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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ガスの処理装置及びガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20220801BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20220801BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220801BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20220801BHJP
   B01D 47/06 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B01D53/50 200
F27D17/00 104G
F27D17/00 104D
B01D53/78 ZAB
B01D53/18 150
B01D47/06 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018102716
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019205973
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】500483219
【氏名又は名称】パンパシフィック・カッパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晋哉
(72)【発明者】
【氏名】神野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】千田 裕史
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-325742(JP,A)
【文献】特開2006-255573(JP,A)
【文献】特開2011-202934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18、
53/34-53/85、
53/92、53/96、
47/00-47/18、
1/00- 8/00
B01B 1/00- 1/08
F27D 17/00-99/00
B01J 10/00-12/02、
14/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温以上の不純物を含むガスを洗浄及び冷却するガスの処理装置であって、
前記ガスの洗浄及び冷却を行う第1の装置と、気液分離装置を介さずに前記第1の装置と接続され、前記第1の装置から排出されたガスを洗浄する第2の装置と、を備え、
前記第2の装置の下流側に設けられた導入ファンの作用により、前記第1の装置及び前記第2の装置の内部に前記ガスが導入され、
前記第1、第2の装置は、空塔と、前記空塔内に洗浄液を散布するスプレーとを有し、
前記第2の装置の前記洗浄液の散布位置は、前記洗浄液の散布角度及び前記第2の装置の空塔内におけるガスの速度分布に基づいて決定された位置である、ことを特徴とするガスの処理装置。
【請求項2】
常温以上の不純物を含むガスを洗浄及び冷却するガスの処理装置であって、
前記ガスの洗浄及び冷却を行う第1の装置と、気液分離装置を介さずに前記第1の装置と接続され、前記第1の装置から排出されたガスを洗浄する第2の装置と、を備え、
前記第2の装置の下流側に設けられた導入ファンの作用により、前記第1の装置及び前記第2の装置の内部に前記ガスが導入され、
前記第1、第2の装置は、空塔と、前記空塔内に洗浄液を散布するスプレーとを有し、
前記第1の装置の((液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度[m/s]))を7以下、前記第2の装置の((液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度[m/s]))を5以下とすることを特徴とすガスの処理装置。
【請求項3】
常温以上の不純物を含むガスを洗浄及び冷却するガスの処理装置であって、
前記ガスの洗浄及び冷却を行う第1の装置と、気液分離装置を介さずに前記第1の装置と接続され、前記第1の装置から排出されたガスを洗浄する第2の装置と、
気液分離装置を介さずに前記第2の装置と接続され、前記第2の装置から排出されたガスを、充填物を用いて洗浄液と接触させることによりガスを冷却する第3の装置と、を備え、
