部が前記ロック領域に進入したときに前記頭部が前記拡大領域へ戻るのを阻止する係止片と、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入するときに前記頭部を案内する案内片と、を含むストッパーと、を備え、
前記案内片は、前記拡大領域内に位置し、前記ロック領域から前記拡大領域へ向かって前記車体に近づくように傾斜しており、
前記ストッパーは、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記頭部と前記アンカープレートの間に介在して前記頭部を前記アンカープレートから離れる方向に付勢する付勢片を含む
、シートベルト用アンカー装置。
【請求項4】
前記第1開口から前記第2開口へ向かう方向を第1方向、前記第2開口から前記第1開口へ向かう方向を第2方向と定義したとき、
前記付勢片は、前記アンカープレートに接する位置から前記第1方向へ、前記アンカープレートから浮き上がりながら延びており、
前記案内片は、前記付勢片の前記第1方向の端部から前記付勢片と並列となるように前記第2方向へ延びている、請求項3に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項5】
前記第1開口から前記第2開口へ向かう方向を第1方向、前記第2開口から前記第1開口へ向かう方向を第2方向と定義したとき、
前記付勢片は、前記アンカープレートに接する位置から前記第2方向へ、前記アンカープレートから浮き上がりながら延びており、
前記案内片は、前記付勢片の
前記第2方向の端部から前記第2方向へ延びている、請求項3に記載のシートベルト用アンカー装置。
【請求項6】
前記ストッパーは、前記アンカープレートと当接する第1板状部と、前記第1板状部と隙間を隔てて対向する第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部の前記第1開口と反対側の端部同士を連結する折り返し部とを含み、
前記係止片は前記第2板状部に設けられており、前記付勢片および前記案内片は前記第1板状部に設けられている、請求項3~5の何れか一項に記載のシートベルト用アンカー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に設けられたスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、シートベルトの端部がシートベルト用アンカー装置を介して車体に結合されることがある。例えば、特許文献1には、
図12および
図13に示すようなシートベルト用アンカー装置110が開示されている。
【0003】
具体的に、車体には、大径の頭部101および小径の軸部102を有するスタッド100が設けられる。シートベルト用アンカー装置110は、そのスタッド100に固定されるものであり、アンカープレート120と、板バネからなるストッパー130を含む。ストッパー130は、リベット140によりアンカープレート120に取り付けられている。
【0004】
アンカープレート120には、シートベルトのウエビングの一端に形成したループ(図示せず)を固定する第1開口121と、鍵穴状の第2開口122が形成されている。第2開口122は、スタッド100の頭部101が挿入可能な円形状の拡大領域123と、拡大領域123から第1開口121と反対向きに延びるロック領域124を有する。ロック領域124は、拡大領域123からスタッド100の頭部101が進入不能で軸部102が進入可能なスリット状の領域である。
【0005】
ストッパー130は、第2開口122を覆うようにロック領域124の延在方向に延びている。ストッパー130は、略中央に係止片131を有するとともに、下端に押圧片132を有する。係止片131は、スタッド100の頭部101が第2開口122の拡大領域123を通過するように拡大領域123に挿入された状態でアンカープレート120が第2開口122から第1開口121へ向かう方向に移動されたときに頭部101の通過を許容するとともに、スタッド100の軸部102が拡大領域123からロック領域124に進入してロック領域124の端部に位置したときに頭部101が拡大領域123へ戻るのを阻止する。押圧片132は、軸部102がロック領域124の端部に位置したときに頭部101を押圧してアンカープレート120に押し付ける。これにより、アンカープレート120がスタッド100に対して振動して異音が発生することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、
図12および
図13に示すアンカー装置110では、スタッド100の頭部101を拡大領域123に挿入した状態で軸部102が拡大領域123からロック領域124に進入するようにアンカープレート120を移動させる際には、スタッド100の頭部101が係止片131を通過するために係止片131をアンカープレート120から離れる方向へ押し上げる必要がある。このため、スタッド100へのアンカー装置110の固定作業が困難である。
【0008】
そこで、本発明は、アンカー装置をスタッドへ容易に固定することができるシートベルト用アンカー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の一つの観点からのシートベルト用アンカー装置は、車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、シートベルトのウエビングの一端に形成したループを固定する第1開口が形成されるとともに、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記第1開口と反対向きに延び、前記拡大領域から前記スタッドの頭部が進入不能で軸部が進入可能なロック領域とを有する第2開口が形成されたアンカープレートと、前記アンカープレートに取り付けられるストッパーであって、前記スタッドの頭部が前記第2開口の拡大領域に挿入された状態で前記アンカープレートが前記第2開口から前記第1開口へ向かう方向に移動されたときに前記頭部の通過を許容するとともに、前記スタッドの軸部が前記ロック領域に進入したときに前記頭部が前記拡大領域へ戻るのを阻止する係止片と、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入するときに前記頭部を案内する案内片と、を含むストッパーと、を備え、前記案内片は、前記拡大領域内に位置し、前記ロック領域から前記拡大領域へ向かって前記車体に近づくように傾斜する、ことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、ストッパーが案内片を含むので、スタッドの頭部を第2開口の拡大領域を通過させずに拡大領域内に留めたままの状態で、スタッドの軸部が拡大領域からロック領域に進入するようにアンカープレートを移動させると、スタッドの頭部が案内片に案内されてスタッドの軸方向に自動的に移動する。このため、アンカー装置をスタッドへ容易に固定することができる。
【0011】
前記案内片は、前記アンカープレートの厚さ方向において前記係止片と対向する位置に設けられており、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入するときに、前記頭部が前記係止片を前記アンカープレートから離れる方向へ押し上げるように前記頭部を案内してもよい。本構成では、案内片によって案内されるスタッドの頭部が係止片をアンカープレートから離れる方向へ押し上げるため、作業者はアンカープレートへ移動方向と直交する厚さ方向の力をそれほど加える必要はない。従って、アンカー装置をスタッドへさらに容易に固定することができる。
【0012】
前記ストッパーは、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記頭部と前記アンカープレートの間に介在して前記頭部を前記アンカープレートから離れる方向に付勢する付勢片を含んでもよい。この構成によれば、アンカー装置がスタッドに固定されたときは、ストッパーの付勢片の付勢力によってアンカープレートが車体側に押し付けられる。従って、アンカープレートがスタッドに対して振動して異音が発生することが防止される。しかも、付勢片はスタッドの頭部とアンカープレートの間に介在するので、車両の乗員の足や荷物などが直接的に付勢片に当ることがスタッドの頭部によって抑制される。つまり、スタッドの頭部がストッパーの付勢片を保護する役割を果たす。従って、ストッパーの異音防止機能の耐久性を向上させることができる。
【0013】
例えば、前記第1開口から前記第2開口へ向かう方向を第1方向、前記第2開口から前記第1開口へ向かう方向を第2方向と定義したとき、前記付勢片は、前記アンカープレートに接する位置から前記第1方向へ、前記アンカープレートから浮き上がりながら延びており、前記案内片は、前記付勢片の前記第1方向の端部から前記付勢片と並列となるように前記第2方向へ延びていてもよい。
【0014】
あるいは、前記第1開口から前記第2開口へ向かう方向を第1方向、前記第2開口から前記第1開口へ向かう方向を第2方向と定義したとき、前記付勢片は、前記アンカープレートに接する位置から前記第2方向へ、前記アンカープレートから浮き上がりながら延びており、前記案内片は、前記付勢片の第2方向の端部から前記第2方向へ延びていてもよい。この構成によれば、付勢片と案内片が連続するため、上記のように付勢片と案内片が並列の場合と比べてストッパーの形状をシンプルにすることができる。
【0015】
例えば、前記ストッパーは、前記アンカープレートと当接する第1板状部と、前記第1板状部と隙間を隔てて対向する第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部の前記第1開口と反対側の端部同士を連結する折り返し部とを含み、前記係止片は前記第2板状部に設けられており、前記付勢片および前記案内片は前記第1板状部に設けられていてもよい。
【0016】