前記第3の装置の下流側に設けられた導入ファンの作用により、前記第1の装置、前記第2の装置及び前記第3の装置の内部に前記ガスが導入され、
前記第1、第2の装置は、空塔と、前記空塔内に洗浄液を散布するスプレーとを有し、
前記第3の装置の((液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度[m/s]))を3以下とすることを特徴とすガスの処理装置。
【請求項4】
前記第1の装置において洗浄液を空塔内で循環する量は、前記第2の装置において洗浄液を空塔内で循環する量よりも多いことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項5】
前記第1の装置の液ガス比は、前記第2の装置の液ガス比よりも大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項6】
前記ガスの処理装置で処理するガスが非鉄製錬排ガスであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項7】
常温以上の不純物を含むガスを洗浄及び冷却するガスの処理方法であって、
空塔内に洗浄液を散布する第1の装置に前記ガスを導入して、前記ガスの洗浄及び冷却を行う工程と、
空塔内に洗浄液を散布する第2の装置に前記第1の装置から排出されたガスを気液分離装置を介さずに導入して、前記ガスの洗浄を行う工程と、を有し、
前記第1の装置及び前記第2の装置の内部には、前記第2の装置の下流側に設けられた導入ファンの作用により前記ガスが導入され、
前記第2の装置の前記洗浄液の散布位置は、前記洗浄液の散布角度及び前記第2の装置の空塔内におけるガスの速度分布に基づいて決定された位置である、ことを特徴とするガスの処理方法。
【請求項8】
常温以上の不純物を含むガスを洗浄及び冷却するガスの処理方法であって、
空塔内に洗浄液を散布する第1の装置に前記ガスを導入して、前記ガスの洗浄及び冷却を行う工程と、
空塔内に洗浄液を散布する第2の装置に前記第1の装置から排出されたガスを気液分離装置を介さずに導入して、前記ガスの洗浄を行う工程と、を有し、
前記第1の装置及び前記第2の装置の内部には、前記第2の装置の下流側に設けられた導入ファンの作用により前記ガスが導入され、
前記第1の装置の((液ガス比[L/m ]) 0.5 ×(空塔速度[m/s]))を7以下、前記第2の装置の((液ガス比[L/m ]) 0.5 ×(空塔速度[m/s]))を5以下とすることを特徴とするガスの処理方法。
【請求項9】
常温以上の不純物を含むガスを洗浄及び冷却するガスの処理方法であって、
空塔内に洗浄液を散布する第1の装置に前記ガスを導入して、前記ガスの洗浄及び冷却を行う工程と、
空塔内に洗浄液を散布する第2の装置に前記第1の装置から排出されたガスを気液分離装置を介さずに導入して、前記ガスの洗浄を行う工程と、
充填物を用いて洗浄液と接触させることによりガスを冷却する第3の装置に、前記第2の装置から排出されたガスを気液分離装置を介さずに導入して、前記ガスの冷却を行う工程と、を有し、
前記第1の装置、前記第2の装置、及び前記第3の装置の内部には、前記第3の装置の下流側に設けられた導入ファンの作用により前記ガスが導入され、
前記第3の装置の((液ガス比[L/m ]) 0.5 ×(空塔速度[m/s]))を3以下とすることを特徴とするガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの処理装置及びガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬設備における硫化鉱の燃焼により排出されるSO2ガスは、洗浄冷却設備、湿式電気集塵機等を用いて精製された後、硫酸製造工程へ送られる。洗浄冷却設備では、循環液スプレーでSO2ガスに含まれるSO3ガス、およびF、Cl等のハロゲンやSe、Pb等の不純物を除去し、循環液中に捕集するとともに、SO2ガスの冷却を行っている。
【0003】
特許文献1には、このような非鉄製錬設備の洗浄冷却塔内壁の劣化を抑制し、塔本体の寿命を延長し、洗浄冷却スプレー装置の着脱手入れが容易な排ガス洗浄冷却塔が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-255573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄塔や冷却塔には、下流側に設けられた導入ファンの作用により、非鉄製錬設備から排ガスが導入されるようになっている。しかしながら、既存設備においては、排ガスの圧力損失が設計値よりも大きくなる傾向にあり、想定していたガス導入能力を発揮できない場合があった。
【0006】