また、本発明の別の観点からのシートベルト用アンカー装置は、車体に設けられた、軸部および前記軸部よりも大径の頭部を有するスタッドに固定されるシートベルト用アンカー装置であって、シートベルトのウエビングの一端に形成したループを固定する第1開口が形成されるとともに、前記スタッドの頭部が挿入可能な拡大領域と、前記拡大領域から前記第1開口と反対向きに延び、前記拡大領域から前記スタッドの頭部が進入不能で軸部が進入可能なロック領域とを有する第2開口が形成されたアンカープレートと、前記アンカープレートに取り付けられるストッパーであって、前記スタッドの頭部が前記第2開口の拡大領域に挿入された状態で前記アンカープレートが前記第2開口から前記第1開口へ向かう方向に移動されたときに前記頭部の通過を許容するとともに、前記スタッドの軸部が前記ロック領域に進入したときに前記頭部が前記拡大領域へ戻るのを阻止する係止片を含むストッパーと、を備え、前記アンカープレートには、前記ロック領域の両側に、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入するときに前記頭部を案内する案内面が設けられており、これらの案内面は、前記ロック領域から前記拡大領域へ向かって前記車体に近づくように傾斜する、ことを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、アンカープレートに案内面が設けられているので、スタッドの頭部を開口の拡大領域を通過させずに拡大領域内に留めたままの状態で、スタッドの軸部が拡大領域からロック領域に進入するようにアンカープレートを移動させると、スタッドの頭部が案内面に案内されてスタッドの軸方向に自動的に移動する。このため、アンカー装置をスタッドへ容易に固定することができる。
【0018】
前記ストッパーは、前記軸部が前記拡大領域から前記ロック領域に進入したときに前記頭部と前記アンカープレートの間に介在して前記頭部を前記アンカープレートから離れる方向に付勢する付勢片を含んでもよい。この構成によれば、アンカー装置がスタッドに固定されたときは、ストッパーの付勢片の付勢力によってアンカープレートが車体側に押し付けられる。従って、アンカープレートがスタッドに対して振動して異音が発生することが防止される。しかも、付勢片はスタッドの頭部とアンカープレートの間に介在するので、車両の乗員の足や荷物などが直接的に付勢片に当ることがスタッドの頭部によって抑制される。つまり、スタッドの頭部がストッパーの付勢片を保護する役割を果たす。従って、ストッパーの異音防止機能の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アンカー装置をスタッドへ容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るシートベルト用アンカー装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示すアンカー装置を表側から見た分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すアンカー装置を裏側から見た分解斜視図である。
【
図4】(a)および(b)は、それぞれ
図1に示すアンカー装置の横断面図および縦断面図である((a)は(b)のA-A線に沿った断面図)。
【
図5】(a)および(b)は、それぞれ
図1に示すアンカー装置がスタッドに固定される直前の状態の横断面図および縦断面図である((a)は(b)のA-A線に沿った断面図)。
【
図6】(a)および(b)は、それぞれ
図1に示すアンカー装置がスタッドに固定される途中の状態の横断面図および縦断面図である((a)は(b)のA-A線に沿った断面図)。
【
図7】(a)および(b)は、それぞれ
図1に示すアンカー装置がスタッドに固定された後の状態の横断面図および縦断面図である((a)は(b)のA-A線に沿った断面図)。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るシートベルト用アンカー装置を表側から見た分解斜視図である。
【
図10】
図9に示すアンカー装置を裏側から見た分解斜視図である。
【
図11】(a)および(b)は、それぞれ
図9に示すアンカー装置の横断面図および縦断面図である((a)は(b)のA-A線に沿った断面図)。
【
図12】従来のシートベルト用アンカー装置の斜視図である。
【
図13】
図12に示すアンカー装置がスタッドに固定された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
図1~
図4(b)に、本発明の第1実施形態に係るシートベルト用アンカー装置1Aを示す。このアンカー装置1Aは、
図7(a)および(b)に示すように、車体7に設けられたスタッド6に固定されるものである。
【0022】
スタッド6は、軸部62と、軸部62よりも大径の頭部61と、軸部62よりも小径のネジ部63を有する。頭部61、軸部62およびネジ部63は、この順に並んでいる。そして、軸部62とネジ部63との段差部に、車体7に面接触するスペーサ64が固定されている。
【0023】
アンカー装置1Aは、アンカープレート2と、金属製の板バネからなるストッパー4を含む。アンカープレート2の厚さは、スタッド6の軸部62の長さよりも小さく設定されている。本実施形態では、アンカー装置1Aがスタッド6に固定されたときにアンカープレート2がスペーサ64を介して車体7に押し付けられる。
【0024】
本実施形態では、ストッパー4が、一対のリベット3(
図2,3では、一方のリベット3のみを図示)によりアンカープレート2に取り付けられている。ただし、ストッパー4は、ビスなどによりアンカープレート2に取り付けられてもよい。ストッパー4を構成する金属は、特に限定されるものではないが、例えばスチールである。
【0025】