本明細書に記載のガスの処理装置及びガスの処理方法は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、第1の装置及び第2の装置を含む系内におけるガスの圧力損失を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載のガスの処理装置は、常温以上の不純物を含むガスを洗浄及び冷却するガスの処理装置であって、前記ガスの洗浄及び冷却を行う第1の装置と、気液分離装置を介さずに前記第1の装置と接続され、前記第1の装置から排出されたガスを洗浄する第2の装置と、を備え、前記第2の装置の下流側に設けられた導入ファンの作用により、前記第1の装置及び前記第2の装置の内部に前記ガスが導入され、前記第1、第2の装置は、空塔と、前記空塔内に洗浄液を散布するスプレーとを有し、前記第2の装置の前記洗浄液の散布位置は、前記洗浄液の散布角度及び前記第2の装置の空塔内におけるガスの速度分布に基づいて決定された位置である、ガスの処理装置である。
【0008】
本明細書に記載のガスの処理方法は、常温以上の不純物を含むガスを洗浄及び冷却するガスの処理方法であって、空塔内に洗浄液を散布する第1の装置に前記ガスを導入して、前記ガスの洗浄及び冷却を行う工程と、空塔内に洗浄液を散布する第2の装置に前記第1の装置から排出されたガスを気液分離装置を介さずに導入して、前記ガスの洗浄を行う工程と、を有し、前記第1の装置及び前記第2の装置の内部には、前記第2の装置の下流側に設けられた導入ファンの作用により前記ガスが導入され、前記第2の装置の前記洗浄液の散布位置は、前記洗浄液の散布角度及び前記第2の装置の空塔内におけるガスの速度分布に基づいて決定された位置である、ガスの処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に記載のガスの処理装置及びガスの処理方法は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、第1の装置及び第2の装置を含む系内におけるガスの圧力損失を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る排ガス処理装置の構成を概略的に示す図である。
図2】排ガス処理装置の各塔の仕様について、改善前と改善後に分けて示す表である。
図3図3(a)は、改善前の洗浄塔のスプレー配置を示す図であり、図3(b)は、改善後の洗浄塔のスプレー配置を示す図である。
図4】改善前後における、自溶炉内内圧、予冷塔入口、洗浄塔出口、導入ファン入口の圧力損失推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態に係る排ガス処理装置100について、図1図4に基づいて詳細に説明する。図1には、排ガス処理装置100の構成が概略的に示されている。本実施形態の処理対象となる排ガスは、例えば、SO2濃度が1~50vol%、排ガス温度が200~400℃の排ガスである。更にダスト、F、Cl等の不純物が含まれていてもよい。例えば、ダストは、0.1~2.0g/Nm、Fは0.01~1.0vol%、Clは0.001~1.0vol%、SOは0.03~1.5vol%、含んでいてもよい。この組成、温度の排ガスは、非鉄製錬の排ガスにおいて発生する場合が多い。例えば銅乾式製錬における自溶炉あるいは転炉の排ガスである。排ガス処理量としては例えば500~3500Nm/minであってもよい。排ガス処理装置100は、非鉄製錬設備(例えば自溶炉)において硫化鉱の燃焼により排出されるSO2ガスを処理する装置である。
【0012】
排ガス処理装置100は、図1に示すように、第1の装置としての予冷塔12と、第2の装置としての洗浄塔14と、第3の装置としての冷却塔16とを備えている。排ガス処理装置100には、自溶炉(図示しない)からSO2ガス(排ガス)が流入する。なお、冷却塔16の下流側には導入ファンが設けられており、導入ファンの作用により排ガスが排ガス処理装置100内に流入するようになっている。排ガスは、予冷塔12、洗浄塔14、冷却塔16の順に通過し、その間に、冷却、洗浄されて、硫酸製造工場(図示しない)へ送られる。排ガス処理装置100通過前後の排ガスの温度は約200~400℃から約40℃へ低下する。
【0013】
予冷塔12は、空塔20と、空塔20内に流入する排ガスに向けて洗浄液としての循環液を噴きかけ、排ガスを洗浄及び冷却するスプレー21とを備える。排ガスは、空塔20の上部から流入し、空塔20の側壁部から排出されるようになっている。循環液は、循環ポンプ32を介してスプレー21に供給される。自溶炉から排出された排ガス中にはSe、Pb主体の有価金属を含む粒子状の不純物が含まれている。スプレー21から循環液を噴射することにより、粒子状の不純物が循環液に懸濁してSS(Suspended Solids)となって、洗浄塔14の下部に溜まる。なお、予冷塔12に導入される排ガスの温度が約300℃の場合、予冷塔12を通過した後には約100℃へ低下する。ここで、200~400℃の製錬排ガスを処理する場合、予冷塔12は内面を煉瓦張りした構造とし、次の洗浄塔14へ製錬排ガスを導入する際には110℃以下となるように設計し、洗浄塔14は煉瓦張りをしていないFRP製の空塔とすることが望ましい。
【0014】
洗浄塔14は、予冷塔12と同様、空塔30と、空塔30内に流入する排ガスに向けて循環液を噴きかけ、排ガスを洗浄するスプレー31とを備える。スプレー31は、上下2段に設けられ、各段のスプレー31の本数は例えば8本(合計16本)とすることができる。洗浄塔14のスプレー31から循環液を噴射することにより、予冷塔12内において排ガス中から除去されなかった粒子状の不純物が、循環液に懸濁してSSとなり、洗浄塔14の下部に溜まる。循環液は、洗浄塔14の下部から循環ポンプ32を介してスプレー31に供給される。
【0015】
なお、循環ポンプ32の圧送によりスプレー21に対しては、循環液が4333(L/min)で供給され、スプレー31に対しては、循環液が3500(L/min)で供給される。なお、循環ポンプ32によりスプレー21に向けて圧送された循環液の一部は、図1に示すように、廃酸として廃棄される。なお、洗浄塔14に導入する排ガスの温度を約100℃とした場合、洗浄塔14通過後には約65℃へ低下する。
【0016】
冷却塔16は、予冷塔12及び洗浄塔14と同様に、排ガスを洗浄及び冷却するスプレー41を有する。また、冷却塔16の内部には、充填部(充填物)42が設けられている。スプレー41から充填部42上部に向けて噴射された循環液は、充填部42で拡散される。そして、充填部42下部から流入する洗浄塔14を通過した排ガスは、充填部42で拡散され、充填部42では循環液による排ガスの冷却が行われる。なお、冷却塔16に導入する排ガスの温度を約65℃とした場合、冷却塔16通過後には約40℃へ低下する。
【0017】
また、冷却塔16内の循環液は排ガス中の不純物を補足し、冷却塔16の下部に溜まる。冷却塔16の下部に溜まった循環液は、循環ポンプ45により、クーラ44に導入され、クーラ44で冷却された後、循環酸配管43を通りスプレー41へ供給される。スプレー41に対しては、循環液が9000(L/min)で供給される。
【0018】
次に、本実施形態における予冷塔12、洗浄塔14、冷却塔16の仕様について、詳細に説明する。図2は、排ガス処理装置100の各塔の仕様について、改善前と改善後に分けて示す表である。
【0019】
ここで、排ガス処理装置100を改善する前においては、圧力損失の設計値が207mmAq(2.03kPa)であったにも関わらず、圧力損失の実績値は、440mmAq(4.31kPa)となることがあった。このように圧力損失の実績値が設計値よりも大きくなった原因について、発明者が鋭意研究を行った結果、排ガスへの循環液の飛沫同伴によって、圧力損失が増大した可能性が高いという結論に至った。したがって、本実施形態では、冷却塔16内への循環液の飛沫同伴を抑制することに着目して、排ガス処理装置10の仕様を変更した。
【0020】
(1)塔径について
例えば、本実施形態では飛沫同伴を抑制するために次のように設計する。液ガス比が高くなるほど排ガスに同伴する飛沫も多くなりやすく、さらに空塔速度が上がるほど粒径の大きな飛沫も増えることが予想される。このことから、液ガス比と空塔速度を用いて飛沫同伴低減のための条件について改善前後での液ガス比と空塔速度の結果を基に検討した結果、(液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度[m/s])というパラメータを設定することを見出した。本実施形態では、予冷塔12の塔径を、((液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度))を8以下、好ましくは7以下、より好ましくは6.6以下となるように設計する。一方で空塔速度を下げるために塔径を大きくし過ぎるとスプレーの本数が多く必要となったり、スプレー液が遠方へ届くようにスプレー圧を高める必要が生じることから、塔径は5m以下にすることが望ましい。また、液ガス比を下げ過ぎても洗浄及び冷却が十分にできないため、液ガス比は1以上とすることが望ましい。これに対し、洗浄塔14の塔径については((液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度))を5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3.5以下とする。