アンカープレート2には、シートベルトのウエビング10の一端に形成したループ11を固定する第1開口21が形成されている。第1開口21は、ウエビング10の幅方向に延びる長穴状である。さらに、アンカープレート2には、ウエビング10の軸方向において第1開口21と並ぶように第2開口22が形成されている。以下では、説明の便宜上、第1開口21から第2開口22へ向かう第1方向を下方向または下向き、第2開口22から第1開口へ向かう第2方向を上方向または上向きともいう。
【0026】
第2開口22は、第1開口21に近い拡大領域23と、拡大領域23から第1開口21と反対向きに延びるロック領域24を有する。拡大領域23は、スタッド6の頭部61が挿入可能な領域であり、ロック領域24は、拡大領域23からスタッド6の頭部61が進入不能で軸部62が進入可能な領域である。つまり、拡大領域23の幅は、スタッド6の頭部61の直径よりも大きく、ロック領域24の幅は、スタッド6の頭部61の直径よりも小さく、かつ、軸部62の直径よりも大きい。
【0027】
より詳しくは、拡大領域23の上部は半円状となっており、拡大領域23の中間部及び下部は一定の幅のストレート状となっている。そして、アンカープレート2には、拡大領域23の下部の両側に、リベット3用の一対の貫通穴25が設けられている。
【0028】
本実施形態では、上下方向における拡大領域23の長さが相対的に長く、ロック領域24の長さが相対的に短く設定されている。これは、ストッパー4の後述する案内片43のためである。
【0029】
ストッパー4は、第2開口22のロック領域24の周囲でアンカープレート2と重なり合っている。ストッパー4は、スタッド6の軸部62が拡大領域23からロック領域24に進入したときにスタッド6の頭部61と係合する。
【0030】
ストッパー4は、側面視で上向きに開口するU字状に折り曲げられている。具体的に、ストッパー4は、アンカープレート2と当接する第1板状部4Aと、第1板状部4Aと隙間を隔てて離間する第2板状部4Bと、第1板状部4Aと第2板状部4Bの下部(第1開口21と反対側の端部)同士を連結する折り返し部4Cとを含む。
【0031】
第1板状部4Aは、上向きに開口する略U字状をなしている。つまり、第1板状部4Aは、第2開口22の拡大領域23の下部およびロック領域24の両側に位置する一対の側辺部と、ロック領域24の下方に位置する底辺部を含む。そして、各側辺部の上部に、リベット3用の貫通穴41が設けられている。第1板状部4Aの開口幅(側辺部間の距離)は、第2開口22の拡大領域23の幅よりも大きく設定されている。
【0032】
第1板状部4Aには、一対の付勢片42および一対の案内片43が設けられている。一対の付勢片42は、第1板状部4Aの両側辺部の内側に配置されており、一対の案内片43は一対の付勢片42の内側に配置されている。
【0033】
より詳しくは、各付勢片42は、第1板状部4Aの対応する側辺部の上部と連結されており、アンカープレート2に接する位置から下向きに、アンカープレート2から浮き上がりながら延びている。付勢片42の下部は、ロック領域24の側方に位置しており、斜め内向きに屈曲している。
【0034】
付勢片42は、スタッド6の軸部62が拡大領域23からロック領域24に進入したときに、
図7(a)および(b)に示すようにスタッド6の頭部61とアンカープレート2の間に介在して頭部61をアンカープレート2から離れる方向に付勢する。これにより、アンカープレート2が車体7側に押し付けられ、スタッド6とアンカープレート2との相対的な振動が抑制される。
【0035】
各案内片43は、対応する付勢片42の下端部から、付勢片42と並列となるように上向きに延びている。案内片43は、スタッド6の軸部62が拡大領域23からロック領域24に進入するときに、スタッド6の頭部61を案内する。より詳しくは、案内片43は、第2開口22の拡大領域23内に位置し、ロック領域24から拡大領域23へ向かって車体7に近づくように傾斜する。このような形状により、スタッド6の軸部62が拡大領域23からロック領域24に進入するときには、
図6(a)および(b)に示すように、拡大領域23に挿入されたスタッド6の頭部61が、アンカープレート2の表面上まで持ち上げられるように案内片43に沿ってスタッド6の軸方向に移動する。
【0036】
第2板状部4Bには、略中央に略矩形状の開口44が設けられている。また、第2板状部4Bには、開口44の中心に向かって下向きに突出する係止片45が設けられている。係止片45の下部は、アンカープレート2に向かって折れ曲がっている。係止片45は、スタッド6の頭部61を第2開口22の拡大領域23に挿入した状態(
図5(a)および(b)参照)でアンカープレート2を上向きに移動させたときに、アンカープレート2から離れるように弾性変形することによって頭部61と接触しながら頭部61の通過を許容する(
図6(a)および(b)参照)。さらに、係止片45は、
図7(a)および(b)に示すようにスタッド6の軸部62がロック領域24に進入したときに、スタッド6が拡大領域23へ戻るのを阻止する。
【0037】
アンカー装置1Aをスタッド6から取り外す際は、
図7(a)および(b)に示す状態から第2板状部4Bの上端を操作して、係止片45がアンカープレート2から離れるように第2板状部4Bの全体を弾性変形させる。これにより、スタッド6が拡大領域23へ戻ることが許容される。
【0038】