その一方で塔径を大きくし過ぎるとスプレーの本数が多く必要となったり、スプレー液が遠方へ届くようにスプレー圧を高める必要が生じることから、塔径は5m以下にすることが望ましい。また、液ガス比を下げ過ぎても洗浄及び冷却が十分にできないため、液ガス比は1.5以上とすることが望ましい。また、冷却塔の塔径については((液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度))を3以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下とする。
【0021】
なお、塔高は、予冷塔12では予冷塔12での冷却能力を高めて洗浄塔14の洗浄液量を抑えるためにガスの滞留時間を1秒以上、好ましくは1.2秒以上、さらに好ましくは1.4秒以上となるようにする。洗浄塔14では洗浄能力を保ちながら洗浄塔での液飛沫分離性を向上させるため、ガスの滞留時間が4秒以上、好ましくは4.2秒以上、さらに好ましくは4.5秒以上となるような塔高にする。冷却塔16では液飛沫分離性を向上させるため、ガスの滞留時間が8秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは11秒以上となるような塔高にする。
【0022】
(2)循環酸量について
また、本実施形態では、予冷塔12と洗浄塔14にスプレー噴射される循環液の量(循環酸量)についても変更した。例えば、改善前には、洗浄塔14の循環酸量(6000(L/min))の方が予冷塔12の循環酸量(1833(L/min))よりも多かったのに対し、改善後においては、予冷塔12の循環酸量(4333(L/min))を洗浄塔14の循環酸量(3500(L/min))よりも多くした。これにより、改善前後の予冷塔12の液ガス比(排ガス1m3に対する循環液の量)は、1.1(L/m3)から2.1(L/m3)に増加し、改善前後の洗浄塔14の液ガス比は、3.9(L/m3)から1.9(L/m3)に減少した。その一方で、予冷塔12と洗浄塔14の循環酸量の合計は、改善前と改善後で変更なし(7833(L/min))とした。
【0023】
なお、洗浄効率や冷却能力を維持するうえでは、ガスと液の接触効率が重要であるが、液ガス比や循環酸量を調整する前提条件としてスプレー液を塔の断面全体に散布できるような状態にする必要がある。そのためには操業を開始する前に塔上部から目視でスプレーの散布範囲を確認し、断面の95%以上スプレーが散布されていることを確認する。
【0024】
(3)スプレー31の位置について
さらに、本実施形態では、洗浄塔14におけるスプレー31の位置を変更した。図3(a)には、改善前の洗浄塔14におけるスプレー31の位置が示され、図3(b)には、改善後の洗浄塔14におけるスプレー31の位置が示されている。図3(a)、図3(b)からわかるように、改善後においては、改善前に空塔30の上端部近傍(排ガスの排出口近傍)に設けられていたスプレー31’を廃止することとした。また、スプレー31の位置を洗浄塔14(空塔30)の上端部から遠ざけることとした。これにより、改善前において洗浄塔14の上端部から最も近いスプレーまでの距離がHaであったのに対し、改善後には、洗浄塔14の上端部から最も近いスプレーまでの距離をHb(Hb>Ha)とした。改善後においては、洗浄塔14の上端部の空塔30の径が小さくなる部分(ガス流が早くなる部分)近傍からスプレー31が離れているため、洗浄塔14から排出される直前の排ガスに、循環液を噴射しないようにすることができるようになった。なお、スプレー31の位置は、スプレー31による循環液の噴射範囲(散布角度)と、洗浄塔14内における排ガスの速度分布とに基づいて設定することができる。すなわち、排ガスが所定速度以上になる範囲に循環液が噴射されないように、スプレー31の位置を設定するなどすることができる。このように洗浄塔排出部とスプレー位置とを調整することにより洗浄塔出口の飛沫を捕捉するためのミスト除去装置の設置をしなくても飛沫同伴を抑制することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、改善後の洗浄塔14においてもスプレー31’を改善前と同様の位置に設けてもよい。ただし、この場合には、通常時にはスプレー31’を使用しないようにし、緊急時にのみスプレー31’を使用することが好ましい。
【0026】
ここで、図4には、改善前後における、自溶炉内内圧、予冷塔入口、洗浄塔出口、導入ファン入口の圧力損失推移のグラフが示されている。図4からわかるように、改善後においては、改善前よりも圧力損失が低減されていることがわかる。具体的には、図4では、改善前の予冷塔入口と導入ファン入口との間の圧力損失(符号A)が383mmAqであったのに対し、改善後の圧力損失(符号B)が改善前のおよそ1/5程度(84mmAq)となっている。