上述した各案内片43は、アンカープレート2の厚さ方向において係止片45と対向する位置に設けられている。そして、案内片43は、
図6(a)および(b)に示すようにスタッド6の軸部62が拡大領域23からロック領域24に進入するときに、スタッド6の頭部61が係止片45をアンカープレート2から離れる方向へ押し上げるように頭部61を案内する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のアンカー装置1Aでは、ストッパー4が案内片43を含むので、
図5(b)に示すようにスタッド6の頭部61を第2開口22の拡大領域23を通過させずに拡大領域23内に留めたままの状態で、スタッド6の軸部62が拡大領域23からロック領域24に進入するようにアンカープレート2を上向きに移動させると、スタッド6の頭部61が案内片43に案内されてスタッド6の軸方向に自動的に移動する。このため、アンカー装置1Aをスタッド6へ容易に固定することができる。
【0040】
スタッド6の頭部61を拡大領域23に挿入した状態でアンカープレート2を上向きに移動させる際には、スタッド6の頭部61が係止片45を通過するために係止片45をアンカープレート2から離れる方向へ押し上げる必要がある。本実施形態では、案内片43によって案内されるスタッド6の頭部61が係止片45をアンカープレート2から離れる方向へ押し上げるため、作業者はアンカープレート2へ移動方向と直交する厚さ方向の力をそれほど加える必要はない。従って、アンカー装置1Aをスタッド6へさらに容易に固定することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、アンカー装置1Aがスタッド6に固定されたときは、ストッパー4の付勢片42の付勢力によってアンカープレート2が車体7側に押し付けられる。従って、アンカープレート2がスタッド6に対して振動して異音が発生することが防止される。しかも、付勢片42はスタッド6の頭部61とアンカープレート2の間に介在するので、車両の乗員の足や荷物などが直接的に付勢片42に当ることがスタッド6の頭部61によって抑制される。つまり、スタッド6の頭部61がストッパー4の付勢片42を保護する役割を果たす。従って、ストッパー4の異音防止機能の耐久性を向上させることができる。
【0042】
<変形例>
ストッパー4の付勢片42と案内片43は必ずしも並列である必要はない。例えば、
図8に示すように、各付勢片42は、第1板状部4Aの底辺部と連結され、アンカープレート2に接する位置から上向きに、アンカープレート2から浮き上がりながら延びてもよい。この場合、一対の案内片43が一対の付勢片42の上方に配置され、各案内片43が対応する付勢片42の上端部から上向きに延びてもよい。このような構成であれば、付勢片42と案内片43が連続するため、付勢片42と案内片43が並列の場合と比べてストッパー4の形状をシンプルにすることができる。
【0043】
また、スペーサ64が省略され、アンカープレート2が車体7から浮き上がるようにスタッド6の頭部61と軸部62の間の段差部に押し付けられてもよい。すなわち、図示は省略するが、ストッパー4は、
図12に示す従来のストッパー130と同様に、スタッド6の頭部61を押圧してアンカープレート2に押し付ける押圧片を含んでもよい。なお、本変形例は、後述する第2実施形態にも適用可能である。
【0044】
(第2実施形態)
図9~11に、本発明の第2実施形態に係るシートベルト用アンカー装置1Bを示す。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0045】
本実施形態では、ストッパー4に案内片43が設けられていない代わりに、アンカープレート2におけるロック領域24の両側に案内面26が設けられている。このため、上下方向における拡大領域23の長さとロック領域24の長さはほぼ等しい。
【0046】
案内面26は、拡大領域23とロック領域24の間の段差部を利用して設けられている。各案内面26は、ロック領域24から拡大領域23へ向かって車体7に近づくように傾斜する。そして、案内面26は、スタッドの軸部62が第2開口22のロック領域24に挿入されるときに、頭部61を案内する。
【0047】
さらに、本実施形態では、各付勢片42に、対応する案内面26と当該付勢片42の下端部との間を埋めるように張り出す張り出し部46が設けられている。
【0048】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0050】
例えば、ストッパー4は、必ずしも第1板状部4A、第2板状部4Bおよび折り返し部4Cを含むU字状である必要はない。例えば、図示は省略するが、第2板状部4Bおよび折り返し部4Cが省略される代わりに、第1板状部4Aの上方にアンカープレート2から浮き上がる浮き上がり部が設けられ、この浮き上がり部に係止片45が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B シートベルト用アンカー装置
10 ウエビング
11 ループ
2 アンカープレート
21 第1開口
22 第2開口
23 拡大領域
24 ロック領域
26 案内面
4 ストッパー
42 付勢片
43 案内片
45 係止片
4A 第1板状部
4B 第2板状部
4C 折り返し部
6 スタッド
61 頭部
62 軸部
7 車体