【0027】
以上のように、本実施形態では、上記(1)のように、予冷塔12、洗浄塔14及び冷却塔16の塔径を大きくすることで、排ガス処理装置100内におけるガス流速を低減することができたため、ガス流速の低減に伴って飛沫同伴量を低減することができた。また、上記(2)のように、予冷塔12において用いる循環酸量を多くし、洗浄塔14において用いる循環酸量を少なくしたこと、及び、上記(3)のように、洗浄塔14のスプレー31の位置を排ガスの排出口から遠ざけたこと、により、洗浄塔14から排出されるガスにおける飛沫同伴量を低減することができた。これらにより、本実施形態では、図4に示すように、飛沫同伴量の影響による圧力損失を低減することができた。
【0028】
なお、本実施形態では、予冷塔12の液ガス比を洗浄塔14の液ガス比よりも大きくしているが、前述したように予冷塔12の循環酸量と洗浄塔14の循環酸量の合計は、改善前から変更していない。このため、改善後の排ガス処理装置100における排ガスの洗浄効果は、改善前から低下しないことが確認されている。
【0029】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、排ガス処理装置100は、排ガスの洗浄及び冷却を行う予冷塔12と、予冷塔12から排出された排ガスを洗浄する洗浄塔14と、を備えており、予冷塔12と洗浄塔14は、空塔20、30と、空塔内に循環液を散布するスプレー21、31とを有し、予冷塔12から排出されたガスは、洗浄塔14に対して側壁から導入されるとともに、上部から排出される。そして、排ガス処理装置100では、洗浄塔14から排出される排ガスにおける循環液の飛沫同伴量を低減するように、飛沫同伴量の挙動を考慮して、空塔20、30の径、循環液の散布量、前記循環液の散布位置を定めることとしている。これにより、本実施形態では、冷却塔16に導入される排ガスの飛沫同伴量を低減することができるため、排ガス処理装置100における圧力損失を低減することができる。
【0030】
また、本実施形態では、予冷塔12の((液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度[m/s]))を7以下、洗浄塔14の((液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度[m/s]))を5以下としている。これにより、排ガスの飛沫同伴量を低減することができる。また、本実施形態では、洗浄塔14から排出されたガスを、充填部42を用いて液と接触させることによりガスを冷却する冷却塔16を備えており、冷却塔16の((液ガス比[L/m])0.5×(空塔速度[m/s]))を3以下としている。この点からも、排ガスの飛沫同伴量を低減することができる。
【0031】
また、本実施形態では、予冷塔12において循環液を空塔20内で循環する量は、洗浄塔14において循環液を空塔30内で循環する量よりも多くしている。これにより、洗浄塔14から排出される排ガスにおける飛沫同伴量を効果的に低減することができる。また、予冷塔12と洗浄塔14において循環させるトータルの循環液の量を改善前と同一にすることで、改善前後における排ガス処理装置100による排ガスの洗浄能力を維持することができる。
【0032】
また、本実施形態では、循環液の散布位置(スプレー31の位置)は、循環液の散布角度及び洗浄塔14の空塔30内におけるガスの速度分布に基づいて決定する。このようにすることで、飛沫同伴量を低減することが可能な適切な位置にスプレー31を配置することが可能である。
【0033】
なお、上記実施形態では、排ガス処理装置100の改善において、洗浄塔14から排出される排ガスにおける循環液の飛沫同伴量を低減するように、空塔20、30の径、循環液の散布量、前記循環液の散布位置を変更する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、排ガス処理装置100の改善においては、循環液の飛沫同伴量を低減するように、空塔20、30の径、循環液の散布量、前記循環液の散布位置の少なくとも1つを変更することとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0035】
12 予冷塔(第1の装置)
14 洗浄塔(第2の装置)
16 冷却塔(第3の装置)
20 空塔
21 スプレー
30 空塔
31 スプレー
42 充填部(充填物)
100 排ガス処理装置
図1
図2
図3
図4